(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の沈設体の組み立て及び沈設完了後に、前記第2の沈設体の内側の地下水を排水し、前記地下水の排水完了後に、前記第1の沈設体の内側に投入された掘削土と前記第1の沈設体とを撤去することを特徴とする請求項1に記載の沈設構造物の構築方法。
前記第2の沈設体の組み立てと並行して、前記第1の沈設体の内側に投入された掘削土と地下水を排出し、地下水のみを前記第1の沈設体内に戻すことを特徴とする請求項1に記載の沈設構造物の構築方法。
前記第1の沈設体の内側に投入された掘削土と前記第1の沈設体とを撤去した後、構築された前記コンクリート層の上面に第2のコンクリート層を構築する工程を有することを特徴とする請求項6に記載の沈設構造物の構築方法。
前記第1のリング体に形成された流通孔を介して、前記第1の沈設体の内側の地下水を前記第1の沈設体の外側に導くことを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載の沈設構造物の構築方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、大断面、大深度での沈設構造物の施工が増加しているが、リング体の連結、地盤の掘削、沈設体の押圧を順に行う従来の工法では、大断面、大深度の施工になるにつれて、それぞれの工程にかかる時間が増大し、施工期間が長くなってしまう。
この問題を解決するため、リング体を連結しながら地盤の掘削を行う工法も考えられる。しかし、掘削した土砂をリング体の外に運び出す際に、リング体の連結を行っている作業者の上方を重機のバケット等が通ることになり、安全性の確保が困難となってしまう。
そのため、大断面、大深度の施工においても、安全性を確保しながら、施工期間を短縮することが望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、大断面、大深度の施工においても、安全性を確保しながら、施工期間を短縮することができる沈設構造物の構築方法及び沈設構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、第1のリング体をその軸線方向に重ねて連結して第1の沈設体を組み立てる工程と、前記第1のリング体を連結した後、前記第1の沈設体の内側の地盤を掘削し、前記第1の沈設体の上方から力を加えて、前記第1の沈設体を地中に沈設する工程と、前記第1の沈設体の組み立て及び沈設完了後に、前記第1のリング体よりも径の大きな第2のリング体をその軸線方向に重ねて連結して前記第1の沈設体を囲むように第2の沈設体を組み立てる工程と、前記第2の沈設体を組み立てながら前記第2の沈設体の内側の地盤を掘削してその掘削土を前記第1の沈設体の内側に投入し、前記第2の沈設体の上方から力を加えて、前記第2の沈設体を地中に沈設する工程と、前記第1の沈設体の内側に投入された掘削土と前記第1の沈設体とを撤去する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記第2の沈設体の組み立て及び沈設完了後に、前記第2の沈設体の内側の地下水を排水し、前記地下水の排水完了後に、前記第1の沈設体の内側に投入された掘削土と前記第1の沈設体とを撤去することが好ましい。
【0008】
また、前記第2の沈設体の組み立てと並行して、前記第1の沈設体の内側に投入された掘削土と地下水を排出し、地下水のみを前記第1の沈設体内に戻すことが好ましい。
【0009】
また、前記第1のリング体の軸線方向に沿って貫かれた貫通孔を通じて前記第1の沈設体の下方の地盤を掘削する工程と、掘削された地盤に反力をとり、前記第1の沈設体に係止して前記第1の沈設体の浮き上がりを防止する第1の浮上防止アンカーを設置する工程と、前記第2のリング体の軸線方向に沿って貫かれた貫通孔を通じて前記第2の沈設体の下方の地盤を掘削する工程と、掘削された地盤に反力をとり、前記第2の沈設体に係止して前記第2の沈設体の浮き上がりを防止する第2の浮上防止アンカーを設置する工程と、を有することが好ましい。
【0010】
また、各浮上防止アンカーを、各沈設体の貫通孔に係止することが好ましい。
【0011】
また、前記第1の沈設体の沈設完了後で前記第2の沈設体を組み立てる前に、前記第1の沈設体の内側の底部にコンクリート層を構築する工程と、前記第2の沈設体の沈設完了後で前記地下水を排水する前に、前記第1の沈設体の外側で前記第2の沈設体の内側の底部にコンクリート層を構築する工程と、を有することが好ましい。
【0012】
また、前記第1の沈設体の内側に投入された掘削土と前記第1の沈設体とを撤去した後、構築された前記コンクリート層の上面に第2のコンクリート層を構築する工程を有することが好ましい。
【0013】
また、前記第1のリング体に形成された流通孔を介して、前記第1の沈設体の内側の地下水を前記第1の沈設体の外側に導くことが好ましい。
【0014】
また、前記第1の沈設体を組み立てる前に、前記第1の沈設体を地中に沈設する際の反力を取る第1の沈設アンカーを設置する工程と、前記第2の沈設体を組み立てる前に、前記第2の沈設体を地中に沈設する際の反力を取る第2の沈設アンカーを設置する工程と、を有することが好ましい。
【0015】
本発明は、上記の沈設構造物の構築方法により構築される沈設構造物であって、各リング体は、壁面を形成するプレートと、前記プレートの上端部及び下端部に立設された主桁と、を備え、各主桁には、各リング体の軸線方向に沿って貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、前記浮上防止アンカーは、各沈設体の下方に掘削された地盤に固定される定着部と、前記定着部に連結され、前記貫通孔内に挿通される連結部と、前記連結部に設けられ、各リング体に係止される係止部と、を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記係止部は、前記貫通孔の開口面積よりも横断面の面積が大きくなるように形成されていることが好ましい。
【0018】
また、前記沈設体の内側の底部に構築されたコンクリート層を有し、前記コンクリート層が構築されている深さの範囲内で、前記係止部を各リング体に係止することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大断面、大深度の施工においても、安全性を確保しながら、施工期間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0022】
<沈設構造物の構成>
図1は、地中に沈設された沈設構造物10の一部を断面視した概略正面図であり、沈設構造物10を立坑に適用した例を示している。
図2は、リング体11の平面図である。
図3は、セグメント12の斜視図である。
図1に示すように、沈設構造物10は、シールド工法等によって地中に構築されるトンネルTの掘削開始地点や中間地点等に設けられ、沈設構造物10の内側の空間Sがシールドマシンの搬送路や換気口となる。
図1に示すように、沈設構造物10は、地中に沈設された沈設体1と、沈設体1の内側の底部に設けられた底盤部2と、沈設体1を地中に沈設する際に用いる沈設アンカー3と、沈設体1の浮き上がりを防止する浮上防止アンカー4と、を備えている。
【0023】
(沈設体)
図1に示すように、沈設体1は、円筒状に構築されており、その軸線が鉛直方向に沿うように地中に沈設される。沈設体1は、
図2に示すような平面視円環状のリング体11をその軸線方向に複数連結して組み立てたものである。沈設体1を構成するリング体11のうち、最下端のリング体11Aは、刃口を有する刃口リング11Aである。
図1に示すように、上下に隣接するリング体11において、上方のリング体11の各セグメント12と下方のリング体11の各セグメント12とは、互いにリング体11の周方向にずれて千鳥状に配置されている。
リング体11は、
図3に示すようなセグメント12をその壁面方向に沿って連結して組み立てたものである。
【0024】
図3に示すように、セグメント12は、円弧状に湾曲形成された矩形状のプレート12aと、プレート12aの湾曲に沿った外縁に立設された2つの主桁12bと、各主桁12bの両端部間を結ぶようにプレート12aの外縁に立設された2つの継手12cと、2つの主桁12b間を結ぶように継手12cに平行にプレート12aの内面側に設けられたリブ12dと、を備えている。なお、主桁12b、継手12c、リブ12dは、いずれもプレート12aに溶接によって接合されていてもよいし、一部がプレート12aと一体に形成されていてもよい。
主桁12bは、セグメント12を連結してリング体11として用いる場合に、プレート12aの上端部及び下端部に立設されている。各主桁12bには、その延在方向に沿って所定の間隔をあけて、ボルトを挿通する複数の貫通孔12fが形成されている。ここで、両主桁12bの貫通孔12fは、互いに貫通孔12fがリング体11の軸線に平行な同一軸線上に沿って貫通するように形成されており、各主桁12bの各貫通孔12f同士が対向するように形成されている。リング体11同士を連結する際には、隣接するリング体11の主桁12b同士を突き合わせ、双方の貫通孔12fにボルトを挿通してナットで締め付けることにより、隣接するリング体11同士を連結し、沈設体1を構築することができる。なお、全ての貫通孔12fをリング体11同士の連結に用いても良いし、一部の貫通孔12fを、浮上防止アンカー4を通す孔として用いても良い。
各継手12cには、その延在方向に沿って所定の間隔をあけて、ボルトを挿通する複数の貫通孔12gが形成されている。セグメント12同士を連結する際には、隣接するセグメント12の継手12c同士を突き合わせ、双方の貫通孔12gにボルトを挿通してナットで締め付けることにより、隣接するセグメント12同士を連結し、リング体11を構築することができる。このとき、プレート12aがリング体11の壁面を構成する。
【0025】
(底盤部)
図1に示すように、底盤部2は、沈設構造物10の基礎になるとともに、地中の地下水が沈設体1の内側に湧き出すことを防止する。
底盤部2は、例えば、水中コンクリートによって構築されている。底盤部2は、複数回に分けて打設されて構築される基礎コンクリート層21と、基礎コンクリート層21の構築後に、全ての基礎コンクリート層21の上面に一度に打設されて構築される表面コンクリート層22とを有している。
各基礎コンクリート層21は、その層の深さがほぼ同じになるように構築されている。表面コンクリート層22は、その上面がほぼ水平面に沿うように構築されている。
【0026】
(沈設アンカー)
図4は、沈設アンカー3の下端部の構成を示す概略図である。
図1に示すように、沈設アンカー3は、沈設体1を地中に沈設する工程において、最上端のリング体11の上方からそのリング体11に力を加えて地中に押し込む際に、地盤に反力をとるものである。
図4に示すように、沈設アンカー3は、沈設体1の沈設位置の外側かつ下方に掘削された地盤に埋設、固定される定着部31と、定着部31に連結され、沈設体1の外壁面に沿って地表まで延び、リング体11を押し込む沈設装置90(
図8参照)の不動部分(基礎部等)に連結される連結部32とを有している。
定着部31は、例えば、掘削された地盤に流し込まれたグラウトによって形成されている。定着部31は、沈設体1の最下端の刃口リング11Aよりも外側において、刃口リング11Aよりも深い位置に構築されている。
連結部32は、例えば、鋼線(ワイヤロープ)によって形成されている。連結部32の下端部は、グラウトの固化により定着部31に埋設、固定されており、上端部は、沈設装置90の不動部分に連結、固定されている。
定着部31及び連結部32は、地表面に対して垂直な方向に沿って同一軸線上に延びるように形成されている。
【0027】
(浮上防止アンカー)
図5は、浮上防止アンカー4の下端部の構成を示す概略図である。
図1に示すように、浮上防止アンカー4は、沈設体1の沈設後に、沈設体1の浮き上がりを防止するものである。
図5に示すように、浮上防止アンカー4は、沈設体1を構成するリング体11の下方に掘削された地盤に埋設、固定される定着部41と、定着部41に連結され、リング体11を構成するセグメント12の貫通孔12fに挿通されて全てのリング体11の内部を通って地表まで延び、地表付近の構造物又は地盤に連結される連結部42と、連結部42に設けられ、リング体11のセグメント12に係止される係止部43とを有している。
定着部41は、例えば、掘削された地盤に流し込まれたグラウトによって形成されている。定着部41は、沈設体1の最下端の刃口リング11Aの下方の位置に構築されている。
連結部42は、例えば、鋼線(ワイヤロープ)によって形成されている。連結部42の下端部は、グラウトの固化により定着部41に埋設、固定されており、上端部は、地表付近の構造物又は地盤に連結、固定されている。
係止部43は、連結部42の途中に設けられており、リング体11の貫通孔12fの開口面積よりも横断面の断面積が小さく、刃口リング11Aの貫通孔13fの開口面積よりも横断面の断面積が大きくなるように形成されている。すなわち、連結部42を貫通孔12f,13fに挿通する際に、係止部43がリング体11の貫通孔12fを通ることはできるが、刃口リング11Aの貫通孔13fを通ることはできないように構成されている。これにより、沈設体1が地表に向けて浮き上がろうとした際に、係止部43が刃口リング11Aの貫通孔13fに係止され、沈設体1の浮き上がりを防止する。係止部43は、基礎コンクリート層21が構築されている深さの範囲内でリング体11に係止されている。係止部43は、連結部42と一体に形成されていてもよいし、別個に形成されていてもよい。
【0028】
図6は、沈設体1の沈設完了後における底盤部2付近の構成を示す概略図である。
図6に示すように、沈設アンカー3と浮上防止アンカー4の設置後、底盤部2を形成すると、底盤部2の下方が複数の定着部31,41によって地盤支持された状態となっており、連続梁状に支持点が増えるため、底盤部2の厚みを抑制することができる。また、両アンカー3,4の連結部32,42が底盤部2を形成するコンクリート層内に残されているので、連結部32,42を底盤部2のコンクリート層を強化する鉄筋として用いることができる。
【0029】
<沈設構造物の構築方法>
次に、上記の沈設体1を地中に沈設して沈設構造物10を構築する方法について、
図7から
図14を用いて説明する。以下に説明する沈設構造物10の構築方法は、大断面、大深度の施工に有用な方法であり、断面の小さな第1の沈設体5(例えば、外径が10m程度)を沈設した後、第1の沈設体5を囲むように断面の大きな第2の沈設体1(例えば、外径が30m程度)を沈設し、第2の沈設体1の沈設後に第1の沈設体5を撤去するものである。
【0030】
最初に、
図7に示すように、沈設体5を構築する施工箇所の外側に、ロータリーパーカッション91を用いて複数の掘削孔を形成する。掘削孔は、沈設される沈設体5の外壁に沿って、所定の間隔をあけて環状に形成される。掘削孔は、地表面に対して垂直となる方向に沿って、沈設体5の下端部よりも深い位置まで形成される。形成された各掘削孔のそれぞれにグラウトを注入するとともに、連結部(ワイヤロープ)32を掘削孔に挿入する。このとき、連結部32の下端部をグラウト内に浸しておく。グラウトの固化により、定着部31、及び定着部31に固定された連結部32が構築され、沈設アンカー3(第1の沈設アンカー)の設置が完了する。
【0031】
次に、
図8に示すように、沈設体5を構築する施工箇所に、沈設装置90を据え付け、沈設装置90の不動部分(脚部等)に連結部32の上端を連結する。沈設装置90は、例えば、油圧ジャッキ等によって構成されており、最上端のリング体51を地中に向けて押圧することにより、リング体51を地中に沈設することができる。
沈設装置90の下方に沈設体5の最下端部に配置される刃口リング51Aを据え付ける。据え付けた刃口リング51Aの内側の地盤をクローラクレーン92の先に取り付けたクラムシェル93で掘削し、刃口リング51Aの沈設に必要な深さの掘削が終わると、掘削を止め、沈設装置90によって刃口リング51Aの上面を地中に向けて押圧し、刃口リング51Aを沈設する。刃口リング51Aの沈設後、刃口リング51Aの軸線方向上側にリング体51を重ねて連結する。リング体51の連結後、リング体51の内側の地盤をクラムシェル93で掘削し、リング体51の沈設に必要な深さの掘削が終わると、掘削を止め、沈設装置90によってリング体51の上面を地中に向けて押圧し、刃口リング51A及びリング体51を沈設する。リング体51の沈設後、リング体51の軸線方向上側に、別のリング体51を重ねて連結する。これらの工程を繰り返すことにより、沈設体5を構築するのに必要な全てのリング体51を連結、沈設し、沈設体5の沈設が完了する。
なお、刃口リング51A及びリング体51の沈設時に、地盤からの反力を受けて沈設装置90が浮き上がろうとする力が作用するが、沈設装置90には沈設アンカー3が連結されているので、浮き上がることはない。また、沈設体5の沈設後、沈設装置90を撤去する際には、連結部32の上端部は、地表付近の構造物又は地盤に連結、固定する。
【0032】
次に、
図9に示すように、沈設体5の沈設が完了した後、沈設体5の底部に水中コンクリートを打設し、基礎コンクリート層21を構築する。また、沈設体5のリング体51及び刃口リング51Aに形成された貫通孔にロータリーパーカッション91のドリルパイプを挿通し、刃口リング51Aの下方の地盤を削孔して複数の掘削孔を形成する。掘削孔は、沈設されるリング体51の貫通孔52fの軸線に沿って、所定の間隔をあけて環状に形成される。掘削孔は、地表面に対して垂直となる方向に沿って、沈設体5の下端部よりも深い位置まで形成される。形成された各掘削孔のそれぞれにグラウトを注入するとともに、連結部(ワイヤロープ)42を掘削孔に挿入する。このとき、連結部42の下端部をグラウト内に浸しておく。グラウトの固化により、定着部41、及び定着部41に固定された連結部42が構築される。連結部42の上端部は、地表付近の構造物又は地盤に連結、固定する。
【0033】
図5に示すように、リング体11及び刃口リング11Aの貫通孔12f,13fと同様、連結部42をリング体51及び刃口リング51Aに挿通した後における刃口リング51Aの上端部近傍には、リング体51の貫通孔52fの開口面積よりも横断面の断面積が小さく、刃口リング51Aの貫通孔53fの開口面積よりも横断面の断面積が大きい係止部43が設けられている。すなわち、連結部42を貫通孔52f,53fに挿通する際に、係止部43がリング体51の貫通孔52fを通ることはできるが、刃口リング51Aの貫通孔53fを通ることはできないように構成されている。これにより、係止部43が刃口リング51Aの貫通孔53fに係止される。係止部43が貫通孔53fに係止されることで、浮上防止アンカー4(第1の浮上防止アンカー)の設置が完了する。
【0034】
次に、
図10に示すように、沈設体1を構築する施工箇所の外側に、ロータリーパーカッション91を用いて複数の掘削孔を形成する。掘削孔は、沈設される沈設体1の外壁に沿って、所定の間隔をあけて環状に形成される。掘削孔は、地表面に対して垂直となる方向に沿って、沈設体1の下端部よりも深い位置まで形成される。形成された各掘削孔のそれぞれにグラウトを注入するとともに、連結部(ワイヤロープ)32を掘削孔に挿入する。このとき、連結部32の下端部をグラウト内に浸しておく。グラウトの固化により、定着部31、及び定着部31に固定された連結部32が構築され、沈設アンカー3(第2の沈設アンカー)の設置が完了する。
【0035】
次に、
図11に示すように、沈設体1を構築する施工箇所に、沈設装置90を据え付け、沈設装置90の不動部分(脚部等)に連結部32の上端を連結する。沈設装置90は、例えば、油圧ジャッキ等によって構成されており、最上端のリング体11を地中に向けて押圧することにより、リング体11を地中に沈設することができる。
沈設装置90の下方に、沈設体1の最下端部に配置され、刃口リング51Aよりも径の大きな刃口リング11Aを、刃口リング51Aを囲むように据え付ける。据え付けた刃口リング11Aの内側の地盤をクローラクレーン92の先に取り付けたクラムシェル93で掘削し、その掘削土Cを外部に運び出すのではなく、既に構築されている沈設体5の内側の空間に投入する。この掘削に並行して、沈設装置90によって刃口リング11Aの上面を地中に向けて押圧し、刃口リング11Aを沈設する。刃口リング11Aの沈設後、刃口リング11Aの軸線方向上側にリング体51よりも径の大きなリング体11を重ねて連結する。この間も掘削は続けられており、掘削のペースに合わせてリング体11の連結及び沈設を行う。ここで、掘削作業とリング体11の組み立て作業はそれぞれ別個のクローラクレーン92を用いて行われる。例えば、4台のクローラクレーン92を沈設体1の周囲に等間隔で配置(沈設体1の中心から見て90°毎に配置)し、対向するクローラクレーン92のうち、一方のクローラクレーン92aで地盤掘削及び沈設体5への掘削土Cの投入を行い、他方のクローラクレーン92bでセグメント12を吊してリング体11の構築及びリング体11の連結を行う。
これにより、沈設体1を構築するのに必要な全てのリング体11を連結、沈設し、沈設体1の沈設が完了する。
【0036】
次に、
図12に示すように、沈設体1の沈設が完了した後、沈設体1の底部に水中コンクリートを打設し、基礎コンクリート層21を構築する。また、沈設体1のリング体11及び刃口リング11Aに形成された貫通孔にロータリーパーカッション91のドリルパイプを挿通し、刃口リング11Aの下方の地盤を削孔して複数の掘削孔を形成する。掘削孔は、沈設されるリング体11の貫通孔12fの軸線に沿って、所定の間隔をあけて環状に形成される。掘削孔は、地表面に対して垂直となる方向に沿って、沈設体1の下端部よりも深い位置まで形成される。形成された各掘削孔のそれぞれにグラウトを注入するとともに、連結部(ワイヤロープ)42を掘削孔に挿入する。このとき、連結部42の下端部をグラウト内に浸しておく。グラウトの固化により、定着部41、及び定着部41に固定された連結部42が構築される。連結部42の上端部は、地表付近の構造物又は地盤に連結、固定する。
【0037】
図5に示すように、連結部42をリング体11及び刃口リング11Aに挿通した後における刃口リング11Aの上端部近傍には、リング体11の貫通孔12fの開口面積よりも横断面の断面積が小さく、刃口リング11Aの貫通孔13fの開口面積よりも横断面の断面積が大きい係止部43が設けられている。すなわち、連結部42を貫通孔12f,13fに挿通する際に、係止部43がリング体11の貫通孔12fを通ることはできるが、刃口リング11Aの貫通孔13fを通ることはできないように構成されている。これにより、係止部43が刃口リング11Aの貫通孔13fに係止される。係止部43が刃口リング11Aの貫通孔13fに係止されることで、浮上防止アンカー4(第2の浮上防止アンカー)の設置が完了する。
これにより、沈設体5の内側にのみ掘削土Cが投入されており、地下水は沈設体1及び沈設体5の内側に満たされた状態となっている。なお、沈設体5を構成する一部のリング体51のセグメントには掘削土Cを通さずに水だけを通す流通孔51fが形成されており、地下水は、沈設体5の内側と沈設体5の外側で沈設体1の内側との間を流通自在となっている。よって、地下水の水位は同じである。
【0038】
次に、
図13に示すように、沈設体1の内側で沈設体5の外側の地下水内に水中ポンプを設置し、地下水を沈設体1の外部に排出する。ここで、沈設体1の内側の地下水を汲み上げると、沈設体5の内側の地下水は、沈設体1の内側の地下水の水位と差が生じるため、流通孔51fを通して沈設体5の外側に移動し、最終的には、沈設体1の内側の地下水だけでなく、沈設体5の内側の地下水も水中ポンプで汲み上げることができる。なお、沈設体5の内側に投入された掘削土Cと地下水を同時に汲み上げ、地上にて掘削土Cと地下水を分離し、地下水のみを再度沈設体5に戻す工程を、沈設体1を構築する工程と同時に行っても良く、この場合には、掘削土Cの搬出と沈設体1の構築とを同時に行うことができるため、さらなる工期の短縮を図ることができる。
【0039】
次に、
図14に示すように、沈設体5の内側に投入された掘削土Cをクローラクレーン92の先に取り付けたクラムシェル93で外部に撤去しながら、別のクローラクレーン92でリング体51を解体し、外部に撤去する。なお、沈設体5の施工の際に用いた沈設アンカー3の連結部32及び浮上防止アンカー4の連結部42は、係止部43の上方で、基礎コンクリート層21の上面とほぼ同じ深さとなる位置で切断しておく。
掘削土C及びリング体51の撤去完了後、基礎コンクリート層21の上面にコンクリートを打設し、表面コンクリート層21を形成する。これにより、底盤部2が完成する。
以上の工程をもって、沈設構造物10が構築される。
【0040】
<作用、効果>
以上のような沈設構造物10の構築方法によれば、大断面(大径)の沈設体1を沈設する際には、最初から沈設体1を沈設するのではなく、小径の沈設体5を地中に沈設した後に沈設体1を沈設しており、沈設体1の沈設時における掘削土Cを沈設体5の内側に仮置きすることで、掘削土Cを掴んだクラムシェル93がリング体11の上方を通過することなく、掘削作業を続けることができる。
これにより、作業者の頭上をクラムシェル93が通過することなく、安全を確保した状態で、沈設体1を組み立て及び沈設しながら沈設体1の内側の地盤を掘削することができるので、大断面、大深度の施工においても、沈設体1の組み立て、沈設、沈設体1の内側の地盤の掘削を順に行う必要がなくなり、施工期間を短縮することができる。
【0041】
また、小径の沈設体5を地中に沈設した後に大径の沈設体1を地中に沈設しており、沈設体1の沈設時における掘削土Cを沈設体5の内側に仮置きすることができるので、地表部に掘削土Cの仮置きスペースを確保する必要がなく、比較的作業時間を要する掘削土Cの搬出工程を順次行うことができるので、施工期間を短縮することができる。
また、沈設体5は最終的に撤去されるので、沈設体5に用いたリング体51を再利用することができる。
また、一部のリング体51には掘削土Cは通さずに水だけを通す流通孔51fが形成されているので、沈設体1の内側の地下水だけでなく、沈設体5の内側に投入された掘削土Cに含まれる地下水も汲み上げることができるので、掘削土C及び沈設体5を撤去する際の作業効率が向上する。
【0042】
また、沈設体5の内側の底部に基礎コンクリート層21を形成した後に、沈設体1の内側で沈設体5の外側の底部に基礎コンクリート層21を打設するので、基礎コンクリート層21を分けて打設することができ、沈設体1の内側に一度に水中コンクリートを打設する場合よりも基礎コンクリート層21の強度を早期に発揮することができ、ひいては底盤部2の強度を早期に発揮することができる。
また、沈設アンカー3と浮上防止アンカー4の設置後、底盤部2を形成すると、底盤部2の下方が複数の定着部31,41によって地盤支持された状態となっており、連続梁状に支持点が増えるため、底盤部2の厚みを抑制することができる。また、両アンカー3,4の連結部32,42が底盤部2を形成するコンクリート層内に残されているので、連結部32,42を底盤部2のコンクリート層を強化する鉄筋として用いることができる。
【0043】
また、沈設アンカー3を設けることにより、沈設体1,5の沈設時における沈設装置90の浮き上がりを防止することができる。
また、浮上防止アンカー4は、リング体11,51の内部に挿通されているので、施工領域を広げることもない。
また、浮上防止アンカー4の係止部43をリング体11,51の貫通孔13f,53fに係止するだけの簡単な構成で沈設体1,5の浮き上がりを防止することができる。
また、係止部43は、底盤部2が形成されている深さの範囲内でリング体11,51に係止されているので、底盤部2を構築するコンクリートで係止部43とリング体11,51の係止をさらに強固にすることができる。
【0044】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではない。例えば、リング体は、平面視円形状に限らず、平面視長円形状(小判形状)、平面視多角形状に形成してもよい。
また、各リング体は、複数のセグメントを連結して構成したものに限らず、最初から一体に形成したものであってもよい。
また、浮上防止アンカーにおいて、係止部を設ける位置は任意であって、十分な耐震性を確保するために、地盤の強度に応じて自由に変更可能である。すなわち、係止部をできるだけ低い位置に設けることで、地震発生時のリング体の軸方向の耐久力は弱くなるものの、セグメントの挙動が柔軟になるので、沈設体の免震性能が向上する。
また、複数の浮上防止アンカーが設けられている沈設体において、各係止部の位置も浮上防止アンカー毎に自由に変更可能である。これにより、沈設体の軸方向に作用する力を調整することができる。