【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、位置決め装置内に保持された被加工物の空間位置を検出および補正する方法により達成され、これは以下のステップA〜Gを有する。
A:被加工物を位置決め装置内に位置決めするステップ、
B:機械加工ヘッドであって、距離測定のための少なくとも1つのセンサと、機械加工ヘッドの現在位置を検知するための位置検知手段とを有する機械加工ヘッドを少なくとも1つの測定位置へ送り出すステップ、
C:機械加工ヘッドを使用することにより、被加工物の表面上に延びる仮想測定軸上にある少なくとも2つの測定位置において、それぞれの場合に、位置決めされた被加工物の少なくとも1つの測定点の実際の位置を非接触的に検知して、検知された実際の位置から、仮想参照軸に関する仮想測定軸の角度位置を判断するステップ、
D:検知された実際の位置を予定される所望の位置と比較して、実際の位置と所望の位置との間のずれ値を確認するステップ、
E:確認されたずれ値を容認可能な公差値と比較するステップであって、確認されたずれが実際の位置と所望の位置との間の距離値および角度位置のずれである、ステップ、
F:確認されたずれが容認可能な公差値内にあれば常に、機械加工ヘッドを、輪郭であって、それに沿って機械加工ヘッドにより被加工物を機械加工するべき輪郭へ送り出すステップ、または
G:位置合わせ後に実際の位置のずれが容認可能な公差値内にあるように、機械加工ヘッドと被加工物とを相互に関して、および1つの輪郭に関して位置合わせするステップ。
【0012】
本発明の主旨は、被加工物の空間位置を検知してから、被加工物の機械加工を開始することである。それぞれの被加工物について、個々の空間位置を三次元位置として把握することにより、例えば機械加工工程を効率的に実行でき、なぜなら、機械加工工程中に機械加工ヘッドがそれに沿って移動するべき経路を事前に計算でき、制御測定の数を減らすことができるからである。
【0013】
この説明の中で、一般的に機械加工される材料、例えば金属シート、パイプ、またはプロファイル等の原材料、ならびに半完成品および完成品が被加工物と理解される。
【0014】
測定位置は、そこから被加工物を検知できる機械加工ヘッドの空間位置である。測定位置には、機械加工ヘッドが被加工物から最大でも、機械加工ヘッドと被加工物との間の距離をセンサ関連の公差内で検知できるような量しか離れていない時に到達される。
【0015】
空間位置を検知する手段(位置検知手段)は例えば、機械加工ヘッドの瞬間配列を検知するセンサである。それゆえ、実行され、記憶された機械加工ヘッドの送り出し移動は、機械加工ヘッドの現在の空間位置(現在位置)を判断するのに役立つ。空間位置はまたセンサによって検知されてもよく、それによってそのセンサに関する機械加工ヘッドの相対位置が検知または計算される。
【0016】
被加工物は輪郭に沿って、好ましくは、例えば切削、切断、フライス加工もしくは穴あけ等により材料を取り除くことによって、または例えば微細構造の硬化もしくはその他の改変、あるいは加工物の材料の再結晶化をもたらすことにより材料を変化させることによって、または溶接もしくは接着剤での結合によって機械加工される。機械加工には、機械的に作用する機械加工手段、例えばフライス盤、ドリル、鋸、または粉砕手段を使用してもよい。しかしながら、好ましくは、機械加工は、高エネルギー電磁放射、好ましくはレーザ放射により実行される。単純なケースでは、輪郭は1平面(機械加工面)の中にあってもよく、それに沿って被加工物または被加工物の一部が機械加工され、例えば切り取られる。この場合、例えば、機械加工ヘッドは被加工物周囲の平面内で案内され、被加工物は機械加工ヘッドが通過する線に沿って切り取られる。輪郭はまた、複雑な形状であってもよく、例えばギャップを有し、アーチまたはその他の形状を含んでいてもよい。例えば、位置決め装置内に保持される被加工物の機械加工が、被加工物の機械加工線(輪郭)に沿って行われてもよい。
【0017】
好ましくは、非接触測定方法として、容量、光学、およびインダクタンスに基づく方法が用いられてもよい。これらの測定方法により、および測定信号の選択的処理により、被加工部表面と機械加工ヘッドとの間の距離が測定される。簡素化するために、ここでは機械加工ヘッドの被加工物からの距離と述べているが、当然のことながら、機械加工ヘッドのセンサと被加工物との間の距離が検知される。測定結果に基づき、被加工物と機械加工ヘッドとの間の距離のその後のフィードバック制御が可能となる。測定方法を実行するために使用されるセンサにはそれぞれ、センサごとの測定区間が割り当てられる。測定区間内の距離にわたって測定することにより、信頼性の高い測定値が得られる。例えば、センサが最大20mmまでの距離にわたる距離測定用として設計されている場合、その測定区間は20mmである。
【0018】
機械加工ヘッドと被加工物との相互に関する、および輪郭に関する位置合わせは、機械加工ヘッドの位置を制御しながら変化させることによって行われてもよい。
【0019】
本発明による方法の別の設計において、機械加工ヘッドと被加工物との相互に関する、および少なくとも1つの輪郭に関する位置合わせはまた、被加工物の位置を制御しながら変化させることによって行われてもよい。機械加工ヘッドと被加工物との間の必要な距離補正(位置合わせ)は、当然のことながら、位置決め装置の位置を変化させることによって実施されてもよい。この場合、機械加工ヘッドは、その事前にプログラムされた位置に留まり、被加工物が位置決め装置によって機械加工ヘッドに関する正確な位置に移動される。
【0020】
また、機械加工ヘッドと被加工物との相互に関する、および輪郭に関する位置合わせを、機械加工ヘッドおよび被加工物の位置を制御しながら変化させることによって行うことも可能である。
【0021】
本発明による方法において、実際の位置の非接触検知は、少なくとも2つの測定位置から、各々について位置決めされた被加工物の少なくとも1つの測定点において行われる。これは、ステップCおよびDが、各々、異なる測定位置において少なくとも1回実行されることを意味する。ステップEで確認されるずれは、距離値と、距離値から得られるその他の数値、例えば想像上の、2つの測定点間に延びる仮想測定軸の角度位置のずれとである。
【0022】
このような手順により、被加工物の角度位置は2つの測定位置における2つの距離値から、また測定位置を把握したうえで導き出される。被加工物の角度位置のこのような判断は、複数の表面上で行うことができ、それによって被加工物の空間内の位置(空間位置)は、少なくとも被加工物の、角度位置の判断に使用された領域について導き出すことができる。
【0023】
この目的のために、好ましくは、少なくとも2つの測定点が、被加工物の表面を通って延びる想像上の測定軸上にあり、仮想参照軸に関する測定軸の角度位置は検知された実際の位置から判断される。このような参照軸は、例えば、被加工物の予定される縦軸であってもよい。また、参照軸は、機械加工ヘッドおよび/または被加工物の空間位置の判断に使用される座標系の中の仮想軸とすることも可能である。
【0024】
機械加工ヘッドと被加工物との衝突を避けるために、本発明による方法は、機械加工ヘッドが測定位置としての役割を果たす送り出し位置へステップ式に送り出されるように設計されていてもよく、機械加工ヘッドは一連の連続する送り出し位置へ送り出され、各送り出し位置において、測定区間内の被加工物の存在が距離測定によって調査され、被加工物が存在していなければ、機械加工ヘッドは次の送り出し位置へ送り出され、次の送り出し位置は、前回の送り出し位置から、距離測定の測定区間の量より小さい距離で選択される。一連の送り出し位置として、これらを移動させることが意図される。これらは相互に、測定区間の長さより大きく離間されない。それにより、1つの送り出し位置で機械加工ヘッドが被加工物の存在を検知せず、機械加工ヘッドが、特定区間の後にある次の送り出し位置へ送り出されている間に被加工物と衝突するという事態が回避される。
【0025】
本発明による方法によって、2つの基本的手順が可能となる。
【0026】
第一の手順は、レーザ機械加工工程を開始する前に少なくとも1回の測定を実行するものである。実際の機械加工工程、好ましくはレーザ放射による被加工物の機械加工を開始する前に、機械加工ヘッドは被加工物の、コントローラ内に記憶されている測定位置に接近させられる。被加工物は、測定位置にある機械加工ヘッドによる距離測定が、測定区間内に保ちながら可能となるような空間位置に位置決めされることが予期される。
【0027】
機械加工ヘッドの距離センサシステムの少なくとも1つのセンサによって、機械加工ヘッドの、被加工物表面上の点からの距離が測定位置で検知される。この検知された距離が所定の公差の範囲外にある場合、機械加工ヘッドは、例えばz軸に沿った送り出し移動によって、被加工物へ近付けられるか、またはそこから遠ざけられる。その結果、機械加工ヘッドは、被加工物に関して提供される開始位置にあることになる。その後、工程を開始でき、例えばプログラムされた輪郭をレーザ放射により機械加工できる。
【0028】
接近および距離測定工程は、1回、または異なる方向から複数回実行されてもよい。複数回にわたって測定することにより、測定およびフィードバック制御の信頼性が高まる。
【0029】
実際の位置と所望の位置との比較的大きいずれが確認された場合、被加工物の横方向の移動の他に、機械加工面の領域内での被加工物の歪みがそれに加えて存在し得る。この歪み、すなわち被加工物の空間位置の、公差を超える角度ずれが補正されず、被加工物が当初意図されていた機械加工面に沿って機械加工されると、この被加工物は生産されても低品質または不良品にすぎないであろう。例えば切断輪郭の中に、望ましくない角度があるであろう。これらは、それぞれ被加工物に沿った測定点に関する別の測定位置で様々な方向に距離測定を行うことによって検出可能である。
【0030】
機械加工ヘッドと被加工物の衝突を避けるために、機械加工ヘッドは、サーチランにおいてステップ式に所望の位置に接近させられてもよい。測定距離が所定の数値より短い場合、すなわち衝突のリスクがある場合、機械加工工程全体が停止されるか、または本発明による方法の別の設計においては、サーチランによる機械加工ヘッドの送り出しのみが停止される。
【0031】
同様に、補正のために、コントローラに記憶された輪郭を、コントーラの座標系に記憶された、機械加工されるべき輪郭と一致させることも可能である。これには、上記2つの輪郭を補正するために、輪郭、または輪郭のうちの一方に割り当てられた少なくとも1つのフレームを対応する方向に移動させることが関わる。フレームは座標系の複数の座標により付与される。
【0032】
この方法の別の設計において、90°ずれた別の測定位置で別の測定点が検知された場合、補正は第二の方向にも行われてよい。
【0033】
さらに、第二の手順では、機械加工工程の後に管理チェックを行うことが可能となる。機械加工ヘッドに組み込まれた距離センサシステムはまた、機械加工の結果に関する管理チェックを実行するためにも使用できる。これを例えば、(開始)被加工物としてパイプの一部を切り取る場合で説明する。完全に切り取られなかった部分が、被加工物上の未特定の位置に残る。別の処理中に、この残った部分は生産シーケンスの障害となるか、または重大な損傷の原因となり得る。したがって、機械加工工程完了後に、被加工物に切り取りきれなかった部分が残っていないことを確認するように努めるべきである。
【0034】
機械加工ヘッドは、機械加工ヘッドによる被加工物の機械加工が行われた最後の位置から、切り取られた部分の方向に移動され、材料の存在が距離センサシステムによってチェックされる。測定結果がネガティブの場合、すなわち材料が発見された場合、機械加工ヘッドを機械加工された輪郭へさらに送り出した後に、再び測定を繰り返すことができる。これによって、切り取りきれず、被加工物上の未知の位置に残った部分を確実に検出できる。利用可能な測定結果に応じた機械加工ヘッドの再調整は、好ましくは、機械加工ヘッドのz軸で行われる。
【0035】
機械加が成功したことをチェックするために、機械加工ヘッドによる被加工物の機械加工が行われた後、ステップB、C、D、およびEを再び実行してもよい。
【0036】
2つの手順は、当然のことながら、相互に組み合わせて逐次的に実行してもよい。
【0037】
他の設計において、本発明による方法は、第一の位置決め装置内の第一の被加工物に加えて、少なくとも1つの第二の被加工物が第二の位置決め装置内に位置決めされる。本発明による方法のステップC〜Eが第一の被加工物について実行された後に、ステップC〜Eが第二の被加工物についても実行される。第一の被加工物および第二の被加工物が各々、それぞれ容認可能な公差値が保持されるような空間位置にある場合、工程はステップFから続けられる。ステップEにおいて、2つの被加工物のうちの少なくとも一方の、確認されたずれ値が容認可能な公差値以外にある場合、ステップGが、関係する被加工物について、または両方の被加工物について実行される。第一の被加工物および第二の被加工物が、それら2つのずれが容認可能な公差値内にあるように位置合わせされた場合にのみ、機械加工ヘッドは輪郭へ送り出される。
【0038】
本発明による方法の別の設計において、第三の被加工物、またはさらには第四の被加工物がそれぞれ第三の位置決め装置または第四の位置決め装置内に位置決めされ、ステップC〜Eが上述のように実行される。
【0039】
本発明による方法は、レーザ放射によって非回転対称の被加工物を機械加工するための装置を操作する際に特に有利に使用できるが、それは、レーザ放射を使用した場合、機械加工ヘッド、被加工物、および輪郭の相対的位置決めにおける非常に高い精度が問題となるからである。
【0040】
この方法はまた、機械加工ヘッドによって位置決め装置内に位置決めされた被加工物の空間位置を検出および補正するための装置において使用されてもよい。
【0041】
目的はまた、位置決め装置内に保持された被加工物の空間位置を、機械加工ヘッドにより検出および補正する装置によっても達成される。本発明による装置は、被加工物を位置決めするための少なくとも1つの位置決め装置と、少なくとも1つの機械加工ヘッドであって、少なくとも1つの距離センサと、機械加工ヘッドの位置を検知するための手段とを有する機械加工ヘッドと、さらに、機械加工ヘッドおよび/または被加工物の位置を制御しながら変化させるためのコントローラとを有し、コントローラは、コントローラの動作の結果として以下のステップ:
a.機械加工ヘッドを少なくとも1つの測定位置へ送り出すステップ、
b.機械加工ヘッドを使用することにより、被加工物の表面上に延びる仮想測定軸上にある少なくとも2つの測定位置において、位置付けられた被加工物の測定点の実際の位置を非接触的に検知して、検知された実際の位置から、仮想参照軸に関する仮想測定軸の角度位置を判断するステップ、
c.検知された実際の位置を予定される所望の位置と比較して、実際の位置と所望の位置との間のずれ値を確認するステップ、
d.確認されたずれ値を容認可能な公差値と比較するステップであって、確認されたずれが実際の位置と所望の位置との間の距離値および角度位置のずれである、ステップ、
e.確認されたずれが容認可能な公差値内にあれば常に、機械加工ヘッドを、(少なくとも)1つの機械加工面であって、それに沿って機械加工ヘッドにより被加工物を機械加工するべき(少なくとも)1つの機械加工面へ送り出すステップ、または
f.位置合わせ後に実際の位置のずれが容認可能な公差値内にあるように、機械加工ヘッドと被加工物とを相互に関して、および(少なくとも)1つの機械加工面に関して位置合わせするステップ
が実行されるように構成される。
【0042】
機械加工ヘッドには、距離センサシステムが設置される。これは、少なくとも1つのセンサを含み、これは、好ましくは容量またはインダクタンスによる測定原理に基づく距離測定に適している。距離測定は、センサごとの測定区間について行われる。この容量またはインダクタンスによる距離センサシステムによって、および測定信号の選択的処理によって、被加工物の表面と機械加工ヘッドとの間の距離を測定できる。センサ信号をセンサ信号評価用に設計されたコントローラに送信することにより、被加工物と機械加工ヘッドとの相互に関する空間位置を制御できる。利用可能な測定結果に基づく機械加工ヘッドの再調整は好ましくは、機械加工ヘッドのz軸で行われる。
【0043】
機械加工ヘッドは、少なくとも1つの被加工物を機械加工するための機械加工手段を含む。機械加工手段は機械的に作用する手段であってもよく、例えば、フライスカッタ、ビット、鋸、ドリル、スクレーパ、またはかんなである。これらは、相互に交換可能であってもよい。好ましくは、機械加工手段は高エネルギー電磁放射、好ましくはレーザ放射である。
【0044】
機械加工ヘッドは好ましくは、機械加工装置のレーザ源と接続され、ビーム案内およびビーム整形のための装置を有する。これは、モータおよびコントローラによって制御しながら移動可能である。本発明による装置の別の実施形態において、機械加工ヘッドは最大で6自由度、具体的にはデカルト座標軸のx、y、およびz軸で移動可能であり、また前記軸の周囲で回転可能であってもよい。機械加工ヘッドはしたがって、回転可能および旋回可能であってもよい。
【0045】
位置決め装置は、被加工物を保持するのに適した何れの装置であってもよい。クランプ装置は、例えばクランプチャック、円錐受容器、または被加工物を保持するためのその他の摩擦係合および/または嵌合装置であってもよい。本発明による装置の別の実施形態において、複数の位置決め装置を配置してもよい。1つまたは複数の位置決め装置は回転可能であってもよく、すなわち、固定された被加工物は位置決め装置の少なくとも1つの軸の周囲で回転可能である。
【0046】
好ましくは、それによって少なくとも位置決め装置と機械加工ヘッドとを作動させることのできるコントローラがある。好ましくは、位置決め装置および機械加工ヘッドの動作状態は、この方法が実行される比較的長期間にわたってさえも、すべての移動および方法ステップの一貫して高い精度を確実にするために、相互に一致させられる。
【0047】
以下に、例示的実施形態および図面に基づいて本発明をより詳しく説明する。