特許第6445984号(P6445984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6445984
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】Wnt阻害剤に関連するマーカー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20181217BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20181217BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20181217BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20181217BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20181217BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20181217BHJP
   C12Q 1/66 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   C12Q1/6806 ZZNA
   A61K31/497
   A61K45/00
   G01N33/68
   C12Q1/02
   !C12N15/09 Z
   !C12Q1/66
【請求項の数】16
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2015-562469(P2015-562469)
(86)(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公表番号】特表2016-513456(P2016-513456A)
(43)【公表日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】IB2014059585
(87)【国際公開番号】WO2014141038
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】61/776,334
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チョー,ジャンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】シエ シンイ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】エヌジー,ニコラス
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−519210(JP,A)
【文献】 特表2013−506836(JP,A)
【文献】 特開2011−167188(JP,A)
【文献】 特開2009−165470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
G01N 33/68
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
nt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を予測する方法であって、
a)癌患者からの癌試料を用意すること
b)前記患者から得られた前記癌試料における、ノッチ1であるイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること
c)前記イオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;および
d)対照と比較したときの発現の減少または活性もしくは機能の低下を、2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩であるWnt阻害剤を用いる処置に対する患者感受性と相関させること
を含む前記方法。
【請求項2】
試料における癌細胞の感受性を予測する方法であって、
a)前記細胞における、ノッチ1であるイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
b)前記イオマーカーの示差的遺伝子発現を、正常細胞または対照細胞からの遺伝子発現と比較すること;および
c)対照と比較したときの前記イオマーカーの発現の減少または活性もしくは機能の低下に基づく前記示差的遺伝子発現の前記比較から、2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドであるWnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を予測すること
を含む前記方法。
【請求項3】
試料におけるWnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を決定する方法であって、
a)癌細胞と2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩であるWnt阻害剤とを接触させること;
b)前記Wnt阻害剤と接触させた前記細胞における、ノッチ1であるイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
c)前記イオマーカーの示差的遺伝子発現を、未処置またはプラセボ処置の対照細胞からの前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;および
d)前記未処置またはプラセボ処置の対照細胞からのノッチ1の前記発現と比較した場合の、ノッチ1の前記発現における減少を、Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性に相関させること
を含む前記方法。
【請求項4】
Wnt阻害剤での癌患者の処置のために用いられる、2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩であるWnt阻害剤を含む医薬組成物であって
a)癌患者からの癌試料を用意すること;
b)患者から得られる癌試料における、ノッチ1であるイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
c)前記イオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
d)対照と比較したときの前記イオマーカーの発現の減少または活性もしくは機能の低下に基づき、前記Wnt阻害剤に対する前記患者の感受性を決定すること;および
e)前記Wnt阻害剤の有効量を、前記Wnt阻害剤に対して感受性であると決定された患者に投与すること
を含む処置で用いられる
前記医薬組成物
【請求項5】
患者における癌の処置のために用いられる、2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩であるWnt阻害剤を含む医薬組成物であって
a)患者から得られる癌試料における、ノッチ1であるイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
b)前記イオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
c)対照と比較したときの前記イオマーカーの発現の減少または活性もしくは機能の低下に基づき、前記Wnt阻害剤に対する前記患者の感受性を決定すること
d)前記Wnt阻害剤に感受性である患者を選択すること;および
e)2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を、前記Wnt阻害剤での処置に対して感受性であると決定された、または応答しそうである患者に投与すること
を含む処置で用いられる、
前記医薬組成物
【請求項6】
対照遺伝子発現と比較した場合にノッチ1であるイオマーカーの示差的遺伝子発現を有する患者における癌の処置のために用いられる、2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩であるWnt阻害剤を含む医薬組成物であって、
前記示差的遺伝子発現は、対照と比較したときに、ノッチ1である前記イオマーカーの発現が減少する、またはその活性もしくは機能が低下するときに前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を前記相関に基づいて前記Wnt阻害剤での処置に対して感受性であると決定された患者に投与するように用いられる、前記医薬組成物
【請求項7】
2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩であるWnt阻害剤を含む、患者における癌を処置するための医薬組成物であって、前記患者が、正常の対照細胞試料と比較して前記患者から得られる癌細胞試料においてノッチ1であるイオマーカーの遺伝子発現を示すことに基づいて選択され、示差的遺伝子発現は、対照と比較したときに、ノッチ1である前記イオマーカーの発現が減少する、またはその活性もしくは機能が低下するときに前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を前記相関に基づいて前記Wnt阻害剤での処置に対して感受性であると決定された患者に投与するように用いられる、前記医薬組成物。
【請求項8】
2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩であるWnt阻害剤を含む、患者における癌を処置するための医薬組成物であって、
前記患者は、対照遺伝子発現と比較した場合にノッチ1であるイオマーカーの示差的遺伝子発現を示し、
前記示差的遺伝子発現は、対照と比較したときに、ノッチ1である前記イオマーカーの発現が減少する、またはその活性もしくは機能が低下するときに前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関
2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を前記相関に基づいて前記Wnt阻害剤での処置に対して感受性であると決定された患者に投与するように用いられる、前記医薬組成物。
【請求項9】
前記ノッチ1が、細胞外ドメインにおける突然変異を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法
【請求項10】
癌が頭頸部扁平細胞癌腫である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法
【請求項11】
癌がWnt阻害剤で処置され、Wnt阻害剤に感受性である癌試料における発現と比較して、Axin2、LEF1および/またはNKD1の示差的発現を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法
【請求項12】
発現または遺伝子発現が、DNA発現、DNAコピー数、mRNA発現、cDNA発現、タンパク質転写、タンパク質発現、DNA修飾、cDNA修飾、mRNA修飾、タンパク質修飾、DNA機能、cDNA機能、mRNA機能、タンパク質機能、DNA突然変異、cDNA突然変異、mRNA突然変異、タンパク質突然変異、またはその組合せであ、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法
【請求項13】
前記ノッチ1が、細胞外ドメインにおける突然変異を有する、請求項4〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
癌が頭頸部扁平細胞癌腫である、請求項4〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
癌がWnt阻害剤で処置され、Wnt阻害剤に感受性である癌試料における発現と比較して、Axin2、LEF1および/またはNKD1の示差的発現を示す、請求項4〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
発現または遺伝子発現が、DNA発現、DNAコピー数、mRNA発現、cDNA発現、タンパク質転写、タンパク質発現、DNA修飾、cDNA修飾、mRNA修飾、タンパク質修飾、DNA機能、cDNA機能、mRNA機能、タンパク質機能、DNA突然変異、cDNA突然変異、mRNA突然変異、タンパク質突然変異、またはその組合せである、請求項4〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬理ゲノム学の分野に関し、処置前の患者感受性、続いての処置後の患者応答、癌感受性を決定すること、化合物のスクリーニング、処置の方法、および処置における使用のための医薬組成物に有用なバイオマーカーの使用に関する。
【0002】
背景
Wntシグナリングは、複数の癌における主要な発癌経路の1つである1,2。それの受容体である形質膜での低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5/6(LRP5/6)およびFrizzled(FZD)(両方ともにWntシグナリングに必要とされる1回膜貫通受容体である)に結合すると、Wntリガンドは、Axin2、GSK3β、APCおよび他のタンパク質からなるβ−カテニン分解機構の崩壊の引き金となり、これが、細胞質におけるβ−カテニンの蓄積に至る。β−カテニンのレベルの上昇は、最終的に、核へのそれの転座に至ることで、LEF/TCFとの複合体を形成し、下流遺伝子発現を推進する
【0003】
Wntシグナリングの調節不全は、結腸癌においてよく考証されているAPCおよびβ−カテニンなどの下流構成成分の突然変異を介して発生し得る。加えて、Wntリガンドもしくは共刺激物、例えばRSPO2/3の過剰発現、またはWnt阻害遺伝子のサイレンシングが、様々な癌において報告されてきた1,4。さらに、総Wnt経路構成成分、例えばAxin1/2またはRSPO共受容体RNF43/ZNFR3の突然変異は、膵臓癌腫、結腸癌腫および肝細胞癌腫において潜在的な主要な役割を果たす4−6。動物モデルにおけるWnt経路の不偏化突然変異および標的化突然変異の両方が、この経路の発癌シグナリング機能を実証した7,8。カノニカルWnt経路に加えて、非カノニカルWntシグナリングが、FZDおよびVANGLを介して、細胞遊走および腫瘍転移を含めた腫瘍発生の様々な態様に不可欠であるという証拠が出現している
【0004】
カノニカルWntシグナリング活性および非カノニカルWntシグナリング活性の両方が、Wntリガンドに依存性である。Wntリガンドの生合成中、Wntは、Porcupine(PORCN)、膜結合O−アシルトランスフェラーゼによって媒介される翻訳後アシル化を受ける3,10。PORCNは、後続のWnt分泌に必要とされるWnt翻訳後アシル化に特異的および専用的である11。PORCNの欠損は、ノックアウトマウスモデルにおけるWntリガンド推進シグナリング活性の阻害に至る12,13。ヒトにおいて、PORCN遺伝子の機能欠損(LoF)突然変異は、ヘテロ接合体およびPORCN遺伝子のためのモザイク現象を有するものの両方における様々な先天性異常に関連するX連結優性障害において巣状皮膚低形成を引き起こす。この表現型は、胚発生および発達中のWntシグナリング経路の役割と一致する14,15
【0005】
Wntシグナリングを治療標的にすることにおける今までの成功は、限られたものであった。これは、大きくは、Wnt経路における標的について有効な治療剤の欠如、およびWnt阻害剤に感受性である患者集団の定義の欠如による。細胞周期および示差的遺伝子発現における調節機序の複合カスケードにおける差異への結果として、異なる癌型は、同じ活性化合物に対して異なって応答し得る。PORCN阻害剤またはWnt阻害剤を用いる治療に対する細胞の感受性を示す特異的バイオマーカーに関する知識も乏しい。
【0006】
発明の概要
本発明は、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7Aおよび/またはDTX3Lが、Wnt阻害剤に対する細胞の感受性を決定する際の特異的バイオマーカーとして作用するという分析に関する。本発明は、表1から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つが、癌細胞または癌がWnt阻害剤に感受性であることを予測する際の正確性および特異性を増加させたWnt阻害剤のための「遺伝子サイン」を提供するという分析に関する。該方法は、患者から取られた癌試料における、表1から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つの発現、遺伝子発現、突然変異状態、タンパク質レベルまたは機能を分析し、対照と比較して、Wnt阻害剤に対する癌試料の感受性を予測する。発現レベル変化のパターンは、好ましい応答または好ましくない応答を示し得る。加えて、表1から選択される遺伝子サインは増加予測値を有し、なぜならば、それは、Wnt経路が機能的であることも示すからである。本開示は、患者はその個体に特異的である機能的ゲノムサインに基づいて処置される「個人化医療」の例も提供する。
【0007】
本明細書に開示されている少なくとも1つのバイオマーカーの予測値は、患者が処置に対して感受性のままであるかを決定するために、Wnt阻害剤を用いる処置の後に使用することもできる。Wnt阻害剤が投与されると、バイオマーカーは、Wnt阻害剤を用いる処置に対する患者の感受性の持続をモニタリングするために使用される。本開示は、Wnt阻害剤を用いる処置の前後における、同定遺伝子の発現の上方または下方調節にも関する。これは、患者が処置の正しい過程を受けていると決定することに有用である。本発明は、Wnt阻害剤を用いる処置に対する患者の感受性を予測およびモニタリングする方法を含む。該方法には、患者へのWnt阻害剤の投与、および患者から得られる生物学的試料上のバイオマーカー遺伝子発現の測定のステップが含まれる。患者の応答は、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの遺伝子発現の検出に基づいて評価される。対照と比較した少なくとも1つのバイオマーカーの発現のレベルにおける検出および/または変更は、処置に対する患者の感受性を示す。発現レベル変化のパターンは、好ましい患者応答または好ましくない患者応答を示し得る。
【0008】
本開示は、頭頸部癌の処置における使用のためのWnt阻害剤も提供する。特に良好な治療的応答は、対照と比較して表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的下方調節発現を癌試料中に有する患者において予測される。
【0009】
本開示の態様、特色および実施形態は以下の項目に要約され、それぞれ単独でまたは組合せで使用することができる。
1.Wnt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を予測する方法であって、
a)癌患者からの癌試料を用意すること
b)前記患者から得られた癌試料における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;および
c)前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること、
d)遺伝子発現比較における増加または減少を、前記Wnt阻害剤を用いる処置に対する患者感受性と相関させること
を含む前記方法。
2.Wnt阻害剤で癌患者を処置する方法であって、
a)癌患者からの癌試料を用意すること
b)前記患者から得られた前記癌試料における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
c)前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
d)前記Wnt阻害剤に対する患者の感受性を決定すること;および
e)前記Wnt阻害剤の有効量を、前記Wnt阻害剤に対して感受性であると決定された患者に投与すること
を含む前記方法。
3.Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を予測する方法であって、a)前記細胞における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;b)表1から選択される前記少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を、正常細胞または対照細胞からの遺伝子発現と比較すること;
c)前記示差的遺伝子発現の前記比較から、Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を予測すること
を含む前記方法。
4.Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を決定する方法であって、
a)癌細胞と少なくとも1つのWnt阻害剤とを接触させること;
b)前記Wnt阻害剤と接触させた前記細胞における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
c)前記少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を、未処置またはプラセボ処置の対照細胞からの前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
d)前記未処置またはプラセボ処置の対照細胞からの前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記発現と比較した場合の、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記発現における増加または減少を、Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性に相関させること
を含む前記方法。
5.1つ超のバイオマーカーが表1から選択される、項目1から4のいずれか1つの方法。
6.前記バイオマーカーがノッチ1である、項目1から5のいずれか1つの方法。
7.前記ノッチ1が細胞外ドメインにおける突然変異である、項目6の方法。
8.前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料の遺伝子発現と比較することで、機能的Wnt経路を示す、項目1から7のいずれか1つの方法。
9.前記癌が頭頸部扁平細胞癌腫である、項目1から8のいずれか1つの方法。
10.前記癌が、Wnt阻害剤で処置され、Wnt阻害剤に感受性である癌試料における発現と比較してAxin2、LEF1および/またはNKD1の示差的発現を示す、項目2または4の方法。
11.少なくとも1つのWnt阻害剤と接触させた前記癌細胞のIC50が、1μM未満、好ましくは0.5μM未満、より好ましくは0.2μM未満である、項目1から10のいずれか1つの方法。
12.前記細胞が、Wnt阻害剤によって少なくとも2つの異なる時点で接触される、項目11の方法。
13.前記細胞が、2つの異なるWnt阻害剤によって、ステップa)で同時にまたは順次に接触される、項目4、11または12のいずれか1つの方法。
14.ステップb)およびc)が、前記Wnt阻害剤の各用量の投与後、4時間、8時間、16時間、24時間、48時間、3日、1週、1カ月および数カ月からなる群から選択される時点で反復される、項目4、または11から13のいずれか1つの方法。
15.患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤であって、前記患者が、
a)患者から得られる癌試料における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
b)前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
c)前記Wnt阻害剤に対する前記患者の感受性を決定すること;および
d)前記Wnt阻害剤に感受性である患者を選択すること
に基づいて選択される前記Wnt阻害剤。
16.対照遺伝子発現と比較した場合に表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を有する患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤であって、前記示差的遺伝子発現は、前記患者がWnt阻害剤に感受性であることと相関する、前記Wnt阻害剤。
17.1つ超のバイオマーカーが表1から選択される、項目15または16による癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
18.前記バイオマーカーがノッチ1である、項目15から17のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
19.前記ノッチ1が、細胞外ドメインにおける突然変異を有する、項目15から18のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
20.癌が頭頸部扁平細胞癌腫であり、好ましくは、Wnt阻害剤を用いる処置後の癌試料が、Wnt阻害剤に感受性である癌試料のAxin2、LEF1および/またはNKD1の発現を示している、項目15から19のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
21.患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物であって、前記患者が、正常の対照細胞試料と比較して前記患者から得られる癌細胞試料において表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの遺伝子発現を示すことに基づいて選択され、前記示差的遺伝子発現は、前記患者がWnt阻害剤に感受性であることと相関する、前記医薬組成物。
22.対照遺伝子発現と比較した場合に表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を示す患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物であって、前記示差的遺伝子発現は、前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関する、前記医薬組成物。
23.1つ超のバイオマーカーが表1から選択される、項目21または22による癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
24.前記バイオマーカーがノッチ1である、項目21から23のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
25.前記ノッチ1が、細胞外ドメインにおける突然変異を有する、項目21から24のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
26.癌が頭頸部扁平細胞癌腫である、項目21から25のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
27.Wnt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を予測するためのキットであって、
i)表1から選択されるバイオマーカーの発現を検出するための手段;および
ii)前記キットを使用する方法についての指示書
を含む前記キット。
28.項目1から14の方法のいずれかのための、項目27によるキットの使用。
29.頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
30.前記Wnt阻害剤が、対照遺伝子発現と比較して表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を示す癌を有する患者に投与され、前記示差的遺伝子発現は、前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関する、項目29による頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
31.前記バイオマーカーがノッチ1である、項目30による頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
32.前記Wnt阻害剤が治療有効量で投与される、項目1から14のいずれか1つの方法、項目15から20のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、項目21から26のいずれか1つによる医薬組成物、または項目29による頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
33.前記Wnt阻害剤の治療有効量が前記患者に投与される、項目15から20のいずれか1つによる患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
34.前記Wnt阻害剤の前記治療有効量が、前記Wnt阻害剤に感受性と決定される患者に選択的に投与されるか、または患者が前記Wnt阻害剤に感受性でないことに基づいて、患者に前記Wnt阻害剤以外の薬物の治療有効量を選択的に投与する、項目33による患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
35.前記Wnt阻害剤が、式(1):
【0010】
【化1】
[式中:
、X、XおよびXが、NおよびCRから選択され、
、X、XおよびXの1つがNであり、他がCHであり、
が、NおよびCHから選択され、
Zが、フェニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリダジニルおよびピペラジニルから選択され;Zの各フェニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリダジニルまたはピペラジニルが、R基で任意選択により置換されており、
、RおよびRが、水素であり、
mが、1であり、
が、水素、ハロ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびメチルから選択され、
が、水素、ハロおよび−C(O)R10から選択され;ここでR10がメチルであり、
が、水素、ハロ、シアノ、メチルおよびトリフルオロメチルから選択される]
の化合物、またはその生理学的に許容される塩である、項目1から14のいずれか1つの方法、項目15から20、33もしくは34のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、項目21から26のいずれか1つによる医薬組成物、項目27によるキット、または項目29から32のいずれか1つによる頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
36.前記Wnt阻害剤が、N−[5−(3−フルオロフェニル)ピリジン−2−イル]−2−[5−メチル−6−(ピリダジン−4−イル)ピリジン−3−イル]アセトアミド;
2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミド;
N−(2,3’−ビピリジン−6’−イル)−2−(2’,3−ジメチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;
N−(5−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ピリジン−2−イル)−2−(2’−メチル−3−(トリフルオロメチル)−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;
N−(5−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ピリジン−2−イル)−2−(2’−フルオロ−3−メチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;および
2−(2’−フルオロ−3−メチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)−N−(5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル)アセトアミド
の群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩である、項目1から14のいずれか1つの方法、項目15から20、33もしくは34のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、項目21から26のいずれか1つによる医薬組成物、項目27によるキット、または項目29から32のいずれか1つによる頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
37.前記Wnt阻害剤が2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドである、項目1から14のいずれか1つの方法、項目15から20、33もしくは34のいずれか1つによる癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、項目21から26のいずれか1つによる医薬組成物、項目27によるキット、または項目29から32のいずれか1つによる頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
38.発現または遺伝子発現が、DNA発現、DNAコピー数、mRNA発現、cDNA発現、タンパク質転写、タンパク質発現、DNA修飾、cDNA修飾、mRNA修飾、タンパク質修飾、DNA機能、cDNA機能、mRNA機能、タンパク質機能、DNA突然変異、cDNA突然変異、mRNA突然変異、タンパク質突然変異、またはその組合せであり、好ましくはDNA突然変異である、項目1から37のいずれか1つ。
39.前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から選択される、項目1から38のいずれか1つ。
40.前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から選択される、項目1から38のいずれか1つ。
41.前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4およびDKK2の群から選択される、項目1から38のいずれか1つ。
42.前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2およびノッチ3の群から選択される、項目1から38のいずれか1つ。
43.前記バイオマーカーがノッチ1である、項目1から38のいずれか1つ。
44.前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3およびWNT7Aの群から選択される、項目1から38のいずれか1つ。
45.前記バイオマーカーがHRASまたはFAT1である、項目1から38のいずれか1つ。
46.前記バイオマーカーが、FAM58A、FLJ43860、ノッチ1、OR7G3、CCDC168、ZNF527およびCDKN2Aからなる群から選択される、項目1から38のいずれか1つ。
47.前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から、好ましくはノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3およびDTX3Lの群から選択される、項目1から38のいずれか1つの実施形態。
48.バイオマーカーとしての表1から選択される化合物の使用。
49.バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から選択される化合物の使用。
50.バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4およびDKK2の群から選択される化合物の使用。
51.バイオマーカーとしてのノッチ1、ノッチ2およびノッチ3の群から選択される化合物の使用。
52.バイオマーカーとしての化合物ノッチ1の使用。
53.バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3およびWNT7Aの群から選択される化合物の使用。
54.バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から選択される化合物の使用。
55.バイオマーカーとしての化合物HRASまたはFAT1の使用。
56.バイオマーカーとしてのFAM58A、FLJ43860、ノッチ1、OR7G3、CCDC168、ZNF527およびCDKN2Aからなる群から選択される化合物の使用。
57.バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から、好ましくはノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、およびDTX3Lの群から選択される化合物の使用。
58.Wnt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を示す、項目48から57のいずれか1つによる化合物の使用。
59.少なくとも2つのバイオマーカー、少なくとも3つまたは少なくとも4つのバイオマーカーが、Wnt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を一緒に示すために使用される、項目39から42、44から51、または53から58のいずれか1つ。
60.
− 患者試料におけるWNT11、WNT10A、WNT3またはWNT7Aの発現が、対照と比較してより高く、前記発現が、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性を示し;
− 患者試料におけるAXIN2、LEF1またはNKD1の発現が、前処理対象と比較して処置後に減少され、前記発現が、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性を示し;
− ノッチ1、ノッチ2またはノッチ3の発現が低減され、特に活性または機能が、対照と比較して患者試料において減少増加し、前記発現、特に活性または機能の減少が、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性を示し;
− 患者試料におけるSFRP2、FRZB、SFRP4またはDKK2の発現が、対照と比較してより低く、前記発現が、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性を示し;
− 対照と比較して患者試料において、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、FAT1、OR7G3またはDTX3Lの発現がより低く、特に機能欠損がより高く、前記発現、特に機能欠損が、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性を示し;
− 対照と比較して患者試料において、HRAS発現がより高く、特に機能における獲得が、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性を示す、
項目1から59のいずれか1つ。
61.Wnt阻害剤が、項目35から37のいずれか1つに定義されている通りである、項目60。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは化合物Aの構造を示す図である。図1Bは化合物Bの構造を示す図である。
図2図2AはPORCNへのH放射標識化合物Bの結合を示すグラフである。化合物BとPORCNとの間の特異的相互作用は、非標識化合物Bによって競合され得る(図2A)。図2BはPORCNへの化合物Aの結合を示すグラフである。
図3図3Aは0.4nMのIC50で、Wnt共培養アッセイにおけるWntシグナリングの化合物A強力阻害を示すグラフである。図3Bは阻害効果が外因性Wnt3A条件付け培地の添加によって救われたことを描写するグラフである。
図4】HA−Wnt3Aでトランスフェクトされた293A細胞に対する化合物Aの様々な用量の効果を示す図である。図4に示されている通り、化合物Aは、上澄みにおけるHA−Wnt3Aの存在度を強力に減弱した一方で、ライセートHA−Wnt3Aを残し、Wnt3A分泌が用量依存性方式における化合物Aによって実質的に阻害されることを示唆した。
図5図5Aは、化合物Aが、実際に、Wnt3Aを過剰発現させるマウス乳腺細胞株のオートクリンL−Wnt3A細胞におけるLRP6のWnt依存性リン酸化を強く遮断したことを実証する図である。図5Bは推定Wntパルミトイル化部位、Ser209の周りの残留物が、全ての19のWntの間で保存されていることを示す図である。図5Cは、化合物Aが、Wnt1、2、3、3A、6、7Aおよび9Aを含めた全ての試験Wntに対して匹敵できる阻害活性を実証したことを示す表である。
図6】化合物Aを用いる処置への癌型毎の様々な細胞株の応答を示すグラフである。応答性細胞株は、10〜100nMの化合物Aを用いる48時間の間の処置後に50%を超えるAXIN2 mRNA低減を達成すると定義される。図6に示されている通り、頭頸部癌細胞(HNSCC)株は、化合物Aに応答性であった上位癌型の1つである。
図7】HNSCC細胞株の中で、96個のうち31個が、化合物Aの処置でWnt経路阻害を示したことを示すグラフである。
図8図8Aは、化合物Aが、0.3nMのIC50で、HN30におけるWnt依存性AXIN2生産を強力に阻害したことを示すグラフである。図8Bは、化合物Aが、右シフト化IC50であるがHN30コロニー形成を強く減弱したことを描写するグラフである。
図9図9Aは、化合物Aのコロニー形成効果の低減が、優性β−カテニンの過剰発現で部分的に救われ得ることを示すグラフである。図9Bは、化合物Aの細胞効果が、PORCN依存性Wntシグナリング活性の阻害に一致したこと;PORCNに対するshRNAが、Wnt標的遺伝子AXIN2の発現を実質的に阻害したことを確証するグラフである。図9Cは、PORCNに対するshRNAが、インビトロにおけるHN30細胞のコロニー形成も阻害したことを示すグラフである。
図10】化合物Aのインビボ抗腫瘍活性、即ちHNSCC HN30のマウス皮下異種グラフトモデルにおける該活性を示すグラフである。1日1回投薬される場合、化合物Aは、用量依存性効力を誘発し、腫瘍重量を低減した(図10A)。3mg/kgでの化合物Aの単回用量後、腫瘍におけるAXIN2 mRNA発現のレベルは、用量後5時間から10時間の間で約60〜95%低減された(図10B)。追加として、図10Cに示されている通り、HN30腫瘍におけるpLRP6レベルは、時間依存性方式で実質的に低減された。
図11】上位のオンコジーンまたは腫瘍サプレッサー遺伝子が、HNSCC細胞株のセット中で突然変異したことを示す表である。
図12】凝集性機能欠損突然変異が、HNSCC細胞株からの化合物A PD応答データと最も相互に関連した、上位候補遺伝子を示す表である。
図13図13Aおよび図13Bは、化合物A応答性頭頸部癌細胞株における高濃縮ノッチ1機能欠損(LoF)突然変異を示す表とグラフである。A)頭頸部癌細胞株におけるノッチ1の潜在的LoF突然変異の図表である。N:N末端;C:C末端;LNR:Lin12−ノッチ反復;TMD:膜貫通ドメイン;PEST:プロリン、グルタミン酸、セリン、トレオニンリッチ(PEST)ドメイン。フレームシフト(fs)およびナンセンス突然変異(X)としては、E488fs、A495fs、K538fs、G192X、P460fs、E216Xが挙げられ、赤色で強調されている。B)頭頸部癌細胞株におけるノッチ1フレームシフトおよびナンセンス突然変異のリスト。C)ノッチ1 C478Fは、DLL1刺激の有無におけるノッチ1レポーター遺伝子アッセイにおいて、野生型と比較して活性の完全な低減を示した。
図14】化合物Aのインビボ効力を示す表とグラフである。マウスにおけるSNU1076異種グラフトモデルにおいて、5mg/kgの用量での化合物Aは、処置の14日後に腫瘍成長を有意に阻害した(T/C:25%)(図14A)。化合物Aは、AXIN2の70%低減によって示される通り、Wnt経路を実質的に阻害した(図14B)。
図15】頭頸部癌細胞株におけるFAT1突然変異を示す表である。FAT1突然変異は、化合物A応答性頭頸部癌細胞株に濃縮されている。
図16】頭頸部癌細胞株におけるHRAS突然変異を示す表である。HRAS突然変異は、化合物A応答性頭頸部癌細胞株に濃縮されている。
【0012】
発明の説明
定義
明細書および請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」には、別段に文脈が明らかに指示していない限り、複数の言及が含まれる。例えば、「細胞」という用語には、その混合物を含めて、複数の細胞が含まれる。
【0013】
全ての数値の名称、例えば、範囲を含めたpH、温度、時間、濃度および分子量は、0.1の増分ずつ(+)または(−)に変動される近似値である。常にはっきりと明記されているわけではないが、全ての数値の名称は「約」という用語によって先行されていると理解されるべきである。その上、常にはっきりと明記されているわけではないが、本明細書に記載されている試薬は単に例証的であるとともにこうしたものの均等物は当技術分野において公知であると理解されるべきである。
【0014】
「マーカー」または「バイオマーカー」という用語は、本明細書において互換的に使用される。バイオマーカーは、核酸またはポリペプチドであり、核酸またはポリペプチドの存在、非存在または示差的発現であり、遺伝子数、遺伝子またはタンパク質突然変異、機能または活性を記載するパラメータは、任意のWnt阻害剤への感受性を決定するために使用される。例えば、ノッチ1はバイオマーカーであり、癌試料細胞におけるノッチ1のmRNA発現は、正常(非癌性)組織または対照組織におけるノッチ1発現と比較した場合に減少される。
【0015】
「PORCN」は、Wnt翻訳後修飾に必要とされる膜結合アシルトランスフェラーゼのPorcupineを指す。別段具体的に明記されていない限り、PORCNは、本明細書で使用される場合、ヒトPORCN−受託番号NM_017617.3/NP_060087(4851/P46531.4)を指す。
【0016】
「ノッチ1」は、ノッチ相同体1を指す。それは、ノッチシグナリングにおける1回膜貫通受容体である。別段具体的に明記されていない限り、ノッチ1は、本明細書で使用される場合、ヒトノッチ1−受託番号NM_017617.3/NP_060087/GI:148833508(4851/P46531.4)を指す。「ノッチ2」は、神経原性座位ノッチ相同体タンパク質2、ノッチシグナリングにおける1回膜貫通受容体を指す。別段具体的に明記されていない限り、ノッチ2は、本明細書で使用される場合、ヒトノッチ2−受託番号NM_024408.3/NP_077719/GI:24041035(4853/Q04721.3)を指す。「ノッチ3」は、神経原性座位ノッチ相同体タンパク質3、ノッチシグナリングにおける1回膜貫通受容体を指す。別段具体的に明記されていない限り、ノッチ3は、本明細書で使用される場合、ヒトノッチ3−受託番号NM_000435.2/NP_000426/GI:134244285(4854/Q9UM47.2)を指す。
【0017】
「AXIN2」は、axis阻害タンパク質2を指す。それは、ベータ−カテニンの安定性の調節において重要な役割を有する細胞質ゾルタンパク質である。別段具体的に明記されていない限り、AXIN2は、本明細書で使用される場合、ヒトAXIN2−受託番号NM_004655.3/NP_004646/GI:195927059(8313/Q9Y2T1)を指す。
【0018】
「LEF1」は、リンパ系エンハンサー結合因子1を指す。それは、β−カテニンと複合体を形成するとともに下流標的遺伝子発現を推進する核タンパク質である。別段具体的に明記されていない限り、LEF1は、本明細書で使用される場合、ヒトLEF1−受託番号NM_016269/NP_001124185/GI:7705917(51176/Q9UJU2.1)を指す。
【0019】
「NKD1」は、ネイキッドクチクラ1を指す。それは、ディシブルドと相互作用する細胞質ゾルタンパク質である。別段具体的に明記されていない限り、NKD1は、本明細書で使用される場合、ヒトNKD1−受託番号NM_033119/NP_149110/GI:14916433(85407/Q969G9.1)を指す。
【0020】
「SFRP2」は、分泌frizzled関連タンパク質2を指す。それは、Wntシグナリングの可溶性モジュレーターである。別段具体的に明記されていない限り、SFRP2は、本明細書で使用される場合、ヒトSFRP2−受託番号NM_003013.2/NP_003004/GI:48475052(6423/Q96HF1.2)を指す。
【0021】
「FRZB」は、frizzled関連タンパク質、その上Wntシグナリングの可溶性モジュレーターを指す。別段具体的に明記されていない限り、FRZBは、本明細書で使用される場合、ヒトFRZB−受託番号NM_001463.3/NP_001454/GI:38455388(2487/Q92765.2)を指す。
【0022】
「SFRP4」は、分泌frizzled関連タンパク質4、その上Wntシグナリングの可溶性モジュレーターを指す。別段具体的に明記されていない限り、SFRP4は、本明細書で使用される場合、ヒトSFRP4−受託番号NM_003014.3/NP_003005/GI:170784838(6424/Q6FHJ7.2)を指す。
【0023】
「DKK2」は、dickkopf関連タンパク質2、その上Wntシグナリングの可溶性モジュレーターを指す。別段具体的に明記されていない限り、DKK2は、本明細書で使用される場合、ヒトDKK2−受託番号NM_014421.2/NP_055236/GI:7657023(27123/Q9UBU2.1)を指す。
【0024】
「WNT11」は、WNT 11を指す。それは、分泌Wntリガンドタンパク質である。別段具体的に明記されていない限り、WNT11は、本明細書で使用される場合、ヒトWNT11−受託番号NM_004626.2/NP_004617/GI:17017974(7481/O96014)を指す。
【0025】
「WNT10A」は、WNT10A、その上分泌Wntリガンドタンパク質を指す。別段具体的に明記されていない限り、WNT10Aは、本明細書で使用される場合、ヒトWNT10A−受託番号NM_025216.2/NP_079492/GI:16936520(80326/Q9GZT5)を指す。
【0026】
「WNT3」は、WNT3、その上分泌Wntリガンドタンパク質を指す。別段具体的に明記されていない限り、WNT3は、本明細書で使用される場合、ヒトWNT3−受託番号NM_030753.3/NP_110380/GI:13540477(7473/P56703)を指す。
【0027】
「WNT7A」は、WNT7A、その上分泌Wntリガンドタンパク質を指す。別段具体的に明記されていない限り、WNT7Aは、本明細書で使用される場合、ヒトWNT7A−受託番号NM_004625.3/NP_004616/GI:17505191(7476/O00755)を指す。
【0028】
「FAM58A」は、配列類似性58を有するファミリー、メンバーAを指す。この遺伝子は、サイクリン−ボックス−フォールドドメインを含有し、核細胞分裂周期を制御することにおいて役割を有し得る。別段具体的に明記されていない限り、FAM58Aは、本明細書で使用される場合、ヒトFAM58A−受託番号NM_152274.3/NP_689487/GI:196049382(92002/Q8N1B3)を指す。
【0029】
「FLJ43860」は、FLJ43860タンパク質、不明な機能を有する特徴づけられていないタンパク質を指す。別段具体的に明記されていない限り、FLJ43860は、本明細書で使用される場合、ヒトFLJ43860−受託番号NM_207414.2/NP_997297/GI:148727311(389690/Q6ZUA9)を指す。
【0030】
「CDKN2A」は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤2A、細胞周期進行のための主要な阻害剤を指す。別段具体的に明記されていない限り、CDKN2Aは、本明細書で使用される場合、ヒトCDKN2A−受託番号NM_000077.4/NP_478104/GI:4502749(1029/P42771)を指す。
【0031】
「OR7G3」は、嗅覚受容体7G3、嗅覚Gタンパク質共役型受容体(GPCR)受容体の1つを指す。別段具体的に明記されていない限り、OR7G3は、本明細書で使用される場合、ヒトOR7G3−受託番号NM_001001958.1/NP_001001958/GI:50080201(390883/Q8NG95)を指す。
【0032】
「DTX3L」は、Deltex 3様、E3ユビキチンリガーゼを指し、それのショウジョウバエ(Drosophila)相同体Deltexは、ショウジョウバエ(Drosophila)におけるノッチシグナリングの正の調節因子である。別段具体的に明記されていない限り、DTX3Lは、本明細書で使用される場合、ヒトDTX3L−受託番号NM_138287.3/NP_612144.1/GI:19923717(151636/Q8TDB6)を指す。
【0033】
「CCDC168」は、コイルドコイルドメイン含有168を指し、コイルドコイルドメインを有するタンパク質である。別段具体的に明記されていない限り、CCDC168は、本明細書で使用される場合、ヒトCCDC168−受託番号NM_001146197.1/NP_001139669.1/GI:226246553(643677/Q8NDH2)を指す。
【0034】
「ZNF527」は、亜鉛フィンガータンパク質527を指し、亜鉛フィンガータンパク質ファミリーに属する。別段具体的に明記されていない限り、ZNF527は、本明細書で使用される場合、ヒトZNF527−受託番号NM_032453.1/NP_115829/GI:149192840(84503/Q8NB42)を指す。
【0035】
「HRAS」は、ハーベイラット肉腫ウイルスオンコジーン相同体を指し、MAPキナーゼ経路を活性化する小さいGタンパク質である。別段具体的に明記されていない限り、HRASは、本明細書で使用される場合、ヒトHRAS−受託番号NM_005343.2/NM_176795.3NM_001130442.1/NP_001123914.1/GI:47117697/GI:194363760/GI:194363761(3265/P01112)を指す。
【0036】
「FAT1」は、β−カテニンに結合するとともにおよびそれの核転座を防止すると報告されているプロトカドヘリンタンパク質であるFAT1を指す。別段具体的に明記されていない限り、FAT1は、ヒトFAT1−受託番号NM_005245.3/NP_005236/GI:75813622(2195/Q14517)を指す。
【0037】
本明細書において、任意の所与遺伝子について、ただ1つの遺伝子受託番号をリストした。遺伝子に関連する任意のスプライシング形態が本開示によって企図されると理解されるべきである。スプライシング形態によって、本明細書において、単一遺伝子からのmRNAが、単一遺伝子から複数のタンパク質変異体の発現をもたらす代替のやり方でスプライスされていると意味される。例えば、ノッチ2は、2つのスプライシング変異体、NM_024408およびNM_001200001を有する。ノッチ2について、NM_024408だけがリストされている。
【0038】
「感受性」は、本明細書で使用される場合、Wnt阻害剤の効果により、腫瘍の成長、侵襲性または転移が遅延、停止、抑制されるか、または腫瘍の収縮もしくは後退が達成されるという意味において、細胞または患者がWnt阻害剤に応答することを意味する。本発明のなお別の実施形態において、細胞または患者試料が10〜100nMの化合物Aで48時間かけて処置される場合に、細胞または患者試料が、50%を超えるAxin2低減(Wnt経路阻害)、例えばAxin2 mRNAまたはタンパク質レベルの低減で処置に応答するならば、細胞または患者試料はWnt阻害剤に対する「感受性」を有する。特定の態様において、細胞または患者試料が50nMの化合物Aで48時間かけて処置される場合に、細胞または患者試料が、Axin2 mRNAレベルにおいて50%を超える低減で処置に応答するならば、細胞または患者試料はWnt阻害剤に対する「感受性」を有する。
【0039】
表1から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つが、対照と比較して示差的に下方調節される場合に、細胞は、Wnt阻害剤を用いる阻害について「感受性」であるか、または「感受性」を呈する。代替として、バイオマーカーの1つ超、2つ超、3つ超、またはセット全体が示差的に発現される場合に、細胞は、Wnt阻害剤を用いる阻害について「感受性」である。
【0040】
「対照細胞」または「正常細胞」は、非癌性の組織または細胞を指す。
【0041】
「対照組織」または「正常組織」は、非癌性の組織または細胞を指す。
【0042】
「対照試料」または「正常試料」は、非癌性の組織または細胞を指す。
【0043】
「対照」は、本明細書で使用される場合、対照細胞、対照組織もしくは対照試料におけるバイオマーカー発現であるか、または正常もしくは健康なバイオマーカー発現、即ち正常の非癌性の細胞、試料もしくは組織におけるバイオマーカー発現とよく相関する値を記載するパラメータもしくは数値である。
【0044】
ノッチ1「細胞外ドメイン」は、本明細書において、アミノ酸1から1735のノッチ1領域を示す。
【0045】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかまたはその類似体を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、任意の機能を実施し得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転位RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含むことができる。存在するならば、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリの前または後で付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、重合後、標識用構成成分とのコンジュゲーションなどによってさらに修飾することができる。該用語は、その上、二本鎖分子および一本鎖分子の両方を指す。別段に指定または必要とされていない限り、ポリヌクレオチドであるこの発明の任意の実施形態は、二本鎖形態、および二本鎖形態を構成すると知られているまたは予測される2つの相補的一本鎖形態の各々の両方を包含する。
【0046】
「遺伝子」は、転写および翻訳された後で特別なポリペプチドまたはタンパク質をコード化できる少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するポリヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチド配列は、より大きい断片またはそれらが関連する遺伝子の全長コード配列を同定するために使用することができる。より大きい断片配列を単離する方法は、当業者に知られている。
【0047】
「遺伝子発現」、「遺伝子産物」または「発現」は全て、本明細書において互換的に使用され、遺伝子が転写および翻訳される時に生成される核酸またはアミノ酸(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)、バイオマーカーのDNAコピー数、バイオマーカーのゲノムDNA、cDNAまたはRNA配列;バイオマーカー遺伝子発現、バイオマーカータンパク質発現、バイオマーカーmRNA発現;バイオマーカータンパク質の機能効果;バイオマーカー遺伝子、cDNAまたはmRNAの機能効果;タンパク質、cDNA、遺伝子もしくはmRNA活性またはその欠損、または例えばフレーム−シフト突然変異、欠失、転座、挿入、重複、反転、機能突然変異のような突然変異状態;あるいはその組合せを指す。
【0048】
特別な実施形態において「遺伝子発現」、「遺伝子産物」または「発現」は、DNA発現、DNAコピー数、mRNA発現、cDNA発現、タンパク質転写、タンパク質発現、DNA修飾、cDNA修飾、mRNA修飾、タンパク質修飾、DNA機能、cDNA機能、mRNA機能、タンパク質機能、DNA突然変異、cDNA突然変異、mRNA突然変異、タンパク質突然変異、またはその組合せを示し、好ましくはDNA突然変異である。DNA修飾としては、DNAアルキル化またはアシル化が挙げられる。例えば、メチル化は、シトシンまたはアデニンDNAヌクレオチドへのメチル基の付加を伴う生化学プロセスである。mRNA修飾としてはRNA編集が挙げられ、これは、配列を形成するためにRNAポリメラーゼによって生成された後のヌクレオチドの変化を伴う生化学プロセスである。cDNA修飾としては、mRNAレベルでなされるとともにcDNA修飾に翻訳される任意の修飾が挙げられる。タンパク質修飾としては、翻訳された後のアミノ酸の変化を伴う生化学プロセスが挙げられる。タンパク質機能は、タンパク質が、シグナル伝達、酵素反応などの促進を含めて、遺伝子においてコード化された情報によって特定化された義務を実施することと理解される。
【0049】
「ポリペプチド」という用語は、「タンパク質」という用語と互換的に使用され、それの最も広い意味において、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣物の化合物を指す。サブユニットは、ペプチド結合によって連結することができる。別の実施形態において、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどによって連結することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸もしくは合成アミノ酸のいずれか、ならびにDおよびL光学異性体の両方、アミノ酸類似体、ならびにペプチド模倣物を指す。3種以上のアミノ酸のペプチドは、ペプチド鎖が短いならば、共通してオリゴペプチドと呼ばれる。ペプチド鎖が長いならば、ペプチドは、ポリペプチドまたはタンパク質と共通して呼ばれる。
【0051】
「単離された」という用語は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体または断片(単数または複数)が本来正常に関連する細胞およびその他の構成要素から分離されたことを意味する。例えば、単離ポリヌクレオチドは、それの自然または天然の環境内で、例えば染色体上で、それが正常に関連する3’および5’近接ヌクレオチドから分離される。当業者に明らかである通り、非自然発生のポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片(単数または複数)は、それの自然発生対応物からそれを区別するのに「単離」を必要としない。加えて、「濃縮された」「分離された」または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片(単数または複数)は、1体積当たりの分子の濃度または数が、それの自然発生の対応物のそれよりも、「濃縮された」バージョンにおいて大きいかまたは「分離された」バージョンにおいて小さいという点において、それの自然発生の対応物と区別可能である。ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体またはその断片(単数または複数)であって、それの一次配列において、例えば、それのグリコシル化パターンによって、自然発生の対応物と異なるものは、それの単離形態で存在する必要がなく、というのは、それが、それの一次配列によって、または代替としてグリコシル化パターンなどの別の特徴によって、それの自然発生の対応物と区別可能であるからである。したがって、非自然発生ポリヌクレオチドは、単離された自然発生ポリヌクレオチドからの別々の実施形態として提供される。細菌細胞において産生されたタンパク質は、それが本来産生される真核細胞から単離された自然発生タンパク質からの別々の実施形態として提供される。
【0052】
ポリヌクレオチド操作の文脈において使用される場合の「プローブ」は、標的とハイブリダイズすることによって興味対象の試料に潜在的に存在する標的を検出するための試薬として提供されるオリゴヌクレオチドを指す。通常、プローブは、標識、または標識がハイブリダイゼーション反応の前もしくは後でのいずれかで付着され得る手段を含む。適当な標識としては、以下に限定されないが、放射性同位体、蛍光色素、化学発光化合物、染料、および酵素を含めたタンパク質が挙げられる。
【0053】
「プライマー」は、標的とハイブリダイズすること、およびその後、標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進させることによって、興味対象の試料において潜在的に存在する標的または「テンプレート」に結合する遊離3’−OH基を一般に有する短いポリヌクレオチドである。「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、「上流」および「下流」のプライマーからなる「プライマーの対」または「プライマーのセット」、ならびに重合の触媒、例えばDNAポリメラーゼ、および典型的には熱的に安定なポリメラーゼ酵素を使用して、複製コピーが標的ポリヌクレオチドから作製される反応である。PCRのための方法は、当技術分野においてよく知られており、例えばPCR: A Practical Approach, M. MacPherson et al., IRL Press at Oxford University Press (1991)において教示されている。PCRまたは遺伝子クローニングなど、ポリヌクレオチドの複製コピーを生産する全てのプロセスは、集合的に、本明細書において「複製」と称される。プライマーは、サザンまたはノーザンブロット分析などのハイブリダイゼーション反応におけるプローブとして使用することもできる(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989))。
【0054】
「示差的発現された」は、本明細書で使用される場合、通常対照と比較した場合の発現における測定可能な差異を意味する。例えば、遺伝子に適用される場合、それは、正常細胞における正常の野生型機能遺伝子と比較して、遺伝子の示差的突然変異状態を指すことができる。示差的突然変異遺伝子は、野生型遺伝子と比較した場合に突然変異することができ、これは、突然変異遺伝子の機能欠損を引き起こす。それは、遺伝子から転写および/もしくは翻訳されたmRNAまたは遺伝子によってコード化されたタンパク質生成物の示差的生産も指すことができる。示差的発現遺伝子は、正常細胞または対照細胞の発現レベルと比較した場合に過剰発現または低発現することがある。しかしながら、本明細書で使用される場合、過剰発現は、遺伝子発現の増加であり、一般に、正常または対照の対応物の細胞または組織において検出された発現より、少なくとも1.25倍、または代替として少なくとも1.5倍、または代替として少なくとも2倍、または代替として少なくとも3倍、または代替として少なくとも4倍高い発現である。本明細書で使用される場合、低発現は、遺伝子発現の低減であり、一般に、正常または対照の対応物の細胞または組織において検出された発現より、少なくとも1.25倍、または代替として少なくとも1.5倍、または代替として少なくとも2倍、または代替として少なくとも3倍、または代替として少なくとも4倍低い発現である。「示差的発現された」という用語は、癌細胞または癌性組織における発現が、対照(例えば対照細胞または正常組織、例えば非癌性の細胞または組織)における発現と比較して異なる場合も指す。例として、該バイオマーカーは、癌試料における発現が、対照における発現と比較して少なくとも1.25倍、または代替として少なくとも1.5倍、または代替として少なくとも2倍、または代替として少なくとも3倍、または代替として少なくとも4倍低いならば、示差的に発現されるかまたは示差的に下方調節される。
【0055】
遺伝子の高い発現レベルは、遺伝子の過剰発現または遺伝子コピー数の増加により発生し得る。該遺伝子は、負の調節因子の調節解除または非存在により、タンパク質レベルの増加に翻訳されることもある。
【0056】
「cDNA」という用語は、相補的DNA、即ち、逆転写酵素などの酵素でcDNAになる、細胞または生物体に存在するmRNA分子を指す。「cDNAライブラリー」は、細胞または生物体に存在するmRNA分子の全てのコレクションであり、全てが酵素逆転写酵素でcDNA分子に転じ、次いで「ベクター」に挿入される(外来DNAの添加後に複製し続けることができる他のDNA分子)。ライブラリーのための例証的ベクターとしては、バクテリオファージ(「ファージ」としても知られている)、細菌に感染するウイルス、例えば、ラムダファージが挙げられる。該ライブラリーは、次いで、興味対象の特定のcDNA(およびしたがってmRNA)についてプローブすることができる。
【0057】
例として、転写活性は、Affymetrix(登録商標)HG−U133−Plus−2 GeneChipsなどの遺伝子チップを使用して、メッセンジャーRNAのレベルを測定することによって判定することができる。高スループット、興味対象の多数の遺伝子のRNAのリアルタイム定量化は、したがって、再現可能な系において可能になる。
【0058】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、核酸プローブが、それの標的部分配列に特異的にハイブリダイズし、他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する条件には、温度、イオン強度、およびホルムアミドなどの変性剤の濃度が含まれる。これらの因子の1つを変動することは、別の因子に影響を及ぼすことがあり、当分野の技術者は、ストリンジェンシーの所望のレベルを維持するための条件における変化を理解されよう。高ストリンジェントなハイブリダイゼーションの例は、65〜68℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または42℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび50%ホルムアミドである(上記のSambrookを参照されたい)。「中程度にストリンジェントな」ハイブリダイゼーションの例は、50〜65℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、または37〜50℃で0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウムおよび20%ホルムアミドの条件である。中程度にストリンジェントな条件は、中程度の量の核酸ミスマッチが所望される場合に使用される。当分野の技術者は、洗浄することがハイブリダイゼーション条件の一部であることを理解されよう。例えば、洗浄条件には、02.X〜0.1X SSC/0.1% SDSおよび42〜68℃の温度が含まれることがあり、ここで、温度を増加させることは、洗浄条件のストリンジェンシーを増加させる。
【0059】
ハイブリダイゼーションが、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の逆平行立体配置で発生する場合、反応は「アニーリング」と呼ばれ、それらのポリヌクレオチドは「相補的」とみなされる。二本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の1つと第2のポリヌクレオチドの鎖の1つとの間に発生し得るならば、別のポリヌクレオチドに「相補的」または「相同的」であり得る。「相補性」または「相同性」(1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的であるという程度)は、一般に認容されている塩基対合規則に従って互いと水素結合を形成すると予想される対抗鎖における塩基の割合の点から、定量化可能である。
【0060】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、整列させた場合、塩基(またはアミノ酸)の百分率が、2種の配列を比較する際に同じである別の配列手段に対して、ある特定の百分率(例えば、80%、85%、90%、95%、98%または99%)の「配列同一性」を有する。この整列化およびパーセント相同性または配列同一性は、当技術分野において知られているソフトウェアプログラム、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., eds., (1987) Supplement 30, section 7.7.18, Table 7.7.1に記載されているものを使用して決定することができる。好ましくは、デフォルトパラメータは、整列化のために使用される。好ましい整列化プログラムは、デフォルトパラメータを使用するBLASTである。特に、好ましいプログラムは、BLASTNおよびBLASTPであり、以下のデフォルトパラメータを使用する:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;マトリックス=BLOSUM62;記載=50配列;選別=HIGH SCORE;データベース=非冗長。
【0061】
本発明におけるバイオマーカーとしては、少なくとも95%の配列同一性を有する遺伝子変異体および遺伝子が挙げられる。
【0062】
「細胞増殖性障害」という用語には、異常細胞の成長および/もしくは分裂または機能欠損を特徴とする正常生理機能の調節不全が含まれる。「細胞増殖性障害」の例としては、以下に限定されないが、過形成、腫瘍症、化生、および様々な自己免疫障害、例えば、T細胞アポトーシスの調節不全を特徴とするものが挙げられる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「新生物細胞」、「新生物疾患」、「腫瘍症」、「腫瘍」、「腫瘍細胞」、「癌」および「癌細胞」(互換的に使用される)という用語は、相対的に自律的成長を呈することで、細胞増殖の制御の著しい欠損(即ち、脱調節細胞分裂)を特徴とする異常成長表現型を呈する細胞を指す。新生物細胞は、悪性または良性であり得る。転移性の細胞または組織は、該細胞が隣接する身体構造に侵入および破壊し得ることを意味する。
【0064】
「頭頸部癌」または「頭頸部扁平細胞癌腫」は、互換的に使用され、頭部または頸部の領域に起こる癌を指す16。主にそれは、鼻腔、洞、唇、口、唾液腺、のどまたは喉頭の癌である。頭頸部癌の90パーセントは、頭頸部扁平細胞癌腫として分類される。それは、世界的に発生率が第6位の癌であり、世界的に1年当たりおよそ600,000の症例がある。そして、HNSCC患者の5年生存率は約40〜50%である。
【0065】
「腫瘍成長を抑制すること」は、腫瘍細胞成長の低減を示し、これは、以下に限定されないが、腫瘍サイズを測定すること、3H−チミジン取り込みアッセイを使用して腫瘍細胞が増殖しているかを決定すること、FDG−PET(フルオロデオキシグルコースポジトロン放出断層撮影法)イメージングによってグルコース取込みを測定すること、または腫瘍細胞をカウントすることを含めて、当技術分野において知られている任意の手段によって判定することができる。腫瘍細胞成長「を抑制すること」は、以下の状態:腫瘍成長を減速、遅延および停止すること、ならびに腫瘍収縮のいずれかまたは全てを意味する。
【0066】
「医薬組成物」は、活性薬剤および別の担体、例えば、不活性(例えば、検出可能な薬剤または標識)または活性の化合物または組成物、例えば、アジュバント、希釈剤、バインダー、安定剤、緩衝液、塩、親油性溶媒、保存料またはアジュバントなどの組合せである。担体としては、医薬賦形剤および添加剤、例えば;タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、および炭水化物(例えば、単糖類およびオリゴ糖類を含めた糖類;アルジトール、アルドン酸およびエステル化糖類などの誘導体化糖類;ならびに多糖類または糖ポリマー)も挙げられ、これらは、単一または組合せで存在することができ、単独または組合せで重量または体積により1〜99.99%を構成する。炭水化物賦形剤としては、例えば;フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノースおよびソルボースなどの単糖類;ラクトース、スクロース、トレハロースおよびセロビオースなどの二糖類;ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストランおよびデンプンなどの多糖類;ならびにマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。
【0067】
例証的なタンパク質賦形剤としては、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチンおよびカゼインなどが挙げられる。緩衝容量において機能することもできる代表的なアミノ酸/抗体構成成分としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニンおよびアスパルテーム、などが挙げられる。
【0068】
「担体」という用語には、緩衝剤またはpH調整剤がさらに含まれ、典型的に、緩衝剤は、有機酸または塩基から調製される塩である。代表的な緩衝剤としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸の塩などの有機酸塩;トリス、トロメタミン塩酸塩、またはリン酸緩衝液が挙げられる。追加の担体としては、ポリマー性賦形剤/添加剤、例えばポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー性糖)、デキストレート類(例えば、2−ヒドロキシプロピル−クアドラチュア−シクロデキストリン(2-hydroxypropyl-quadrature-cyclodextrin)などのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、香味剤、抗微生物剤、甘味剤、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(TWEEN 20(商標)およびTWEEN 80(商標)などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、およびキレート化剤(例えば、EDTA)が挙げられる。
【0069】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、標準的な医薬担体、例えばリン酸緩衝生理食塩水溶液、水、およびエマルジョン、例えば油/水または水/油のエマルジョン、および様々な型の湿潤剤のいずれかを包含する。該組成物には、安定剤および保存料ならびに上記担体のいずれかも含まれ得るが、ただし、それらがインビボにおける使用のために許容されることをさらなる条件とする。担体、安定剤およびアジュバントの例には、Remington’s Pharmaceutical Science., 15th Ed. (Mack Publ. Co., Easton (1975)およびPhysician’s Desk Reference, 52nd ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998)を参照されたい。
【0070】
「有効量」は、感受性の細胞または患者試料における有益なまたは所望の結果を成し遂げるのに、例えば腫瘍成長を防止するのに充分な量である。それは、Wnt経路を阻害する量を示すこともある。有効量は、1回または複数の投与、適用または投与量で投与することができる。
【0071】
「対象」、「個体」または「患者」は、本明細書において互換的に使用され、これは、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。哺乳動物としては、以下に限定されないが、マウス、サル、ヒト、農場動物、スポーツ動物およびペットが挙げられる。
【0072】
「Wnt阻害剤」は、本明細書で使用される場合、Wnt経路の活性を低減する。Wnt阻害剤は、Wntシグナリング経路を阻害することができる化合物であり、PORCN阻害剤が挙げられる。この阻害には、例えば、PORCNを阻害すること、およびWntのそれのパルミトイル化、またはFrizzledおよびディシブルドを含めたWnt経路構成成分間の会合を低減することが含まれる。好ましくは、Wnt阻害剤はPORCN阻害剤である。
【0073】
特別な実施形態において、本明細書に記載されている通りの処置のために使用されるWnt阻害剤は、WO2010/101849A1(PCT/US10/025813)に開示されている通りの任意の適当な化合物、好ましくは式(1)の化合物:
【0074】
【化2】
またはその生理学的に許容される塩であり、式中:
、X、XおよびXは、NおよびCRから選択され、
、X、XおよびXの1つはNであり、その他はCHであり、
は、NおよびCHから選択され、
Zは、フェニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリダジニルおよびピペラジニルから選択され、Zの各フェニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリダジニルまたはピペラジニルは、R基で任意選択により置換されており、
、RおよびRは、水素であり、
mは、1であり、
は、水素、ハロ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびメチルから選択され、
は、水素、ハロおよび−C(O)R10から選択され、ここで、R10はメチルであり、
は、水素、ハロ、シアノ、メチルおよびトリフルオロメチルから選択される。
特にWnt阻害剤は、N−[5−(3−フルオロフェニル)ピリジン−2−イル]−2−[5−メチル−6−(ピリダジン−4−イル)ピリジン−3−イル]アセトアミド;
2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミド;
N−(2,3’−ビピリジン−6’−イル)−2−(2’,3−ジメチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;
N−(5−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ピリジン−2−イル)−2−(2’−メチル−3−(トリフルオロメチル)−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;
N−(5−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ピリジン−2−イル)−2−(2’−フルオロ−3−メチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;および
2−(2’−フルオロ−3−メチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)−N−(5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル)アセトアミド;
の群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩であり得る。
別々の実施形態において、Wnt阻害剤は、2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミド(化合物A)である。
WO2011/123785(PCT/US2011/030950)またはWO2011/088123(PCT/US2011/020994)に開示されている通りのさらなるWnt阻害剤が、本開示に従って使用することができる。
【0075】
発明の詳細な説明
多数の遺伝子が、現在、Wnt阻害剤のためのバイオマーカーとして働くことができると同定されている。それらは表1にリストされている。これらのバイオマーカーは、阻害剤に対する癌患者の感受性を決定するとともに治療薬を受けるそれらの患者の応答をモニタリングするのを助けるために使用することができる。さらに、よく定義されているバイオマーカーは、どの患者が治療薬を受けるべきか示すことができ、即ち、患者層別化のために使用し、化合物が患者における応答を最終的に導出する機会を増加させることができる。それらは、試行錯誤手法とは対極的に、よりタイムリーなおよび攻撃的な処置を可能にする。該バイオマーカーは、処置の有効性をモニタリングするために使用することもできる。患者が処置に非感受性になったことをバイオマーカーが示すならば、投与される投与量は、増加されるか、減少されるか、完全に中断され得るか、または追加の治療薬が投与され得る。このように、同定されたバイオマーカー、即ち、表1から選択される任意のバイオマーカーは、Wnt阻害剤またはPORCN阻害剤と関連する適当なバイオマーカーである。バイオマーカーを使用する手法は、正しい患者が適切な処置を受け、処置の過程中、患者が、Wnt阻害剤、特にPORCN阻害剤感受性の持続についてモニタリングされ得ることを確実にする。該処置方法における癌患者は、Wnt阻害剤に対するそれらの感受性に依存して選択的に処置してもらうことができる。該バイオマーカーは、細胞株およびマウス異種グラフトにおける実験を行うことによって同定されるか、またはバイオインフォマティクス分析に基づいて決定された。
【0076】
本発明において同定されたバイオマーカーの1つまたは複数の遺伝子発現の減少は、任意のWnt阻害剤に対する患者感受性を決定するために使用することができ、例えば、バイオマーカーの減少または過剰発現は、癌患者がWnt阻害剤、特に化合物Aに感受性であるとともにその投与に有利に応答することを示す。別の例として、Wnt阻害剤を用いる処置後、患者試料を得ることができ、該試料は感受性についてアッセイされて、患者がWnt阻害剤を用いる処置にまだ感受性であるかを見出すことができる。代替として、表1から選択される1つ超のバイオマーカーの組合せがアッセイされることで、該結果を得ることができる。Wnt阻害剤、特に、本明細書において定義されている通りのもの、具体的には化合物Aを用いる処置が選択され得る。これは、感受性と同定されるような患者、またはWnt阻害剤を用いる処置に応答することが可能である患者と同定されるような患者だけがWnt阻害剤を受けることを意味する。他は、任意選択により、他の薬物を用いる代替処置を受けることができる。
【0077】
対照試料と比較した場合、処置の前または後の患者試料における活性または機能の欠損または獲得を含めて、前記バイオマーカーの遺伝子発現の変動は、患者がWnt阻害剤を用いる処置に応答することを示し得ることが決定された。例えば、Wnt阻害剤は化合物Aであり得る。より具体的には、対照と比較して患者試料におけるWNT11、WNT10A、WNT3、WNT7Aのより高い発現は、Wnt阻害剤を用いる処置に対する患者の可能な感受性を示す。他方で、Wnt阻害剤を用いる処置に対する患者の可能な感受性は、対照発現と比較してAXIN2、LEF1、NKD1の発現の減少によって示される。ノッチ1、ノッチ2またはノッチ3の発現が低減されるならば、または特に、それらの活性または機能が、対照と比較した場合に減少されるならば、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者の可能な感受性を示す。前記活性または機能は、突然変異によって引き起こされることがある。対照と比較した場合の患者試料におけるより低いSFRP2、FRZB、SFRP4またはDKK2の発現の検出は、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性を示すことができる。対照レベルと比較した場合のFAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、FAT1、OR7G3またはDTX3Lのより低い発現、特にそれらの機能欠損は、患者が、Wnt阻害剤を用いる処置に応答する可能性があることを示すことができる。患者試料が、対照と比較した場合のHRASのより高い発現、特に機能の獲得を示す場合、Wnt阻害剤を用いる処置のための患者感受性は、より可能性がある。
【0078】
頭頸部癌細胞は、Wnt阻害剤に高応答性であることが実証された。頭頸部癌を有する癌患者は、Wnt阻害剤を用いる処置から利益を得ることができる。一般に、本発明の化合物は、単一または1種もしくは複数の治療剤との組合せのいずれかで、当技術分野において知られている通常および許容される様式のいずれかを介して、治療有効量で投与される。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康、使用化合物の効力、ならびに他の因子に依存して広く変動してよい。一般に、満足のいく結果は、体重当たりで約0.03から2.5mg/kgの1日投与量で全身的に得られると示されている。より大きい哺乳動物、例えばヒトにおける、示されている1日投与量は、例えば最大1日4回までの分割用量で好都合には投与される約0.5mgから約100mgの範囲である。経口投与のための適当な単位剤形は、約1から50mgの活性成分を含む。
【0079】
特に、対照と比較して表1から選択されるバイオマーカーの示差的下方調節発現を持つ頭頸部癌を有する患者は、Wnt阻害剤、好ましくは化合物Aを用いる処置から利益を得ることができる。こうした患者が応答する機会が最も高い。同様に、他の腫瘍型を患う患者も、表1から選択されるバイオマーカーの示差的発現が、対照と比較してそれらの癌試料において下方調節される限り、処置することができる。Wnt阻害剤を用いる処置が開始すると、阻害剤の有効性は、Axin2、LEF1および/またはNKD1の示差的発現を、Wnt阻害剤に感受性である癌試料における発現と比較することによってモニタリングすることができる。通常には、Wnt阻害剤が有効であるならば、Axin2、LEF1および/またはNKD1の発現は下方調節される。Axin2、LEF1および/またはNKD1の不十分に下方調節された発現は、用量調整の必要について示しているか、またはWnt阻害剤と別の抗腫瘍剤とを組み合わせることを必要とし得る。
【0080】
遺伝子発現の測定
遺伝子発現は、例えば、遺伝子から転写されるmRNAの定量、または遺伝子から転写されるmRNAの逆転写から生産されるcDNAの定量、または遺伝子によってコード化されるポリペプチドまたはタンパク質の定量を検出することを含めて、任意の適切な方法によって検出することができる。これらの方法は、試料ごとに試料上で実施することができるか、または高いスループット分析のために修飾することもできる。例えば、Affymetrix(商標)U133マイクロアレイチップを使用する。
【0081】
一態様において、遺伝子発現は、そのバイオマーカーのための適切なプローブに特異的にハイブリダイズするプローブへのハイブリダイゼーションによって検出および定量化される。プローブは、当技術分野において知られている方法を使用するハイスループットスクリーニングアッセイにおける使用のための固体支持体に付着させることもできる。WO97/10365および米国特許第5,405,783号、同5,412,087号および同5,445,934号は、例えば、本明細書に開示されている配列の1種または複数を含有することができる高密度オリゴヌクレオチドチップの構築を開示している。米国特許第5,405,783号、同5,412,087号および同5,445,934号に開示されている方法を使用して、この発明のプローブは、誘導体化ガラス表面上で合成される。光防護されたヌクレオシドホスホラミダイトは、ガラス表面にカップリングされ、フォトリソグラフィーマスクを介する光分解によって選択的に脱保護され、第2の保護されたヌクレオシドホスホラミダイトと反応させる。カップリング/脱保護プロセスは、所望のプローブが完成するまで反復される。
【0082】
一態様において、遺伝子の発現レベルは、プローブ修飾チップへの核酸試料の曝露を介して決定される。抽出された核酸は、例えば、蛍光タグを用いて、好ましくは増幅ステップ中に標識される。標識試料のハイブリダイゼーションは、適切なストリンジェンシーレベルで実施される。プローブ−核酸ハイブリダイゼーションの程度は、検出装置を使用して定量的に測定される。米国特許第5,578,832号および同5,631,734号を参照されたい。
【0083】
代替として、遺伝子コピー数、転写または翻訳のいずれか1つは、公知の技法を使用して決定することができる。例えば、PCRなどの増幅方法が有用であり得る。PCRのための一般的手順は、MacPherson et al., PCR: A Practical Approach, (IRL Press at Oxford University Press (1991))に教示されている。しかしながら、各適用反応のために使用されるPCR条件は、経験的に決定される。多数のパラメータが反応の成功に影響を及ぼす。それらの中には、アニーリングの温度および時間、伸長時間、Mg2+および/またはATP濃度、pH、ならびにプライマー、テンプレートおよびデオキシリボヌクレオチドの相対的濃度がある。増幅後、結果として得られるDNA断片は、アガロースゲル電気泳動法、続いて、臭化エチジウム染色法および紫外線照明を用いる可視化によって検出することができる。
【0084】
一実施形態において、ハイブリダイズ核酸は、試料核酸に付着されている1つまたは複数の標識を検出することによって検出される。標識は、当業者によく知られている多数の手段のいずれかによって組み込むことができる。しかしながら、一態様において、標識は、試料核酸の調製における増幅ステップ中に同時に組み込まれる。したがって、例えば、標識プライマーまたは標識ヌクレオチドとのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、標識増幅生成物を提供する。別々の実施形態において、標識ヌクレオチド(例えばフルオレセイン標識UTPおよび/またはCTP)を使用する、上に記載されている通りの転写増幅は、転写された核酸に標識を組み込む。
【0085】
代替として、標識は、元の核酸試料(例えば、mRNA、ポリA、mRNA、cDNAなど)に、または増幅が完了した後の増幅生成物に、直接付加することができる。標識を核酸に付着させる手段は、当業者によく知られており、例えば、核酸のキナーゼ化、および後続の、試料核酸を標識(例えば、フルオロフォア)に接合する核酸リンカーの付着(ライゲーション)によるニック翻訳または端部標識化(例えば、標識RNAを用いる)が挙げられる。
【0086】
本発明における使用に適当な検出可能な標識としては、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物が挙げられる。本発明における有用な標識としては、標識ストレプトアビジンコンジュゲートで染色するためのビオチン、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光染料(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミンおよび緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14Cまたは32P)酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて共通して使用される他の物)、および熱量測定標識、例えばコロイド金または色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズが挙げられる。こうした標識の使用を教示している特許としては、米国特許第3,817,837号;同3,850,752号;同3,939,350号;同3,996,345号;同4,277,437号;同4,275,149号;および同4,366,241号が挙げられる。
【0087】
標識の検出は、当業者によく知られている。したがって、例えば、放射標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出することができ、蛍光マーカーは、放射光を検出するための光検出器を使用して検出することができる。酵素標識は、典型的に、酵素に基質を提供すること、および基板への酵素の作用によって生産される反応生成物を検出することによって検出され、熱量測定標識は、色標識を単純に可視化することによって検出される。
【0088】
検出可能な標識は、WO97/10365などに記載されているハイブリダイゼーションの前または後に、標的(試料)核酸(単数または複数)を添加することができる。これらの検出可能な標識は、直接、ハイブリダイゼーションの前に標的(試料)核酸に付着されるかまたは組み込まれる。対照的に、「間接的標識」は、ハイブリダイゼーション後のハイブリッド二重鎖に接合される。一般に、間接的標識は、ハイブリダイゼーションの前の標的核酸に付着されていた結合用部分に付着される。例えば、標的核酸は、ハイブリダイゼーション後にビオチン化することができる。ハイブリダイゼーション後、アビジンコンジュゲートフルオロフォアは、容易に検出される標識を提供するハイブリッド二重鎖を保有するビオチンを結合する。核酸を標識する方法、および標識されたハイブリダイズ核酸を検出する方法の詳しい概説については、Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 24: Hybridization with Nucleic Acid Probes, P. Tijssen, ed. Elsevier, N.Y. (1993)を参照されたい。
【0089】
ポリペプチドの検出
バイオマーカーの発現レベルは、表1から選択されるバイオマーカー少なくとも1つのタンパク質発現またはタンパク質生成物を検査するによって決定することもできる。タンパク質レベルを決定することは、患者から得られる試料におけるバイオマーカーのポリペプチドを選択的に認識および結合する抗体の間に発生する任意の免疫特異的結合の量を測定すること、および対照試料における少なくとも1つのバイオマーカーの免疫特異的結合の量とこれを比較することを伴う。バイオマーカーのタンパク質発現の量は、対照発現と比較した場合に増加または低減され得る。代替として、表1から選択されるバイオマーカーの1つ超の組合せがアッセイされ得る。
【0090】
タンパク質分析のための様々な技法が、当技術分野において利用可能である。それらとしては、以下に限定されないが、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素連結免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射線測定アッセイ、インサイチュイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位体の標識を使用する)、ウエスタンブロット分析、免疫沈殿アッセイ、免疫蛍光アッセイ、フローサイトメトリー、免疫組織化学的検査、共焦点顕微鏡法、酵素アッセイ、表面プラズモン共鳴およびPAGE−SDSが挙げられる。
【0091】
バイオマーカーおよびWnt阻害剤を用いる処置に関するアッセイ
患者がWnt阻害剤に感受性であると予測されると、患者への任意のWnt阻害剤の投与は、処置の過程の全体にわたって連続的にまたは断続的に、1つの用量で成し遂げることができる。投与の最も有効な手段および投与量を決定する方法は、当業者によく知られており、治療のために使用される組成物、治療の目的、処置されている標的細胞、および処置されている対象とともに変動する。単回または複数の投与は、処置する医師によって選択される用量レベルおよびパターンで実施することができる。適当な投与処方物および薬剤を投与する方法は、経験的に調整することができる。
【0092】
表1から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つは、患者がWnt阻害剤を用いる処置に感受性のままであるかを決定するために、Wnt阻害剤の投与後についてアッセイすることができる。加えて、少なくとも1つのバイオマーカーは、阻害剤の単回投与後に複数の時点でアッセイすることができる。例えば、Wnt阻害剤の初期ボーラスが投与され、少なくとも1つのバイオマーカーは、第1の処置の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、8時間後、16時間後、24時間後、48時間後、3日後、1週後、または1カ月後もしくは数カ月後にアッセイされる。代替として、表1から選択されるバイオマーカーの1つ超、例えば2つ、3つ、4つ、5つまたは全てが一緒にアッセイされ得る。
【0093】
表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーは、Wnt阻害剤の各投与後にアッセイすることができるので、Wnt阻害剤の複数の投与があるならば、少なくとも1つのバイオマーカーが各投与後にアッセイされることで、患者感受性の持続を決定することができる。患者はWnt阻害剤の複数の投与を受け、バイオマーカーは、次いで、異なる時点でアッセイされる。例えば、処置の過程は、Wnt阻害剤の初期用量、特定の時間期間後に第2の用量、およびまた第2の用量の数時間後に第3の用量の投与を必要とし得る。少なくとも1つのバイオマーカーは、Wnt阻害剤の各用量の投与の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、8時間後、16時間後、24時間後、48時間後、3日後、1週後、または1カ月後もしくは数カ月後にアッセイすることができる。代替として、表1から選択されるバイオマーカーの1つ超、例えば2つ、3つ、4つ、5つまたは全てが一緒にアッセイされ得る。
【0094】
異なるバイオマーカーが異なる時点でアッセイされることも、本発明の範囲内である。いずれか1つの理論に結び付けられることなく、Wnt阻害剤の作用機序またはバイオマーカーの作用機序によりWnt阻害剤への応答は遅延され、少なくとも1つのバイオマーカーは、患者が該薬物の投与に感受性のままであるかを決定するために、投与後の任意の時にアッセイされる。Wnt阻害剤の各投与後の表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーに関するアッセイは、処置の手段、投与量および過程についてのガイダンスを提供する。
【0095】
最終的に、異なるWnt阻害剤の投与があり、およびその後、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーに関するアッセイが続く。この実施形態において、1つ超のWnt阻害剤が選択され、患者に投与される。表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーは、次いで、各異なるWnt阻害剤の投与後にアッセイすることができる。上記の通り、このアッセイは、異なるWnt阻害剤の投与後の複数の時点で行うこともできる。例えば、第1のWnt阻害剤が患者に投与され、少なくとも1つのバイオマーカーが、投与の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、8時間後、16時間後、24時間後、48時間後、3日後、1週後、または1カ月後もしくは数カ月後にアッセイされ得る。第2の阻害剤が次いで投与され、少なくとも1つのバイオマーカーが、第2のWnt阻害剤の投与の1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、8時間後、16時間後、24時間後、48時間後、3日後、1週後、または1カ月後もしくは数カ月後に再びアッセイされ得る。代替として、表1から選択されるバイオマーカーの1つ超、例えば2つ、3つ、4つ、5つまたは全てが一緒にアッセイされ得る。
【0096】
本発明の別の態様は、Wnt阻害剤の投与後にバイオマーカーの少なくとも1つの示差的発現をモニタリングすることを含む、Wnt阻害剤の適当な用量レベルを判定する方法を提供する。例えば、Wnt阻害剤の第1のボーラスの投与後に、少なくとも1つのバイオマーカーが分析され、この結果に基づいて、Wnt阻害剤投与量の増加または減少が推奨される。Wnt阻害剤の調整投与量の投与後に、少なくとも1つのバイオマーカーの分析は、患者が調整用量にまだ感受性であるか、および調整用量が予想利益を提供していること、例えば、腫瘍成長を抑制していることを決定する。代替として、表1から選択されるバイオマーカーの1つ超、例えば2つ、3つ、4つ、5つまたは全てが、Wnt阻害剤の用量に対する感受性を判定するために一緒にアッセイされ得る。
【0097】
初期感受性腫瘍におけるWnt阻害剤の効力の延長を判定するための全ての実施形態の代替において、NKD1、LEF1および/またはAxin2の示差的発現は、感受性腫瘍試料における発現と比較することができる。感受性腫瘍試料は、50nMの化合物Aを用いる48時間かけての処置で50%超のAxin2低減(Wnt経路阻害)を示す腫瘍とも定義される。
【0098】
任意のWnt阻害剤の活性を判定するためのキットが作製され得る。例えば、表1から選択されるバイオマーカーのための、PCRまたはマイクロアレイハイブリダイゼーション用の核酸プライマーを含むキットは、Wnt阻害剤に対する感受性を判定するために使用することができる。代替として、該バイオマーカーの少なくとも1つのための抗体が供給されているキットが、Wnt阻害剤に対する感受性をアッセイすることに有用である。
【0099】
癌が化学療法処置に抵抗性になることがあり、殊にその処置が延長される場合にそうなることが当技術分野においてよく知られている。表1から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つの示差的発現についてアッセイすることは、癌がWnt阻害剤に感受性であるかを決定するために任意の化学療法薬を用いる延長処置後に行うことができる。患者が別の化学療法薬または別のWnt阻害剤で前に処置されているならば、腫瘍がWnt阻害剤に感受性であるかを決定するために表1から選択されるバイオマーカーの少なくとも1つについてアッセイすることは、患者にとって有用な情報である。このアッセイは、癌が寛解に入り、次いで再成長するか、または異なる部位に転移しているならば、患者に殊に有益であり得る。
【0100】
Wnt阻害剤に関するスクリーニング
他のWnt阻害剤についてスクリーニングするために表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーについてアッセイすることが可能である。この方法は、少なくとも1つのバイオマーカーで細胞をアッセイすることを含み、これは、該細胞がWnt候補阻害剤に感受性であるかを予測し、次いで細胞が候補Wnt阻害剤と接触され、処置細胞のIC50が、感受性細胞と接触する公知のWnt阻害剤と比較される。例えば、少なくとも1つのバイオマーカーの示差的発現によって決定される通り任意のWnt阻害剤に感受性であると予測された細胞について、候補Wnt阻害剤は、IC50≦3μMを有する。少なくとも1つのバイオマーカー発現の測定は、前に記載されている方法、例えば、PCRまたはマイクロアレイ分析によって行うことができる。代替として、該バイオマーカーの1つ超の組合せが、この目的のためにアッセイされ得る。
【0101】
【表1-1】
【表1-2】
【実施例】
【0102】
実施例1:化合物Aおよび化合物B(それぞれ、図1Aおよび1B)は、生化学的アッセイおよび細胞アッセイにおいて強力なPORCN阻害剤である。
【0103】
放射性リガンド結合アッセイ:膜調製:Fugene 6(Roche)を使用して、ヒトPORCNを保有するpcDNA 3.1構築物(Invitrogen)で、およそ10個の293細胞をトランスフェクトした。48時間後に、細胞をPBS中で擦過することによって収集し、1,000×gで10分間遠心分離した。緩衝剤を吸引した。細胞ペレットをドライアイス浴中で凍結し、次いで、EDTAフリーのプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)を含有する50mMのトリスpH7.5、250mMのスクロースの緩衝剤10ml中に穏やかに再懸濁した。ポリトロン(Brinkman)を使用して、細胞を溶解した。溶解細胞を1,600×gにて20分間4℃で遠心分離し、上澄みを移し、20,000rpmでSS34回転子中にて20分間4℃で遠心分離した。上澄みを捨て、ポリトロンを用いて10秒パルスを使用して、10%のスクロース、50mMのトリスpH7.5、5mMのMgCl、1mMのEDTAの溶液中に、ペレットを再懸濁した。
【0104】
化合物Bの放射性リガンド標識化:化合物Cは、それの構造が下記
【0105】
【化3】
にリストされているが、それをAmBioslabsによって行われる水素化反応を介して放射標識することで、H放射標識化合物Bを作製した。
【0106】
放射性リガンド結合アッセイ:前述の膜調製物を使用して、濾過結合アッセイを以下の通りに実施した。非特異的結合を低減するため、96ウェル濾過プレート(PerkinElmer)を、製造者によって示差されている通りに0.1%のBSAで予備被覆し、0.1%のBSAで4回洗浄した。ポリプロピレン96ウェルプレート中にて、6.6nMのH−化合物Bを用いて、化合物Aの存在または非存在において、結合緩衝剤(50mMのトリスpH7.5、5mMのMgCl、1mMのEDTA、0.1%のウシ血清アルブミン)プラスEDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)中にて、150μlの最終体積で3時間の間室温で、膜調製物(50μgの総タンパク質)をインキュベートした。次いで結合反応混合物を、予備被覆96ウェル濾過プレート(PerkinElmer)に移し、96ピンのFilterMate Harvester(PerkinElmer)を使用して濾過および洗浄した。マイクロプレートシンチレーションカウンター、TopCount(PerkinElmer)を使用して、放射活性シグナルを得た。放射性リガンドPORCN結合活性を、TopCount(PerkinElmer)によって測定した。プリズムを使用して、曲線フィッティングを実施した。
【0107】
図2Aに示されている通り、トリチウム標識化合物Bは、PORCNでトランスフェクトされた293細胞からの膜調製物に大きく結合し、Wntなしまたはベクター対照トランスフェクト細胞からのものに結合せず、化合物BがPORCNと特異的に相互作用することを示した。さらに、化合物BとPORCNとの間の特異的相互作用は、非標識化合物Bによって競合され得る(図2A)。試験用冷化合物との競合のため、化合物BはPORCNに結合し、インビトロ生化学的PORCN結合アッセイにおいて熱い放射性リガンドとして働いた。H−化合物Bを使用するPORCNに対する放射性リガンド結合アッセイにおいて、化合物Aは1nMのIC50を示した(図2B)。
【0108】
実施例2:化合物AによるPORCNの阻害は、インビトロWntシグナリングを遮断する
【0109】
レポーター遺伝子アッセイ:マウスライディッヒ細胞TM3細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション、ATCC、Manassas、VAから得られた)を、2.5%のFBS(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)および5%のウマ血清(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)、50単位/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシン(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)が補充されたHam F12培地およびダルベッコ変法イーグル培地(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)の1:1混合物中にて、37℃で5%のCO2を用いて空気雰囲気中で培養した。10cm皿中のTM3細胞を、製造者のプロトコールに従って30μLのFuGENE6(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)とともにWnt応答エレメントおよび2μgのpcDNA3.1−Neo(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)によって推進されたルシフェラーゼ遺伝子を含有する8μgのSTF−レポータープラスミドで同時トランスフェクションした。安定な細胞株(TM3 Wnt−Luc)を、400μg/mLのG418(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)で選択した。TM3 Wnt−Luc細胞およびL細胞Wnt3A細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション、ATCC、Manassas、VAから得られた)を、10%のFBS(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)および50単位/mLのペニシリンおよび50μg/mLのストレプトマイシン(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)が補充されたダルベッコ変法イーグル培地(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)中にて、37℃で5%のCO2を用いて空気雰囲気中で培養し、2%のFBSが補充されたDMEM培地を有する384ウェルプレートでトリプシン処理および共培養し、本発明の化合物の異なる濃度で処置した。24時間後に、Bright−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ系(Promega、Madison、WI)を用いてホタルルシフェラーゼ活性をアッセイする。該化合物の効果が発光シグナルを50%低減する時にIC50を測定する。
【0110】
化合物Aは、Wnt共培養アッセイにおいて0.4nMのIC50でWntシグナリングを強力に阻害した(図3A)。この阻害効果を外因性Wnt3A条件付け培地の添加によって救った(図3B)。PORCN依存性Wnt分泌におけるそれの機能をさらに確証するため、293A細胞をHAタグ付けWnt3a(HA−Wnt3A)でトランスフェクトし、化合物Aの様々な用量で処置した。図4に示されている通り、化合物Aは、上澄み中におけるHA−Wnt3Aの存在度を強力に減弱する一方でライセートHA−Wnt3Aを残して、Wnt3A分泌が化合物Aによって用量依存性方式で実質的に阻害されることを示唆した。分泌Wntは引き続いてWnt受容細胞上で機能し、これが、Wnt共レポーターLRP6のリン酸化に至る。オートクリンL−Wnt3A細胞、Wnt3Aを過剰発現するマウス乳腺細胞株を使用して、我々は、化合物Aが実際にLRP6(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6)のWnt依存性リン酸化を強く遮断することを実証した(図5A)。PORCNは総Wnt翻訳後のパルミトイル化を遂行すると報告された17−18。推定Wntパルミトイル化部位、Ser209の周囲の残留物は、全ての19のWntの間で保存されており(図5B)、CHG×SGSCパルミトイル化モチーフはプロテオームの全体にわたって他のどのタンパク質においても同定されなかった。化合物Aが遺伝的にPORCNの欠損の帰結を繰り返すことができるかを試験するため、我々は、Wnt1、2、3、3A、6、7A、および9Aを含めて、Wnt依存性STFレポーターアッセイにおいて1セットのカノニカルWntに焦点を当てた。図5Cに示されている通り、化合物Aは、全ての試験Wntに対して匹敵できる阻害活性を実証し、これは、PORCN表現型の欠損と一致する。追加として、化合物Aは、最大20μMまで、細胞における主要な細胞毒性を示さなかった。
【0111】
実施例3:ヒト頭頸部癌細胞株におけるWnt阻害剤の細胞機能的効果
【0112】
porcupine阻害に応答するヒト癌細胞株を同定するため、我々は、読み取りとしてAXIN2のmRNA発現レベルを使用して、300を超える細胞株をプロファイリングした。加湿インキュベーター内にて37℃で5%のCO2を使用して、全ての細胞株を培養した。HN30細胞(Wayne State University)およびUMSCC細胞(University of Michigan)は、ヒト頭頸部扁平細胞癌腫(HNSCC)患者腫瘍試料から誘導される。Qiagen RNeasyおよびDNeasy血液および組織キットを使用して、それぞれ製造者の指示に従って、全RNAまたはDNAを単離した。簡潔には、緩衝剤RLTを添加することによって細胞を崩壊し、QIAshredderスピンカラムを使用してホモジナイズした。1体積の70%エタノールを、ホモジナイズしたライセートに添加し、徹底的に混合した後、該試料をRNeasyスピンカラムに移した。遠心の後でフロースルーを捨てた。RNeasyスピンカラムを緩衝剤RW1および緩衝剤RPEで2回洗浄した後、RNeasyスピンカラムをRNaseフリーの水で溶出することによって、RNA試料を回収した。TaqManアッセイのために、1ウェル当たり2×10個の細胞を6ウェル細胞培養プレートに平板培養し、最も高い最終濃度として5μMから出発する複数点の用量−応答において化合物の有無で処置した。48時間後に、RNA試料を回収した。
【0113】
応答性細胞株は、10〜100nMの化合物Aを用いる48時間の間の処置後に、好ましくは50nMの化合物Aを用いる48時間の間の処置後に、50%超のAXIN2 mRNA低減を達成すると定義される。図6に示されている通り、頭頸部癌細胞(HNSCC)株は、化合物Aに応答性であった上位の癌型の1つである。HNSCC細胞株の中で、96個のうち31個が、化合物Aの処置で経路阻害を示す(図7)。
【0114】
経路阻害を細胞機能と相関させるために、ヒトHNSCC細胞株HN30をさらなるインビトロおよびインビボ特徴付けのために使用した。コロニー形成アッセイのため、1ウェル当たり2×10個の細胞を、化合物処置の有無における6ウェル細胞培養プレートに平板培養した。細胞をクリスタルバイオレットで1週後に染色した。
【0115】
化合物Aは、HN30におけるWnt依存性AXIN2メッセージ生産を0.3nMのIC50で強力に阻害した(図8A)。それは、右シフトIC50であるがHN30コロニー形成を強く減弱した(図8B)。化合物Aによる低減コロニー形成効果は、優性β−カテニンの過剰発現で部分的に救われ得る(図9A)。化合物Aの細胞効果がPORCN依存性Wntシグナリング活性の阻害によるものかをさらに確証するため、shRNA実験を実施した。PORCNに対するshRNAは、Wnt標的遺伝子AXIN2の発現(図9B)およびインビトロにおけるHN30細胞のコロニー形成(図9C)を実質的に阻害し、化合物Aデータと一致した。
【0116】
実施例4:Wnt依存性ヒトHNSCCのマウスモデルにおけるWnt阻害剤の効力
【0117】
化合物Aの抗腫瘍活性を試験するため、HNSCC HN30のマウス異種グラフトモデルを樹立した。HN30腫瘍を保有するヌードマウスを腫瘍体積に従ってランダム化した。化合物Aを10%クエン酸緩衝液pH2.8/90%クエン酸緩衝液pH3.0、または0.5%MC/0.5%Tween80中に処方し、経口胃管栄養法によって動物体重の10μL/gの投薬体積で投与した。体重を毎日モニタリングし、腫瘍が触診可能になると腫瘍サイズを週3回判定した。ノギス測定を使用することによって、腫瘍サイズを決定した。式(長さ×幅×高さ)/2を用いて、腫瘍体積を算出した。腫瘍保有ヌードマウスにおける化合物Aの血漿濃度および曝露(1投薬群当たりn=2)を14日目に決定した。連続的後眼窩サンプリングによって用量の1時間後、3時間後、7時間後、16時間後および24時間後に、血液試料(50μL)を回収した。血液試料を遠心分離し、血漿を分離し、LC/MS/MSによる分析まで凍結した。
【0118】
図10Aに示されている通り、化合物Aは、1日1回投薬した場合に用量依存性効力を誘発した。各処置(T)群および対照(C)群に関する腫瘍重量の変化を測定し、T/C比によって表された通りの成長遅延を算出するために使用した。処置の14日後、0.1mg/kgの用量は、中程度の腫瘍成長遅延に至り(T/C:69%)、0.3mg/kgの用量は腫瘍成長を有意に阻害し(T/C:26%)、1.0mg/kgおよび3.0mg/kgの用量は、実質的腫瘍後退をもたらした(T/C:それぞれ−31%および−50%)(図10A)。該レジメンは非常に耐容性であり、著しい動物体重欠損はなかった。1日2回0.5mg/kgの用量で−44%のT/Cにてこのモデルにおいて、1日2回投薬した場合に、同様の結果が得られた。
【0119】
AXIN2 mRNAおよびpLRP6のレベル(実施例3における通りに決定された)を、HN30マウス異種グラフトモデルにおける観察された抗腫瘍活性に結びつけるための薬力学的マーカーとして利用した。3mg/kgでの化合物Aの単回用量後、腫瘍におけるAXIN2 mRNA発現のレベルは、用量の5時間から10時間後の間に約60〜95%低減され、効果は、薬物濃度を減少するとともに16時間で減退し始めた(図10B)。時間遅延をピーク薬物濃度(1時間で)と最大AXIN2 mRNA阻害(10時間で)との間で観察した。追加として、図10Cに示されている通り、HN30腫瘍におけるpLRP6レベルは、時間依存性方式で実質的に低減された。最大効果は用量の7〜10時間後に達成し、pLRP6レベルは正常に24時間で大きく戻った。化合物Aを用いる処置は、LEF1について84%の下方調節およびNKD1について67%の下方調節も引き起こした。この薬物動態学的(PK)、PDおよび効力の関係は、持続性経路阻害が、このHN30異種グラフトモデルにおける腫瘍後退を誘発するのに必要とされないことを説明しており、これは、治療的窓を達成するための、腫瘍と正常組織との間の主要な分化因子を提供することができる。Wnt阻害剤、特に化合物Aは、頭頸部癌の処置において使用することができると結論付けられ得る。
【0120】
実施例5:ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4およびDKK2の遺伝子発現を判定することによる、ヒト原発腫瘍マウス異種グラフトモデルおよびヒト原発腫瘍におけるWnt阻害剤感受性の予測:
【0121】
インビボにおける化合物Aの処置によって調節された他のWnt関連遺伝子を検査するため、TaqMan(登録商標)GeneCard分析は、LEF1およびNKD1を含めたいくつかの他の公知Wnt標的遺伝子ならびにWnt3およびWnt9Bを含めたWntリガンドの下方調節を明らかにした。
【0122】
このため、2ステップTaqManRT−PCR分析を、PTC−200ペルチェサーマルサイクラー(MJ Research)およびABI PRISM 7900HT Sequence Detectionシステム(Applied Biosystems)上で実施した。第1に、High−Capacity cDNA Archive cDNA Archiveキット(Applied Biosystems)を使用し、製造者の指示に従って、cDNAを合成した。簡潔には、High−Capacity cDNA Archive cDNA Archiveキットの非酵素的、酵素的構成成分および単離RNA試料を混合することによって、RT反応を調製し、その後、サーマルサイクラーを使用して25℃で10分間および37℃で120分間のタンデムインキュベーションが続いた。第2に、TaqMan Universal Master ミックス(Applied Biosystems)ならびにAXIN2およびGAPDHプローブ(Applied Biosystems)を使用し、製造者の指示に従って、TaqMan分析を実施した。簡潔には、Universal Masterミックス、TaqManプローブおよび合成cDNA試料を混合することによって、PCR反応を調製した。PCRサイクルは以下の通りである:95℃で10分間、およびタンデムインキュベーション40サイクル、95℃で15秒間および60℃で1分間。標的遺伝子に関するmRNA発現レベルをGAPDH mRNAレベルに標準化し、相対的RNA定量を算出するためにSDS 2.0ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用してデータを分析した。プリズムを使用して、曲線フィッティングを実施した。
【0123】
GeneCard分析のため、96ウェルTaqManアレイ遺伝子カードを、製造者の指示に従って使用した。遺伝子カードアッセイをABI 7900HT Real−Time PCR System(Applied Biosystems)上で実行し、ΔΔCt方法で分析した。
【0124】
GeneCard分析を使用して、HN30腫瘍と正常のヒト中咽頭組織との間の遺伝子発現パターンを比較した場合、Wnt3、7A、10Aおよび11を含めたWntリガンドは、HN30腫瘍において実質的に過剰発現されていたが、SFRP2、FRZB、SFRP4およびDKK2などの公知のWnt阻害遺伝は、実質的に下方調節されており、これは、Wntシグナリングが病原学的標的であるという仮説と一致する。このデータは、SFRP2、FRZB、SFRP4またはDKK2遺伝子発現が、対照と比較して示差的に下方調節されていると分かった場合、細胞株、癌試料、または癌型を有する患者がWnt阻害剤に感受性である可能性が、より高いことを示す。対照と比較して示差的に下方調節された癌試料またはSFRP2、FRZB、SFRP4もしくはDKK2の遺伝子発現を有する癌は、対照に匹敵できる遺伝子発現を呈する癌試料または癌と比較して、Wnt阻害剤に感受性である可能性が、より高い。この概念は患者層別化プロセスにおいて適用することができ、ここで、Wnt阻害剤を用いる処置に応答する可能性が最も高い患者が選択および処置される。
【0125】
HN30細胞を含めて、化合物A処置に応答した細胞における作用機序をさらに理解するために、25個の応答性株および15個の非応答性株を用いる40個のHNSCC細胞株でエクソーム配列決定を実施した。TP53、CDKN2A、ノッチ1/2/3、PTEN、HRASおよびPIK3CAは、このセットの細胞株において突然変異された上位のオンコジーンまたは腫瘍サプレッサー遺伝子の中にある(図11)。
【0126】
全エクソーム捕捉するライブラリー調製および配列決定:Roche NimbleGen V2(44.1Mbp)エクソーム濃縮キット(Otogenetics)を使用して、エクソーム捕捉ライブラリー構築を行った。捕捉されたエクソンの対合端部配列決定(2×100bp)を、50Xの平均カバレッジを有するIllumina Genome Analyzer IIxプラットフォーム(Otogenetics)上で実施した。
【0127】
配列データ加工:Broad Institute Genome Atlas Tool Kit(GATK)によって推奨された標準的パイプラインによって、配列決定データを加工した:
【0128】
Burrows−Wheeler Alignerバージョン0.5.9(http://bio-bwa.sourceforge.net)を使用して、各試料についての読み取りおよび品質スコアを有する未加工配列決定fastqファイルを、NCBIヒト参照ゲノムGRCh37に対して整列させた。各試料について、参照ゲノムに対するそれらの整列化を有する単一選別化Binary Alignment Map(BAM)ファイルを作成した。
【0129】
該整列化からのBAMファイルを、「公知のインデルおよび再較正を有する試料レベル再整列化」方法を使用してさらにクリーニングした。(http://www.broadinstitute.org/gatk/guide)
【0130】
SNP、多ヌクレオチド多型(MNP)およびインデルを生じさせるための各再較正およびクリーニングされたBAMファイルのために、GATK統合ゲノタイパーを使用した。各試料に関する変異体コール後、それらを多試料SNPおよびインデルコーリングに合併した。分離された変異体コールフォーマット(VCF)ファイルを、SNPおよびインデルコーリングのために生産した。
【0131】
次いで、全ての変異体コールを、対応するタンパク質生成物に対するそれらの機能的衝撃を予測するためにSnpEff(v2.1b http://snpeff.sourceforge.net/)によって、および追加のアノテーションのためにGATK変異体アノテーターによって加工した。dbSNP v.135、COSMIC v.58、およびESP5400を含めて、様々な公的に利用可能なデータベースを使用することで、ゲノム変化を公知の変異体にマッピングした。
【0132】
変異体の分析:配列決定アーチファクトを低減するため、変異体品質<30、マッピング品質<30、変異体信頼<2、および標準化Phredスケールの尤度>80を含めて、様々な濾過が用いられる。参照エクソームと比較して、ゲノム変化を持つ合計18349個の遺伝子がある。全ての40個のHNSCC細胞株におけるゲノム変化の合計数は約169kである。しかしながら、それらの大部分(89%)は、上に記述されている公開データベースにおいてアノテーションされている公知の変異体である。新規な変異体の中で、約半分(合計6%)の変異体は、突然変異、切断、挿入、および欠失などのタンパク質配列修飾をもたらす。配列決定することは全て、マッチしない正常物が利用可能である細胞株についてであったことに留意されたい。そのため、ここで見られる新規な変異体の一部は、潜在的に、SNPであり得る。細胞株継代中に獲得される突然変異も可能であり、癌の発達および進行中に獲得されるものから区別することができる。UM−SCC株は、各々、独特のゲノタイプを有し、最も低い可能な継代数、初期培養から通常100未満の継代で使用した。
【0133】
ゲノム変化の機能的衝撃をSnpEffによって判定した。高衝撃突然変異としては、フレームシフト、スプライス部位突然変異、開始コドン欠損、停止コドン獲得、および停止コドン欠損が挙げられる。中程度衝撃突然変異としては、インフレームの挿入または欠失、および非同義突然変異が挙げられる。潜在的な生殖系列突然変異を、SNP対立遺伝子起源(SAO)<2を有するdbSNPにおいて、またはESP5400エントリーにおいて、およびCOSMICにおいてでなく、突然変異がアノテーションされるかによって決定した。
【0134】
機能欠損突然変異と化合物A薬理学的機能との間の相関関係を研究するため、我々は全ての可能な機能欠損(LoF)変異体を1つのカテゴリーに集めたが、遺伝子のLoF突然変異が、広範囲のタンパク質配列にわたって拡散する突然変異を有し得ることが知られているからである。突然変異としては、停止コドン獲得、フレームシフト、開始コドン欠損、およびスプライス部位突然変異などの高衝撃変異体が挙げられる。我々は、その上、極めて低いカバレッジ変異体を除去するため、野生型および突然変異体対立遺伝子に関する配列深度の組合せが少なくとも5であることを必要とした。配列決定された40個のHNSCC細胞株からの変異体コールを使用して、我々は、各遺伝子について化合物A PD応答に対するLoF変異体の濃縮効果を評価した。濃縮係数を以下の通りに定義する(即ちオッズ比)。
【0135】
E(LoF)=(P(応答│突然変異体)[1−P(応答)])/(P(応答)[1−P(応答|突然変異体)])
【0136】
ここで、P(応答|突然変異体)は、LoF突然変異を持つ遺伝子に与えられた化合物A処置に応答する確率を表し、P(応答)は、偶然によって化合物A処置に応答する確率を表す。
【0137】
実施例6:ノッチ1は、Wnt阻害剤を用いる処置のための最も予測的バイオマーカーである
【0138】
E>2、および3より大きいLoF発生の数に基づいて、候補遺伝子を選択した。上位の候補の中で、ノッチ1 LoFは、最も高い濃縮因子の1つ、ランダム選択より3倍の濃縮を有する。ノッチ1突然変異/変異体を、癌細胞株(GeneWiz)のcDNAまたはゲノムDNAの配列決定によって検証した。Sequencher(GeneCodes)を使用して、配列を分析した。
【0139】
このデータから、我々は、遺伝子突然変異状態および化合物Aへの細胞株経路阻害応答を相関させる最も際立った特色が応答性細胞株におけるノッチ1機能欠損(LoF)突然変異であったと結論付けることができる。
【0140】
図13Aおよび13Bに示されている通り、5つのフレームシフト/ナンセンス突然変異が応答性細胞株の中で同定され、1つのノッチ1ナンセンス突然変異は非応答性細胞株の中である。興味深いことに、ノッチ1突然変異を有する全ての細胞は、ノッチ1のN末端に影響する少なくとも1つの突然変異体対立遺伝子を持っていた。これは、ノッチ1のN末端が、それの機能のために必要とされ、N末端のEGF反復がリガンド−受容体相互作用17の責任を担っていることで、この領域における突然変異がLoF突然変異である可能性が、より高いという概念と一致する。HN30細胞において同定されたノッチ1C478Fなどのミスセンス突然変異の機能的帰結をさらに特徴付けるため、野生型またはC478F突然変異体の過剰発現で、ノッチレポーター遺伝子アッセイを実施した(図13C)。C478F突然変異は、ノッチ1の細胞外ドメインに位置しており、これは、おそらく、ノッチ受容体およびリガンド相互作用に不可欠である。実際に、ノッチリガンドDLL1の存在下で、突然変異体C478Fノッチ1の活性は、このノッチレポーター遺伝子アッセイにおいて消滅された(図13C)。
【0141】
これは全て、例えば化合物AなどのPORCN阻害剤の臨床的処置を支持して、患者選択にガイダンスを提供し得る。
【0142】
DTX3L(Deltex 3様、その上、BBAP、Bリンパ腫およびBAL関連タンパク質と呼ばれる)ヘテロ接合ナンセンス突然変異を、HNSCC細胞株SNU1076において同定した。DTX3LはE3ユビキチンリガーゼである。哺乳動物ノッチ経路におけるそれの細胞機能は明らかでないが、それのショウジョウバエ(Drosophila)相同体Deltexは、ショウジョウバエ(Drosophila)におけるノッチシグナリングの正の調節因子である。マウスにおけるSNU1076異種グラフトモデル中で、5mg/kgの用量での化合物Aは、処置の14日後に腫瘍成長を有意に阻害した(T/C:25%)(図14A)。さらに、化合物Aは、AXIN2の70%低減によって示される通り(図14B)、Wnt経路を実質的に阻害した。DTX3Lの欠損は、ノッチシグナリング経路を不活性化する代替機序に、Wntシグナリングの後続活性化を提供し得る。
【0143】
実施例7:Wnt阻害剤を用いる処置のための予測的マーカーとしてのHRASおよびFAT1。
【0144】
我々のエクソーム配列決定および細胞株プロファイリングの努力から、我々は、FAT1突然変異体頭頸部癌細胞株における化合物A応答物の濃縮を観察した(図15)。さらに、我々の分析から、HRAS突然変異を持つ5個の細胞株うち4個が化合物Aに応答した(図16)。
【0145】
実施例8:ゲノムデータおよび臨床的含意からの、Wnt阻害剤に対する細胞株化学的感受性の予測。
【0146】
エクソーム配列決定によって決定された通り、ノッチ1遺伝子発現(例えば突然変異状態)は、Wnt阻害剤感受性の最も有力なインジケーターの1つであり、そのため、例えば化合物AなどのWnt阻害剤に応答性である癌患者を選択するために考えられるべき層別化バイオマーカーとして使用することができる。癌関連細胞株のパネルにおけるWnt阻害剤の化学的感受性に対するノッチ1 LoF突然変異の会合は、ノッチ1がWnt阻害剤に対する患者感受性を予測するのに役立つことを示した。ノッチ1 LoF突然変異は、40個の頭頸部癌細胞株(上に記載されている通り)のバイオインフォマティクス分析に基づく経路阻害応答の予測に関する。ノッチ1に加えておよび腫瘍モデルに基づいて、SFRP2、FRZB、SFRP4およびDKK2は、Wnt阻害剤の効力とも相互に関連していた。本明細書に記載されているバイオマーカーから少なくとも2つのバイオマーカーのセットが、感受性を予測するために使用される場合、ずっと良好な予測力が予想される。バイオインフォマティクスの助けで、患者層別化のために使用することができる有用なバイオマーカーのさらなるセット、FAM58A、FLJ43860、ノッチ1、CDKN2A、OR7G3、CCDC168、ZNF527、HRASおよびFAT1が同定された。ノッチ1 LoF突然変異の発生率はHNSCC患者において相対的に高いので、ノッチ1遺伝子発現は、HNSCC患者を選択するのに特に適当である。癌細胞株のパネルにおけるWnt阻害剤の化学的感受性に対するノッチ1 LoF突然変異の会合は、ノッチ1がランダム選択より3倍の濃縮の予測値を有することを示した。他の前述のバイオマーカーも、Wnt阻害剤に感受性であった前臨床モデルに関連する。臨床状況に対する外挿法として、前述バイオマーカーに基づく患者選択は、Wnt阻害剤を用いる処置での臨床応答の尤度を増加させる。

本発明は以下の態様を包含し得る。
[1] Wnt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を予測する方法であって、
a)癌患者からの癌試料を用意すること
b)前記患者から得られた前記癌試料における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;および
c)前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること、
d)遺伝子発現比較における増加または減少を、前記Wnt阻害剤を用いる処置に対する患者感受性と相関させること
を含む前記方法。
[2] Wnt阻害剤で癌患者を処置する方法であって、
a)癌患者からの癌試料を用意すること
b)前記患者から得られた前記癌試料における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
c)前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
d)前記Wnt阻害剤に対する患者の感受性を決定すること;および
e)前記Wnt阻害剤の有効量を、前記Wnt阻害剤に対して感受性であると決定された患者に投与すること
を含む前記方法。
[3] Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を予測する方法であって、a)前記細胞における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;b)表1から選択される前記少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を、正常細胞または対照細胞からの遺伝子発現と比較すること;
c)前記示差的遺伝子発現の前記比較から、Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を予測すること
を含む前記方法。
[4] Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性を決定する方法であって、
a)癌細胞と少なくとも1つのWnt阻害剤とを接触させること;
b)前記Wnt阻害剤と接触させた前記細胞における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
c)前記少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を、未処置またはプラセボ処置の対照細胞からの前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
d)前記未処置またはプラセボ処置の対照細胞からの前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記発現と比較した場合の、前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記発現における増加または減少を、Wnt阻害剤に対する癌細胞の感受性に相関させること
を含む前記方法。
[5] 1つ超のバイオマーカーが表1から選択される、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記バイオマーカーがノッチ1である、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記ノッチ1が、細胞外ドメインにおける突然変異を有する、上記[6]に記載の方法。
[8] 前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料の遺伝子発現と比較することで、機能的Wnt経路を示す、上記[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 前記癌が頭頸部扁平細胞癌腫である、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記癌が、Wnt阻害剤で処置され、Wnt阻害剤に感受性である癌試料における発現と比較してAxin2、LEF1および/またはNKD1の示差的発現を示す、上記[2]または[4]に記載の方法。
[11] 少なくとも1つのWnt阻害剤と接触させた前記癌細胞のIC50が、1μM未満、好ましくは0.5μM未満、より好ましくは0.2μM未満である、上記[1]から[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12] 前記細胞が、Wnt阻害剤によって少なくとも2つの異なる時点で接触される、上記[11]に記載の方法。
[13] 前記細胞が、2つの異なるWnt阻害剤によって、ステップa)で同時にまたは順次に接触される、上記[4]、[11]または[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14] ステップb)およびc)が、前記Wnt阻害剤の各用量の投与後、4時間、8時間、16時間、24時間、48時間、3日、1週、1カ月および数カ月からなる群から選択される時点で反復される、上記[4]、または[11]から[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15] 患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤であって、前記患者が、
a)患者から得られる癌試料における、表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を測定すること;
b)前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記示差的遺伝子発現を、対照試料における前記バイオマーカーの遺伝子発現と比較すること;
c)前記Wnt阻害剤に対する前記患者の感受性を決定すること;および
d)前記Wnt阻害剤に感受性である患者を選択すること
に基づいて選択される前記Wnt阻害剤。
[16] 対照遺伝子発現と比較した場合に表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を有する患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤であって、前記示差的遺伝子発現は、前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関する、前記Wnt阻害剤。
[17] 1つ超のバイオマーカーが表1から選択される、上記[15]または[16]に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[18] 前記バイオマーカーがノッチ1である、上記[15]から[17]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[19] 前記ノッチ1が、細胞外ドメインにおける突然変異を有する、上記[15]から[18]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[20] 癌が頭頸部扁平細胞癌腫であり、好ましくは、Wnt阻害剤を用いる処置後の癌試料が、Wnt阻害剤に感受性である癌試料のAxin2、LEF1および/またはNKD1の発現を示している、上記[15]から[19]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[21] 患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物であって、前記患者が、正常の対照細胞試料と比較して前記患者から得られる癌細胞試料において表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの遺伝子発現を示すことに基づいて選択され、示差的遺伝子発現は、前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関する、前記医薬組成物。
[22] 対照遺伝子発現と比較した場合に表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を示す患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物であって、前記示差的遺伝子発現は、前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関する、前記医薬組成物。
[23] 1つ超のバイオマーカーが表1から選択される、上記[21]または[22]に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
[24] 前記バイオマーカーがノッチ1である、上記[21]から[23]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
[25] 前記ノッチ1が、細胞外ドメインにおける突然変異を有する、上記[21]から[24]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
[26] 癌が頭頸部扁平細胞癌腫である、上記[21]から[25]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤を含む医薬組成物。
[27] Wnt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を予測するためのキットであって、
i)表1から選択されるバイオマーカーの発現を検出するための手段;および
ii)前記キットを使用する方法についての指示書
を含む前記キット。
[28] 上記[1]から[14]に記載の方法のいずれかのための、上記[27]に記載のキットの使用。
[29] 頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[30] 前記Wnt阻害剤が、対照遺伝子発現と比較して表1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの示差的遺伝子発現を示す癌を有する患者に投与され、前記示差的遺伝子発現は、前記患者が前記Wnt阻害剤に感受性であることと相関する、上記[29]に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[31] 前記バイオマーカーがノッチ1である、上記[30]に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[32] 前記Wnt阻害剤が治療有効量で投与される、上記[1]から[14]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]のいずれか一項に記載の医薬組成物、または上記[29]もしくは[30]に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[33] 前記Wnt阻害剤の治療有効量が前記患者に投与される、上記[15]から[20]のいずれか一項に記載の患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[34] 前記Wnt阻害剤の前記治療有効量が、前記Wnt阻害剤に感受性と決定された患者に選択的に投与されるか、または患者が前記Wnt阻害剤に感受性でないことに基づいて、患者に前記Wnt阻害剤以外の薬物の治療有効量を選択的に投与する、上記[33]に記載の患者における癌の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[35] 前記Wnt阻害剤が、式(1):
【化4】
[式中:
、X、XおよびXは、NおよびCRから選択され、
、X、XおよびXの1つはNであり、他はCHであり、
は、NおよびCHから選択され、
Zは、フェニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリダジニルおよびピペラジニルから選択され;Zの各フェニル、ピラジニル、ピリジニル、ピリダジニルまたはピペラジニルは、R基で任意選択により置換されており、
、RおよびRは水素であり、
mは、1であり、
は、水素、ハロ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびメチルから選択され、
は、水素、ハロおよび−C(O)R10から選択され、R10はメチルであり、
は、水素、ハロ、シアノ、メチルおよびトリフルオロメチルから選択される]
の化合物またはその生理学的に許容される塩である、上記[1]から[14]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]もしくは[34]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]に記載のキット、または上記[29]から[32]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[36] 前記Wnt阻害剤が、N−[5−(3−フルオロフェニル)ピリジン−2−イル]−2−[5−メチル−6−(ピリダジン−4−イル)ピリジン−3−イル]アセトアミド;
2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミド;
N−(2,3’−ビピリジン−6’−イル)−2−(2’,3−ジメチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;
N−(5−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ピリジン−2−イル)−2−(2’−メチル−3−(トリフルオロメチル)−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;
N−(5−(4−アセチルピペラジン−1−イル)ピリジン−2−イル)−2−(2’−フルオロ−3−メチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)アセトアミド;および
2−(2’−フルオロ−3−メチル−2,4’−ビピリジン−5−イル)−N−(5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル)アセトアミド
の群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩である、上記[1]から[14]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]もしくは[34]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]に記載のキット、または上記[29]から[32]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[37] 前記Wnt阻害剤が2−[5−メチル−6−(2−メチルピリジン−4−イル)ピリジン−3−イル]−N−[5−(ピラジン−2−イル)ピリジン−2−イル]アセトアミドである、上記[1]から[14]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]もしくは[34]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]に記載のキット、または上記[29]から[32]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[38] 発現または遺伝子発現が、DNA発現、DNAコピー数、mRNA発現、cDNA発現、タンパク質転写、タンパク質発現、DNA修飾、cDNA修飾、mRNA修飾、タンパク質修飾、DNA機能、cDNA機能、mRNA機能、タンパク質機能、DNA突然変異、cDNA突然変異、mRNA突然変異、タンパク質突然変異、またはその組合せであり、好ましくはDNA突然変異である、上記[1]から[14]もしくは[35]から[37]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[37]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から[37]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは[35]から[37]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[39] 前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から選択される、上記[1]から[14]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[38]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは35]から38]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[40] 前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4およびDKK2の群から選択される、上記[1]から[14]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[38]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[41] 前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2およびノッチ3の群から選択される、上記[1]から[14]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[38]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[42] 前記バイオマーカーがノッチ1である、上記[1]から[14]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[38]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[43] 前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3L、好ましくは、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3およびWNT7Aの群から選択される、上記[1]から[14]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[38]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から38]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[44] 前記バイオマーカーがHRASまたはFAT1である、上記[1]から[14]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[38]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[45] 前記バイオマーカーが、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から、好ましくは、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3およびDTX3Lの群から選択される、上記[1]から[14]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の方法、上記[15]から[20]、[33]から[38]のいずれか一項に記載の癌の処置における使用のためのWnt阻害剤、上記[21]から[26]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の医薬組成物、上記[27]もしくは[35]から[37]に記載のキット、または上記[29]から[32]もしくは[35]から[38]のいずれか一項に記載の頭頸部扁平細胞癌腫の処置における使用のためのWnt阻害剤。
[46] バイオマーカーとしての表1から選択される化合物の使用。
[47] バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、AXIN2、LEF1、NKD1、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から選択される化合物の使用。
[48] バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4およびDKK2の群から選択される化合物の使用。
[49] バイオマーカーとしてのノッチ1、ノッチ2およびノッチ3の群から選択される化合物の使用。
[50] バイオマーカーとしての化合物ノッチ1の使用。
[51] バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、SFRP2、FRZB、SFRP4、DKK2、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3およびWNT7Aの群から選択される化合物の使用。
[52] バイオマーカーとしての化合物HRASまたはFAT1の使用。
[53] バイオマーカーとしての、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3、WNT11、WNT10A、WNT3、WNT7AおよびDTX3Lの群から、好ましくは、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、FAM58A、FLJ43860、CDKN2A、CCDC168、ZNF527、HRAS、FAT1、OR7G3およびDTX3Lの群から選択される化合物の使用。
[54] Wnt阻害剤を用いる処置のための癌患者の感受性を示す、上記[46]から53]のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【0147】
(参考文献)
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16