(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸収体と、この吸収体の表側を覆うトップシートと、吸収体の裏側を覆う液不透過性シートと、前記トップシートの両側部から起き上がる起き上がりギャザーとを有する吸収性物品において、
前記吸収体の側方に、前後方向に延びるサイドポケットが設けられており、
前記サイドポケットは、前記トップシートの側部上から前記サイドポケットの上方、外側及び下方を経て前記吸収体の裏側に達するサイドカバー部により囲まれた部分であり、
前記サイドカバー部における前記トップシートの側部上に位置する部分は、前記トップシートに接合されていない非接合部分と、この非接合部分の前後両側に位置する接合部分とを有しており、
前記非接合部分における前記サイドカバー部と前記トップシートとの隙間が、前記トップシート上及び前記サイドポケットに開口しており、
前記起き上がりギャザーは、前記サイドカバー部における前記非接合部分及び接合部分から突出するものであり、
前記サイドカバー部における前記サイドポケットの上方に位置する部分の少なくとも幅方向外側に、細長状のサイドカバー弾性部材が前後方向に沿って設けられており、
前記サイドカバー部における前記サイドカバー弾性部材を有する部分がサイドカバー弾性部材の収縮力により前後方向に収縮しつつ、前記非接合部分及び接合部分よりも高く浮き上がるようになっている、
ことを特徴とする吸収性物品。
前記吸収体の裏側を覆う液不透過性シートが前記サイドカバー部に沿って前記吸収体の裏側から少なくとも前記サイドカバー弾性部材まで連続しているか、又は前記吸収体の裏側を覆う液不透過性シートとは別のカバー液不透過性シートが前記サイドカバー部に沿って前記吸収体の裏側を覆う液不透過性シートと重なる部分から少なくとも前記サイドカバー弾性部材まで連続している、
請求項1記載の吸収性物品。
前記サイドカバー部が、前記吸収体の裏側から前記サイドポケットの下方、外側及び上方を経て前記トップシートの側部まで連続する部分を有するシート材により形成されるとともに、
前記シート材は、前記非接合部分及び接合部分から突出する突出部分を有しており、この突出部分における前後方向の両端部は、倒伏状態で前記トップシートの側部表面に対して固定された倒伏部分となっており、前記突出部分における前記倒伏部分の間に位置する前後方向の中間部は非固定の自由部分となっており、この自由部分の少なくとも先端部に前後方向に沿う細長状のギャザー弾性部材が伸長状態で固定されており、前記起き上がりギャザーが、前記ギャザー弾性部材の収縮により前記自由部分が起き上がることによって形成される、
請求項1又は2記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、シートに孔を形成することなく、かつ簡素な構造でサイドポケットに排泄液を流入しやすくし、起き上がりギャザーを越えて排泄液が漏れることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は次記のとおりである。
<第1の態様>
吸収体と、この吸収体の表側を覆うトップシートと、吸収体の裏側を覆う液不透過性シートと、前記トップシートの両側部から起き上がる起き上がりギャザーとを有する吸収性物品において、
前記吸収体の側方に、前後方向に延びるサイドポケットが設けられており、
前記サイドポケットは、前記トップシートの側部上から前記サイドポケットの上方、外側及び下方を経て前記吸収体の裏側に達するサイドカバー部により囲まれた部分であり、
前記サイドカバー部における前記トップシートの側部上に位置する部分は、前記トップシートに接合されていない非接合部分と、この非接合部分の前後両側に位置する接合部分とを有しており、
前記非接合部分における前記サイドカバー部と前記トップシートとの隙間が、前記トップシート上及び前記サイドポケットに開口している、
ことを特徴とする吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
本態様では、吸収体の側方にサイドカバー部により囲まれたサイドポケットが設けられるとともに、サイドカバー部におけるトップシートの側部上に位置する部分に、トップシートに接合されていない非接合部分と、この非接合部分の前後両側に位置する接合部分とが設けられている。そして、非接合部分におけるサイドカバー部とトップシートとの隙間が、トップシート上及びサイドポケットに開口している。この結果、サイドカバー部に孔を形成することなく、非接合部分を設けるだけの簡素な構造で、トップシート上の排泄液の液位に関係なく、トップシート上の排泄液をサイドポケットに流入させることができる。サイドポケットに流入した排泄液は、隣接する吸収体により吸収されることとなる。
【0010】
<第2の態様>
前記サイドカバー部における前記サイドポケットの上方に位置する部分の少なくとも幅方向外側に、細長状のサイドカバー弾性部材が前後方向に沿って設けられており、
前記サイドカバー部における前記サイドカバー弾性部材を有する部分がサイドカバー弾性部材の収縮力により前後方向に収縮されている、
第1の態様の吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
サイドカバー部におけるサイドカバー弾性部材を有する部分が前後方向に収縮されていると、サイドカバー部の上側部分が下側部分に対して浮き上がり、サイドポケットが大きく確保されるとともに、トップシート上へのサイドポケットの開口も開きやすくなるため好ましい。
【0012】
<第3の態様>
前記吸収体の裏側を覆う液不透過性シートが前記サイドカバー部に沿って前記吸収体の裏側から少なくとも前記サイドカバー弾性部材まで連続しているか、又は前記吸収体の裏側を覆う液不透過性シートとは別のカバー液不透過性シートが前記サイドカバー部に沿って前記吸収体の裏側を覆う液不透過性シートと重なる部分から少なくとも前記サイドカバー弾性部材まで連続している、
第2の態様の吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
これにより、サイドポケット内の排泄液がサイドカバー部に浸透せず、サイドカバー部の防水性をしっかりと確保することができる。
【0014】
<第4の態様>
前記サイドカバー部が、前記吸収体の裏側から前記サイドポケットの下方、外側及び上方を経て前記トップシートの側部まで連続する部分を有するシート材により形成されるとともに、
前記シート材は、前記非接合部分及び接合部分から突出する突出部分を有しており、この突出部分により前記起き上がりギャザーが形成されている、
第1〜3のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
このように、サイドカバー部から起き上がりギャザーまでを連続するシート材により形成することにより、より簡素な構造となる。また、起き上がりギャザーの起き上がり作用により非接合部分におけるサイドカバー部とトップシートとの隙間が開口しやすいものとなる。
【0016】
<第5の態様>
前記非接合部分よりも裏側における少なくとも前記非接合部分と厚み方向に重なる位置に、開口弾性部材が前後方向に沿って設けられており、
少なくとも前記トップシートにおける前記非接合部分と厚み方向に重なる部分が開口弾性部材の収縮力により前後方向に収縮されている、
第1〜4のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
このような開口弾性部材を有すると、非接合部分においてトップシート側が前後方向に収縮して短くなり、サイドカバー部の前後方向の寸法が余るため、非接合部分におけるサイドカバー部とトップシートとの隙間が開口しやすいものとなる。
【0018】
<第6の態様>
前記非接合部分の前後方向の寸法は15〜100mmである、
第1〜5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
非接合部分の前後方向の寸法が短すぎると、非接合部分におけるサイドカバー部とトップシートとの隙間が狭くなりやすく、サイドポケットに排泄液が流入しにくくなるおそれがある。また、非接合部分の前後方向の寸法が長すぎると、サイドポケットの開口が外側に展開して、サイドポケットが小さくなったり、例えばパンツタイプ使い捨ておむつの場合、装着時に足先が非接合部分に引っ掛かりやすくなったりするおそれがある。よって、非接合部分の前後方向の寸法は上記範囲内とするのが好ましい。
【0020】
<第7の態様>
前後方向中間に、前記非接合部分が前後方向に間隔を空けて複数設けられている、
第1〜6のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
このように複数の非接合部分を設けることにより、非接合部分の前後方向の寸法(サイドポケットのトップシート上への開口の寸法に等しい)の合計を長くしつつ、サイドポケットの開口が外側に展開しにくくなり、例えばパンツタイプ使い捨ておむつの場合、装着時に足先が非接合部分に引っ掛かりやすくなるといった事態も発生しにくくなる。また、男女の排泄位置の違いや体勢によって局所的に大量の排泄液が流れた場合においても、広い範囲でサイドポケットに流入させることが可能となる。
【0022】
<第8の態様>
前記サイドポケットの内空の幅方向の寸法が5mm以上である、
第1〜7のいずれか1つの態様の吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
通常の場合、サイドポケットの幅方向の寸法はこの程度確保することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、シートに孔を形成することなく、かつ簡素な構造でサイドポケットに排泄液が流入しやすくなる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳説する。断面図における点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定なく使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0027】
図1〜
図10は、パンツタイプ使い捨ておむつの一例を示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する前外装体12F及び後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する後外装体12Bと、前外装体12Fから股間部を経て後外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bの内側に設けられた内装体200とを備えており、前外装体12Fの両側部と後外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール部12Aが形成されることにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が装着者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなる。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは装着者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁から後身頃Bのウエスト開口WOの縁までの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0028】
本形態のパンツタイプ使い捨ておむつは、サイドシール部12Aを有する前後方向範囲(ウエスト開口WOから脚開口LOの上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域Tと、脚開口LOを形成する部分の前後方向範囲(前身頃Fのサイドシール部12Aを有する前後方向領域と後身頃Bのサイドシール部12Aを有する前後方向領域との間)として定まる中間領域Lとを有する。胴周り領域Tは、概念的にウエスト開口の縁部を形成する「ウエスト部」Wと、これよりも下側の部分である「ウエスト下方部」Uとに分けることができる。通常、胴周り領域T内に幅方向WDの伸縮応力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側の境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなる。これらの前後方向長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15〜40mm、ウエスト下方部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、ここが装着者の脚を入れる部位となる。この結果、展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつは、全体としてほぼ砂時計形状をなしている。
【0029】
(外装体)
外装体12F,12Bは、
図15及び
図16に示すような、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間を通り連続する一体的な外装体12とすることもできるが、
図1〜
図13に示す形態では、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する部分である前外装体12Fと、後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する部分である後外装体12Bとからなり、前外装体12F及び後外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものとなっている。この離間距離12dは例えば150〜250mm程度とすることができる。
【0030】
外装体12F,12Bは、胴周り領域Tと対応する前後方向範囲である胴周り部を有する。また、本形態では、前外装体12Fよりも後外装体12Bの方が前後方向寸法が長くなっており、前外装体12Fには中間領域Lと対応する部分を有していないが、後外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有している。図示しないが、前外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けたり、鼠径カバー部は設けるものの臀部カバー部は設けない形態としたり、前外装体12F及び後外装体12Bの両方に中間領域Lと対応する部分を設けなくても良い。また、図示形態では、臀部カバー部Cの下縁は、前外装体12Fの下縁と同様、幅方向WDに沿う直線状に形成しているが、幅方向外側に向かうにつれてウエスト開口側に位置するようになる曲線とすることもできる。
【0031】
臀部カバー部Cの側縁の前後方向寸法は適宜定めればよいが、長すぎると、側縁の脚開口LO側の角がひらひらして外観及び装着感が悪化するおそれがあるため20mm以下であると好ましい。
【0032】
外装体12F,12Bは、
図3に示されるように、後述する弾性部材15〜18の外側及び内側にそれぞれ位置する外側シート層12S及び内側シート層12Hがホットメルト接着剤や溶着等の接合手段により接合されたものである。外側シート層12Sを形成するシート材及び内側シート層12Hを形成するシート材は、共通の一枚のシート材とする他、個別のシート材とすることもできる。すなわち、前者の場合、外装体の一部又は全部において、ウエスト開口WOの縁(股間側の縁としても良い)で折り返された一枚のシート材の内側の部分及び外側の部分により内側シート層12H及び外側シート層12Sがそれぞれ形成される。なお、前者の形態では、シート材の資材数が少ないという利点があり、後者の形態では内側シート層12H及び外側シート層12Sを貼り合わせる際に位置ずれしにくいという利点がある。図示形態は後者に相当するものであり、内側シート層12Hを形成するシート材はウエスト開口WOの縁までしか延在していないが、外側シート層12Sを形成するシート材は、内側シート層12Hのシート材のウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体200のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。
【0033】
外側シート層12S及び内側シート層12Hに用いるシート材としては、公知の素材を特に限定なく使用できるが、不織布が好ましい。不織布としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などからなる不織布を使用することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。不織布を用いる場合、その目付けは10〜30g/m
2程度とするのが好ましい。
【0034】
また、外装体12F,12Bの総目付けは20〜60g/m
2程度であるのが好ましい。
【0035】
(伸縮領域・非伸縮領域)
外装体12F,12Bには、装着者の胴周りに対するフィット性を高めるために、外側シート層12S及び内側シート層12H間に弾性部材15〜18が設けられ、弾性部材15〜18の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、自然長の状態では外側シート層12S及び内側シート層12Hが弾性部材の収縮に伴って収縮し、皺又は襞が形成されており、弾性部材15〜18の長手方向に伸長すると、外側シート層12S及び内側シート層12Hが皺なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材15〜18としては、糸ゴム等の細長状弾性部材(図示例)のほか、帯状、網状、フィルム状等、公知の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15〜18としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0036】
外装体12F,12Bにおける外側シート層12S及び内側シート層12Hの貼り合わせや、その間に挟まれる弾性部材15〜18の固定には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。外装体12F,12B全面を強固に固定すると柔軟性を損ねるため、弾性部材15〜18の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段により細長状弾性部材15〜18の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布して両シート層12S,12H間に挟むことにより、当該細長状弾性部材15〜18の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、両シート層12S,12Hへの細長状弾性部材15〜18の固定と、両シート層12S,12H間の固定とを行う構造となっている。弾性部材15〜18は伸縮領域における伸縮方向の両端部のみ、外側シート層12S及び内側シート層12Hに固定することができる。
【0037】
図示形態の弾性部材15〜18についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト部弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト部弾性部材17としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150〜400%、特に220〜320%程度であるのが好ましい。また、ウエスト部Wは、その前後方向LDのすべてに同じ太さのウエスト部弾性部材17を用いたり、同じ伸長率にしたりする必要はなく、例えばウエスト部Wの上部と下部で弾性部材17の太さや伸長率が異なるようにしてもよい。
【0038】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるウエスト下方部弾性部材15,18が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられている。
【0039】
ウエスト下方部弾性部材15,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200〜350%、特に240〜300%程度であるのが好ましい。
【0040】
また、後外装体12Bの臀部カバー部Cにおける外側シート層12S及び内側シート層12H間には、細長状弾性部材からなるカバー部弾性部材16が取り付けられている。
【0041】
カバー部弾性部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、1本、又は前後方向に間隔を空けて複数本設けるのが好ましく、これによる臀部カバー部Cの幅方向WDの伸長率は150〜300%、特に180〜260%であるのが好ましい。
【0042】
前外装体12Fに鼠径カバー部を設ける場合には同様にカバー部弾性部材を設けることができる。
【0043】
図示形態のウエスト下方部Uや臀部カバー部Cのように、吸収体56を有する前後方向範囲に弾性部材15,16,18を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内外接合部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされる。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわたり伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。
【0044】
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、内側シート層12Hと、外側シート層12Sとの間に、弾性部材15〜17,18を供給し、弾性部材15,16,18を伸縮領域A2における少なくとも伸縮方向の両端部でホットメルト接着剤を介して固定し、非伸縮領域A1となる領域では固定せず、非伸縮領域A1となる領域において、弾性部材15,16,18を幅方向中間の1か所で加圧及び加熱により切断するか、又は弾性部材15,16,18のほぼ全体を加圧及び加熱により細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。前者の場合、
図4に示すように、非伸縮領域A1には、伸縮領域A2の弾性部材15,16,18から連続する切断残部が不要弾性部材19として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることとなり、後者の場合、図示しないが、伸縮領域A2の弾性部材15,16,18から連続する切断残部、及び両方の伸縮領域A2の弾性部材15,16,18と連続しない弾性部材の切断片が不要弾性部材19として単独で自然長まで収縮した状態で、外側シート層12S及び内側シート層12H間に残ることになる。
【0045】
(カバー不織布)
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前外装体12F及び後外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、前外装体12Fと内装体200との間から、後外装体12Bと内装体200との間にかけて、内装体200の裏面を覆うカバー不織布13を備えている。カバー不織布13は、表裏に貫通する孔を有しない無孔不織布、表裏に貫通する孔が間隔を空けて多数設けられた有孔不織布等、適宜の不織布を用いることができる。
【0046】
カバー不織布13の繊維の種類や、繊維の結合(交絡)の加工方法は特に限定されず、外装
体12F,12Bの素材と同様のものを適宜選択することができるが、エアスルー不織布を用いることが望ましく、その場合の目付けは20〜40g/m
2、厚みは0.3〜1.0mmであると好ましい。
【0047】
カバー不織布13の前後方向範囲は特に限定されず、
図2、
図3及び
図8に示すように、内装体200の前端から後端までの全体にわたり前後方向LDに延在していてもよく、
図8に示すように、前外装体12Fと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置から後外装体12Bと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置まで前後方向LDに延在していてもよい。
図8に示す形態の場合、カバー不織布13と前外装体12Fとの重なり部分の前後方向長さ13y、及びカバー不織布13と後外装体12Bとの重なり部分の前後方向長さ13yは適宜定めることができるが、通常の場合それぞれ20〜40mm程度とすることができる。
【0048】
カバー不織布13の幅方向範囲は、液不透過性シート11の裏面露出部分を隠しうる範囲とされる。このため、図示形態では、後述するサイドカバー部71の基端の間に液不透過性シート11が露出するため、一方のサイドカバー部71の基端部の裏側から他方のサイドカバー部71の基端部の裏側までの幅方向範囲を覆うようにカバー不織布13が設けられている。
【0049】
(内外接合部)
内装体200の裏面と外装体12F,12Bとは、内外接合部201,202において接合される。内外接合部201,202における固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。
【0050】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、
図3〜
図6に示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担う本体部である。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から装着者の身体に接するように延び出た起き上がりギャザー60を示している。
【0051】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0052】
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0053】
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
【0054】
トップシート30は、裏側部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示形態では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0055】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
【0056】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17〜80g/m
2が好ましく、25〜60g/m
2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0057】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0058】
中間シート40は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示形態では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0059】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている
液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができるが、後述するカバー不織布13とのホットメルト接着剤を介した接着時に十分な接着強度を得るため、樹脂フィルムを用いるのが望ましい。
【0060】
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
【0061】
また、液不透過性シート11の内側、特に吸収体56側面に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータを設けることができる。
【0062】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0063】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m
2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m
2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、
2.54cm当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0064】
吸収体56は長方形形状でも良いが、
図1及び
図7等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると好ましい。
【0065】
また、吸収体56の寸法は排尿口位置の前後左右にわたる限り適宜定めることができるが、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
【0066】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0067】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定なく用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0068】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0069】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0070】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和する。
【0071】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。例えば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0072】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。
【0073】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻付け、かつその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0074】
(サイドポケット)
図5及び
図6に示すように、吸収体56の側方には、前後方向LDに延びるサイドポケット70が設けられている。サイドポケット70は、トップシート30の側部上からサイドポケット70の上方、外側及び下方を経て吸収体56の裏側に達するサイドカバー部71により囲まれた部分である。そして、
図4〜
図6に示すように、サイドカバー部71におけるトップシート30の側部上に位置する部分は、トップシート30に接合されていない非接合部分72と、この非接合部分72の前後両側に位置し、トップシート30に接合された接合部分73とを有しており、非接合部分72におけるサイドカバー部71とトップシート30との隙間74が、トップシート30上及びサイドポケット70に開口している。
図9及び
図10は装着状態を示している。この結果、サイドカバー部71に孔を形成することなく、非接合部分72を設けるだけの簡素な構造で、トップシート30上の排泄液の液位に関係なく、トップシート30上の排泄液をサイドポケット70に流入させることができる。サイドポケット70に流入した排泄液は、隣接する吸収体56により吸収されることとなる。
【0075】
サイドポケット70の内空の寸法は適宜定めることができるが、幅方向WDの寸法70wは5mm以上、特に5〜40mmであることが好ましく、前後方向LDの寸法は吸収体56の全長の80〜100%程度であることが好ましい。
【0076】
図示例のように、非接合部分72は前後方向LDの中間、特に股間部に設けられていることが好ましい。また、非接合部分72は一つのみ設けるだけでもよいが、
図4に示すように、非接合部分72は前後方向LDに間隔を空けて複数設けられていると好ましい。複数の非接合部分72を設けることにより、非接合部分72の前後方向LDの寸法72y(サイドポケット70のトップシート30上への開口の寸法に等しい)の合計を長くしつつ、サイドポケット70の開口が外側に展開しにくくなり、例えばパンツタイプ使い捨ておむつの場合、装着時に足先が非接合部分72に引っ掛かりやすくなるといった事態も発生しにくくなる。
【0077】
非接合部分72の寸法は適宜定めることができるが、非接合部分72の前後方向LDの寸法72yは15〜100mmであるのが好ましい。非接合部分72の前後方向LDの寸法72yが短すぎると、非接合部分72におけるサイドカバー部71とトップシート30との隙間74が狭くなりやすく、サイドポケット70に排泄液が流入しにくくなるおそれがある。また、非接合部分72の前後方向LDの寸法72yが長すぎると、サイドポケット70の開口が外側に展開して、サイドポケット70が小さくなったり、例えばパンツタイプ使い捨ておむつの場合、装着時に足先が非接合部分72に引っ掛かりやすくなったりするおそれがある。よって、1つの非接合部分72の前後方向LDの寸法72yは上記範囲内、特に30〜100mmであることが好ましく、非接合部分72を複数有する場合、非接合部分72の前後方向LDの寸法72
yの合計は45〜100mmであることが好ましい。
【0078】
他方、図示例のように、サイドカバー部71におけるサイドポケット70の上方に位置する部分の少なくとも幅方向WDの外側に、細長状のサイドカバー弾性部材75が前後方向LDに沿って設けられており、サイドカバー部71におけるサイドカバー弾性部材75を有する部分が前後方向LDにサイドカバー弾性部材75の収縮力により収縮されているのは好ましい形態である。サイドカバー弾性部材75は省略することもできるが、サイドカバー弾性部材75が設けられていると、
図9及び
図10に示すようにサイドカバー部71の上側部分が下側部分に対して浮き上がり、サイドポケット70が大きく確保されるとともに、トップシート30上へのサイドポケット70の開口も開きやすくなる。サイドカバー弾性部材75としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。サイドカバー弾性部材75の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。
【0079】
また、図示例のように、非接合部分72よりも裏側における少なくとも非接合部分72と厚み方向に重なる位置に、開口弾性部材76が前後方向LDに沿って設けられており、少なくともトップシート30における非接合部分72と厚み方向に重なる部分が開口弾性部材76の収縮力により前後方向LDに収縮されているのも好ましい形態である。図示例では、サイドカバー部71における吸収体56よりも裏側の部分におけるシート間に、開口弾性部材76が設けられているが、吸収体56よりも表面側、例えばトップシート30と吸収体56との間に開口弾性部材76を設けることもできる。このような開口弾性部材76を有すると、非接合部分72においてトップシート30側が前後方向LDに収縮して短くなり、サイドカバー部71の前後方向LDの寸法が余るため、非接合部分72におけるサイドカバー部71とトップシート30との隙間74が開口しやすいものとなる。
【0080】
サイドカバー部71は単一のシート材により形成してもよいが、一部又は全体が複数のシート材の積層構造となっていてもよい。特に、図示例のように、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11とは別のカバー液不透過性シート77がサイドカバー部71に沿って吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11の側部と重なる部分から少なくともサイドカバー弾性部材75まで(好ましくは接合部分73まで)連続しているのは一つの好ましい形態である。このカバー液不透過性シート77の遮断作用により、サイドポケット70内の排泄液がサイドカバー部71に浸透せず、サイドカバー部71の防水性をしっかりと確保することができる。この場合、カバー液不透過性シート
77の外面全体を不織布からなるサイドカバーシート78で被覆することにより、サイドカバー部71の外面を布のような肌触りとすることができる。サイドカバーシート78に用いる不織布としては、スパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じて
シリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0081】
また、
図11及び
図12に示すように、二つ折りした不織布からなるサイドカバーシート78の間にカバー液不透過性シート77を挟み、カバー液不透過性シート77全体を被覆することもできる。
【0082】
また、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11とは別にカバー液不透過性シート77を設けるのではなく、
図13及び
図14に示すように、吸収体56の裏側を覆う液不透過性シート11がサイドカバー部71に沿って吸収体56の裏側から少なくともサイドカバー弾性部材75まで(好ましくは接合部分73まで)連続していてもよい。
【0083】
(起き上がりギャザー)
起き上がりギャザー60は、いわゆる横漏れを防止するために設けられているものであり、一般に立体ギャザーと呼ばれている。起き上がりギャザー60は、
図9及び
図10に示すように、トップシート30の両側部に沿って前後方向LDの全体にわたり延在し、装着者の身体表面に接するようにトップシート30の両側部から起き上がるものである。図示例の
起き上がりギャザー60は全体として幅方向WD中央側に起立するものであるが、付け根側部分が幅方向WD中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分が幅方向WD外側に向かって斜めに起立する公知の形態とする等、適宜の変更が可能である。
【0084】
図示例では、サイドカバー部71が、吸収体56の裏側からサイドポケット70の下方、外側及び上方を経てトップシート30の側部まで連続する部分を有するサイドカバーシート78により形成されるとともに、このサイドカバーシート78が、非接合部分72及び接合部分73から突出する突出部分66を有しており、この突出部分66により起き上がりギャザー60が形成されている。このように、サイドカバー部71から起き上がりギャザー60までを連続するシート材により形成することにより、より簡素な構造となる。また、起き上がりギャザー60の起き上がり作用により非接合部分72におけるサイドカバー部71とトップシート30との隙間74が開口しやすいものとなる。
【0085】
図示例についてより詳細に説明すると、この起き上がりギャザー60では、サイドカバー部71を構成するサイドカバーシート78の突出部分66が、先端となる部分で幅方向WDに折り返されて二つに折り重ねられている。突出部分66は、前後方向LD両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67となっている。また、これら倒伏部分67の間に位置する前後方向LD中間部は非固定の自由部分68とされ、この自由部分68の少なくとも先端部におけるシート間に前後方向LDに沿う細長状のギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0086】
以上のように構成された起き上がりギャザー60では、ギャザー弾性部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分68とされているため、自由部分68のみが
図9及び
図10に示すように身体側に当接するように起立する。
【0087】
図示例では、サイドカバー部71のカバー液不透過性シート77又は吸収体56の裏側に位置する液不透過性シート11が起き上がりギャザー60の突出部分66まで延びていないが、突出部分66の一部、例えば基端側まで延ばすこともできる。
【0088】
起き上がりギャザー60の自由部分68に設けられるギャザー弾性部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。ギャザー弾性部材63の配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。ギャザー弾性部材63の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。
【0089】
起き上がりギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用途の場合は、例えば
図3に示すように、起き上がりギャザー60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向WD長さ)W2は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、起き上がりギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する部分の離間距離W1は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。大人用途の場合、起き上がりギャザー60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向WD長さ)W2は20〜60mm、特に30〜55mmであるのが好ましい。また、起き上がりギャザー60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する部分の離間距離W1は110〜190mm、特に120〜150mmであるのが好ましい。
【0090】
起き上がりギャザー60の構造は特に限定されず、サイドカバー部71とは別の部材を取り付けることにより形成することもできる。
【0091】
他方、サイドカバー部71及び起き上がりギャザー60における層間の貼り合わせや、層間に挟まれるサイドカバー弾性部材75及びギャザー弾性部材63の固定には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ただし、層間の全体を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、サイドカバー弾性部材75及びギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示形態では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりサイドカバー弾性部材75及びギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してサイドカバー部71及び起き上がりギャザー60における層間に挟むことにより、当該サイドカバー弾性部材75及びギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、サイドカバー弾性部材75及びギャザー弾性部材63の固定と、層間の固定とを行う構造となっている。
【0092】
同様に、サイドカバー部71に内蔵されるカバー液不透過性シート77とサイドカバーシート78との固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0093】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0094】
・「前後方向(縦方向)」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
【0095】
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0096】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
【0097】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAX ME−500)でゲル強度を測定する。
【0098】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0099】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:
0.098N/cm
2、及び加圧面積:2cm
2の条件下で自動測定する。
【0100】
・吸水量は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0101】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0102】
・「展開状態」とは、収縮や弛みなく平坦に展開した状態を意味する。
【0103】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0104】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。