特許第6445897号(P6445897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ヒートテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6445897-冷却装置 図000002
  • 特許6445897-冷却装置 図000003
  • 特許6445897-冷却装置 図000004
  • 特許6445897-冷却装置 図000005
  • 特許6445897-冷却装置 図000006
  • 特許6445897-冷却装置 図000007
  • 特許6445897-冷却装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445897
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/62 20060101AFI20181217BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20181217BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20181217BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   C21D1/62
   C21D1/00 124
   !C22F1/04 M
   !C22F1/00 692Z
   !C22F1/00 692A
   !C22F1/00 611
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-33441(P2015-33441)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-156040(P2016-156040A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】592040882
【氏名又は名称】浜松ヒートテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 協司
(72)【発明者】
【氏名】竹下 裕市
【審査官】 静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−261039(JP,A)
【文献】 特開昭58−039727(JP,A)
【文献】 特開昭61−235508(JP,A)
【文献】 特開昭59−107026(JP,A)
【文献】 特開昭59−107018(JP,A)
【文献】 特開昭52−031913(JP,A)
【文献】 特開昭63−290391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00−1/84
C22F 1/00−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のワークを冷却して熱処理可能な冷却装置において、
流動粒子を所定量収容するとともに、前記ワークを当該流動粒子中に投入し得る流動槽ケースと、
該流動槽ケースに空気を送り込むことにより前記流動粒子を前記流動槽ケース内で流動させつつ当該流動粒子を熱媒体として前記ワークを冷却し得る送風手段と、
を具備し、前記送風手段は、湿度を低下させた冷却風を生成可能な冷却風生成手段と連結されるとともに、当該冷却風生成手段からの湿度が低下した冷却風を前記流動槽ケースに送り込み得るものとされ、前記流動槽ケースに対する送風量が任意調整可能とされるとともに、当該流動槽ケースに投入されるワークに応じて送風量を適宜調整し得る制御手段と、前記収容手段から吹き上げられた前記流動粒子を吸い取り可能とされた集塵手段とを具備したことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記流動槽ケース内を、前記流動粒子を収容する収容空間と、前記送風手段からの送風を受けるチャンバ部とに画成し、前記送風手段から送り込まれた空気の前記チャンバ部から収容空間への通過を許容するとともに前記流動粒子の前記収容空間からチャンバ部への通過を規制するフィルタ部材を具備したことを特徴とする請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記送風手段の送風量の他、前記冷却風生成手段の駆動により生成される冷却風の温度を制御及び管理し得ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のワークを冷却して熱処理可能な冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製部品(特に、アルミニウム部品)の鋳造品は、鋳造後、機械的性質を向上させるために熱処理を行うのが望ましく、例えばAl−Si−Mg系合金においては共晶点温度より67〜57℃低い510〜520℃程度で加熱し、6〜8時間加熱させた後に冷却水(例えば水温が60〜80℃の冷却水)の中に投入して急冷する容体化処理が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−17413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、ワークを加熱した後、冷却水に投入して冷却する際、ワーク表面に水蒸気膜が発生するのであるが、ワーク形状が複雑な場合、発生した水蒸気がワーク内部に滞留して空気層が形成されてしまう虞があり、冷却水と接触しない部位が生じて冷却にばらつきが生じてしまうという問題があった。このように、ワークに対する冷却のばらつきが生じると、残留応力のばらつきが大きくなって品質が不安定となってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ワークが複雑な形状であっても熱処理時のワークの冷却を均一に行わせることができ、品質を安定させることができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、金属製のワークを冷却して熱処理可能な冷却装置において、流動粒子を所定量収容するとともに、前記ワークを当該流動粒子中に投入し得る流動槽ケースと、該流動槽ケースに空気を送り込むことにより前記流動粒子を前記流動槽ケース内で流動させつつ当該流動粒子を熱媒体として前記ワークを冷却し得る送風手段とを具備し、前記送風手段は、湿度を低下させた冷却風を生成可能な冷却風生成手段と連結されるとともに、当該冷却風生成手段からの湿度が低下した冷却風を前記流動槽ケースに送り込み得るものとされ、前記流動槽ケースに対する送風量が任意調整可能とされるとともに、当該流動槽ケースに投入されるワークに応じて送風量を適宜調整し得る制御手段と、前記収容手段から吹き上げられた前記流動粒子を吸い取り可能とされた集塵手段とを具備したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の冷却装置において、前記流動槽ケース内を、前記流動粒子を収容する収容空間と、前記送風手段からの送風を受けるチャンバ部とに画成し、前記送風手段から送り込まれた空気の前記チャンバ部から収容空間への通過を許容するとともに前記流動粒子の前記収容空間からチャンバ部への通過を規制するフィルタ部材を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の冷却装置において、前記制御手段は、前記送風手段の送風量の他、前記冷却風生成手段の駆動により生成される冷却風の温度を制御及び管理し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、流動粒子を所定量収容するとともに、ワークを当該流動粒子中に投入し得る流動槽ケースと、該流動槽ケースに空気を送り込むことにより流動粒子を流動槽ケース内で流動させつつ当該流動粒子を熱媒体としてワークを冷却し得る送風手段とを具備したので、ワークが複雑な形状であっても熱処理時のワークの冷却を均一に行わせることができ、品質を安定させることができる。
また、送風手段は、冷却風を生成可能な冷却風生成手段と連結されるとともに、当該冷却風生成手段からの冷却風を流動槽ケースに送り込み得るので、外気温が高い場合や必要とされる冷却温度が著しく低い場合であっても、ワークを適切に冷却させることができる。
さらに、送風手段は、流動槽ケースに対する送風量が任意調整可能とされるとともに、当該流動槽ケースに投入されるワークに応じて送風量を適宜調整し得る制御手段を具備したので、より効率的且つ確実なワークの冷却を行わせることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、流動槽ケース内を、流動粒子を収容する収容空間と、送風手段からの送風を受けるチャンバ部とに画成し、送風手段から送り込まれた空気のチャンバ部から収容空間への通過を許容するとともに流動粒子の収容空間からチャンバ部への通過を規制するフィルタ部材を具備したので、流動粒子の流動をより円滑且つ確実に行わせることができ、流動粒子によるワークの冷却をより効率的に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る冷却装置を示す正面図
図2】同冷却装置を示す側面図
図3】同冷却装置を示す平面図
図4】同冷却装置の正面視の内部構成を示す断面図
図5】同冷却装置の側面視の内部構成を示す断面図
図6】本発明の他の実施形態に係る冷却装置を示す正面図
図7】同冷却装置を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る冷却装置1は、金属製のワーク(本実施形態においてはアルミ製の部品)を冷却して熱処理可能なもので、図1〜5に示すように、筐体部6内に形成された流動槽ケース2と、板状のフィルタ部材3と、ブロアから成る送風手段4と、エアーコンディショナーから成る冷却風生成手段5と、集塵手段8と、制御盤から成る制御手段9とを主に有して構成されている。
【0016】
流動槽ケース2は、流動粒子を所定量収容するとともに、ワークを当該流動粒子中に投入し得るもので、図4、5に示すように、フィルタ部材3によって上部が流動粒子を収容する収容空間S1、下部が送風手段4からの送風を受けるチャンバ部S2に画成されている。また、筐体部6の上部には、収容空間S1の上方を覆う蓋部7が取り付けられており、シリンダLによって蓋部7が揺動することにより、収容空間S1を開放及び閉塞可能とされている。
【0017】
流動粒子は、粒状のセラミックス(耐火性の粒状骨材)等から成るもので、本実施形態においてはアルミナ系球状骨材(例えば、Alが72.03重量%、SiOが19.95重量%、Feが2.76重量%、NaOが0.06重量%、CaOが0.40重量%、MgOが0.38重量%、KOが0.89重量%、TiOが3.31重量%の化学成分、pHが7.45、真比重が3.03、かさ比重(粗充填)が1.91、かさ比重(密充填)が2.05の物性とされている)から成る流動粒子が流動槽ケース2の収容空間S1に所定容量(例えば約130kg)収容されている。
【0018】
フィルタ部材3は、流動槽ケース2内を、流動粒子を収容する収容空間S1と、送風手段4からの送風を受けるチャンバ部S2とに画成し、送風手段4から送り込まれた空気のチャンバ部S2から収容空間S1への通過を許容するとともに流動粒子の収容空間S1からチャンバ部S2への通過を規制するものである。具体的には、フィルタ部材3は、微小孔が多数形成された板状部材から成り、当該微小孔は、空気を通過させ得るとともに、流動粒子を通過させない大きさに設定されている。
【0019】
一方、熱処理する対象のワークは、収容かごKに収容され、流動槽ケース2の収容空間S1に投入されるよう構成されている。収容かごKは、図4、5に示すように、収容空間S1内の所定位置に保持されるよう構成されており、蓋部7を開放させた状態で投入及び取り出しが可能とされている。なお、本実施形態においては、熱処理工程における加熱工程及び搬送工程において、同一の収容かごKにワークが収容された状態とされるようになっている。
【0020】
送風手段4は、汎用のブロアから成るもので、流動槽ケース2に空気(本実施形態においては、外気又は冷却風生成手段5からの冷却風)を送り込むことによりチャンバ部S2を介して収容部S1内の流動粒子を流動槽ケース2の収容部S1内で流動させつつ当該流動粒子を熱媒体としてワークを冷却し得るものである。具体的には、送風手段4は、配管H1を介して流動槽ケース2のチャンバ部S2と連結されており、チャンバ部S2を介して収容空間S1に空気を送り込み可能とされている。なお、送風手段4による送風量は、最大1.28m/分とするのが好ましく、このように送風量を大きくすることにより、より激しい流動粒子の流動化を図ることができ、冷却効果をより向上させることができる。
【0021】
しかして、収容空間S1内に空気が送り込まれると、その空気が流動粒子内に取り込まれ、当該収容空間S1内にて流動化し、その一部がワークの表面に触れつつ流動することにより冷却される。すなわち、加熱されたワークが流動粒子内に投入されると、流動粒子を媒体とした伝導による熱移動によってワークの温度低下が素早く行われ、同時に送風手段5からの送風によって流動粒子が流動化することにより冷却がより促進されるので、冷却水の中にワークを投入した場合と同様の熱処理(但し、水蒸気による弊害がない熱処理)を行うことができるのである。
【0022】
冷却風生成手段5は、エアーコンディショナー(所謂エアコン)から成り、配管H2を介して送風手段4の空気取り込み口に連結されている。かかる冷却風生成手段5を駆動させつつ送風手段4を駆動させることにより、冷却風生成手段5で生成された冷却風が送風手段4にて流動槽ケース2に送り込まれ、収容空間S1内の流動粒子を流動化させ得るようになっている。
【0023】
集塵手段8は、送風手段4により流動槽ケース2に空気が送り込まれた際、収容空間S1から吹き上げられた流動粒子を吸い取り可能とされたもので、蓋部7の側方に形成されたカバー部8aを有して構成されている。具体的には、筐体部6における蓋部7の側方には、開口が形成されており、当該開口を介して吹き上げられた流動粒子をカバー部8aにて捕捉した後、集塵手段8にて吸引し得るようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態に係る送風手段4は、流動槽ケース2に対する送風量がインバータ制御により任意調整可能とされるとともに、当該流動槽ケース2に投入されるワークの種類又は状態に応じて送風量を適宜調整し得る制御手段9を具備している。本実施形態に係る制御手段9は、筐体部6の側方に取り付けられた制御盤から成り、送風手段4の送風量の他、例えば冷却風生成手段5の駆動や生成される冷却風の温度等を制御及び管理し得るものとされている。
【0025】
しかるに、上記実施形態に係る冷却装置1によってワーク(Al−Si−Mg系合金)を熱処理して冷却を行ったところ、一定時間内に温度が低下し、規定温度を通過することによって以下に示す必要な機械的性質を得ることができた。例えば、流動粒子によるワークの冷却で得られた硬度及び引っ張り強度は、Al−Si−Mg系合金の規格内に収まるものであった。
【0026】
上記実施形態によれば、流動粒子を所定量収容するとともに、ワークを当該流動粒子中に投入し得る流動槽ケース2と、該流動槽ケース2に空気を送り込むことにより流動粒子を流動槽ケース2内で流動させつつ当該流動粒子を熱媒体としてワークを冷却し得る送風手段4とを具備したので、ワークが複雑な形状であっても熱処理時のワークの冷却を均一に行わせることができ、品質を安定させることができる。
【0027】
また、流動槽ケース2内を、流動粒子を収容する収容空間S1と、送風手段4からの送風を受けるチャンバ部S2とに画成し、送風手段4から送り込まれた空気のチャンバ部S2から収容空間S1への通過を許容するとともに流動粒子の収容空間S1からチャンバ部S2への通過を規制するフィルタ部材3を具備したので、流動粒子の流動をより円滑且つ確実に行わせることができ、流動粒子によるワークの冷却をより効率的に行わせることができる。
【0028】
さらに、本実施形態に係る送風手段4は、冷却風を生成可能な冷却風生成手段5と連結されるとともに、当該冷却風生成手段5からの冷却風を流動槽ケース2に送り込み得るので、外気温が高い場合や必要とされる冷却温度が著しく低い場合であっても、ワークを適切に冷却させることができる。なお、本実施形態に係る冷却風生成手段5は、エアーコンディショナーから成るので、生成される冷却風の湿度を低下させることができ、送風時において流動槽ケース2内の流動粒子の状態を良好に保つことができる。またさらに、本実施形態に係る送風手段4は、流動槽ケース2に対する送風量が任意調整可能とされるとともに、当該流動槽ケース2に投入されるワークの種類又は状態に応じて送風量を適宜調整し得る制御手段9を具備したので、より効率的且つ確実なワークの冷却を行わせることができる。
【0029】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6、7に示すように、流動槽ケース2内の収容空間S1に流動粒子を加熱し得るヒータhを具備した冷却装置1’ものとしてもよい。この場合、ヒータhを作動させつつ送風手段4から空気を送り込むことにより、流動粒子が流動化しつつ熱媒体としてワークを加熱することができるとともに、ヒータhを作動させず送風手段4から空気を送り込むことにより、流動粒子が流動化しつつ熱媒体としてワークを冷却することができる。すなわち、熱処理において、ワークの加熱と冷却をヒータhの作動の有無によって任意選択することができるのである。
【0030】
らに、本実施形態においては、収容かごKにワークを収容させて流動槽ケース2内に投入させるよう構成されているが、ワークを流動槽ケース2内の所定位置に位置決め可能な手段を有していれば、収容かごK等を具備しないものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
流動粒子を所定量収容するとともに、前記ワークを当該流動粒子中に投入し得る流動槽ケースと、該流動槽ケースに空気を送り込むことにより流動粒子を流動槽ケース内で流動させつつ当該流動粒子を熱媒体としてワークを冷却し得る送風手段とを具備し、送風手段は、湿度を低下させた冷却風を生成可能な冷却風生成手段と連結されるとともに、当該冷却風生成手段からの湿度が低下した冷却風を流動槽ケースに送り込み得るものとされ、流動槽ケースに対する送風量が任意調整可能とされるとともに、当該流動槽ケースに投入されるワークに応じて送風量を適宜調整し得る制御手段と、収容手段から吹き上げられた流動粒子を吸い取り可能とされた集塵手段とを具備したことを特徴とする冷却装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1、1’ 冷却装置
2 流動槽ケース
3 フィルタ部材
4 送風手段
5 冷却風生成手段
6 筐体部
7 蓋部
8 集塵手段
9 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7