特許第6446095号(P6446095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6446095パターンドメディア作製用基板およびパターンドメディア、並びにこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446095
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】パターンドメディア作製用基板およびパターンドメディア、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20181217BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20181217BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20181217BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20181217BHJP
   G11B 5/73 20060101ALI20181217BHJP
   G11B 5/65 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B29C33/38
   B29C59/02 B
   H01L21/30 502D
   G11B5/84 Z
   G11B5/73
   G11B5/65
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-118276(P2017-118276)
(22)【出願日】2017年6月16日
(62)【分割の表示】特願2013-122599(P2013-122599)の分割
【原出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2017-177821(P2017-177821A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和丈
(72)【発明者】
【氏名】岸本 秀司
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/157073(WO,A1)
【文献】 特開2006−323887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
C23C 14/00−14/58
C03C 17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、
を備え
前記ガラス基板は、質量%で、LiOを1%を超え9%以下、NaOを5〜18%(ただし、質量比LiO/NaOが0.5以下)、KOを0〜6%のアルカリ金属成分を含む
ことを特徴とするパターンドメディア作製用基板。
【請求項2】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、
を備え、
前記磁性分離膜の表面は、少なくとも自然酸化したときよりも厚い酸化膜で覆われていることにより、不活性化されている
ことを特徴とするパターンドメディア作製用基板。
【請求項3】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、
を備え、
前記析出抑制膜の厚さが5nm以上である
ことを特徴とするパターンドメディア作製用基板。
【請求項4】
前記磁性分離膜の表面は、少なくとも自然酸化したときよりも厚い酸化膜で覆われていることにより、不活性化されている
ことを特徴とする請求項に記載のパターンドメディア作製用基板。
【請求項5】
前記磁性分離膜は、シリコンを主成分とする膜であり、
前記析出抑制膜は、クロムを主成分とする膜、または、高融点金属の膜である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のパターンドメディア作製用基板。
【請求項6】
前記析出抑制膜の厚さが5nm以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のパターンドメディア作製用基板。
【請求項7】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、
前記磁性分離膜の凹凸パターンの凹部に埋め込まれた磁性膜と、
を備え
前記ガラス基板は、質量%で、LiOを1%を超え9%以下、NaOを5〜18%(ただし、質量比LiO/NaOが0.5以下)、KOを0〜6%のアルカリ金属成分を含む
ことを特徴とするパターンドメディア。
【請求項8】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記凹凸パターンの凹部に埋め込まれた磁性膜と、
磁性分離膜および磁性膜の上に形成された保護膜と、
前記保護膜の上に形成された潤滑膜と、を備え、
前記磁性分離膜の凹凸パターンの表面には、酸化膜が形成されている
ことを特徴とするパターンドメディア。
【請求項9】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、
前記磁性分離膜の凹凸パターンの凹部に埋め込まれた磁性膜と、
を備え、
前記磁性分離膜の表面は、少なくとも自然酸化したときよりも厚い酸化膜で覆われていることにより、不活性化されている
ことを特徴とするパターンドメディア。
【請求項10】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、
前記磁性分離膜の凹凸パターンの凹部に埋め込まれた磁性膜と、
を備え、
前記磁性分離膜は、シリコンを主成分とする膜であり、
前記析出抑制膜は、クロムを主成分とする膜、または、高融点金属の膜である
ことを特徴とするパターンドメディア。
【請求項11】
アルカリ金属を含むガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、
前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、
前記磁性分離膜の凹凸パターンの凹部に埋め込まれた磁性膜と、
を備え、
前記析出抑制膜の厚さが5nm以上である
ことを特徴とするパターンドメディア。
【請求項12】
前記磁性分離膜の表面は、少なくとも自然酸化したときよりも厚い酸化膜で覆われていることにより、不活性化されている
ことを特徴とする請求項7または8に記載のパターンドメディア。
【請求項13】
前記磁性分離膜は、シリコンを主成分とする膜であり、
前記析出抑制膜は、クロムを主成分とする膜、または、高融点金属の膜である
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載のパターンドメディア。
【請求項14】
前記析出抑制膜の厚さが5nm以上である
ことを特徴とする請求項から10のいずれか1項に記載のパターンドメディア。
【請求項15】
アルカリ金属を含むガラス基板上に、シリコンを含む磁性分離膜、ハードマスク膜およびレジスト膜を順に形成した後、前記レジスト膜をパターニングすることにより、レジストパターンを形成する第1工程と、
前記レジストパターンを用いて前記ハードマスク膜をエッチングすることによりハードマスクパターンを形成した後、前記ハードマスクパターンを用いて前記磁性分離膜をエッチングすることにより、前記磁性分離膜の表面に凹凸パターンを形成する第2工程と、
を含むパターンドメディア作製用基板の製造方法であって、
前記第1工程においては、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜を、前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成する
ことを特徴とするパターンドメディア作製用基板の製造方法。
【請求項16】
前記ガラス基板は、質量%で、LiOを1%を超え9%以下、NaOを5〜18%(ただし、質量比LiO/NaOが0.5以下)、KOを0〜6%のアルカリ金属成分を含む
ことを特徴とする請求項15に記載のパターンドメディア作製用基板の製造方法。
【請求項17】
前記第1工程は、前記ハードマスク膜を形成する前に、前記磁性分離膜の表面をベーク処理によって不活性化することにより、前記磁性分離膜の表面に自然酸化膜よりも厚い酸化膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項15または16に記載のパターンドメディア作製用基板の製造方法。
【請求項18】
前記第2工程は、前記磁性分離膜の表面に前記凹凸パターンを形成した後、前記磁性分離膜のパターン表面をベーク処理によって不活性化することにより、前記磁性分離膜のパターン表面に自然酸化膜よりも厚い酸化膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載のパターンドメディア作製用基板の製造方法。
【請求項19】
アルカリ金属を含むガラス基板上に、シリコンを含む磁性分離膜、ハードマスク膜およびレジスト膜を順に形成した後、前記レジスト膜をパターニングすることにより、レジストパターンを形成する第1工程と、
前記レジストパターンを用いて前記ハードマスク膜をエッチングすることによりハードマスクパターンを形成した後、前記ハードマスクパターンを用いて前記磁性分離膜をエッチングすることにより、前記磁性分離膜の表面に凹凸パターンを形成する第2工程と、
前記磁性分離膜の凹凸パターンの凹部に磁性膜を埋め込む第3工程と、
を含むパターンドメディアの製造方法であって、
前記第1工程においては、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜を、前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成する
ことを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項20】
前記ガラス基板は、質量%で、LiOを1%を超え9%以下、NaOを5〜18%(ただし、質量比LiO/NaOが0.5以下)、KOを0〜6%のアルカリ金属成分を含む
ことを特徴とする請求項19に記載のパターンドメディアの製造方法。
【請求項21】
前記第1工程は、前記ハードマスク膜を形成する前に、前記磁性分離膜の表面をベーク処理によって不活性化することにより、前記磁性分離膜の表面に自然酸化膜よりも厚い酸化膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項19または20に記載のパターンドメディアの製造方法。
【請求項22】
前記第2工程は、前記磁性分離膜の表面に前記凹凸パターンを形成した後、前記磁性分離膜のパターン表面をベーク処理によって不活性化することにより、前記磁性分離膜のパターン表面に自然酸化膜よりも厚い酸化膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする請求項19から21のいずれか1項に記載のパターンドメディアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用モールド、パターンドメディア作製用基板およびパターンドメディア、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細回路パターン形成、光学部品に光学的機能を付加する為の微細パターン形成、およびハードディスクドライブ等に用いられる磁気記録媒体における磁性膜の微細パターン形成において、同じ微細パターンを大量に転写するためのインプリント法が用いられるようになってきている。
【0003】
インプリント法に用いるモールド(以下、「インプリント用モールド」という。)は、微細パターンを大量に転写するための原版になる。インプリント法は、転写対象物上に塗布されたレジスト膜にインプリント用モールドを直接押し付けてパターンを転写する方法である。このようなインプリント法で作製される磁気記録媒体の一つとしてパターンドメディアがある。パターンドメディアは、磁性材料で構成されるパターンがビット単位で規則的に並んだ構造の磁気記録媒体である。
【0004】
図8図10はインプリント法による従来のパターンドメディアの製造方法の一例を示す図である。
まず、図8(A)に示すように、基板51上に下地膜52、磁性膜53、ハードマスク膜54を順に形成する。次に、図8(B)に示すように、ハードマスク膜54の上にレジスト膜55を形成する。次に、図8(C)に示すように、インプリント用モールド56を用いてレジストパターン55aを形成する。具体的には、インプリント用モールド56をレジスト膜55に押し付けた状態でレジストを硬化(光硬化又は熱硬化)させた後、インプリント用モールド56を離型する。これにより、インプリント用モールド56の凹凸のパターンを反転したかたちでレジスト膜55にレジストパターン55aが形成される。
【0005】
次に、図9(A)に示すように、レジストパターン55aをマスクに用いてハードマスク膜54をエッチングし、さらに図9(B)に示すように、そのハードマスク膜54のパターンをマスクに用いて磁性膜53をエッチングする。これにより、下地膜52の上に磁性膜53のパターンが形成される。次に、図9(C)に示すように、磁性膜53のパターンの間を埋めるように磁性分離膜57を形成する。次に、図10(A)に示すように、磁性膜53のパターンの上面が露出するように平坦化する。次に、図10(B)に示すように、磁性膜53および磁性分離膜57を覆うように保護膜58を形成する。次に、図10(C)に示すように、保護膜58の上に潤滑膜59を形成する。
【0006】
上述した従来のパターンドメディアの製造方法においては、下地膜52が露出するまで磁性膜53をエッチングした後、その間を磁性分離膜57で埋めることによりビット間の磁気分離を実現している。このため、パターンの微細化にともなって1ビット当たりのパターン寸法が小さくなると、エッチングによる磁性層ダメージ(エッチングに曝された表層数nmの磁性層結晶構造変化により磁気的性質が変化した時の実効的な体積減少)が大きな問題となる。
【0007】
そこで従来においては、上記の製造方法とは別の方法として、非磁性材料からなる基板の表面に1ビット単位で凹状のパターンを形成し、このパターンの凹み部分を磁性膜によって埋め込んだ後、平坦化する方法も提案されている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−58296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、インプリント用モールドやパターンドメディア作製用基板の基材として、それぞれに求められる必要な機械的強度を有し、しかも価格的に安価な強化ガラス基板を使用したいという要望がある。強化ガラス基板としては、イオン交換によって機械的強度を向上させたアルカリ金属含有のガラス基板が知られている。この種のガラス基板はアルカリ金属を多く含んでいる。このため、ガラス基板の表面に直接、パターンを形成しようとすると、アルカリ金属の存在によってパターンの形成(エッチング等)が阻害される。
【0010】
そこで、本発明者は、ガラス基板上にシリコンを含む膜を形成し、この膜表面にエッチングによって凹凸パターンを形成する方法を試してみた。そうしたところ、予期しない問題が発生し、その対策を講じるなかで新たな知見を得た。すなわち、シリコンを含む膜で、ある特殊な条件(後述)でインプリントを実施すると、ガラス基板に含まれるアルカリ金属が凹凸パターンの表面に析出してしまうという新たな知見を得た。
なお、シリコンを含む膜を非磁性膜として形成すれば、パターンドメディアにおける磁性分離膜として用いる事ができる。
【0011】
本発明の目的は、アルカリ金属を含むガラス基板上にシリコンを含む膜を形成し、この膜に凹凸パターンを形成したパターンドメディア作製用基板、パターンドメディア又はインプリント用モールドにおいて、アルカリ金属が凹凸パターンの表面に析出することを抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
まず、本発明者が上記の知見に基づいて本発明を想到するに至った経緯について詳しく説明する。
【0013】
(第1の問題)
まず、本発明者は、アルカリ金属を含むガラス基板を使用してパターンドメディア作製用基板を製造するために、ガラス基板上に非磁性膜としてシリコン膜を形成し、さらにその上にハードマスク膜として窒化クロム膜を形成した。また、ハードマスク膜の上にレジスト膜を形成し、これをインプリント用モールドでパターニングした後、ハードマスク膜とともに非磁性膜をエッチングした。そうしたところ、エッチングによって非磁性膜に形成されたパターン凹部の表面(以下、「エッチング底面」ともいう)が荒れた状態になった。本発明者は、この原因について鋭意検討した。その結果、ハードマスク(窒化クロム膜)成膜前の非磁性膜(シリコン膜)表面は自然酸化膜で覆われているが、活性な部分を維持しており、ハードマスク成膜時に界面に反応生成物としてSi−Cr生成物を生ずる。これはハードマスクエッチングにて完全に除去されること無く、次工程である非磁性膜のエッチング時の部分的なマスクとして影響し、表面荒れに結び付いたと推測した。そこで、本発明者は、ハードマスク膜を形成する前に、ベーク処理(加熱処理)によって非磁性膜の表面を強制酸化して不活性化することを思い付き、実際に試してみた。そうしたところ、エッチング底面の荒れが解消された。
【0014】
(第2の問題)
その一方で、本発明者は、上記のガラス基板を使用してシリコン膜をパターニング層としたインプリント用モールドを上記同様の方法(ベーク処理を含む方法)にて作成した。ところが、この方法で製造したインプリント用モールドのパターンを熱インプリント法によって他の基板(以下、「被転写基板」という)に転写しようとした場合に、ある特殊な状況のもとで新たな問題が発生した。以下、説明する。
【0015】
一般に、熱インプリントにおいては、被転写基板の表面にPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)などの樹脂膜を形成し、この樹脂膜の表面にインプリント用モールドの凹凸パターンを押し付けて、パターンを転写している。このため、熱インプリントの温度条件は、樹脂膜を構成している樹脂の耐熱温度よりも低い温度(たとえば、120℃前後)に設定されるのが普通である。これに対して、発明者は、被転写基板の表面に樹脂膜に代えて金属ガラスの膜を形成したものを用いて熱インプリントを実施しようと試みた。その際、金属ガラスを軟化させるために300℃超の温度条件で熱インプリントを実施した。そうしたところ、先述した通常の熱インプリントの温度条件では起こっていなかった新たな問題が生じた。具体的には、金属ガラス膜のパターン表面荒れが発生していることが判明した。本発明者は、この原因について鋭意検討した。その結果、インプリント用モールドのパターンと被転写基板の金属ガラス膜の界面で何らかの剥がれを生じ、これが荒れとして被処理基板のパターン表面に現れたのではないかと推測した。そこで、本発明者は、インプリント用モールド表面にエッチングによってパターンを形成した後に、もう一度ベーク処理によってパターンの表面を酸化することを思い付き、実際に試してみた。そうしたところ、金属ガラス膜のパターン表面に異物の発生がほとんど見られなくなった。
【0016】
(第3の問題)
ところが、2回目のベーク処理後のインプリント用モールドの状態を電子顕微鏡等で精査確認したところ、パターンの表面にナノレベルの微細なパーティクルが発生していることが判明した。このため、本発明者は、この原因についても鋭意検討した。その結果、ガラス基板に含まれているアルカリ金属が、ベーク処理を引き金として、パターンの表面に析出したのではないかと推測した。そこで、本発明者は、インプリント用モールドの構成として、ガラス基板とパターニング層との間に窒化クロム膜を形成してみた。そうしたところ、ベーク処理を終えた段階でもパーティクルの発生が見られなくなった。
上記より、熱によりアルカリ金属を含むガラス基板表面にナノメートルレベルの極微小異物析出を生じる事を見出した。この現象は、ガラス基板露出面のみならず、パターンとして配したシリコン膜上にも、同様に微細異物として顕在化する事を見出した。この微小異物は、300℃程度の高温処理ならば数回の処理で熱拡散により顕在化する。更には、たとえ低温での熱インプリントにおいても継続使用する事により、或いはパターンドメディアを数ケ月から数年との長期間使用した場合、同様な問題を生ずると考えられた。
このナノレベルの微小異物は、インプリントとして用いた場合、当然にナノレベルのパターン作成の障害となる。メディアとして用いた場合は、異物が磁性体下で経時成長し、最悪の場合、磁性体剥離の様な重大な障害が懸念される。
以上の経緯とこれに基づく知見により、本発明者は、以下の発明を想到するに至った。
【0017】
本発明の第1の態様は、アルカリ金属を含むガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含むパターニング膜と、前記ガラス基板と前記パターニング膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記パターニング膜へと拡散し当該パターニング膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、を備えることを特徴とするインプリント用モールドである。
【0018】
本発明の第2の態様は、アルカリ金属を含むガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、を備えることを特徴とするパターンドメディア作製用基板である。
【0019】
本発明の第3の態様は、アルカリ金属を含むガラス基板と、前記ガラス基板上に形成されるとともに、表面に凹凸パターンが設けられた、シリコンを含む磁性分離膜と、前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成され、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜と、前記磁性分離膜の凹凸パターンの凹部に埋め込まれた磁性膜と、を備えることを特徴とするパターンドメディアである。
【0020】
本発明の第4の態様は、アルカリ金属を含むガラス基板上に、シリコンを含むパターニング膜、ハードマスク膜およびレジスト膜を順に形成した後、前記レジスト膜をパターニングすることにより、レジストパターンを形成する第1工程と、前記レジストパターンを用いて前記ハードマスク膜をエッチングすることによりハードマスクパターンを形成した後、当該ハードマスクパターンを用いて前記パターニング膜をエッチングすることにより、前記パターニング膜の表面に凹凸パターンを形成する第2工程と、を含むインプリント用モールドの製造方法であって、前記第1工程においては、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記パターニング膜へと拡散し当該パターニング膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜を、前記ガラス基板と前記パターニング膜との間に形成することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法である。
【0021】
本発明の第5の態様は、アルカリ金属を含むガラス基板上に、シリコンを含む磁性分離膜、ハードマスク膜およびレジスト膜を順に形成した後、前記レジスト膜をパターニングすることにより、レジストパターンを形成する第1工程と、前記レジストパターンを用いて前記ハードマスク膜をエッチングすることによりハードマスクパターンを形成した後、前記ハードマスクパターンを用いて前記磁性分離膜をエッチングすることにより、前記磁性分離膜の表面に凹凸パターンを形成する第2工程と、を含むパターンドメディア作製用基板の製造方法であって、前記第1工程においては、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜を、前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成する
ことを特徴とするパターンドメディア作製用基板の製造方法である。
【0022】
本発明の第6の態様は、アルカリ金属を含むガラス基板上に、シリコンを含む磁性分離膜、ハードマスク膜およびレジスト膜を順に形成した後、前記レジスト膜をパターニングすることにより、レジストパターンを形成する第1工程と、前記レジストパターンを用いて前記ハードマスク膜をエッチングすることによりハードマスクパターンを形成した後、前記ハードマスクパターンを用いて前記磁性分離膜をエッチングすることにより、前記磁性分離膜の表面に凹凸パターンを形成する第2工程と、前記磁性分離膜の凹凸パターンの凹部に磁性膜を埋め込む第3工程と、を含むパターンドメディアの製造方法であって、前記第1工程においては、前記ガラス基板に含まれる前記アルカリ金属が、前記ガラス基板から前記磁性分離膜へと拡散し当該磁性分離膜の表面に析出することを抑制する析出抑制膜を、前記ガラス基板と前記磁性分離膜との間に形成することを特徴とするパターンドメディアの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アルカリ金属を含むガラス基板上にシリコンを含む膜を形成し、この膜に凹凸パターンを形成したパターンドメディア作製用基板、パターンドメディア又はインプリント用モールドにおいて、アルカリ金属が凹凸パターンの表面に析出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るインプリント用モールドの製造方法を示す工程図(その1)である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るインプリント用モールドの製造方法を示す工程図(その2)である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係るインプリント用モールドの製造方法の工程手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施の形態に係るパターンドメディア作製用基板の製造方法とこれによって得られるパターンドメディア作製用基板を用いたパターンドメディアの製造方法を示す工程図(その1)である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るパターンドメディア作製用基板の製造方法とこれによって得られるパターンドメディア作製用基板を用いたパターンドメディアの製造方法を示す工程図(その2)である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るパターンドメディア作製用基板の製造方法とこれによって得られるパターンドメディア作製用基板を用いたパターンドメディアの製造方法を示す工程図(その3)である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係るパターンドメディア作製用基板の製造方法とこれによって得られるパターンドメディア作製用基板を用いたパターンドメディアの製造方法の工程手順を示すフローチャートである。
図8】インプリント法による従来のパターンドメディアの製造方法の一例を示す図(その1)である。
図9】インプリント法による従来のパターンドメディアの製造方法の一例を示す図(その2)である。
図10】インプリント法による従来のパターンドメディアの製造方法の一例を示す図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、インプリント用モールドとその製造方法に関する実施の形態を[第1の実施の形態]として説明するとともに、パターンドメディア作製用基板およびパターンドメディアとそれらの製造方法に関する実施の形態を[第2の実施の形態]として説明する。
【0026】
[第1の実施の形態]
<インプリント用モールドの製造方法>
図1および図2は本発明の第1の実施の形態に係るインプリント用モールドの製造方法を示す工程図であり、図3はその工程手順を示すフローチャートである。
【0027】
(第1の成膜工程:S11)
まず、図1(A)に示すように、インプリント用モールドの基材となるガラス基板1を用意する。インプリント用モールドの基材としては石英基板などを用いることもできるが、本実施の形態においては、石英基板等に比べて安価でしかも機械的強度に優れるガラス基板1を用いる。ガラス基板1は、化学強化処理がされたアルカリ金属含有ガラス材によって形成されている。化学強化処理がされたアルカリ金属含有ガラス材としては、たとえば質量%表示で、SiOを57〜75%、Alを5〜20%(ただし、SiOとAlの合計量が74%以上)、ZrOを0%を超え5.5%以下、LiOを1%を超え9%以下、NaOを5〜18%(ただし、質量比LiO/NaOが0.5以下)、KOを0〜6%、MgOを0〜4%、CaOを0%を超え5%以下(ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多く)、SrOおよびBaOを合計で0〜3%、TiO2を0〜1%、含むガラス(清澄剤として、SnO、CeO、Sbなどを添加してもよい)が挙げられる。また、重量%で、62〜75%のSiO、5〜15%のAl、4〜10%のLiO、4〜12%のNaO、および5.5〜15%のZrOを含有し、かつNaO/ZrOの重量比が0.5〜2.0であり、さらにAl/ZrOの重量比が0.4〜2.5であるガラス、およびこれをNaイオンおよび/またはKイオンを含有する処理浴でイオン交換処理して得られた化学強化ガラスが挙げられる。
【0028】
このような化学強化ガラスで構成されたガラス基板1は、アルカリ金属を多く含んでいるため、その基板表面に直接、パターンを形成しようとすると、アルカリ金属の存在によって精度良くパターンを形成することができない。具体的には、ガラス基板1の表面にエッチングによって凹凸パターンを形成しようとすると、ガラス基板1に含まれるアルカリ金属がエッチングの進行度合いに影響をおよぼすため、所望の形状および寸法で凹凸パターンを形成することができない。そこで、ガラス基板1を用意したら、このガラス基板1の上に析出抑制膜2を形成(成膜)し、さらに析出抑制膜2の上にパターニング膜3を形成する。これにより、ガラス基板1の表面(上面)が析出抑制膜2で覆われるとともに、析出抑制膜2の表面(上面)がパターニング膜3で覆われる。また、ガラス基板1とパターニング膜3の間に析出抑制膜2をサンドイッチ状に挟み込んだ構成となる。
【0029】
析出抑制膜2は、ガラス基板1に含まれるアルカリ金属が、ガラス基板1からパターニング膜3へと拡散しパターニング膜3の表面に析出することを抑制するものである。本発明者は当初、ガラス基板1に含まれるアルカリ金属がパターニング膜(シリコン膜)3の膜中に拡散すること、さらには当該膜中に拡散したアルカリ金属がパターニング膜3の表面に析出することは、まったく予想していなかった。というのも、上記第3の問題は、上記第1の問題および第2の問題の対策として2回のベーク処理を行ったことをきっかけに初めてその存在が確認されたものであり、それ以前の段階ではまったく問題になっていなかったからである。第3の問題の存在が明らかになった状況のもとで改めてその原因を考察してみると、ガラス基板1とパターニング膜3はいずれもシリコンを含んでいるため、外部からの熱の影響によりアルカリ金属が移動しやすい状況になったものと推測される。そして、ガラス基板1とパターニング膜3との間に、シリコンを含まない析出抑制膜2を介在させることにより、アルカリ金属の移動に対して析出抑制層2がいわゆるバリア効果を発揮し、結果的にアルカリ金属の拡散、ひいてはパターニング膜3の表面への析出を抑制することになると考えられる。このような技術的な考察から、析出抑制膜2は、たとえば、窒化クロムによって形成するとよい。析出抑制膜2の厚さは、アルカリ金属に対して十分な遮蔽(バリア)効果を発揮させるために、少なくとも5nm以上、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上とするのがよい。析出抑制膜2の成膜方法としては、たとえばスパッタリング法などを用いることができる。
【0030】
パターニング膜3は、インプリント用モールドの凹凸パターンを形成するための層となる。パターニング膜3は、たとえば、シリコンによって形成する。パターニング膜3の厚さは、少なくともインプリント用モールドに求められる凹凸パターンの凹部の深さ寸法を確保し得る範囲で設定される。具体的には、パターニング膜3の厚さは、上記凹部の深さ寸法を考慮して、たとえば80nm〜100nmの範囲に設定するとよい。パターニング膜3の成膜方法としては、たとえばスパッタリング法などを用いることができる。
【0031】
(第1のベーク工程:S12)
次に、パターニング膜3の表面(上面)を全面にわたって不活性化する。本書で記述する「不活性化」とは、不活性化する前の状態に比べて、他の物質と化学反応を起こしにくい状態にすること、言い換えると、化学的に不安定な状態から安定な状態に変化させることをいう。たとえば、パターニング膜3をシリコンで形成した場合、パターニング膜3の表面はシリコン又は自然酸化した酸化シリコンが露出している。第1のベーク工程S12では、第1の成膜工程を終えたモールドブランクスに対し、あらかじめ決められた処理条件でベーク処理を施すことにより、図1(B)に示すように、パターニング膜3の表面に酸化膜3aを形成する。この酸化膜3aは、自然酸化によって形成される自然酸化膜よりも厚く強い酸化膜(SiO2膜)となる。具体的には、パターニング膜3をシリコンで形成した場合は、その表面に形成される自然酸化膜の厚さは1nm未満、具体的には0.7nm程度にとどまる。これに対して、第1のベーク工程S12では、パターニング膜3の表面にベーク処理によって自然酸化膜よりも厚い膜厚で強い酸化膜3aを形成する。具体的には、ベーク温度を200℃〜400℃の範囲内に設定し、かつ、ベーク時間を30分程度に設定する。これにより、パターニング膜3の表面は、酸化膜3aの存在によって化学的活性度が著しく低下した状態になる。
【0032】
(第2の成膜工程:S13)
次に、図1(C)に示すように、パターニング膜3の上にハードマスク膜4を形成する。これにより、パターニング膜3の表面がハードマスク膜4によって覆われる。ハードマスク膜4は、好ましい一つの例として、前述した析出抑制膜2と同じ材料(本形態例では窒化クロム)および同じ成膜方法で形成する。ちなみに、パターニング膜3の表層部分には上記第1のベーク工程S12によって酸化膜3aが形成されているため、ハードマスク膜4は、この酸化膜3aを覆う状態に形成される。
【0033】
(インプリント工程:S14)
次に、図1(D)に示すように、ハードマスク膜4の上にレジスト膜5を形成するとともに、インプリント法によってレジストパターン5aを形成する。さらに詳述すると、インプリント工程S14は、たとえば、紫外線照射による光インプリント法により行う。その場合は、まず、ハードマスク膜4の上に、紫外線硬化型のレジストを用いてレジスト膜5を形成する。次に、マスター(原盤)またはサブマスターとなるモールド6を用いて、このモールド6に形成された凹凸パターン6aをレジスト膜5に押し付け、その状態でレジスト膜5に紫外線を照射することにより、レジスト膜5を硬化定着させる。その際、モールド6を光透過性の材料(たとえば、石英基板)で構成しておき、このモールド6を通してレジスト膜5に紫外線を照射する。その後、モールド6をレジスト膜5から分離(離型)する。そうすると、ハードマスク膜4の上には、モールド6の凹凸パターン6aに対応するレジストパターン5aが形成(転写)される。このとき、凹凸パターン6aとレジストパターン5aとは、凹と凸の位置関係が反転したものとなる。
【0034】
(パターニング工程:S15)
次に、図2(A)に示すように、レジストパターン5aをマスクパターンとしてハードマスク膜4をエッチングし、さらにこれによって得られるハードマスクパターンをマスクパターンとしてパターニング膜3をエッチングする。ハードマスク膜4およびパターニング膜3のエッチングは、たとえばドライエッチング法により行う。その場合のエッチングガスとしては、たとえば上述のとおりパターニング膜3がシリコンであれば、フッ素系ガスを用いることができる。エッチング後は、アッシング処理によって不要な残渣を取り除くことが望ましい。
【0035】
(剥離・洗浄工程:S16)
次に、図2(B)に示すように、上述したパターニング膜3のエッチング後にパターン上に残ったハードマスク膜(ハードマスクパターン)4を剥離した後、洗浄処理を行う。この剥離・洗浄工程S16は、たとえば、アルカリ洗浄、硫酸・過水剥離、化学薬品(たとえば、クロム剥離液)、メガソニック洗浄(超音波洗浄)等により行うことができる。
【0036】
(第2のベーク工程:S17)
次に、パターニング膜3のパターン表面を全面にわたって不活性化する。第2のベーク工程S17では、あらかじめ決められた処理条件でベーク処理を施すことにより、図2(C)に示すように、パターニング膜3のパターン表面(全面)に酸化膜3bを形成する。ベーク処理の条件としては、後述する金属ガラスへのインプリント(パターンの転写)を考慮して、金属ガラスのガラス転移温度以上のベーク温度、具体的には350℃以上、好ましくは400℃程度に設定するのがよい。また、ベーク時間としては、たとえば、30分程度に設定するのがよい。このベーク処理によって形成される酸化膜3bは自然酸化膜よりも厚く強い酸化膜となる。すなわち、ベーク処理によってパターニング膜3のパターン表面に形成される酸化膜3bの厚さは、少なくとも自然酸化膜の厚さ(0.7μm程度)よりも厚い、たとえば1nm以上、好ましくは1.2nm以上、さらに好ましくは1.4nm程度の膜厚となっている。これにより、上述したパターニング工程S15におけるエッチングによってパターニング膜3のパターン表面にシリコンが露出した場合でも、再度のベーク処理によってパターニング膜3の表面が酸化膜3bで覆われた状態になる。このため、第2のベーク工程S17を行う前に比べて、パターニング膜3のパターン表面は、化学的活性度が著しく低下した状態になる。
【0037】
(最終洗浄工程:S18)
次に、最終洗浄を行う。最終洗浄は、たとえば、アルカリ洗浄、メガソニック洗浄等により行うことができる。
【0038】
以上の工程により、インプリント用モールド10が得られる。こうして得られるインプリント用モールド10は、ガラス基板1上に析出抑制膜2、凹凸パターン付きのパターニング膜3が順に積層された構成となる。また、パターニング膜3のパターン表面は、上記のベーク処理により少なくとも自然酸化したときよりも厚い酸化膜3bで覆われた状態となり、かつ、この酸化膜3bの存在によって不活性化された状態となる。
【0039】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態においては、次のような効果が得られる。
【0040】
本発明の第1の実施の形態においては、ガラス基板1上に析出抑制膜2を介してパターニング膜3を形成し、このパターニング膜3に凹凸パターンを形成することにより、インプリント用モールド10を製造している。この一連の製造工程においては、上述した第1の問題および第2の問題を解消するために、パターニング工程S15を間に挟んで前後1回ずつの計2回のベーク処理を行っている。このため、2回のベーク処理が引き金になって、パターニング膜3のパターン表面にアルカリ金属が析出するという上記第3の問題が起こり得る。この点、あらかじめガラス基板1とパターニング膜3との間に析出抑制膜2を形成しておけば、仮に2回のベーク処理を行ったとしても、ガラス基板1からパターニング膜3へのアルカリ金属の拡散とこれに伴うパターン表面へのアルカリ金属の析出を抑制することができる。
【0041】
また、上記2回のベーク処理を行わない場合でも、上記の製造方法によって得られたインプリント用モールド10を、たとえば熱インプリントに用いる場合は、インプリントを行うたびにインプリント用モールド10が加熱されることになる。このため、仮に析出抑制膜2を形成しなかった場合は、熱インプリントへの使用を開始した初期の段階では、パターニング膜3のパターン表面にアルカリ金属の析出が認められなかったとしても、繰り返しの使用によって経時的に熱の影響が蓄積される結果、ある段階を経過したときに初めてパターン表面にアルカリ金属が析出することが考えられる。この点についても、あらかじめガラス基板1とパターニング膜3との間に析出抑制膜2を形成しておけば、熱インプリントへの使用を開始した初期の段階はもちろん、その後も長期にわたってパターン表面へのアルカリ金属の析出を抑制することができる。このため、インプリント用モールド10の信頼性の向上に大いに貢献することができる。
【0042】
本発明の第1の実施の形態においては、ガラス基板1上に析出抑制膜2とパターニング膜3を形成した後、パターニング膜3の表面をベーク処理によって不活性化し、その後でハードマスク膜4を形成している。このため、パターニング膜3とハードマスク膜4の界面における化学反応とこれに伴う反応生成物(本形態例ではSiとCrNの反応生成物)の発生を、酸化膜3aの介在によって抑制することができる。したがって、その後のパターニング工程においては、上記反応生成物に起因したエッチング底面の荒れを解消することができる。
【0043】
本発明の第1の実施の形態においては、パターニング工程S15よりも後に第2のベーク工程S17を設けることにより、パターニング膜3のパターン表面を不活性化している。このため、上記の製造方法によって得られたインプリント用モールド10を熱インプリント法に用いる場合に、インプリント用モールド10の凹凸パターンと被転写基板の被転写膜とを接触させたときの接触界面における化学反応とこれに伴う反応生成物の発生を抑制することができる。したがって、接触界面での化学反応に起因した離型不良の発生や、離型後のパターン表面の異物の発生などを回避することができる。
【0044】
この効果は、特に、被転写基板の被転写膜を樹脂膜に代えて金属ガラスの膜で形成した場合に有効である。すなわち、被転写基板の被転写膜を金属ガラスで形成した場合は、熱インプリントの際に金属ガラスの膜を軟化させる必要がある。このため、金属ガラスのガラス転移温度よりも高い温度(たとえば、約350℃)で熱インプリントを行うことになる。そうした場合、インプリント用モールド10のパターニング膜3の表面が不活性化されていないと、熱インプリントのときに加えられる熱(300℃超の加熱)の影響で化学反応を起こしやすくなる。この点、上述のようにパターニング膜3のパターン表面が酸化膜3bの形成によって不活性化されていると、たとえそのような高温環境で熱インプリントが実施されたとしても、パターニング膜3と金属ガラスとの接触界面で反応生成物の発生が抑制される。このため、被転写膜を金属ガラスで形成した場合でも、離型不良の発生や異物の発生を招くことなく、熱インプリントを実施することが可能となる。
【0045】
[第2の実施の形態]
<パターンドメディア作製用基板の製造方法およびパターンドメディアの製造方法>
図4図6は本発明の第2の実施の形態に係るパターンドメディア作製用基板の製造方法とこれによって得られるパターンドメディア作製用基板を用いたパターンドメディアの製造方法を示す工程図であり、図7はその工程手順を示すフローチャートである。
ここで記述するパターンドメディアとは、磁性層を物理的に分離してパターン化されたメディアをいい、具体的には、DTM(Discrete Track Media)、BPM(Bit-Patterned Media)などをいう。
【0046】
(第1の成膜工程:S21)
まず、図4(A)に示すように、パターンドメディア作製用基板の基材となるガラス基板11を用意したら、このガラス基板11の上に析出抑制膜12と磁性分離膜13を形成する。ガラス基板11と析出抑制膜12の各材料は、先述した第1の実施の形態と同様のものを用いることができる。磁性分離膜13は、たとえばシリコンの膜によって形成することができる。第1の成膜工程S21は、上述した第1の成膜工程S11と同様に行えばよい。
【0047】
(第1のベーク工程:S22)
次に、図4(B)に示すように、磁性分離膜13の表面をベーク処理により全面にわたって不活性化する。具体的には、ベーク処理によって磁性分離膜13の表面に自然酸化膜よりも厚い酸化膜13aを形成する。第1のベーク工程S22は、上述した第1のベーク工程S12と同様に行えばよい。
【0048】
(第2の成膜工程:S23)
次に、図4(C)に示すように、磁性分離膜13の上にハードマスク膜14を形成する。第2の成膜工程S23は、上述した第2の成膜工程13と同様に行えばよい。
【0049】
(インプリント工程:S24)
次に、図4(D)に示すように、ハードマスク膜14の上にレジスト膜15を形成するとともに、インプリント法によってレジストパターン15aを形成する。インプリント工程S24は、上述したインプリント工程S14と同様に行えばよい。
【0050】
(パターニング工程:S25)
次に、図5(A)に示すように、レジストパターン15aをマスクパターンとしてハードマスク膜14をエッチングし、さらにこれによって得られるハードマスクパターンをマスクパターンとして磁性分離膜13をエッチングする。パターニング工程S25は、上述したパターニング工程S15と同様に行えばよい。
【0051】
(剥離・洗浄工程:S26)
次に、図5(B)に示すように、上述した磁性分離膜13のエッチング後にパターン上に残ったハードマスク膜(ハードマスクパターン)14を剥離した後、洗浄処理を行う。剥離・洗浄工程S26は、上述した剥離・洗浄工程S16と同様に行えばよい。
【0052】
(第2のベーク工程:S27)
次に、図5(C)に示すように、磁性分離膜13のパターン表面をベーク処理により全面にわたって不活性化する。具体的には、ベーク処理によって磁性分離膜13のパターン表面に自然酸化膜よりも厚く強い酸化膜13bを形成する。第2のベーク工程S27は、上述した第2のベーク工程S17と同様に行えばよい。
【0053】
以上の工程により、ガラス基板11上に析出抑制膜12と磁性分離膜13を順に積層した構成のパターンドメディア作製用基板20が得られる。その後、パターンドメディア作製用基板20を用いてパターンドメディアを製造する場合は、パターンドメディア作製用基板20の製造元又は出荷先の工場等において以降の工程を行う。磁性分離膜13の凹凸パターンの寸法としては、たとえば、凹部の深さ寸法dが50nm以下、凹部の幅寸法wが50nm以下とする。
【0054】
(第3の成膜工程:S28)
上記の工程を経てパターンドメディア作製用基板20を製造したら、まず、図6(A)に示すように、磁性分離膜13の上に磁性膜16を形成する。磁性膜16の形成は、Co(コバルト)−Pt(白金)系磁性膜等の磁性材料をスパッタリング法にて用いて行えばよい。これにより、磁性分離膜13の凹凸パターンの凹部が磁性膜(磁性材料)16で埋め込まれる。このとき、あらかじめ磁性分離膜13の上に図示しない結晶配向膜(たとえば、ルテニウムを主成分とする膜)を形成しておき、この結晶配向膜を磁性分離膜13の凹部に露出させた状態で磁性膜16を成膜すれば、磁性膜16の結晶軸の方向を揃えることができる。
【0055】
(平坦化工程:S29)
次に、図6(B)に示すように、磁性分離膜13の表面を平坦化することにより、余分な磁性膜16を除去するとともに、磁性膜16を所望の膜厚に仕上げる。この平坦化工程S29は、たとえば、化学的機械研磨により行うとよい。この段階で必要に応じて洗浄する。
【0056】
(第4の成膜工程:S30)
次に、図6(C)に示すように、磁性分離膜13および磁性膜16の上に保護膜17を形成する。次いで、保護膜17の上に潤滑剤の塗布によって潤滑膜18を形成する。保護膜17は、たとえばカーボンによって形成するとよい。また、保護膜17の成膜は、たとえばCVD(化学的気相成長)法により行うとよい。潤滑膜18の形成は、保護膜17の上に潤滑剤を塗布することにより行うとよい。
【0057】
以上の工程により、パターンドメディア21が得られる。こうして得られるパターンドメディア21は、ガラス基板11上に析出抑制膜12を介して磁性分離膜13が形成されるとともに、この磁性分離膜13の凹凸パターンの凹部が磁性膜16で埋め込まれた構成となる。また、磁性分離膜13上に磁性膜16を覆う状態で保護膜17が形成され、さらに保護膜17の上に潤滑膜18が形成された構成となる。
【0058】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態においては、次のような効果が得られる。
【0059】
本発明の第2の実施の形態においては、ガラス基板11上に析出抑制膜12を介して磁性分離膜13を形成し、この磁性分離膜13に凹凸パターンを形成することにより、パターンドメディア作製用基板20を製造している。この一連の製造工程においては、上述した第1の問題および第2の問題を解消するために、パターニング工程S25を間に挟んで前後1回ずつの計2回のベーク処理を行っている。このため、2回のベーク処理が引き金になって、磁性分離膜13のパターン表面にアルカリ金属が析出するという上記第3の問題が起こり得る。この点、あらかじめガラス基板11と磁性分離膜13との間に析出抑制膜12を形成しておけば、仮に2回のベーク処理を行ったとしても、ガラス基板11から磁性分離膜13へのアルカリ金属の拡散とこれに伴うパターン表面へのアルカリ金属の析出を抑制することができる。
【0060】
また、上記2回のベーク処理を行わない場合でも、上記の製造方法によって得られたパターンドメディア作製用基板20を出荷した後に、パターンドメディア21の完成に至るまでの工程で何らかの理由により加熱する場合が考えられる。また、パターンドメディア21が完成し、これを製品として出荷した後でも、メディアの使用に際して高温に晒される場合があり得る。このため、仮に析出抑制膜12を形成しなかった場合は、パターンドメディア作製用基板20が完成した段階やパターンドメディア21が完成した段階で、磁性分離膜13のパターン表面にアルカリ金属の析出が認められなかったとしても、その後、経時的に熱の影響が蓄積される結果、ある段階を経過したときに初めてパターン表面にアルカリ金属が析出することが考えられる。この点についても、あらかじめガラス基板11と磁性分離膜13との間に析出抑制膜12を形成しておけば、パターンドメディア作製用基板20として完成した段階はもちろん、パターンドメディア21として完成した以降も、長期にわたってパターン表面へのアルカリ金属の析出を抑制することができる。このため、最終製品となるパターンドメディア21の信頼性や品質の向上に大いに貢献することができる。
【0061】
本発明の第2の実施の形態においては、ガラス基板11上に析出抑制膜12と磁性分離膜13を形成した後、磁性分離膜13の表面をベーク処理によって不活性化し、その後でハードマスク膜14を形成している。このため、磁性分離膜13とハードマスク膜14の界面における化学反応とこれに伴う反応生成物(本形態例ではSiとCrNの反応生成物)の発生を抑制することができる。したがって、その後のパターニング工程S25においては、上記反応生成物に起因したエッチング底面の荒れを解消することができる。
【0062】
本発明の第2の実施の形態においては、パターニング工程S25よりも後に第2のベーク工程S27を設けることにより、磁性分離膜13のパターン表面を不活性化している。このため、上記の製造方法によって得られたパターンドメディア作製用基板20を用いて、パターンドメディア20を製造する場合に、磁性分離膜13の凹凸パターンと磁性膜16との接触界面における化学反応とこれに伴う反応生成物の発生を抑制することができる。
本発明の第2の実施形態において、成膜された磁性体表面がドライエッチングに曝される事が無くなる為、磁性層ダメージ(エッチングに曝された表層数nmの磁性層結晶構造変化により磁気的性質が変化した時の実効的な体積減少)が無く、より微細構造のパターンドメディアにまで適している。
【0063】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0064】
アルカリ金属を含むガラス基板において、その表面を酸処理したものを用いても良い。 たとえば、上記第1の実施の形態においては、パターニング膜3をシリコン膜で構成したが、パターニング膜3は、シリコンを主成分とする膜、たとえばRFスパッタリングによるSiO膜であってもよい。この場合、シリコン膜の不活性化(第1のベーク、第2のベーク)は不要である。
【0065】
また、上記各実施の形態においては、析出抑制膜2、12を窒化クロム膜で構成したが、析出抑制膜2、12は、クロムを主成分とする膜だけでなく、たとえばTa(タンタル),W(タングステン),Mo(モリブデン)などの高融点金属の膜であってもよい。
ちなみに、本明細書において、ある成分を「主成分とする」とは、当該成分または当該成分を含む化合物の質量比(質量%)が50%以上である場合をいう。
【符号の説明】
【0066】
1,11…ガラス基板
2,12…析出抑制膜
3…パターニング膜
4,14…ハードマスク膜
5,15…レジスト膜
6…モールド
10…インプリント用モールド
13…磁性分離膜
16…磁性膜
20…インプリント用モールド
21…パターンドメディア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10