【実施例1】
【0012】
以下、本発明の一実施例を、図面を用いて説明する。
【0013】
まず、
図1を用いて、代表的な遠心型流体機械について説明する。
図1に羽根付きディフューザを有する流体機械の模式的な横断面図を示す。流体機械100において、モータの回転軸102の長さ方向を軸方向、直交する方向を半径方向とする。
【0014】
流体機械100は、モータの回転軸102にインペラ103が取り付けられ、その外周に羽根付きディフューザ104が設置されている。羽根付きディフューザ104は、複数枚の羽根を持つものである。羽根付きディフューザ104には、シュラウド側110に漏れを抑制するリング105と、ハブ面111を形成する仕切板108が設けられている。羽根付きディフューザ104の下流には、戻り流路106が形成されている。戻り流路106は、前記リング105乃至ディフューザを覆うケーシング109と仕切板108により形成されている。戻り流路106は、半径方向外側に向いた流路を内側に転向させるものである。戻り流路106の下流側には、リターンガイド107を有する。
【0015】
次に、流体機械100内の流体の流れを説明する。インペラ103の回転により吸込口101から流体が流入し、インペラ103で昇圧された後に、羽根付きディフューザ104の内部へ流入する。羽根付きディフューザ104は、インペラ103から流出された流体の流速を減速させることで静圧が上昇する。羽根付きディフューザ104を出た流れは、戻り流路106で半径方向外向きの流れから内向きの流れへと転向される。また、戻り流路106から出た流れはリターンガイド107により回転方向の旋回速度が減少され、下流側へ案内された後、所定の出口から排出される。
【0016】
なお、リターンガイド107の下流には、従来技術の電動送風機のようにモータ流路が構成されていても、または、図中のインペラ103とは異なるインペラが存在してもよい。また、
図1中のインペラ103は、シュラウド板を有するクローズドインペラを示しているが、シュラウド板がないオープンインペラでもよい。また、羽根付きディフューザ104は、リング105を介してケーシング109と接触する構成ではなく、ケーシング109と直接接触する構成でもよい。
【0017】
次に、
図2の送風機200について説明する。
図2は代表例としてインペラ201と羽根付きディフューザ202を示す。インペラ201は複数枚の羽根203、204から構成されており、羽根付きディフューザ202は複数枚のディフューザ羽根205、206により重なり部207が形成されている。なお、本実施例1では、インペラ羽根枚数をZ
i、ディフューザ羽根枚数をZ
dとし、インペラの一翼間角度360/Z
iが0.9×2×360/Z
d以上、1.1×3×360/Z
d以下の範囲となる構成を示す。なお、
図2は代表例として、インペラ羽根枚数Z
iが8枚、ディフューザ羽根枚数Z
dが15枚の場合を示す。
【0018】
また、本発明が対象とする流体機械の代表諸元について説明する。本発明に用いられる流体機械のインペラ外径はおおよそφ20mm〜φ400mmの範囲にあり、羽根出口高さはおおよそ3〜12mmの範囲にあり、最高回転数はおおよそ毎分20000〜150000回転の範囲にある。
【0019】
重なり部207は、隣り合うディフューザ羽根205,206と、仕切板と、で形成される部分であり、かつ、ディフューザ入口スロート部216からディフューザ羽根206の後縁208の内側の形状と直交する線上の重なり部出口211までとする。また、重なり部の長さL217は、重なり部207の形状に沿って略正接する円を書き、各円の中心を通る線の長さとする。なお、後縁208にテーパやR部などを設けた場合は、これらの部位を除いた最外径を後縁位置としてもよい。なお、重なり部の羽根面のうち、半径方向内側に位置する羽根面を圧力面218、半径方向外側に位置する羽根面を負圧面219と定義する。また、重なり部では、重なり部出口211を開口端とする定在波が存在し、所定の運転回転数で騒音が増加する課題を持つ。
【0020】
本発明は、定在波の抑制と重なり部の主流との混合損失を抑制するために、仕切板における各重なり部出口211の近傍に重なり部出口211と略平行に2つの孔209、210を設け、1つの重なり部に隣接する重なり部の仕切り板における重なり部出口219の近傍に212、213を設け、半径方向に外側の孔209と、回転方向の前向きに隣接する重なり部かつ、半径方向に内側の孔213とをつなぐ連結流路214を設けている。重なり部出口211と略平行の2つの孔209、210は重なり部の流路に略直交した場所である。2つの孔209,210は、重なり流路で静圧が略同一であり、2つの孔209,210の周りの流速差も小さい。すなわち、隣り合う重なり部など各異なる重なり部においても2つの孔の静圧が略同一である。つまり、孔209、210、212,213の静圧は略同一である。静圧が略同一であるため、孔209と孔213とをつなぐ連結流路214内の流速は小さい。連結流路214内を流れる空気の流速が小さいため、連結流路214内を流れる流路と重なり部を流れる流路(主流)との混合損失はそれほど大きいものではなく、無視できる。なお、2つの孔209,213をつなぐ連結流路214の幅は、孔の径と略一致であり、略一定の幅としている。
【0021】
また、連結流路214の長さ215は、連結流路の形状に沿って略正接する円を書き、各円の中心を通る線の長さである。なお、孔の大きさは、連結流路幅よりも小さくしてもよい。孔の大きさを小さくすることで、主流との混合損失をより小さくすることができるという効果を奏する。なお、重なり部に設ける2つの孔は、重なり流路に略直交していれば、重なり部出口近傍ではなく、重なり部の長さLの1/2から重なり部出口までの間に設置してもよい。なお、重なり部の長さLの1/2から重なり部の出口までの間に設置してもよいとしているのは、重なり部の定在波は、重なり部後半での圧力変動が大きいためである。また、重なり部の長さLの1/2から重なり部出口までの間であれば,重なり部流路内の流速変化が小さくなった場所となるため,各流路における孔の静圧が略同じとなり、主流との混合損失はそれほど大きいものではなくなるためである。
【0022】
次に、
図3に
図2の送風機を組み込んだ際の横断面図を示す。
図3は羽根付きディフューザ301のハブ側仕切板306に、2つの孔302、303が設けられ、隣接する重なり部をつなぐ連結流路304が構成されている。なお、ディフューザの構成はディフューザ羽根301とハブ仕切板306が一体で構成されている。また、連結流路304は仕切板306のリターンガイド側形状の一部と、連結流路304の一部を溝構造としたリターンガイド側仕切板305が合わさることで構成される。なお、ディフューザ羽根301を構成する部位とリターンガイド側仕切板305は、はめ合い構造307で芯や周方向位置が定まり、連結流路内の流れがディフューザ羽根間以外に漏れないように溶着や接着により貼付け、またはOリング等の漏れ防止構造が用いられている。なお、連結流路構成時は戻り流路の内側曲率半径が大きくなり、戻り流路で生じるはく離の抑制も可能である。また、前記連結流路は、パイプやチューブを用いた流路構成でもよい。なお、重なり部の出口に設けた孔はディフューザのリングに、連結流路はケーシングに構成してもよい。また、羽根付きディフューザは遠心型、斜流型でもよい。
【0023】
図4に、
図3に示したリターンガイド側仕切板305を400として改めて記述した図を示す。リターンガイド側仕切板400は、半径方向に外側の孔401と、回転方向の前向きに隣接する重なり部かつ、半径方向に内側の孔402とをつなぐよう溝403が設けられている。
【0024】
次に、
図5に連結流路長さAと重なり部の長さLの比による騒音レベルの比較結果を示す。なお、本比較はインペラ出口部に各周波数別の点音源を与えた音響解析結果である。
【0025】
図5から、連結流路無し時は、重なり部内の定在波により共鳴が生じ騒音が大きいことがわかる。一方、連結流路を設けた場合、長さ比A/Lが1.5より小さい場合は騒音レベルが小さいことがわかる。なお、連結流路の長さ比A/Lは、約1がよいことがわかる。これは、連結流路内の音波の位相と、重なり部の音波が逆位相となることで、定在波を打ち消しあうことができる最適範囲が存在するためである。なお、連結流路の最小長さは、隣接する重なり部出口の長さと関係し、長さ比A/Lが0.5より小さい場合は、連結流路を直線で構成しても流路が届かなくなり構成が難しくなる。また、隣り合う重なり部を連結する連結流路を設けた場合、長さ比A/Lが1.5より上では、連結流路内の音波の位相が隣り合う重なり部同士の音波の位相と近くなるために、騒音が増加する。また、連結流路長さを1.5より大きくすると、リターン側仕切板305の溝構造が複雑となる。溝構造が複雑となると、樹脂製の場合に連結流路を長くすることで仕切板が溝だらけになり、肉厚の不均一で(薄肉にもなる)ヒケも存在することになり成型時の樹脂流れが難しくなる恐れや、切削製作時の作業時間の拡大から製造コストが増加する恐れがある。すなわち、連結流路の長さには、重なり長さLとの関係で最適値が存在し、長さ比A/Lを略1とすると製造コストを増加させることなく低騒音化が図れる。
【0026】
すなわち、本実施例の構成にすれば、各重なり部に設けた2つの孔の圧力差が略同一であり、隣り合う重なり部の孔をつなぐ連結流路を設けることにより、重なり部の主流との混合損失を抑制でき効率低減を抑制でき、重なり部の長さLと連結流路の長さAの長さ比A/Lが0.5より大きく1.5より小さい場合は、重なり部の定在波を連結流路により抑制することができ、騒音の低減を図ることができる。
【0027】
ここで、
図8を用いて、電動送風機800の構成について説明する。
図8は電動送風機800の縦断面図である。電動送風機800は送風機801と電動機802から構成されている。
【0028】
電動機802は、一端が開口されたハウジング803と、このハウジング803の開口側に配置されたエンドブラケット804により電動機外殻を構成している。ロータ806の回転軸805はハウジング803の反開口側とエンドブラケット804により回転可能に支持され、この回転軸805にロータ806が取り付けられている。ロータ806の外周側にはステータ807が配置された構成となっている。ロータ806への電気の供給は、ブラシ808とそれに接触するコンミテータ809により伝えられる。ハウジング803内にはロータ806,ステータ807,ブラシ808が収納されている。
【0029】
送風機801は、回転軸805に固定され、吸込み口815を備えたインペラ810と、このインペラ810の外周側に配置されたディフューザ811と、このディフューザ811に対して仕切板812を挟んで対面に配置されるリターンガイド813とがファンケーシング814内に収められた構成となっている。ファンケーシング814は、ハウジング803の開口側に配置され、インペラ810,ディフューザ811,前記リターンガイド813を覆っている。仕切板812はインペラ810の背面側(反吸込み口側)に位置している。仕切板812の前面側にはディフューザ811が配置され、仕切り板812の後面側にはリターンガイド813が配置される。
【0030】
この構成において、電動送風機入口815から流入した空気は、まずインペラ810で昇圧及び増速される。その後、ディフューザ811を通過した流れは曲がり流路を経て略180°転向し、リターンガイド813へと流入するが、この過程において流れは減速されて、その分だけ圧力が上昇する。リターンガイド813を通過した流れは、電動機のハウジング803内に流入し、ロータ806,ステータ807,ブラシ808,コンミテータ809などを冷却してから排気される。
【0031】
掃除機に用いられる
図8のような電動送風機に、本実施例の構成の羽根付きディフューザを搭載すれば、重なり部出口に設けた2つの孔の圧力差が略同一であるために、重なり部の主流との混合損失を抑制でき、重なり部の定在波を連結流路により抑制することができ、高効率化と、幅広い運転回転数範囲での低騒音化が図れる。
【実施例2】
【0032】
次に、実施例2の送風機600の形状について
図6を用いて説明する。実施例1と基本的な構成は同じであるので同一要素については同一符号を付してその説明を省略する。ここでは、
図3中の送風機300に注目して記載し、送風機を600とし説明する。
【0033】
送風機600は、
図2の送風機部分と同じように、インペラ601は複数枚の羽根603、604から構成されており、羽根付きディフューザ602は複数枚のディフューザ羽根605、606により重なり部607が形成されている。なお、
図6は代表例として、インペラ羽根枚数Z
iが8枚、ディフューザ羽根枚数Z
dが11枚の場合を示す。なお、重なり部の定義は実施例1と同じである。
【0034】
本発明は、重なり部内で発生する定在波を抑制するために、一つ置きの重なり部出口610に重なり部出口と略平行に2つの孔608、609または、613、614を設け、半径方向に外側の孔608と、回転方向の前向きに一つ置きの重なり部611かつ、半径方向に内側の孔614とをつなぐ連結流路612を設けている。重なり部出口610と略平行の2つの孔は重なり部の流路に略直交した場所であり各重なり流路で静圧が略同一で、2つの孔周りの流速差も小さい。すなわち、異なる重なり部においても2つの孔の静圧が略同一であるため、連結流路内の流速は小さく、重なり部の主流との混合損失は無視できる。なお、2つの孔をつなぐ連結流路612の幅は、孔の径と略一定としている。なお、孔の大きさは、流路幅よりも小さくしてもよい。また、重なり部に設ける2つの孔は、重なり流路に略直交し重なり長さLの1/2から重なり部出口までの間に設置してもよい。なお、
図6の送風機を組み込んだ際の横断面図は
図3と、リターンガイド側仕切板の構成は
図4と略同一であるため省略する。
【0035】
次に、
図7に実施例2に記載の連結流路の有無による騒音レベルの比較を示す。なお、本比較はインペラ出口部に各周波数別の点音源を与えた音響解析結果である。連結流路無し時は、重なり部内の定在波により共鳴が生じ騒音が大きい。一方、連結流路を設けた場合、騒音レベルが小さいことがわかる。実施例2では、1つ置きの重なり部を連結しており、連結流路の長さAが重なり部の長さLに比べて大きくなり、長さ比A/Lは2以上となる。なお、1つ置きの重なり部を連結する連結流路を構成することで、重なり部の音波の位相が逆位相となる連結流路の長さが長くなり、長さ比A/Lが2以上でも低騒音化が図れる。また、1つ置きの重なり部を連結する場合は、連結流路の構成は略直線で構成でき、リターンガイド側仕切板の溝構造が簡素である。すなわち、例えば樹脂製の場合の成型時の樹脂流れが難しくなること、切削製作時の作業時間の拡大から製造コストの増加となることを回避できる。
【0036】
連結流路がある場合の騒音低減効果は、実施例1と同様に、連結流路内の音波の位相と、重なり部の音波が逆位相となることで、定在波を打ち消しあうことができるためである。すなわち、重なり部出口に設けた2つの孔の圧力差が略同一であるために、重なり部の主流との混合損失を抑制でき、重なり部の定在波を連結流路により抑制することができ、高効率化と低騒音化の両立が図れる。
【0037】
また、掃除機に用いられる電動送風機に、本実施例の構成の羽根付きディフューザを搭載すれば、重なり部出口に設けた2つの孔の圧力差が略同一であるために、重なり部の主流との混合損失を抑制でき、重なり部の定在波を連結流路により抑制することができ、高効率化と、幅広い運転回転数範囲での低騒音化が図れる。