特許第6446175号(P6446175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧
<>
  • 特許6446175-溶射被覆した強化ポリマー複合材料 図000002
  • 特許6446175-溶射被覆した強化ポリマー複合材料 図000003
  • 特許6446175-溶射被覆した強化ポリマー複合材料 図000004
  • 特許6446175-溶射被覆した強化ポリマー複合材料 図000005
  • 特許6446175-溶射被覆した強化ポリマー複合材料 図000006
  • 特許6446175-溶射被覆した強化ポリマー複合材料 図000007
  • 特許6446175-溶射被覆した強化ポリマー複合材料 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446175
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】溶射被覆した強化ポリマー複合材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20181217BHJP
   C23C 4/04 20060101ALI20181217BHJP
   C23C 4/02 20060101ALI20181217BHJP
   B32B 9/04 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B32B5/28 Z
   C23C4/04
   C23C4/02
   B32B9/04
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-225975(P2013-225975)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-111364(P2014-111364A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年10月20日
(31)【優先権主張番号】13/679,399
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】マトス, マーヴィ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ガブチ, アラシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラナデ, アルパナ エヌ.
【審査官】 深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0239742(US,A1)
【文献】 国際公開第01/046324(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0056905(US,A1)
【文献】 特開平07−157384(JP,A)
【文献】 米国特許第06982116(US,B1)
【文献】 M. Ivosevic et al,Solid particle erosion resistance of thermally sprayed functionally graded coatings for polymer matrix composites,Surface & Coatings Technology,2006年,Vol.200,p.5145-5151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C23C 4/00−6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化有機ポリマーマトリックスを含む基材(10)であって、基材表面を有する基材と、
前記基材表面上にある少なくとも1層の中間層(100)であって、前記基材(10)から垂直に延在する厚み部分、および垂直に延在する前記厚み部分の少なくとも一部分内における少なくとも1種の化学元素の線状の組成勾配を有し、オキシ炭化ケイ素を含む、中間層と、
前記中間層の少なくとも一部分上に堆積した少なくとも1種の溶射またはコールドスプレーされた無機被膜と
を含む複合材料。
【請求項2】
前記強化有機ポリマーマトリックスが、炭素繊維強化ポリマー、ガラス繊維強化ポリマー、カーボンナノチューブ強化ポリマー、ケブラー(ポリ−パラフェニレンテレフタルアミド)繊維強化ポリマー、またはセラミック繊維強化ポリマーから選択される繊維強化ポリマーである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記中間層が、ケイ素、酸素、および炭素を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記少なくとも1種の化学元素が、酸素、炭素、窒素、硫黄、またはハロゲンである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記組成勾配が、前記厚み部分内において前記少なくとも1種の元素の様々な濃度を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記様々な濃度が、前記基材の近傍に炭素豊富な中間層部分を、および前記無機被膜の近傍に酸素豊富な、または窒素豊富な、または窒化物豊富な中間層部分を構成する、請求項5に記載の複合材料。
【請求項7】
前記無機被膜が、金属、金属合金、セラミック、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
前記金属が、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、およびそれらの合金であり、前記金属合金が、合金鉄、WC−Co、WC−Co−Cr、NiAl、CrC−NiCr、二硫化モリブデン(MoS)、もしくはMCrAlY(但し、Mは、Co、Ni、もしくはCo/Ni)であり、または前記セラミックが、ジルコニア、アルミナ、およびイットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)の群から選択される1種もしくは複数の耐火性酸化物である、請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
被覆したポリマー性複合材料基材を提供する方法であって、
ポリマー性複合材料基材(10)表面上に、オキシ炭化ケイ素を含む中間層(100)の厚み部分の少なくとも一部分内において少なくとも1種の化学元素の線状の濃度勾配を有するある厚みの前記中間層を堆積させることであって、気相堆積技術、スパッタリング技術、もしくはプラズマ堆積技術、またはそれらの組合せによって堆積させることと、
コールドスプレー技術によって前記中間層の少なくとも一部分に、金属、金属合金、セラミック、またはそれらの組合せである無機材料を堆積させることと、
前記中間層および複合材料基材表面上の少なくとも一部分上に前記無機材料の被膜を形成させることと
を含む方法。
【請求項10】
高温材料および/または動的な無機材料による前記複合材料基材の少なくとも一部分への化学的変化または物理的変化を除去または低減することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー性複合材料が、炭素繊維強化ポリマー、ガラス繊維強化ポリマー、カーボンナノチューブ強化ポリマー、ケブラー(ポリ−パラフェニレンテレフタルアミド)繊維強化ポリマー、またはセラミック繊維強化ポリマーから選択される繊維強化有機ポリマーマトリックスである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の複合材料を含む物品であって、前記基材が繊維強化有機ポリマー複合材料基材を含み、前記中間層が、本質的にオキシ炭化ケイ素からなり、前記オキシ炭化ケイ素が、前記オキシ炭化ケイ素中間層の厚み部分の少なくとも一部分において炭素と酸素の濃度が反比例関係を有しており、前記無機被膜が、前記複合材料基材に耐摩耗性、耐摩滅性、耐食性、回復性、電気伝導性および/または熱伝導性、ならびに減摩性の1つまたは複数を付与する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面上に中間層膜が堆積しているポリマー性複合材料基材表面上への高温無機被膜の形成および堆積、ならびにそれから製造される物品に関する。前記複合材料に機能的性質を付与する方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
ある種の繊維強化有機ポリマーは、高強度を有するにもかかわらず、低い耐摩耗性、低い熱伝導性および電気伝導性を示し、それにより要求が厳しい用途ではその使用が制限されている。これらの欠陥に対処する一手法は、繊維強化有機ポリマー上に所望の性能を備えた被膜を施すことである。化学的、機械的、および熱的に不安定なマトリックス樹脂が存在するということもあり、このような複合材料上に多種多様な材料を付着できるようにすることが課題である。現在、繊維強化有機ポリマー上の様々な材料の被膜は、一般に、その表面をプラズマ処理、ならびにエッチング、化学的、および機械的処理することによって、増強される。このような複合材料の他の制約として、溶射被膜の付着が不十分であることが挙げられる。このような複合材料上への様々な無機材料の被覆は、一般に、その表面のプラズマ処理、ならびに/またはエッチング、化学的、および/もしくは機械的処理を必要とし、その各々が欠点を有し、かつ/または物品を完成させるのに費用および加工時間がかかる。複合材料の表面特性に主に関係のある現在の欠陥に対処するために、様々な表面被覆を施すことができるが、このような複合材料表面、例えば、CFRPで使用されるエポキシを被覆(例えば、溶射被覆技術)する際の主要な問題の1つは分解である。上記のものに加えて、有機材料と無機材料との混合物を含有する多くの複合材料は、このような高温/高速度被覆工程中に改変または構造的に損なわれる可能性がある。したがって、多くの複合材料は、より要求が厳しい用途では使用することができない。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様によれば、強化有機ポリマーマトリックスを含む基材であって、基材表面を有する基材と、その基材表面上にある少なくとも1層の中間層であって、その基材から垂直に延在する厚み部分、および垂直に延在するその厚み部分の少なくとも一部分内において少なくとも1種の化学元素の組成勾配を有する中間層と、その中間層の少なくとも一部分上に堆積した少なくとも1種の無機被膜とを含む複合材料を提供する。
【0004】
有利には、強化有機ポリマーマトリックスは、炭素繊維強化ポリマー、ガラス繊維強化ポリマー、カーボンナノチューブ強化ポリマー、ケブラー繊維強化ポリマー、またはセラミック繊維強化ポリマーから選択される繊維強化ポリマーである。
【0005】
有利には、単独でまたは一態様と組み合わせて、中間層は、ケイ素、酸素、および炭素を含む。
【0006】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、中間層は、本質的にオキシ炭化ケイ素からなる。
【0007】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、少なくとも1種の化学元素は、酸素、炭素、窒素、硫黄、またはハロゲンである。
【0008】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、組成勾配は、厚み部分内において少なくとも1種の元素の様々な濃度を含む。
【0009】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、様々な濃度は、基材の近傍に炭素豊富な中間層部分を、および無機被膜の近傍に酸素豊富な、または窒素豊富な、または窒化物豊富な中間層部分を含む。
【0010】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、少なくとも1種の化学元素の濃度勾配は、中間層の厚み部分内において本質的に線状であるか、中間層の厚み部分内において本質的に階段状であるか、または中間層の厚み部分内において複数の濃度勾配になっている。
【0011】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、無機被膜は、金属、金属合金、セラミック、またはそれらの組合せである。
【0012】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、金属は、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、およびそれらの合金である。
【0013】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、金属合金は、合金鉄、WC−Co、WC−Co−Cr、NiAl、CrC−NiCr、二硫化モリブデン(MoS)、またはMCrAlY(但し、Mは、Co、Ni、またはCo/Ni)である。
【0014】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、セラミックは、ジルコニア、アルミナ、およびイットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)の群から選択される1種または複数の耐火性酸化物である。
【0015】
本開示の別の一態様によれば、被覆したポリマー性複合材料基材を提供する方法であって、ポリマー性複合材料基材表面上に、中間層の厚み部分の少なくとも一部分内において少なくとも1種の化学元素の様々な濃度勾配を有するある厚みの中間層を堆積させることと、高温の動的な駆動噴霧によってその中間層の少なくとも一部分に無機材料を混載または注入することと、その中間層および複合材料基材表面上の少なくとも一部分上にその無機材料の被膜を形成させることとを含む方法を提供する。
【0016】
有利には、本方法はさらに、動的な無機粒子による複合材料基材の少なくとも一部分への化学的または物理的変化を除去するまたは低減することを含む。
【0017】
有利には、単独でまたは組み合わせて、ポリマー性複合材料は、炭素繊維強化ポリマー、ガラス繊維強化ポリマー、カーボンナノチューブ強化ポリマー、ケブラー繊維強化ポリマー、またはセラミック繊維強化ポリマーから選択される繊維強化有機ポリマーマトリックスである。
【0018】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、中間層は、ケイ素、酸素、および炭素を含む。
【0019】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、中間層は、本質的にオキシ炭化ケイ素からなる。
【0020】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、無機材料の堆積は、溶射によって行われる。
【0021】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、無機材料は、金属、金属合金、セラミック、またはそれらの組合せである。
【0022】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、無機材料は、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、およびそれらの合金、合金鉄、WC−Co、WC−Co−Cr、NiAl、CrC−NiCr、二硫化モリブデン(MoS2)、ジルコニア、アルミナ、およびイットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)、またはMCrAlY、(但し、M=Co、Ni、またはCo/Ni)である。
【0023】
有利には、単独でまたは先の態様のいずれかと組み合わせて、中間層は、気相堆積技術、スパッタリング技術、もしくはプラズマ堆積技術、またはそれらの組合せによって堆積させる。
【0024】
本開示の別の一態様によれば、繊維強化有機ポリマー複合材料基材と、その複合材料基材の直接上に存在しているある厚みの中間層であって、その中間層の厚み部分の少なくとも一部分内において少なくとも1種の化学元素の濃度勾配を有する中間層と、その中間層に少なくとも部分的に混載または注入される無機被膜であって、その複合材料基材に耐摩耗性、耐摩滅性、耐食性、回復性、電気伝導性および/または熱伝導性、ならびに減摩性の1つまたは複数を付与する無機被膜とを含む物品を提供する。
【0025】
有利には、中間層は、本質的にオキシ炭化ケイ素からなり、そのオキシ炭化ケイ素は、オキシ炭化ケイ素中間層の厚み部分の少なくとも一部分において炭素と酸素の濃度が反比例関係を有している。
【0026】
有利には、単独でまたは組み合わせて、物品は、車両、航空宇宙機、船舶、または建築要素の部材である。
【0027】
本開示の一態様によれば、強化有機ポリマーマトリックスを含む基材であって、その基材が基材表面を有する基材と、その基材表面上にある少なくとも1層の中間層であって、その中間層が、その基材から垂直に延在する厚み部分、および垂直に延在するその厚み部分の少なくとも一部分内において少なくとも1種の化学元素の組成勾配を有する中間層と、その中間層の少なくとも一部分上に堆積した少なくとも1種の無機被膜とを含む複合材料を提供する。
【0028】
有利には、強化有機ポリマーマトリックスは、炭素繊維強化ポリマー、ガラス繊維強化ポリマー、カーボンナノチューブ強化ポリマー、ケブラー(ポリ−パラフェニレンテレフタルアミド)繊維強化ポリマー、またはセラミック繊維強化ポリマーから選択される繊維強化ポリマーである。
【0029】
有利には、中間層は、ケイ素、酸素、および炭素を含む。
【0030】
有利には、中間層は、本質的にオキシ炭化ケイ素からなる。
【0031】
有利には、少なくとも1種の化学元素は、酸素、炭素、窒素、硫黄、またはハロゲンである。
【0032】
有利には、組成勾配は、厚み部分内において少なくとも1種の元素の様々な濃度を含む。
【0033】
好ましくは、様々な濃度は、基材の近傍に炭素豊富な中間層部分を、および無機被膜の近傍に酸素豊富な、または窒素豊富な、または窒化物豊富な中間層部分を含む。
【0034】
有利には、少なくとも1種の化学元素の組成勾配は、中間層の厚み部分内において本質的に線状であるか、中間層の厚み部分内において本質的に階段状であるか、または中間層の厚み部分内において複数の濃度勾配になっている。
【0035】
有利には、無機被膜は、金属、金属合金、セラミック、またはそれらの組合せである。
【0036】
有利には、金属は、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、およびそれらの合金である。
【0037】
有利には、金属合金は、合金鉄、WC−Co、WC−Co−Cr、NiAl、CrC−NiCr、二硫化モリブデン(MoS)、またはMCrAlY(但し、Mは、Co、Ni、またはCo/Ni)である。
【0038】
有利には、セラミックは、ジルコニア、アルミナ、およびイットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)の群から選択される1種または複数の耐火性酸化物である。
【0039】
本開示の別の一態様によれば、被覆したポリマー性複合材料基材を提供する方法であって、ポリマー性複合材料基材表面上に、中間層の厚み部分の少なくとも一部分内において少なくとも1種の化学元素の様々な濃度勾配を有するある厚みの中間層を堆積させることと、動的な駆動噴霧によってその中間層の少なくとも一部分に無機材料を堆積させることと、その中間層および複合材料基材表面上の少なくとも一部分上にその無機材料の被膜を形成させることとを含む方法を提供する。
【0040】
有利には、本方法はさらに、高温材料および/または動的な無機材料による複合材料基材の少なくとも一部分への化学的または物理的変化を除去または低減することを含む。
【0041】
有利には、ポリマー性複合材料は、炭素繊維強化ポリマー、ガラス繊維強化ポリマー、カーボンナノチューブ強化ポリマー、ケブラー(ポリ−パラフェニレンテレフタルアミド)繊維強化ポリマー、またはセラミック繊維強化ポリマーから選択される繊維強化有機ポリマーマトリックスである。
【0042】
有利には、中間層は、ケイ素、酸素、および炭素を含む。
【0043】
有利には、中間層は、本質的にオキシ炭化ケイ素からなる。
【0044】
有利には、無機材料の堆積は、溶射によって行われる。
【0045】
有利には、無機材料は、金属、金属合金、セラミック、またはそれらの組合せである。
【0046】
有利には、無機材料は、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、およびそれらの合金、合金鉄、WC−Co、WC−Co−Cr、NiAl、CrC−NiCr、二硫化モリブデン(MoS)、ジルコニア、アルミナ、およびイットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)、またはMCrAlY、(但し、M=Co、Ni、またはCo/Ni)である。
【0047】
有利には、中間層は、気相堆積技術、スパッタリング技術、もしくはプラズマ堆積技術、またはそれらの組合せによって堆積させる。
【0048】
本開示の別の一態様によれば、繊維強化有機ポリマー複合材料基材と、その複合材料基材の直接上に存在しているある厚みの中間層であって、その中間層が、その中間層の厚み部分の少なくとも一部分内において少なくとも1種の化学元素の濃度勾配を有する中間層と、その中間層上に堆積した無機被膜であって、その無機被膜が、その複合材料基材に耐摩耗性、耐摩滅性、耐食性、回復性、電気伝導性および/または熱伝導性、ならびに減摩性の1種または複数を付与する無機被膜とを含む物品を提供する。
【0049】
有利には、中間層は、本質的にオキシ炭化ケイ素からなり、そのオキシ炭化ケイ素は、オキシ炭化ケイ素中間層の厚み部分の少なくとも一部分において炭素と酸素の濃度が反比例関係を有している。
【0050】
有利には、物品は、車両、航空宇宙機、船舶、または建築要素の部材である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本明細書に開示および記載の例示的な中間層堆積方法の実施形態を示す図である。
図2A】本明細書に開示および記載の中間層の組成勾配の実施形態を示す図である。
図2B】本明細書に開示および記載の中間層の組成勾配の実施形態を示す図である。
図2C】本明細書に開示および記載の中間層の組成勾配の実施形態を示す図である。
図2D】本明細書に開示および記載の中間層の組成勾配の実施形態を示す図である。
図3】本明細書に開示および記載の例示的な高温/動的被覆工程を説明する図である。
図4】本明細書に開示および記載の別の例示的な高温/動的被覆工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
上述の作用を考慮すると、高温および/または被覆の技術によって強化ポリマー複合材料の性能を向上させ、機能を加えることは技術的に困難である。したがって、本開示は、複合材料有機マトリックスへの変化が低減または除去されている状態で高温および/または動的な被覆を受けるのに適した複合材料の提供を対象とする。
【0053】
本明細書では、第1の、第2の、などの用語を、種々の要素を説明するために使用することがあるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素を別の要素と区別するためだけに使用する。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書では、用語「および/または」は、関連のある列挙した項目の1個または複数のいずれかおよびすべての組合せを含む。
【0054】
層、領域、または基材などの要素が別の要素の「上」に存在している、または「上に」延在している、または「上に堆積している」と言及している場合、その要素は、別の要素の直接上に存在している、もしくは直接上に延在している、もしくは直接上に堆積していてもよく、または介在する要素が存在していてもよいことを理解されたい。対照的に、ある要素が別の要素の「直接上」に存在している、または「直接上に」延在している、または「直接上に堆積している」と言及している場合、介在要素は存在していない。これらの用語は、図に描いた任意の配置に加えて、要素の様々な配置を包含することを意図したものであることを理解されたい。
【0055】
本明細書では、図に示すある要素、層、または領域の、別の要素、層、または領域に対する関係を記述するために、「下に」または「上に」または「より上に」または「より下に」または「水平の」または「垂直の」などの相対的な用語を使用することがある。これらの用語は、図に描いた配置に加えて、デバイスの様々な配置を包含することを意図したものであることを理解されたい。
【0056】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の限定を意図したものではない。本明細書では、単数形を示す語「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうでないことを明示していない限り、複数形を同様に含むことも意図している。用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含む(including)」は、本明細書で使用した場合、記述した特徴、完全体、ステップ、操作、要素、および/または構成部品の存在を規定しているが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、ステップ、操作、要素、構成部品、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。
【0057】
本明細書では、「動的被覆」は、「溶射およびコールドスプレー技術」と一般に呼ばれる、このような被覆工程に通常関連する低および高速度粒子噴霧技術を包含する。粒子は、溶融および/もしくは半溶融され得、大きさおよび分布において固体の相および範囲にあり、それには、ナノ粒子、マイクロ粒子、およびより大きな粒子が含まれる。このような高温/高速度噴霧技術は、例えば、少なくとも50m/s、少なくとも75m/s、少なくとも100m/s、もしくは少なくとも150m/s、またはより速く、上限としては約1200m/sの粒子速度をもたらす。例を挙げると、プラズマ溶射(耐火材料の堆積に適する)は、一般に14,000℃超の温度を生じるアーク放電で生成される高温プラズマジェットを使用し、高い粒子温度をもたらす。熱的噴霧される物質または前駆物粒子の速度が増大するにつれて、基材表面、特に、炭素−炭素複合材料および/またはそれらのマトリックスの物理的もしくは化学的変化または他の有害な作用も増大する。
【0058】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての用語(技術的および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用する用語は、本明細書の文脈および関連技術におけるそれらの意味と矛盾しない意味を有すること、ならびに本明細書において明確に定義しない限り理想的なまたは過度に形式的な意味に解釈されないことを理解されたい。
【0059】
溶射被覆には、ほとんどの複合材料で使用されるポリマー樹脂/マトリックスの低耐熱性および低耐磨耗性、ならびに衝突する粒子からの熱的および機械的な衝撃効果に一部起因する複合材料被覆に関する課題がある。表面および/またはバルクの複合材料の温度をその材料のガラス温度よりも上昇させる工程は、一般に被覆に適していない、または有用でない。基材に非常に低く制御可能なバルク温度をかけながら、溶射技術を使用することは可能であるが、高温粒子の衝突する近傍で局所的に生じる温度スパイクにより、複合材料は、複合材料の有機マトリックスの一部分に局所的な溶融または蒸発を受けて、損傷の中でもとりわけ、溶射被膜が堆積していない表面に小さい穴が残される。複合材料を被覆する際の別の問題は、粒子の高速度および/または高温衝撃(浸食に類似)のために表面に生じるむらである。粒子速度/温度が高い状態で堆積される被膜は、堆積中に複合材料表面にむらを生じる可能性がある。
【0060】
したがって、基材の少なくとも一部分上に明確な構造物および/または組成物の中間層を設けることによって、溶射工程中、複合材料の基材表面を保護し、溶射などの高温および/または高速度被覆技術によるこうした材料の被覆を可能にする。
【0061】
複合材料基材
一実施形態では、繊維強化ポリマー複合材料は、基材として使用する。このようなポリマー複合材料としては、有機および/または無機の強化繊維と組み合わせたエンジニアリング樹脂を挙げることができる。強化繊維と組み合わせたエンジニアリング樹脂のクラスの一例は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)であり、これを使用することができる。他の強化ポリマーを使用してもよい。例えば、エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、超高分子量ポリエチレン、ナイロン6、ナイロン66、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカルボナート、ポリアミド、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、およびそれらのブレンドを挙げることができる。他のエンジニアリングポリマー、樹脂、熱硬化性樹脂(thermal set)、プラスチック、およびそれらのブレンドを、本明細書に開示および記載の方法に従って使用することができる。例示的な複合材料としては、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、ケブラー繊維(例えば、ポリ−パラフェニレンテレフタルアミド)、セラミック繊維、炭素繊維、またはそれらの組合せと組み合わせた上記のエンジニアリング樹脂が挙げられる。本開示は、高温/高速度の被膜、特に、金属、金属合金、および/またはセラミックなどの無機被膜を用いて被覆したときの、従来の複合材料被覆工程およびその工程から作製される被覆済み複合材料の多数の欠陥に対処するものである。
【0062】
例を挙げると、基材は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)の1種または複数であり得る。本開示の中間層堆積技術および特有の被覆構造設計によって、こうした基材への後続被膜の付着が向上され、同時に、場合により、CFRPにさらなる表面機能が付与される。性能および機能性のこれらの向上は、薄膜材料の厚みによる被覆材料の化学的性質の調節によって実現される。被覆材料は、ケイ素、酸素、および炭素からなる。炭素含有量と酸素などの反応性種の含有量とを正確に制御することによって、複合材料への付着を向上させることが可能になる。オキシ炭化ケイ素膜は、単層および多層構造物としてマグネトロンスパッタリングによって堆積される。多層構造物は下端層(CFRP表面に隣接)を有し、その化学組成は複合材料表面と適合している。薄膜は、界面に対するCFRP複合材料の化学的、電気的、および機械的状態(presentation)を変質させることができ、それによって、用途範囲をより広くすることが可能になる。これは特定の実施であるが、この概念および工程を、他の基材(例えば、金属およびプラスチック)において、および場合によっては他の薄膜材料を用いて、使用することができる。
【0063】
中間層の形成
本開示は、ひとつには、有機ポリマー複合材料の基材表面の少なくとも一部分上に十分な付着性の薄膜(以下、「中間層」とも呼ぶ)を堆積させる方法を提供する。開示する堆積技術および中間層構造設計によって、基材への被膜の付着を向上させ、複合材料にさらなる表面機能を付与し、後続の被覆、例えば、動的および/または高温被覆技術、ならびにその技術から製造される被膜を受けることが可能になる。複合材料の性能および機能性のこれらの向上ならびにこのような高エネルギー/高温噴霧被覆との使用は、中間層材料の厚み(例えば、基材表面から垂直な厚み)による中間層材料の化学的性質(例えば、組成)および/または元素濃度を制御および/または調節することによって実現される。中間層構造は、「下端」層(複合材料基材表面に隣接)を有し、その化学組成は、複合材料表面と適合するように構成されている。中間層を記述するために、中間層は、基材表面における中間層の界面と界面の最外面とにそれぞれ対応する「基材近接層」と「表面近接層」とを有するものと称することができる。中間層は、単独でまたは後続被膜と組み合わせて、複合材料の化学的、電気的、および機械的状態を変質させることができ、それによって、用途範囲をより広くすることが可能になる。本開示の工程は、金属またはプラスチック基材において、ならびに他の薄膜材料および薄膜被覆方法と組み合わせて、使用することができる。一態様では、中間層は、動的/高温被覆中、基材を保護するのに使用することができ、したがって、基材の少なくとも一部分を、複合材料への変化が低減または除去されている状態で、動的または高温被膜で被覆することが可能になる。
【0064】
一態様では、複合材料の表面上に特定の化学組成を備えた中間層を製造することができる。他の一態様では、本開示は、中間層の垂直の厚み部分内において組成勾配および/または濃度勾配を作製することを提供し、中間層の最内層と基材との間の界面(例えば、複合材料の基材近接層)に、少なくとも第1の化学元素(例えば、酸素、炭素、窒素など)の可変な組成/濃度が存在し、その組成/濃度は、中間層の最外層(表面近接層)近傍の中間層の厚み部分の組成/濃度とは異なり、それにより、基材(複合材料)と中間層との間の付着が向上し、かつ/または後続被膜の付着が向上するようになる。いくつかの態様では、中間層を、第2化学元素の第2濃度が、表面近接層の第1化学元素の第1濃度よりも大きくなるように構成する。
【0065】
一態様では、中間層内に濃度勾配を有する、複合材料の表面上に特定の化学組成を備えた中間層を提供し、複合材料の基材近接層に第1濃度の第1化学元素(例えば、酸素、炭素、窒素など)が存在し、表面近接層に第2濃度の第2(異なる)化学元素(例えば、酸素、炭素、窒素など)含有物が存在する。したがって、一例では、炭素豊富な中間層部分を基材近接層に堆積させることができ、勾配をつけるように、中間層の表面近接層において酸素豊富な中間層部分に変化させる。
【0066】
いくつかの堆積技術を使用して、中間層を堆積させることができる。このような技術としては、スパッタリング法、化学的蒸気堆積法、およびプラズマ堆積法が挙げられる。他の工程を使用しても、組み合わせてもよい。一態様では、1種または複数の反応ガスの事前プログラム制御を利用して、上記の堆積技術の1種から中間層を堆積させることができる。
【0067】
例を挙げると、一態様では、酸素ガスの存在下で炭化ケイ素ターゲットをマグネトロンスパッタリングすることによってオキシ炭化ケイ素膜を堆積させて、単層および多層の中間層構造物を製造および堆積させる方法が提供される。一態様では、炭化ケイ素ターゲットのマグネトロンスパッタリング中に酸素分圧を制御する。したがって、一態様では、中間層の堆積工程の初めは、酸素分圧は非常に低いまたは0であり、中間層の堆積工程の期間にわたって酸素分圧量が増加するように変化させる。一態様では、中間層の堆積工程中、勾配をつけるように酸素分圧を変更する。別の一態様では、堆積工程中、段階的に増加するように酸素分圧を変更する。さらに別の一態様では、酸素分圧を2段階工程で変更して、基材近接層と表面近接層それぞれにおいて酸素含有量が低/高(または炭素含有量が高/低)の本質的に2重の層構造を得る。上述の工程の1つまたは複数を1回または複数回繰り返して、同じまたは異なる勾配構造の層状またはラミネート様の中間層を得ることができる。
【0068】
酸素を、1種または複数の反応ガスと交換または組み合わせることができる。反応ガスとしては、水素、酸素、窒素、アンモニア、硫化水素、ハロゲン、ハロゲン化炭素などが挙げられる。したがって、例えば、窒素またはアンモニアを使用して、複合材料表面層に窒化物表面機能を付与することができる。使用するガスを選択することによって、他の化学的機能を付与することができる。
【0069】
このように製造した中間層は、例えば、時間依存性の光量測定発光分光法(OES)を使用して同定することができ、かつ/またはXPSおよび/もしくはオージェ電子分光法(AES)を使用して、組成分析と関連付けることができる。角度分解XPSデータを使用して、基材表面に堆積した中間層の垂直な厚みに対応する、この技術の試料採取の深さの範囲内における中間層の元素成分の組成勾配および濃度勾配を示すことができる。
【0070】
別の一態様では、中間層膜は、3重のケイ素酸素炭化物のアモルファス薄膜を含むことができる。こうした膜は、スパッタ堆積によって製造することができる。スパッタリングは、基材を直接加熱することなく行うことができる。一態様では、マグネトロンプラズマ促進化学的蒸気堆積(magPECVD)技術を使用して、中間層を得ることができる。
【0071】
高温および/または動的な被覆
本明細書に開示の方法では、高温および/または動的な被膜を、上に中間層が堆積している基材に施す。一態様では、高温および/または動的な被膜は、1種または複数の無機材料を含み、中間層を有する基材上に被膜を形成する。無機材料としては、例えば、1種または複数の金属、金属合金、セラミック、および/または耐火性酸化物が挙げられる。高温/動的被覆工程で使用する無機材料は、基材に射出された(またはそこに向けて射出されている)溶融、半溶融、または固体の材料、ならびに無機材料の他の形態、またはその前駆物、例えば、ワイヤ、粉末、液体、金属、金属合金、セラミック、および/もしくは耐火性酸化物を包含する。
【0072】
得られた被膜は、多数の噴霧された粒子が蓄積して、作製されている。表面は著しく加熱しなくてもよく、それによって、低融点物質の被覆が可能になる。粒子は、粒子の温度または速度(運動エネルギー)のために、複合材料基材の中間層および/または表面の少なくとも一部分に混載または注入され、本開示の中間層がない状態で、同様の方法で被覆した複合材料と比較して、複合材料の有機マトリックスへの変化が低減または除去されている状態で複合材料の性質が増強される。
【0073】
このような溶射する工程は、場合により、基材の温度を制御して、有機ポリマーマトリックスまたは強化材料への変化をさらに最小化または低減するように操作することができる。したがって、本方法の一例では、基材の温度を約50℃〜約120℃に制御しながら溶射を実施して、基材の表面変化を引き起こすこうした熱曝露を回避し、または熱により活性化される表面反応を回避する。基材の熱制御は、被覆中に基材の1つまたは複数の表面を空気および/または液体で冷却することによって行うことができる。ある溶射工程では、バルクのポリマー/マトリックスの約10μmの深さに浸透できる真空UV光子の形での電磁放射線を生成させて、マトリックスの鎖切断および架橋結合を引き起こす。有機ポリマーマトリックスおよび/または強化材料へのUVに関連した変化(化学的および/または物理的)を最小化または除去するために、添加剤を使用して、基材を変性させることができる。
【0074】
本方法の一実施形態では、上述の中間層を有する複合材料基材に、高温または動的な被覆工程を施す。前述のように、ある複合材料では、化学的、機械的、および熱的に不安定なエポキシ樹脂が存在すると、このような高温または高速で被覆した複合材料の商業的な利用可能性が悪化する。例えば、炭素−炭素複合材料(またはCFRP)は、一般に、溶射皮膜と一緒にうまく使用することができず、要求が厳しい用途ではこのような複合材料はさらに制限される。本開示は、これらの制限のすべてではないが、いくつかに対処するものであり、ひとつには中間層を導入することによって、中間層を有する複合材料と比較して、複合材料基材への変化が低減または除去されている状態でこのような高温/動的な被覆を容易に受け入れる繊維強化複合材料の方法および物品を提供する。
【0075】
例示的な一実施形態では、本方法は、CFRP複合材料基材を、中間層、続いて、無機被膜、例えば、金属、金属合金、セラミック、および/または耐火性酸化物で被覆して、複合材料を、要求が厳しい用途で使用できるようにし、かつ/または複合材料の性質を向上させることに関して記述している。したがって、中間層を堆積させた後、溶射技術を使用して、CFRP複合材料基材の表面と接触させ、CFRP複合材料は、その表面への変化が低減されている状態または変化がない状態で高温または高速度無機粒子を受ける。他の複合材料、すなわち、繊維強化ポリマー複合材料を使用することができる。
【0076】
溶射被覆に関する任意の従来技術を、本開示の実施において使用することができる。高温および/または動的な被覆技術は、単独でまたは溶射技術と組み合わせて、使用することができる。したがって、被覆前駆物のプラズマジェット生成を使用することができ、これには、例えば、直流(DCプラズマ)が使用され、直流の高出力電気アークによりエネルギーがプラズマジェットに転移される場合が含まれる。他の一態様では、誘導プラズマまたはRFプラズマを使用することができ、この場合、エネルギーは、誘導によって、例えば、交流の高周波電流が通過する、プラズマジェットの周りのコイルから転移される。同様に、プラズマ形成媒体技術は、例えば、アルゴン、水素、ヘリウム、もしくはそれらの混合物を使用するガス安定化プラズマ(GSP)、水安定化プラズマ(WSP)、または他の適切な液体、またはハイブリッドプラズマ形成媒体などを使用し、単独でまたは組み合わせて、使用することができる。
【0077】
別の一態様では、空気プラズマ噴霧(APS)、例えば、不活性ガスまたは脱気済み燃焼室を用いた雰囲気制御プラズマ噴霧(CAPS)、高圧プラズマ噴霧(HPPS)、減圧プラズマ噴霧(LPPS)、真空プラズマ噴霧(VPS)、および高速度酸素燃料(HVOF)によって、熱的噴霧される材料または前駆物の堆積を容易にすることができる。
【0078】
一態様では、溶射を、他の表面変性および/または被覆技術、例えば、エッチング、アルゴン衝撃などと順次または同時に組み合わせる。このような追加の技術を使用して、基材表面(例えば、機能性、疎水性/親水性)、形態をさらに制御および/または操作し、かつ/または被膜に多孔性を付与し、かつ/または複合材料を洗浄することができる。このような追加の技術は、本開示の方法および材料と組み合わせて使用したとき、完成した複合材料基材の性質、例えば、摩擦挙動、耐熱性、表面電気伝導性、潤滑性、付着強さ、誘電率、および/または親水性/疎水性などをさらに向上させ、したがって、複合材料基材の使用を非常に要求が厳しい用途に広げることができる。
【0079】
一実施形態では、本開示の方法は、回復(例えば、修復/交換パーツ規模の回復)目的に使用することができる。回復工程に適する例示的な材料としては、WC−Co−Cr、NiAl、Al、鋼(合金鉄)、チタン(Ti)、バナジウム(V)などが挙げられる。
【0080】
別の一実施形態では、本開示の方法は、基材に遮熱性を付与するために使用することができる。遮熱防御に適する例示的な材料としては、ジルコニア、アルミナ、およびイットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)が挙げられる。上記の遮熱被膜に加えて、結着/粘着層を組み合わせて使用することができ、結着/粘着層としては、例えば、MCrAlY(M:金属)およびNiAlが挙げられる。
【0081】
別の一実施形態では、本開示の方法は、電気伝導性および/または熱伝導性を付与するために使用することができ、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、およびそれらの合金を含むことができる。あるいは、本開示の方法および装置は、例えば、酸化アルミニウム(Al)などのセラミックおよび/または他の耐火性酸化物を使用して、電気絶縁性を付与するために使用することができる。
【0082】
別の一実施形態では、本開示の方法は、例えば、WC−Co、WC−CoCrを使用して、耐摩耗性を付与するために、または、例えば、CrC−NiCrを使用して、高温耐摩耗性を付与するために使用することができる。
【0083】
別の一実施形態では、本開示の方法はまた、例えば、ニッケル(Ni)を使用して、耐食性を、または、例えば、ニッケル−クロム合金(NiCr)もしくはアルミニウム合金を使用して、高温耐食性を付与するために使用することができる。同様に、電気防食は、亜鉛および亜鉛合金を使用して、提供することができる。
【0084】
上記に加えて、本開示の方法はまた、例えば、二硫化モリブデン(MoS)などを使用して、低摩擦(減摩)性を付与するために使用することができる。
【0085】
開示の方法で中間層/基材に施した無機被膜は、結晶、半結晶、アモルファス、もしくは準結晶、ナノ結晶、またはそれらの組合せであり得る。
【0086】
図1に関して、図は一般的な意味で描いており、中間層堆積方法の実施形態を提供するものであり、RFマグネトロンスパッタリング工程を例示している。すなわち、図1は、第1時間間隔の基材10、例えば、基材上に中間層が堆積している複合材料ポリマー基材を示しており、その中間層は、第1分圧の反応ガス520(例えば、酸素)を有するRFスパッタリングユニット60から形成されて、第1化学組成20を有する中間層100を生じる。第1矢印75で示す第2時間間隔の後、反応ガス520より高い分圧を有する反応ガス530は、第1化学組成20と異なる第2化学組成30を有する勾配中間層200を生じる。この時点で工程を終了することができる。あるいは、または場合により、矢印85で示す時間間隔の後、反応ガス530より高い分圧を有する反応ガス540は、第2化学組成30と異なる第3化学組成40を有する中間層300を生じる。上述のように、追加の層を中間層300の上に堆積させることができる。図1に示す堆積工程は、窒素、ハロゲン、硫化水素などの他の反応ガスと共に使用することができる。様々な反応ガスを組み合わせて、かつ/または計量して、使用することができる。本開示の工程は、インライン工程実施用に構成することができる。
【0087】
図2Aは、本明細書の開示および記載の中間層の化学的勾配の実施形態を示している。すなわち、第1化学元素のパーセントは、中間層の厚みが基材近接層から見て増大するにつれて減少し、一方、第2化学元素のパーセントは、中間層の厚みが基材近接表面(表面近接層の最も近く)から見て増大するにつれて増加している。図2Bは、本明細書の開示および記載の中間層の化学的勾配の代替実施形態を示している。図2Bでは、中間層は、本質的に2層から構成されており、第1層では、第1化学元素のパーセントが、中間層の厚みが基材近接層から見て増大するにつれて減少し、一方、第2化学元素のパーセントが増加している。図2Cは、本明細書の開示および記載の化学的勾配中間層のさらに別の実施形態を示している。すなわち、図2Cは、第1化学元素のパーセントの階段状変化を示しており、第1化学元素のパーセントは、中間層の厚みが基材近接層から見て増大するにつれて減少し、一方、第2化学元素のパーセントが増加している。図2Dは、本明細書の開示および記載の化学的勾配中間層のさらに別の実施形態を示しており、第1化学元素のパーセントは、中間層の所定厚みに沿って増加し、次いで減少し、同時に、第2化学元素のパーセントは、中間層の所定厚み全体にわたっておよび重複して、減少し、次いで増加している。第1化学組成と第2化学組成との間の関係は、中間層の厚み全体にわたって1回または複数回繰り返される。第1化学組成と第2化学組成との他の組合せおよび構造的配置を使用することができる。さらなる化学組成(例えば、第3、第4など)を使用することができる。
【0088】
次に、図3に関して、例示的な高温の動的な被覆装置を使用して、中間層を有する基材を被覆する方法を示している。すなわち、火炎噴霧器700は、供給装置710からワイヤ705(棒またはコードでもよい)を受け取り、燃料717(例えば、水素、炭化水素)とキャリアガス715(例えば、酸素および/またはアルゴン)との燃焼による熱エネルギーを使用して、火炎720において無機材料725を溶融し、それを中間層740および複合材料基材750に向かって動的に飛ばす。無機被膜730が生じ、中間層740および/または基材750の少なくとも一部分の上に堆積、または直接上に堆積され得る。無機被膜は、中間層および/または基材に衝突する粒子の速度および温度に応じて、中間層740および/または基材750の一部分に部分的に混載または注入され得る。無機被膜730は、無機材料725の溶融および/または半溶融粒子(「スプラット」とも呼ぶ)の1回または複数回の衝突によるものであり、一般に、中間層740および複合材料基材750の上にラメラ構造膜または被膜を形成する。無機材料725の連続層が生じる可能性があり、異方性の性質および/または不均一系の組成物である可能性がある。無機材料725の溶融/半溶融の不均一状態は、無機被膜730に多孔性をもたらすことができる。被膜730は、不純物および/または酸化物吸蔵物を含有することができる。
【0089】
次に、図4に関して、代替の噴霧被覆装置および方法を描いている。すなわち、無機原料709を有する粉末供給原料707は、噴霧ユニット800を介して供給されるように構成され、溶融/半溶融粒子725を飛ばすために燃料715と組み合わせた圧縮ガス供給原料719を含む。この例では、粒子速度は、約40m/s〜約200m/sである。
【0090】
実験
中間層バリアを、炭化ケイ素ターゲットおよびRFマグネトロンスパッタリング源を用いて堆積させる。第1層は、5W/cmのパワー/ターゲット範囲を使用して、酸素分圧が0〜低い状態で、大気(10−3トール真空)中において製造する。この層は、高炭素含有量を有して、CFRPとより適合する。出発濃度は、基材の性質に依存する。例えば、炭素の相対濃度が高い基材では、適合性を増大させるのに、堆積中の酸素分圧が0であることが望ましい。ステップバイステップ法または連続法では、酸素濃度を、堆積中、徐々に、すなわち、0〜10%に増加させる。堆積中に分圧を増加させると、膜中の酸素の相対含有量が増加する。上層は、酸素濃度が10%超存在する状態で堆積させることができる。これにより、ガラス状で、硬質で、かつより引っ掻き耐性のある膜または被膜をもたらすことができる。複合材料を保護するために多層の勾配被膜を堆積させた後、溶射に基づく技術または代替の高温/高速度技術を使用して、表面の電気的、機械的、および/または熱的性質を変質させることができる。
【0091】
上記の試料を以下のように熱的噴霧する:基材表面をアセトンで洗浄し、空気乾燥させてから、被膜堆積工程を行う。被膜堆積工程中に、約50〜約150nmのSiOC中間層を有するCFRPの試料クーポンの両側を空気冷却する。ロボットに取り付けられた溶射トーチを使用して、約1nm〜約100nmのWC−Co被膜を、中間層の上に堆積、または直接上に堆積させる。得られた無機被覆した複合材料は、優れた耐摩耗性を有する。
【0092】
前述の説明から、組成物および方法の様々な改変および変更は、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から変形することなく当業者には思いつくであろう。
【符号の説明】
【0093】
10 基材
20 第1化学組成
30 第2化学組成
40 第3化学組成
60 RFスパッタリングユニット
75 第1矢印
85 矢印
100 中間層
200 勾配中間層
300 中間層
520 反応ガス
530 反応ガス
540 反応ガス
700 火炎噴霧器
705 ワイヤ
707 粉末供給原料
709 無機原料
710 供給装置
715 キャリアガス、燃料
717 燃料
719 圧縮ガス供給原料
720 火炎
725 無機材料、溶融/半溶融粒子
730 無機被覆物
740 中間層
750 複合材料基材
800 噴霧ユニット
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4