(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の断熱性フィルムでは、断熱性及び透明性の両立が十分でないという問題があった。
本発明は、上記問題を鑑み、高い断熱性と高い透明性とを兼ね備えた断熱フィルム及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、プラスチックフィルム上に、ポーラス構造を有する低熱伝導率のブロックコポリマー層を設けることにより、高い断熱性と高い透明性とを兼ね備えた断熱フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]を提供するものである。
[1]プラスチックフィルム上に、ポーラス構造を有するポリマー層が形成された、断熱フィルム。
[2]前記ポーラス構造が、ブロックコポリマーのミクロ相分離構造に由来して形成されるものである、上記[1]に記載の断熱フィルム。
[3]前記ポーラス構造が微細孔であって、該微細孔の平均孔径が5〜1000nmである、上記[1]に記載の断熱フィルム。
[4]断熱フィルムの熱伝導率が、0.1(W/m・K)以下である、上記[1]に記載の断熱フィルム。
[5]前記ブロックコポリマーが、自己組織化により相分離構造を形成し、互いに非相溶なユニット(A)及びユニット(B)からなるA−B型、A−B−A型、及びB−A−B型のいずれかのブロックコポリマーであって、該ユニット(A)及び該ユニット(B)は、それぞれスチレン系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルピリジン誘導体、共役ジエン系ポリマー、ポリオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[2]に記載の断熱フィルム。
[6]さらに粘着剤層を有する、上記[1]に記載の断熱フィルム。
[7]断熱フィルムが窓用フィルムとして用いられる、上記[1]に記載の断熱フィルム。
[8]上記[1]に記載された断熱フィルムの製造方法であって、
(1)プラスチックフィルム上に、ブロックコポリマー層を形成する工程、(2)該ブロックコポリマー層にミクロ相分離構造を形成する工程、(3)該ミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー層の一方のポリマー相の一部又はすべてを除去し、ポーラス構造を有するポリマー層を形成する工程、を含む、断熱フィルムの製造方法。
[9]前記ポーラス構造の微細孔であって、該微細孔の平均孔径が5〜1000nmである、上記[8]に記載の断熱フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、プラスチックフィルム上に、ブロックコポリマー(BCP)の自己組織化によるミクロ相分離構造を利用し、ポーラス構造を有するポリマー層を形成することにより、高い断熱性と高い透明性を兼ね備えた断熱フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[断熱フィルム]
本発明の断熱フィルムは、プラスチックフィルム上に、ポーラス構造を有するポリマー層が形成された断熱フィルムである。
【0009】
図1に本発明の断熱フィルムの断面図の一例を示す。断熱フィルム1は、
図1に示すように、プラスチックフィルム2上に、ポーラス構造を有するポリマー層3cが形成されていることを特徴とする。ここで、「ポーラス構造」とは、例えば、ナノサイズの大きさの非常に微細な空孔を有し、該微細な空孔が所定の形状、間隔で互いに独立して配列されている構造をいい、このような、後述するブロックコポリマーのミクロ相分離構造由来のポーラス構造が、プラスチックフィルム上に形成されていることにより、高い断熱性と高い透明性を兼ね備えた断熱フィルムを得ることができる。
【0010】
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリm−フェニレンイソフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミド等のアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物等のシクロオレフィン系ポリマー;塩化ビニル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリフェニレンエーテル;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のポリサルフォン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド;及びこれらの高分子の二種以上の組合せ;等が挙げられる。これらの中でも、汎用性があり、透明性に優れるという点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。
【0011】
<ブロックコポリマー>
ブロックコポリマーとしては、自己組織化によりミクロ相分離構造を形成し、互いに非相溶なユニット(A)とユニット(B)とが結合してなるものであれば特に限定されない。ブロックコポリマーは、A−B型、A−B−A型、B−A−B型等のブロックコポリマーが挙げられる。また、ブロックコポリマーは、他のユニットが含まれた、例えば、ユニット(C)が含まれた、A−B−C型、A−B−C−A型等であってもよい。なかでも、相分離のし易さ、微細孔の制御し易さの観点から、A―B型、A−B−A型、B−A−B型のブロックコポリマーが好ましく、A―B型のブロックコポリマーがさらに好ましい。
【0012】
ユニット(A)及びユニット(B)としては、ポリスチレン、o−ポリメチルスチレン、p−ポリメチルスチレン、ポリプロピルスチレン、ポリメトキシスチレン及びそれらの誘導体等のスチレン系ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸t−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン含有ポリメタクリレート及びそれらの誘導体等のポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリビニルピリジン及びそれらの誘導体等のポリビニルピリジン誘導体;ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリペンタジエン、ポリヘキサジエン、ポリシクロペンタジエン、ポリシクロヘキサジエン、ポリシクロヘプタジエン、ポリシクロオクタジエン及びそれらの誘導体等の共役ジエン系ポリマー;ポリエチレン等のポリオレフィン;等が挙げられる。
ブロックコポリマーの具体例としては、ポリスチレン−ポリイソプレン(PS−b−PI)、ポリスチレン−ポリブタジエン(PS−b−PBD)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SIBS樹脂)、ポリビニルピリジン−ポリブタジエン(PVP−b−PBD)、ポリビニルピリジン−ポリイソプレン(PVP−b−PI)、ポリメチルメタクリレート−ポリイソプレン(PMMA−b−PI)、ポリメチルメタクリレート−ポリスチレン(PMMA−b−PS)、ポリメチルメタクリレート−ポリブタジエン(PMMA−b−PB)、ポリメチルメタクリレート−ヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン含有ポリメタクリレート(PMMA−b−PMAPOSS)などが挙げられる。この中で、耐熱性、耐候性、熱伝導率、相分離のし易さ、微細孔の制御のし易さの観点から、ポリスチレン−ポリイソプレン(PS−b−PI)、ポリメチルメタクリレート−ポリスチレン(PMMA−b−PS)、ポリメチルメタクリレート−ヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン含有ポリメタクリレート(PMMA−b−PMAPOSS)が好ましく、より好ましくはポリメチルメタクリレート−ポリイソプレン(PMMA−b−PI)である。
なお、上記ブロックコポリマーは、重合して得られたものを用いることもできるし、市販品を用いることもできる。重合方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、sec−ブチルリチウムを開始剤に用いたリビングアニオン重合により合成することで得られる。
【0013】
上記ブロックコポリマーを構成する前記ユニット(A)及びユニット(B)は、少なくとも一方が、ポリマーのガラス転移温度が、好ましく50℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であるモノマーから構成されることが好ましい。ガラス転移温度の上限は、特に制限はないが、通常200℃以下である。ガラス転移温度が上記範囲であれば、耐熱性に優れ、断熱フィルムとして好ましく用いることができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定できる。
【0014】
<ポーラス構造を有するポリマー層> ポーラス構造を有するポリマー層は、前記ブロックコポリマーの自己組織化によるミクロ相分離構造を利用することで得られる。
一般に、ブロックコポリマーは、異種のブロックがお互いに混ざり合うことなく、相分離する場合は、所定の秩序をもった特徴のあるミクロドメイン構造をとる。これをミクロ相分離構造と呼び、例えば、ブロックコポリマーを構成する2種のポリマーを分子鎖長程度のスケール、すなわち数10ナノオーダーで相分離した構造をとる。
前記ミクロ相分離構造は、前記ブロックコポリマーの組成に応じて変わり、ラメラ構造、シリンダー構造、球構造、ジャイロイド構造等に分類することができる。さらに詳しくは、ミクロ相分離構造は、ブロックコポリマーを構成するモノマーの種類、それらの組み合わせ、体積分率、及び成膜時に使用する異種ポリマーを溶解させるための溶媒の種類によっても異なる。本発明で使用されるブロックコポリマーは、前記種々のミクロ相分離構造の中で、例えば、共役ジエン系ポリマーユニットからなる円柱(シリンダー)構造(相)が、スチレン系ポリマーユニットからなるマトリックス(相)中に存在するような、シリンダー構造を有するミクロ相分離構造を形成している。
具体的には、ポーラス構造を有するポリマー層は、前記プラスチックフィルム上に、ブロックコポリマー層を形成し、該ブロックコポリマー層を、例えば、溶媒雰囲気下でアニーリングすることでミクロ相分離させ、ミクロ相分離したブロックコポリマー層の一方のポリマー相の一部又はすべてを除去することで形成することができる。
【0015】
前記ポーラス構造は、平均孔径が5〜1000nmである微細孔を有していることが好ましく、より好ましくは10〜300nm、さらに好ましくは30〜150nmである。平均孔径が上記範囲であれば、断熱性と透明性が共に優れる断熱フィルムを得ることができる。ここで、平均孔径は、原子間力顕微鏡(AFM)によりブロックコポリマー層の表面を観察し、観察結果を画像処理した出力画面(測定範囲:1μm×1μm)上において無作為に50個の微細孔を抽出し、それぞれの微細孔の孔径の最大径、最小径を読み取り、独立した孔の個々の孔径の中心値を求め、次いで、測定した全数にわたり単純平均することにより算出した値である。
微細孔の形状は、特に限定されず、例えば、円柱状、角柱状等の柱状;逆円錐、逆角錐等の逆錐状;逆角錐台、逆円錐台等の逆錐台状;溝状等が挙げられ、これらの組み合わせであってもよい。
また、ブロックコポリマー層の厚みは、好ましくは0.01〜500μm、より好ましくは0.01〜100μm、さらに好ましくは0.02〜10μmである。厚みがこの範囲であれば、断熱性と透明性が共に優れる断熱フィルムを得ることができる。
【0016】
本発明の断熱フィルムは、熱伝導率が0.1(W/m・K)以下であることが好ましく、0.07(W/m・K)以下であることがより好ましく、0.05(W/m・K)以下であることが特に好ましい。熱伝導率がこの範囲にあれば、高い断熱性が得られる。
【0017】
本発明の断熱フィルムは、ヘイズが2%以下であることが好ましく、ヘイズが1.5%以下であることがより好ましい。ヘイズがこの範囲であれば、高い透明性を維持できる。
【0018】
<粘着剤層> 本発明の断熱フィルムには、さらに粘着剤層を有することが好ましい。該粘着剤層により、例えば、断熱フィルムを容易に窓ガラス等に貼付することができる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
具体的には、
図1に示すように、前記プラスチックフィルム2の前記ポーラス構造を有するポリマー層3cが形成された面とは反対側の面に、粘着剤層4を形成してもよく、前記プラスチックフィルム2の前記ポーラス構造を有するポリマー層3cが形成された面に、粘着剤層4を形成してもよい。
【0019】
上記の粘着剤の中で、断熱性、耐熱性、耐環境性、コスト面、透明性を考慮すると、アクリル系粘着剤がより好ましい。
なお、上記粘着剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
前記粘着剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、例えば、粘着付与剤、可塑剤、光重合性化合物、光開始剤、発泡剤、重合禁止剤、老化防止剤、充填剤、カップリング剤、帯電防止剤等のその他の成分を添加してもよい。
粘着剤層の厚さは、好ましくは1〜200μm、より好ましくは10〜100μmである。粘着剤層の厚さがこの範囲であれば、断熱性、透明性を損なうことなく、ガラス材等との密着強度が確保される。
【0021】
本発明の断熱フィルムは、建築分野、自動車分野等においては、窓ガラス等に貼付して使用することで、冷暖房費の削減が図られるとともに、屋内又は車内の結露が抑制される等、居住空間の快適性を向上させることができる。
【0022】
[断熱フィルムの製造方法]
本発明の断熱フィルムの製造方法は、プラスチックフィルム上に、ポーラス構造を有するポリマー層が形成された断熱フィルムの製造方法であって、
(1)プラスチックフィルム上に、ブロックコポリマー層を形成する工程、
(2)該ブロックコポリマー層にミクロ相分離構造を形成する工程、
(3)該ミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー層の一方のポリマー相の一部又はすべてを除去し、ポーラス構造を有するポリマー層を形成する工程、
を含む、断熱フィルムの製造方法である。
本発明の製造方法について、
図1を用いて説明する。
【0023】
(1)ブロックコポリマー層形成工程
ブロックコポリマー層形成工程は、前述したブロックコポリマーを、例えば、有機溶媒に溶解させたブロックコポリマー溶液を、
図1のプラスチックフィルム2上に塗布して、ブロックコポリマー層3aを形成する工程である。ブロックコポリマー層の形成方法としては、上述のブロックコポリマーを有機溶媒に溶解させた溶液を、公知方法で、プラスチックフィルム上に塗布し、必要に応じて乾燥させ、ブロックコポリマー層を形成する。所望の厚み、例えば、本発明の好ましい厚みである0.01〜500μmの範囲をカバーする塗布方法としては、例えば、スピンコート、ロールコート、ディップコート、ダイコート、グラビアコート等が挙げられ、特に制限されない。なお、数10nmのオーダーのブロックコポリマー層を基板面内全域に均一に形成する場合は、スピンコート、ダイコート、グラビアコートが特に好ましく用いられる。
本発明で使用される、ブロックコポリマーを溶解する溶媒としては、シリンダー構造を有するミクロ相分離構造を得る観点から、シクロペンタノン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルム、THF、ベンゼン、シクロヘキサノンが挙げられ、特に蒸発速度の観点からシクロペンタノンが好ましい。
また、厚みが数10nmのオーダーのブロックコポリマー層を均一に形成するという観点から、前記ブロックコポリマー溶液中のブロックコポリマーの濃度は、好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
【0024】
(2)ミクロ相分離構造形成工程
ミクロ相分離構造形成工程は、前記ブロックコポリマー層形成工程で得られたブロックコポリマー層3aにミクロ相分離構造3bを形成する工程である。ミクロ相分離構造を形成する方法としては、特に限定されないが、ブロックコポリマー層を溶媒蒸気雰囲気下で一定時間保持する方法(溶媒アニーリング法)が好ましい。溶媒アニーリング法を用いることで、ブロックコポリマーの自己組織化が膜厚方向に進行し易く、ブロックコポリマー層に、深さ、平均直径及び形状等が制御されたミクロ相分離構造を効率的に形成することができる。前記溶媒アニーリングで使用する溶媒としては、例えば、トルエン、トルエン及びヘキサンの混合溶媒、二硫化炭素、ベンゼン、THF等が挙げられる。該工程で、溶媒の種類、アニーリング条件を適宜選択又は調整することにより、所望のミクロ相分離構造を形成することができる。
【0025】
(3)ポーラス構造形成工程
ポーラス構造形成工程は、前記ミクロ相分離構造形成工程で得られたミクロ相分離構造が形成されたブロックコポリマー層の一方のポリマー相の一部又はすべてを除去して、ポーラス構造を有するポリマー層3bを形成する工程である。
ブロックコポリマー層の一方の層の一部又はすべてを除去する方法は、特に制限されず、例えば、オゾン処理、UVオゾン処理、酸素プラズマ処理、紫外線照射処理等によりエッチングする方法が挙げられる。該工程で、エッチング方法及びエッチング条件を適宜選択又は調整することにより、所望のポーラス構造を形成することができる。さらに、エッチングにより形成されたポーラス構造の壁面、及びエッチング残渣を除去するために洗浄及びリンス等を行うことが好ましい。洗浄液としては、プラスチック基板材料、エッチング残渣に応じて、適宜選択すればよく、例えば、ヘキサン、酢酸、アルコール類(メタノール、IPA等)等が挙げられる。
【0026】
前記ポーラス構造が微細孔であり、該微細孔の平均孔径が5〜1000nmである。平均孔径が上記範囲であれば、断熱性と透明性が共に優れる断熱フィルムが得られる。
【0027】
本発明の製造方法によれば、高い断熱性及び高い透明性を有する断熱フィルムが得られる。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0029】
実施例及び比較例で得られた断熱フィルムのブロックコポリマー層の熱伝導率の測定、断熱フィルムを用いて作製した断熱性評価用サンプルの断熱性評価は以下の方法で実施した。
(a)熱伝導率測定
実施例及び比較例で得られた断熱フィルムのポリマー層について、3ω法(特開2013−183088明細書段落[0034]等参照)を用いて熱伝導率を算出した。
(b)断熱性評価
図2に示すように、実施例及び比較例で作製した断熱フィルム1に粘着剤層4(厚さ:20μm)を積層し、ガラス基板5(厚さ:700μm)に貼付け、断熱性評価用サンプルを作製した。次いで、大気と接する断熱フィルム面6側をホットプレートで100℃に加熱保持し、大気と接するガラス基板面7側の1時間後の温度を測定した。
(c)ヘイズ測定
実施例及び比較例で得られた断熱フィルムのヘイズ値を、JIS K 7136に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名「NDH−2000」)を用いて、測定した。
【0030】
(実施例1)
ブロックコポリマーとして、ポリスチレンユニット(分子量が72000)とポリイソプレンユニット(分子量が13000)とが結合してなるブロックコポリマー(Polymer source 株式会社製、P4014-PIp)をシクロペンタノン(東京化成工業社製)に溶解し、溶液濃度1質量%の溶液を調製した。調製した溶液をスピンコート法により、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm)上に塗布し、厚さ150nmのブロックコポリマー層を形成した。次いで、トルエン/へキサン=70/30体積%の溶液を用いて、溶媒蒸気雰囲気下で、溶媒アニーリング処理を30分間行うことにより、ブロックコポリマー層にミクロ相分離構造を形成させた。ミクロ相分離構造を有するブロックコポリマー層の表面をAFMで観察した。
図3(a)にAFM写真(測定範囲:1μm×1μm)を示す。
その後、オゾン照射装置(Samco社製、UV−Ozone dry stripper)を用いて、UVオゾン照射を30秒間行い、ブロックコポリマー層のイソプレンユニットの一部を選択的にエッチングし、ヘキサン溶媒で洗浄し、微細孔からなるポーラス構造を有するポリマー層を得ることで、断熱フィルムを作製した。得られた断熱フィルムのポリマー層の表面をAFMで観察した。
図3(b)にAFM写真(測定範囲:1μm×1μm)を示す。
得られた断熱フィルムのプラスチックフィルムの前記ポーラス構造を有するポリマー層が形成された面とは反対側の面に、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:20μm)を積層し、粘着剤層付きの断熱フィルムを作製した。
断熱フィルムのポリマー層の微細孔の平均孔径、熱伝導率、断熱フィルムのヘイズ値及び粘着剤層付きの断熱フィルムの断熱性評価結果(ガラス基板の温度)を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
ブロックコポリマーとして、ポリメチルメタクリレートユニットとヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン含有ポリメタクリレートユニットとが結合してなるブロックコポリマー(創和科学株式会社製、商品名P9701−MMAPOSSMA)をシクロペンタノン(東京化成工業社製)に溶解し、溶液濃度0.5質量%の溶液を調製した。調製した溶液をスピンコート法によりポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm)上に塗布し、厚さ30nmのブロックコポリマー層を形成した。次いで、二硫化炭素溶媒を用いて、溶媒蒸気雰囲気下で、溶媒アニーリング処理を20分間行うことにより、ブロックコポリマー層にミクロ相分離構造を形成させた。ミクロ相分離構造を有するブロックコポリマー層の表面をAFMで観察した。
図4(a)にAFM写真(測定範囲:1μm×1μm)を示す。
その後、反応性イオンエッチング装置(Samco社製、UV-Ozone dry stripper)を用いて、酸素プラズマエッチングを、出力100W、真空圧5Pa、酸素流量10ccmの条件下で、10秒間行い、ブロックコポリマー層のポリメチルメタクリレートユニットの一部を選択的にエッチングし、ヘキサン溶媒で洗浄し、微細孔からなるポーラス構造を有するポリマー層を得ることで、断熱フィルムを作製した。得られた断熱フィルムのポリマー層の表面をAFMで観察した。
図4(b)にAFM写真(測定範囲:1μm×1μm)を示す。
得られた断熱フィルムのプラスチックフィルムの前記ポーラス構造を有するポリマー層が形成された面とは反対側の面に、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:20μm)を積層し、粘着剤層付きの断熱フィルムを作製した。
断熱フィルムのポリマー層の微細孔の平均孔径、熱伝導率、断熱フィルムのヘイズ値及び粘着剤層付きの断熱フィルムの断熱性評価結果(ガラス基板の温度)を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
ブロックコポリマーとして、ポリメチルメタクリレートユニット(PMMAユニット)とポリスチレンユニットとが結合してなるブロックコポリマー(創和科学株式会社製、P2400-SMMA)をトルエンに溶解し、溶液濃度1質量%の溶液を調製した。調製した溶液をスピンコート法によりポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm)上に塗布し、厚さ150nmのブロックコポリマー層を形成した。次いで、ホットプレート上でガラス転移温度以上の120℃で10分間熱処理し、ブロックコポリマー層にミクロ相分離構造を形成した。
その後、ブロックコポリマー層に、照度10mW/cm
2で2分間紫外光を照射することで、ブロックコポリマー層のPMMAユニットの一部を選択的にエッチングし、酢酸溶媒で洗浄し、微細孔からなるポーラス構造を有するポリマー層を得ることで、断熱フィルムを作製した。得られた断熱フィルムのポリマー層の表面をSEMで観察した。
図5にSEM写真(測定範囲:1μm×1μm)を示す。
得られた断熱フィルムのプラスチックフィルムの前記ポーラス構造を有するポリマー層が形成された面とは反対側の面に、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:20μm)を積層し、粘着剤層付きの断熱フィルムを作製した。
断熱フィルムのポリマー層の微細孔の平均孔径、熱伝導率、断熱フィルムのヘイズ値及び粘着剤層付きの断熱フィルムの断熱性評価結果(ガラス基板の温度)を表1に示す。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、ブロックコポリマー層の形成のみで、ポーラス構造を形成しない以外は、実施例1と同様に断熱フィルムを作製した。得られた断熱フィルムのプラスチックフィルムのポーラス構造を有さないブロックコポリマー層が形成された面とは反対側の面に、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:20μm)を積層し、粘着剤層付きの比較用の断熱フィルムを作製した。
比較用の断熱フィルムのブロックコポリマー層の熱伝導率、比較用の断熱フィルムのヘイズ値及び粘着剤層付きの比較用の断熱フィルムの断熱性評価結果(ガラス基板の温度)を表1に示す。
【0034】
実施例1〜3では、比較例1に比べ、熱伝導率が低く、ガラス基板に貼付した断熱フィルム側の面の温度と、ガラス基板側の面の温度とから明らかなように、温度上昇が非常に低く抑えられていることがわかった。また、ヘイズ値がほぼ維持され、透明性が高いことがわかった。
【0035】
【表1】