(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446069
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】導電性の微小粒子
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20060101AFI20181217BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20181217BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20181217BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20181217BHJP
B22F 9/24 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B22F9/00 B
B22F1/00 L
H01B1/00 H
H01B1/22 A
!B22F9/24 F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-573182(P2016-573182)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2015081105
(87)【国際公開番号】WO2016125355
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-22333(P2015-22333)
(32)【優先日】2015年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110147
【氏名又は名称】トクセン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 字鎭
(72)【発明者】
【氏名】若▲崎▼ 俊
(72)【発明者】
【氏名】金盛 恭行
【審査官】
河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−013449(JP,A)
【文献】
特開2012−036481(JP,A)
【文献】
特開2012−041592(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0213592(US,A1)
【文献】
特開2012−021232(JP,A)
【文献】
特開2004−183010(JP,A)
【文献】
特開2012−092442(JP,A)
【文献】
特開2014−019899(JP,A)
【文献】
特開2014−196527(JP,A)
【文献】
特開2010−236039(JP,A)
【文献】
特開2007−084906(JP,A)
【文献】
特開2011−141973(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/077447(WO,A1)
【文献】
銀フレーク,トクセン工業株式会社,2018年10月,URL,http://www.tokusen.co.jp/images/51.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−9/00
H01B 1/00
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の微小粒子からなり、それぞれの粒子が、フレーク状であってかつ銀からなるコアと、このコアの表面に付着した有機物とを含む、粒子群であって、
上記コアが単結晶であり、
上記粒子群における銀の含有率が90質量%以上であり、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定された、累積50体積%粒子径D50が0.10μm以上0.50μm以下であり、累積95体積%粒子径D95が1.00μm以下であり、最大粒子径Dmaxが3.00μm以下である導電性の粒子群。
【請求項2】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定された累積10体積%粒子径D10が0.05μm以上である請求項1に記載の粒子群。
【請求項3】
BET比表面積が2.0m2/g以上である請求項1又は2に記載の粒子群。
【請求項4】
タップ密度TDが2.0g/cm3以上である請求項1から3のいずれかに記載の粒子群。
【請求項5】
上記微小粒子の厚みの平均値Taveが0.05μm以下である請求項1から4のいずれかに記載の粒子群。
【請求項6】
(1)多数の微小粒子からなり、それぞれの粒子が、フレーク状であってかつ銀からなるコアと、このコアの表面に付着した有機物とを含む、粒子群
及び
(2)溶媒
を含有しており、
上記コアが単結晶であり、
上記粒子群における銀の含有率が90質量%以上であり、
上記粒子群の、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定された、累積50体積%粒子径D50が0.10μm以上0.50μm以下であり、累積95体積%粒子径D95が1.00μm以下であり、最大粒子径Dmaxが3.00μm以下である導電性ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の微小粒子に関する。詳細には、本発明は、フレーク状でありその主成分が金属である微小粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のプリント基板の製造には、導電性ペーストが用いられる。このペーストは、金属を主成分とする微小な粒子、バインダー及び液状有機化合物(溶剤)を含んでいる。このペーストにより、電子部品同士を連結する配線のパターンが印刷される。印刷後のペーストは、加熱される。加熱により、微小金属粒子が隣接する他の微小金属粒子と焼結される。
【0003】
特開2007−254845公報には、材質が銀であり、フレーク状である粒子が開示されている。この粒子は、球状の微小粒子にビーズミルによる加工が施されることで、形成される。
【0004】
パターンの印刷法として、エッチング法、スキージ法及びインクジェット法が採用されている。
【0005】
エッチング法では、平板の上にペーストが塗布される。ペーストの一部は、マスクによって覆われる。露出したペーストにUVが照射され、ペーストが部分的に硬化する。マスクによって覆われたペーストは、硬化しない。この平板にエッチングが施されることで、硬化していないペーストが除去される。この除去により、平板の上にパターンが形成される。
【0006】
スキージ法では、平板に溝が形成される。この平板に、ペーストが塗布される。このペーストが、ドクターでスキージされる。スキージにより、溝以外の上に存在するペーストが除去される。溝にはペーストが残存し、パターンが形成される。
【0007】
インクジェット法では、ノズルからペーストが噴射される。このペーストが平板に付着し、パターンが得られる。
【0008】
いずれの印刷方法であっても、幅の狭い線が印刷されうるペーストが望まれている。換言すれば、ペーストには優れた印刷特性が必要である。ペーストは加熱されるので、ペーストには優れた熱伝導性も必要である。パターンは電子の通路なので、ペーストには優れた導電性も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−254845公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開2007−254845公報に開示された粉末の印刷特性、熱伝導性及び導電性は、充分ではない。本発明の目的は、微小粒子を含む粒子群の印刷特性、熱伝導性及び導電性の改良にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る粒子群は、多数の微小粒子を含んでいる。それぞれの微小粒子はフレーク状であり、その主成分は導電性金属である。この粒子群の累積50体積%粒子径D50は0.10μm以上0.50μm以下であり、累積95体積%粒子径D95は1.00μm以下であり、最大粒子径Dmaxは3.00μm以下である。粒子径D50、D95及びDmaxは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される。
【0012】
好ましくは、微小粒子の主成分は、銀又は銅である。
【0013】
好ましくは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定された粒子群の累積10体積%粒子径D10は、0.05μm以上である。
【0014】
好ましくは、粒子群のBET比表面積は、2.0m
2/g以上である。好ましくは、粒子群のタップ密度TDは、2.0g/cm
3以上である。
【0015】
好ましくは、微小粒子の厚みの平均値Taveは、0.05μm以下である。
【0016】
本発明に係る導電性ペーストは、
(1)フレーク状でありその主成分が導電性金属である多数の微小粒子を含む粒子群
及び
(2)溶媒
を含有する。この粒子群の、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定された、累積50体積%粒子径D50は0.10μm以上0.50μm以下であり、累積95体積%粒子径D95は1.00μm以下であり、最大粒子径Dmaxは3.00μm以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る粒子群は、多数の微小粒子を含む。この微小粒子は、極めて小さい。ペーストにおいて、この微小粒子は、充分に分散する。この微小粒子を含有するペーストは、印刷特性に優れる。
【0018】
微小粒子はフレーク状なので、印刷された後のペーストにおいて、微小粒子同士は大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのペーストは、加熱される時の熱伝導性が大きい。このペーストでは、短時間の加熱により、焼結が達成されうる。このペーストでは、低温での加熱により、焼結が達成されうる。
【0019】
焼結後のパターンでは、微小粒子同士は、大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのパターンは、電気を伝導しやすい。この微小粒子は、導電性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る粒子群に含まれる微小粒子が示された斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の微小粒子を含む粒子群が示された顕微鏡像である。
【
図3】
図3は、
図2の粒子群の累積カーブが示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0022】
図1には、微小粒子2が示されている。この微小粒子2は、フレーク状である。この微小粒子2は、いわゆるナノフレークである。多数の微小粒子2の集合が、粒子群である。
図2に、この粒子群の顕微鏡像が示されている。
【0023】
この微小粒子2の主成分は、導電性の金属である。典型的な金属として、金、銀、銅、酸化亜鉛及び酸化チタンが挙げられる。コストと導電性との観点から、銀及び銅が好ましく、銀が最も好ましい。
【0024】
微小粒子2が、金属以外の物質を含んでもよい。金属以外の物質として、有機物が挙げられる。有機物は、金属の表面に付着しうる。
【0025】
導電性の観点から、粒子群における金属の含有率は90質量%以上が好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
【0026】
この微小粒子2の典型的な用途は、導電性ペーストである。多数の微小粒子2と溶剤とが混合され、導電性ペーストが得られる。このペーストは、バインダー、分散剤等を含みうる。このペーストにより、平板の上にパターンが印刷されうる。典型的な印刷法は、前述のエッチング法、スキージ法及びインクジェット法である。
【0027】
微小粒子2がフレーク状なので、印刷された後のペーストにおいて、微小粒子2同士が大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのペーストは、加熱される時の熱伝導性が大きい。このペーストでは、短時間の加熱により、焼結が達成されうる。短時間の加熱では、電子部品や基板の損傷が生じにくい。このペーストでは、低温での加熱により、焼結が達成されうる。低温の加熱では、電子部品や基板の損傷が生じにくい。
【0028】
微小粒子2がフレーク状なので、焼結後のパターンでは、微小粒子2同士が大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのパターンは、電気を伝導しやすい。この粒子群は、導電性にも優れる。
【0029】
本発明では、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により、粒子群の累積カーブが求められる。
図3に、この累積カーブが示されている。
図3において、横軸は粒子径(μm)であり、縦軸は比率(%)である。この累積カーブは、堀場製作所社のレーザー回折式粒度分布計(LA−950V2)によって求められる。この累積カーブに基づき、累積10体積%粒子径D10、累積50体積%粒子径D50、累積95体積%粒子径D95、最大粒子径Dmax及び粒子径標準偏差σDが測定される。累積カーブが10体積%となる点の粒子径がD10であり、累積カーブが50体積%となる点の粒子径がD50であり、累積カーブが95体積%となる点の粒子径がD95である。最大である微小粒子2の粒子径が、Dmaxである。測定の条件は、以下の通りである。
モード:散乱式、湿式(水)
レーザー光:80−90%
LED光:70−90%
【0030】
この粒子群では、粒子径D50は0.10μm以上0.50μm以下であり、粒子径D95は1.00μm以下であり、粒子径Dmaxは3.00μm以下である。換言すれば、この粒子群は、極めて小さな粒子を多く含み、かつ大きな粒子を含んでいない。この粒子群から得られたペーストは、配線の幅の小さなパターン(つまり微細パターン)の印刷に適している。
【0031】
粒子径D50及びD95が上記範囲内である粒子群では、粒度分布曲線がシャープである。換言すれば、この粒子群では、粒子径のばらつきが小さい。従ってこの粒子群は、過小な粒子を多くは含まない。この粒子群は、スキージでの充填率に優れる。さらにこの粒子群は、拭き取りやすい。換言すれば、この粒子群は取り扱い性に優れる。
【0032】
印刷特性の観点から、粒子径D50は0.46μm以下がより好ましく、0.40μm以下が特に好ましい。取り扱い性の観点から、粒子径D50は0.20μm以上がより好ましく、0.30μm以上が特に好ましい。
【0033】
印刷特性の観点から、粒子径D95は0.90μm以下がより好ましく、0.80μm以下が特に好ましい。粒子径D95は、0.50μm以上が好ましい。
【0034】
印刷特性の観点から、粒子径Dmaxは2.80μm以下がより好ましく、2.60μm以下が特に好ましい。
【0035】
粒子径D10は、0.05μm以上が好ましい。粒子径D10が0.05μm以上である粒子群は、スキージでの充填率に優れる。さらにこの粒子群は、拭き取りやすい。換言すれば、この粒子群は取り扱い性に優れる。取り扱い性の観点から、粒子径D10は0.10μm以上がより好ましく、0.15μm以上が特に好ましい。粒子径D10は、0.30μm以下が好ましい。
【0036】
粒子径の標準偏差σDは、1.00μm以下が好ましい。標準偏差σDが1.00μm以下である粒子群は、印刷特性、導電性及び取り扱い性に優れる。この観点から、標準偏差σDは0.50μm以下がより好ましく、0.25μm以下が特に好ましい。
【0037】
微小粒子2の平均厚みTaveは、0.05μm以下が好ましい。平均厚みTaveが0.05μm以下である微小粒子2を含むペーストでは、微小粒子2同士が大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのペーストは、加熱される時の熱伝導性が大きい。このペーストでは、短時間の加熱により、焼結が達成されうる。短時間の加熱では、電子部品や基板の損傷が生じにくい。このペーストでは、低温での加熱により、焼結が達成されうる。低温の加熱では、電子部品や基板の損傷が生じにくい。さらに、このペーストから焼結によって得られたパターンでは、微小粒子2同士が大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのパターンは、電気を伝導しやすい。熱伝導性及び導電性の観点から、平均厚みTaveは0.04μm以下が特に好ましい。粒子群が容易に製造されうるとの観点から、平均厚みTaveは0.01μm以上がより好ましく、0.02μm以上が特に好ましい。無作為に抽出された100個の微小粒子2の厚みT(
図1参照)が平均されることで、平均厚みTaveが算出される。それぞれの厚みTは、SEM写真に基づいて、目視で計測される。
【0038】
粒子群のアスペクト比(D50/Tave)は、5以上30以下が好ましい。アスペクト比(D50/Tave)が5以上である粒子群は、導電性及び熱伝導性に優れる。この観点から、アスペクト比(D50/Tave)は8以上が好ましく、10以上が特に好ましい。アスペクト比(D50/Tave)が30以下である粒子群は、容易に製造されうる。この観点から、アスペクト比(D50/Tave)は25以下がより好ましく、20以下が特に好ましい。
【0039】
粒子群のBET比表面積は、2.0m
2/g以上が好ましい。BET比表面積が2.0m
2/g以上である粒子群を含むペーストでは、微小粒子2同士が大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのペーストは、加熱される時の熱伝導性が大きい。このペーストでは、短時間の加熱により、焼結が達成されうる。短時間の加熱では、電子部品や基板の損傷が生じにくい。このペーストでは、低温での加熱により、焼結が達成されうる。低温の加熱では、電子部品や基板の損傷が生じにくい。さらに、このペーストから焼結によって得られたパターンでは、微小粒子2同士が大きな接触面積にて重なり合う。従ってこのパターンは、電気を伝導しやすい。熱伝導性及び導電性の観点から、BET比表面積は2.5m
2/g以上がより好ましく、3.0m
2/g以上が特に好ましい。粒子群が容易に製造されうるとの観点から、BET比表面積は4.0m
2/g以下が好ましい。BET比表面積は、「JIS Z 8830:2013」の規格に準拠して測定される。
【0040】
粒子群のタップ密度TDは、2.0g/cm
3以上が好ましい。タップ密度TDが2.0g/cm
3以上である粒子群により、導電性に優れたパターンが得られる。この観点から、タップ密度TDは2.5g/cm
3以上がより好ましく、3.0g/cm
3以上が特に好ましい。タップ密度TDは、4.0g/cm
3以下が好ましい。タップ密度TDは、「JIS Z 2512:2012」の規格に準拠して測定される。
【0041】
微小粒子2は、前述の通り、金属の部分と、この金属の部分の表面に付着した有機物とを含みうる。金属の部分は、いわばコアである。このコアは、全体として単結晶であることが好ましい。このコアを有する微小粒子2の表面は、平滑である。この微小粒子2は、印刷特性、導電性及び熱伝導性に優れる。
【0042】
以下、主成分が銀である微小粒子2の製造方法の一例が説明される。この製造方法では、液体であるキャリヤーに、分散剤によって銀化合物が分散させられる。典型的な銀化合物は、シュウ酸銀である。シュウ酸銀は、原料である銀化合物の水溶液と、シュウ酸化合物(oxalate compound)との反応によって得られる。反応によって得られた沈殿物から不純物が除去されて、シュウ酸銀の粉末が得られる。
【0043】
環境への悪影響が少ないとの観点から、キャリヤーとして、親水性の液体が用いられる。好ましいキャリヤーの具体例として、水及びアルコールが挙げられる。水及びアルコールの沸点は、低い。水及びアルコールが用いられた分散液では、容易に圧力が高められ得る。好ましいアルコールは、エチルアルコール、メチルアルコール及びプロピルアルコールである。キャリヤーに2種以上の液が併用されてもよい。
【0044】
シュウ酸銀は、実質的には、キャリヤーに溶解しない。シュウ酸銀は、キャリヤーに分散させられる。超音波処理により、分散が促進されうる。分散剤によっても、分散が促進されうる。この分散液のPHが調整される。PHの調整は、酸の添加によってなされうる。
【0045】
この分散液が、圧縮空気によって加圧された状態で、撹拌されつつ加熱される。加熱により、下記式に示された反応が起こる。換言すれば、シュウ酸銀が熱で分解する。
Ag
2C
2O
4 = 2Ag + 2CO
2
この分散液の中に、銀が粒子として析出する。この銀粒子の表面に、シュウ酸銀、キャリヤー又は分散剤に由来する有機化合物が付着する。この有機化合物は、銀粒子と化学的に結合している。換言すれば、微小粒子2は、銀と、有機化合物とを含む。微小粒子2の主成分は、銀である。微小粒子2の質量に占める銀の質量は、99.0%以上が好ましく、99.5%以上が特に好ましい。微小粒子2が、有機化合物を含まなくてもよい。
【0046】
累積50体積%粒子径D50が0.10μm以上0.50μm以下であり、累積95体積%粒子径D95が1.00μm以下であり、最大粒子径Dmaxが3.00μm以下である粒子群を得る手段として、
(1)分散液におけるシュウ酸銀の濃度を所定の範囲に設定する
(2)特定の分散剤を用いる
(3)加熱時の圧力を所定の範囲に設定する
(4)撹拌速度を所定の範囲に設定する
(5)分散液のPHを適正にする
等が挙げられる。
【0047】
分散液におけるシュウ酸銀の濃度は、0.1M以上1.0M以下が好ましい。濃度が上記範囲内である分散液から、粒子径D50、D95及びDmaxが小さな粒子群が得られうる。この観点から、この濃度は0.2M以上0.7M以下が特に好ましい。
【0048】
好ましい分散剤は、グリコール系分散剤である。グリコール系分散剤を含む分散液から、粒子径D50、D95及びDmaxが小さな粒子群が得られうる。この分散液から、アスペクト比(D50/Tave)が大きな粒子群が得られうる。さらに、この分散液から生成した粒子群は、溶媒中に充分に分散する。特に好ましい分散剤は、ポリエチレングリコールである。
【0049】
シュウ酸銀の分解反応のときの雰囲気の圧力は、大気圧よりも大きいことが好ましい。この雰囲気での分解反応により、粒子径D50、D95及びDmaxが小さな粒子群が得られうる。この観点から、この圧力は2kgf/cm
2以上が好ましい。この圧力は、10kgf/cm
2以下が好ましい。
【0050】
シュウ酸銀の分解反応のときの撹拌速度は、200rpm以上が好ましい。200rpm以上の速度での撹度により、粒子径D50、D95及びDmaxが小さな粒子群が得られうる。さらに、200rpm以上の速度での撹度により、アスペクト比(D50/Tave)が大きな粒子群が得られうる。これらの観点から、撹拌速度は300rpmが特に好ましい。撹拌速度は、1000rpm以下が好ましい。
【0051】
分散液に、PH調整剤が添加されうる。分散液のPHは、2.0以上5.0以下が好ましい。PHが上記範囲内である分散液から、粒子径D50、D95及びDmaxが小さな粒子群が得られうる。この観点から、PHは2.5以上4.0以下が特に好ましい。PH調整剤として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、フッ化水素酸、硝酸、塩酸、硫酸及びリン酸が例示される。不純物の原因である元素(F、N、P、Cl等)を含まないとの理由から、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸が好ましい。
【0052】
シュウ酸銀の分解反応のときの分散液の温度は、100℃以上が好ましい。100℃以上である分散液では、反応が短時間で完了する。この観点から、この温度は120℃以上が特に好ましい。エネルギーコストの観点から、この温度は150℃以下が好ましい。
【0053】
前述の通り、多数の微小粒子2、溶剤等が混合され、導電性ペーストが得られる。溶剤として、脂肪族アルコール類、脂環族アルコール類、芳香脂肪族アルコール類及び多価アルコール類のようなアルコール類;(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル及び(ポリ)アルキレングリコールモノアリールエーテルのようなグリコールエーテル類;(ポリ)アルキレングリコールアセテートのようなグリコールエステル類;(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素のような炭化水素類;エステル類;テトラヒドロフラン及びジエチルエーテルのようなエーテル類;並びにジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)のようなアミド類が含まれる。2種以上の溶剤が併用されてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0055】
[実施例1]
1Lの蒸留水に50gの硝酸銀を溶解させて、第一の溶液を得た。一方、1Lの蒸留水に22.2gのシュウ酸を溶解させて、第二の溶液を得た。第一の溶液と第二の溶液とを混合し、シュウ酸銀を含む混合液を得た。この混合液から、不純物を除去した。1Lの混合液に3gのポリエチレングリコール(分散剤)を添加し、超音波を加えつつ、30分間撹拌した。これにより、シュウ酸銀を分散させた。この分散液に適量の酢酸を添加し、PHを3に調整した。この分散液を、オートクレーブに投入した。この分散液を、0.5MPaの圧力で加圧した。この分散液を300rpmの速度で撹拌しつつ、130℃まで加熱した。この温度下で30分間の撹拌を行い、銀を主成分とする微小粒子を含む液体を得た。
【0056】
[実施例2]
酢酸に代えて蟻酸を分散液に添加してPHを4とし、分散液の温度を150℃とし、攪拌速度を350rpmとした他は実施例1と同様にして、微小粒子を含む液体を得た。
【0057】
[実施例3]
酢酸に代えてプロピオン酸を分散液に添加してPHを5とし、反応前の加圧を行わず、反応時の温度を150℃とした他は実施例1と同様にして、微小粒子を含む液体を得た。
【0058】
[比較例1]
酢酸を添加しないことでPHを7とし、反応前の加圧を行わず、反応時の温度を120℃とし、反応時の撹拌速度を150rpmとした他は実施例1と同様にして、微小粒子を含む液体を得た。
【0059】
[比較例2]
銀からなり球状である微小粒子を、ボールミルにてフレーク状に加工した。
【0060】
[印刷特性の評価]
多数の微小粒子、バインダー及び分散剤を混合して、導電性ペーストを得た。この導電性ペーストを用い、線幅が3μm、10μm及び60μmである配線を印刷した。印刷状況を顕微鏡で確認した。良好な配線が印刷された場合を「Good」とし、良好な配線が印刷されなかった場合を「Bad」とした。この結果が、下記の表1に示されている。
【0061】
[導電性の評価]
線幅が60μmである配線を、下記の条件で加熱した。加熱後の配線の電気比抵抗を測定した。この結果が、下記の表1に示されている。電気比抵抗が大きすぎて測定できなかった場合を、表1において、Over Rangeと表している。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示されるように、各実施例の微小粒子から得られた配線は、印刷特性及び導電性に優れる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る微小粒子は、印刷回路用ペースト、電磁波シールドフィルム用ペースト、導電性接着剤用ペースト、ダイボンディング用ペースト等に用いられうる。