特許第6445949号(P6445949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445949
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成条件制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20181217BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20181217BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20181217BHJP
   G03G 15/043 20060101ALI20181217BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20181217BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20181217BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G03G21/00 384
   G03G15/16
   G03G15/01 113A
   G03G15/01 Y
   G03G15/043
   G03G15/08 235
   G03G21/14
   G03G15/00 303
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-189929(P2015-189929)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-67845(P2017-67845A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(72)【発明者】
【氏名】大鹿 啓孝
(72)【発明者】
【氏名】石井 豪
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】宮田 環
【審査官】 岡▲崎▼ 輝雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−242665(JP,A)
【文献】 特開2006−251508(JP,A)
【文献】 特開平11−102091(JP,A)
【文献】 特開2007−033788(JP,A)
【文献】 特開2012−032547(JP,A)
【文献】 特開2007−121906(JP,A)
【文献】 特開2005−266749(JP,A)
【文献】 特開2003−295597(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0036560(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/043
G03G 15/08
G03G 15/16
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに応じ静電潜像を形成しつつ回転駆動する像担持体と前記像担持体の静電潜像に現像剤を現像する現像剤担持体とを含み構成される少なくとも2つ以上の画像形成部と、
前記像担持体に現像された画像を転写し後工程へ搬送する転写部材と、
前記像担持体が前記転写部材に当接又は離間するよう前記像担持体の位置を変更する離接手段と、
前記転写部材の画像搬送速度が第1の速度よりも遅い第2の速度のときの方が、該第1の速度のときよりも前記現像剤担持体の現像電圧の絶対値を大きくすることにより、前記像担持体に現像される前記現像剤の量を増加させる画像形成条件で前記画像形成部それぞれを制御する画像形成条件制御部と
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成条件制御部は、前記転写部材の画像搬送方向下流側における前記転写部材に当接する前記画像形成部の数が多いほど前記像担持体に現像される前記現像剤の量を増加させる画像形成条件で前記画像形成部それぞれを制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成条件制御部は、所定の前記画像形成部から前記転写部材に移動した前記現像剤が、該画像形成部よりも前記転写部材の画像搬送方向下流側の画像形成部に回収される分を補うような画像形成条件で前記画像形成部それぞれを制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成条件制御部は、少なくとも前記画像形成部それぞれの設置箇所と、前記転写部材に対する前記画像形成部それぞれの離接状態と、前記転写部材の画像搬送速度とに応じ前記現像剤の量を増加させる画像形成条件で前記画像形成部それぞれを制御する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成条件制御部は、前記画像形成部の設置箇所の組み合わせ毎に前記現像剤の量が異なる画像形成条件で前記画像形成部それぞれを制御する
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成条件制御部は、前記転写部材に当接する前記画像形成部それぞれの離接状態の組み合わせ毎に前記現像剤の量が異なる画像形成条件で前記画像形成部それぞれを制御する
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成部は、それぞれの設置箇所が互いに入れ替え可能である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成条件制御部は、前記像担持体に現像される前記現像剤の量を増加させる際、前記像担持体の表面を帯電させる帯電部の帯電電圧の絶対値を大きくする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
画像データに応じ静電潜像を形成しつつ回転駆動する像担持体と前記像担持体の静電潜像に現像剤を現像する現像剤担持体とを含み構成される少なくとも2つ以上の画像形成部と、
前記像担持体に現像された画像を転写し後工程へ搬送する転写部材と、
前記像担持体が前記転写部材に当接又は離間するよう前記像担持体の位置を変更する離接手段と
を有する画像形成装置の画像形成条件制御方法において、
前記転写部材の画像搬送速度が第1の速度よりも遅い第2の速度のときの方が、該第1の速度のときよりも前記現像剤担持体の現像電圧の絶対値を大きくすることにより、前記像担持体に現像される前記現像剤の量を増加させる画像形成条件で前記画像形成部それぞれを所定の画像形成条件制御部により制御する画像形成条件制御ステップ
を有する画像形成条件制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び画像形成条件制御方法に関し、電子写真方式を用いるプリンタや複写機等の画像形成装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置では、トナー像を形成する画像形成ユニットが画像形成装置の本体に着脱可能に構成されており、該画像形成ユニットの感光体ドラム上に現像されたトナー像を記録媒体上に転写させた後定着させている。カラー画像を形成する画像形成装置においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン各色の画像形成ユニットに加え、白色や透明等の特色の画像形成ユニットが画像形成装置本体に着脱可能に配置され、中間転写ベルト上で各色のトナー像を重ね合わせることでカラー画像を形成する。これら複数の画像形成ユニットは通常中間転写ベルトに当接しているが、画像形成に用いない色については中間転写ベルトから離間させることにより、かぶりトナー付着の防止や画像形成ユニットの長寿命化を図っている。
【0003】
このような画像形成装置において、画像形成ユニットから中間転写ベルト上に転写されたトナーの一部が、ベルト進行方向下流側にあり且つ中間転写ベルトに当接している別の画像形成ユニットに回収されてしまう逆転写という現象が生じ、画像濃度が所望の値よりも低下してしまう問題があった。そこで従来の画像形成装置では、中間転写ベルトに対する画像形成ユニットの離接状態が変更されると画像濃度調整パターンを転写し、検出された画像濃度を元に画像形成条件を補正することで、画像形成ユニットの離接状態に関わらず逆転写による画像濃度低下を相殺し、適切な画像濃度を得ているものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−14797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の画像形成装置では画像濃度を調整するために画像濃度調整パターンが形成されるため、中間転写ベルトに対する画像形成ユニットの離接状態が変更される度にトナーが消費され、且つ印刷開始までのダウンタイムが発生してしまう問題がある。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、機能性を向上し得る画像形成装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の画像形成装置においては、画像データに応じ静電潜像を形成しつつ回転駆動する像担持体と像担持体の静電潜像に現像剤を現像する現像剤担持体とを含み構成される少なくとも2つ以上の画像形成部と、像担持体に現像された画像を転写し後工程へ搬送する転写部材と、像担持体が転写部材に当接又は離間するよう像担持体の位置を変更する離接手段と、転写部材の画像搬送速度が第1の速度よりも遅い第2の速度のときの方が、該第1の速度のときよりも現像剤担持体の現像電圧の絶対値を大きくすることにより、像担持体に現像される現像剤の量を増加させる画像形成条件で画像形成部それぞれを制御する画像形成条件制御部とを設けるようにした。
【0008】
また本発明の画像形成条件制御方法においては、画像データに応じ静電潜像を形成しつつ回転駆動する像担持体と像担持体の静電潜像に現像剤を現像する現像剤担持体とを含み構成される少なくとも2つ以上の画像形成部と、像担持体に現像された画像を転写し後工程へ搬送する転写部材と、像担持体が転写部材に当接又は離間するよう像担持体の位置を変更する離接手段とを有する画像形成装置の画像形成条件制御方法において、転写部材の画像搬送速度が第1の速度よりも遅い第2の速度のときの方が、該第1の速度のときよりも現像剤担持体の現像電圧の絶対値を大きくすることにより、像担持体に現像される現像剤の量を増加させる画像形成条件で画像形成部それぞれを所定の画像形成条件制御部により制御する画像形成条件制御ステップを設けるようにした。
【0009】
これにより本発明は、画像形成装置の動作条件が変更されても、トナー消費と印刷開始までのダウンタイムなしで画像濃度を適正にできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成装置の動作条件が変更されても、トナー消費と印刷開始までのダウンタイムなしで画像濃度を適正にでき、かくして機能性を向上し得る画像形成装置及び画像形成条件制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の構成を示す側面図である。
図2】画像形成装置の画像形成動作に関する制御系を示すブロック図である。
図3】現像電圧補正値テーブルを示す図である。
図4】現像電圧補正処理手順を示すフローチャートである。
図5】印刷画像パターンを示す図である。
図6】比較例の方法による実験1における測定1の結果を示すグラフである。
図7】比較例の方法による実験1における測定2の結果を示すグラフである。
図8】比較例の方法による実験2における測定1の結果を示すグラフである。
図9】比較例の方法による実験2における測定2の結果を示すグラフである。
図10】比較例の方法による実験3における測定1の結果を示すグラフである。
図11】比較例の方法による実験3における測定2の結果を示すグラフである。
図12】本実施の形態による実験1における測定1の結果を示すグラフである。
図13】本実施の形態による実験1における測定2の結果を示すグラフである。
図14】本実施の形態による実験2における測定1の結果を示すグラフである。
図15】本実施の形態による実験2における測定2の結果を示すグラフである。
図16】本実施の形態による実験3における測定1の結果を示すグラフである。
図17】本実施の形態による実験3における測定2の結果を示すグラフである。
図18】他の実施の形態による画像形成装置の構成を示す側面図である。
図19】他の実施の形態による現像電圧補正値テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0013】
[1.実施の形態]
[1−1.画像形成装置の構成]
図1に示すように画像形成装置1は、電子写真方式の5色カラープリンタであり、画像形成ユニット10(10W、10Y、10M、10C及び10K)を収容するユニット収容部60が、中間転写ベルト30の移動方向上流からユニット収容部60A、60B、60C、60D及び60Eの順に配置されている。ユニット収容部60(60A、60B、60C、60D及び60E)それぞれには、それぞれホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)各色の画像を各々に形成する画像形成ユニット10W、10Y、10M、10C及び10Kが着脱可能に収容されている。画像形成ユニット10には、それぞれLEDヘッド12A、12B、12C、12D及び12Eが配置されている他、それぞれの画像形成ユニット10に対応した色の現像剤である現像剤としてのトナーを収容するトナー収容部14(14W、14Y、14M、14C及び14K)が着脱可能に取り付けられている。
【0014】
トナーはポリエステル樹脂、着色剤、帯電制御剤及び離型剤で構成され、外添剤(疎水性シリカ)が添加されている平均粒径6μm程度の、負帯電性の粉体である。Y、M、C及びKの着色剤は、有機系の材料、例えばそれぞれピグメントイエロー、ピグメントシアン、ピグメントマゼンタ及びカーボンブラック等を使用し、混ぜて色を作るため、ある程度透明な顔料が使用される。Wの着色剤は、金属系の顔料、例えば二酸化チタンが使用された不透明な着色剤である。
【0015】
画像形成ユニット10は、使用する記録媒体Pの種類に応じ収容先のユニット収容部60を変更できる。例えば記録媒体Pとして透明フィルムを用い、該記録媒体P上においてY、M、C及びKのカラー色画像の上にホワイト画像を乗せる場合、画像形成装置1は、画像形成ユニット10をユニット収容部60Aから60Eに向かってW、Y、M、C及びKの順で収容する。逆に記録媒体Pとして色付きの紙等を用い、該記録媒体P上においてホワイト画像の上にカラー画像を形成させる場合、画像形成装置1は、画像形成ユニット10をユニット収容部60Aから60Eに向かってY、M、C、K及びWの順で収容する。以下では、ユニット収容部60Aからユニット収容部60Eに向かう方向を下流方向と呼び、ユニット収容部60Eからユニット収容部60Aに向かう方向を上流方向と呼ぶ。
【0016】
それぞれの画像形成ユニット10の内部構成は共通であり、図1及び図2に示すように、像担持体としての感光体ドラム16の周囲に、帯電部としての帯電ローラ18と、現像剤担持体としての現像ローラ20と、クリーニング部22とが配置されている。感光体ドラム16は、アルミ等の導体に感光層が塗布されたものであり、軸端部に駆動カップリングを備え回転自在に配置されている。帯電ローラ18は、例えばステンレス等の金属を軸として導電性の弾性体で被覆されたものであり、感光体ドラム16に連れて回転する。現像ローラ20は、例えばステンレス等の金属を軸としてウレタン等の導電性の弾性体で被覆されたものであり、軸の端部にギアを備え感光体ドラム16からの駆動伝達により回転する。現像ローラ20の周囲には、さらに供給ローラ24及び規制ブレード26が配置されている。供給ローラ24は、例えばステンレス等の金属を軸としてシリコン等の発泡性の弾性体で被覆されたものであり、軸の端部にギアを備え現像ローラ20からの駆動伝達により回転する。規制ブレード26は、例えばステンレスの薄板からなり一端がホルダに固定された弾性体ブレードであり、他端が現像ローラ20へ押し当たるよう配置されている。クリーニング部22は、構成部材の1つに弾性体ブレードがあり、該弾性体ブレードは感光体ドラム16に当接している。
【0017】
また、画像形成ユニット10のそれぞれは離接機構56により上下に移動可能となっている。通常、画像形成ユニット10は感光体ドラム16が中間転写ベルト30に当接されるよう配置されるが、離接機構56により上方向に移動され、中間転写ベルト30から離間されることが可能である。画像形成装置1は、画像形成ユニット10の収容箇所と中間転写ベルト30に対する離接状態とにより、印刷モード(1)、印刷モード(2)、印刷モード(3)、印刷モード(4)、印刷モード(5)、印刷モード(6)、印刷モード(7)及び印刷モード(8)の8つの印刷モードを持つ。印刷モード(1)はW最上流5色印刷、印刷モード(2)はW最上流4色印刷、印刷モード(3)はW最上流モノクロ印刷、印刷モード(4)はW最上流特色印刷、印刷モード(5)はW最下流5色印刷、印刷モード(6)はW最下流4色印刷、印刷モード(7)はW最下流モノクロ印刷、印刷モード(8)はW最下流特色印刷である。各印刷モードにおける画像形成ユニット10それぞれの収容箇所(各ユニット収容部60)及び中間転写ベルト30に対する画像形成ユニット10の離接状態の関係を表1に示す。ここで、表1における「離間」とは、中間転写ベルト30に対し画像形成ユニット10が離間している状態を示している。また以下では、中間転写ベルト30に対し画像形成ユニット10が接触している状態を接触状態とも呼ぶ。
【0018】
【表1】
【0019】
さらに、画像形成ユニット10は、W、K、Y、M及びCのどの色のトナーが封入されているか画像形成装置1本体が識別するためのタグ58を有している。
【0020】
LEDヘッド12(12A、12B、12C、12D及び12E)の構成は共通であり、LEDアレイチップが複数個並べられたプリント配線基板と、LEDアレイから出射した光を感光体ドラム16の表面に等倍に結像するロッドレンズアレイとから構成される。中間転写部28は、2次転写対向ローラ32、ベルト駆動ローラ34及びテンションローラ36と、無端状に形成され2次転写対向ローラ32、ベルト駆動ローラ34及びテンションローラ36により回転可能に支持された中間転写ベルト30とにより構成されている。1次転写ローラ38(38A、38B、38C、38D及び38E)は、金属軸が導電性の弾性体で被覆されたものであり、中間転写ベルト30の内周面に接触して各色の感光体ドラム16との間に1次転写ニップを形成するように、感光体ドラム16に対向した位置に配置される。2次転写部42は、金属軸が導電性の弾性体で被覆された2次転写ローラ44が、2次転写対向ローラ32と対向した位置において、中間転写ベルト30に当接して中間転写ベルト30の移動方向と同じ方向に回転するように配置されている。転写クリーニング部40は、中間転写ベルト30の移動方向において2次転写ローラ44の接触位置の下流側で、且つ1次転写ローラ38Aよりも上流側の位置に配置され、構成部材の1つである弾性体ブレードが中間転写ベルト30の表面に押し当てられている。
【0021】
画像形成装置1の下部には記録媒体Pを収容する媒体収容部46が備えられている。図1に示される破線は媒体搬送路48を表し、該媒体搬送路48に沿って複数の媒体搬送ローラ50(50A、50B、50C、50D、50E及び50F)が配置されている、これら媒体搬送ローラ50により、記録媒体Pは1枚ずつ順次媒体搬送路48内を搬送され、2次転写、定着の工程を経て、排出口52から排出される。定着器54は加熱ローラとバックアップローラとを有し、記録媒体P上に転写されたトナーを加圧及び加熱により記録媒体Pに定着させる。
【0022】
制御部62(図2)は、CPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部から所定のプログラムを読み出して実行することにより、各部を制御して画像形成装置1を統轄制御する。
【0023】
印刷動作制御部64は、画像形成装置1の画像形成動作全体を制御する。インターフェース制御部66は、図示しない外部の上位装置からドライバを介して各種信号や画像データを受信し印刷動作制御部64に送信する。これに加え、印刷動作制御部64にはそれぞれの画像形成ユニット10が備えるタグ58から、ユニット収容部60それぞれに配置された画像形成ユニット10に含まれるトナーの色情報が送信される。
【0024】
離接制御部68は、印刷動作制御部64からの信号に従い、離接機構56の駆動を制御し特定の画像形成ユニット10の位置を上下させる。駆動系制御部70は、印刷動作制御部64により生成される印刷タイミングに従い、媒体搬送ローラ50の動力源である搬送系駆動モータ76aと、定着器54内のローラの動力源である定着器駆動モータ76bと、ベルト駆動ローラ34の動力源であるベルト駆動モータ76cと、感光体ドラム16の動力源であるドラム駆動モータ76dとのそれぞれに対し駆動信号を送信する。以下では、搬送系駆動モータ76a、定着器駆動モータ76b、ベルト駆動モータ76c及びドラム駆動モータ76dをまとめて駆動モータ76とも呼ぶ。
【0025】
なお本実施の形態においては、感光体ドラム16の外周面の移動速度に対し、中間転写ベルト30の移動速度はほぼ同じであり、現像ローラ20の外周面の移動速度は、感光体ドラム16の外周面の移動速度に対し1.4倍となっている。画像形成条件制御部72は、印刷動作制御部64からの信号に従い画像形成ユニット10それぞれに対し帯電電圧制御部78a、現像電圧制御部78b、規制電圧制御部78c及び供給電圧制御部78d(以下ではまとめて電圧制御部78とも呼ぶ)に印加電圧の大きさと印加のタイミングに関する信号を送信する。その後それぞれの電圧制御部78は、帯電ローラ18、現像ローラ20、規制ブレード26及び供給ローラ24のそれぞれに、所定の電圧であるそれぞれ帯電電圧、現像電圧、規制電圧及び供給電圧を所望のタイミングで印加する。ヘッド制御部74は、印刷動作制御部64で処理された画像データを元にLEDヘッド12の発光動作を制御する。
【0026】
補正値格納部80には、それぞれの画像形成ユニット10に印加される現像電圧の補正値、具体的には逆転写の影響を相殺するための補正値である現像電圧補正値ΔV(単位は[V])が記載された、図3に示す現像電圧補正値テーブルTB1が格納されている。この現像電圧補正値ΔVは、中間転写ベルト30の移動速度であるベルト移動速度により異なる値を持ち、具体的には、ベルト移動速度が低速度であるほど現像されるトナー量をより増加させるような値を持つ。また現像電圧補正値ΔVは、ベルト移動速度の他に、印刷モードによっても異なる値を持つ。本実施の形態において、230mm/sのベルト移動速度を基準の速度である基準ベルト移動速度とすると共に、印刷モード(1)を基準の印刷モードである基準印刷モードとし、基準ベルト移動速度且つ基準印刷モードの時の現像電圧を基準の現像電圧である基準現像電圧とする。現像電圧補正値ΔVは、印刷条件に応じ画像形成条件制御部72により選択され、基準現像電圧に加算される。このように現像電圧補正値テーブルTB1は、画像形成装置1の動作条件、すなわち画像形成ユニット10各色の配置箇所と、中間転写ベルト30に当接する画像形成ユニット10の組み合わせと、ベルト移動速度とにより異なる現像電圧補正値ΔVを格納している。ここで、本実施の形態においては負帯電性のトナーを使用しているため、現像電圧が負極側に大きくなると、画像形成ユニット10において感光体ドラム16に現像するトナー量であるトナー現像量が増加する。また画像形成装置1においては、規制電圧又は供給電圧が負極側に大きくなるほどトナー現像量が増加し、帯電電圧が負極側に小さくなるほどトナー現像量が増加する。また画像形成装置1においては、LEDヘッド12の発光光量が増加するほどトナー現像量が増加する。
【0027】
[1−2.現像電圧補正処理]
画像形成装置1による現像電圧補正処理の具体的な処理手順について、図4のフローチャートを用いて説明する。制御部62はROMから現像電圧補正処理プログラムを読み出して実行することにより現像電圧補正処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。
【0028】
ステップSP1において制御部62は、インターフェース制御部66により、図示せぬ上位装置である例えばパーソナルコンピュータ等から画像データを受信し印刷命令が入力されるまで待ち受け、ステップSP2へ移る。ステップSP2において制御部62は、印刷動作制御部64により、受信した画像データから画像形成に使用するトナーの色を決定すると共に、予め設定された記録媒体Pの厚さ情報を元にベルト移動速度を決定し、ステップSP3へ移る。
【0029】
ステップSP3において制御部62は、印刷動作制御部64により、タグ58からユニット収容部60A〜60Eそれぞれに収容されている画像形成ユニット10のトナーの色情報を取得し、各色の配置箇所と使用するトナーの色とから印刷モードを決定し、ステップSP4へ移る。ステップSP4において制御部62は、印刷動作制御部64により、中間転写ベルト30に対する画像形成ユニット10それぞれの離接状態を、現在の離接状態から変更する必要があるかを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、画像形成ユニット10の離接状態を変更する必要はないことを表し、このとき制御部62は、ステップSP5をパスすることにより、画像形成ユニット10それぞれの離接状態を変更せずにステップSP5へ移る。一方ステップSP4において肯定結果が得られると、このことは、画像形成ユニット10の離接状態を変更する必要があることを表し、このとき制御部62はステップSP5へ移る。ステップSP5において制御部62は、決定した印刷モードを印刷動作制御部64から離接制御部68に送信する。離接制御部68は、印刷モードに応じユニット収容部60それぞれの離接機構56を駆動させ、画像形成に使用する画像形成ユニット10の位置を下げて中間転写ベルト30に当接させると同時に、画像形成に使用しない画像形成ユニット10の位置を上げて中間転写ベルト30から離間させ、ステップSP6へ移る。ステップSP6において制御部62は、画像形成条件制御部72により、画像形成ユニット10の動作履歴や周囲の温湿度から、基準の動作条件であるベルト移動速度230mm/s且つ印刷モード(1)における基準現像電圧を含む画像形成条件を決定しステップSP7へ移る。
【0030】
ステップSP7において制御部62は、ステップSP2において決定したベルト移動速度とステップSP3において決定した印刷モードとを印刷動作制御部64から画像形成条件制御部72に送信する。画像形成条件制御部72は、ベルト移動速度又は印刷モードが基準の動作条件(基準ベルト移動速度又は基準印刷モード)から変更されているか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、動作条件が基準の条件と同一であるため現像電圧に補正を加える必要はないことを表し、このとき制御部62は、ステップSP8及びステップSP9をパスすることにより、現像電圧に補正は加えずにステップSP10へ移る。一方ステップSP7において肯定結果が得られると、このことは、動作条件が基準の条件と同一でなく変更されているため現像電圧に補正を加える必要があることを表し、このとき制御部62はステップSP8へ移る。
【0031】
ステップSP8において制御部62は、画像形成条件制御部72により、ベルト移動速度と印刷モードとに応じた現像電圧補正値ΔVを補正値格納部80から選択し、ステップSP9へ移る。ステップSP9において制御部62は、印刷動作制御部64により、現像電圧補正値ΔVの値を現在設定されている基準現像電圧に加算し、ステップSP10へ移る。ステップSP10において制御部62は、印刷動作制御部64により、印刷を開始し、ステップSP11へ移り現像電圧補正処理手順RT1を終了する。ここで、現像電圧が補正されてから印刷を行う場合、画像形成条件制御部72は、供給電圧と規制電圧とのそれぞれについて、現像電圧との電圧差が、補正された現像電圧前後で同一に保たれるよう規制電圧と供給電圧との値を再設定する。その後印刷動作制御部64は、補正された現像電圧を用い印刷を開始する。一方現像電圧を補正せずに印刷を行う場合、印刷動作制御部64は、基準現像電圧の値から補正せずそのままの基準現像電圧を用い印刷を開始する。
【0032】
[1−3.画像形成処理]
現像電圧補正処理が完了すると、印刷動作制御部64は、生成した印刷タイミング及び印刷速度の情報を駆動系制御部70に送信する。駆動系制御部70は、印刷タイミングの印刷速度の情報を元に搬送系駆動モータ76a、定着器駆動モータ76b、ベルト駆動モータ76c及びドラム駆動モータ76dそれぞれを所定のタイミングと速度で回転させる。これら駆動モータ76それぞれの回転が伝達され、媒体搬送ローラ50、定着器54内のローラ、ベルト駆動ローラ34及び感光体ドラム16が回転する。これにより記録媒体Pが1枚ずつ媒体搬送路48内を搬送され始める。ここで、1分間当たりA4用紙50枚に印刷が行われる場合、ベルト移動速度と感光体ドラム16外周面の移動速度とは230mm/sに、現像ローラ20外周面の移動速度は322mm/sになる。
【0033】
同時に画像形成条件制御部72は、帯電電圧制御部78a、現像電圧制御部78b、規制電圧制御部78c及び供給電圧制御部78dそれぞれに印加電圧及び電圧印加タイミングの情報である電圧制御条件を与える。各電圧制御部78は、受信した電圧制御条件を元に帯電ローラ18、現像ローラ20、規制ブレード26及び供給ローラ24それぞれに所定のタイミングで所定の電圧を印加する。本実施の形態においては、負帯電性のトナーを使用しているため、各電圧制御部78は、画像形成中は帯電ローラ18、現像ローラ20、規制ブレード26及び供給ローラ24に対し負極性の高電圧を印加する。ベルト移動速度が基準ベルト移動速度であり且つ印刷モードが基準印刷モードの場合、それぞれの画像形成ユニット10には表2に示す電圧が印加される。一方現像電圧補正処理によって現像電圧が補正された場合、表2に示す基準現像電圧に現像電圧補正値ΔVが加算された値の現像電圧が画像形成ユニット10に印加される。なお、中間転写ベルト30から離間している画像形成ユニット10に関しては、駆動系制御部70はドラム駆動モータ76dを駆動させず、且つ各電圧制御部78は電圧印加を行わないように制御を行う。
【0034】
【表2】
【0035】
さらに同時に、初めに印刷動作制御部64が受け取った画像データは該印刷動作制御部64内で処理され、ヘッド制御部74に送信される。ヘッド制御部74は、受信した画像データを元にLEDヘッド12を点灯させ、感光体ドラム16表面を露光させる。
【0036】
画像形成ユニット10においては、帯電電圧が印加された帯電ローラ18により、感光体ドラム16の表面が一様に帯電させられる。帯電させられた感光体ドラム16はLEDヘッド12により露光され露光箇所の電位が低下し、画像パターンに応じた静電潜像が形成される。静電潜像は現像電圧が印加された現像ローラ20に対向し、感光体ドラム16と現像ローラ20との間に形成される電界によりトナーが静電潜像上に現像されトナー像を形成する。なお、この工程よりも前にトナーは、供給ローラ24と現像ローラ20の当接部と、規制ブレード26と現像ローラ20との当接部において摩擦帯電させられ、単位重量あたりの帯電量がおよそ−30μC/gに帯電する。摩擦帯電させられたトナーは、現像ローラ20と供給ローラ24との間と、現像ローラ20と規制ブレード26との間に形成される電界により、供給ローラ24から現像ローラ20に、規制ブレード26から現像ローラ20に向かう。規制ブレード26は、現像ローラ20上のトナー層厚を規制し、現像ローラ20上に均一なトナー薄層を形成させる役割も持つ。現像されたトナー像は感光体ドラム16と中間転写ベルト30との当接部に搬送される。1次転写ローラ38には正極の高電圧が印加されているため、感光体ドラム16と中間転写ベルト30との間には電界が形成され、トナー像は中間転写ベルト30上に1次転写される。1次転写の後に感光体ドラム16上に残留した少量のトナーは、クリーニング部22により取り除かれる。
【0037】
1次転写されたトナー像は中間転写ベルト30により、ユニット収容部60Aからユニット収容部60Eの方向へ搬送されるが、下流方向で別の画像形成ユニット10が中間転写ベルト30に当接している場合、中間転写ベルト30上のトナーの一部が下流の画像形成ユニット10に回収されてしまう逆転写と呼ばれる現象が生じる。これはトナーが下流側の画像形成ユニット10の感光体ドラム16と中間転写ベルト30との当接部を通過する間に1次転写電圧に起因する正電荷が注入され、正極に帯電してしまうためである。従来装置ではこの逆転写により、上流側の画像形成ユニット10で形成されるトナー像の濃度が低下してしまうことがあった。本実施の形態においては、画像形成開始前に現像電圧に補正を加えることにより、現像するトナーの量を増加させることで逆転写の影響を相殺し、最終的に適正な画像濃度を得ている。
【0038】
使用する色のトナー像の1次転写が終了すると、トナー像は中間転写ベルト30により2次転写部42に到達する。これと同時に記録媒体Pも2次転写部42に到達する。2次転写ローラ44には高電圧が印加され、記録媒体P及び中間転写ベルト30を介して2次転写対向ローラ32との間で電界を形成して、中間転写ベルト30上に形成されているトナー像を記録媒体P上に2次転写させる。2次転写後に中間転写ベルト30の表面に残留したトナーは転写クリーニング部40により取り除かれる。
【0039】
2次転写の後、トナー像は記録媒体Pと共に媒体搬送路48に沿って定着器54に搬送され、熱と圧力により記録媒体P上に定着させられる。その後トナー像が定着した記録媒体Pは媒体搬送路48内を搬送され、排出口52より画像形成装置1外部に排出され、印刷動作が終了する。
【0040】
[1−4.現像電圧補正について]
次に、本発明の特徴である現像電圧補正の詳細について説明する。先述の通り現像電圧を補正する目的は、逆転写されるトナーの分だけ現像されるトナー量を増加させることにより、逆転写で1次転写トナーが一部回収されても適正な画像濃度を得るためである。
【0041】
逆転写されるトナーの量は、ベルト移動速度が小さいほど増加する。これはベルト移動速度が小さいと、感光体ドラム16と中間転写ベルト30の当接部をトナーが通過するのに要する時間が増し、より多くの電荷が注入されてしまうためと考えられる。よって、画像濃度を適正に保つためには、ベルト移動速度が基準ベルト移動速度よりも小さい時は、トナー現像量を増加させることにより1次転写トナー量を増加させる必要がある。逆にベルト移動速度が基準ベルト移動速度よりも大きい時は、トナー現像量を減少させることにより1次転写トナー量を減少させる必要がある。このため現像電圧補正値テーブルTB1(図3)において例えば印刷モード(1)のYは、ベルト移動速度が180mm/s以上の場合は現像電圧補正値ΔVが0V、130mm/s以上180mm/s未満の場合は現像電圧補正値ΔVが−15V、130mm/s未満の場合は現像電圧補正値ΔVが−45Vとなっており、ベルト移動速度が遅くなるほど現像電圧補正値ΔVがマイナス(負極側)に大きくなっている。
【0042】
また所定の画像形成ユニット10により中間転写ベルト30に転写された後に逆転写されるトナーの量は、該画像形成ユニット10よりも下流側で中間転写ベルト30に当接している画像形成ユニット10の台数が増えるほど増加する。これは所定の画像形成ユニット10よりも下流側において逆転写の回数が増加するためである。よって、画像濃度を適正に保つためには、所定の画像形成ユニット10よりも下流側で中間転写ベルト30に当接している画像形成ユニット10の台数が増えるほど、該所定の画像形成ユニット10におけるトナー現像量を増加させる必要がある。逆に、所定の画像形成ユニット10よりも下流側で中間転写ベルト30に当接している画像形成ユニット10の台数が減るほど、該所定の画像形成ユニット10におけるトナー現像量を減少させる必要がある。このため現像電圧補正値テーブルTB1(図3)において例えばベルト移動速度が180mm/s以上の場合のYは、印刷モード(6)の場合は現像電圧補正値ΔVが0V、印刷モード(5)の場合は現像電圧補正値ΔVが−15Vとなっており、画像形成ユニット10Yの下流側において接触状態の画像形成ユニット10の個数が増加するほど現像電圧補正値ΔVがマイナスに大きくなっている。
【0043】
[1−5.逆転写影響抑制の測定]
[1−5−1.測定方法]
最後に、本発明により得られる効果を確認する。現像電圧の補正により逆転写の影響を抑制できているかを確認するため、以下の2項目を測定した。
【0044】
測定1:2次転写直前で中間転写ベルト30に付着しているトナーの重量。
測定2:記録媒体P上に印刷された画像の濃度。
画像形成装置1としてA3カラープリンタを用い、温度23度、相対湿度50%の環境下でA3用紙に対し、図5に示すような、YMCKWの印字率100%画像の面積がそれぞれ印刷可能領域全体の20%である画像パターンを印刷した。
測定1を行う際は、1次転写されたトナー像が2次転写部42に到達する直前に画像形成装置1の動作を停止させ、中間転写ベルト30上に付着しているトナーの単位面積当たりの重量を測定した。
測定2では、以下の媒体Aと媒体Bとを用い、該媒体A及び媒体B上の画像濃度を測定した。
媒体A:エクセレントホワイトA3 80g/m(株式会社沖データ)。
媒体B:色上質紙厚口 A3ブルー(北越紀州製紙株式会社)。
媒体AからはYMCKそれぞれの画像濃度を、媒体BからはWの画像濃度を測定した。W画像に関しては媒体Bの下に黒い紙を敷いた状態で画像濃度を測定した。なお、ここで言う画像濃度とは、トナー像の反射濃度を光学濃度の指標であるOD値で表したものである。そのためYMCK画像に関しては数値が大きいほど高濃度であり、W画像に関しては数値が小さいほど高濃度である。
【0045】
これら測定1及び測定2を以下の実験1、実験2及び実験3のそれぞれの条件の下行った。
実験1:印刷モード(1)において、ベルト移動速度が230mm/s、150mm/s及び84mm/sの3条件で測定を行う。
実験2:印刷モード(2)において、ベルト移動速度が230mm/s、150mm/s及び84mm/sの3条件で測定を行う。
実験3:ベルト移動速度を230mm/sとし、印刷モード(1)及び印刷モード(5)の2条件で測定を行う。
【0046】
[1−5−2.比較例の方法での測定結果]
初めに、本発明との比較のため、現像電圧の補正を行わない比較例の方法での測定結果を示す。
【0047】
[1−5−2−1.実験1について]
図6に実験1における測定1の結果を示す。WトナーはYMCKトナーより比重が大きいため、グラフを別とした。測定1においては、K以外の全ての色で、ベルト移動速度が小さくなるほどトナー付着量が低下した。このトナー付着量の減少は、逆転写によるものである。Kは、自身より下流側に画像形成ユニット10が存在しないため逆転写されないのでトナー付着量の減少がほぼ無かった。
【0048】
図7に実験1における測定2の結果を示す。YMCKトナーとWトナーでは目標とする濃度が大きく異なるためグラフを別とした。測定2においては、図6に示したように最下流位置以外の色ではベルト移動速度を小さくするほど2次転写部42に到達するトナーが減少するため、それに応じ画像濃度が低下してしまった。
【0049】
[1−5−2−2.実験2について]
図8に実験2における測定1の結果を示す。実験1同様、最下流であるK以外の色ではベルト移動速度を小さくするほど逆転写のトナー量が増加し、トナー付着量が低下した。
【0050】
図9に実験2における測定2の結果を示す。実験1同様、最下流であるK以外の色では逆転写によりベルト移動速度を小さくするほど画像濃度が低下した。
【0051】
[1−5−2−3.実験3について]
図10に実験3における測定1の結果を示す。印刷モードを印刷モード(1)から印刷モード(5)へ変更した場合、YMCKではトナー付着量が減少し、Wではトナー付着量が大きく増加した。印刷モードを印刷モード(1)から印刷モード(5)へ変更した場合、YMCKでは自身よりも下流で中間転写ベルト30に当接する画像形成ユニット10の台数が1台ずつ増加するため、逆転写の回数が1回増加する。そのため印刷モードの変更によりトナー付着量が低下してしまった。逆にWでは印刷モードを印刷モード(1)から印刷モード(5)へ変更した場合、自身よりも下流で中間転写ベルト30に当接する画像形成ユニット10の台数が4台減少するため、逆転写の回数が4回減り0回になる。そのため印刷モード(1)において逆転写により回収されていた分のトナーがそのまま2次転写部42まで到達することになり、印刷モード(5)の方が印刷モード(1)の時よりもトナー付着量が大幅に増加してしまった。
【0052】
図11に実験3における測定2の結果を示す。印刷モードを印刷モード(1)から印刷モード(5)へ変更した場合、YMCKでは画像濃度が減少し、Wでは画像濃度が大きく増加した。これは図10で示したように、画像形成ユニット10それぞれの配置箇所を変更したことで逆転写トナー量が増減し、それに応じてトナー付着量が増減したためである。
【0053】
[1−5−3.本実施の形態の方法での測定結果]
次に、本実施の形態で示したように、現像電圧の補正を行った場合の測定結果を示す。
【0054】
[1−5−3−1.実験1について]
図12及び図13に、それぞれ実験1における測定1及び測定2の結果を示す。現像電圧の補正がなかった図6及び図7と比較すると、現像電圧に補正を加えたことで逆転写の影響が抑制され、ベルト移動速度を小さくしてもYMCWトナー付着量の低下が抑制された。逆転写の影響が抑制されたことで画像濃度は良好範囲に収まった。
【0055】
[1−5−3−2.実験2について]
図14及び図15に、それぞれ実験2における測定1及び測定2の結果を示す。現像電圧の補正がなかった図8及び図9と比較すると、現像電圧に補正を加えたことで逆転写の影響が抑制され、ベルト移動速度を小さくしてもYMCトナー付着量の低下が抑制された。逆転写の影響が抑制されたことで画像濃度は良好範囲に収まった。
【0056】
[1−5−3−3.実験3について]
図16及び図17に、それぞれ実験3における測定1及び測定2の結果を示す。現像電圧の補正がなかった図10及び図11と比較すると、現像電圧に補正を加えたことで逆転写の影響が抑制され、印刷モードを印刷モード(1)から印刷モード(5)に変更してもYMCKトナー付着量の低下及びWトナー付着量の増加が抑制された。逆転写の影響が抑制されたことで画像濃度は良好範囲に収まった。
【0057】
[1−5−4.まとめ]
以上から、印刷モードと印刷速度に応じ現像電圧に補正値を加えることにより、逆転写に起因する画像濃度低下を抑制できることが確認できた。
【0058】
[1−6.効果等]
以上の構成において画像形成装置1は、ユニット収容部60それぞれに収容される画像形成ユニット10に含まれるトナーの色と、中間転写ベルト30に対する画像形成ユニット10の離接状態と、印刷速度とのそれぞれに対し予め用意された画像形成条件の補正値を印刷条件に応じ適用するようにした。
【0059】
具体的に画像形成装置1は、中間転写ベルト30のベルト移動速度(画像搬送速度)が小さいほど感光体ドラム16に現像されるトナーの量を増加させる現像電圧補正値ΔVを補正値格納部80から選択して、現像電圧を補正するようにした。これにより画像形成装置1は、ベルト移動速度が小さいほどより多く逆転写が発生し、所定の画像形成ユニット10から中間転写ベルト30に転写したものの該画像形成ユニット10よりも搬送方向下流側で他の画像形成ユニット10に回収されてしまうトナーを補うことができる。
【0060】
また画像形成装置1は、所定の画像形成ユニット10において、中間転写ベルト30の画像搬送方向下流側において該中間転写ベルト30に当接する画像形成ユニット10の数が多いほど感光体ドラム16に現像されるトナーの量を増加させる現像電圧補正値ΔVを補正値格納部80から選択して、現像電圧を補正するようにした。これにより画像形成装置1は、所定の画像形成ユニット10の画像搬送方向下流側に配置された画像形成ユニット10の個数が多いほどより多く逆転写が発生し、所定の画像形成ユニット10から中間転写ベルト30に転写したものの該画像形成ユニット10よりも搬送方向下流側で他の画像形成ユニット10に回収されてしまうトナーを補うことができる。
【0061】
以上の構成によれば画像形成装置1は、画像データに応じ静電潜像を形成しつつ回転駆動する感光体ドラム16と該感光体ドラム16の静電潜像にトナーを現像する現像ローラ20とを含み構成される少なくとも2つ以上の画像形成ユニット10と、感光体ドラム16に現像された画像を転写し後工程へ搬送する中間転写ベルト30と、感光体ドラム16が中間転写ベルト30に当接又は離間するよう感光体ドラム16の位置を変更する離接機構56と、画像形成動作全体の動作条件を制御する印刷動作制御部64と、中間転写ベルト30の画像搬送速度が小さいほど感光体ドラム16に現像されるトナーの量を増加させる現像電圧補正値ΔVを格納する補正値格納部80と、印刷動作制御部64により通知された動作条件に応じ、補正値格納部80から現像電圧補正値ΔVを選択し、画像形成ユニット10それぞれにおける画像形成条件を制御する画像形成条件制御部72とを設けるようにした。これにより画像形成装置1は、印刷条件によらず画像濃度を適正に保つことができると同時に、画像濃度調整のための、トナー消費と印刷開始までの待機時間とを発生させないようにできる。
【0062】
[2.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、5色カラープリンタである画像形成装置1(図1)に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、図1と対応する部材に同一符号を付した図18と、図2とに示す、特色トナーの無い通常のYMCK4色カラープリンタである画像形成装置101に本発明を適用しても良い。画像形成装置101は、画像形成装置1と比べて、画像形成ユニット10W及びユニット収容部60Eが省略されている。画像形成装置101における補正値格納部(図示せず)には、現像電圧補正値ΔVが記載された、図19に示す現像電圧補正値テーブルTB101が格納されている。画像形成装置101は、中間転写ベルト30の移動速度と、印刷モード(4色印刷又はモノクロ印刷)とに基づき、現像電圧補正値テーブルTB101から現像電圧補正値ΔVを選択し現像電圧の補正を加えることにより、画像形成装置1と同様の作用効果を奏する。
【0063】
また上述した実施の形態においては、現像電圧を補正することにより、トナー現像量を増減させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、規制電圧、供給電圧、帯電電圧又はLEDヘッド12の発光光量等を制御することにより、トナー現像量を増減させても良い。
【0064】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成ユニット10から中間転写ベルト30に1次転写されたトナー像を記録媒体Pに2次転写する中間転写方式である画像形成装置1に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、画像形成ユニットから転写部材としての記録媒体Pにトナー像を直接転写する直接転写方式の画像形成装置に本発明を適用しても良い。しかしながら、記録媒体Pからよりも中間転写ベルト30からの方が逆転写が発生し易い傾向にあるため、中間転写方式の方が直接転写方式よりも本発明の効果を顕著に奏する。
【0065】
さらに上述した実施の形態においては、Y、M、C及びK以外の特色トナーとしてWトナーを用いたが、本発明はこれに限らず、特色トナーとして例えば透明トナー、金トナー、銀トナー又は蛍光トナー等を用いても良い。
【0066】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成部としての画像形成ユニット10と、転写部材としての中間転写ベルト30と、離接手段としての離接機構56と、動作条件制御部としての印刷動作制御部64と、補正値格納部としての補正値格納部80と、画像形成条件制御部としての画像形成条件制御部72とによって、画像形成装置としての画像形成装置1を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる画像形成部と、転写部材と、離接手段と、動作条件制御部と、補正値格納部と、画像形成条件制御部とによって、画像形成装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、電子写真方式を用い2色以上の画像形成が可能な複写機やFAXでも利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1、101……画像形成装置、10W、10Y、10M、10C、10K……画像形成ユニット、12A、12B、12C、12D、12E……LEDヘッド、14W、14Y、14M、14C、14K……トナー収容部、16……感光体ドラム、18……帯電ローラ、20……現像ローラ、22……クリーニング部、24……供給ローラ、26……規制ブレード、28……中間転写部、30……中間転写ベルト、32……2次転写対向ローラ、34……ベルト駆動ローラ、36……テンションローラ、38A、38B、38C、38D、38E……1次転写ローラ、40……転写クリーニング部、42……2次転写部、44……2次転写ローラ、46……媒体収容部、48……媒体搬送路、50A、50B、50C、50D、50E、50F……媒体搬送ローラ、52……排出口、54……定着器、56……離接機構、58……タグ、60A、60B、60C、60D、60E……ユニット収容部、62……制御部、64……印刷動作制御部、66……インターフェース制御部、68……離接制御部、70……駆動系制御部、72……画像形成条件制御部、74……ヘッド制御部、76a……搬送系駆動モータ、76b……定着器駆動モータ、76c……ベルト駆動モータ、76d……ドラム駆動モータ、78a……帯電電圧制御部、78b……現像電圧制御部、78c……規制電圧制御部、78d……供給電圧制御部、80……補正値格納部、TB1、TB101……現像電圧補正値テーブル、P……記録媒体、ΔV……現像電圧補正値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19