特許第6446051号(P6446051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許64460511−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸の塩
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  • 特許6446051-1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸の塩 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446051
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオルメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸の塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/04 20060101AFI20181217BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20181217BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20181217BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20181217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181217BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C07D413/04CSP
   A61K31/513
   A61P9/00
   A61P29/00
   A61P43/00 111
   A61P37/00
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-551038(P2016-551038)
(86)(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公表番号】特表2016-535096(P2016-535096A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014073801
(87)【国際公開番号】WO2015067652
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2017年11月1日
(31)【優先権主張番号】13192177.7
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300049958
【氏名又は名称】バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】オレニツク,ブリツタ
(72)【発明者】
【氏名】キール,ブリギツト
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツ,マルテイン・ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】フユルシユトナー,シヤンタル
(72)【発明者】
【氏名】イエシユケ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】アツカーシユタツフ,イエンス
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/032881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸の塩。
【化1】
【請求項2】
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のアミノ酸塩またはアルカリ金属塩であることを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のリジン塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の塩。
【請求項4】
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のL−リジン塩であることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の塩。
【請求項5】
化合物のX線ディフラクトグラムが、2θ角のピーク最大を16.9において持つことを特徴とする、請求項4に記載の塩。
【請求項6】
化合物のX線ディフラクトグラムが、2θ角のピーク最大を16.9、22.3および20.0において持つことを特徴とする、請求項4または5に記載の塩。
【請求項7】
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のナトリウム塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の塩。
【請求項8】
化合物のX線ディフラクトグラムが、2θ角のピーク最大を17.6において持つことを特徴とする、請求項7に記載の塩。
【請求項9】
化合物のX線ディフラクトグラムが、2θ角のピーク最大を17.6、17.9および19.1において持つことを特徴とする、請求項7または8に記載の塩。
【請求項10】
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のカリウム塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の塩。
【請求項11】
化合物のX線ディフラクトグラムが、2θ角のピーク最大を23.7において持つことを特徴とする、請求項10に記載の塩。
【請求項12】
化合物のX線ディフラクトグラムが、2θ角のピーク最大を23.7、15.3および20.5において持つことを特徴とする、請求項10または11に記載の塩。
【請求項13】
障害の処置のための、請求項1から12のいずれかに記載の塩。
【請求項14】
請求項1から12のいずれかに記載の塩およびこれより多くない割合の任意の他の形態の式(I)の化合物を含む薬剤。
【請求項15】
請求項1から12のいずれかに記載の化合物を、式(I)の化合物の総存在量ベースで90重量パーセントより多く含む薬剤。
【請求項16】
遊離酸の形態である式(I)の化合物不活性溶媒中で溶解させること、および
塩形成性塩基の溶液と共に10℃から60℃の温度で撹拌または振とうすることを含む、請求項1から12のいずれかに記載の化合物を調製する方法。
【請求項17】
心血管障害、炎症性障害、アレルギー障害および/または線維性障害の処置および/または予防のための薬剤を製造するための、請求項1から12のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項18】
有効量の請求項1から12のいずれかに記載の化合物を含む、心血管障害の処置のための薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸の新規の塩、とりわけアミノ酸塩、例えばリジン塩など、ならびにアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩およびカリウム塩など、その調製方法、それを含む薬剤ならびに疾患を制御するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸、その調製およびキマーゼ阻害剤としてのその使用は、特許出願PCT/EP2013/059286(例189を参照されたい)中に記載されており、式(I):
【化1】
【0003】
の化合物と一致する。
【0004】
以下、式(I)の化合物を遊離酸という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】PCT/EP2013/059286
【発明の概要】
【0006】
ここに、いくつかの用途のためには、遊離酸の溶解性は不十分であり、それゆえに製剤中での使用に無条件に適しているわけではないことが見出されている。
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、ここに新規の塩を見出した。これらの塩のX線ディフラクトグラムは著しく異なっていて、各々の場合において特徴的である(表1、図1、2および3)。
【0008】
本発明は、そのアミノ酸塩およびアルカリ金属塩の形態である式(I)の化合物を提供する。
【0009】
本発明は、そのリジン塩の形態、とりわけそのL−リジン塩の形態、またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供する。
【0010】
本発明は、そのL−リジン塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を16.9において持つ。
【0011】
本発明は、好ましくは、そのL−リジン塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を16.9、22.3および20.0において持つ。
【0012】
本発明は、さらに好ましくは、そのL−リジン塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を16.9、22.3、20.0、16.7、19.2、10.9および12.2において持つ。
【0013】
本発明は、さらに好ましくは、そのL−リジン塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を16.9、22.3、20.0、16.7、19.2、10.9、12.2、9.9および21.6において持つ。
【0014】
そのうえ、本発明は、そのナトリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を17.6において持つ。
【0015】
本発明は、好ましくは、そのナトリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を17.6、17.9および19.1において持つ。
【0016】
本発明は、さらに好ましくは、そのナトリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を17.6、17.9、19.1、18.1、12.8、5.9および18.9において持つ。
【0017】
本発明は、さらに好ましくは、そのナトリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を17.6、17.9、19.1、18.1、12.8、5.9、18.9、29.0および19.6において持つ。
【0018】
そのうえ、本発明は、そのカリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を23.7において持つ。
【0019】
本発明は、好ましくは、そのカリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を23.7、15.3および20.5において持つ。
【0020】
本発明は、さらに好ましくは、そのカリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を23.7、15.3、20.5、10.4、30.0、21.7および6.00において持つ。
【0021】
本発明は、さらに好ましくは、そのカリウム塩の形態である式(I)の化合物を提供し、これは、本質的に、X線ディフラクトグラム中で以下の好ましい2θ角のピーク最大を23.7、15.3、20.5、10.4、30.0、21.7、6.0、19.8および18.0において持つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のL−リジン塩のX線ディフラクトグラムである。
図2】1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のナトリウム塩のX線ディフラクトグラムである。
図3】1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のカリウム塩のX線ディフラクトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に関連した一般的側面は、とりわけ式(I)の化合物のL−リジンとの塩の薬理学的性質、加工性、調製プロセス、副作用プロファイル、安定性および薬理学的活性である。
【0024】
驚くべきことに、式(I)の化合物のL−リジン塩ならびにナトリウムおよびカリウム塩は結晶であり、懸濁を経た処理の後でさえも保存安定性である。したがって、これらは、医薬製剤、例えば懸濁剤(suspensionen)またはクリームなどにおける使用に、それだけでなく例えば湿式造粒または湿式粉砕の場合において、懸濁された活性化合物を経て調製される他の調合剤における使用にとりわけ適している。
【0025】
医薬製剤において、式(I)の化合物の本発明による塩、とりわけL−リジン塩ならびにナトリウムおよびカリウム塩は、高純度で使用される。安定性の理由のため、医薬製剤は、主として式(I)の化合物の塩、とりわけL−リジン塩またはナトリウムもしくはカリウム塩のいずれかを、およびこれより多くない割合の任意の他の形態の式(I)の化合物を含む。好ましくは、薬剤は、式(I)の化合物の総存在量ベースで90重量パーセントより多くの、とりわけ好ましくは95重量パーセントより多くの、対応する塩の形態である式(I)の化合物を含む。
【0026】
本発明の塩は、有用な薬理学的性質を持ち、ヒトおよび動物において疾患の処置および/または予防のために用いることができる。本発明の塩はキマーゼ阻害剤であり、それゆえに心血管障害、炎症性障害、アレルギー障害および/または線維性障害の処置および/または予防に適している。
【0027】
本発明との関連で、心血管系の障害つまり心血管障害は、例えば以下の障害を意味するものと理解される:急性および慢性の心不全、動脈高血圧症、冠動脈心疾患、安定狭心症および不安定狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、ショック、アテローム性動脈硬化、心肥大、心線維症、心房性不整脈および心室性不整脈、一過性虚血性発作、脳卒中、子癇前症、炎症性心血管障害、末梢血管障害および心血管障害、末梢灌流障害、動脈性肺高血圧症、冠動脈および末梢動脈の痙攣、血栓症、血栓塞栓性障害、浮腫発症、例えば肺浮腫、脳浮腫、腎浮腫または心不全関連浮腫、ならびに例えば血栓溶解処置、経皮的血管形成術(PTA)、経皮的冠動脈血管形成(PTCA)、心臓移植およびバイパス手術後などの再狭窄、ならびに微小血管損傷および大血管損傷(血管炎)、再灌流損傷、動脈および静脈の血栓症、微量アルブミン尿症、心筋不全、内皮機能障害、末梢血管障害および心臓血管障害、末梢灌流障害、心不全関連浮腫、フィブリノーゲンレベルおよび低密度LDLレベルの上昇、ならびにプラスミノーゲン活性化因子/阻害剤1(PAI−1)濃度の上昇。
【0028】
本発明との関連で、用語「心不全」はまた、より特異的なまたは関連するタイプの疾患、例えば急性非代償性心不全、右心不全、左心不全、全体的な不全(global failure)、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心臓欠陥、心臓弁欠陥、心臓弁欠陥に関連した心不全、僧帽弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁狭窄、大動脈弁閉鎖不全、三尖弁狭窄、三尖弁閉鎖不全、肺動脈弁狭窄、肺動脈弁閉鎖不全、複合型心臓弁欠陥、心筋の炎症(心筋炎)、慢性心筋炎、急性心筋炎、ウイルス性心筋炎、糖尿病性心不全、アルコール性心筋症、心臓の貯蔵障害ならびに拡張期および収縮期の心不全などを含む。
【0029】
本発明による塩は、さらには、多嚢胞腎疾患(PCKD)およびADH不適合分泌症候群(SIADH)の予防および/または処置に適している。本発明の塩はまた、腎障害、とりわけ急性および慢性の腎機能不全ならびに急性および慢性の腎不全の処置および/または予防に適している。
【0030】
本発明との関連で、用語「急性腎機能不全」は、透析の必要があるおよび透析の必要がない腎疾患、腎不全および/または腎機能不全の急性兆候、ならびにまた潜在的なまたは関連する腎障害、例えば腎低灌流、透析低血圧、量不足(例として脱水、失血)、ショック、急性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血管の異変(動脈または静脈の血栓症または塞栓症)、コレステロール塞栓症、形質細胞腫のイベントにおける急性ベンス・ジョーンズ腎臓、急性小胞上(supravesicular)もしくは小胞下(subvesicular)流出閉塞、免疫学的腎障害、例えば腎移植拒絶、免疫複合体誘発性腎障害、尿細管拡張、高リン血症ならびに/または透析の必要があることを特徴とする急性腎障害、例えば腎臓の部分切除、強制利尿による脱水、悪性高血圧を伴う非管理血圧上昇、尿路閉塞および感染症およびアミロイドーシスの症例におけるものなど、ならびに糸球体因子(glomerular factor)を伴う全身性障害、例えばリウマチ免疫学的全身性障害、例えばエリテマトーデス、腎動脈血栓症、腎静脈血栓症、鎮痛薬腎症および腎尿細管アシドーシス、ならびにX線造影剤誘発性および薬剤誘発性の急性間質性腎障害などを包含する。
【0031】
本発明との関連で、用語「慢性腎機能不全」は、透析の必要があるおよび透析の必要がない腎疾患、腎不全および/または腎機能不全の慢性兆候、ならびにまた潜在的なまたは関連する腎障害、例えば腎低灌流、透析低血圧、閉塞性尿路障害、糸球体症、糸球体性および尿細管性タンパク尿症、腎浮腫、血尿、原発性、続発性および慢性の糸球体腎炎、膜性および膜性増殖性の糸球体腎炎、アルポート症候群、糸球体硬化症、尿細管間質性障害、腎障害性障害、例えば原発性および先天性の腎疾患、腎炎、免疫学的腎障害、例えば腎移植拒絶、免疫複合体誘発性腎障害、糖尿病性および非糖尿病性の腎症、腎盂腎炎、腎嚢胞、腎硬化症、高血圧性腎硬化症ならびにネフローゼ症候群であって、例えばクレアチニンおよび/もしくは水排泄の異常低減、尿素、窒素、カリウムおよび/もしくはクレアチニンの血中濃度の異常上昇、腎臓酵素、例えばグルタミルシンテターゼの活性変化、尿モル浸透圧濃度または尿量の変化、微量アルブミン尿の上昇、顕性アルブミン尿、糸球体および細動脈の病変、尿細管拡張、高リン血症ならびに/または透析の必要性により診断的に特徴付けることができるもの、ならびに腎細胞癌、腎臓の部分切除後、強制利尿による脱水、悪性高血圧を伴う非管理血圧上昇、尿路閉塞および感染症およびアミロイドーシスのイベントにおけるもの、ならびに糸球体因子を伴う全身性障害、例えばリウマチ免疫学的全身性障害、例えばエリテマトーデス、ならびにまた腎動脈狭窄、腎動脈血栓症、腎静脈血栓症、鎮痛薬腎症および腎尿細管アシドーシスを包含する。加えて、X線造影剤誘発性および薬剤誘発性の慢性間質性腎障害、メタボリックシンドロームおよび脂質異常症がある。本発明はまた、腎機能不全の後遺症、例えば肺浮腫、心不全、尿毒症、貧血、電解質障害(例えば高カリウム血症、低ナトリウム血症)ならびに骨および炭水化物代謝における障害の処置および/または予防のための本発明の化合物の使用を包含する。
【0032】
加えて、本発明による塩はまた、肺動脈性高血圧症(PAH)および他の型の肺高血圧症(PH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、アルファ−1−アンチトリプシン欠乏(AATD)、肺線維症、肺気腫(例えば喫煙により誘発される肺気腫)、嚢胞性線維症(CF)、急性冠動脈症候群(ACS)、心筋の炎症(心筋炎)および他の自己免疫性心臓障害(心膜炎、心内膜炎、弁膜炎(valvolitis)、大動脈炎、心筋症)、心原性ショック、動脈瘤、敗血症(SIRS)、多臓器不全(MODS、MOF)、腎臓の炎症障害、慢性腸障害(IBD、クローン病、UC)、膵炎、腹膜炎、リウマチ障害、炎症性皮膚障害ならびに炎症性眼障害の処置および/または予防に適している。
【0033】
本発明による塩は、さらには、間欠性または持続性の特質を有するいろいろな重症度の喘息障害(屈折性喘息(refractive asthma)、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、薬剤誘発性または塵埃誘発性の喘息)、様々な型の気管支炎(慢性気管支炎、感染性気管支炎、好酸球性気管支炎)、閉塞性細気管支炎、気管支拡張症、肺炎、特発性間質性肺炎、農夫肺および関連の障害、咳および感冒(慢性炎症性咳、医原性咳)、鼻粘膜の炎症(薬剤関連鼻炎、血管運動性鼻炎および季節性アレルギー性鼻炎、例えば花粉症を含む)、ならびにポリープの処置および/または予防のために用いることができる。
【0034】
本発明による塩はまた、内臓の線維性障害、例えば肺、心臓、腎臓、骨髄およびとりわけ肝臓の線維性障害、ならびにまた皮膚科学的線維症および線維性眼障害の処置および/または予防に適している。本発明との関連で、用語「線維性障害」は、とりわけ以下の用語:肝線維症、肝硬変、肺線維症、心内膜心筋線維症、心筋症、腎症、糸球体腎炎、間質性腎線維症、糖尿病により生じる線維性損傷、骨髄線維症および類似の線維性障害、強皮症、限局性強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕(外科手技後のものも)、母斑、糖尿病性網膜症および増殖性硝子体網膜症(proliferative vitroretinopathy)を包含する。
【0035】
本発明による塩はまた、例えば緑内障手術の結果としての術後瘢痕を制御するのに適している。
【0036】
さらに、本発明による塩はまた、加齢および角質化皮膚のために美容的に用いることもできる。
【0037】
加えて、本発明の塩はまた、脂質異常症(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、食後血漿トリグリセリドの濃度上昇、低アルファリポタンパク症、複合型高脂血症)、腎症および神経障害)、がん(皮膚がん、脳腫瘍、乳がん、骨髄腫瘍、白血病、脂肪肉腫、消化管癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、腎癌、輸尿管癌、前立腺癌および生殖器癌、およびまたリンパ増殖系における悪性腫瘍、例えばホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、消化管および腹部の障害(舌炎、歯肉炎、歯周炎、食道炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、大腸炎、直腸炎、肛門そう痒症、下痢、セリアック病、肝炎、慢性肝炎、肝線維症、肝硬変、膵炎および胆嚢炎)、皮膚障害(アレルギー性皮膚障害、乾癬、ざ瘡、湿疹、神経皮膚炎、様々な型の皮膚炎、およびまた角膜炎、気胞症、血管炎、蜂窩織炎、脂肪織炎、エリテマトーデス、紅斑、リンパ腫、皮膚がん、スウィート症候群、ウェーバー・クリスチャン症候群、瘢痕、疣贅、凍瘡)、骨格骨および関節およびまた骨格筋の障害(様々な型の関節炎、様々な型の関節症、強皮症、ならびにさらには、炎症的または免疫学的な要素を有する障害、例えば腫瘍随伴症候群、臓器移植後の拒絶反応のイベントにおけるもの、ならびに特に慢性創傷の症例における創傷治癒および血管新生の処置および/または予防のために用いることができる。
【0038】
本発明による塩は、加えて、眼科障害、例えば緑内障、正常圧緑内障、高眼圧およびこれらの組み合わせ、加齢性黄斑変性(AMD)、乾性つまり非滲出型のAMD、湿性つまり滲出型つまり新生血管型のAMD、脈絡膜新生血管形成(CNV)、網膜剥離、糖尿病性網膜症、網膜色素上皮(RPE)に対する萎縮性病変、網膜色素上皮(RPE)に対する肥大性病変、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞、脈絡膜網膜静脈閉塞、黄斑浮腫、網膜静脈閉塞が原因の黄斑浮腫、眼球前部での血管新生、例えば角膜血管新生、例えば角膜炎、角膜移植または角膜移植後のもの、低酸素が原因の角膜血管新生(コンタクトレンズの長期装用)、翼状片結膜、網膜下浮腫および網膜内浮腫の処置および/または予防に適している。
【0039】
加えて、本発明による塩は、外傷性前房出血、眼窩周囲浮腫、術後粘弾性保持、眼内炎、コルチコステロイドの使用、瞳孔ブロックまたは特発性の原因によって生じる眼圧上昇および高眼圧、ならびに線維柱帯切除術後および術前状態が原因の眼圧上昇の処置および/または予防に適している。
【0040】
本発明は、さらには、障害、特に上で言及されている障害の処置および/または予防のための本発明による塩の使用を提供する。
【0041】
本発明は、さらには、障害、特に上で言及されている障害の処置および/または予防のための薬剤の製造のための本発明による塩の使用を提供する。
【0042】
本発明は、さらには、心不全、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、腎不全、腎症、内臓の線維性障害および皮膚科学的線維症の処置および/または予防方法における使用のための本発明による塩を提供する。
【0043】
本発明は、さらには、本発明の少なくとも1の化合物を典型的に1または複数の不活性、非毒性で薬学的に好適な賦形剤と共に含む薬剤、および前述の目的のためのその使用を提供する。
【0044】
本発明の塩は、全身的および/または局所的に作用することができる。この目的のため、これらは、好適な方法で、例えば経口、非経口、肺、鼻、舌下、舌、頬側、直腸、皮膚、経皮、結膜もしくは耳の経路により、またはインプラントもしくはステントとして投与することができる。
【0045】
本発明の塩は、これらの投与経路に適した投与形態で投与することができる。
【0046】
経口投与に適した投与形態は、従来技術に従って働いて本発明の化合物を迅速におよび/または改変された様式で放出する、本発明の化合物を結晶形態および/または非晶質形態および/または溶解形態で含有する投与形態であって、例えば錠剤(非コーティング錠、または本発明の化合物の放出をコントロールする、例えば胃液抵抗性もしくは遅延溶解性もしくは不溶性のコーティングを有するコーティング錠)、口腔内で迅速に崩壊する錠剤またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル(例えばハードまたはソフトゼラチンカプセル)、糖衣錠剤、粒剤、ペレット、散剤、エマルション、懸濁剤、エアロゾルまたは溶液である。
【0047】
非経口投与は、吸収ステップを回避すること(例として静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めること(例として吸入、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内に)ができる。非経口投与に適した投与形態としては、溶液、懸濁液、エマルション、凍結乾燥物または滅菌粉末の形態である注射および点滴のための調合剤が挙げられる。
【0048】
他の投与経路について、好適な例は、吸入薬剤(散剤吸入器、噴霧器、エアロゾルを含む)、点鼻薬、溶液またはスプレー;舌、舌下または頬側投与のための錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル、坐剤、耳または眼の調合剤、膣カプセル、水性懸濁剤(ローション、振とう混合剤(shaking mixture))、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮的治療システム(例えばパッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散粉剤、インプラントまたはステントである。
【0049】
経口投与および非経口投与が、特に経口投与、静脈内投与および吸入投与が好ましい。
【0050】
本発明の塩は、言及されている投与形態に変換することができる。これは、それ自体公知の方法で、不活性、非毒性の、薬学的に好適な賦形剤と混合することにより行うことができる。これらの賦形剤としては、担体(例えば微結晶性セルロース、乳糖、マンニトール)、溶媒(例として液体ポリエチレングリコール)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、バインダー(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然のポリマー(例えばアルブミン)、安定剤(例として抗酸化剤、例えばアスコルビン酸)、着色料(例として無機顔料、例えば酸化鉄)ならびに香味および/または臭気の矯正剤が挙げられる。
【0051】
一般的に、非経口投与の場合、有効な結果を達成するために約0.001から1mg/kg体重、好ましくは約0.01から0.5mg/kg体重の量を投与することが有利であることが見出されている。経口投与の場合、投薬量は約0.01から100mg/kg体重、好ましくは約0.01から20mg/kg体重、最も好ましくは0.1から10mg/kg体重である。
【0052】
本発明は、さらに、遊離酸の形態である式(I)の化合物を例えば不活性溶媒(共溶媒を添加してもよい)中で溶解させること、および塩形成性塩基の溶液と共に10℃から60℃の温度で、好ましくは20℃から40℃で、とりわけ好ましくは25℃または室温で撹拌または振とうすることによる、本発明による塩を調製する方法を提供する。結果として得られる塩の結晶は分離され、存在する溶媒は一定重量になるまで室温または高温で乾燥させることにより除去される。
【0053】
好適な不活性溶媒は、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノールなど、ケトン、例えばアセトンなど、アルカン、例えばn−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなど、もしくはテトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、1,4−ジオキサンまたは言及された溶媒の混合物である。好ましいのは、アセトニトリル、トルエンおよびイソプロパノールまたは言及された溶媒の混合物である。
【0054】
場合により、共溶媒を使用してもよい。この目的に適しているのは、アセトニトリル、アセトン、2−プロパノール、酢酸イソプロピル、2−メチルテトラフラン、トルエン、1,4−ジオキサンあるいはこれらの混合物である。用いられる塩形成性塩基に応じて、好ましいのはトルエン、酢酸イソプロピルまたはアセトニトリルである。
【0055】
好適な塩形成性塩基は、原理的に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素コリン(choline bicarbonate)、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、L−リジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N−メチル−D−グルカミン、L−アルギニン、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである。本発明によると、L−リジン、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムは塩形成にとりわけ適していることが見出されている。
【0056】
調製プロセスは、一般に大気圧下で行われる。しかしながら、加圧圧力または減圧圧力下で、例えば0.5から5バールにおいて操作することも可能である。
【0057】
特に明記されないかぎり、以下のテストおよび例中のパーセンテージは重量パーセンテージであり;部は重量部である。液体/液体溶液についての溶媒比率、希釈比率および濃度データは、各々の場合において体積に基づく。
【実施例】
【0058】
実験部
X線ディフラクトグラムは、室温において、X`Pert PRO(PANalytical) XRD透過/反射回折装置(放射線:銅、Kα1、波長:1.5406Å)を用いて記録した。試料調製はしなかった。
【0059】
実施例
式(I)の化合物(遊離酸)の調製
(S)−4−トリフルオロメチルインダン−1−オール
【化2】
【0060】
アルゴン下で、258mlのジクロロメタン中55.7g(278.3mmol)の4−トリフルオロメチル−1−インダノン、194ml(1.391mol)のトリエチルアミンおよび1.60g(2.50mmol)のRuCl(p−シメン)[(S,S)−TsDPEN](CAS No.:192139−90−5;IUPAC名:(S,S)−N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエタンジアミノ(クロロ)[1−メチル−4−(プロパン−2−イル)ベンゼン]ルテニウム(II))の溶液を35℃まで加熱し、この温度で、52.5ml(1.391mol)のギ酸を徐々に加えた(添加時間約40分)。添加の間に、反応混合物の温度は42℃まで上昇した。添加が完了した後、混合物を38℃でさらに2時間撹拌した。全ての揮発性成分をロータリーエバポレーター上、高真空下で除去した。続いて、残渣を少量のジクロロメタン中に溶解し、1kgのシリカゲルを用いて精製した(溶出液:最初にシクロヘキサン/酢酸エチル 5:1を3リットル、次いでシクロヘキサン/酢酸エチル 1:1を6リットル)。好適な画分をロータリーエバポレーター上で濃縮し、生成物を高真空下で乾燥させた。これは、51.2g(理論値の90%)の標題化合物を与えた。
【0061】
H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ[ppm]=1.76−1.91(m,1H)、2.40(ddt,1H)、2.86(dt,1H)、3.01−3.13(m,1H)、5.09(q,1H)、5.45(d,1H)、7.38−7.48(m,1H)、7.55(d,1H)、7.62(d,1H)。
【0062】
キラル分析的HPLC(方法25):R=7.49分;99% ee
エチル 1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート
【化3】
【0063】
40.0g(243.7mmol)の6−アミノ−3−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2(3H)−オンを初めに2.5lのエタノール中に入れ、63.2g(243.7mmol)のエチル 3−エトキシ−2−[(エトキシカルボニル)カルバモイル]アクリレート(調製については:Senda,Shigeo;Hirota,Kosaku;Notani,Jiyoji,Chemical & Pharmaceutical Bulletin(1972),20(7),1380−8を参照されたい)を加えた。数分後、濃厚な懸濁液が形成された。この混合物を還流温度まで1.5時間加熱した。少し冷却した後(約60℃)、27.3g(243.7mmol)のカリウム tert−ブトキシドを加え、反応混合物をさらに還流温度で4.5時間撹拌した。ワークアップのため、反応懸濁液を少し冷却し(約60℃)、次いで約10リットルの冷1N塩酸中に入れて撹拌した。固形物を吸引ろ過して分け、水で洗浄し、真空乾燥キャビネット内で70℃において一晩乾燥させた。これは、64.0g(理論値の79%)の標題化合物を与えた。
【0064】
LC−MS(方法1):R=0.59分;MS(ESIpos):m/z=332(M+H)
【0065】
H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ[ppm]=1.22(t,3H)、3.38(s,3H)、4.17(q,2H)、7.38(s,2H)、7.59(s,1H)、8.26(s,1H)、11.69(s,1H)。
【0066】
エチル 1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(Rエナンチオマー)
【化4】
【0067】
方法A:アルゴン下で、THF/DMF 1:1(7.6ml)中200mg(0.60mmol)のエチル 1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(上を参照されたい)および475mg(1.81mmol)のトリフェニルホスフィンの溶液を−30℃まで冷却した。238μl(1.20mmol)のジイソプロピルアゾジカルボキシレートを滴下して加え、次いで約1mlのTHF中146mg(0.69mmol)の(1S)−4−(トリフルオロメチル)インダン−1−オール(上を参照されたい)の溶液を滴下して加えた。反応混合物を室温まで温め、室温で30分間撹拌した。ワークアップのため、混合物を0℃まで冷却し、5mlの1M塩酸を加え、混合物を室温まで温めて30分間撹拌した。混合物を次いで酢酸エチルで抽出した。有機相を1M塩酸で2回、飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をエタノールでの抽出撹拌に供し、沈殿した固形物を吸引ろ過して分けて捨てた。ろ液を濃縮し、少量のジクロロメタン中に溶解し、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 120:1→20:1)により精製した。これは、135mg(理論値の43%)の標題化合物を約95%の純度で与えた。
【0068】
LC−MS(方法1):R=1.13分;m/z=516(M+H)
【0069】
H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ[ppm]=1.22(t,3H)、2.37−2.43(m,1H)、2.43−2.48(m,1H,DMSOシグナルにより部分的に不明瞭)、3.03−3.14(m,1H)、3.22−3.30(m,1H,水シグナルにより部分的に不明瞭)、3.38(s,3H)、4.18(q,2H)、6.34−6.56(m,1H)、7.32−7.43(m,3H)、7.45−7.50(m,1H)、7.53(d,1H)、7.55−7.64(m,1H)、8.35(s,1H)。
【0070】
同様の実験において、99%の純度を有する画分を単離することが可能であった。このバッチについて、測定された比旋光度は:
比旋光度:α20=+132.9°(クロロホルム、c=0.395g/100ml)。
【0071】
方法B:アルゴン下で、5.0g(15.1mmol)のエチル 1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(上を参照されたい)、6.73g(25.7mmol)のトリフェニルホスフィンおよび3.66g(18.1mmol)の(1S)−4−(トリフルオロメチル)インダン−1−オール(上を参照されたい)の溶液を初めに240mlのDMF/THF 2:1(v/v)中に入れ、−15℃まで冷却した。4.76ml(24.15mmol)のジイソプロピルアゾジカルボキシレートを、反応混合物の温度が−10℃を超えて上がらないような速度でゆっくり滴下して加えた。添加が終わったら、混合物を−10℃でもう1時間撹拌し、次いで室温まで温め、1.3lの水上に注いだ。混合物を都度300mlの酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーター上で溶媒を除いた。残渣(18g)を2つのクロマトグラフィーステップにおいて精製し:最初に200gのシリカゲルカラムを用いて、移動相としてジクロロメタン/アセトン 97.5:2.5を使用した。結果として得られた生成物を含有する画分を濃縮し、残渣を再度200gのシリカゲルカラムにアプライした。移動相として2.5lのシクロヘキサン/酢酸エチル 1:1を用いて、さらなる不純物を溶出させ、次いで所望の生成物をジクロロメタン/メタノール 95:5を使用してカラムから溶出した。これは、3.40g(理論値の44%)の標題化合物を95%の純度で与えた(NMRは約5%の酢酸エチルを示した)。さらに920mgが混合画分の新たな精製により入手可能であった。全収量:4.32g(理論値の56%)。
【0072】
LC−MS(方法1):R=1.15分;m/z=516(M+H)
【0073】
H−NMR(400MHz、CDCl):δ[ppm]=1.31(t,3H)、2.37−2.49(m,1H)、2.59(dtd,1H)、3.14(dt,1H)、3.40(s,3H)、3.42−3.53(m,1H)、4.29(q,2H)、6.54−6.68(m,1H)、7.06(d,1H)、7.17(d,1H)、7.22(s,1H)、7.26−7.36(m,2H)、7.49(d,1H)、8.28(s,1H)。
【0074】
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸(Rエナンチオマー)
【化5】
【0075】
3.40g(6.60mmol)のエチル 1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボキシレート(上を参照されたい)を44mlの氷酢酸および22mlの濃塩酸中で、還流温度において1時間撹拌した。少し冷却した後(約60℃)、混合物を減圧下で完全に濃縮した。50mlのイソプロパノールを非晶質の残渣に加え、混合物を還流まで15分間加熱し、この過程で固形物を形成させた。懸濁液を次いで10℃まで冷却し、次いで固形物を吸引ろ過して分けた。固形物を都度15mlのイソプロパノールで2回洗浄し、吸引ろ過して分け、高真空下で乾燥させた。これは、2.53g(理論値の79%)の標題化合物を与えた。
【0076】
LC−MS(方法1):R=1.12分;m/z=488(M+H)
【0077】
キラル分析的HPLC(方法14):R=13.3分;約99% ee
H−NMR(400MHz、CDCl):δ[ppm]=2.40−2.52(m,1H)、2.59−2.72(m,1H)、3.12−3.25(m,1H)、3.41(s,3H)、3.44−3.56(m,1H)、6.58−6.69(m,1H)、7.04−7.11(m,1H)、7.15−7.21(m,1H)、7.24(br.s,1H)、7.29−7.38(m,2H)、7.53(s,1H)、8.54(s,1H)、12.39(br.s,1H)。
【0078】
比旋光度α20=+135.3°(メタノール、c=0.43)。
【0079】
同様の実験において、生成物の比旋光度をクロロホルム中で測定した:α20=+159.5°(クロロホルム、c=0.395)。
【0080】
キマーゼとの複合体におけるX線構造解析は、このエナンチオマーのR配置を確認した。
【0081】
実施例1
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のL−リジン塩の調製
約300mgの1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸(遊離酸)を30mlのアセトニトリル中に溶解した。回転させながら、30mlのトルエンを共溶媒として加えた。10mlの水中90mgのL−リジンの溶液を次いで加え、混合物を室温で一晩撹拌した。懸濁液を次いでろ過し、残渣を室温および環境湿度において乾燥させた。残渣をX線回折法により試験したところ、標題化合物と一致する。
【0082】
実施例2
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のナトリウム塩の調製
約300mgの1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸(遊離酸)を30mlのアセトニトリル中に溶解した。回転させながら、30mlの酢酸イソプロピルを共溶媒として加えた。10mlの水中65.2mgの炭酸水素ナトリウムの溶液を次いで加え、混合物を室温で60分間撹拌した。懸濁液を次いでろ過し、残渣を室温および環境湿度において乾燥させた。残渣をX線回折法により試験したところ、標題化合物と一致する。
【0083】
実施例3
1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸のカリウム塩の調製
約300mgの1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸(遊離酸)を30mlのアセトニトリル中に溶解した。回転させながら、さらに30mlのアセトニトリルを加えた。10mlの水中85.1mgの炭酸水素カリウムの溶液を次いで加え、混合物を室温で60分間撹拌した。懸濁液を次いでろ過し、残渣を室温および環境湿度において乾燥させた。残渣をX線回折法により試験したところ、標題化合物と一致する。
【0084】
表1:遊離酸である1−(3−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1,3−ベンゾキサゾール−6−イル)−2,4−ジオキソ−3−[(1R)−4−(トリフルオロメチル)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−カルボン酸およびその塩のX線回折測定
【表1】
図1
図2
図3