特許第6446087号(P6446087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6446087-フラックス組成物 図000029
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446087
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】フラックス組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20181217BHJP
   C22C 9/01 20060101ALN20181217BHJP
   C22C 9/04 20060101ALN20181217BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20181217BHJP
   C22C 18/04 20060101ALN20181217BHJP
   C22C 18/02 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   B23K35/363 H
   !C22C9/01
   !C22C9/04
   !C22C21/00 D
   !C22C18/04
   !C22C18/02
【請求項の数】3
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2017-84376(P2017-84376)
(22)【出願日】2017年4月21日
(62)【分割の表示】特願2012-236580(P2012-236580)の分割
【原出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2017-148871(P2017-148871A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英敏
(72)【発明者】
【氏名】久富 裕二
(72)【発明者】
【氏名】山下 尚希
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−523163(JP,A)
【文献】 特開2010−075965(JP,A)
【文献】 特開2010−075966(JP,A)
【文献】 特開2004−042086(JP,A)
【文献】 特開平07−227695(JP,A)
【文献】 特開2014−083583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
C22C 9/01
C22C 9/04
C22C 18/02
C22C 18/04
C22C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と、(B)フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末(アルカリ金属はK又はCsである。)及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末(アルカリ金属はK又はCsである。)のうちの1種又は2種以上と、(C)Si、Cu及びZnのうちの1種又は2種以上の金属元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末及びZn粉末の金属粉末のうちの1種又は2種以上と、からなり、(A)の含有量が50質量%以上であることを特徴とするアルミニウム部材又はアルミニウム合金部材のフラックスろう付けに用いられるフラックス組成物。
【請求項2】
平均粒径が80μm以下であることを特徴とする請求項記載のアルミニウム部材又はアルミニウム合金部材のフラックスろう付けに用いられるフラックス組成物。
【請求項3】
請求項1又は2いずれか1項記載のアルミニウム部材又はアルミニウム合金部材のフラックスろう付けに用いられるフラックス組成物と、有機樹脂バインダーとの混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム部材又はアルミニウム合金部材のフラックスろう付に用いられるフラックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム製自動車用熱交換器においては、車両エンジンの燃費向上及びコストダウンのために、軽量化が求められ、熱交換器のチューブ等の構成材料の薄肉化が必要となっている。しかし、材料の薄肉化に伴って、アルミニウム合金部材の穴あき腐食による冷媒漏れが発生する期間が短くなってしまうため、材料の薄肉化と耐食性の確保の両立が重要な課題となる。
【0003】
例えば自動車用熱交換器のコンデンサーでは、冷媒の流れる通路を構成するチューブに、断面形状が扁平形状の押出多穴管を用いている。このチューブにおいては、外周面にKZnFを塗布してろう付することにより、ZnとAlの置換反応によりKAlFが生成され、アルミニウム合金の表面酸化皮膜を破壊すると共に、Znを生成し、アルミニウム合金部材の表面にZn拡散層を形成して耐食性の向上を図ることができる(特許文献1)。すなわち、KZnFは、アルミニウム合金部材に塗布され、ろう付加熱されるときに、約550℃でアルミニウム合金部材表面のAlと反応し、ろう付に一般的に使用される非腐食性フラックスと同成分であるKAlFやKAlF等のフルオロアルミン酸カリウムと、Znに分解する。これにより、分解により生成したZnが、アルミニウム合金部材の表面に拡散してZn拡散層を形成し、フルオロアルミン酸カリウムがアルミニウム合金部材の表面の酸化皮膜を除去して、ろう材とアルミニウム合金部材とに濡れを生じさせて、アルミニウム合金部材が接合される。
【0004】
このZn拡散層は、チューブを構成するアルミニウム合金部材より自然電位が卑となり、ガルバニック作用による犠牲陽極効果により、アルミニウム合金部材よりもZn拡散層の方を優先的に腐食させて、チューブの穴あき腐食を防止するようにしている。また、KZnFはZn溶射よりもZn拡散層のZn濃度を均一にすることができるため、溶射のようにチューブ材表面だけでなく、溶射粉がチューブの周囲に飛散することが無く、作業環境の汚れを改善できるとともに、塗布量の低減を図ることができる。
【0005】
ところが、KZnFは、ろう付時にろう付炉内の酸素濃度が高い場合には正常に機能しなくなることがあり、酸化皮膜が除去されないため溶融したろう材が塗れ広がらず、フィレットが未形成となることがある。また、高い酸素濃度でKZnFを用いてろう付をする場合、ろう付時にろう付炉内の酸素と反応したKZnFから生成された厚い酸化皮膜に覆われたZn及び融点の高いKAlFがアルミニウム合金部材の表面に残渣として残存し、アルミニウム合金部材の表面を黒色に変色させ、外観不良を生じることがある。
【0006】
また、KZnFを湿度の高い場所で保管した場合には、KZnFが劣化し、ろう付時に正常に機能しなくなり、酸化皮膜が除去されないため、溶融したろう材が濡れ広がらず、フィレットが未形成となる場合がある。
【0007】
そのため、上記のような高湿度での保管条件とならないように、保管場所に除湿設備を設置することが求められる。
【0008】
しかしながら、上記方法では、除湿設備を常時稼動させなければならず、電気代及び頻
繁な設備メンテナンスが必要となり、高コストとなる。
【0009】
また、KZnFは、溶融したろう材の流動に影響されやすく、ろう材がフィンへ流動しフィレットを形成する際に伴い、KZnFも同時に移動し、耐食性が必要となるフィレット−フィレット間のチューブ表面のZn濃度が減少する一方、フィレットのZn濃度が高くなり優先的に腐食し、早期のフィン剥がれを起こし易くなる。
【0010】
そこで、このような不具合を改善するために、例えば、KZnFと非腐食性フラックス(KAlF、KAlF等)を混合して用いる方法が提案されている(特許文献2)。
【0011】
その内容はろう付時の酸素濃度が高い状態であっても変質し難く、酸化皮膜を除去するための非腐食性フラックスを、アルミニウム合金部材の表面と反応し、酸化皮膜を除去し、Zn拡散層を形成するKZnFを混合して加熱することにより、ろう材の融点より前にフラックス混合物を濡れ広がらせ、フィレット−フィレット間のZn拡散層のZn濃度を均一にするというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61−293699号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−255755号(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献2のような混合フラックスを用いた場合でも、高酸素濃度雰囲気中や湿度の高い雰囲気中でろう付した場合には、ろう付不良や変色の問題を引き起こすことがあった。
【0014】
従って、本発明の目的は、高酸素濃度雰囲気及び湿度の高い雰囲気のいずれの雰囲気中で、ろう付しても、ろう付不良や変色の問題を起こすことがないフラックス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、フルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩を特定の割合以上含有するフラックス組成物を、フラックスとして用いてろう付加熱を行えば、高酸素濃度雰囲気及び湿度の高い雰囲気のいずれの雰囲気中でも、ろう付不良を起こさず、良好なZn拡散層を形成させ、且つ、変色の問題を起こさないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明(1)は、(A)下記一般式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と、(B)フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末(アルカリ金属はK又はCsである。)及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末(アルカリ金属はK又はCsである。)のうちの1種又は2種以上と、(C)Si、Cu及びZnのうちの1種又は2種以上の金属元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末及びZn粉末の金属粉末のうちの1種又は2種以上と、からなり、(A)の含有量が50質量%以上であることを特徴とするアルミニウム部材又はアルミニウム合金部材のフラックスろう付けに用いられるフラックス組成物を提供するものである。
【0022】
また、本発明()は、(1)のアルミニウム部材又はアルミニウム合金部材のフラックスろう付けに用いられるフラックス組成物と、有機樹脂バインダーとの混合物を提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高酸素濃度雰囲気及び湿度の高い雰囲気のいずれの雰囲気中で、ろう付加熱を行っても、ろう付不良や変色の問題を起こすことがないフラックス組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ろう付性評価試験における試験材料の組み付け方法を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明において、(A)は、下記一般式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末である。
【0026】
(A)一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末は、アルミニウム合金部材の表面に塗布され、ろう付加熱されることにより、ろう付け加熱温度より低い温度で、ZnとMAlF、MAlF、MAlF等のフルオロアルミン酸アルカリ金属塩(MはK又はCs)とに分解する。そして、分解により生成したZnは、アルミニウム合金部材中に拡散して、Zn拡散層を形成する。Zn拡散層が形成されることにより、アルミニウム合金部材の穴あき腐食による冷媒漏れに対する耐食性が確保される。また、分解により生成したMAlF等のフルオロアルミン酸アルカリ金属塩は、フラックスとして作用し、アルミニウム合金部材の表面の酸化皮膜を除去する機能を発揮する。
【0027】
一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩の具体例としては、KZnAlF、KZnAlF、KZnAlF、KZnAl、CsZnAlF、CsZnAlF、CsZnAlF、CsZnAl等が挙げられる。
【0028】
(A)は、1種の一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩であってもよいし、2種以上の一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩の組み合わせであってもよい。
【0029】
本発明において、(B)は、フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末のうちの1種又は2種である。つまり、(B)は、フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末のうちのいずれか一方又は両方である。
【0030】
(B)は、(A)との混合状態で、アルミニウム合金部材の表面に塗布され、ろう付加熱されることにより、フラックスとして作用し、アルミニウム合金部材の表面の酸化皮膜を除去する機能を発揮する。
【0031】
フルオロアルミン酸アルカリ金属塩の具体例としては、例えば、KAlF、KAlF、KAlF、CsAlF、CsAlF、CsAlF等が挙げられる。(B)に係るフルオロアルミン酸アルカリ金属塩としては、1種のフルオロアルミン酸アルカリ金属塩であってもよいし、2種以上のフルオロアルミン酸アルカリ金属塩であってもよい。
【0032】
フルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩の具体例としては、例えば、KZnF、KZnF、KZn、CsZnF、CsZnF、CsZn等が挙げられる。(B)に係るフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩としては、1種のフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩であってもよいし、2種以上のフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩であってもよい。
【0033】
(B)は、1種又は2種以上のフルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末であってもよいし、1種又は2種以上のフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末であってもよいし、1種又は2種以上のフルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末と1種又は2種以上のフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末の組み合わせであってもよい。
【0034】
本発明において、(C)は、アルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末及びZn粉末の金属粉末のうちの1種又は2種以上である。本発明において、(C)は、フラックスろう付により接合されるアルミニウム合金部材の特性向上、ろう材生成機能、犠牲陽極層形成機能、ろう材の融点低減機能等の特性の付与のために用いられる。(C)に係るアルミニウム合金は、Si、Cu及びZnのうちの1種又は2種以上の金属元素を合金成分として含有するアルミニウム合金である。(C)に係るアルミニウム合金中の各金属成分の含有量は、フラックス組成物に(C)を含有させることにより向上させる特性又は付与させる特性により、適宜選択される。
【0035】
本発明のフラックス組成物は、(A)下記一般式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末を含有し、(A)の含有量が50質量%以上であることを特徴とするフラックス組成物である。
【0036】
本発明のフラックス組成物中の(A)の含有量は、50質量%以上、好ましくは70質
量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲にあることにより、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱しても、安定してZn拡散層が形成され、アルミニウム合金部材の表面の酸化皮膜を除去するフラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらない。一方、フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲未満だと、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱すると、ろう付不良又は変色の問題が起こる。
【0037】
本発明の第一の形態のフラックス組成物(以下、本発明のフラックス組成物(1)とも記載する。)は、(A)下記一般式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末のみからなることを特徴とするフラックス組成物である。
【0038】
本発明のフラックス組成物(1)は、(A)前記一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末のみからなる。なお、(A)のみからなるとは、実質的に(A)だけであるということであり、不可避的に含まれる不純物の含有は許容される。
【0039】
(A)前記一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末は、アルミニウム合金の表面に塗布され、ろう付加熱されるときに、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中であっても、安定してZn拡散層を形成し、良好なフラックス特性を発揮し、ろう付不良及び変色の問題が起こらない。そのため、本発明のフラックス組成物(1)をフラックスとして用いることにより、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱しても、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらない。
【0040】
本発明のフラックス組成物(1)の平均粒径は、好ましくは80μm以下、特に好ましくは1〜50μmである。フラックス組成物の平均粒径が上記範囲にあることにより、フラックス組成物と、アルミニウム合金との反応が良好となり、また、酸素との化学反応を抑制する効果が高くなるので、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でも、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらないという効果が高くなる。
【0041】
本発明の第二の形態のフラックス組成物(以下、本発明のフラックス組成物(2)とも記載する。)は、(A)下記一般式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と、(A)以外のフラックス成分と、からなり、(A)の含有量が50質量%以上であることを特徴とするフラックス組成物である。
【0042】
本発明のフラックス組成物(2)は、(A)一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末及び(A)以外のフラックス成分のみからなる。なお、(A)及び(A)以外のフラックス成分のみからなるとは、実質的に(A)及び(A)以外のフラックス成分だけであるということであり、不可避的に含まれる不純物の含有は許容される。
【0043】
本発明のフラックス組成物(2)に係る(A)以外のフラックス成分としては、アルミ
ニウム合金の表面に存在する酸化皮膜を除去するフラックス機能有するものであれば、特に制限されず、本発明における(B)、KSiF等が挙げられる。
【0044】
本発明のフラックス組成物(2)中の(A)の含有量は、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲にあることにより、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱しても、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらない。一方、フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲未満だと、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱すると、ろう付不良又は変色の問題が起こる。
【0045】
本発明のフラックス組成物(2)の平均粒径は、好ましくは80μm以下、特に好ましくは1〜50μmである。フラックス組成物の平均粒径が上記範囲にあることにより、フラックス組成物と、アルミニウム合金との反応が良好となり、また、酸素との化学反応を抑制する効果が高くなるので、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でも、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらないという効果が高くなる。
【0046】
本発明の第三の形態のフラックス組成物(以下、本発明のフラックス組成物(3)とも記載する。)は、(A)下記一般式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と、(B)フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末のうちの1種又は2種以上と、からなり、(A)の含有量が50質量%以上であることを特徴とするフラックス組成物である。
【0047】
本発明のフラックス組成物(3)は、(A)一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と(B)フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末のうちの1種又は2種以上のみからなる。なお、(A)と(B)のみからなるとは、実質的に(A)及び(B)だけであるということであり、不可避的に含まれる不純物の含有は許容される。
【0048】
本発明のフラックス組成物(3)中の(A)の含有量は、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲にあることにより、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱しても、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらない。一方、フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲未満だと、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱すると、ろう付不良又は変色の問題が起こる。
【0049】
本発明のフラックス組成物(3)の平均粒径は、好ましくは80μm以下、特に好ましくは1〜50μmである。フラックス組成物の平均粒径が上記範囲にあることにより、フラックス組成物と、アルミニウム合金との反応が良好となり、また、酸素との化学反応を抑制する効果が高くなるので、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でも、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらないという効果が高くなる。
【0050】
本発明の第四の形態のフラックス組成物(以下、本発明のフラックス組成物(4)とも
記載する。)は、(A)下記一般式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と、(C)Si、Cu及びZnのうちの1種又は2種以上の金属元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末及びZn粉末の金属粉末のうちの1種又は2種以上と、からなり、(A)の含有量が、50質量%以上であることを特徴とするフラックス組成物である。
【0051】
本発明のフラックス組成物(4)は、(A)一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と(C)Si、Cu及びZnのうちの1種又は2種以上の金属元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末及びZn粉末の金属粉末のうちの1種又は2種以上のみからなる。なお、(A)と(C)のみからなるとは、実質的に(A)及び(C)だけであるということであり、不可避的に含まれる不純物の含有は許容される。
【0052】
本発明のフラックス組成物(4)中の(A)の含有量は、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲にあることにより、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱しても、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらない。一方、フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲未満だと、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱すると、ろう付不良又は変色の問題が起こる。
【0053】
本発明のフラックス組成物(4)は(C)を含有する。フラックス組成物に、(C)を含有させることにより、フラックスろう付により接合されるアルミニウム合金部材の特性を向上させることや、フラックスろう付により接合されるアルミニウム合金部材にろう材生成機能、犠牲陽極層形成機能、ろう材の融点低減機能等の特性を付与することが可能となる。例えば、Si元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、あるいは、これらの組み合わせを用いることにより、主として、ろう付する継ぎ手に形成されるフィレットに必要なろう材量を確保又は調整することができる。また、Cu元素を含有するアルミニウム合金粉末、Zn元素を含有するアルミニウム合金粉末、Zn粉末、Cu粉末、あるいは、これらの組み合わせを用いることにより、接合部材間の電位差を調整して犠牲陽極効果を確保することができる。また、ろう材の融点を低下させることができるため、ろう付け加熱温度を低くすることができる。また、Zn元素を含有するアルミニウム合金粉末、Zn粉末、あるいは、これらの組み合わせを用いることにより、接合部材の強度を向上させることができる。
【0054】
本発明のフラックス組成物(4)中の(A)の平均粒径は、好ましくは80μm以下、特に好ましくは1〜50μmである。フラックス組成物中の(A)の平均粒径が上記範囲にあることにより、(A)と、アルミニウム合金との反応が良好となり、また、酸素との化学反応を抑制する効果が高くなるので、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でも、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらないという効果が高くなる。
【0055】
また、本発明のフラックス組成物(4)の変形形態として、以下に示す本発明のフラックス組成物(4’)が挙げられる。本発明のフラックス組成物(4’)は、本発明のフラックス組成物(4)の(C)に代えて、(C’)Si、Cu、Zn、Sr、Bi及びGeのうちの1種又は2種以上の金属元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末、Zn粉末、Sr粉末、Bi粉末及びGe粉末の金属粉末のうちの1種又
は2種以上とするものである。Sr又はBiを用いることにより、ろうの流動性を向上させて、ろう付け性を向上させることができる。また、Geを用いることにより、アルミニウム合金部材との反応温度を低くできるので、ろう付け温度を調整することができる。
【0056】
本発明の第五の形態のフラックス組成物(以下、本発明のフラックス組成物(5)とも記載する。)は、(A)下記式(1):
ZnAl (1)
(式中、Mは、K又はCsである。w、x、y及びzは、正の整数であり、これらの最大公約数は1である。)
で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と、(B)フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末のうちの1種又は2種以上と、(C)Si、Cu及びZnのうちの1種又は2種以上の金属元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末及びZn粉末の金属粉末のうちの1種又は2種以上と、からなり、(A)の含有量が50質量%以上であることを特徴とするフラックス組成物である。
【0057】
本発明のフラックス組成物(5)は、(A)一般式(1)で表されるフルオロ亜鉛アルミン酸アルカリ金属塩粉末と(B)フルオロアルミン酸アルカリ金属塩粉末及びフルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩粉末のうちの1種又は2種以上と(C)Al粉末、Si粉末、Cu及びZnの金属粉末のうちの1種又は2種以上のみからなる。なお、(A)と(B)と(C)のみからなるとは、実質的に(A)、(B)及び(C)だけであるということであり、不可避的に含まれる不純物の含有は許容される。
【0058】
本発明のフラックス組成物(5)中の(A)の含有量は、50質量%以上、好ましくは70質量%以上である。フラックス組成物中の(A)の含有量が上記範囲にあることにより、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱しても、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらないという効果を奏する。
【0059】
本発明のフラックス組成物(5)は(C)を含有する。フラックス組成物に、(C)を含有させることにより、フラックスろう付により接合されるアルミニウム合金部材の特性を向上させることや、フラックスろう付により接合されるアルミニウム合金部材にろう材生成機能、犠牲陽極層形成機能、ろう材の融点低減機能等の特性を付与することが可能となる。
【0060】
本発明のフラックス組成物(5)中の(B)及び(C)の含有量は、(A)の含有量が上記範囲となる範囲で、適宜選択される。
【0061】
本発明のフラックス組成物(5)中の(A)及び(B)の平均粒径は、好ましくは80μm以下、特に好ましくは1〜50μmである。フラックス組成物中の(A)及び(B)の平均粒径が上記範囲にあることにより、(A)及び(B)と、アルミニウム合金との反応が良好となり、また、酸素との化学反応を抑制する効果が高くなるので、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でも、安定してZn拡散層が形成され、フラックス特性が良好になり、ろう付不良及び変色の問題が起こらないという効果が高くなる。
【0062】
また、本発明のフラックス組成物(5)の変形形態として、以下に示す本発明のフラックス組成物(5’)が挙げられる。本発明のフラックス組成物(5’)は、本発明のフラックス組成物(5)の(C)に代えて、(C’)Si、Cu、Zn、Sr、Bi及びGeのうちの1種又は2種以上の金属元素を含有するアルミニウム合金粉末、Al粉末、Si粉末、Cu粉末、Zn粉末、Sr粉末、Bi粉末及びGe粉末の金属粉末のうちの1種又
は2種以上とするものである。Sr又はBiを用いることにより、ろうの流動性を向上させて、ろう付け性を向上させることができる。また、Geを用いることにより、アルミニウム合金部材との反応温度を低くできるので、ろう付け温度を調整することができる。
【0063】
本発明のフラックス組成物の使用方法について説明する。先ず、本発明のフラックス組成物、あるいは、本発明のフラックス組成物及び有機樹脂バインダーを、水又は揮発性の溶剤に分散させて、スラリーとすることにより、本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料を作製する。次いで、得られるフラックス塗料を、アルミニウム合金部材の表面に塗布し、100〜200℃で乾燥させて、アルミニウム合金部材の表面に、本発明のフラックス組成物を塗布する。次いで、本発明のフラックス組成物が塗布されたアルミニウム合金部材を、570〜620℃でろう付加熱することにより、ろう付を行う。
【0064】
このように、本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料は、アルミニウム合金部材の表面に、本発明のフラックス組成物を塗布するために用いられる。
【0065】
本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料において、本発明のフラックス組成物が分散されている分散媒は、揮発性を有する有機溶剤、例えば、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン等又は水である。本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料中の本発明のフラックス組成物の含有量は、塗布方法、塗布量等により、適宜選択される。
【0066】
本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料は、有機樹脂バインダーを含有することができる。有機樹脂バインダーは、本発明のフラックス組成物をアルミニウム合金部材に塗布するときに、アルミニウム合金部材への本発明のフラックス組成物の密着性を向上させるために用いられる。
【0067】
有機樹脂バインダーは、500℃以下の分解温度を有し、且つ、ろう付性を阻害しない有機樹脂である。有機樹脂バインダーとしては、通常、フラックスろう付用の有機樹脂バインダーとして用いられるものであれば、特に制限されない。
【0068】
本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料を、アルミニウム合金部材の表面に塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、スプレー法、浸漬法、ロールコート法等の公知の手段が採用される。これらのうち、ロールコート法が、塗布安定性や処理能力が高い点で、好ましい。なお、そのようなロールコート法において、ロール表面材質や、コーターロール及びアプリケーションロールの正転、逆転等の塗布条件は、必要とされる塗膜厚さや表面素度等の要求に応じて、適宜に決定され、目的に合致したロール転写条件が選定される。
【0069】
本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料の塗布量は、適宜選択されるが、フラックス成分の塗布量で、好ましくは1〜50g/m、特に好ましくは5〜40g/mである。なお、フラックス成分とは、本発明のフラックス組成物(1)では(A)を指し、本発明のフラックス組成物(2)では(A)及び(A)以外のフラックス成分を指し、本発明のフラックス組成物(3)では(A)及び(B)を指し、本発明のフラックス組成物(4)では(A)を指し、本発明のフラックス組成物(5)では(A)及び(B)を指す。
【0070】
本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料の調製であるが、本発明のフラックス組成物と、有機樹脂バインダーとの混合物を、揮発性の有機溶剤又は水に分散させることによって、本発明のフラックス組成物を含有するフラックス塗料を調製することもできる。
【0071】
本発明のフラックス組成物を用いることにより、高酸素雰囲気中又は湿度が高い雰囲気中でろう付加熱しても、安定してZn拡散層を形成させることができ、フラックス特性を良好にすることができ、ろう付不良及び変色の問題を起こさせないことができ、また、濡れ広がり面積を大きくすることができ、均一なZn拡散層を形成させることができる。そして、本発明のフラックス組成物は、非腐食性フラックスとして、ろう付において好適に用いられ、主としてZn拡散層による犠牲防食効果により耐食性の向上を図る各種自動車用熱交換器のコンデンサー等のろう付接合に適用されるろう付用のフラックスとして用いられる。
【実施例】
【0072】
(実施例1及び比較例1)
<試験フラックス組成物>
フラックス組成物として、MZnAl単体粉末(含有量:100質量%)のアルミニウム板のろう付性試験を行うために、MZnAlの代表例として、KZnAlF、KZnAlF、KZnAlF、KZnAl、CsZnAlF、CsZnAlF、CsZnAlF、CsZnAlについて、表1に示す平均粒径に調節した各単体粉末(含有量:100質量%)を用意した。
表1にろう付性試験に用いたフラックス組成物の組成及び平均粒径を示す。
・平均粒径の調節
試験対象となる組成を有する金属塩を、ボールミルにて粉砕することにより、平均粒径の調節を行った。
・平均粒径の測定
試験対象となる粉末を、エタノールに分散させ、光透過型粒度分布計(レーザー回折/散乱法、堀場製作所製、型番LA−700)で測定した。なお、平均粒径は、体積粒度分布による積算50%(D50)の粒径である。
【0073】
<ろう付け性試験>
上記のフラックス組成物の粉末を同量の純水で希釈した後、アルミニウム合金2層クラッド板(寸法:1.0mm厚さ×25mm幅×60mm長さ、クラッド構成:ろう材成分4045、ろう材厚さ50μm、芯材成分A3003、芯材厚さ950μm)のろう材面に、バーコータで、フラックス成分の塗布量が20g/mとなるように塗布した。次いで、フラックス組成物を塗布した面が上になるように、アルミニウム合金2層クラッド板を水平にし、A3003−Oアルミニウム合金板(寸法:1.0mm厚さ×25mm幅×55mm長さ)を垂直にして、図1に示すように、固定治具で逆T字型に組み付けた。次いで、組み付け体を、平均酸素濃度が100ppm、露点が−40℃以下の窒素ガス雰囲気の炉内に挿入して600℃×3分のろう付加熱保持を行った。次いで、炉内で500℃以下になるまで冷却を行った後に炉外に搬出して試験片を取り出した。
【0074】
<ろう付性評価>
水平のアルミニウム合金2層クラッド板と垂直のA3003−Oアルミニウム合金板との継ぎ手部に形成されるフレットの接合率、フィレットの大きさ及び表面残渣の有無について、評価を行った。なお、接合率とは、水平板と垂直板にフィレットが形成されている長さL1と水平板と垂直板との接触長さL2との比をパーセント(%)で示したものである(接合率(%)=(L1/L2)×100)。また、フィレットの大きさについては、試験材を樹脂に埋め込み、接合部の拡大断面写真を撮影し、相対評価した。相対評価では、実施例1のAb1のフィレットの大きさを「大」、実施例1のAb2のフィレットの大きさを「中」、Ab2より小さいフィレットを「小」とし、評価対象が、どのフィレットの大きさに近いかで判定した。また、表面の残渣については、外観から目視で判断した。未反応フラックスの白色残渣とそれに伴う白色外観又は黒色残渣とそれに伴う黒変色が確
認された場合は、接合率が100%でも不良とした。また、ろう付後の表面がくすんだ白色であっても、明らかな残渣が確認されなければ実用上は問題が無いため、良品とした。評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、実施例1のいずれも、良好な結果であった。
【0077】
(実施例2及び比較例2)
<フラックス組成物>
フラックス組成物として、平均粒径を10μmに調節した、表2に示すKZnAlF、KZnAlF、KZnAlF、KZnAl、CsZnAlF、CsZnAlF、CsZnAlF、CsZnAlの各単体粉末(含有量:100質量%)を用意した。
また、比較フラックス組成物として、平均粒径を10μmに調節したKZnF単体粉末(含有量:100質量%)を用意した。
【0078】
<ろう付性試験>
炉内の平均酸素濃度を100ppmにすることに代えて、炉内の平均酸素濃度を表2に示す濃度とすること以外は、実施例1及び比較例1と同様に行った。
【0079】
<ろう付性評価>
実施例1及び比較例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2に示すように、実施例2のいずれも、ろう付加熱時の雰囲気の酸素濃度が高くても、良好な結果であった。なお、Ac3、Bc3、Dc3、Ec3、Fc3、Hc3では、アルミニウム表面の外観が、くすんだ白色であったものの、実用上問題がないレベルであった。
一方、比較例2では、ろう付加熱時の雰囲気の酸素濃度が低いIc1では、問題はなかったものの、ろう付加熱時の雰囲気の酸素濃度が高いIc2では、黒色残渣とそれに伴う黒変色が確認され、Ic3では、ほぼ全てのKZnFが未反応の白色残渣となり、フィレットは形成されなかった。
【0082】
(実施例3及び比較例3)
<フラックス組成物>
フラックス組成物として、表3−1〜表3−4に示す組成のものを、表3−1〜表3−4に示す混合比率で混合し、平均粒径を10μmに調節した混合粉体を用意した。
比較フラックス組成物として、表3−5〜表3−8に示す組成のものを、表3−5〜表3−8に示す混合比率で混合し、平均粒径を10μmに調節した混合粉体を用意した。
【0083】
<ろう付性試験>
炉内の平均酸素濃度を100ppmとすることに代えて、炉内の平均酸素濃度を500ppmとすること以外は、実施例1及び比較例1と同様に行った。
<ろう付性評価>
実施例1及び比較例1と同様に行った。評価結果を表3−1〜表3−8に示す。
【0084】
【表3-1】
【0085】
【表3-2】
【0086】
【表3-3】
【0087】
【表3-4】
【0088】
【表3-5】
【0089】
【表3-6】
【0090】
【表3-7】
【0091】
【表3-8】
【0092】
表3に示すように、実施例3は、ろう付加熱時の酸素濃度が高くても、いずれもろう付性は良好であった。一方、比較例3のAd25〜30、Bd25〜30、Cd25〜30、Dd25〜30、Ed25〜30、Fd25〜30、Gd25〜30、Hd25〜30は、(A)の比率が低く、フルオロアルミン酸アルカリ金属塩の比率が高いため、酸素濃度が高い本例では、アルミニウム合金の表面に白色残渣が見られ、その残渣が接合を阻害して接合率が低下した。また、Ad31〜36、Bd31〜36、Cd31〜36、Dd31〜36、Ed31〜36、Fd31〜36、Gd31〜36、Hd31〜36は、(A)の比率が低く、フルオロ亜鉛酸アルカリ金属塩の比率が高いため、酸素濃度が高い本例では、アルミニウム合金の表面に黒色残渣とそれに伴う黒変色が見られ、その残渣が接合を阻害して接合率が低下した。(A)を混合していないId1〜Id33、Jd1〜Jd33では、表面に未反応物である白色残渣あるいは黒色残渣とそれに伴う変色が見られ、その残渣が接合を阻害して接合率が低下した。
【0093】
(実施例4及び比較例4)
<フラックス組成物>
表4に示す組成のフラックス組成物を、表4に示す混合比率で混合し、平均粒径を10μmに調整した混合粉末を用意した。なお、実施例4及び比較例4は、フルオロ亜鉛アル
ミン酸アルカリ金属塩粉末と各種金属粉末又は金属合金粉末を混合したものであり、表4中では、各金属合金に添加されている添加元素の質量%を各添加元素の前に数字で示した。例えば、「KZnALF/Al−25Si−25Cu」とは、KZnALF粉末と、Siの添加量が25質量%でありCuの添加量が25質量%であるAl合金粉末との混合物であることを示す。
<ろう付性試験>
実施例1および比較例1と同様に行った。
<ろう付性評価>
実施例1および比較例1と同様に行った。評価結果を表4−1〜表4−16に示す。
【0094】
【表4-1】
【0095】
【表4-2】
【0096】
【表4-3】
【0097】
【表4-4】
【0098】
【表4-5】
【0099】
【表4-6】
【0100】
【表4-7】
【0101】
【表4-8】
【0102】
【表4-9】
【0103】
【表4-10】
【0104】
【表4-11】
【0105】
【表4-12】
【0106】
【表4-13】
【0107】
【表4-14】
【0108】
【表4-15】
【0109】
【表4-16】
【0110】
表4に示すように、実施例4は、金属粉末を混合しても、いずれもろう付性は良好であった。一方、比較例4のAe45〜88、Be45〜88、Ce45〜88、De45〜88、Ee45〜88、Fe45〜88、Ge45〜88、He45〜88は金属粉末の添加比率が多いために、未溶融残渣が認められ、未溶融残渣が弊害となり、接合率が低下した。
【0111】
(実施例5および比較例5)
<フラックス組成物>
フラックス組成物として、平均粒径を10μmに調節した、表5に示す組成のフラックス単体粉末(含有量:100%)を用意した。
<ろう付性試験>
炉内の平均露点を−40℃にすることに代えて、炉内の平均露点を表5に示す平均露点とすること以外は、実施例1および比較例1と同様に行った。
<ろう付性評価>
実施例1および比較例1と同様に行った。評価結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
表5に示すように、実施例は、ろう付加熱時の平均露点が高くても、良好な結果であった。一方、比較例5のIf1では、ろう付加熱時の雰囲気の露点が高いため、ほぼ全てのKZnFが未反応の白色残渣となり、フィレットは形成されなかった。
図1