特許第6446166号(P6446166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6446166自動車のサスペンションにおける車体上昇位置規定ストッパ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446166
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】自動車のサスペンションにおける車体上昇位置規定ストッパ
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/04 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B60G7/04
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-192652(P2013-192652)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-58766(P2015-58766A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304037418
【氏名又は名称】株式会社ムーンフェイス
(74)【代理人】
【識別番号】100101524
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 卓郎
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 意匠登録第1401396(JP,S)
【文献】 特開2001−080327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側の部材に固定され、自動車のサスペンションにおいてハブを車体に対して相対的に昇降可能に連結するアームが当接することによって、前記車体が前記ハブに対して相対的に上昇する際の限度位置を規定する車体上昇位置規定ストッパであって、
前記車体側の部材に対して固定用ボルトによって固定されるベース部材と、
結合用ボルトによって前記ベース部材に対して結合され、前記アームが当接する被当接部材とを有し、
前記固定用ボルトは、前記車体側の部材に形成された貫通孔を通して、前記ベース部材の下面である載置面に形成されたボルト穴に対して螺合されるものであり、
前記結合用ボルトは、前記ベース部材の上面である被接触面に形成されたボルト孔に対応し、前記被当接部材の下面である接触面から垂直に延びるものであり、
当該車体上昇位置規定ストッパが前記車体側の部材に固定された状態において、
前記ベース部材においては、前記載置面における前記ボルト穴よりも前記被接触面における前記ボルトの方が車外側に位置し、
被当接部材は、その基端部から先端部に向かって、上方に向かうにつれて前記車体側に向かうように、鉛直から傾斜して延びている、
車体上昇位置規定ストッパ。
【請求項2】
請求項1に記載の車体上昇位置規定ストッパであって、
前記ベース部材は、前記固定用ボルトの軸回りに前記車体側の部材に対して回転することを阻止する回り止め機能を有するものである、
車体上昇位置規定ストッパ。
【請求項3】
請求項2に記載の車体上昇位置規定ストッパであって、
前記ベース部材は、前記車体側の部材を挟持する一対の延出部を有し、当該一対の延出部によって前記回り止め機能を有するものである、
車体上昇位置規定ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサスペンションにおいて、車体の上昇の限度位置を規定する車体上昇位置規定ストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車においては、サスペンション(懸架装置)によって、車体に対して、ハブ(駆動輪の側の場合は車軸ともいえる)が、中立高さ位置を基準に昇降(上昇・下降)可能に連結されている。こうして、車体は、ハブ(車軸)に対して、中立高さ位置を基準に昇降(下降・上昇)可能とされている。
【0003】
すなわち、図9(a)に示すように、サスペンションは、アッパーアーム70A及びロワーアーム70Bを有し、各アーム70A,70Bは、その基端部において車体80側の回動軸81A,81Bを中心に揺動可能に連結され、各アーム70A,70Bの先端部はハブ支持材92に対して回動可能に連結されている。
また、ハブ支持材92(駆動輪の側の場合は車軸筒)は、スプリングやショックアブソーバ等を介して、車体80側に対して、連結されている。
ハブ90にはホイール(図示省略)が固定され、ホイールにはタイヤ95が取り付けられている。
【0004】
そのサスペンションに付随して、車体昇降位置規定ストッパ(車体下降位置規定ストッパ210,車体上昇位置規定ストッパ220)が設けられている。
各車体昇降位置規定ストッパ(車体下降位置規定ストッパ210,車体上昇位置規定ストッパ220)は、車体80がハブ90(車軸)に対して下降する限度位置や上昇する限度位置を規定し、それ以上に車体80が下降したり上昇したりすることを防止するものである。
例えば、車体上昇位置規定ストッパ220は、アッパーアーム70Aの下側において、車体80に固定されたブラケット60(車体80側の部材)に対して固定されている。そして、アッパーアーム70Aが車体上昇位置規定ストッパ220に当接することによって、車体80に対してそれ以上ハブ90(車軸)が下降することが防止され、ハブ90(車軸)に対して(すなわち、地面に対して)それ以上車体80が上昇することが防止される。
【0005】
一般的に、車体昇降位置規定ストッパ(車体下降位置規定ストッパ210,車体上昇位置規定ストッパ220)は、一の基準直線(中心軸線)を中心に対称的な形状をしている。
そして、例えば、図9(b)に示すように、中立位置のアッパーアーム70A(実線)が下降して、一点鎖線→二点鎖線で示すように車体上昇位置規定ストッパ220に当接する際、アッパーアーム70Aの当接部75はほぼ水平であり、車体上昇位置規定ストッパ220はほぼ鉛直上方に向いており、両者はほぼ垂直である。
このため、アッパーアーム70Aが車体上昇位置規定ストッパ220に当接する際に、車体上昇位置規定ストッパ220の中心軸線に対して垂直な断面に対してほぼ垂直方向に衝撃力が加わる。
このため、その衝撃力は、車体上昇位置規定ストッパ220に対して適切に伝わることとなり、その衝撃が円滑に緩和されることとなる。
本来的に、自動車は、そのように製造されている。
【0006】
ところで、自動車が購入された後、その自動車は、ユーザーの好みに応じて、車体80(その中立高さ位置)が本来の高さよりも低くなる(すなわち、ハブ90(車軸)が車体80に対して相対的に本来の高さよりも高くなる)ように調整される場合がある。
また、逆に、車体80(その中立高さ位置)が本来の高さよりもあえて高くなる(すなわち、車軸が車体80に対して相対的に本来の高さよりも低くなる)ように調整される場合もある。
【0007】
車体80(その中立高さ位置)が本来の高さよりも低くなるように調整される場合(図10)は、それに対応して、車体昇降位置規定ストッパ(車体下降位置規定ストッパ210,車体上昇位置規定ストッパ220)(図9)も取り換えられる。
すなわち、図10に示すように、車体下降位置規定ストッパ310は、純正(車体80の高さ変更前)の車体下降位置規定ストッパ210(図9)よりも高さが低いものであり、車体上昇位置規定ストッパ320は、純正の車体上昇位置規定ストッパ220(図9)よりも高さが高いものである。
【0008】
しかしながら、その場合は、例えば、図10(b)に示すように、中立位置のアッパーアーム70A(実線)が下降して、一点鎖線→二点鎖線で示すように車体上昇位置規定ストッパ320に当接する際、アッパーアーム70Aの当接部75は水平からかなり傾斜しており(車外側に向かうにつれて上方に向かう)、車体上昇位置規定ストッパ320はほぼ鉛直上方に向いており(上方に向かうにつれて若干車外側に向かう)、両者は垂直からかなりずれている。
このため、アッパーアーム70Aが車体上昇位置規定ストッパ320に当接する際に、車体上昇位置規定ストッパ320の中心軸線に対して垂直な断面に対して垂直からかなりずれた方向に衝撃力が加わる。
このため、その衝撃力は、車体上昇位置規定ストッパ320に対して適切には伝わらず、その衝撃が円滑に緩和されることが阻害される。
【0009】
上述の不具合を解消するために、本出願人が意匠権者である「自動車のサスペンションにおける車体上昇位置規定ストッパ用挟装材」という技術が存在する(特許文献1)。
これは、車体上昇位置規定ストッパと車体側の部材(ブラケット)との間にくさび状の縦断面を有する円環状の挟装材を挟装させて、その車体上昇位置規定ストッパの中心軸線の方向を矯正する、というものである。
車体(その中立高さ位置)が本来の高さから低くされる程度が所定以内の場合には、その技術によって、上述の不具合が解消される。
しかしながら、車体(その中立高さ位置)が本来の高さから低くされる程度が所定以上の場合には、やはり上述の不具合が解消しきれない、という問題が残る。
車体上昇位置規定ストッパの中心軸線の方向とは、車体上昇位置規定ストッパをブラケットに対して固定するための固定用ボルトを螺合させるボルト穴の方向であり、それを固定用ボルトの軸線方向と異なる方向に矯正するのには、おのずと限度があるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】意匠登録第1401396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、車体(その中立高さ位置)が本来の高さから低くされた際に、適切に、その車体の上昇の限度位置を規定することができるストッパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車体側の部材に固定され、自動車のサスペンションにおいてハブを車体に対して相対的に昇降可能に連結するアームが当接することによって、前記車体が前記ハブに対して相対的に上昇する際の限度位置を規定する車体上昇位置規定ストッパであって、前記車体側の部材に対して固定用ボルトによって固定されるベース部材と、結合用ボルトによって前記ベース部材に対して結合され、前記アームが当接する被当接部材とを有し、前記固定用ボルトは、前記車体側の部材に形成された貫通孔を通して、前記ベース部材の下面である載置面に形成されたボルト穴に対して螺合されるものであり、前記結合用ボルトは、前記ベース部材の上面である被接触面に形成されたボルト孔に対応し、前記被当接部材の下面である接触面から垂直に延びるものであり、当該車体上昇位置規定ストッパが前記車体側の部材に固定された状態において、前記ベース部材においては、前記載置面における前記ボルト穴よりも前記被接触面における前記ボルトの方が車外側に位置し、被当接部材は、その基端部から先端部に向かって、上方に向かうにつれて前記車体側に向かうように、鉛直から傾斜して延びている、車体上昇位置規定ストッパである。
【0013】
この発明の車体上昇位置規定ストッパでは、車体の高さが本来の高さから低くされた際において、アームが、被当接部材の向いている方向とほぼ垂直に当接することが可能となり得る。このため、その衝撃力は、車体上昇位置規定ストッパに対して適切に伝わることとなり、その衝撃が円滑に緩和されることとなる。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の車体上昇位置規定ストッパであって、前記ベース部材は、前記固定用ボルトの軸回りに前記車体側の部材に対して回転することを阻止する回り止め機能を有するものである、車体上昇位置規定ストッパである。
【0015】
この発明の車体上昇位置規定ストッパでは、請求項1に係る発明の車体上昇位置規定ストッパの作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
この発明の車体上昇位置規定ストッパでは、ベース部材が固定用ボルトの軸回りに車体側の部材に対して回転することが阻止されるため、ベース部材の向く方向が所定のものに維持され、ひいては、被当接部材の向く方向が所定のものに維持され得ることとなる。
こうして、車体の高さが本来の高さから低くされた際において、アームが、被当接部材の向いている方向とほぼ垂直に当接することが可能な状態に維持され得ることとなる。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の車体上昇位置規定ストッパであって、前記ベース部材は、前記車体側の部材を挟持する一対の延出部を有し、当該一対の延出部によって前記回り止め機能を有するものである、車体上昇位置規定ストッパである。
【0017】
この発明の車体上昇位置規定ストッパでは、請求項2に係る発明の車体上昇位置規定ストッパの作用効果がより具体的に得られる。
すなわち、この車体上昇位置規定ストッパでは、ベース部材が一対の延出部を有し、その一対の延出部が車体側の部材を挟持することによって、ベース部材が固定用ボルトの軸回り方向に回転することが阻止される。
こうして、車体の高さが本来の高さから低くされた際において、アームが、被当接部材の向いている方向とほぼ垂直に当接することが可能な状態に維持され得ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1の車体上昇位置規定ストッパを示す(併せてブラケットも示す)斜視図である。(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施例1(実施例2)の車体上昇位置規定ストッパを示す(併せてブラケットも示す)分解斜視図である。
図3】本発明の実施例1(実施例2)の車体上昇位置規定ストッパを示す(併せてブラケットも示す)分解縦断面図である。
図4】本発明の実施例1の車体上昇位置規定ストッパがブラケットに対して固定された状態を示す斜視図である。(a)は斜め上方から見た斜視図であり、(b)は斜め下方から見た斜視図である。
図5】本発明の実施例1の車体上昇位置規定ストッパがブラケットに対して固定された状態示す縦断面図である。
図6】本発明の実施例1の車体上昇位置規定ストッパを含むサスペンション(車体の高さが本来よりも低く調整された状態)を示す図である。(a)はその全体を概略的に示す図である。(b)はその要部を示す拡大図である。
図7】本発明の実施例2の車体上昇位置規定ストッパを示す(併せてブラケットも示す)斜視図である。
図8】本発明の実施例2の車体上昇位置規定ストッパがブラケットに対して固定された状態を示す縦断面図である。
図9】純正の車体上昇位置規定ストッパを含むサスペンション(車体の高さも本来のものままとされている)を示す図である。(a)はその全体を概略的に示す図である。(b)はその要部を示す拡大図である。
図10】従来の車体上昇位置規定ストッパを含むサスペンション(車体の高さが本来よりも低く調整された状態)を示す図である。(a)はその全体を概略的に示す図である。(b)はその要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施例1]
次に、本発明の実施例1の車体上昇位置規定ストッパ20について、図1図6に基づいて説明する。
まず、自動車のサスペンションについて説明する。なお、このサスペンションは、自動車の従動輪の側のものであり、車軸は存在していない。
図6(a)に示すように、サスペンションは、アッパーアーム70A及びロワーアーム70Bを有し、各アーム70A,70Bの基端部は、回動軸81A,81Bにおいて車体80側に回動可能に連結され、各アーム70A,70Bの先端部は、ハブ支持材92に回動可能に連結されている。こうして、各アーム70A,70Bは、車体80側の回動軸81A,81Bを中心に揺動可能である。
また、ハブ支持材92は、スプリングやショックアブソーバ等を介して、車体80側に対して、連結されている。
こうして、車体80に対して、ハブ90が、中立高さ位置を基準に上昇・下降可能に連結されている。すなわち、車体80は、ハブ90に対して、中立高さ位置を基準に下降・上昇可能とされている。
また、ハブ90にはホイール(図示省略)が固定され、ホイールにはタイヤ95が取り付けられている。
【0020】
そして、このサスペンションは、車体80(その中立高さ位置)が本来の高さ(図9)よりも低くなる(ハブ90が車体80に対して相対的に本来の高さよりも高くなる)ように調整された状態のものである。
【0021】
そのサスペンションに付随して、車体昇降位置規定ストッパ(車体下降位置規定ストッパ10,車体上昇位置規定ストッパ20)が設けられている。これらは純正のもの(図9)から交換されたものである。
【0022】
車体下降位置規定ストッパ10は、車体80がハブ90(タイヤ95)に対して下降する限度位置を規定するものであり、ロワーアーム70Bに設けられている。
すなわち、ロワーアーム70Bより上側において、車体80側に、被当接材82が設けられている。そして、車体下降位置規定ストッパ10が被当接材82に当接することによって、それ以上車体80がハブ90に対して下降することが防止されるのである。
【0023】
車体上昇位置規定ストッパ20は、車体80がハブ90(タイヤ95)に対して上昇する限度位置を規定するものであり、車体80側に設けられている。
すなわち、アッパーアーム70Aより下側において、車体80に対してブラケット60が固定されており、そのブラケット60(車体80側の部材)に車体上昇位置規定ストッパ20が固定される。そして、アッパーアーム70Aが車体上昇位置規定ストッパ20に当接することによって、それ以上車体80がハブ90に対して上昇することが防止されるのである。
【0024】
図1図3図5等に示すように、ブラケット60の上部は被載置部61であり、その上面が被載置面62である。そして、被載置部61とともに、被載置面62は、内側(車体側)から外側(車外側)に向かうにつれて徐々に下方に向かうように水平からわずかに傾斜している。被載置部61には、貫通孔63が形成されている。貫通孔63の周囲は窪んでいる。
【0025】
図1図3等に示すように、車体上昇位置規定ストッパ20は、ベース部材30,被当接部材40を有している。そして、両者が結合されて、車体上昇位置規定ストッパ20が形成されている。
また、図2及び図3に示すように、スペーサ50が伴っている場合もある。
【0026】
図1(b)及び図3に示すように、ベース部材30の下面は、平面状の載置面31である。
載置面31が水平になるようにされた状態で、ベース部材30は、やや円柱に近い形状を有しているとともに、上方に向かうにつれて一側方に向かうように、鉛直から傾斜している。
なお、図3に示すように、この一側方の向きのことを第1側方といい、その反対側の向きを第2側方ということとする。そして、第1側方及び第2側方からなる方向を基準方向ということとする。
【0027】
図1図3に示すように、載置面31は、ブラケット60の被載置面62に対応している。図3に示すように、載置面31には、ボルト穴32が形成されている。ボルト穴32は、ブラケット60の貫通孔63に対応して形成されている。ボルト穴32は、ベース部材30の下面(載置面31)の中央よりも若干第2側方の位置において、載置面31から垂直に延びている。
【0028】
図1図3等に示すように、載置面31の両側には下垂部33(延出部)が形成されている。一対の下垂部33は、上述の基準方向とは垂直方向に対面しており、上述の基準方向に沿って延びている。両下垂部33の間の間隔は、ブラケット60の被載置部61の幅に対応している。
【0029】
図2及び図3に示すように、ベース部材30の上面は、平面状の被接触面35である。被接触面35は円形状をしている。
図3に示すように、被接触面35は、第2側方から第1側方に向かうにつれて、上方に向かうように水平から傾斜している。
【0030】
被接触面35には、ボルト孔36が形成されている。ボルト孔36は、被接触面35から垂直に延びている。すなわち、ボルト孔36は、下方に向かうにつれて第1側方に向かうように鉛直から傾斜して延びている。
ベース部材30の下面(載置面31)には、ボルト孔36に対応して、ナット嵌合穴37が形成されている。ナット嵌合穴37は、被接触面35に向かって、被接触面35に対して垂直に延びている。すなわち、ナット嵌合穴37は、ボルト孔36よりも大径であり、ボルト孔36と同心的に延びており、上方に向かうにつれて第2側方に向かうように鉛直から傾斜して延びている。
ナット嵌合穴37は、載置面31のうちの第1側方における端部近傍において開口している。
【0031】
図1図3に示すように、被当接部材40は、ほぼ円柱をしている。すなわち、一の軸線(中心軸線)を中心に対称的な形状をしている。
被当接部材40は、シリコンゴム等の弾性体によって形成されており、弾性的に変形可能である。
被当接部材40の上面は、上方に凸状に丸く膨らんでいる。また、被当接部材40は、中途高さ位置において、同心的に径が若干異なっており、下側よりも上側の方が若干小径に形成されている。
なお、被当接部材40(ベース部材30に結合されていない状態)における上下方向は、その中心軸線を垂直にした状態に基づくものである。
【0032】
図3に示すように、被当接部材40の下面は、平面状の接触面41であり、ベース部材30の被接触面35に対応している。すなわち、接触面41は、ベース部材30の被接触面35とほぼ同径の円形状をしている。
接触面41の中央(中心軸線上)には、結合用ボルト45(傘付きのボルト)が取り付けられている。すなわち、被当接部材40を形成する溶融樹脂にボルトの頭部46及び傘部48(複数の小孔を有する)が埋められた状態で被当接部材40が成形されており、結合用ボルト45の頭部46及び傘部48は、被当接部材40と一体化した状態で被当接部材40の内部に位置している。
結合用ボルト45の軸部47は、ベース30のボルト孔36及びナット嵌合穴37に対応して、接触面41から垂直に(すなわち、被当接部材40の中心軸線上に沿って)延びている。
【0033】
図2及び図3に示すように、被当接部材40とベース部材30とは、次のようにして結合されている。
すなわち、ナット38(フランジ付き)がナット嵌合穴37に嵌合された状態で、被当接部材40が結合用ボルト45の軸回り方向に回転されることによって、結合用ボルト45の軸部47がベース部材30のボルト孔36及びナット38に対して螺合される。そして、ベース部材30の被接触面35に対して被当接部材40の接触面41が接触するようにされる。
このようにベース部材30と被当接部材40とが結合されて、車体上昇位置規定ストッパ20(図1図5)が形成されている。
【0034】
次に、この車体上昇位置規定ストッパ20の使用方法及び作用効果について説明する。
図1図5に示すように、この車体上昇位置規定ストッパ20は、ベース部材30の載置面31がブラケット60の被載置面62に対して載置された状態で、被載置部61の下方から、固定用ボルト65(ワッシャ66を伴う)の軸部(符号省略)が貫通孔63に貫通されボルト穴32に螺合されることによって、ブラケット60に対して固定される。
その際、図5に示すように、第1側方が、車外側に向かう向きに対応し(その向きよりも若干上方を向かう)、第2側方が、車体側に向かう向きに対応する(その向きよりも若干下方に向かう)。このようになるように、車体上昇位置規定ストッパ20がブラケット60に対して固定される。
【0035】
その状態において、図4に示すように、車体上昇位置規定ストッパ20(ベース部材30)の一対の下垂部33によって、ブラケット60の被載置部61が挟まれている。このため、この車体上昇位置規定ストッパ20が固定用ボルト65の軸回り方向に回転することが防止される。
【0036】
図5に示すように、ブラケット60の被載置面62が水平からわずかながら傾斜しているため(このことは前述)、車体上昇位置規定ストッパ20は、上述のようにしてブラケット60に対して固定された状態で、ベース部材30の被載置面62が水平にされた状態(図3)よりも若干傾斜している。
すなわち、固定用ボルト65は、上方に向かうにつれて車外側に向かうように、鉛直から若干傾斜して延びている。
ベース部材30は、上方に向かうにつれて車外側に向かうように、鉛直から傾斜して延びている(その向きに向いている)。なお、その傾斜度合い(角度)は、ベース部材30の被載置面62が水平にされた状態(図3)よりも若干大きいものである。
被当接部材40及び結合用ボルト45は、上方に向かうにつれて内側(車体側)に向かうように、鉛直から傾斜して延びている。なお、その傾斜度合い(角度)は、ベース部材30の被載置面62が水平にされた状態(図3)よりも若干小さいものである。
また、ベース部材30が上方に向かうにつれて鉛直から傾斜して延びる向き(車外側)と、被当接部材40及び結合用ボルト45が上方に向かうにつれて鉛直から傾斜して延びる向き(車体側)とは、自動車の幅方向において反対の向きである。
【0037】
以上のため、図6に示すように、車体80(その中立高さ位置)が本来の高さ(図9)よりもあえて低くなる(ハブ90が車体80に対して相対的に本来の高さよりも高くなる)ように調整された状態において、次のようになる。
【0038】
各回動軸81A,81Bは、車体80とともに、本来の状態(図9)よりも低い位置にあって(ハブ90に対して相対的に低い位置にあり、ひいては、地面に対して低い位置にある)、アッパーアーム70A及びロワーアーム70Bは、回動軸81A,81Bを中心に、上方に向けて揺動した状態となっている。
そして、車体80がハブ90に対して上昇しようとして、アッパーアーム70Aが相対的に下方に変位(揺動)する際、次のようになる。すなわち、中立位置(実線参照)に位置していたアッパーアーム70A(当接部75)は、一点鎖線で示すように車体上昇位置規定ストッパ20に対して当接し(正確には当接し始め)、車体上昇位置規定ストッパ20(被当接部材40)が弾性的に圧縮されつつ、二点鎖線で示すように、さらに下方に変位(揺動)する。
【0039】
このようにアッパーアーム70Aが車体上昇位置規定ストッパ20(被当接部材40)に当接する際、アッパーアーム70Aの当接部75は、アッパーアーム70Aの基端部(回動軸81A)の側からその先端部の側に向かうにつれて上方に向かうように水平から傾斜している。一方、前述したように、車体上昇位置規定ストッパ20がブラケット60に固定された状態において、被当接部材40は、上方に向かうにつれて内側(車体側)に向かうように、鉛直から傾斜して延びており、両者はほぼ垂直である。
このため、アッパーアーム70A(当接部75)が車体上昇位置規定ストッパ20に当接する際に、被当接部材40の長さ方向に、すなわち、被当接部材40の中心軸線に対して垂直な断面に対してほぼ垂直方向に衝撃力が加わる。
このため、その衝撃力は、車体上昇位置規定ストッパ20に対して適切に伝わることとなり、その衝撃が円滑に緩和されることとなる。
【0040】
また、同じく前述したように、車体上昇位置規定ストッパ20がブラケット60に固定された状態において、ベース部材30が上方に向かうにつれて鉛直から傾斜して延びる向き(車外側)と、被当接部材40及び結合用ボルト45が上方に向かうにつれて鉛直から傾斜して延びる向き(車体側)とは、自動車の幅方向において反対の向きである。
このため、被当接部材40の先端部は、自動車の幅方向において、本来の位置からずれることが防止又は軽減され、アッパーアーム70Aのうちの当接部75が被当接部材40に当接することが確保されている。
この点からも、その衝撃力は、車体上昇位置規定ストッパ20に対して適切に伝わることとなり、その衝撃が円滑に緩和されることとなる。
【0041】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2について、図2及び図3並びに図7及び図8に基づいて、実施例1との相違点を中心に説明する。
この実施例(使用例)においては、図2及び図3に示すように、ベース部材30と被当接部材40とが結合される際に両者間にスペーサ50が介装されて、車体上昇位置規定ストッパ120が形成される。
【0042】
スペーサ50は円板状をしており、その中心には貫通孔51が形成されている。
そして、図2図3図8に示すように、結合用ボルト45の軸部47が貫通孔51に挿通した状態で、結合用ボルト45の軸部47がベース部材30のボルト孔36に螺合されナット嵌合穴37に対して挿入されつつ、ベース部材30の被接触面35に対してスペーサ50の第1面52aが接触し、スペーサ50の第2面52bに対して被当接部材40の接触面41が接触するようにされる。
その状態で、ナット嵌合穴37に嵌合されたナット38(フランジ付き)が結合用ボルト45(その軸部47)に対して螺合され締め付けられる。
このようにして、図7に示すように、スペーサ50を挟んでベース部材30と被当接部材40とが結合されて、車体上昇位置規定ストッパ120が形成されている。
【0043】
この車体上昇位置規定ストッパ120では、実施例1の車体上昇位置規定ストッパ20よりも高さが高いため、実施例1の場合よりも、車体80(図6)の上昇限度位置が低いものとなる。
【0044】
なお、上述のものはあくまで本発明の実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0045】
例えば、上記実施例では、被当接部材40は、結合用ボルト45の軸線を中心に対称な形状を有しており、被当接部材40の向いている方向と、結合用ボルト45の軸線方向とは同一であるが、被当接部材(40)は、結合用ボルト45の軸線を中心に対称な形状を有さず、被当接部材(40)の向く方向と結合用ボルト45の軸線方向とが異なっていてもよい。その場合は、被当接部材(40)の回り止めをする機構があることが望ましい。
車体上昇位置規定ストッパ(20)は、従動輪の側のサスペンションではなく、駆動輪の側のサスペンションに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0046】
20,120 車体上昇位置規定ストッパ
30 ベース部材
33 下垂部(延出部)
40 被当接部材
45 結合用ボルト
60 ブラケット(車体側の部材)
65 固定用ボルト
70A アッパーアーム(アーム)
80 車体
90 ハブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10