(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医療施設のなかでも、手術室やICU(集中治療室)では、患者に対して複数の輸液が必要とされ、患者ベッドの周囲には複数の輸液ポンプが配置される。
近年、これら複数の輸液ポンプは、それぞれ医療施設の院内ネットワークに接続され、各々の設定および動作状態が、統合的に管理されるようになっている。
【0007】
ただし、前述した手術室やICUにおいては、しばしば患者の状態に応じて、緊急で輸液状態の変更などを行う必要が生じる。
このような応急的な変更については、看護師等のスタッフが、ポンプを手動操作することで対応していた。具体的には、スタッフが、複数の輸液ポンプの中から該当するポンプを選択し、その設定等を手動操作により変更していた。
【0008】
しかし、複数の輸液ポンプの中から、変更すべきポンプを選択する際に、スタッフが誤認する可能性が避けられない。
とくに、複数の輸液ポンプは、外観が同じ機器が用いられている可能性が高く、同じような配置で用いられていることも多い。さらには、輸液ポンプに表示される設定値が類似の数値になっていることもあり、とくに緊急対応が要求される状況ではさらに誤認の可能性が懸念される。
このような状況下でも、スタッフが正しい輸液ポンプを確実に選択できるようにすることが要求されていた。
【0009】
ここで、誤操作を防止する一般的な技術としては、特許文献3、特許文献4および特許文献5などが知られている。
しかし、これらはいずれも一般的な機器の誤操作防止や、情報処理端末の誤操作防止、あるいはデータ処理での同一氏名あるいは類似氏名の誤認防止に関するものであり、医療用の輸液ポンプの誤認防止に十分なものではなかった。
【0010】
本発明の目的は、複数の輸液ポンプのいずれかを設定変更する際の誤操作を防止できる、輸液ポンプ誤操作防止システムおよび
輸液ポンプ誤操作防止
システムの作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の輸液ポンプ誤操作防止システムは、複数の輸液ポンプと、前記複数の輸液ポンプと相互に通信可能な制御装置とを有する輸液ポンプ誤操作防止システムであって、前記制御装置は、前記輸液ポンプの状態を監視し、前記輸液ポンプに対する設定変更の操作を検出可能なポンプ監視部と、予め設定された類似性判定ルールに基づいて、操作された前記輸液ポンプに類似する他の前記輸液ポンプを調査し、類似する前記輸液ポンプがあれば誤操作の可能性ありと判定する誤操作判定部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の輸液ポンプ誤操作防止システムにおいて、
前記類似性判定ルールは、前記輸液ポンプに設定された設定値の類似性に関する設定類似性と、前記輸液ポンプの機器の類似性に関する機器類似性と、前記輸液ポンプの配置の類似性に関する配置類似性と、前記輸液ポンプで送液される薬剤の類似性に関する薬剤類似性のうち少なくとも一つ
に関する判定ルールであることが好ましい。
【0013】
設定類似性は、例えば、複数のポンプで、各々の設定流量の数値が視覚的に類似あるいは同一であり、各々の操作パネルに表示される数値が誤認し易い、などである。
機器類似性は、例えば、複数のポンプが同一製品である、あるいは外観が類似している、などである。
配置類似性は、例えば、複数のポンプが隣り合って設置されている、ベッドの同じ側など設置場所が類似している、同じラック内に収容されている、などである。
薬剤類似性は、例えば、輸液する薬剤の名称や効能が類似している、などである。
これらの各類似性においては、それぞれ類似の程度を示す類似度を定めておくことができる。
【0014】
このような本発明では、輸液ポンプの一つに設定変更の操作が検出されると、この操作がポンプ監視部で検出され、誤操作判定部による誤操作の判定が行われる。
誤操作判定部は、操作された輸液ポンプについて、類似性判定ルールに基づいて類似と判定されるポンプ、つまり誤操作の可能性があるポンプを調査する。
誤操作判定部で誤操作の可能性があるポンプが検出されなければ、変更された設定で輸液が継続される。一方、誤操作の可能性が判定されれば、警告表示などの対応を行うことができる。
【0015】
必要な警報の表示としては、操作したポンプおよび類似するポンプの表示部で、点滅などの表示、色違いの表示、メッセージの表示、チャイムなどの鳴動を行うほか、これらのポンプが設置されたベッドのベッドサイドモニタに表示してもよく、あるいはネットワーク等を介して制御装置と接続された他の表示装置に表示してもよい。
従って、本発明によれば、複数の輸液ポンプのいずれかを、スタッフが設定変更する際の誤操作を防止することができる。
【0016】
本発明の輸液ポンプ誤操作防止システムにおいて、前記複数の輸液ポンプと前記制御装置は、それぞれ医療施設の院内ネットワークに接続されていることが好ましい。
このような本発明では、例えば複数の輸液ポンプおよび制御装置が使われている1つの病室内だけでなく、ナースステーションなど他の部屋でも警報を表示することができる。
【0017】
本発明の輸液ポンプ誤操作防止システムにおいて、前記制御装置は、さらに、操作された前記輸液ポンプに設定された薬剤の情報に基づいて、誤操作が行われた際の危険度を判定する危険度判定部を有することが好ましい。
【0018】
このような本発明では、誤操作の可能性がある類似する輸液ポンプの表示に加えて、輸液ポンプで輸液される薬剤の組み合わせに基づいて危険度を判定することができる。とくに、危険度を数値あるいは段階的に表すことで、重大事故に繋がりかねない危険度大の状況を強調表示等することで、危険回避に有効である。
危険度が大きい場合の対応としては、類似性の警告を更に強調することに加え、該当するポンプの輸液一時停止などの動作をも含めることができる。
【0019】
本発明の輸液ポンプ誤操作防止
システムの作動方法は、複数の輸液ポンプと、前記複数の輸液ポンプと相互に通信可能な制御装置とを有する
輸液ポンプ誤操作防止システムの作動方法であって、
前記制御装置に前記輸液ポンプに関する類似性判定ルールを設定しておき、
前記制御装置が、前記輸液ポンプの一つに操作を検出した際に、前記類似性判定ルールに基づいて、操作された前記輸液ポンプに類似する他の前記輸液ポンプを調査し、類似する前記輸液ポンプがあれば誤操作の可能性ありと判定することを特徴とする。
【0020】
このような本発明の方法では、前述した本発明の輸液ポンプ誤操作防止システムと同様な作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1から
図5には、本発明の第1実施形態が示されている。
図1において、医療施設には院内ネットワーク1が設置されているとともに、ベッドの周囲に複数の輸液ポンプ10が設置されている。
輸液ポンプ10は、制御部11、駆動部12、センサ部13を有するとともに、操作部14、表示部15、通信部16を有する。
【0023】
制御部11は、輸液ポンプ10の動作制御を行うものであり、組み込み用の小型コンピュータシステムで構成される。
駆動部12は、輸液用配管(図示省略)に接続されて薬液の駆動を行なう部分であり、小型のポンプ装置などで構成される。
センサ部13は、輸液用配管あるいは駆動部12に接続されて、輸液速度などの状態量を検出して制御部11に送信する。
【0024】
操作部14は、輸液ポンプ10の表面パネルに設置され、医療スタッフが外部操作することで、制御部11に対して輸液量ほかの設定を行う。
表示部15は、輸液ポンプ10の表面パネルに設置され、制御部11の制御により数値あるいは画像の表示を行う。
通信部16は、制御部11が外部通信を行うためのインターフェイスであり、院内ネットワーク1に接続されている。
【0025】
輸液ポンプ10は、ベッド周辺に個別に設置されるほか、ベッドサイドに設置されたラック20に複数収納されて用いられる。
ラック20は、制御部21、通信部22、ポンプ接続部23を有する。
【0026】
制御部21は、ラック20の動作制御を行うものであり、組み込み用の小型コンピュータシステムで構成される。
通信部22は、制御部21が外部通信を行うためのインターフェイスであり、院内ネットワーク1に接続されている。
【0027】
ポンプ接続部23は、制御部21とラック20に収納された複数の輸液ポンプ10とを接続するインターフェイスである。
前述した通り、単体使用される輸液ポンプ10では、通信部16が院内ネットワーク1に直接接続されていた。一方、ラック20に収容された輸液ポンプ10では、通信部16はポンプ接続部23に接続され、制御部21および通信部22を介して院内ネットワーク1に接続される。
【0028】
このように、複数の輸液ポンプ10であっても、院内ネットワーク1に対する接続はラック20との接続に一本化することができる。しかし、ラック20に収納された輸液ポンプ10も単体使用される輸液ポンプ10も、接続経路が相違するだけであって、機能的には同等である。
【0029】
〔制御装置30の構成〕
院内ネットワーク1には制御装置30が接続され、この制御装置30により本発明に基づく輸液ポンプ誤操作防止システムが構成されている。
制御装置30は、制御部31および通信部32を有する。
制御部31は、小型コンピュータシステムで構成され、制御装置30の動作制御を行うとともに、後述する本発明に基づく誤操作防止手順を実行する。
通信部32は、制御部31が外部通信を行うためのインターフェイスであり、院内ネットワーク1に接続され、この院内ネットワーク1を介して、前述した単独使用される複数の輸液ポンプ10およびラック20に収納された複数の輸液ポンプ10と相互に通信が可能である。
【0030】
制御部31は、ポンプ監視部41、誤操作判定部42、類似性判定部43、危険度判定部44、ポンプ状態データベース45、類似性判定ルールデータベース46、薬剤情報データベース47を有する。
このうち、ポンプ監視部41、誤操作判定部42、類似性判定部43、危険度判定部44は、制御部31において実行されるソフトウェアにより実現される。
【0031】
ポンプ監視部41は、輸液ポンプ10(単独使用される複数の輸液ポンプ10およびラック20に収納された複数の輸液ポンプ10)の監視を行い、各々に設定された薬液や流量などの情報を取得する。ポンプ監視部41で取得した輸液ポンプ10の情報は、ポンプ状態データベース45に記録される。
【0032】
ポンプ監視部41は、複数の輸液ポンプ10を常時監視しており、そのいずれかにスタッフによる設定変更の操作があった場合、その設定変更の内容とともに検出することができる。
ポンプ監視部41は、輸液ポンプ10のいずれかに設定変更の操作があった際に、誤操作判定部42を起動し、誤操作判定の処理を実行させる。
【0033】
誤操作判定部42は、ポンプ状態データベース45に記録された輸液ポンプ10の情報に対し、類似性判定ルールデータベース46に記録された類似性判定ルールを参照して、輸液ポンプ10の間の類似性を判定する。
誤操作判定部42は、操作された輸液ポンプ10に類似性がある他の輸液ポンプ10があると判定した際に、危険度判定部44を起動し、危険度判定の処理を実行させる。
【0034】
危険度判定部44は、ポンプ状態データベース45に記録された輸液ポンプ10の情報に対し、薬剤情報データベース47に記載された情報を参照して、輸液ポンプ10で輸液される薬剤の間の危険度(例えば同時に輸液すると生じる好ましくない影響など)を判定する。
【0035】
〔データ構成〕
一方、ポンプ状態データベース45、類似性判定ルールデータベース46、薬剤情報データベース47は、制御部31のメモリ上に構成され、あるいは制御部31に接続された記憶デバイス上に保持されるものとされる。これらは、院内ネットワーク1を介して接続される外部の記憶領域に記憶されるものでもよい。
【0036】
ポンプ状態データベース45には、ポンプ監視部41で取得された輸液ポンプ10の個別情報が記録される。
類似性判定ルールデータベース46には、誤操作判定部42が類似性判定を行う基準となる類似性判定ルールが記録されている。
薬剤情報データベース47には、危険度判定部44が複数の輸液ポンプ10で輸液される薬液の間の危険性を判定する基準となる情報が記録されている。
【0037】
図2には、ポンプ状態データベース45に記録された輸液ポンプ10の個別情報の一例が示されている。
ポンプ状態データベース45には、ポンプID451、設定流量452、機器ID453、配置ID454、薬剤ID455の各フィールドが設定されている。
【0038】
ポンプID451は、ポンプ状態データベース45に記録される輸液ポンプ10ごとのレコードを識別する情報であり、院内ネットワーク1内でユニークなコードが割り当てられている。本実施形態では、例えば「P11」「P12」が付与されている。
【0039】
設定流量452は、輸液ポンプ10に設定された輸液流量の目標数値であり、例えば、ポンプ「P11」の設定流量「3.0ml/h」が記録される。
機器ID453は、輸液ポンプ10の機器を特定するコードであり、例えば「A社1型」「B社1型」などのコードとされる。
【0040】
配置ID454は、輸液ポンプ10の配置つまり設置場所や空間的な関係を特定するコードであり、例えば「ベッド右」「ベッド左」あるいは「ラック1段目」などのコードとされる。
薬剤ID455は、輸液ポンプ10に設定された薬剤(輸液ポンプ10が輸液する薬剤)を特定するコードであり、例えば「M剤」「N剤」などのコードとされる。
【0041】
〔類似性判定ルール〕
図3には、類似性判定ルールデータベース46に記録された類似性判定ルールの一例が示されている。
本実施形態では、流量についての設定類似性、輸液ポンプ10の機器類似性、配置類似性、輸液する薬剤についての薬剤類似性を判定する。
このために、類似性判定ルールデータベース46には、設定類似性テーブル460、機器類似性テーブル470、配置類似性テーブル480、薬剤類似性テーブル490が含まれている。
【0042】
設定類似性テーブル460には、項目ID461、類似項目ID462、類似度463、類似性コメント464の各フィールドが設定されている。
【0043】
項目ID461は、輸液ポンプ10に設定されるパラメータなどを特定するコードであり、例えば「流量」あるいは「輸液間隔」などとされる。
類似項目ID462には、類似と判定する基準が指定されており、例えば「同一数値」「先頭文字が同じ」「先頭文字が類似」などである。
【0044】
すなわち、「流量」などの主な設定値は、輸液ポンプ10の表面の操作パネルに表示される。スタッフが設定変更を行うために輸液ポンプ10を操作する場合、例えば「3.0ml/h」を「3.1ml/h」に変更する時には、流量の表示が「3.0」となっている輸液ポンプ10を操作対象と認識する。
しかし、同じ「3.0」と表示される他のポンプがあった場合、このポンプと誤認し、その操作が誤操作となる可能性がある。
また、「8.0」あるいは「6.0」という表示は、視覚的に「3.0」に類似しており、やはり誤操作の可能性がある。
従って、これらの誤認を防止するために、類似性を警告することが有効である。
【0045】
類似度463には、前述した「流量」などの設定の類似性についての相関度合いが設定される。例えば、前述した「流量」が同じ数字の場合、誤認が発生し易いといえるので類似度ランク「5」が設定され、「3」「8」「6」などの数字については類似性が下がるので類似度ランク「1」などと設定しておくことで、類似性判断の重み付けなどに利用することができる。
【0046】
類似性コメント464には、データメンテナンス時等に参照できるように、前述した項目ID461、類似項目ID462、類似度463の設定についてのコメントが記録される。
【0047】
機器類似性テーブル470には、機器ID471、類似機器ID472、類似度473、類似性コメント474の各フィールドが設定されている。
機器ID471は、輸液ポンプ10として利用される機器を特定するコードであり、例えば「A社1型」「B社1型」などのコードとされる。機器ID471のコードは、ポンプ状態データベース45における機器ID453と共通である。
【0048】
類似機器ID472には、機器ID471の機器と類似する機器の機器IDが記録される。
類似度473には、類似機器ID472に指定された機器の類似性についての相関度合いが設定される。
類似性コメント474には、類似機器ID472に記録された機器について、データメンテナンス時等に参照できるように、類似性についてのコメントが記録される。
【0049】
例えば、機器ID471の機器「A社1型」は、類似機器ID472で「A社3型」と類似性ありとされており、その類似とされた属性は、類似性コメント474により「外観が類似」であることが解る。類似度473には、これらの類似性が「4」であることが記録される。
【0050】
配置類似性テーブル480には、配置ID481、類似配置ID482、類似度483、類似性コメント484の各フィールドが設定されている。
配置ID481は、輸液ポンプ10の配置つまり設置場所や空間的な関係を特定するコードであり、例えば「ベッド左」「ベッド右」とされる。配置ID481のコードは、ポンプ状態データベース45における配置ID454と共通である。
【0051】
類似配置ID482には、配置ID481と類似する配置(誤認しやすい配置)の配置IDが記録されている。
類似度483には、類似配置ID482に指定された配置の類似性についての相関度合いが設定される。
類似性コメント484には、類似配置ID482に記録された配置について、データメンテナンス時等に参照できるように、類似性についてのコメントが記録される。
【0052】
例えば、配置ID481の配置「ラック2段目」は、類似配置ID482で「ラック1段目」および「ラック3段目」と類似性ありとされており、その類似とされた属性は、類似性コメント484によれば「上下に隣接する」である。類似度483には、これらの類似性が「5」であることが記録される。
【0053】
薬剤類似性テーブル490には、薬剤ID491、類似薬剤ID492、類似度493、類似性コメント494の各フィールドが設定されている。さらに、誤操作した際の危険度495、危険度コメント496の各フィールドが設定されている。
薬剤ID491は、輸液ポンプ10で輸液される薬剤を特定するコードであり、例えば「M剤」「N剤」とされる。薬剤ID491のコードは、ポンプ状態データベース45における薬剤ID455と共通である。
【0054】
類似薬剤ID492には、薬剤ID491と類似する薬剤(名称や包装、効能、型番やメーカー名などが誤認しやすい薬剤)の薬剤IDが記録されている。
類似度493には、類似薬剤ID492に指定された薬剤の類似性についての相関度合いが設定される。
類似性コメント494には、類似薬剤ID492に記録された薬剤について、データメンテナンス時等に参照できるように、類似性についてのコメントが記録される。
例えば、薬剤ID491の薬剤「M剤」は、類似薬剤ID492で「N剤」と類似性ありとされており、その類似とされた属性は、類似性コメント494によれば「名称が類似」である。類似度493には、これらの類似性が「3」であることが記録される。
【0055】
危険度495には、薬剤ID491の薬剤と類似薬剤ID492の薬剤とを組み合わせた場合の好ましくない影響の程度が記録されている。
危険度コメント496には、データメンテナンス時等に参照できるように、危険度495を設定した理由等が記録される。
例えば、薬剤ID491の薬剤「M剤」は、類似薬剤ID492で「N剤」と類似性ありとされており、誤認の可能性がある。そして、「M剤」と「N剤」とを誤認して投与した場合、危険度コメント496にあるように「血圧に逆効果」であることから、危険度495では「5」と設定されたことが解る。
【0056】
〔第1実施形態の動作〕
本実施形態における動作について説明する。
本実施形態においては、予めポンプ情報の取得処理(
図4参照)を行い、輸液ポンプ10についての情報を取得しておく。続いて、複数の輸液ポンプ10による輸液を開始し、その間に何れかの輸液ポンプ10に設定変更があるかを監視するポンプ操作の監視処理(
図5参照)を継続する。
【0057】
図4において、制御装置30でポンプ情報の取得処理を開始すると、ポンプ監視部41が院内ネットワーク1に接続されている輸液ポンプ10を検索し(処理S41)、各々の情報を取得してポンプ状態データベース45に順次登録してゆく(処理S42)。
【0058】
院内ネットワーク1に接続されている輸液ポンプ10の全てについて、ポンプ状態データベース45の各フィールドの情報が記録できたら、ポンプ情報の取得処理が終了する(処理S43)。
このようなポンプ状態データベース45が準備できたら、輸液ポンプ10の稼働を開始し、ポンプ操作の監視処理(
図5参照)を実行する。
【0059】
図5において、輸液ポンプ10の稼働を開始すると、制御装置30は、ポンプ監視部41により、それぞれの輸液ポンプ10の動作状態を監視する(処理S51)。
ポンプ監視部41は、輸液ポンプ10の輸液動作が当初の設定のまま継続していれば、監視を繰り返す(処理S52)。
【0060】
ここで、いずれかの輸液ポンプ10に外部操作が行われ、その設定(流量や薬剤)が変更された際には、設定変更された輸液ポンプ10のポンプIDの識別を行い(処理S53)、類似性判定部43を起動し、類似ポンプの有無を検査する(処理S54)。
【0061】
類似性判定部43は、類似性判定ルールデータベース46の各テーブル460,470,480,490に登録された類似性判定ルールを順次参照し、操作された輸液ポンプ10に対して、類似する輸液ポンプ10があるか否かを判定する。
ここで、類似する輸液ポンプ10がなければ、外部操作により変更された設定内容(輸液流量の変更など)をポンプ状態データベース45に改めて登録し、輸液動作を継続する(処理S55)。
【0062】
類似すると判定される輸液ポンプ10があれば、薬剤類似性テーブル490の該当する薬剤のレコードに記録された危険度495を調べる(処理S56)。
危険度495に記録がなければ、先に検出した類似する輸液ポンプ10についての表示を行って誤認についてスタッフに注意を促し(処理S57)、外部操作により変更された設定内容をポンプ状態データベース45に改めて登録し、輸液動作を継続する(処理S58)。
【0063】
危険度495に記録があるときは、設定変更があった輸液ポンプ10に対して警告動作を行う。
具体的には、設定変更があった輸液ポンプ10の輸液を停止し、類似ポンプの表示ないしは危険度495に基づいて危険内容の表示を行い、この状態でスタッフの確認入力を待機する(処理S59)。
【0064】
そして、スタッフが輸液ポンプ10の設定変更の再確認を行い、問題なしとして確認入力するか、設定を改めたのち確認入力を行うと、制御装置30は、設定内容をポンプ状態データベース45に登録したうえ、輸液動作を再開する(処理S5A)。
高い安全性が要求される場合、確認入力は、操作ボタンの長押しなど、特定の操作とすることが望ましい。
【0065】
〔類似性判定の具体例〕
設定類似性の判定は、例えば次のように判定する。
図3の設定類似性テーブル460において、項目ID461「流量」について、類似項目ID462「同一数値」は、類似度463が「5」の類似性を有すると規定されている。
図2のポンプ状態データベース45において、ポンプID451が「P11」であるポンプは、設定流量452が「3.0ml/h」である。
ポンプ状態データベース45の設定流量452を検索すると、ポンプ「P16」の設定流量452が「3.0ml/h」で「同一数値」である。
従って、ポンプ「P11」とポンプ「P16」とは、類似度「5」の設定類似性を有すると判定することができる。
【0066】
機器類似性の判定は、例えば次のように判定する。
図3の機器類似性テーブル470において、機器ID471「A社1型」は、類似機器ID472「A社3型」と、類似度473が「4」の類似性を有すると規定されている。
図2のポンプ状態データベース45において、ポンプID451が「P11」であるポンプは、機器IDが「A社1型」である。
ポンプ状態データベース45の機器ID453を検索すると、ポンプ「P13」の機器ID453が「A社3型」であり、類似性を有するものに該当する。
従って、ポンプ「P11」とポンプ「P13」とは、類似度「4」の機器類似性を有すると判定することができる。
【0067】
配置類似性の判定は、例えば次のように判定する。
図3の配置類似性テーブル480において、配置ID481「ベッド左」は、類似配置ID482「ベッド左」と、類似度483が「2」の類似性を有すると規定されている。
図2のポンプ状態データベース45において、ポンプID451が「P12」であるポンプは、配置IDが「ベッド左」である。
ポンプ状態データベース45の配置ID454を検索すると、ポンプ「P13」の配置ID454が「ベッド左」であり、類似性を有するものに該当する。
従って、ポンプ「P12」とポンプ「P13」とは、類似度「2」の配置類似性を有すると判定することができる。
【0068】
薬剤類似性の判定は、例えば次のように判定する。
図3の薬剤類似性テーブル490において、薬剤ID491「M剤」は、類似薬剤ID492「N剤」と、類似度493が「3」の類似性を有すると規定されている。
図2のポンプ状態データベース45において、ポンプID451が「P11」であるポンプは、薬剤IDが「M剤」である。
ポンプ状態データベース45の薬剤ID455を検索すると、ポンプ「P12」の薬剤ID455が「N剤」であり、類似性を有するものに該当する。
従って、ポンプ「P11」とポンプ「P12」とは、類似度「3」の薬剤類似性を有すると判定することができる。
【0069】
薬剤類似性に関連する危険度の判定は、例えば次のように判定する。
図3の薬剤類似性テーブル490において、薬剤ID491「M剤」は、類似薬剤ID492「N剤」と、類似度493が「3」の類似性を有するとともに、危険度495が「5」と規定されている。
前述したように、ポンプ「P11」とポンプ「P12」とは、類似度「3」の薬剤類似性を有すると判定されている。
類似性が判定されたポンプ「P11」とポンプ「P12」とは、誤操作した場合、危険度「5」であるため、重大な問題を生じる可能性がある。具体的には危険度コメント496にある「血圧に逆効果」であり、十分な注意を喚起するとともに、ポンプ一時停止などの対応を行う必要がある、と判定できる。
【0070】
〔第1実施形態の作用効果〕
本実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
本実施形態によれば、輸液ポンプ10の一つに設定変更の操作が検出されると、この操作がポンプ監視部41で検出され、誤操作判定部42による誤操作の判定を行うことができる。
誤操作判定部42は、操作された輸液ポンプ10について、類似性判定部43により、類似する輸液ポンプ10、つまり誤操作の可能性があるかを判定することができる。
【0071】
類似性判定部43で誤操作の可能性があるポンプが検出されなければ、そのまま変更された設定で輸液を継続することができる(
図5の処理S55)。
一方、類似性判定部43で誤操作の可能性が判定されれば、誤操作判定部42は、警告表示などの対応を行う(
図5の処理S56)。
これにより、スタッフはポンプの誤操作を認識し、適切な対応を行うことができる。
【0072】
本実施形態では、類似性判定部43における類似性の判定のために、設定類似性、機器類似性、配置類似性および薬液類似性についての類似性判定ルールを予め記録しておくことで、複数の輸液ポンプ10の類似性の判定を効率よくかつ確実に行うことができる。
類似性の判定の基準となる類似性判定ルールは、類似性判定ルールデータベース46に設定類似性テーブル460、機器類似性テーブル470、配置類似性テーブル480、薬剤類似性テーブル490として予め登録しておくため、確実な判定を行うことができる。
【0073】
本実施形態では、危険度判定部44により、誤操作の可能性がある類似する輸液ポンプ10の表示に加えて、輸液ポンプ10で輸液される薬剤の組み合わせに基づいて危険度を判定することができる。とくに、危険度を数値あるいは段階的に表すことで、重大事故に繋がりかねない危険度大の状況を強調表示等することで、危険回避に有効である。
【0074】
さらに、本実施形態では、危険度が大きい場合の対応として、類似性の警告を更に強調することに加え、該当するポンプの輸液一時停止などの動作をも含めたため(
図5の処理S59)、輸液継続が危険な場合には自動停止により、重大事故を回避することができる。
【0075】
〔第2実施形態〕
図6から
図8には、本発明の第2実施形態が示されている。
前述した第1実施形態では、輸液ポンプ10の一つに設定変更の操作があれば、ポンプ監視部41でこれを検出し、誤操作判定部42で誤操作の可能性を判定していた。
【0076】
つまり、第1実施形態では、輸液ポンプ10に設定変更の操作があった都度、類似性判定部43が、類似性判定ルールデータベース46に記載された類似性判定ルールを参照し、輸液ポンプ10の間の類似性を判定し、さらに、危険度判定部44により、危険度の判定を行っていた。
従って、輸液ポンプ10に設定変更の操作に続いて、類似性判定ルールデータベース46の各テーブルの参照および判定など、相当な量の情報処理が必要であった。
【0077】
これに対し、本実施形態では、輸液ポンプ10に設定変更の操作に続く情報処理を軽減し、応答時間を短縮できるようにするために、予め、稼働開始時に、複数の輸液ポンプ10の情報取得に続いて、各ポンプに関する類似度判定ないし危険度判定までを先行して実行しておく。
このために、本実施形態の制御装置30には、第1実施形態にないポンプ類似性データベース50(
図6および
図7参照)が追加され、稼働開始時の手順(
図8)も変更されている。
【0078】
図6において、院内ネットワーク1、輸液ポンプ10、ラック20については、前述した第1実施形態と同じであるため、重複する説明は省略する。
制御装置30において、通信部32は前述した第1実施形態と同じであり、制御部31の類似性判定部43、危険度判定部44、ポンプ状態データベース45、類似性判定ルールデータベース46、薬剤情報データベース47も第1実施形態と同じである。
従って、前述した第1実施形態と同じ構成については、重複する説明を省略するとともに、以下には相違がある構成について説明する。
【0079】
ポンプ監視部51は、基本的に第1実施形態のポンプ監視部41と同様であり、稼働開始時に輸液ポンプ10の情報を取得し、ポンプ状態データベース45に登録する。
一方、本実施形態のポンプ監視部51は、ポンプ状態データベース45への登録に続いて、類似性判定部43および危険度判定部44を起動し、類似性判定ルールデータベース46および薬剤情報データベース47を参照し、各ポンプの間の類似性情報および危険度情報をポンプ類似性データベース50に登録する。
【0080】
ポンプ類似性データベース50には、ポンプID501、流量類似ポンプID511、流量類似度512、機器類似ポンプID521、機器類似度522、配置類似ポンプID531、配置類似度532、薬剤類似ポンプID541、薬剤類似度542、危険度543の各フィールドが設定されている。
【0081】
ポンプID501は、輸液ポンプ10ごとのレコードを識別する情報であり、ポンプ状態データベース45のポンプID451に対応した「P11」「P12」などが付与されている。
【0082】
流量類似ポンプID511および流量類似度512は、流量の設定類似度に関するものである。
前述した第1実施形態の「類似性判定の具体例」における「設定類似度」の説明で、ポンプ「P11」とポンプ「P16」とは、類似度「5」の設定類似性を有すると判定していた。
同様の判定により、ポンプ「P11」の流量類似ポンプID511にはポンプ「P16」が登録され、流量類似度512には類似度「5」が登録される。
【0083】
機器類似ポンプID521および機器類似度522は、機器類似度に関するものである。
前述した第1実施形態の「類似性判定の具体例」における「機器類似度」の説明で、ポンプ「P11」とポンプ「P13」とは、類似度「4」の機器類似性を有すると判定していた。
同様の判定により、ポンプ「P11」の機器類似ポンプID521にはポンプ「P13」が登録され、機器類似度522には類似度「4」が登録される。
【0084】
配置類似ポンプID531および配置類似度532は、配置類似度に関するものである。
前述した第1実施形態の「類似性判定の具体例」における「配置類似度」の説明で、ポンプ「P12」とポンプ「P13」とは、類似度「2」の配置類似性を有すると判定していた。
同様の判定により、ポンプ「P12」の配置類似ポンプID531にはポンプ「P13」が登録され、配置類似度532には類似度「2」が登録される。
【0085】
薬剤類似ポンプID541および薬剤類似度542は、薬剤類似度に関するものである。
前述した第1実施形態の「類似性判定の具体例」における「薬剤類似度」の説明で、ポンプ「P11」とポンプ「P12」とは、類似度「3」の配置類似性を有すると判定していた。
同様の判定により、ポンプ「P11」の薬剤類似ポンプID541にはポンプ「P12」が登録され、薬剤類似度542には類似度「3」が登録される。
【0086】
さらに、前述した第1実施形態の「類似性判定の具体例」における「薬剤類似性に関連する危険度」の説明で、ポンプ「P11」とポンプ「P12」とは、誤操作した際の危険度「5」であると判定していた。
同様の判定により、ポンプ「P11」の危険度543には危険度「5」が登録される。
【0087】
誤操作判定部52は、稼働状態において、ポンプ監視部51が、輸液ポンプ10の一つに設定変更の操作を検出した際に起動される。
ただし、第1実施形態の誤操作判定部42が、起動された際に類似性判定部43および危険度判定部44による判定を実行したのに対し、本実施形態の誤操作判定部52は、ポンプ類似性データベース50に登録しておいたポンプ間の類似性情報および危険度情報を参照し、警告表示などの必要な対応を実行することができる。
【0088】
〔第2実施形態の動作〕
前述した第1実施形態においては、予めポンプ情報の取得処理(
図4参照)を行い、続いて、輸液ポンプ10による輸液を開始し、ポンプ操作の監視処理(
図5参照)を継続していた。
本実施形態では、ポンプ情報の取得処理は
図8に示す手順となる。
【0089】
図8において、制御装置30でポンプ情報の取得処理を開始すると、ポンプ監視部51が院内ネットワーク1に接続されている輸液ポンプ10を検索し(処理S81)、各々の情報を取得してポンプ状態データベース45に順次登録してゆく(処理S82)。
【0090】
ポンプ監視部51は、処理S82に続いて、類似性判定部43および危険度判定部44を起動し、輸液ポンプ10の各々に対して、類似性情報および危険度情報を判定し、ポンプ類似性データベース50に登録してゆく。
院内ネットワーク1に接続されている輸液ポンプ10の全てについて、ポンプ状態データベース45およびポンプ類似性データベース50が記録できたら、ポンプ情報の取得処理が終了する(処理S83)。
【0091】
このようなポンプ情報の取得および類似性判定の処理ができたら、輸液ポンプ10の稼働を開始し、ポンプ操作の監視処理(
図5参照)を実行する。
前述した第1実施形態では、
図5の処理S54において、ポンプ監視部41が誤操作判定部42を通して類似性判定部43を起動し、類似ポンプの有無を検査していた。
しかし、本実施形態では、ポンプ監視部51は誤操作判定部52を起動し、誤操作判定部52がポンプ類似性データベース50を参照することで、類似ポンプの有無を判定する。
【0092】
すなわち、ポンプ類似性データベース50には、全ての輸液ポンプ10に対して、類似性を有すると判定された輸液ポンプ10が既に記録されている。
従って、誤操作判定部52は、操作があった輸液ポンプ10に関して、そのポンプの流量類似ポンプID511、機器類似ポンプID521、配置類似ポンプID531、薬剤類似ポンプID541を調べることで、類似するポンプを認識することができる。
そして、各類似性の判定は、ポンプ類似性データベース50に対して既に実施済であるため、処理S54において処理時間は短くて済む。
【0093】
〔第2実施形態の効果〕
本実施形態では、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるほか、次のような効果を得ることができる。
輸液ポンプ10の情報をポンプ監視部51で取得してポンプ状態データベース45に記録する際に、併せて、類似性判定ルールに基づいて類似性の高い輸液ポンプを判定し、ポンプ類似性データベース50に記録しておくため、その後の処理時間を短縮することができる。
つまり、輸液ポンプ10の一つに設定変更の操作が検出された際には、この段階で他の各ポンプとの類似性を個々に判定する処理は必要なく、ポンプ類似性データベース50に記録されている類似性の高いポンプを表示するだけでよい。従って、処理の迅速性を高めることができる。
【0094】
〔他の実施形態〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形などは本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、輸液ポンプ10の類似性として、流量などの設定類似性、ポンプの機器類似性、配置類似性、輸液の薬剤類似性を判定したが、本発明はこれらの全ての類似性を判定するものに限らず、その一部を省略してもよい。
【0095】
前記実施形態では、類似するポンプの判定(
図5の処理S54)で類似するポンプがある場合、誤操作した際の危険度の判定(
図5の処理S56)を行っていた。
しかし、本発明に危険度の判定は必須ではなく、
図5の処理S56,S59,S5Aは省略してもよい。
危険度の判定を行わない場合、各データベースにおける関連フィールドは不要であり、
図1および
図6における危険度判定部44も省略してよい。
【0096】
その他、輸液ポンプ10の配置、接続数、ラック20の使用の有無などは実施にあたって適宜設定すればよく、制御装置30を構成するための手段も既存のコンピュータおよびソフトウェア技術を利用して適宜構成すればよい。
さらに、前述した実施形態では、院内ネットワーク1を介して、複数の輸液ポンプ10、ラック20に収納された複数の輸液ポンプ10、制御装置30を、それぞれ相互に通信できるようにした。しかし、本発明は、例えば1つの病室内の1つのベッドに対して配置された複数の輸液ポンプ10と、これに接続されたローカルな制御装置30を用いるとしてもよい。さらに、複数の輸液ポンプ10が収容されたラック20に、併せて制御装置30の機能を組み込むことで、1個のラック20だけで本発明を実施することもできる。このような構成においても、当該病室内での看護活動に対して本発明に基づく有効性を十分に発揮することができる。