特許第6446056号(P6446056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6446056パワーステアリング信号の遷移を検出するフィルタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446056
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】パワーステアリング信号の遷移を検出するフィルタリング方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B62D6/00
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-555335(P2016-555335)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公表番号】特表2017-507071(P2017-507071A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】FR2015050471
(87)【国際公開番号】WO2015132508
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2018年1月9日
(31)【優先権主張番号】14/51683
(32)【優先日】2014年3月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブードゥレ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ムレール パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィエ クリストフ
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−168399(JP,A)
【文献】 特開2000−103349(JP,A)
【文献】 特開2007−230360(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1645454(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーステアリング管理方法であって、
ノイズのある信号における遷移(4’)を検出するステップ(a)を含み、
前記ステップ(a)において、パワーステアリング管理のために使用される情報を搬送する、ノイズのある信号(Signal)には、微分サブステップ(a1)が行われ、その次に選択的フィルタリングサブステップ(a2)が行われ、
前記微分サブステップ(a1)は、前記ノイズのある信号の時間微分(∂Signal/∂t)を求めることを含み、
前記選択的フィルタリングサブステップ(a2)は、所定の変動閾値(Speak)より大きい微分ピーク(7)の出現を検出するために、前記ノイズのある信号の前記時間微分(∂Signal/∂t)を前記変動閾値(Speak)と比較し、前記ノイズのある信号の前記時間微分(∂Signal/∂t)が前記変動閾値(Speak)より上に保たれる、前記微分ピークの保持継続期間(dpeak)を求め、ピークの前記保持継続期間(dpeak)が所定の最小継続期間閾値(d0)に達する又はこれを超えるか否かを検査することを含み、
前記方法は、
前記最小継続期間閾値(d0)が、前記ノイズのある信号(Signal)に影響を与えるノイズの最大の特性半周期以上、かつ、検出されるべき遷移(4’)の特性継続期間より厳密に短いものとして、選択される
ことを特徴とする、パワーステアリング管理方法。
【請求項2】
前記ノイズのある信号(Signal)は、
前記ステアリングのアシストモータ(2)によって出力されるアシスト力(Cassist)を表すモータトルク信号(CMot,Cassist)なる信号で構成される
ことを特徴とする、請求項1のパワーステアリング管理方法。
【請求項3】
前記最小継続期間閾値(d0)は、30msと40msとの間に含まれる
ことを特徴とする、請求項1又は2のパワーステアリング管理方法。
【請求項4】
前記ノイズのある信号の前記時間微分(∂Signal/∂t)が前記変動閾値(Speak)を上回る時点に対応するピーク開始時間(tstart)を識別し、前記ノイズのある信号の前記時間微分(∂Signal/∂t)が前記変動閾値(Speak)より下に再び低下する時点に対応するピーク終了時間(tend)を識別する、前記遷移を特徴付けるステップ(b)が、前記遷移を検出するステップ(a)に続く
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項のパワーステアリング管理方法。
【請求項5】
前記変動閾値(Speak)、及び/又は、ピーク保持の前記最小継続期間閾値(d0)は、ステアリングホイールの角加速度
に応じて調整される
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項のパワーステアリング管理方法。
【請求項6】
ノイズのある信号における遷移(4’)を検出するフィルタであって、
前記フィルタは、
ノイズのある信号(Signal)を収集し、その時間微分(∂Signal/∂t)を求めるように構成された微分モジュール(6)と、
一方では、所定の変動閾値(Speak)より大きい微分ピーク(7)の出現を検出するために、前記ノイズのある信号の前記時間微分(∂Signal/∂t)を前記変動閾値(Speak)と比較するように、他方では、前記変動閾値(Speak)を超えた後に前記ノイズのある信号の前記時間微分(∂Signal/∂t)が前記変動閾値(Speak)より上に保たれる、前記ピークの保持継続期間(dpeak)を求めるように、かつ、ピークの前記保持継続期間(dpeak)が所定の最小継続期間閾値(d0)に達する又はこれを超えるか否かを検査するように、構成された選択的フィルタリングモジュール(8,9)とを有し、
前記最小継続期間閾値d0は、前記ノイズのある信号に影響を与えるノイズの最大の特性半周期以上、かつ、検出されるべき遷移(4’)の特性継続期間より厳密に小さいものとして選択される、
フィルタ。
【請求項7】
前記最小継続期間閾値(d0)は、30msと40msとの間に含まれる
ことを特徴とする、請求項6のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリング管理方法を装備する車両の分野全体に関し、特に自動車に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、ステアリングアシストモータによるトルク出力の測定信号のような、パワーステアリングの動作パラメータを表す信号の処理に関し、それを知り分析することはパワーステアリングを良好に管理するために必要である。
【背景技術】
【0003】
パワーステアリングシステムの管理に用いられる信号、特に、例えば、モータトルク又は運転者によってステアリングホイールに与えられたトルクを測定するセンサのような、センサから集められた測定信号は、ノイズによって影響を及ぼされる可能性がある。
【0004】
ノイズは、信号によって搬送される有用な情報にランダムな変動を重ね合わせることによって、信号の品質を悪化させる。ランダムな変動は、急速でかなり大きな振幅であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、パワーステアリングの管理、特に検討される時点において適用され得るアシスト則の選択には、その検討される時点におけるステアリングシステムの挙動及び/又は車両の挙動(例えば、車両の変位方向、ステアリングホイールの操舵方向等)を正確に知ることが必要である。
【0006】
多くの場合、この、挙動を知ることは、パワーステアリングの操作及び車両の挙動を表すはずである信号の状態又は状態の変化(遷移)を認識することに依存している。
【0007】
この認識は、検討される信号の特徴の1つ(振幅、周波数等)によって、特に、所定の閾値が横切られることから生じる。
【0008】
そして、ノイズによって引き起こされる、信号のランダムな変動は、例えば偶然に閾値が超過されることによって、時にはこの認識を歪曲させて「偽陽性」という結果になる、ということが理解されるであろう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、前述の不利な点を克服し、車両及びステアリングシステムの実際の状況の検出を改善するために、パワーステアリングの管理に有用なノイズのある信号を迅速で信頼できる方法で処理することができるようにする新たな解決策を提供することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、ノイズのある信号における遷移を検出するステップ(a)を含むことを特徴とするパワーステアリング管理方法によって達成される。前記ステップ(a)において、パワーステアリング管理のために使用される情報を搬送する、ノイズのある信号には、微分サブステップ(a1)が行われ、次に選択的フィルタリングサブステップ(a2)が行われる。前記微分サブステップ(a1)は、前記ノイズのある信号の時間微分を求めることを含む。前記選択的フィルタリングサブステップ(a2)は、所定の変動閾値より大きい微分ピークの出現を検出するために、前記ノイズのある信号の前記時間微分を前記変動閾値と比較し、前記ノイズのある信号の前記時間微分が前記変動閾値より上に保たれる、前記微分ピークの保持継続期間を求め、ピークの前記保持継続期間が所定の最小継続期間閾値に達する又はこれを超えるか否かを検査することを含む。
【0011】
本発明の目的は、ノイズのある信号における遷移を検出するフィルタによっても達成される。前記フィルタは、ノイズのある信号を収集し、その時間微分を求めるように構成された微分モジュールを、一方では、所定の変動閾値より大きい微分ピークの出現を検出するために、前記ノイズのある信号の前記時間微分を前記変動閾値と比較するように、他方では、前記変動閾値を超えた後に前記ノイズのある信号の前記時間微分が前記変動閾値より上に保たれる、前記ピークの保持継続期間を求めるように、かつ、ピークの前記保持継続期間が所定の最小継続期間閾値に達する又はこれを超えるか否かを検査するように、構成された選択的フィルタリングモジュールとともに、有する。
【0012】
有利なことに、本発明によると、信号の変遷を正しく表す遷移を区別すること、及び2つの条件、すなわち、信号の時間微分の値が変化閾値(勾配閾値)を超えなければならないという、遷移現象の出現を示す、第1条件と、微分値を遷移閾値の上に保つことによって特徴付けられるこの遷移現象が、ノイズによって引き起こされる単なる局所的な変動ではなく、信号の値の実際の変化(よってステアリングシステムの状態の実際の変化)に帰することができるほど十分に長く続く必要があるという第2条件とによって、ノイズによって引き起こされる偽陽性を除外することが可能になる。
【0013】
よって、本発明によるフィルタによると、信号の微分ピークを識別すること、及び、一方の、ステアリングシステムの状態又は車両の振る舞いを表し、前記ステアリングシステムの管理のために保持され得るピークと、他方の、ノイズによって引き起こされ、ステアリング管理を歪めないように考慮に入れられないピークとを、容易にすばやく区別することとが、可能になる。
【0014】
有利なことに、本発明によって提供される処理は、もしあれば、センサにおいて取得されたままの、生のノイズのある信号に、バックグラウンドノイズを除去するために前もって前記信号にフィルタをかける必要なく、直接適用されてもよい、ということに気付かれるであろう。
【0015】
よって、本発明によると、変化が速く、かつ、不安定性に敏感ではない信号の処理が可能になり、これは本管理方法の反応性及び信頼性、その結果としてステアリングシステムの安全性を向上させる。
【0016】
ノイズのある信号を直接利用することにより、中間フィルタを回避すること、よって本方法の実施を簡単にすることが可能になり、この実施のコストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の他の目的、特徴及び有利な点は、単に説明として非限定的なやり方で提供された、添付の図面に加えて以下の説明を読むとすぐに、更に詳細に明らかになるであろう。
図1図1は、ノイズのある信号、この場合はアシストモータによって提供されるモータトルクを表す信号の変遷をタイムチャートで示す。本発明は、前記信号の遷移、例えば、この同じグラフにステアリングホイールの角位置の変遷の曲線によって(言い換えると、駆動機構の減速比を考慮するなら、アシストモータのシャフトの角位置の変遷の曲線によって)示された、連続するステアリングリバーサルに起因する遷移、を検出することを可能にする。
図2図2は、図1のノイズのある信号の時間微分が取る値をタイムチャート上に示す。
図3図3は、ステアリングリバーサルによって引き起こされる(絶対値での)トルクの低下(chute)時における、図1のノイズのある信号を表す曲線の拡大図を、タイムチャートで示す。
図4図4は、本発明による方法の実施をブロック図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、パワーステアリング1の管理に関する。
【0019】
前記パワーステアリング1は、アシスト力Cassistを出力するための少なくとも1つのアシストモータ2を有している。
【0020】
いかなるタイプのアシストモータ2、より詳しくはいかなるタイプの双方向アシストモータの採用をも、こだわりなく考えることが可能である。
【0021】
特に、本発明は、トラクション又は圧縮タイプのアシスト力Cassistを作用させるためのリニアアシストモータ2と同様に、トルクタイプのアシスト力Cassistを作用させるためのロータリーアシストモータ2に適用されてもよい。
【0022】
更に、前記アシストモータ2は、例えば液圧式、又は好ましくは電気式であってもよい(電気式モータを用いると、特に、有用な信号の生成及び管理に加えて、前記モータの据え付け及び実装が容易になる)。
【0023】
特に好ましい方法においては、アシストモータ2は、例えば「ブラシレス」タイプの、ロータリー電気モータであろう。
【0024】
更に、パワーステアリング1は、ステアリングホイールを、それ自体知られているやり方で(図示しないが)好ましくは有し、このステアリングホイールは、これによって車両の運転者が、車両のシャシーに固定されたステアリングケーシングにスライドするように取り付けられたステアリングラックに、ピニオンによって係合するステアリングコラムを、回転させることができるものである。
【0025】
ステアリングケーシング内におけるラックの並進運動の変位がステアードホイールのステアリング角を(すなわち、ヨー方向に)変化させるように、ステアリングラックの両端は、好ましくはそれぞれヨー方向に可動のスタブアクスルに接続され、これには、車両のステアードホイール(好ましくは駆動輪)が取り付けられる。
【0026】
アシストモータ2は、例えばウォームホイール及びウォーム減速装置を通してステアリングコラムに係合してもよく、又はボールスクリュータイプの駆動機構によって、若しくはステアリングコラムのピニオンから独立したドライビングピニオンを経由して、ステアリングラックに直接係合してもよい(このようにして「デュアルピニオンメカニズム」と呼ばれるステアリングメカニズムを形成する)。
【0027】
図4に示されているように、ステアリング1を操作している運転者をアシストモータ2がアシストするようにモータ2に与えられる、力の設定値(より好ましくはトルクの設定値)CMotは、計算機(ここではアシスト則3の適用モジュール)の不揮発性メモリに格納された所定のアシスト則に依存し、前記アシスト則は、前記力の設定値CMotを、運転者によってステアリングホイールに与えられるステアリングホイールトルクCsteering wheel、車両の(前後方向の)速度Vvehic、ステアリングホイールの角位置θsteering wheel等のようなさまざまなパラメータに応じて調整し得る。
【0028】
本発明によると、本方法は、ノイズのある信号(図及び以下において「Signal」と表記される)における遷移(transition)4’を検出するステップ(a)を有する。
【0029】
このステップにおいては、前記ノイズのある信号Signalの1つの(又はそれより多くの)遷移4’を検出しようとする。前記遷移は、ステアリングシステムの状態の変化に、より一般的には車両の動的挙動の状態の変化に、対応する。
【0030】
説明の便宜上、好ましくは以下で参照されるが、本方法の好ましい応用によると、検出されるべき遷移4’は、ステアリングリバーサル4に、すなわち、車両の運転者がステアリングホイールを(自発的に)動かす方向の変化に、対応する。これらの変化は、ステアリングホイールを左に引く力を運転者が与える、左へ操舵する状況から、ステアリングホイールを右に引く力を運転者が与える、右へ操舵する状況への切り換え、又はその反対を意図しており、そのような結果が得られる。
【0031】
そこで、遷移4’を検出するステップ(a)は、ステアリングリバーサル4を検出するステップで好ましくは構成される。
【0032】
もちろん、本発明は、この特定の応用に限定されない。パワーステアリングによって、より一般的には車両によって、利用される、いかなるノイズのある信号にも、本方法は完全に適用され得るからである。
【0033】
よって、ノイズのある信号Signalは、ステアリングホイールの回転速度若しくは回転方向に、ステアリングホイールトルクCsteering wheelに、アシストモータ2のシャフト5の回転速度若しくは回転方向に、アシストモータによって出力されるトルクに、車両の速度Vvehicに、車両のヨーレート若しくは加速度に、又はこれらの信号のいかなる有用な組合せにも、特に対応し得る。
【0034】
この方法がステアリングリバーサル4の検出に適用された例において、前記連続したステアリングリバーサル4は、図1において明確に認識できる。点線の曲線は、図1においてステアリングホイールの角位置θsteering wheelの時間に伴う変遷を示しており、運転者がステアリングホイールを右に、次に左に、次に再び右に等、連続して操舵するときに、前記ステアリングホイールの回転方向が交互に変化することが見えるようにする(これは、ステアリングホイールの角位置を表す曲線が、ここでは正弦曲線に類似する形を有する、ということを説明する)。
【0035】
図1の好適な例において、ステアリング角の相対的配置(configuration)を表す、ステアリングホイールの角位置θsteering wheelは、アシストモータ2のシャフト5の角位置から等価的に実際には表される、ということに気付くであろう。
【0036】
もっとも、ステアリング角の空間的配置を表す位置の、従ってステアリングホイールの角位置の、どのような測定も、ステアリングリバーサルの説明及び特徴付けの目的に適し得る。
【0037】
この場合、アシストモータのシャフト5をステアリングホイールに接続する動的なリンク機構の機械的な減速比は、アシストモータのシャフトの角位置とステアリングホイールの角位置との間の関係を規定する。
【0038】
図1の例において、減速比は約26であり、縦座標の角度目盛りはドライブシャフトの機械的なキロ度(10度)に対応しており、ドライブシャフトの前後の動きは、ステアリングホイールの約+/−139度の角変位に対応するおおよそ−3600度(ドライブシャフト角)から+3600度(ドライブシャフト角)の間で交互に変化する。
【0039】
それ自体知られているやり方で、アシストモータ2のシャフト5の角位置情報は、「レゾルバ」タイプの、ここでは有利なことにアシストモータ2に直列に組み込まれた、相対位置センサによって提供され得る、ということに気付くであろう。
【0040】
角位置についてのこの測定の選択は、本発明の思想に対して限定的ではなく、必要ならば、前記角位置を、「機械角」ではなく、レゾルバのステータの極数を考慮する「電気角」タイプの単位で、最初に表現することも可能であるということを説明する。
【0041】
好ましくは、本発明による処理の対象であるノイズのある信号Signalは、ステアリングアシストモータ2によって出力されるアシスト力Cassistを表す(より詳しくは、トルク、この場合は前記アシストモータによって提供される電磁トルク、を表す)、「モータトルク信号」と呼ばれる信号によって構成されている。
【0042】
したがって、遷移4’を検出するためにステップ(a)に用いられるノイズのある信号Signalは、アシストモータ2に与えられる力又はトルクの設定値CMotによって、又はアシストモータ2によって実際に出力される力又はトルクCassistの測定値によって、好ましくは構成される。
【0043】
実際には、車両に考えられる実際の状況において、アシストモータ2に与えられる設定値CMotの値、及び前記アシストモータ2によって実際に提供されるアシスト力Cassistの値は、非常に近く、等しくさえあるので、これらの2つの信号は本発明の枠組みの中で同等に使用され得る。
【0044】
そこで、好ましくは、そして説明の便宜上、以下では、ノイズのある信号Signalを、「モータトルク信号」に、より詳しくはアシストモータ2に与えられる、力の設定値(トルク設定値)CMotに、一致させることが可能である。
【0045】
有利なことに、本発明による方法をアシストモータ2によって提供されるアシスト力Cassistを表すノイズのある信号に利用することにより、前記ノイズのある信号において、アシスト力の低下(絶対値で)に対応する、より詳しくはステアリングリバーサル4の間に起こる内部摩擦の反転の結果である(図1及び3における高さHの)低下に対応する、遷移4’を検出することが可能になる。
【0046】
もっとも、どのようなステアリングリバーサル4も、ステアリング部材の変位方向の切り換え(反転)を引き起こす。
【0047】
ここで実際に、ステアリング機構における内部摩擦による抵抗力は、ステアリング操作に対抗する傾向があり、ステアリング部材の変位の符号(signe)の反対(より詳しくは、変位の速度の符号の反対)の符号を有する。
【0048】
アシスト力は、それに関する限り、要するに駆動機能を有する。すなわち、前記アシスト力は、運転者が望む、注目されるステアリング方向に、内部摩擦による力を含む抵抗力に抗して、ステアリング部材を変位させるのに役立つ。
【0049】
どのような場合であっても、ステアリング角操作方向を切り換えること、したがってステアリング部材の変位方向を切り換えることは、ほとんど同時に、一方では、ステアリングリバーサルの前に、第1方向(慣習的に左)におけるステアリング部材の変位に対抗する摩擦に起因する第1抵抗力成分を消失させ、他方では、今度は、ステアリングリバーサルの後に、第1方向とは反対の第2方向(右)におけるステアリング部材の変位に対抗する、やはり摩擦に起因するが第1抵抗力成分とは符号が反対の新たな(第2)抵抗力成分を生じさせる。
【0050】
したがって、摩擦の存在、より詳しくは、摩擦の作用方向は操舵方向が反転するときに反転するという事実は、操舵方向が反転するときに、抵抗力の低下(絶対値で)として、従って前記抵抗力に対抗する(及び打ち勝つ)ためにアシストモータによって出力されるアシスト力の低下として、現れるヒステリシス現象を生じさせる。
【0051】
更に、力の設定値CMotの信号、及び/又はモータによって実際に出力されたアシスト力Cassistの測定値の信号は、利用可能であるという利点があり、パワーステアリングに容易に利用され得る。
【0052】
特に、アシストモータ2に与えられることが意図される、力の設定値CMotの信号は、パワーステアリングのアシスト則の適用モジュール3からの出力データを一貫して構成するので、必然的に永久に知られる。
【0053】
したがって、この設定値信号CMotを利用するには、非常に簡単な実装しか必要がない。
【0054】
もし、前記アシストモータに、力センサ、より詳しくは適切な電磁トルクセンサが、直列に装備されていれば、実際にアシストモータ2によって出力されるアシスト力(又はトルク)Cassistの測定に関する情報は、必要であれば、それに関する限り、前記アシストモータ2自身によって(より詳しくは、前記モータに組み込まれたコントローラによって)与えられる。
【0055】
アシスト力Cassistの測定値は、もちろん、代替として、アシストモータ2のシャフト5に取り付けられたトルクセンサのような、他のいかなる適切な外力(又はトルク)センサによって得られてもよい。
【0056】
本方法の実施のあり得る変形例によると、ステアリングラックに(前記ラックの並進運動の軸に沿って長手方向に)与えられた引っ張り力又は圧縮力を、アシストモータ2によって出力されたアシスト力Cassistを表す「モータトルク信号」として考えることが可能であろう。
【0057】
そのような信号は、例えば、ラックの変形を測定するひずみゲージによって、又はいかなる他の適切な力センサによっても、提供され得る。
【0058】
一般に、遷移4’の(単なる)検出、ここでは本発明によるステアリングリバーサルの検出のために、「ノイズのある信号」として、その値が所望のタイプの遷移4’に敏感ないかなる信号をも利用することが実際は可能である。
【0059】
ここで、ステアリングリバーサル中に(従って前記摩擦の反転中に)前記信号が知覚可能な変動(ここでは低下)を受けるように、摩擦の反転に敏感ないかなる信号をも、すなわち、その値が、ステアリングシステムに与えられる(内部)摩擦の全部又は一部によって影響を受けるいかなる信号をも用いることが可能である。
【0060】
更に、アシストモータ2とステアリングラックとの間の駆動比を考慮すると、本発明の全体の思想を改変することなく、モータトルク信号CMotをモータトルク又はラックの等価な直線力の形で普通に表現することが可能である、ということに気付くであろう。
【0061】
よって、例として、図1のモータトルク信号CMotは、図1におけるトルク(N.mで表されている)と同種のものであるが、図2及び図3に見られるように、表現の便宜のため及び単なる表現の習慣により、ニュートン、より正確にはキロニュートンで表現された等価な直線力の形に変換されてもよい。
【0062】
アナログ信号Signal、CMot(...)、及び特にアナログモータトルク信号CMotを扱うことを除外しているわけではないが、更に、本発明による方法が特にデジタル信号の処理によく適合している限り、1つ以上のデジタル信号Signal、CMot(...)、及び特にデジタルモータトルク信号CMotを好適に使用することができる。
【0063】
本発明によると、遷移4’を検出するステップ(a)の間、ノイズのある信号Signalには、微分サブステップ(a1)が行われる。この信号はパワーステアリングの管理のために使用される情報(ここでは例えば、モータトルクの値の変遷に関する情報であり、その低下はステアリングリバーサル4の発生についての情報を与える)を搬送するものであり、このサブステップの間に、ノイズのある信号の時間微分∂Signal/∂tの値が(ここでは、図4における微分モジュール6によって)求められる。
【0064】
実際には、単位時間あたりの、この場合は所定の十分に限定された時間間隔(サンプリング周期)だけ離れた2つの時点の間の、ノイズのある信号Signalの変動(すなわち、前記信号を表す曲線の傾き)を求めることを可能にするいかなる微分方法をも、この目的のために適用することが可能である。
【0065】
参考までに、前記サンプリング周期(「サンプリング間隔」とも呼ばれる)は、0.5msと10msとの間に含まれ得る。
【0066】
本発明によると、遷移検出ステップ(a)の間、かつ微分サブステップ(a1)中にノイズのある信号の時間微分を求めた後、ノイズのある信号には、ここではフィルタリングモジュール8,9で実現される、選択的フィルタリングサブステップ(a2)が行われる。このサブステップの間、所定のピーク変動閾値Speakより大きい微分ピーク7の出現を検出するために、ノイズのある信号の時間微分∂Signal/∂tがピーク変動閾値Speakと比較される。
【0067】
前記所定の変動閾値より大きいそのような微分ピーク7は、ノイズのある信号の急速な変動に(又はほどんど不連続な点にさえ)、より詳しくはノイズのある信号Signalの絶対値での(零に近づく値の)低下に対応する遷移4’を、正に示す。
【0068】
前述の好適な応用例において、そのような微分ピーク7は、したがってステアリング角4の方向の反転を示し得る。
【0069】
前述したように、また図1に明確に示されているように、ここではステアリングリバーサル4に起因する遷移4’は、摩擦には反転が付きものであるという事実が理由で、ノイズのある信号Signal(モータトルク信号CMot)の変動、この場合は低下として現れる。
【0070】
ノイズのある信号の低下は、比較的大きな高さH(図1の例においてはモータトルクの2.5N.mの値域にある)と、比較的短い期間(典型的には2分の1秒より短く、例えば100msと300msとの間である)を有する。
【0071】
図1において明確に見え、よって前記ノイズのある信号の時間微分∂Signal/∂tの値の、ここではより詳しくはモータトルク信号の時間微分∂CMot/∂tの値の、大幅な急な増加として、図2に示されているような微分ピーク7の形で現れるので、前記低下は、したがってノイズのある信号、ここではモータトルク信号CMotの急峻な傾きの後退(へこみ)によって区別可能である。
【0072】
よって本発明者は、遷移4’、より詳しくはステアリングリバーサル4が、微分ピーク7によって示されるということを発見した。微分ピーク7は、「変動閾値」Speakと呼ばれる傾きの閾値より大きな値を有するので、識別され得る。すなわち、前記ピーク7は、
∂Signal/∂t ≧ Speak
を満たし、したがってより詳しくは
∂Signal/∂t = ∂CMot/∂t ≧ Speak
を満たす。
【0073】
典型的には、特に図2において検討された例において、ステアリングリバーサル4の特徴であるモータトルク信号の時間微分のピーク7(より詳しくは、ラックに与えられた等価力の時間微分のピーク)は、30kN/sより大きい、この場合は30kN/sから65kN/sまで、より詳しくは35kN/sから50kN/sまでの範囲である「ピークレンジ」と呼ばれる値域に含まれていた。
【0074】
そこで、所定の変動閾値Speakは、期待されるピークレンジ以下、特に前記レンジの下側の閾値に等しいか近い値として選択され得る。例えば、ピーク変動閾値Speakは、ここでは30kN/sに設定され得る。
【0075】
選択的フィルタリングサブステップ(a2)の間には、微分ピーク7の保持継続期間(dpeak)が求められ、その期間中、ノイズのある信号の時間微分∂Signal/∂tは前記変動閾値(Speak)より大きく保たれており、ピークの前記保持継続期間(dpeak)が所定の最小継続期間閾値(d0)に達するか又はこれを超えるか否かが検査される。
【0076】
有利なことに、選択的フィルタリングによって設定された(期間についての)この第2条件は、一方の、ノイズのある信号のモニター値(ここでは振幅)に影響する遷移4’に実際に対応する微分ピーク7と、他方の、ノイズのある信号(ここではモータトルク信号CMot)を妨害するバックグラウンドノイズによって引き起こされるノイズ微分ピーク10(図2)とを、前記選択的フィルタリングが区別することを可能にする限り、運転者又は車両の操舵行動の現象を正しく表す遷移4’の識別における、特にステアリングリバーサル4の識別における、更なる安全策を構成する。
【0077】
もっとも、ノイズはノイズのある信号Signalにランダムで急速な変動を作り出すので、変動閾値Speakより大きく、時間微分を計算することによる第1の検出基準に基づくのみでは遷移4’(ステアリングリバーサル4)として誤って解釈され得る、変動(傾き)を前記ノイズが時々前記信号に現れさせることは除外されていない。
【0078】
しかし、ノイズは、実質的に周期的な現象であり、ノイズのある信号自身の低下期間より厳密に短い、より詳しくはモータトルク信号の低下期間より短い、特性半周期を有するということを、本発明者は見い出した。
【0079】
ノイズによって引き起こされるノイズ微分ピーク10の継続期間は、前記ノイズの半周期(関係する変動の最小値と最大値との間でノイズが単調に増加、又は反対に単調に減少する半周期、又はその反対)に実質的に等しいので、第1基準を補完する第2基準に従って、期待される遷移の特性継続期間(ここではステアリングリバーサル4の継続期間)より厳密に短い継続期間を有する(ノイズ10の)微分ピークを除外することによって、遷移4’(実際のステアリングリバーサル)を表す適切な微分ピーク7を分離することが可能である。
【0080】
好ましくは、最小継続期間閾値d0は、ノイズのある信号Signalに影響を与えるノイズの最大の特性半周期以上のものとして選択される。
【0081】
ノイズの(期待される)前記最大の特性半周期は、特にシミュレーション又はテスト行動(campagnes d'essais)から推定され得る。
【0082】
好ましくは、以上で提供されたサイズ選択についての好ましくは累積的な方法で、最小継続期間閾値d0は、検出されるべき遷移4’の特性継続期間より厳密に短いものとして選択され得る。
【0083】
この、遷移4’の(期待される)特性継続期間も、シミュレーション又はテスト行動から推定され得る。
【0084】
ステアリングリバーサルの検出に特によく適した例として、最小継続期間閾値d0を30msと40msとの間の値(遷移の、より詳しくはステアリングリバーサルによって引き起こされる低下の特性継続期間は、100ms以上であるのに対して)に設定することが可能であり得る。
【0085】
具体的に言うと、フィルタリングモジュール8,9は、ピーク検出ラッチを含んでいてもよく、このラッチは、2つの累積的条件が組み合わされて遷移4’(ここではステアリングリバーサル4)によるステアリングリバーサルピーク7が存在することを確認するとすぐに前記ラッチが検出信号(ピーク識別信号)を返すように、一方では時間微分を変動閾値Speakと比較する比較モジュール8に、他方では変動閾値Speakを横切ったことを前記比較モジュール8が検出した時点からの経過時間を計測するクロック9に、二重に依存している。
【0086】
本発明の好適な変形例においては、ノイズのある信号の時間微分∂Signal/∂tがピーク変動閾値Speakを上回る時点に対応するピーク開始時間tstartが識別され、ノイズのある信号の時間微分∂Signal/∂tが前記変動閾値Speakより下に再び低下する時点に対応するピーク終了時間tendが識別される、遷移特徴付けステップ(b)が、遷移検出ステップ(a)に続く。
【0087】
有利なことに、遷移4’が検出される(そしてそのように実証される)とき、遷移4’の時点(タイムスタンプ)及び前記遷移4’の時間的な長さ(継続期間)を正確に特徴付けることがこのように可能である。
【0088】
遷移4’、より詳しくは前記遷移4’が継続する期間の境界を形成する時点は、特に前記遷移4’の直前及び直後に信号(例えばノイズのある信号又は他の任意の有用な信号)が取る値が何であるかを求めるための時間標識点となり得る。これにより前記遷移4’の前及び後におけるステアリング(及び/又は車両)の状態を正確に知り、よってこの遷移の期間に生じる変化を定量化することが可能になる。
【0089】
遷移4’を一時的に決めるために、ステアリング(又は車両)の状態の観測時点として、ピーク開始時間tstart以前の第1参照時間t1及びピーク終了時間tend以降の第2参照時間t2を選択することが可能であり得る。
【0090】
以下で詳述するように、識別されたピーク開始とピーク終了との間の間隔[tstart, tend]に対して、第1及び第2参照時間で規定される時間間隔[t1, t2]の拡大が可能なことは、完全な遷移が、その一部が切り取られることなく、十分に考慮されること、及び、前記遷移の両側で観測されるステアリングシステム(及び/又は車両)の状態を求めることが、第1及び第2参照時間t1,t2まで、歪められないことを確実にする。
【0091】
もちろん、遷移4’の期待される期間より長く選択されるであろう記録期間にわたって、この方法によって使用される信号(又は信号群)によって連続的に取られる様々な値の履歴をメモリに格納することを可能にするデータベースを、本発明による方法は好ましくは使用するであろう。
【0092】
よって、微分ピーク7が識別された後、前記微分ピークの出現に先行する時点(典型的には第1参照時間t1)において、及び/又は前記微分ピーク7の出現の後の時点(典型的には第2参照時間t2)において、前記信号によって取られる1つ(又はそれ以上)の値を知るために、調べられた信号の履歴全体に戻ることが可能であり得る。
【0093】
有利なことに、メモリ空間の不必要な消費を避けるために、検討される時点においてパワーステアリング管理の計算を行うのに適切な信号の過去の値を取り戻すのに実際に有用であり得る情報のみを、その検討される時点において保持するために、ローリング記録期間にわたって、データベースは絶えずリフレッシュされるであろう。
【0094】
参考のために言うと、記録期間は、0.5s(500ms)と1sとの間に含まれ得るものであり、好ましくは500msに等しくあり得る。
【0095】
更に、ステアリングにおいて支配的な(内部)摩擦を求めることを可能にする、好ましい実現可能性によると、運転者及びアシストモータ2によってパワーステアリングに共同で与えられる総操作力を(より詳しくはトルクを)表し、「操作力信号」と呼ばれる、信号Cactionが取得され、パワーステアリングのステアリング動作に対抗する摩擦力Fが、前記操作力信号Cactionによってステアリングリバーサル4の前と後とでそれぞれ取られる2つの値の間の差ΔCactionから摩擦評価モジュール11によって求められる、摩擦評価ステップ(d)を、本発明による方法は含み得る。
【0096】
言い換えると、ステップ(a)によって検出されるステアリングリバーサルの間に生じる操作力信号Cactionの低下ΔCactionから摩擦が求められる摩擦評価ステップ(d)を、本方法は含む。
【0097】
正に、ステアリングリバーサルの場合におけるモータトルク信号CMotの低下Hを説明するために上記で詳述されたのと同じ理由で、ステアリングリバーサル4は、より一般的に、摩擦力の符号の反転に起因して、操作力信号Cactionの低下ΔCactionという結果にもなる。
【0098】
モータトルク信号CMotのみから(上述のように、前記信号が、モータに適用される設定値によって、又は、モータによって出力される電磁トルクによって、提供されるように)、より詳しくはステアリングリバーサルの前と後ろのそれぞれにおいてモータトルク信号CMotによって(総操作力信号Cactionによってではなく)取られる2つの値の差のみから、すなわち前述の低下Hの高さから、摩擦Fを求めることが、実質的に等価なやり方で、本発明の本質を変えることなく、絶対的に、更に可能であり得る。
【0099】
しかし、ステアリングシステムに影響を与える摩擦現象をより正確により完全に求めるためには、低下の高さの計算用に、できるだけ長く完全な、動的なリンク機構に対する摩擦効果を含む信号を、ステアリングシステム内で使用することが好ましく、これは、摩擦が生じ得るステアリングシステムの最大限可能な数のセグメントを考慮し、したがって最小限の内部摩擦源を無視するためである。
【0100】
言い換えると、ステアリングシステムの上流のアクチュエータエレメント(つまり、運転者及びアシストモータのそれぞれ)と、下流の実行部材(ロッド及びステアードホイール)との間に含まれる動的なリンク機構のそれぞれのできるだけ上流に位置する領域において力の信号を収集することが好ましい。これは、これらの信号が、ステアリングシステムの操作に対抗する最大の摩擦を含むように、例えば、関係する1つ以上のアクチュエータの下流に位置する動的なリンク機構全体にわたって生じる全ての摩擦を含むようにするためである。
【0101】
更に、総操作力信号を考慮することも好ましい。この信号は、アシストモータ2の寄与のみではなく、運転者の人手による寄与も、考慮に入れる。
【0102】
正に、そのような操作力信号の(絶対値での)低下は、したがって、ステアリング機構の「モータ化」された部分(アシストモータ、リデューサ、ラック…)と、「運転者」部分(ステアリングホイール、ステアリングコラム、ピニオン/ラック連結…)とも呼ばれる、ステアリング機構の「人手による」部分(の全部又は一部)との両方において、ステアリング機構に影響を与える摩擦を表す。
【0103】
これらの理由から、操作力信号Cactionは、図4に示されているように、一方の、運転者によってステアリングホイールに与えられるステアリングホイールトルクCsteering wheelを表すステアリングホイールトルク信号と、他方の、モータトルク信号CMotとの和によって、好ましくは構成される。
【0104】
有利なことに、ステアリングホイールトルクCsteering wheelの信号及びモータトルク信号CMotは、ほとんどのパワーステアリングシステムにおいていつでも既に利用可能であり、このため容易に利用することができ、このことは本発明の実現をより簡単にするということに、気付かれるであろう。
【0105】
ステアリングホイールトルクCsteering wheelの信号は、ステアリングホイールとステアリングコラムとの間に位置するトーションバーの弾性変形を測定する磁気トルクセンサのような、適切なステアリングホイールトルクセンサによって得られるステアリングホイールトルクCsteering wheelの測定値に、例えば対応し得る。
【0106】
そのようなステアリングホイールトルクCsteering wheelの信号は、有利なことに、前記トーションバーの下流に現れる全摩擦、特に、ラックと、ステアリングコラムの下方のセグメントに固定されたピニオンとの間の連結に生じる摩擦を考慮に入れることを可能にするであろう。
【0107】
この応用に適合するモータトルク信号CMotは、それに関する限り、以上で説明されたいかなる適切な手段によっても取得され得る。
【0108】
よって、モータトルク信号CMotが、(検出ステップ(a)の間に)ステアリングリバーサルを検出することのみではなく、(摩擦評価ステップ(d)の間に)低下の高さを定量化することを意図するときに、前記モータトルク信号CMotが単独で又はステアリングホイールトルク信号と組み合わされて用いられて総操作力信号Cactionを構成するという事実にかかわらず、前記モータトルク信号CMotは、好ましくはアシストモータ2に対してできる限り上流で収集され、よって、上述されたように、前記アシストモータに適用される設定値、又は前記アシストモータによって出力される電磁トルクの測定値で好ましくは構成されるであろうということに、気付かれるであろう。
【0109】
摩擦Fを求めるためには、「ステアリングリバーサル前の操作力値」と呼ばれる、ピーク開始時間tstart以前の第1参照時間t1において操作力信号によって取られた値Caction(t1)が何であったかを好ましくは求め、「ステアリングリバーサル後の操作力値」と呼ばれる、ピーク終了時間tend以降の第2参照時間t2において操作力信号によって取られた値Caction(t2)が何であったかを求め、ステアリングリバーサル後の操作力値Caction(t2)とステアリングリバーサル前の操作力値Caction(t1)との間の差の計算、すなわち、
ΔCaction = |Caction(t2)-Caction(t1)|
から、摩擦力を求める。
【0110】
より詳しくは、検討される時点において(すなわち、検討されるステアリングリバーサル4の時において)ステアリング操作に影響を与える摩擦力Fの値は、前述のヒステリシス現象を考慮して、ステアリングリバーサルの後の操作力値とステアリングリバーサルの前の操作力値との差の半分、すなわち、F=ΔCaction/2に等しいと考えられ得る。
【0111】
有利なことに、適切な、ノイズのある信号Signal(ここではモータトルク信号CMot)の時間微分を、前記微分から識別される、微分ピーク7の開始時間tstart及び終了時間tendを参照する時間参照とともに用いることにより、ステアリングリバーサル4が生じた瞬間を正確に検出し、よって、操作力信号の低下の特徴の評価の信頼性及び精度を向上させることができる。
【0112】
ピーク開始時間及び終了時間から計算され、実際のステアリングリバーサル4(したがって操作力信号の低下)をできるだけ近くで囲む、参照時間t1,t2における操作力を測定することによって、本発明は、前記ステアリングリバーサルの直前及び直後における操作力Cactionの正確な値が何であったかを正確に求めることを、可能にする。
【0113】
測定におけるいかなる遅延又は近似も、そうでなければ前記低下から時間的に遠すぎる測定点において測定されるので低下の実際の高さを表していない操作信号の値を考慮することにつながり得るが、このようにして避けられる。
【0114】
よって本発明は、ステアリングホイールの角位置をモニターすることに基づく摩擦推定方法をこれまでは害していた、誤差及び遅延の源をかなり削減するので、摩擦Fを受動的かつ信頼できるやり方で求めることを可能にする。
【0115】
実装の1つの可能性によると、これは参照時間t1,t2の使用にかかわらず適用され得るのであるが、第1参照時間t1をピーク開始時間tstartに一致させる(すなわち、t1=tstartに設定する)ことに任意に決定し、及び/又は、相補的に又は代替として、第2参照時間t2をピーク終了時間tendに一致させる(すなわち、t2=tendに設定する)ことに決定することが、可能であり得る。
【0116】
しかし、第2の可能性によると、第1参照時間t1はピーク開始時間tstartより厳密に前で好ましくは選択され(t1<tstart)、前記第1参照時間は前記ピーク開始時間より進み値δ1だけ先行しており(すなわち、t1=tstart-δ1)、及び/又は、第2参照時間t2はピーク終了時間より厳密に後で選択され(t2>tend)、前記第2参照時間は前記ピーク終了時間より遅れ値δ2だけ遅れている(すなわち、t2=tend+δ2)。
【0117】
参考までに、進み値δ1は好ましくは20msと100msとの間に含まれ、例えば50ms(50ミリ秒)に実質的に等しい。
【0118】
参考までに、遅れ値δ2は好ましくは20msと100msとの間に含まれ、例えば50ms(50ミリ秒)に実質的に等しい。
【0119】
言い換えると、時間間隔[t1; t2]は、好ましくは拡大され、これは、好ましくは進み側だけではなく遅れ側も含む両側において、特に前記間隔が、検討される信号(ここでは操作力信号)の低下の高さΔCactionが計算される間隔であるときに、行われる。
【0120】
ピーク開始時間及び終了時間によって規定される総間隔に対してのこの測定間隔の拡大は、好ましくは少なくとも10ms(遅延に加えて進みにおいても)、好ましい例では50ms(遅延に加えて進みにおいても:δ1=δ2=50ms)であり、第1参照時間t1と第2参照時間t2との間の経過時間(つまり、t2-t1)が確実に、遷移4’に対応する信号の(完全な)低下の実際の長さ以上である(かつ、適切であれば、わずかに長い)ようにすることを可能にする。
【0121】
これにより、摩擦を求めることに適用される場合には、ステアリングリバーサル4に起因する、従って摩擦に起因する信号の低下の期間全体が確実にカバーされるようにすることができる。
【0122】
よって、本発明による方法によると、ステアリングリバーサルの特徴を示す、前記信号の低下の高さ全体に対応する操作力信号の両極端の値が、前記低下の一部分が切り取られることなく、うまく測定されることを保証することが可能になる。
【0123】
更に、しかし、進み値δ1及び遅れ値δ2は、第1参照時間t1及び第2参照時間t2が遷移領域の時間的にすぐの近傍(低下の領域の近傍)、前記遷移の「境界」領域にとどまるように、選択された、所定の最大拡大閾値より比較的低いままである。境界領域において、関係する信号の値は、遷移の極限において前記信号によって取られる値に対してほとんど一定に保たれる(境界領域における前記値の変遷は、低下の高さの10%以下、5%以下、又は1%以下の振幅範囲にさえ、例えば含まれる)。
【0124】
ここで、摩擦の反転に起因する低下の領域の外側において、操作力信号Cactionだけではなくモータトルク信号CMotも、前記低下の期間中より遙かにゆっくり変動するという事実のため、提供される拡大が小さいことにより、(進みδ1及び遅れδ2は、典型的には200msより、又は100msより短くさえあり、好ましくはそれぞれ50msに等しい)、第1参照時間t1及び第2参照時間t2を低下の領域の時間的にすぐの近傍、前記低下の「境界」領域に保つことが可能になる。境界領域において、関係する信号の値は、低下の極限において前記信号によって取られる値に対してほとんど一定に保たれる。
【0125】
よって、第1参照時間t1及び第2参照時間t2、換言すると摩擦に起因する低下に対して早すぎでも遅すぎでもない時点、において取られる信号値の測定値は、前記低下の両極限において考慮される操作力Cactionの(又はモータトルクCMotの)実際の値を正確に反映する。
【0126】
結局、本発明による方法によると、摩擦に特有の寄与、そして他ならぬ摩擦に特有の寄与の全体に対応する低下の高さを実質的に測定することが従って可能になる。
【0127】
したがって、前記方法は、有利なことに、関心のある時点における、ステアリングシステムに影響を与える実際の摩擦Fの、信頼できる、正確な、定期的にアップデートされる測定値を、ほとんどリアルタイムで得ることを可能にするのに対し、既知の方法は、摩擦の非常に粗い近似に基づいていて、摩擦の前もって確立された理論的モデルから作られており、そのようなことはできなかった。
【0128】
本発明の実施の変形例によると、ピーク開始時間tstart及びピーク終了時間tendから第1参照時間t1及び第2参照時間t2をそれぞれ計算する代わりに、例えばピーク開始時間、ピーク終了時間、又は前記ピーク開始及び終了時間の中央に位置する平均時間に対応する、単一のピーク時間によって微分ピーク7を特徴付け、前記単一のピーク時間の両側に第1及び第2参照時間t1,t2を任意に設定することが、これはこのように定義された間隔において信号の低下の期待される特性継続期間を含むようにするためであるが、可能であり得るということに気付くであろう。例えば、第1参照時間が単一のピーク時間の100ms前に位置し、第2参照時間が前記単一のピーク時間の200ms後に位置すると考えることが可能であり得る。
【0129】
もちろん、参照時間t1,t2のこのような選択は、上述の摩擦の評価の一般原則には影響しない。
【0130】
操作力信号Caction(及び/又はモータトルク信号CMot)の記録期間は、ステアリングの管理のために、より詳しくは検討される時点における摩擦の評価のために役立つ前記信号の値をメモリに一時的に保持することを可能にするが、第1及び第2参照時間t1,t2のために使用された定義にかかわらず、もちろん、第1及び第2参照時間t1,t2の間に含まれる時間間隔[t1; t2]の幅より大きく、より詳しくは、遅れδ2及び進みδ1によって拡大される低下の期待される最大期間より大きいであろう。
【0131】
更に、変動閾値Speak、及び/又は、適切な場合には、ピーク保持の最小継続期間閾値d0及び/又は進みδ1及び遅れδ2の値が、ステアリングホイールの角加速度
に応じて好ましくは調整される。
【0132】
言い換えると、本発明によると、ステアリングホイールの角加速度
のような様々なパラメータに応じて、ステアリングリバーサルの検出及び/又は摩擦の評価に用いられる設定を動的にアップデートすることが可能になり、これは本方法の信頼性及び反応性をそれぞれの場合において最適化するためである。
【0133】
実際、例えば、ステアリングホイールの操作が速いほど、モータトルク信号CMotの(操作力信号Cactionの)低下の期間は遙かに短くなり、その勾配(その時間微分)は遙かに大きくなるということが、容易に理解されるであろう。
【0134】
よって、例えば、速度ゼロ点の両側においてステアリングホイールの比較的大きな角加速度が生じるように、運転者がステアリング操作をすばやく行い、その直後に反対の方向にステアリング操作を行うときには、これはステアリングリバーサルに対応するのであるが、急峻な勾配を有する低下を検出する可能性を保ちながら、ノイズをより除去するために、変動閾値Speakの値を増加させることが可能である。
【0135】
代替として又は相補的に、ステアリングホイールの角加速度が増加するときに、比較的短いが、それでもステアリングリバーサルを表すであろうピークを除外する危険を冒さないように、ピーク保持の最小継続期間閾値d0を小さくすることも可能であるし、望ましくさえある。
【0136】
同様に、代替として又は相補的に、この状況において、第1及び第2参照時間t1,t2を規定するために用いられる、進みδ1及び/又は遅れδ2の値を減少させることを考えることも可能であり、低下の高さを推定することを可能にする操作力信号Cactionの極値が第1及び第2参照時間t1,t2において取得される。
【0137】
実際、ステアリングホイールの操作がより速いときには低下の期間がより短くなるので、低下の全体を、低下の高さを切り捨ててしまう危険を冒すことなく、より狭い時間領域の枠で囲むことが可能である。
【0138】
有利なことに、ピーク保持の最小継続期間閾値d0及び/又は進み値δ1及び/又は遅れ値δ2を減少させると、本方法の実行を促進し、よってその反応性を、その信頼性に悪影響を与えることなく、最適化することが可能になる。
【0139】
より一般的には、車両の実際の状況及び/又はステアリングホイールの力学に応じて遷移4’の検出及び/又は摩擦の評価をリアルタイムで適合させることにより、本方法の実行を最適化すること、及び摩擦の評価(後者)を特に応用のきくものにすることが可能になる。
【0140】
更に、本発明による方法は、検査ステップ(c)を好ましくは含む。このステップでは、ここでは図4の検査モジュール12において、以下の条件、すなわち、ステアリングホイールの回転速度
が所定のステアリングホイール速度閾値
以下である、ステアリングホイールの角加速度
が所定のステアリングホイール加速度閾値
以下である、ステアリングホイールの方向角θsteering wheelの関数としての車両のヨーレート
又は車両の横加速度γの変遷が実質的に線形領域にある、のうちの1つ以上の実施条件が満たされているかが、好ましくは累積的に、検査される。
【0141】
ステアリングホイールの回転速度
に関係する条件は、ゼロに近いステアリングホイール速度閾値
以下、例えば約5deg/sでなければならないが、推定されたステアリングリバーサルの時点においてステアリングホイールの角速度がゼロの近傍にあることを保証することによって、車両の実際の状況がステアリングリバーサルと矛盾しないことを立証することを可能にする。
【0142】
実のところ、実際のステアリングリバーサルの間に、ステアリングホイール速度は、ステアリングホイールのリバーサルポイント(先端)において必ずゼロになる。反対に、ステアリングホイールの速度のゼロクロスがないことは、ステアリングリバーサルの状態にはないことを示す。
【0143】
ステアリングホイールの角加速度に関係する条件は、それに関する限り、ステアリングホイールの加速度、従ってステアリング機構の部材の動きの加速度が小さい、例えば100deg/s2未満であるときにのみ、すなわち、慣性力が存在しないか無視できるときにのみ、摩擦の評価を行うことを可能にする。
【0144】
よって、ステアリング機構のストレス状態がモータトルクCMotを測定することにより及び/又は操作力Cactionを測定することにより認識され定量化されるように、摩擦の評価中に、ステアリング機構のストレス状態が、摩擦現象、しかも摩擦現象のみをよく表し、慣性力の出現によって歪曲されない、ということを確実にする。
【0145】
ステアリングホイールの方向角θsteering wheelに依存する、車両のヨーレート
の変遷、言い換えると車両の横加速度γの変遷の線形性についての条件、すなわち、車両の横方向の運動の線形性に関する条件は、車両が粘着力を失った状態にはないこと、より詳しくはオーバーステア状態にもアンダーステア状態にもないことを保証することに本質がある。
【0146】
実のところ、粘着力の喪失(路面へのタイヤのグリップ力の喪失)は、車輪及びタイロッドがラックに、アシストモータに抗して与える抵抗力の低下を引き起こし、それはその結果アシストモータによって出力される力を対応して減少させる。この減少は、内部摩擦Fの働きとは関係がなく、よってそれらの摩擦Fの評価を歪曲し得る。
【0147】
線形性の条件を検査するためには、さまざまな実際の状況(乾燥した天気、ぬれた路面等)において、対応する最大許容ヨーレート又は対応する最大許容加速度をステアリングホイールの複数のさまざまな所定の角位置のうちのそれぞれの角位置に関連づける、テスト行動中に確立された経験則を用いることが、特に、可能であり得る。
【0148】
したがって、検討される時点において測定されたステアリングホイールの角位置(すなわち、アシストモータのシャフトの角位置)において、車両のヨーレート
又は横加速度γ(例えば電子スタビリティコントロールシステムESP、又はブレーキアシストシステムであるアンチロックブレーキシステムによって提供される)が最大許容値未満であれば、線形領域に、すなわち、摩擦の信頼できる評価を可能にする実際の状況にあると考えることができる。
【0149】
そのような検査の冗長性により、疑わしい場合を除外し、よって摩擦の信頼できる評価のみを保持することが可能になる。これは、影響を与え得るさまざまな不安定性を考慮すると、本発明による方法のロバストネスを大いに向上させる。
【0150】
もちろん、本発明は、本発明による方法の実行を可能にするフィルタ6,8,9(図4において点線で示されている)のようなものにも関係する。
【0151】
前記フィルタの特徴及び有利な点は、本方法の説明から、必要な変更を加えて推定され得る。
【0152】
よって、本発明は、ノイズのある信号における遷移を検出するためのフィルタにも関係する。前記フィルタ6,8,9は、ノイズのある信号Signalを収集し、その時間微分∂Signal/∂tを求めるように構成された微分モジュール6を、一方では、所定の変動閾値Speakより大きな微分ピーク7の出現を検出するためノイズのある信号の前記時間微分を前記変動閾値Speakと比較するために、他方では、前記変動閾値Speakを超えた後にノイズのある信号の時間微分∂Signal/∂tが前記変動閾値Speakより上に保たれる、前記ピークの保持継続期間dpeakを求めるために、かつ、ピークの前記保持継続期間dpeakが所定の最小継続期間閾値d0に達する又はこれを超えるか否かを検査するために、構成された選択的フィルタリングモジュール8,9とともに、有する。
【0153】
好ましくは、最小継続期間閾値d0は、ノイズのある信号に影響を与えるノイズの最大の特性半周期以上に選択される。
【0154】
好ましくは、最小継続期間閾値d0は、検出されるべき遷移4’の特性継続期間より厳密に小さく選択される。
【0155】
好ましくは、最小継続期間閾値d0は、30msと40msとの間に含まれる。
【0156】
更に、前述のモジュールのそれぞれ、すなわち、制御則3、微分6、選択的フィルタリング8,9、摩擦評価11、検査12に利用するためのモジュールのそれぞれは、電子回路、電子ボード、計算機(コンピュータ)、プログラマブルコンピュータ、又は他のいかなる等価な装置で構成されていてもよい。
【0157】
前述のモジュールのそれぞれは、その電子部品の配線の配置に基づいて、物理的制御構造を有していてもよいし、及び/又は、好ましくは、コンピュータプログラミングによって規定される仮想制御構造を有していてもよい。
【0158】
前記モジュールは、パワーステアリング管理モジュールを構成するように、必要に応じて同一のケーシング内で、全体として又は部分的にグループ化されていてもよい。
【0159】
もちろん、本発明は、コンピュータによって読み取り可能であって、コンピュータによって読まれたときに、本発明による方法を実行することを可能にするコンピュータプログラムコード要素を収容するいかなるデータ媒体にも、関係する。
【0160】
最後に、本発明による方法は、パワーステアリングシステムにおいて一般的に利用可能な信号を利用するが、既に存在する多くのパワーステアリングシステムを、その計算機を単に再プログラムすることによって改良することを含め、全てのパワーステアリングシステムに容易に一般化され得るということに気付かれるであろう。
【0161】
もちろん、本発明は上で説明された実施形態には限定されず、当業者は特に、前述の特徴のうち、いずれかを、他のものから分離したり、自由に組み合わせたり、それらの等価物に置き換えることすら可能である。
【0162】
よって、フィルタ6,8,9を使用することは、好ましくはパワーステアリングの管理に関連するのであるが、特に、車両の1つ以上の管理信号の処理をするいかなる応用にも拡張され得る。
図1
図2
図3
図4