特許第6445900号(P6445900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6445900-電動パワーステアリング装置 図000002
  • 特許6445900-電動パワーステアリング装置 図000003
  • 特許6445900-電動パワーステアリング装置 図000004
  • 特許6445900-電動パワーステアリング装置 図000005
  • 特許6445900-電動パワーステアリング装置 図000006
  • 特許6445900-電動パワーステアリング装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445900
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/22 20060101AFI20181217BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20181217BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20181217BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20181217BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20181217BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   H02P25/22
   H02P29/024
   B62D5/04
   B62D6/00
   B62D101:00
   B62D119:00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-44425(P2015-44425)
(22)【出願日】2015年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-165174(P2016-165174A)
(43)【公開日】2016年9月8日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 芳洋
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−176215(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/125568(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00466672(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/22
B62D 5/04
B62D 6/00
H02P 29/024
B62D 101/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによって操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置であって、
前記電動モータを第1スイッチ素子群の選択的なスイッチングにより駆動する第1のモータ駆動回路と、前記電動モータを前記第1スイッチ素子群と同一回路構成の第2スイッチ素子群の選択的なスイッチングにより駆動する第2のモータ駆動回路と、前記第1、第2のモータ駆動回路を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、イグニッションスイッチのオンによる前記電動パワーステアリング装置の起動時に、前記第1スイッチ素子群と前記第2スイッチ素子群を選択的に駆動し、駆動状態に応じて前記スイッチ素子を流れる電流を電流検出抵抗により検出することで、推定される電流と実際の検出信号とに基づいて初期診断を行い、第1及び第2のモータ駆動回路が異常なしと判定されると、これら第1及び第2のモータ駆動回路で前記電動モータを駆動して、前記第1スイッチ素子群と前記第2スイッチ素子群の対応するスイッチ素子を異なる位相の信号でスイッチング制御して前記電動モータを駆動する、ことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記制御装置は更に、前記第1、第2のモータ駆動回路の一方が故障した場合に、他方のモータ駆動回路で前記電動モータを駆動して前記操舵力のアシストを継続させることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記第1のモータ駆動回路は、前記第1スイッチ素子群を有する第1インバータ回路と、前記第1スイッチ素子群を選択的にオン/オフ制御する第1プリドライバとを含み、前記第2のモータ駆動回路は、前記第2スイッチ素子群を有する第2インバータ回路と、前記第2スイッチ素子群を選択的にオン/オフ制御する第2プリドライバとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1、第2プリドライバを制御するマイクロコンピュータを備えることを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1プリドライバを制御する第1マイクロコンピュータと、この第1マイクロコンピュータと連携し、前記第2プリドライバを制御する第2マイクロコンピュータとを備えることを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータによって操舵力をアシストする電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EPS装置においては、安全性や操作性の向上を図るため、一次故障が発生してもアシストを継続することが望まれる。この要求に応える冗長化技術として、例えば特許文献1に、電動モータのモータ巻線を二重化し、このモータ巻線に対して個別のインバータ回路から電流を供給する多相回転機の制御装置を用いた電動パワーステアリング装置が開示されている。特許文献1では、インバータ回路のスイッチ素子にオープン故障が生じた場合に、故障していないスイッチ素子を制御するとともに、正常なインバータ回路を制御することでトルクの低下を抑制しつつアシストを継続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4998836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同一構成の複数のインバータ回路を用いて電動モータを駆動すると、各インバータ回路中の対応する複数のスイッチ素子のスイッチングが同時になる。複数のスイッチ素子が同時にオン/オフすると、電圧変動によるスイッチングノイズが重畳されて大きくなり、EMC(Electromagnetic Compatibility)性能の悪化が懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、同一構成の複数のインバータ回路を用いて電動モータを駆動する場合に、EMC性能の低下を抑制できる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電動モータによって操舵力をアシストする電動パワーステアリング装置であって、前記電動モータを第1スイッチ素子群の選択的なスイッチングにより駆動する第1のモータ駆動回路と、前記電動モータを前記第1スイッチ素子群と同一回路構成の第2スイッチ素子群の選択的なスイッチングにより駆動する第2のモータ駆動回路と、前記第1、第2のモータ駆動回路を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、イグニッションスイッチのオンによる前記電動パワーステアリング装置の起動時に、前記第1スイッチ素子群と前記第2スイッチ素子群を選択的に駆動し、駆動状態に応じて前記スイッチ素子を流れる電流を電流検出抵抗により検出することで、推定される電流と実際の検出信号とに基づいて初期診断を行い、第1及び第2のモータ駆動回路が異常なしと判定されると、これら第1及び第2のモータ駆動回路で前記電動モータを駆動して、前記第1スイッチ素子群と前記第2スイッチ素子群の対応するスイッチ素子を異なる位相の信号でスイッチング制御して前記電動モータを駆動する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、同一構成の第1、第2のモータ駆動回路で電動モータを駆動する際に、第1、第2スイッチ素子群中の対応するスイッチ素子のオン/オフタイミングをずらして同時にスイッチングさせないようにできる。これによって、第1、第2のモータ駆動回路におけるスイッチ素子から発生するスイッチングノイズを小さくしてEMI(Electromagnetic Interference)対策を行うことができ、EMC性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図2図1における電動モータとモータ制御装置の回路図である。
図3図1に示した電動パワーステアリング装置の起動時の動作を示すフローチャートである。
図4図1に示した電動パワーステアリング装置の起動中の動作を示すフローチャートである。
図5図2に示した回路における電動モータの駆動コイルに供給される駆動信号の波形図である。
図6図2に示したモータ制御装置の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、EPS装置の概略構成を示しており、この装置はステアリングホイール10、操舵トルク検出センサ11、アシスト用の電動モータ12及びモータ制御装置13などを含んで構成されている。また、ステアリングシャフト14を内包するステアリングコラム15内には、上記操舵トルク検出センサ11及び減速機16が設けられている。
【0010】
そして、車両の運転者がステアリング操作を行う際に、ステアリングシャフト14に発生する操舵トルクを操舵トルク検出センサ11によって検出し、操舵トルク信号S1と車速信号S2などに基づいて、モータ制御装置13で電動モータ12を駆動制御することにより、電動モータ12から走行状態に応じたステアリングアシスト力を発生させる。これによって、ステアリングシャフト14の先端に設けられたピニオンギア17が回転すると、ラック軸18が進行方向左右に水平移動することで、運転者のステアリング操作が車輪(タイヤ)20に伝達されて車両の向きを変える。
【0011】
次に、アシスト用の電動モータ12とモータ制御装置13について図2により説明する。電動モータ12は、3相モータであり第1系統のU相コイルUa、V相コイルVa及びW相コイルWaと、第2系統のU相コイルUb、V相コイルVb及びW相コイルWbとを備え、それぞれが第1系統のモータ駆動回路21aと第2系統のモータ駆動回路21bで個別に駆動可能に構成されている。モータ駆動回路21aはインバータ回路22aとプリドライバ23aを含み、モータ駆動回路21bはインバータ回路22bとプリドライバ23bを含み、両モータ駆動回路21a,21bが制御装置として働くマイクロコンピュータ(CPU)24によって制御される。
【0012】
インバータ回路22aは、駆動ライン25U,25V,25Wを介して電動モータ12のU相,V相及びW相をそれぞれ相毎に駆動する3組のスイッチ素子を備えた3相ブリッジ回路構成である。本例では、各スイッチ素子がNチャネル型MOSFET31〜36で構成されている。
【0013】
MOSFET31,32は、バッテリBAに接続された電源ライン37と電流検出抵抗38の一端間にドレイン・ソース間が直列接続され、共通接続点に駆動ライン25Uの一端が接続される。MOSFET33,34は、電源ライン37と電流検出抵抗38の一端間にドレイン・ソース間が直列接続され、共通接続点に駆動ライン25Vの一端が接続される。また、MOSFET35,36は、電源ライン37と電流検出抵抗38の一端間にドレイン・ソース間が直列接続され、共通接続点に駆動ライン25Wの一端が接続されている。電流検出抵抗38の他端は接地され、MOSFET31〜36の電流通路を流れる電流を検出してマイクロコンピュータ24に検出信号S3を供給する。
ここで、各MOSFET31〜36におけるソース・ドレイン間に順方向に接続されているダイオードD1〜D6は寄生ダイオードである。
【0014】
プリドライバ23aは、インバータ回路22aにおける上流側駆動素子(上アーム)であるMOSFET31,33,35にそれぞれ対応するH側ドライバと、下流側駆動素子(下アーム)であるMOSFET32,34,36にそれぞれ対応するL側ドライバを備えている。これらH側ドライバとL側ドライバには、バッテリBAから電源電圧が供給される。各H側ドライバの出力端にはそれぞれ、MOSFET31,33,35のゲートが接続されて選択的にオン/オフ制御され、各L側ドライバの出力端にはそれぞれ、MOSFET32,34,36のゲートが接続されて選択的にオン/オフ制御される。
【0015】
インバータ回路22bは、インバータ回路22aと同一回路構成であり、駆動ライン26U,26V,26Wを介して電動モータ12のU相,V相及びW相をそれぞれ相毎に駆動する3組のスイッチ素子を備えた3相ブリッジ回路構成である。本例では、各スイッチ素子がNチャネル型MOSFET41〜46で構成されている。
【0016】
MOSFET41,42は、バッテリBAに接続された電源ライン37と電流検出抵抗48の一端間にドレイン・ソース間が直列接続され、共通接続点に駆動ライン26Uの一端が接続される。MOSFET43,44は、電源ライン37と電流検出抵抗48の一端間にドレイン・ソース間が直列接続され、共通接続点に駆動ライン26Vの一端が接続される。また、MOSFET45,46は、電源ライン37と電流検出抵抗48の一端間にドレイン・ソース間が直列接続され、共通接続点に駆動ライン26Wの一端が接続されている。電流検出抵抗48の他端は接地され、MOSFET41〜46の電流通路を流れる電流を検出してマイクロコンピュータ24に検出信号S4を供給する。
ここで、各MOSFET41〜46におけるソース・ドレイン間に順方向に接続されているダイオードD7〜D12は寄生ダイオードである。
【0017】
プリドライバ23bは、インバータ回路22bにおける上流側駆動素子(上アーム)であるMOSFET41,43,45にそれぞれ対応するH側ドライバと、下流側駆動素子(下アーム)であるMOSFET42,44,46にそれぞれ対応するL側ドライバを備えている。これらH側ドライバとL側ドライバには、バッテリBAから電源電圧が供給される。各H側ドライバの出力端にはそれぞれ、MOSFET41,43,45のゲートが接続されて選択的にオン/オフ制御され、各L側ドライバの出力端にはそれぞれ、MOSFET42,44,46のゲートが接続されて選択的にオン/オフ制御される。
【0018】
マイクロコンピュータ24には、操舵トルク信号S1、車速信号S2及び電流検出抵抗38,48の検出信号S3,S4などが入力され、モータ駆動回路21a,21bを制御して電動モータ12を駆動することにより、電動モータ12から車両の走行状態に応じたステアリングアシスト力を発生させる。
【0019】
次に、上記のような構成において、図3及び図4のフローチャートにより図1に示した電動パワーステアリング装置の動作を説明する。図3に示すように、イグニッションスイッチのオン(S11)をマイクロコンピュータ24が検出するとEPS装置が起動する(S12)。まず、マイクロコンピュータ24によってモータ駆動回路21a,21bの初期診断が行われ(S13)、回路異常の有無が判定される(S14)。初期診断では、例えばMOSFET31〜36,41〜46を選択的に駆動し、駆動状態に応じてMOSFETを流れる電流を電流検出抵抗38,48により検出することで、推定される電流と実際の検出信号S3,S4とに基づいて異常の有無が判定される。2つのモータ駆動回路21a,21bが異常なしと判定されると、これらモータ駆動回路21a,21bでアシスト用の電動モータ12を駆動して操舵力のアシストを行う(S15)。
【0020】
2つのモータ駆動回路21a,21bを用いる通常アシスト状態では(S16)、マイクロコンピュータ24は、プリドライバ23a,23bに、例えばパルス幅変調信号(PWM信号)を出力する。プリドライバ23a,23b中の各H側ドライバとL側ドライバはそれぞれ、PWM信号に基づいて、インバータ回路22a中の各MOSFET31〜36のゲートにそれぞれPWM信号に基づく駆動信号を供給して選択的にオン/オフ制御する。電動モータ12を駆動ライン25U,25V,25Wを介してモータ駆動回路21aで3相駆動するとともに、駆動ライン26U,26V,26Wを介してモータ駆動回路21bで3相駆動する。そして、必要に応じてPWM信号のデューティを可変し、電動モータ12の出力トルクを制御することでアシスト力を変化させる。
【0021】
この際、第1スイッチ素子群であるMOSFET31〜36と、第2スイッチ素子群であるMOSFET41〜46の対応するMOSFETが同時にスイッチングしないように、位相のずれた信号を供給してオン/オフ制御する。図5(a)に示すように、例えば第1系統のU相コイルUa、V相コイルVa及びW相コイルWaにそれぞれ、位相が120°ずれた電圧を印加する場合に、第2系統のU相コイルUb、V相コイルVb及びW相コイルWbにそれぞれ、図5(b)に示すような第1系統のU相コイルUa、V相コイルVa及びW相コイルWaと逆相の電圧を印加して電動モータ12を駆動する。
【0022】
このようにすることで、2つのモータ駆動回路21a,21bで電動モータ12を駆動する際に、MOSFET31〜36,41〜46中の対応するMOSFETのオン/オフタイミングをずらして同時にオン/オフさせないようにできる。従って、モータ駆動回路21a,21bにおけるMOSFETのスイッチングノイズを小さくしてEMI対策を行うことができ、EMC性能の低下を抑制できる。
【0023】
一方、ステップS14で回路異常有りと判定された場合には、マイクロコンピュータ24で1つのモータ駆動回路のみが異常か否かを判定する(S17)。そして、モータ駆動回路21a,21bの一方に故障が検出されると、故障していない他方のモータ駆動回路で電動モータ12を駆動して操舵力のアシストを継続させる(S18)。このアシスト制限状態では、アシストトルクは半分程度になる(S19)。
【0024】
ステップS17で両モータ駆動回路21a,21bに回路異常有りと判定された場合には、電動モータ12の駆動を停止し(S20)、アシスト停止状態とする(S21)。
なお、アシスト制限状態やアシスト停止状態になったときには、マイクロコンピュータ24は、モータ駆動回路21aまたは21bが故障していることを、警告ランプやブザー等により車両の運転者に報知して修理を促すようにする。
【0025】
次に、図4のフローチャートに示すように、EPS装置が起動中の場合には(S31)、初期診断に代えて常時診断を行う(S32)。常時診断では、電流検出抵抗38,48による検出信号S3,S4に加えて、例えば操舵トルク信号S1と車速信号S2を用い、これらの信号S1,S2に基づいてアシストトルクを算出する。この算出したアシストトルクが得られるようにモータ駆動回路21a,21bを制御し、PWM信号のデューティを可変して電動モータ12を駆動することにより、電動モータ12から走行状態に応じたステアリングアシスト力を発生させる。回路異常の有無や、1つの回路の異常か2つの回路の異常かなどに応じた各アシスト状態(通常アシスト状態、アシスト制限状態、アシスト停止状態)の制御は、上述した起動時と同様である。そして、イグニッションスイッチがオフになるまでステップS32からS40の動作を繰り返す。
【0026】
上記のような構成によれば、通常動作時(複数のインバータ回路を用いて電動モータを駆動する場合)には同一回路構成のMOSFET31〜36とMOSFET41〜46における対応するMOSFETを異なる位相の信号でスイッチング制御し、MOSFETのオン/オフタイミングをずらすことができる。また、一次故障が発生したときには、故障していない方のモータ駆動回路でトルクをほぼ半分に下げてアシストを継続できる。
【0027】
従って、インバータ回路中のMOSFETがオン/オフするタイミングを分散させることでEMI対策を行うことができ、EMC性能の低下を抑制できる。また、一次故障が発生した場合に、EPS装置のアシストが急停止してステアリング操作が急に重くなるのを抑制できるので、安全性や操作性の向上を図れる。しかも、通常動作時に、2つのモータ駆動回路21a,21bで電動モータ12を駆動するので、モータ駆動回路21a,21bを構成する各素子の定格が低くても良く、コストの低減も図れる。
【0028】
図6は、図2に示したモータ制御装置の変形例を示している。図2では2つのモータ駆動回路21a,21bを1つのマイクロコンピュータ24で制御するようにした。これに対し、本変形例では制御装置として2系統のマイクロコンピュータ24a,24bを設け、マイクロコンピュータ24aでプリドライバ23aを制御し、マイクロコンピュータ24bでプリドライバ23bを制御するようにしている。これらマイクロコンピュータ24a,24bにはそれぞれ、操舵トルク信号S1、車速信号S2及び電流検出抵抗38,48の検出信号S3,S4などが入力され、相互にデータの授受を行い、連携してモータ駆動回路21a,21bを制御するようにしている。
【0029】
このようなモータ制御装置の構成であっても、基本的には図2に示したモータ制御装置と同様な動作を行うことができ、実質的に同じ作用効果が得られる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。例えば、第1系統と第2系統のモータ駆動回路から出力される信号の位相が逆相の場合(180°ずらす場合)を例に取って説明したが、第1、第2スイッチ素子群中の対応するスイッチ素子が同時にオンまたはオフしなければ良いので、信号の位相をずらすだけでも良い。
【0031】
また、2つのモータ駆動回路で電動モータを駆動する場合について説明したが、3つ以上のモータ駆動回路で電動モータを駆動するモータ制御装置にも同様にして適用できるのはもちろんである。
更に、マイクロコンピュータに、電流検出抵抗の検出信号を入力してモータ駆動回路の診断動作を制御するようにしたが、これに加えて車両の周囲温度やモータ制御装置の基板温度などを考慮するようにしても良い。
更にまた、スイッチ素子が電界効果トランジスタを例に取ったが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他の半導体素子でも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
12…電動モータ、13…モータ制御装置、21a,21b…モータ駆動回路、22a,22b…インバータ回路、23a,23b…プリドライバ、24,24a,24b…マイクロコンピュータ(制御装置)、31〜36…MOSFET(第1スイッチ素子群)、41〜46…MOSFET(第2スイッチ素子群)
図1
図2
図3
図4
図5
図6