(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カールコードの一端部は、前記スライドブラケットに取り付けられた、前記カールコードを所定位置に保持するコード保持ブラケットを介して、前記スライドブラケットに固定された、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のスライド窓。
前記カールコードの一端部が、前記スライドブラケットに取り付けられた、前記カールコードを所定位置に保持するコード保持ブラケットを介して、前記スライドブラケットに固定された、
ことを特徴とする請求項12に記載の給電装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、スライド窓が適用される車両の一例を示す。
【0011】
ピックアップトラック100は、キャビン110(車体)の後方に開放式(無蓋)の荷台120を有する。キャビン110の後面で開口する開口部112には、スライド窓を備えたリヤウインドウ200が取り付けられる。ここで、キャビン110の開口部112は、ピックアップトラック100の車幅方向に沿って台形形状に開口している。なお、「台形形状」とは、完全な台形形状に限らず、見た目で台形形状であると認識できる程度でよい。また、キャビン110の開口部112は、台形形状に限らず、例えば、矩形形状など他の形状をなしていてもよい。
【0012】
リヤウインドウ200は、
図2に示すように、キャビン110の開口部112に取り付けられる窓枠部材210を有する。窓枠部材210は、ピックアップトラック100の車幅方向に延びる樹脂製の部材であって、例えば、接着剤などの締結具、又は、溝への嵌め込みなどにより、その周縁部がキャビン110の開口部112に固定される。
【0013】
窓枠部材210には、スライド可能に取り付けられたスライドパネル230のスライド方向に延びるガイドレール310が一体化されている。ガイドレール310には、後述するように、ガイドレール310にスライド可能に結合されるスライド部、及び、スライドパネル230に固定される固定部が一体化されたスライドブラケット320が取り付けられている。そして、ガイドレール310に沿って配設された一方向に伸縮可能なカールコード400が、スライドパネル230の電気器具に電力を給電する。即ち、車両レイアウトが容易であるカールコード400によって、スライドパネル230の電気器具に常時給電できるようにする。
以下、このように構成されるスライド窓の詳細について説明を続ける。
【0014】
窓枠部材210は、周縁部を除く中央部が開口された開口部212を有し、開口部212の長手方向の両端部、即ち、開口部212の左右両端部に固定パネル220が取り付けられる。固定パネル220は、例えば、透明若しくは半透明のガラス板や樹脂板又は金属板などからなり、窓枠部材210に対して、接着剤などの締結具、又は、溝への嵌め込みなどにより固定される。従って、窓枠部材210の開口部212の左右に配置された一対の固定パネル220の間には、キャビン110の内部と外部とを連通する開口が形成される。なお、固定パネル220は、窓枠部材210と一体成型するか一体化されるように構成してもよい。
【0015】
窓枠部材210の車幅方向の中央上下には、
図3に示すように、リヤウインドウ200の開口を開閉するスライドパネル230の上端部及び下端部を車幅方向にスライド可能に支持する、例えば、横断面がチャンネル形状(U字形状、コ字形状)であって、上下一対のレール240が相対する面を開放して一体化されている。レール240は、例えば、アルミニウム合金などの金属からなり、窓枠部材210に対する取付位置精度を向上させるべく、窓枠部材210を一体成型するときに樹脂と一体化される。スライドパネル230は、例えば、透明若しくは半透明のガラス板や樹脂板又は金属板などからなる。なお、「チャンネル形状」とは、見た目でチャンネルの形状であると認識できる程度でよい。
【0016】
固定パネル220及びスライドパネル230の内面、即ち、キャビン110の内部を向く面には、デフロスターとしての熱線222及び232が夫々プリントされている。熱線222及び232は、固定パネル220及びスライドパネル230を製造するときに一体化するようにしてもよい。固定パネル220の下部には、熱線222に電力を給電するためのコネクタ224が取り付けられている。固定パネル220のコネクタ224は、例えば、定電圧装置及びリレーを介して、ピックアップトラック100に搭載されたバッテリ(図示せず)に接続されている。また、スライドパネル230の下部には、熱線232に電力を給電するための一対の端子234が形成されている。なお、熱線222及び232が、電気器具の一例として挙げられる。
【0017】
窓枠部材210の下部内面の離間した2位置には、スライドパネル230を電動でスライドさせる電動スライド機構300を固定するため、
図4に示すように、左右一対の第1のブラケット250が夫々取り付けられている。左右一対の第1のブラケット250は、例えば、アルミニウム合金などの金属からなり、ハット形状の板部材252と、板部材252の先端から外方へと延びるピン部材254と、を有する。そして、第1のブラケット250の板部材252の基部が、例えば、接着剤などの締結具を介して、窓枠部材210の所定位置に固定される。ここで、「ハット形状」とは、完全なハット形状に限らず、見た目でハット形状であると認識できる程度でよい。なお、第1のブラケット250は、窓枠部材210を一体成型するときに樹脂と一体化するようにしてもよい。
【0018】
また、スライドパネル230の下部内面には、
図4に示すように、上下一対のレール240に対するスライドパネル230の相対位置を規制するための第2のブラケット260が取り付けられている。第2のブラケット260は、例えば、アルミニウム合金などの金属からなり、ハット形状が2つ連続する板部材262と、板部材262の先端から外方へと延びる2つのピン部材264と、を有する。そして、第2のブラケット260の板部材262の基部が、例えば、接着剤などの締結具を介して、スライドパネル230の所定位置に固定される。なお、第2のブラケット260は、スライドパネル230を製造するときに一体化するようにしてもよい。
【0019】
第1のブラケット250を介して窓枠部材210に固定される電動スライド機構300は、
図5に示すように、スライドパネル230のスライド方向に延び、スライドパネル230をスライド方向にガイドするガイドレール310を有する。ガイドレール310は、アルミニウム合金などの金属からなり、その軸方向の全長に亘って、
図3に示すように、その上部に円弧形状の上部スライド溝312が形成されていると共に、その下部にチャンネル形状(コ字形状)の下部スライド溝314が形成されている。ここで、「円弧形状」とは、完全な円弧形状に限らず、見た目で円弧形状であると認識できる程度でよい。また、ガイドレール310の上下方向の中央には、軽量化のための空洞316が形成されていると共に、第1のブラケット250のピン部材254を挿通するための挿通孔318が形成されている。
【0020】
ガイドレール310の上部スライド溝312には、スライドブラケット320が上部スライド溝312に沿ってスライド可能に結合されている。スライドブラケット320は、
図3に示すように、上部スライド溝312の円弧形状に倣った外形をなす筒状体のスライド部材322と、スライド部材322の上部後方から上方へと延びてスライドパネル230を固定するための第1の板部材324と、第2の板部材326と、ブロック328と、を有する。スライド部材322は、上部スライド溝312の軸方向の周りに所定角度だけ回転可能となっているため、ガイドレール310とスライドパネル230との取付位置精度の公差が吸収され、スライドパネル230をスムーズに開閉できるようになっている。スライド部材322が回転可能な所定角度は、上部スライド溝312の開口に第1の板部材324の板面が当接する範囲となる。第1の板部材324は、
図6に示すように、側面視でT字形状をなし、その両側方へと延びる部位に、第2のブラケット260のピン部材264を挿通するための挿通孔324Aが夫々形成されている。ここで、「T字形状」とは、完全なT字形状に限らず、見た目でT字形状であると認識できる程度でよい。また、スライド部材322は、ガイドレール310に対してスライドするため、例えば、摩擦係数が小さい樹脂からなる一方、第1の板部材324は、例えば、アルミニウム合金などの金属からなる。
【0021】
スライドブラケット320の第2の板部材326は、側面視でL字形状をなし、第1の板部材324の背面に配設される。ここで、「L字形状」とは、完全なL字形状に限らず、見た目でL字形状であると認識できる程度でよい。第2の板部材326は、例えば、アルミニウム合金などの金属からなり、ガイドレール310の下部スライド溝314に対向しつつ後方へと延びた後、その後端から上方へと延びるL字形状をなしている。第2の板部材326は、
図5に示すように、第1の板部材324と同様な側面視でT字形状をなす部分を有し、その両側方へと延びる部位に、第2のブラケット260のピン部材264を挿通するための挿通孔326Aが夫々形成されている。なお、第2の板部材326の上下方向に延びる部位は、第1の板部材324の上下方向に延びる部位よりも狭くなっており、両者の間に段差ができている。この段差は、後述するコード保持ブラケット330を介して、スライドパネル230の熱線232に電力を供給する電源コードを通すための隙間として利用される。
【0022】
ここで、スライドブラケット320のスライド部材322が、スライド部の一例として挙げられると共に、スライドブラケット320の第2の板部材326のうち第2のブラケット260に固定される部分が、固定部の一例として挙げられる。
【0023】
スライドブラケット320の第2の板部材326のうち、ガイドレール310の下部スライド溝314に対向する部位には、
図3に示すように、下部スライド溝314にスライド可能に嵌合する、例えば、樹脂製のブロック328が取り付けられている。従って、第2のブラケット260のピン部材264を、スライドブラケット320における第1の板部材324の挿通孔324A及び第2の板部材326の挿通孔326Aに挿通し、その先端にナットなどの締結具を螺合して一体化すると、スライドブラケット320の第1の板部材324と第2の板部材326とでガイドレール310を上下に挟むこととなる。このため、ガイドレール310の垂直面上におけるスライドブラケット320の移動が規制され、スライドブラケット320に連結されるスライドパネル230の位置精度を向上させることができる。
【0024】
要するに、スライドパネル230と平行な面において、ガイドレール310の対向する2面がスライドブラケット320の第1の板部材324及び第2の板部材326により挟まれ、ガイドレール310の垂直面上におけるスライドブラケット320の移動が規制される。
【0025】
また、スライドブラケット320の第2の板部材326の両側面のうち、ガイドレール310の反対側に位置する側面には、
図3に示すように、電源コードを所定位置に保持する、コード保持ブラケット330が取り付けられている。コード保持ブラケット330は、例えば、プラスチックなどの樹脂、アルミニウム合金などの金属からなる。
【0026】
コード保持ブラケット330は、
図7及び
図8に示すように、スライドブラケット320の第2の板部材326への取付部となる平板形状のベース部332と、ベース部332の下端部からガイドレール310の軸方向に沿って延びる、チャンネル形状の横断面をなす延出部334と、を有する。延出部334の先端部には、電源コードを固定するためのコード固定部336が形成されている。コード固定部336の上下方向の両側面のうち、延出部334を挟んでベース部332と反対側に位置する側面には、その外方へと向かって延びる、C字形状をなすC字ガイド部338が突設されている。即ち、C字ガイド部338は、ベース部332に一体的に保持されている。ここで、「C字形状」とは、見た目でC字形状であると認識できる程度でよい。また、延出部334の先端部の両側面のうち、C字ガイド部338が突設されている側面には、C字ガイド部338からベース部材332の方向に所定間隔隔てた位置において、その外方へと向かって突出する突状ガイド部340が一体的に形成されている。さらに、延出部334の基端部には、上方に向かって逆L字形状に延出する、チャンネル形状の横断面を有する延出部342が形成されている。
【0027】
ガイドレール310に取り付けられたスライドブラケット320は、電動モータを内蔵した駆動ユニット350で摺動(往復走行)する一対のケーブル360に連動して、ガイドレール310に沿って移動する。ここで、駆動ユニット350は、電動モータの出力回転を減速する減速機を内蔵してもよい。また、ケーブル360は、筒状のアウターケーブルと、アウターケーブルの内部を摺動するインナーケーブルと、を有する。そして、スライドブラケット320のスライド部材322には、一対のケーブル360のインナーケーブルの先端が夫々連結されている。なお、駆動ユニット350は、ピックアップトラック100のキャビン110の図示しないリヤパネルに取り付けられている。
【0028】
ガイドレール310の両端には、ケーブル360のインナーケーブルの摺動方向を変向する機能を備えたジョイント370が夫々固定されている。ガイドレール310の一端に固定されたジョイント370には、スライドブラケット320を経由してスライドパネル230の熱線232に電力を給電するために、一方向に伸縮可能な、カールコード400の螺旋部位の基端部が固定されている。カールコード400の螺旋部位の基端部は、例えば、定電圧装置及びリレーが配設された電源ハーネスなどを介して、ピックアップトラック100に搭載されたバッテリに接続されている。なお、カールコード400が、一方向に伸縮可能な電源コードの一例として挙げられる。
【0029】
カールコード400は、
図3に示すように、ガイドレール310の下方であって、キャビン110のリヤパネルを構成するインナーパネル114とトリムボード116とに挟まれた空間内に配設される。そして、カールコード400の配設位置を規制するため、カールコード400の螺旋部位の内部には、ガイドレール310に沿って延びる保持パイプ410が内挿されている。保持パイプ410の両端は、ガイドレール310の両端に固定されたジョイント370に夫々固定され、ガイドレール310と一体化されている。従って、カールコード400は、ガイドレール310に沿って配設されることとなる。なお、保持パイプ410が、カールコード400の位置を保持する保持部材の一例として挙げられる。ここで、保持部材としては、パイプ形状の保持パイプ410に限らず、スライドパネル230のスライドに伴って、カールコード400の伸縮が阻害されないようにカールコード400を保持する部材であれば、如何なる形状をなしていてもよい。
【0030】
カールコード400の螺旋部位より先の自由端部は、
図8に示すように、スライドブラケット320と一体化されたコード保持ブラケット330の延出部334に沿って、第1の板部材324と第2の板部材326との段差位置まで導かれた後、コード保持ブラケット330の延出部342に沿って上方へと導かれる。ここで、カールコード400の自由端部は、コード保持ブラケット330の延出部334及び342に収納可能なように、その外装材420が剥かれてリード線430のみとなっている。そして、カールコード400の自由端部は、スライドパネル320の端子234に接続される。このとき、コード保持ブラケット330に対するカールコード400の固定を確実ならしめるために、カールコード400の螺旋部位の先端部(一端部)がコード保持ブラケット330のコード固定部336に結束バンドなどの固定具で固定されている。
【0031】
ここで、カールコード400の固定方法の詳細について説明する。
カールコード400の螺旋部位の基端部は、
図8に示すように、螺旋部位の基端部が引き延ばさ
れてその伸縮方向でジョイント370
を挟み込んでおり、ジョイント370の外面に形成されたバンド挿通孔(図示せず)に挿通された結束バンド344を介して、ジョイント370に固定されている。即ち、カールコード400の螺旋部位の基端部は、螺旋部位の弾性復元力によってジョイント370に
保持されている。このため、カールコード400が伸縮しても、その伸縮により生じるねじれ方向の荷重変位が結束バンド344に到達する前に、ジョイント370を
挟み込んでいる螺旋部位で吸収され、カールコード400の螺旋部位の基端部における応力集中を緩和することができる。従って、カールコード400の螺旋部位の基端部における、耐久性及び信頼性などを向上させることができる。なお、カールコード400の螺旋部位の基端部は、結束バンド344に限らず、公知の固定具を介して、ジョイント370から片持ち状態で突出する係止突起に係止された固定具を介して、又は、直接的に、ジョイント370に固定されていてもよい。また、カールコード400の螺旋部位の基端部は、ジョイント370に限らず、ピックアップトラック100のキャビン110を構成するパネルなどに固定されていてもよい。
【0032】
カールコード400の螺旋部位の先端部は、コード保持ブラケット330のC字ガイド部338と突状ガイド部340との間に引き延ばさ
れてその伸縮方向でコード保持ブラケット330を挟み込んでおり、コード固定部336に形成されたバンド挿通孔(図示せず)に挿通された結束バンド346を介して、コード保持ブラケット330に固定されている。即ち、カールコード400の螺旋部位の先端部は、螺旋部位の弾性復元力によってコード保持ブラケット330に
保持されている。このため、カールコード400の螺旋部位の基端部と同様に、耐久性及び信頼性などを向上させることができる。なお、カールコード400の螺旋部位の先端部は、結束バンド346に限らず、公知の固定具を介して、コード保持ブラケット330から片持ち状態で突出する係止突起に係止された固定具を介して、又は、直接的に、コード保持ブラケット330に固定されていてもよい。また、カールコード400の螺旋部位の先端部は、スライドブラケット320に直接固定されていてもよい。
【0033】
コード保持ブラケット330のコード固定部336から先のカールコード400は、外装材420が剥かれてリード線430が露出されている。リード線430は、コード保持ブラケット330の延出部334及び342に沿って配索されている。このため、コード保持ブラケット330の延出部334及び342には、リード線430の配索方向に沿って、リード線430を挟んで係合する、複数の係合突起348が形成されている。このようにすれば、例えば、ピックアップトラック100の走行による振動がカールコード400に伝達されても、外装材420が剥かれて露出したリード線430は、その周辺に配置されている部材に接触せず、耐久性などを向上させることができる。
【0034】
このとき、カールコード400の一部は、外装材420が剥かれてリード線430が露出しているため、スライドブラケット320の第1の板部材324と第2の板部材326との間の段差を利用して、狭い空間にカールコード400を配索することができる。
【0035】
従って、カールコード400は、ガイドレール310に対するスライドブラケット320のスライドに追従して螺旋部位が伸縮する。このため、カールコード400の螺旋部位は、少なくとも、スライドパネル230が全開となった全開位置と、スライドパネル230が全閉となった全閉位置と、の間で伸縮可能な長さを有していればよい。
【0036】
次に、かかるスライド窓の開閉動作について説明する。
リヤウインドウ200のスライドパネル230を開閉するために、例えば、ピックアップトラック100の運転者がスイッチを操作すると、スイッチの操作状態に応じて駆動ユニット350が作動する。駆動ユニット350が作動すると、ケーブル360のアウターケーブルに内挿されたインナーケーブルが摺動し、ジョイント370によりインナーケーブルの摺動方向が変向されつつ、その駆動力がスライドブラケット320のスライド部材322へと伝達される。すると、ガイドレール310に対してスライドブラケット320がスライドし、例えば、
図9に示すように、スライドブラケット320と一体化されているスライドパネル230が開く。
【0037】
このとき、スライドブラケット320の第2の板部材326に取り付けられたブロック328は、その一部がガイドレール310の下部スライド溝314に嵌合されているため、ガイドレール310の垂直面上におけるスライドブラケット320の移動を規制する。このため、レール240に対するスライドパネル230の位置精度が向上し、スライドパネル230をスムーズに開閉することができる。
【0038】
また、スライドパネル230の開閉に伴って、
図4及び
図9に示すように、スライドパネル230の熱線232に電力を給電するカールコード400が伸縮するため、スライドパネル230の開閉状態にかかわらず、熱線232に電力を常時給電することができる。このため、スライドパネル230が開いているときにも、デフロスターを作動させてスライドパネル230の曇りを除去することが可能となり、後方視界を確保することができる。
【0039】
カールコード400が一方向に伸縮することから、スライドパネル230の熱線232に電力を給電する電源コードが占有するスペースが小さくなり、例えば、リヤパネルとトリムボードとの間に電源コードを内蔵させることができる。このため、車両レイアウトを容易にすることができる。
【0040】
このとき、カールコード400の螺旋部位の内部に保持パイプ410が内挿されているので、カールコード400が伸縮しても、ガイドレール310に対するカールコード400の配設位置を略一定に保つことができる。このため、カールコード400が他の部材に接触することが抑制され、例えば、異音発生,接触による破損などを低減することができる。また、カールコード400は、スライドブラケット320の移動に伴って伸縮されると共に、ガイドレール310と一体化されているため、カールコード400を安定して伸縮させることができる。
【0041】
スライドパネル230の熱線232に電力を給電する給電装置は、以上説明した各構成のうち、ガイドレール310,スライドブラケット320及びカールコード400を夫々有する。しかし、給電装置は、より優れた機能を発揮するために、ガイドレール310,スライドブラケット320及びカールコード400以外の他の構成も有することができる。
【0042】
ところで、キャビン110のインテリアを構成するトリムボード116は、
図3に示すように、ガイドレール310及びスライドブラケット320などのスライド機構が内部空間に存在することにより、ガイドレール310の下方に取り付けられたクリップによりリヤパネルに固定される。この場合、トリムボード116の上端近傍が固定されていないため、走行振動などによりトリムボード116が変形し、例えば、きしみ音などが発生し易い。
【0043】
そこで、リヤパネルに対するトリムボード116の固定剛性を向上させるべく、
図10に示すように、ガイドレール310の側面にクリップ用の嵌合孔500を複数(例えば4つ)形成すると共に、トリムボード116の内面に樹脂製のクリップ510を複数取り付け、クリップ510を嵌合孔500に嵌合するとよい。このようにすれば、トリムボード116の上端近傍がクリップ510によりガイドレール310に固定されるため、トリムボード116の固定剛性を向上させることができる。そして、トリムボード116の固定剛性の向上により、走行振動などによるきしみ音を抑制することができる。
以下、トリムボード116の固定方法の詳細について説明する。
【0044】
ガイドレール310の嵌合孔500は、上部スライド溝312と下部スライド溝314との間において、キャビン110の内方を向く内側面とその外方を向く外側面との間を貫通するように形成されている。従って、嵌合孔500は、ガイドレール310の空洞316を貫通している。このため、ガイドレール310の空洞316は、後述するクリップ510の規制部540を収容する凹部として機能する。なお、ガイドレール310の嵌合孔500は、上部スライド溝312及び下部スライド溝314の剛性を低下させない位置及び寸法に形成される。
【0045】
クリップ510の先端部には、クリップ510がガイドレール310の嵌合孔500から抜ける方向への移動を規制すべく、例えば、クリップ510の周壁から外方へと膨出する円環形状の規制部540が一体化されている。従って、クリップ510がガイドレール310の嵌合孔500に挿入されて嵌合した状態では、クリップ510の規制部540が空洞316に収容され、ガイドレール310に対してトリムボード116が固定される。そして、例えば、車両振動などによりクリップ510が嵌合孔500から抜ける方向の外力が作用した場合には、規制部540の一部が空洞316を区画するガイドレール310の内面と接触するため、クリップ510の抜けが抑制される。
【0046】
ガイドレール310の両端に固定されるジョイント370は、ガイドレール310にトリムボード116を固定する際に、トリムボード116の内面に形成されたガイド部(図示せず)と接触して、トリムボード116の取付位置を規制する機能を持つことも可能である。具体的には、キャビン110の側方を向くジョイント370の側面には、
図6に示すように、ガイドレール310にトリムボード116を固定したとき、トリムボード116の内面に形成されたガイド部と接触する接触面372が形成されている。接触面372は、ここに接触するトリムボード116の内面に倣った形状、例えば、傾斜面などとすることができる。また、接触面372には、トリムボード116との相対変位を規制するために、例えば、凹凸などを形成することもできる。
【0047】
従って、ガイドレール310にトリムボード116を固定する際に、トリムボード116の内面がジョイント370の接触面372に接触して、トリムボード116を取付位置へと案内する。このため、クリップ510の位置が、適切な取付位置となるように規制される。そして、トリムボード116が適切な位置に取り付けられるため、例えば、きしみ音などの発生を効果的に抑制することができる。また、インナーパネル114とトリムボード116との相対位置が保持されるため、スライドパネル230をスライドさせるスライド機構を収容する空間を安定して確保することができる。
【0048】
リヤウインドウ200のスライドパネル230の下部には、第2のブラケット260及びスライドブラケット320などが取り付けられているため、その見栄えが低下してしまう。このため、ピックアップトラック100のインテリアの見栄えを確保すべく、スライドパネル230の下部をトリムボードなどのカバーで覆うとよい。
【0049】
リヤウインドウ200の長手方向の全長に亘ってカバーを取り付けると、固定パネル220の下部もカバーが覆い、後方視界の一部が隠れてしまう。そこで、
図11に示すように、スライドパネル230の下部に、スライドパネル230のスライド方向の全長に亘って延びる第1のカバー520を取り付ける一方、固定パネル220の下部に、コネクタ224のみを覆う第2のカバー530を取り付けることで、後方視界を確保することができる。ここで、
図11に示す実施形態において、図中の右方に位置する固定パネル220は、第2のカバー530が取り付けられていない状態を示しているが、実際には第2のカバー530が取り付けられている。なお、キャビン110のトリムボードにより固定パネル220のコネクタ224が覆われる場合には、その固定パネル220に第2のカバー530を取り付けなくてもよい。
【0050】
以上の実施形態に関し、スライドパネル230の熱線232に電力を給電するために、カールコード400に代えて、一方向に伸縮可能な公知の各種電源コードを使用することもできる。
【0051】
本実施形態に係るスライド窓は、電動で開閉する構成に限らず、手動で開閉する構成であってもよい。この場合、
図2に示すリヤウインドウ200において、駆動ユニット350及びケーブル360が不要となる。なお、スライドパネル230が電動で開閉しない点を除き、他の作用及び効果は前述した実施形態と同様であるので、重複説明を排除するために、その説明は省略する。
【0052】
また、本実施形態に係るスライド窓は、
図2に示すリヤウインドウ200のように、2つの固定パネル220と1つのスライドパネル230を有するものに限らず、スライドパネル230のスライド方向の少なくとも一方に固定パネル220が取り付けられたものにも適用可能である。
【0053】
本実施形態に係るスライド窓は、ピックアップトラック100のリヤウインドウ200に限らず、各種車両の前後方向に延びるサイドウインドウ,各種車両のルーフを開閉するサンルーフなどにも適用可能である。また、本実施形態に係るスライド窓は、左右(横)方向に開閉する構成に限らず、上下方向に開閉する構成であってもよい。
【0054】
本実施形態に係るスライド窓は、窓枠部材210を介在させずに、車体に直接取り付けるようにしてもよい。この場合には、例えば、ピックアップトラック100のキャビン110に一対のレール240を取り付け、ここにスライドパネル230をスライド可能に嵌合すればよい。
【0055】
なお、本実施形態の各構成は、その目的に応じて個別に実施することもできる。