特許第6445983号(P6445983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445983
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】複合材料レイアップ機
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20181217BHJP
   B26D 1/30 20060101ALI20181217BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20181217BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   B29C70/38
   B26D1/30 501N
   B26D1/30 501C
   B26D1/30 501A
   B26D1/30 501H
   B26D1/30 501B
   B29C70/16
   B29K105:08
【請求項の数】21
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-562333(P2015-562333)
(86)(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公表番号】特表2016-512796(P2016-512796A)
(43)【公表日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】GB2014050817
(87)【国際公開番号】WO2014140637
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】13/839,531
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1320990.3
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515254563
【氏名又は名称】コンポジット テクノロジー アンド アプリケーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アンソニー,デイル
(72)【発明者】
【氏名】コープ,ラルフ ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】クコン,ジョン アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ケース,ミシェル,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ティングル,ジェームズ
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−521656(JP,A)
【文献】 特表2009−504425(JP,A)
【文献】 米国特許第05979531(US,A)
【文献】 特表2008−538094(JP,A)
【文献】 米国特許第05110395(US,A)
【文献】 特表2011−508708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00−70/88
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04− 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個々の長さの細長い繊維強化材料を物品に塗布するための複合材料レイアップ機であって、前記レイアップ機が、
支持ヘッドと、
複数の個々の長さの細長い繊維強化材料を断つための、前記支持ヘッドによって保持される切断機構であって、前記切断機構が、
前記支持ヘッドに取り外し可能に取り付けられたカセットと、
前記カセットから分離されかつ、前記支持ヘッドに結合されて前記支持ヘッドに対して移動可能な複数の切断要素と、
前記カセットに静的に設置された複数の対応する反作用要素と、
を備え、
各切断要素が、それぞれの切断要素と反作用要素がそれらの間に形成されたニップを通って延びる或る長さの細長い繊維強化材料を断つように協働する切断ストロークを行うべく対応する反作用要素に対して変位可能である、
切断機構と、
を備える、複合材料レイアップ機。
【請求項2】
前記切断機構が、前記反作用要素を前記切断要素から分離するために前記カセットを前記支持ヘッドから取り外すことができるように構成される、請求項1に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項3】
前記反作用要素が、前記カセットに取り外し可能に設置される、請求項1は2に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項4】
前記切断要素が、前記反作用要素よりも硬い材料からなる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項5】
前記カセットが、複数の誘導ダクトを備え、各反作用要素が、前記反作用要素と対応する切断要素との間のニップから離れるように前記繊維強化材料を誘導するように構成されたそれぞれの誘導ダクトに隣接して配置される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項6】
各誘導ダクトが、ダクト入口開口部からダクト出口開口部にテーパする外形を有する、請求項5に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項7】
前記カセットが、前記カセットから離れるように前記個々の長さの繊維強化材料を誘導するように構成された出口誘導ローラを備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項8】
各反作用要素が切れ刃を有し、各切断要素が切れ刃を有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項9】
各切断要素の切れ刃が、切断ストロークにおいて前記切断要素と前記反作用要素がはさみの作用で協働するように、対応する反作用要素の切れ刃に対して傾斜している、請求項8に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項10】
各反作用要素の切れ刃が、切断ストロークにおいて対応する切断要素の切れ刃がたどる経路に触れる、請求項8は9に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項11】
前記反作用要素が平らである、請求項8乃至10のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項12】
前記カセットが、各反作用要素の切れ刃を対応する切断要素の方に弾性的に偏向することができる調整手段をさらに備える、請求項11に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項13】
前記調整手段が、各反作用要素につき1つである複数の調整ねじを含み、各調整ねじが、その反作用要素に作用するように調整されて、これにより、前記切れ刃を偏向することができる、請求項12に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項14】
複数の反作用要素は、少なくとも1つの列に、隣り合わせて配置される、請求項8乃至13のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項15】
反作用要素の2つの列がある、請求項14に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項16】
反作用要素の第1の列の切れ刃が、反作用要素の第2の列の切れ刃に面する、請求項15に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項17】
少なくとも2つの反作用要素が、前記カセットに取り外し可能に設置されたホルダによって前記カセットに設置され、前記少なくとも2つの反作用要素のそれぞれが、前記ホルダに個々に取り外し可能に設置される、請求項8乃至16のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項18】
2つのホルダがあり、反作用要素の各列がそれぞれのホルダに対応する、請求項15に従属する場合の請求項17に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項19】
各切断要素が、ピボット軸を中心としてピボット運動可能な別個の細長いアームに結合され、前記細長いアームが、切断ストローク中に円弧状経路に沿って前記切断要素を動かすように配列される、請求項8乃至18のいずれか1項に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項20】
各切断要素の切れ刃が、対応するピボット軸に平行であり、各反作用要素の切れ刃が、対応するピボット軸に対して傾斜している、請求項19に記載の複合材料レイアップ機。
【請求項21】
複数の個々の長さの細長い繊維強化材料を物品に塗布するための複合材料レイアップ機であって、前記レイアップ機が、
支持ヘッドと、
複数の個々の長さの細長い繊維強化材料を断つための、前記支持ヘッドによって保持される切断機構であって、前記切断機構が、
前記支持ヘッドに結合され、かつ、前記支持ヘッドに対して移動可能な複数の切断要素と、
前記支持ヘッドに取り外し可能に取り付けられたカセットであって、それに静的に設置されたそれぞれが切れ刃を有する複数の対応する反作用要素を有するカセットと、
を備え、複数の反作用要素は前記カセットに取り外し可能に設置され、前記カセットが、
ダクト入口開口部からダクト出口開口部にテーパするそれぞれの外形をそれぞれが有する複数の誘導ダクトであって、各反作用要素が、前記反作用要素と対応する切断要素との間のニップから離れるように前記繊維強化材料を誘導するように構成されたそれぞれの誘導ダクトに隣接して配置される、複数の誘導ダクトと、
各反作用要素の切れ刃を対応する切断要素の方に弾性的に偏向することができる調整手段と、
を備え、
各切断要素が、それぞれの切断要素と反作用要素がそれらの間に形成されたニップを通って延びる或る長さの細長い繊維強化材料を断つように協働する切断ストロークを行うべく対応する反作用要素に対して変位可能である、
切断機構と、
を備える、複合材料レイアップ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの長さの細長い繊維強化材料を物品に塗布するための複合材料レイアップ機に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維複合構成材は、軽量と強度との組み合せを必要とする用途に、例えばスポーツ用品及び航空宇宙部品に、頻繁に用いられる。ほとんどの繊維複合材製造プロセスは、レイアッププロセスで繊維強化材料の連続層が物品又はモールドに塗布されることを必要とする。マトリクス材料が、繊維強化材料に予め塗布される(予め含浸される、すなわち「プリプレグ」である)か、又はオートクレーブの中又は外での硬化前に強化材料に後で塗布される。最近の製造開発は、レイアッププロセスが自動的に行われることを可能にした。
【0003】
3つの例示的な自動複合材製造プロセスは、自動テープ積層(Automatic Tape Laying:ATL)、自動繊維配置(Automatic Fibre Placement:AFP)、及び自動フィラメント巻付け(automatic filament winding)である。簡単に言えば、ATLは、繊維強化材料を含むテープの物品への塗布に関する。テープは、通常、マトリクス材料(例えばエポキシ樹脂)で予め含浸される一方向繊維を含む。連続するテープ層は、通常、プライ構造をなすように互いに異なる配向で塗布される。テープは、通常、アプリケータローラによって物品に塗布される。
【0004】
AFPでは、繊維強化材料が、複数の個々の繊維を含む「トゥ」、又は複数の「トゥ」の形態で物品に塗布される。「トゥ」は、より広いテープからの細い幅のテープスリットである場合がある。AFPは、通常、より高い度合いの湾曲又は一様でない湾曲を有する複雑な部分に、より適している。繊維は、通常、マトリクス材料で予め含浸されるか、又はマトリクス材料の浴に通される。一続きの又は一連の「トゥ」が、通常、アプリケータローラによって物品に塗布される。
【0005】
自動フィラメント巻付けは、物品が通常は回転マンドレルとして機能するという点でAFPとは異なり、レイアップ機は、通常、マンドレル表面上に張力のかかった状態で繊維のトゥを塗布するためにマンドレルを横断する。トゥがマンドレル上におかれる角度は、連続する層が、プライ構造をなし、かつ、構成材の特性に影響を及ぼす(例えば、製造される構成材の圧縮強度又は引張強度を向上させる)べく互いに異なる配向で位置するように、マンドレルの連続パス間で調整することができる。繊維のトゥは、通常、マンドレルとレイアップ機のアプリケータローラとの間のトゥの張力によって物品に塗布される。
【0006】
上記のプロセスのすべてにおいて、プロセスの終了時に、又はプロセス中の一段階の終了時に繊維強化材料(予め含浸されているか又は予め含浸されていない)のトゥ又はテープを断つ(又は切断する)必要がある。
【0007】
しかしながら、公知の複合材レイアップ機で用いられる切断機構は大きく、これにより、レイアップ機は先端領域において大きくなる。物品のきつい湾曲又は他の近づくのが困難な部分の上に先端領域を操作することができない場合があるため、大きな先端領域は、レイアップ機によって繊維強化材料を塗布することができる物品の複雑さを制限する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、先端領域においてあまり大きくない改善された複合材レイアップ機を提供することならびにレイアップ機と共に用いるための改善された切断機構を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、複数の個々の長さの細長い繊維強化材料を物品に塗布するための複合材料レイアップ機が提供され、レイアップ機は、支持ヘッドと、複数の個々の長さの細長い繊維強化材料を断つための支持ヘッドによって保持される切断機構と、を備え、切断機構は、支持ヘッドに結合されて支持ヘッドに対して移動可能な複数の切断要素と、支持ヘッドに取り外し可能に取り付けられたカセットであって、これに静的に設置された複数の対応する反作用要素を有するカセットと、を備え、各切断要素は、それぞれの切断要素と反作用要素がそれらの間に形成されたニップを通って延びる或る長さの細長い繊維強化材料を断つように協働する切断ストロークを行うべく対応する反作用要素に対して変位可能である。「静的に」とは、使用中に反作用要素が切断ストロークを行うために動かないことを意味する。
【0010】
複数の切断要素がカセットから分離されてもよい。切断機構は、反作用要素を切断要素から分離するためにカセットを支持ヘッドから取り外すことができるように構成されてもよい。
【0011】
切断機構は、カセットと、カセットに静的に設置される複数の反作用要素と、を備えるカセット組立体を備えてもよい。切断機構は、カセット組立体を切断要素から分離するためにカセット組立体を支持ヘッドから取り外すことができるように構成されてもよい。切断機構は、カセット組立体を切断要素とは独立して支持ヘッドから取り外すことができるように構成されてもよい。
【0012】
カセット組立体は可動部を有していなくてもよい。言い換えれば、カセット組立体は、機器の動作中に支持ヘッドに対して静止したままであるように構成される部分からなってもよい。
【0013】
カセットは、前面及び後面を有してもよい。切断要素が切断ストローク中にカセットの後面を通過するように、カセットが支持ヘッドに取り付けられる場合に切断要素の近傍に後面があってもよい。前面は、物品の近傍または機器の塗布領域の近傍にあってもよく、ニップから離間されており、そこからいくつかの長さの繊維強化材料を物品に塗布することができる。
【0014】
反作用要素は、カセットに取り外し可能に設置されてもよい。
【0015】
切断要素は、反作用要素よりも硬い材料からなってもよい。
【0016】
カセットは、複数の誘導ダクトを備えてもよい。各反作用要素は、それぞれの誘導ダクトに隣接して配置されてもよく、反作用要素と対応する切断要素との間のニップから離れるように繊維強化材料を誘導するように構成されてもよい。
【0017】
各誘導ダクトは、ダクト入口開口部からダクト出口開口部にテーパする外形を有してもよい。
【0018】
カセットから離れるように個々の長さの繊維強化材料を誘導するように構成された出口誘導ローラをカセットが備えてもよい。
【0019】
各反作用要素は切れ刃を有してもよく、各切断要素は切れ刃を有してもよい。各切断要素の切れ刃は、切断ストロークにおいて切断要素と反作用要素がはさみの作用で協働するように、対応する反作用要素の切れ刃に対して傾斜していてもよい。
【0020】
各反作用要素の切れ刃は、切断ストロークにおいて対応する切断要素の切れ刃がたどる経路に触れてもよい。
【0021】
反作用要素は、実質的に平らであってもよい。カセットは、各反作用要素の切れ刃を対応する切断要素の方に弾性的に偏向することができる調整手段をさらに備えてもよい。調整手段は、各反作用要素につき1つである、複数の調整ねじを含んでもよい。各調整ねじは、その反作用要素に作用するように調整されてもよく、これにより、切れ刃を偏向する。
【0022】
複数の反作用要素は、少なくとも1つの列に、隣り合わせて配置されてもよい。反作用要素の2つの列が存在してもよい。反作用要素の第1の列の切れ刃は、反作用要素の第2の列の切れ刃に面していてもよい。少なくとも2つの反作用要素は、カセットに取り外し可能に設置されるホルダによってカセットに設置されてもよい。少なくとも2つの反作用要素のそれぞれは、ホルダに個々に取り外し可能に設置されてもよい。2つのホルダが存在してもよく、反作用要素の各列はそれぞれのホルダに対応する場合がある。
【0023】
各切断要素は、ピボット軸を中心としてピボット運動可能な場合がある別個の細長いアームに結合されてもよい。細長いアームは、切断ストローク中に円弧状経路に沿って切断要素を動かすように配列されてもよい。各切断要素の切れ刃は、対応するピボット軸に実質的に平行であってもよい。各反作用要素の切れ刃は、対応するピボット軸に対して傾斜していてもよい。
【0024】
本発明の一態様によれば、複合材料レイアップ機において細長い繊維強化材料を断つための切断機構が提供され、切断機構は、それらの間のニップを通って延びる繊維強化材料を断つように協働する切断要素及び反作用要素を備え、切断要素は、切断ストロークを行うべく反作用要素に対して切断要素を変位させるためにニップから離間されたピボット軸を中心としてピボット運動可能な細長いアーム上に設置され、機構は、ピボット軸を横断する送り方向にニップを通して繊維強化材料を誘導するように構成された誘導手段と、切断ストロークにおいて細長いアームを駆動するための作動装置と、をさらに備え、作動装置は、切断要素から離れた位置で細長いアームに作用する。
【0025】
作動装置は、ピボット軸の一方の側部上で細長いアームに作用してもよく、切断要素は、ピボット軸の反対の側部上で細長いアーム上に設置されてもよい。ピボット軸が細長いアームからオフセットされる構成では、ピボット軸の位置は、細長いアーム上へのピボット軸の垂直投影とみなされる。
【0026】
細長いアームは、ピボット軸に実質的に垂直な平面内に延びてもよい。誘導手段は、ピボット軸に実質的に垂直な平面内に延びる誘導経路に沿って繊維強化材料を誘導するように構成されてもよく、細長いアームに沿って延びてもよい。
【0027】
誘導手段は、ニップに隣接する出口を有する誘導チャネルを含んでもよい。誘導チャネルは細長いアームに形成されてもよい。誘導チャネルは、その長さの少なくとも一部にわたって囲われたチャネルであってもよく、この場合、出口はスロットであってもよい。誘導チャネルは、一方の端でピボット運動可能である場合がある取り外し可能なカバーを備えてもよい。
【0028】
切断要素は、切断要素の切れ刃がチャネルの端に位置するように配置されてもよい。細長いアームは、第1の切断要素を受け入れるためのスロットを備えてもよい。切断要素の切れ刃は出口のリップを提供してもよい。切断要素は、切断要素の切れ刃で終端するチャネルの表面と面一の誘導面を有してもよい。
【0029】
切断要素は、交換可能であるように細長いアーム上に取り外し可能に設置されてもよい。切断要素は硬化された材料を含んでもよい。
【0030】
切断要素及び反作用要素は、切断ストロークによって繊維強化材料に形成された切断部が細長い繊維複合材料を横断する方向に及び/又はピボット軸に実質的に平行に延びるように配置されてもよい。
【0031】
繊維強化材料が、ピボット軸を含む平面に垂直な方向にそれらの間を通過できるように切断要素及び反作用要素が配置されてもよい。
【0032】
切断要素及び反作用要素は、切断ストロークにおいて切断要素と反作用要素がはさみの作用で協働するように互いに対して傾斜しているそれぞれの切れ刃を有してもよい。切断要素及び反作用要素は、対向する切れ刃を有してもよい。
【0033】
切断要素及び反作用要素は、それぞれの切れ刃を有してもよく、反作用要素の切れ刃は、切断ストロークにおいて切断要素の切れ刃がたどる円弧状経路に触れてもよい。
【0034】
細長いアームは、ピボット軸を中心としたピボット運動可能な移動のための構造支持体に設置されてもよく、ピボット軸は構造支持体に対して固定されている。
【0035】
切断要素は、アレイに配置された複数の切断要素のうちの1つであってもよく、少なくとも1つの反作用要素が存在する場合があり、各切断要素は、切断要素とそれぞれの反作用要素との間のそれぞれのニップを通って延びるそれぞれの長さの繊維強化材料を断つべく反作用要素又は反作用要素のうちの1つと協働する。各切断要素は、切断ストロークを行うべく反作用要素又はそれぞれの反作用要素に対して切断要素を変位させるために、ニップから離間されたピボット軸を中心としてピボット運動可能な対応する複数の細長いアームのうちの1つに設置されてもよい。誘導手段は、ピボット軸又は各ピボット軸を横断する場合がある送り方向でニップを通して繊維強化材料を誘導するように構成されてもよい。それぞれの切断ストロークにおいて細長いアームを駆動するための少なくとも1つの作動装置が存在してもよく、作動装置又は各作動装置は、それぞれの切断要素から離れた位置で細長いアームに作用してもよい。
【0036】
細長いアームのアレイのピボット軸は互いに実質的に平行であってもよい。細長いアームのアレイのピボット軸は互いに実質的に一致していてもよい。
【0037】
アレイは、ピボット軸を通って延びる平面の反対側に配置される少なくとも2つのアレイのうちの1つであってもよい。
【0038】
アレイ又は各アレイの細長いアームは、列をなすように実質的に隣り合わせて配置されてもよい。細長いアームの少なくとも2つの列が存在してもよく、各列の細長いアームは、実質的に隣り合わせて配置されてもよい。切断機構の遠位端に向かって収束する場合がある細長いアームの2つのアレイが存在してもよい。
【0039】
少なくとも1つの作動装置は、それらを一斉に駆動するために2つ以上の細長いアームに結合されてもよい。各作動装置は、単一の細長いアームに作用してもよい。互いに独立して動作可能である場合がある複数の作動装置が存在してもよい。
【0040】
少なくとも1つの反作用要素は、少なくとも2つの異なる切断要素と協働するように配列されてもよい。各反作用要素は、単一の切断要素と協働するように配列されてもよい。
【0041】
本発明の一態様によれば、複合材料レイアップ機において細長い繊維強化材料を断つための切断機構が提供され、切断機構は、複数の切断要素と少なくとも1つの反作用要素とを備え、各切断要素は、切断要素とそれぞれの反作用要素との間のそれぞれのニップを通って延びるそれぞれの長さの繊維強化材料を断つために反作用要素又は反作用要素のうちの1つと協働し、各切断要素は、切断ストロークを行うべくそれぞれの反作用要素に対して切断要素を変位させるためにニップから離間されたピボット軸を中心としてピボット運動可能なそれぞれの細長いアーム上に設置され、機構は、繊維強化材料をピボット軸又は各ピボット軸を横断する送り方向にニップを通して誘導するように構成された誘導手段と、それぞれの切断ストロークにおいて細長いアームを駆動するための少なくとも1つの作動装置と、をさらに備え、作動装置又は各作動装置は、それぞれの切断要素から離れた位置で細長いアームに作用する。
【0042】
本発明の一態様によれば、いくつかの長さの細長い繊維強化材料を物品に塗布するための複合材料レイアップ機が提供され、レイアップ機は、本明細書の任意の記述に係る切断機構と、切断機構を保持する支持ヘッドと、を備える。
【0043】
作動装置は、支持ヘッドに設置されてもよい。作動装置は、支持ヘッドと細長いアームとの間で作用してもよい。作動装置は、支持構造体の近位端の実質的に内側に配置されてもよい。
【0044】
作動装置は、被駆動要素及びベース要素を有するリニアアクチュエータを備えてもよく、作動装置は、被駆動要素をベース要素に対して直線的に動かすように動作可能であってもよい。ベース要素は支持ヘッドに結合されてもよく、被駆動要素は細長いアームに結合されてもよい。
【0045】
ベース要素及び/又は被駆動要素は、支持構造体の近位端の実質的に内側に配置されてもよい。
【0046】
作動装置は機械的リンク機構を介して細長いアームと結合されてもよく、細長いアームに作用してもよい。
【0047】
機械的リンク機構は、作動装置と細長いアームとの間で作用するベルクランクを含んでもよい。ベルクランクは、例えば機械的利点を提供するために、不揃いな長さのアームを有してもよい。ベルクランクは、均一性を上回る機械的利点を有してもよい。
【0048】
作動装置の少なくともいくつかは、各対の作動装置が互い違いになるように対に配列されてもよい。対のうちの第1の作動装置は、支持ヘッドの近位端に向かう方向で第2の作動装置に対してオフセットされてもよく、第1の作動装置は、それぞれの機械的リンク機構に接続するための延長されたアームを備えてもよい。
【0049】
機器は、作動装置が支持ヘッドに設置される作動領域から、いくつかの長さの繊維強化材料が切断されて物品に塗布される先端領域まで、概して長手方向の塗布方向に延びてもよい。作動領域は、先端領域から長手方向に離間されてもよい。塗布方向に対する法線面における機器の断面外形は先端領域において作動領域よりも小さくてもよい。
【0050】
支持ヘッドは、少なくとも1つの並進方向に移動可能であってもよい。支持ヘッドは、長手方向の回転軸を中心として回転するように構成されてもよい。
【0051】
本発明は、本明細書で言及される特徴の任意の組み合わせ及び/又は限定を含む場合があるが、このような特徴の組合せが相互に排他的である場合を除く。
【0052】
添付の図面の参照により、本発明の実施形態が単なる例として以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】いくつかの長さの細長い繊維強化材料を物品に塗布する複合材料レイアップマシンを示す。
図2図1のマシンの支持ヘッド及び切断機構の斜視図である。
図3図2の支持ヘッド及び切断機構の側面図である。
図4図2の支持ヘッド及び切断機構の切取斜視図である。
図5】1つの取り外し可能な誘導チャネルカバーが開位置にある状態の、図2の切断機構の斜視図である。
図6図2の切断機構の細長いアームの端面図である。
図7】或る長さの細長い繊維強化材料を切断している図2の切断機構の側部断面図である。
図8】取り外し可能なカセットを含む図2の切断機構の端の分解斜視図である。
図9】いくつかの長さの繊維強化材料がカセットを出ていく状態の、図2の切断機構の先端領域を示す。
図10】カセットと共に図2の切断機構の単一の細長いアームを示す。
図11図7に示された切断機構の切断要素及び反作用要素の拡大図である。
図12】切断機構の一部と共に図2の支持ヘッドの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、複合材料レイアップマシン10と、複合材料部品、例えばウィングなどの航空宇宙部品、を形成するために繊維複合材料が塗布されている加工物12と、を示す。図1に示すように、マシン10は、繊維複合材トゥ14が加工物12に塗布されるレイアッププロセスを行う。マシン10は、ベース又はガントリと、ベース又はガントリから延びる操作装置18と、を備え、操作装置18は、その遠位端で切断機構22を保持する支持ヘッド20を支持する。
【0055】
使用中に、マシン10は、いくつかのトゥ14を支持ヘッド20及び切断機構22を通して送り、アプリケータローラ24を用いてトゥ14を加工物12に塗布する。レイアッププロセスの適切な段階の終了時に、トゥ14が切断機構22によって切断される。この実施形態では、トゥ14は、エポキシ樹脂などのマトリクス材料を予め含浸されるが、他の実施形態では、各トゥは、繊維強化材料のみ(しばしば「ドライ繊維」と呼ばれる)を含む場合があり、マトリクス材料が後で付加される場合がある。
【0056】
以前から知られているレイアップマシンとは対照的に、マシン10は、そこでトゥ14が切断されて加工物12に塗布される、コンパクトな先端領域26を有する。コンパクトな先端領域26は、湾曲のきつい領域、あるいは細い凹部などの近づくのが困難な物品の他の部分の上に操作することができるため、マシン10が複雑な表面幾何学的形状を有する構成要素にレイアップすることを可能にする。後述するように、コンパクトな先端領域26は、アクチュエータなどのより大きな構成要素を先端領域26から離して配置することと、その切断場所から遠隔で作動させることができる切断機構22を備えることから恩恵を受ける。
【0057】
図2図4に示すように、支持ヘッド20及び切断機構22は、使用中に操作装置18(図2図4には図示せず)に取り付けられる支持ヘッドの近位端から、トゥ14が加工物12(図示せず)に塗布されて断続的に切断される切断機構22の遠位先端領域26まで、概して長手方向の塗布方向に延びる。
【0058】
支持ヘッド20は、支持ヘッド20の近位端からマシンの先端領域26に延びる2つの平行な三角形側板28を備える。側板28は、テーパした又は収束する外形を支持ヘッド20及び切断機構22に与える鋭角二等辺三角形の形状である。支持ヘッド20は、側板28間に支持される上側送り板及び下側送り板30をさらに備え、両部材30は、トゥ14を複数の隣接するチャネル32に沿って切断機構22の方に運ぶように構成される。この実施形態では、各送り板30は、それぞれ送りチャネル入口及び送りチャネル出口33を有する6つの隣接するチャネル32を有する。各送り板30は、使用中にトゥ14をチャネル32内に囲う外側カバー板34を備える。
【0059】
送り板30はまた、チャネル32の中に及びチャネル32を通してトゥ14を送るための従来のトゥ送り機を備え、これは詳細には説明されない。簡単に言えば、送り板30は、支持ヘッドの後ろ側に延び、かつトゥ14をチャネル32の中に誘導する上側及び下側リダイレクトローラ36と、チャネル32を通してトゥ14を進めるためにカバー板34の対応する間隙を通って延びる送りローラ38と、を備える。
【0060】
図3に示すように、各送り板30の内側は、それに切断機構22のアクチュエータ84,85が設置される、3つのアクチュエータ設置ポイントの2つの列40,41を備える。図4に最も良く示されるように、アクチュエータ設置ポイントの第1の列40はアクチュエータ設置ポイントの第2の列41から長手方向にオフセットされ、2つの列のそれぞれの設置ポイントは、それに設置されるアクチュエータが互い違いになるように互いに対して交互に横方向にオフセットされる(図4は、各送り板30につき1つのみの代表的なアクチュエータ84,85を示すことに留意されたい)。
【0061】
ここで図3及び図4を参照すると、切断機構22は、2つの送り板30の遠位端に隣接して三角形側板28の2つの先端領域間に配置される。切断機構は、2つの側板28間に延びるピボット心棒42と、塗布方向を横断して延びるピボット軸Aを中心としてピボット運動するためのピボット心棒42上に設置された複数の細長いアーム44と、を備える。ピボット心棒42は、三角形側板28の先端領域内に設けられた対応する穴の中に差し込まれる。
【0062】
細長いアーム44はそれぞれ、外方に面する開口部を有するチャネル区域の形態であり、かつ、ピボット心棒42を受け入れる横方向に延びる穴を有する内方に延びるピボット取付部46を有する。各アームのピボット取付部46は、細長いアームに沿ったほぼ半分の位置にあるが、僅かに遠位端により近い。この実施形態では、列の形態の2つのアレイに配置される12本の細長いアームが存在し、上側列46は隣り合わせて配置される6本の細長いアーム44を含み、下側列は隣り合わせて配置される残りの6本の細長いアーム44を含む。上側アーム及び下側アーム44のチャネル区域が互いに対して横方向にオフセットするように、2列の細長いアーム44はピボット心棒42上に交互に順番に配置される。
【0063】
細長いアーム44はそれぞれ、ピボット軸Aに実質的に垂直な平面に平行な方向に延びる。
【0064】
各細長いアームのチャネル区域の外形が、近位の誘導チャネル入口54(図5)及び遠位の誘導チャネル出口56(図6)を有する誘導チャネル52を形成する。細長いアーム44は、誘導チャネル入口54の横方向の位置が支持ヘッド20の送りチャネル出口33(図2)の位置に対応するように構成される。トゥ14の支持されない区域が最小になるように、送りチャネル出口33と誘導チャネル入口54との間に長手方向のほんの短い距離の分離が存在する。誘導チャネル52は、使用中にチャネル52が囲われるように取り外し可能なカバー58を備える(図5)。取り外し可能なカバー58は、例えばメンテナンスのために、誘導チャネル52に近づくことができるように、その近位端でピボット運動可能である。
【0065】
図6に示すように、切断要素60は、各細長いアーム44の遠位端に取り付けられる。切断要素60は硬化された材料を含む。この実施形態では、切断要素60の外面が誘導チャネル52の内壁と面一に位置するように、かつ、切断要素60の鋭い切れ刃62が誘導チャネル出口56で誘導チャネル52のリップを形成するように、各細長いアーム44は、切断要素60を受け入れるためのスロットを有する。切断要素60は、実質的に立方形の形状であるが、(図7に示すように)切断ストローク中に切れ刃62が切断要素の最遠位部であるように、切れ刃62から支持ヘッド20に向かう方向にテーパする切れ刃62に隣接するテーパした遠位端面を有する。同様に、細長いアーム44の端面は、切れ刃62から支持ヘッド20に向かう方向にテーパする。
【0066】
図7は、細長いアーム44と、切断機構22のさらなる構成要素を側面断面図で示す。誘導チャネルインサート63が、各誘導チャネル52の遠位端内に配置され、かつ、誘導チャネル出口56がスロットの形態であるようにU形の誘導チャネル52の2つの側壁間に固定される。インサート63は、切断要素60の切れ刃62に対向する誘導チャネル出口56の縁を画定する。使用中に、取り外し可能なカバー58がボルトによってインサート63に固定される。図7はまた、細長いアーム44が内方に回転させられる際に細長いアーム44の端の内面に接触するように構成される止め部64であって、この止まった位置を越えるさらなる回転を防ぐ止め部64を示す。止め部64は支持ヘッド20の三角形側板28間に設置される。
【0067】
ここで図8図11を参照すると、切断機構22は、2つの三角形側板28の遠位端に取り外し可能に設置されるカセット65をさらに備える。カセット65は、出口ダクト68の2つの列が形成されるカセット板66を備え、ダクト68はそれぞれ、トゥ14が通るダクト入口70及びダクト出口72を有する。ダクト68は、それらの横方向の位置がそれぞれの誘導チャネル出口56の位置に対応するように構成され、(後述するように)切断が行われた後でトゥ14を切断機構から離すように誘導するために提供される。
【0068】
塗布方向に沿ってテーパするテーパした外形を出口ダクト68が有するように、ダクト出口72はダクト入口70よりも小さい。ダクト出口72はダクト入口70よりも(すなわちピボット軸Aと平行な概して横方向に)狭くはないが、深さ(すなわち、ピボット軸A及び塗布方向に垂直な方向の深さ)はより小さい。
【0069】
ブレード凹部74が、出口ダクト入口70の上方に延在する位置でカセット板66の内面に形成され、ゆえに出口ダクト68は、これらの凹部74を貫通してカセット板66の外面に延びる。各ブレード凹部74は、反作用要素76の切れ刃78がそれぞれの出口ダクト入口70のすぐ隣に配置されるように、ブレード76の形態の反作用要素を受け入れるように構成される。この実施形態では、6つの反作用要素76が上側及び下側ブレードホルダ80のそれぞれに取り外し可能に取り付けられ、上側及び下側ブレードホルダ80は、それにブレード76を取り外し可能に設置することができる支持ストリップとしてはたらき、かつ、それら自体をカセット板66の上側面及び下側面にそれぞれ取り外し可能に設置することができる。
【0070】
図8に示すように、出口ダクト68の上側列は、下向きに突き出る反作用要素76を備え、出口ダクト68の下側列は、上向きに突き出る反作用要素76を備える。反作用要素76は、切断ストロークにおいてはさみの作用で一方の側部から他方の側部にかけてトゥ14が累進的に切断されるように、ピボット軸Aによって画定される概して横方向に傾斜している。切断要素60は、時間が経つにつれて、容易に交換可能な反作用要素76が切断要素60よりも先に摩耗するように、反作用要素76よりも硬い材料からなる。
【0071】
図9に示すように、出口誘導ローラ83は、カセット板66の外面に設置され、トゥ14が出口ダクト68を出てアプリケータローラ24に向かう際にトゥ14を支持するように構成される。図9はまた、カセット65を出るトゥ14が2つの列から交互に出口誘導ローラ83上に引き出されるように、上側列と下側列の出口ダクト68が互いから横方向にオフセットされることを示す。それに対応して、切断機構及び支持ヘッド20の上側列及び下側列の細長いアーム44及び送りチャネル32も、上述のように互いに対して横方向にオフセットされる。
【0072】
図10は、カセット65と共に単一の細長いアーム44を示す。上述のように、細長いアーム44及びカセット65は、誘導チャネル58の誘導チャネル出口56がカセット65の出口ダクト入口70と横方向に位置合わせされるように構成される。それに対応して、切断要素60は、ダクト68のすぐ隣に配置された反作用要素76と横方向に位置合わせされる。切断要素60及び反作用要素76は、それらの間にニップ、すなわち、切断されるべき材料が通過することができ、かつ、切断ストロークにおいて材料が切断される際に閉じる、切断要素60と反作用要素76との間のスペース、を画定するように構成される。具体的には、切断要素の切れ刃62は、切断ストロークにおいて細長いアーム44がピボットされる際にピボット軸Aを中心として円弧状経路をたどるように配置される。反作用要素76の切れ刃78は、切断ストローク中にピボット軸A及び支持ヘッド20に対して固定されたままである。切断要素60及び反作用要素76は、反作用要素76の切れ刃78が切断要素60の切れ刃62の円弧状経路に接触するように配置される。言い換えれば、切断要素の切れ刃62がたどる円弧状経路は、反作用要素76の切れ刃78によって画定されるラインが位置する仮想面を画定する。
【0073】
したがって、細長いアーム44は、トゥ14が切断要素60及び/又は反作用要素76によって切断されずに誘導チャネル52から出口ダクト68の中に入ることができる開位置と、図11に示すように切断要素60の切れ刃62と反作用要素76の切れ刃78が剪断、すなわちハサミの作用によってトゥ14を切断するべくすれ違った切断位置との間でピボットするように構成される。この実施形態では、細長いアーム44の遠位端は、開位置から切断位置へと外向きに動く。
【0074】
図11は、細長いアーム44の遠位端及びカセット65を含む、マシン10の先端領域26を断面で示す。繊維複合材トゥ14が細長いアーム44の誘導チャネル52内に示される。細長いアーム44は、切断要素60の切れ刃62が切断ストロークにおいて繊維複合材トゥ14を剪断によって切断するべく反作用要素76の切れ刃78を通過して円弧状経路に沿って外向きに動いた、切断位置にある。切断されたトゥ14の遠位部は、反作用要素76から出口ダクト68を通って出口誘導ローラ83上に延びる。
【0075】
図11はまた、反作用要素76に隣接するカセット板66のタップ付き貫通穴82内に存在する調整ねじ81を示す。調整ねじ81を、その非偏向位置において反作用要素76に接触するまで貫通穴82にねじ込むことができる。調整ねじ81は、次いで、反作用要素76の切れ刃を偏向位置に弾性的に偏向するようにさらに回されてもよく、切断要素60の切れ刃と反作用要素76の切れ刃の位置合わせを微調整するために締められても又は緩められてもよい。反作用要素76は弾性的であるため、調整ねじ81が緩められると、その非偏向位置に戻ることになる。これは、反作用要素76を調整するための調整手段を提供する。調整ねじ81を用いることとは対照的に、他の実施形態では、調整手段は、反作用要素76を切断要素60の方に偏向する力を提供する1つ以上のばねを備えてもよい。
【0076】
ここで図12を参照すると、アクチュエータ84,85が、機械的リンク機構を介して細長いアーム44に作用することによって切断ストロークを通じて切断要素60を動かすように構成される。図12は、細長いアーム44の下側列についてのアクチュエータ84,85のみを示すが、細長いアーム44の上側列についてのアクチュエータ84,85の対応する組が提供されることが理解されるであろう。アクチュエータは、任意の適切な形態のアクチュエータ、例えば、電磁気アクチュエータ、空気圧アクチュエータ又は油圧アクチュエータ、であってもよい。
【0077】
各リニアアクチュエータ84,85は、アクチュエータ設置ポイント40,41において支持ヘッド20のそれぞれの送り板30の内側にピボット運動可能に設置されるベース要素86と、ドライブロッド90によってベース要素86に接続されており、ベース要素86に対して直線的に移動可能な被駆動要素88と、を備える。切断機構22は、ベルクランク92を備える機械的リンク機構によって被駆動要素88の直線的な動きを細長いアーム44(ゆえに切断要素60)のピボット運動に伝達するように構成される。ベルクランク92は、3つのピボット運動可能な取付点を有する実質的に三角形の要素である。ベルクランク92は、第1の取付点で支持ヘッド20にピボット運動可能に取り付けられ、かつ、それぞれ第2及び第3のピボット運動可能な取付点でアクチュエータ84の被駆動要素88及び細長いアーム44の近位端にピボット運動可能に取り付けられる。ベルクランク92は、したがって、被駆動要素88及び細長い部材44がそれぞれ取り付けられる2つの実質的に垂直なアームを有する。取付部は、これらのアームが異なる長さであるように相対的に位置決めされる。具体的には、被駆動要素88の直線運動が機械的利点を伴って細長いアーム44のピボット運動に変換されるように、被駆動要素88は、ベルクランク92がそれによって細長いアーム44に作用するものよりも大きいモーメントアームを通じてベルクランク92に作用する。この機械的利点により、ベルクランク92によって細長いアーム44に印加される力が作動装置84によってベルクランク92に印加される力を上回る結果となる(1つよりも多い機械的利点がもたらされる)。
【0078】
上述のように、支持ヘッド上のアクチュエータ設置ポイント40,41は、それに取り付けられるアクチュエータ84が互い違いになるように2つの列の上に提供される。この構成は図12に明瞭に示され、アクチュエータ設置ポイント41の近位列に設置されるアクチュエータ85用のより長いドライブロッド90を必要とする。これらのより長いドライブロッド90は、アクチュエータ設置ポイント40の遠位列に設置される隣接するアクチュエータ84間を通るのに十分なだけ薄い。この互い違い構成は、比較的大きなアクチュエータ84が比較的狭いスペースに設置されることを可能にする。
【0079】
使用中に、支持ヘッド20及び切断機構22を通してアプリケータローラ24に送られたトゥ14が、自動的に制御されるレイアップ手順の一部として加工物12の表面に塗布されるように、操作装置18が、切断機構22を保持する支持ヘッド20を加工物12に対して動かす。この実施形態では、操作装置18は、支持ヘッド20を前後及び上下に動かすことができ、加工物12を左右に動かす及び3つの相互に垂直な軸を中心として回転させることができる。これは、6つの自由度を提供する。
【0080】
切断機構22を通してトゥ14が継続的に送られる際に、それぞれの細長いアーム44は、上述のようにトゥ14が切断要素60又は反作用要素76によって切断されることなく誘導チャネル出口56からダクト68を通ることができる開位置にある。
【0081】
レイアップ手順の適切な段階で、マシン10は、繊維複合材トゥ14が切断されるべきであると決定することになる。マシン10は、各トゥ14を個々に、順次に、又は同時に切断するように動作可能である。特定の繊維複合材トゥ14が切断されるべきであると決定されると、マシン10は、アクチュエータ84,85が被駆動要素88をベース要素86の方に引き出すようにトゥ14をそれぞれのニップに運ぶそれぞれの細長いアーム44に関連するそれぞれのアクチュエータ84,85を作動させる。この動きが、ベルクランク92を支持ヘッド20に対してピボットさせ、これが次に、細長いアーム44の近位端をピボット軸Aを中心として内方に動かす。ベルクランク92の異なるアーム長に起因して、ベルクランク92は、細長いアーム44の近位端の方がより小さい変位(円弧の長さ)であるにもかかわらず、細長いアーム44に印加される回転力がアクチュエータ84によってベルクランクに印加される回転力を上回る結果になるという機械的利点を有する。
【0082】
したがって、アクチュエータ84のピボット運動は、ハサミのような剪断作用でそれらの間のニップに位置するトゥ14を断つ切断ストロークにおいて切断要素60の切れ刃62が反作用要素76の切れ刃78と協働するように、細長いアーム44の遠位端を外向きにピボットさせる。
【0083】
ピボット軸Aが細長いアーム44の近位よりも遠位端に近いため、細長いアーム44は、細長いアーム44の近位端に比べて細長いアーム44の遠位端の方がより小さい変位(円弧の長さ)であるにもかかわらず、切断ストローク中に細長いアーム44の遠位端で切断要素60に印加される力がベルクランク92によって細長いアーム44の近位端に印加される力を上回る結果になるという機械的利点を有する。
【0084】
切断ストロークの後で、切断されたトゥ14の遠位部が、出口誘導ローラ83及びアプリケータローラ24によって誘導されて、加工物12の上方の支持ヘッド20のその後の動きによってニップから引き出されてもよい。それぞれのアクチュエータ84,85は、次いで、被駆動要素88をベース要素86から離すように動かすよう制御され、細長いアーム44のピボット運動を逆にし、細長いアーム44の遠位端の内面が止め部64上に置かれる開位置にアーム44を戻す。
【0085】
マシン10は、次いで、複合材トゥ14をもう一度ニップに通して送るように送りローラ38を制御してもよい。
【0086】
この実施形態では、マシン10を通して送られた各繊維複合材トゥ14は、それぞれの作動装置84,85に結合された細長いアーム44と関連付けられる。特定のトゥ14を断つために、それぞれのアクチュエータ84,85が作動される。しかしながら、他の実施形態では、単一のアクチュエータ84が2つ以上のトゥ14を同時に切断するように単一のアクチュエータ84に2つ以上の細長いアーム44が結合されてもよい。
【0087】
この実施形態では、トゥ14が切断されるべき時に操作装置18が加工物12に対する支持ヘッド20及び切断機構22の動きを止めることになるが、他の実施形態ではアーム18が動き続けてもよいことが理解されるであろう。
【0088】
上述のように、作動装置を先端領域から離して配置することは、先端領域が小型となることを可能にする。これは、湾曲のきつい領域、細い凹部及び他の届き難い領域を有する加工物などの複雑な幾何学的形状の加工物のレイアッププロセスにおいてマシンの先端領域が加工物との衝突を避けることができるという利点を有する。コンパクトな先端領域は、切断要素及び反作用要素(すなわち切断場所)がアプリケータローラに近くなることを可能にし、これは以前に達成可能であった長さよりも短い最小トゥ長さを可能にする場合がある。
【0089】
ベルクランク及び細長いアームの機械的利点は、アクチュエータにおいてより低い力が印加される一方で、切断ストローク中に切断要素と反作用要素との間で高い切断力を達成することができるという効果を有する。機械的リンク機構の機械的利点は、したがって、高出力定格を有する大きなアクチュエータの必要性を低減する場合がある。
【0090】
取り外し可能なカセットは、切断部の容易なメンテナンス及び交換を可能にする。カセットは素早く取り外すことができ、反作用要素は、反作用要素の全ての列が対応する要素ホルダ上に設置される場合に個々に交換されるか、又は代替的にカセットとこれに静的に設置される反作用要素との全てを交換することもできる。カセットの取り外し及び交換は、必要な場合がある支持ヘッドに結合された切断要素のいかなる取り外し又は交換からも独立して行うことができる。したがって、切断要素が反作用要素よりも硬い材料からなる場合、時間が経つにつれて反作用要素が切断要素よりも先に摩耗するように、反作用要素が設置されるカセットは、より硬い、より長持ちする切断要素の同時交換を必要とせずに素早く交換することができる。取り外し可能なカセットは、したがって、結果的に反作用要素の交換のための機器ダウンタイムを最小にする。取り外し可能なカセットはまた、反作用要素が交換される際に、より高価な場合があるより摩耗しにくい切断要素が交換される必要がないため、結果的にメンテナンス費用を最小にする場合がある。
【0091】
さらに、取り外し可能なカセットは、必要に応じて、細長いアームに結合された切断要素に容易に接近して交換することを可能にする。特に、カセットは、反作用要素を切断要素から分離するために支持ヘッドから取り外すことができる。カセットの取り外しは、他の方法では切断要素がカセットとは別個であるにもかかわらず反作用要素及びカセットへのそれらの近接性に起因してアクセスできない場合があるため、切断要素に容易に接近して交換することを可能にする。したがって、取り外し可能なカセットは、最小の機器ダウンタイムでの迅速なメンテナンスを可能にする。
【0092】
本発明の実施形態は、予め含浸された繊維複合材トゥへの言及によって説明されているが、本発明は、他の形態の繊維複合材及び/又は繊維強化材料の塗布及び切断に等しく適用可能であることが理解されるであろう。例えば、本発明は、繊維複合材又は繊維強化材料のテープの塗布及び切断に等しく適用可能である。テープは、一方向炭素繊維を含んでもよく、マトリクス材料を予め含浸されていても又はされていなくてもよい。さらに、上記の説明では、「トゥ」という用語は、ドライ繊維強化/繊維複合材料の複数の個々のストランドに、及び繊維強化/繊維複合材料の細いテープに等しく適用可能であることが理解されるであろう。
【0093】
誤解を避けるために、「複合材料」という表現は、複合構成材(例えば、ドライ複合材繊維)を作製するのに用いられる強化材料と、強化材料及びマトリクス材料の両方を含む複合材料と、の両方を包含することを意図している。
【0094】
支持ヘッドが前後及び上下に動き、加工物が左右に及び3つの軸を中心として回転して動く本発明の実施形態が説明されているが、他の実施形態では支持ヘッド及び加工物は他の動きが可能であってもよいことが理解されるであろう。例えば、加工物は、前後及び左右に動くことができてもよく、一方、支持ヘッドが、上下に、及び3つの相互に垂直な軸を中心として回転して動くことができてもよい。この構成はまた、6つの自由度を提供するであろう。もちろん、6つよりも多い又は少ない自由度を提供することも可能である。加工物は、マンドレルを含んでもよく、又はマンドレル上に設置されてもよい。
【0095】
さらに、本発明は、自動繊維配置(AFP)プロセスとの関連で説明されているが、本発明は、自動テープ積層(ATL)及び自動繊維巻付けを含む他の複合材レイアッププロセスに等しく適用可能であることが理解されるであろう。
【0096】
説明されている本発明の実施形態は実質的に直線的に延びる細長いアームを含むが、他の実施形態では、細長いアームは、ピボット軸に垂直な平面内に依然として延びつつ、湾曲していても或いは非直線状であってもよいことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、ベルクランク又は各ベルクランクをそれぞれの細長いアームと一体に形成することが可能な場合がある。
【0097】
説明されている本発明の実施形態は単一のピボット心棒及び単一の対応するピボット軸を含むが、他の実施形態では、複数のピボット軸が存在する場合があることが理解されるであろう。例えば、隣り合わせの細長いアームの各列につき別個のピボット心棒が存在する場合がある。さらに、細長いアームのサブセット又は個々の細長いアームがそれらの独自のピボット軸を有してもよい。ピボット軸は、互いから長手方向に分離することもでき、及び/又は互いの上及び下にあってもよい(すなわち、ピボット軸及び概して長手方向の塗布方向に垂直な方向で平行であるが離間される)。
【0098】
上記の説明では、概して長手方向に延びる塗布方向は、支持ヘッド及び切断機構の全体的な近位から遠位又は後ろから前への方向に関する。説明される実施形態では、これは概して繊維強化材料が支持ヘッド及び切断機構を通して送られて加工物に塗布される方向であるので、塗布方向と呼ばれる。ピボット軸は、便宜のため概して水平又は横方向と呼ばれる方向を画定するが、マシンは使用中にピボット軸が水平のままであるように配向される必要はない。同様に、「垂直」、「上側」、及び「下側」などの言及は、ピボット軸及び塗布方向に垂直な方向に関係する。また、支持ヘッド及び切断機構は任意の構成を採用するべく回転されてもよいので、マシンは使用中に「上側」構成要素が常に「下側」構成要素の上にあるように配向される必要はない。用いられる用語は、図2に示された機器の位置を反映し、上記の説明での言及の有用な枠組みを確立することを意図している。
【0099】
反作用要素の切れ刃が切断要素の切れ刃の円弧状運動によって画定される仮想柱面上に位置する又は接触することが説明されているが、この位置合わせは正確である必要はないことが理解されるであろう。特に、反作用要素が平らなブレードであり、かつ、反作用要素の切れ刃が傾斜している場合、これは仮想柱面上に正確に位置しない又は触れない場合があることが理解されるであろう。
【0100】
切断要素の切れ刃がたどる円弧状経路の半径は、切れ刃とピボット軸との距離に依存する。ほとんどの実施形態では、この半径は切断ストロークの円弧の長さよりも著しく長く、したがって、切断要素の切れ刃の円弧状運動はほぼ直線的な動きとみなされてもよい。
【0101】
繊維複合材料が剪断作用によって切断される本発明の実施形態が説明されているが、他の実施形態では、切断機構は、繊維複合材料を別の切断プロセスによって、例えば、直線形の切断要素がそれらの間に配置された材料を切断するべくアンビル上にのしかかるアンビル切断によって、切断するように構成されてもよいことが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12