(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヘッドレスト本体の芯となる密閉構造の芯材と、当該芯材に配置される音響スピーカーと、前記芯材を貫通する中空のヘッドレストステーとを有し、前記ヘッドレスト本体は前記ヘッドレストステーがシートの背もたれ部に挿入されて前記背もたれ部に接続され、
前記ヘッドレストステーは、中空部を介して前記芯材の内部空間と前記背もたれ部の内部とを連通させ、
前記ヘッドレストステーは、空気の連通孔を備え、前記連通孔の内、前記芯材の内部空間で開口する前記連通孔は、前記音響スピーカーの後方に位置するとともに、前記ヘッドレストステーの上方に開口することを特徴とする音響装置。
前記背もたれ部の内部に設けられる拡張エンクロージャーを備え、前記ヘッドレストステーは、前記拡張エンクロージャーに連通することを特徴とする請求項1または2記載の音響装置。
前記音響スピーカーは左右一対で設けられ、前記ヘッドレストステーは、前記音響スピーカーに近接する位置に左右一対で設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の音響装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
[第1の実施の形態]
図1及び
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るヘッドレスト装置10を示す斜視図である。
図1では、後述するクッション芯材12の図示が省略されている。
図2では、後述するクッション13の前面の図示が省略されている。
ヘッドレスト装置10(音響装置)は、車室内に配置される乗員用のシート1に設けられるものである。上記車室としては、例えば、自動車、電車、飛行機及び船舶等の車室が挙げられるが、本実施の形態では、自動車の前部座席であって運転者が着座するシート1に設けられるヘッドレスト装置10を例に挙げて説明する。自動車としては、通常の四輪車の他、例えば、側面のドアを備えていない小型の電気自動車が挙げられる。
シート1は、運転者(着座者)が着座する座面部(不図示)と、座面部の後端から僅かに後ろに傾斜した姿勢で上方に延在する背もたれ部5と、この背もたれ部5の上端に取り付けられるヘッドレスト装置10とを備える。
【0010】
ヘッドレスト装置10は、音響スピーカー50及び音響マイク51を備えるとともに、近距離無線通信によりヘッドレスト装置10を携帯端末等の他の機器(不図示)と連携可能とする通信部(不図示)を備える。上記他の機器としては、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、カーオーディオ、及びカーナビゲーションシステム等が挙げられる。上記近距離無線通信としては、例えば、Bluetooth(近距離無線通信規格:登録商標)が挙げられる。なお、ヘッドレスト装置10と上記他の機器とは、近距離無線通信に限らず、例えば有線によって接続することも可能である。
【0011】
ヘッドレスト装置10は、上記他の機器と連携した状態では、他の機器から読み出されたコンテンツの音声データや、車両を目的地まで誘導するための誘導音声データなどを、音響スピーカー50から音声出力する。また、着座者は、ヘッドレスト装置10が上記他の機器と連携した状態では、音響マイク51で集音された音声をボイスコマンドとして他の機器を操作したり、音響マイク51を介してハンズフリーで通話したりすることができる。
【0012】
ヘッドレスト装置10は、ヘッドレスト装置10の骨組みとしてのフレーム11(フレーム部材)と、フレーム11に連結されるヘッドレスト本体としてのクッション芯材12(芯材)と、クッション芯材12の周囲を覆うように設けられ、着座者の頭部を受けるクッション13とを備える。本第1の実施の形態では、ヘッドレスト本体は、クッション芯材12であるが、ヘッドレスト本体は、最外層のクッション13によって覆われるものであれば良く、クッション芯材12に加えて他の部材を含んでいても良い。
【0013】
図3は、クッション芯材12及びフレーム11を分解した斜視図である。
フレーム11は、金属製であり、パイプ材及び板材を溶接して一体に形成される。フレーム11は、例えば鉄鋼材料製である。
フレーム11は、左右方向に並んで上下方向に延在する一対のヘッドレストステー15,15と、ヘッドレストステー15,15の上端部を左右に連結する上部クロスメンバ16と、上部クロスメンバ16の下方でヘッドレストステー15,15を左右に連結する下部クロスメンバ17とを備える。
【0014】
ヘッドレストステー15,15は、中空の丸パイプ状に形成されており、その全長に亘って断面略円形の中空部70を備える。ヘッドレストステー15,15は、背もたれ部5と略平行に上方へ延びるステー部18,18と、ステー部18,18の上端で前方へ屈曲してやや前傾した姿勢で上方に延びる内部フレーム部19,19とを備える。
内部フレーム部19,19は、クッション13の内側でヘッドレスト装置10の内部に位置する。ステー部18,18は、背もたれ部5の上面に形成された取り付け孔部(不図示)に挿入されてシート1に固定される。ヘッドレスト装置10は、前記取り付け孔部へのステー部18,18の挿入深さを調節することで、着座者の体格等に合わせて取り付けの高さ位置を変更可能に構成されている。
【0015】
クッション芯材12は、後面が開口した略箱型の前側ケース30と、前面が開口した略箱型の後側ケース31とを互いの開口で合わせることで、密閉された箱状に形成されている。クッション芯材12は、上下方向及び左右方向に長く、前後方向に短い略直方体形状に形成されている。前側ケース30及び後側ケース31は、樹脂成型品であり、例えば、ABS樹脂やポリプロピレン樹脂などの樹脂材料により構成される。
前側ケース30及び後側ケース31は、開口の周縁部に合わせ面32,33をそれぞれ有する。詳細には、前側ケース30の合わせ面32に形成された溝部32aに後側ケース31の合わせ面33が嵌まることで、合わせ面32,33は閉じられる。合わせ面32,33の間には、枠状のパッキン(不図示)が介装されることで密閉性が向上されている。また、合わせ面32,33は、例えば、超音波溶着によって接合して密閉されても良い。
【0016】
上部クロスメンバ16及び下部クロスメンバ17の前面には、固定孔部20が複数設けられ、固定孔部20には、前側ケース30をフレーム11に固定する前側ケース固定ボルト21(
図5)が締結される。上部クロスメンバ16及び下部クロスメンバ17の後面には、固定孔部22が複数設けられ、固定孔部22には、後側ケース31をフレーム11に固定する後側ケース固定ボルト23(
図4)が締結される。
前側ケース30は、前側ケース固定ボルト21が挿通される固定部34を複数備える。後側ケース31は、後側ケース固定ボルト23が挿通される固定部35を複数備える。詳細には、固定部34,35は、クッション芯材12の内側へ窪む有底円筒状に形成されており、前側ケース固定ボルト21及び後側ケース固定ボルト23はこの円筒形状の底部に挿通される。
【0017】
前側ケース30及び後側ケース31は、フレーム11を前後から挟むとともに、合わせ面32,33同士が嵌まるように配置され、外側から設けられる前側ケース固定ボルト21及び後側ケース固定ボルト23によってフレーム11に固定される。すなわち、フレーム11の上部は、中空に形成されたクッション芯材12の内部に位置する。
クッション芯材12は、ステー部18,18が下方へ貫通するステー用貫通孔36,36を下部に備える。ステー用貫通孔36,36とステー部18,18との間には、シール部材(不図示)が設けられ、クッション芯材12内部の密閉性が確保される。
【0018】
図4は、ヘッドレスト装置10の縦断面図である。
図5は、ヘッドレスト装置10の縦断面図である。
図6は、ヘッドレスト装置10の横断面図である。ここで、
図4及び
図6では、音響スピーカー50を通る位置の断面が示されている。
図5では、ヘッドレスト装置10の幅方向の中央の断面が示されている。
図3〜
図6を参照し、前側ケース30は、後側ケース31側へ略水平に延びる仕切り板部37を内部の下部に備える。後側ケース31は、仕切り板部37の後端が嵌まる係合部38を内部の下部に備える。
【0019】
クッション芯材12の内部の空間は、仕切り板部37によって、下部の収納部39と、収納部39の上方のエンクロージャー部40とに仕切られている。エンクロージャー部40は、収納部39よりも広い内部空間40aを有する。
クッション芯材12は、着座者の後頭部Hに面する前面12aと、後面12bと、天面12cと、下面12dと、右側面12eと、左側面12fとを備える。
【0020】
クッション芯材12には、左右一対の音響スピーカー50,50と、音響マイク51と、サブウーハー52とが設けられる。詳細には、音響スピーカー50,50、音響マイク51及びサブウーハー52は、前面12aにおいてエンクロージャー部40の前面である音響機器取り付け面41に取り付けられる。
また、クッション芯材12の内側には、制御基板53(発熱体)と、制御基板53に電源を供給するための二次電池54とが収納される。制御基板53には、外部から送られる音声信号をデジタルスピーカー用の音声信号に変換処理して音響スピーカー50及びサブウーハー52を動作させる音
響信号処理回路や、音響マイク51を制御するための制御回路などが搭載されている。制御基板53は、アンプの機能を有するものである。
【0021】
クッション芯材12の左側面12fには、制御基板53及び二次電池54への外部からの接続端子や電源スイッチ等が配置されるインターフェース部55が設けられている。
ヘッドレスト装置10は、二次電池54を備えるとともに背もたれ部5に対して別体で着脱自在に設けられており、単独で動作可能である。
【0022】
各音響スピーカー50は、左右方向よりも上下方向に長細い長円状(略レーストラック状)の振動板57と、ボイスコイル及びマグネット等からなり振動板57を駆動する駆動部(不図示)とを備える。
図2及び
図6に示すように、音響機器取り付け面41は、着座者の後頭部Hを受ける耐衝撃面であり、ヘッドレスト装置10の幅方向の中央で平面視において略平坦に形成される受け面部58と、受け面部58の左右の側方でエンクロージャー部40の内側へ連通するスピーカー支持孔59,59とを備える。音響スピーカー50,50は、スピーカー支持孔59,59に嵌め込むようにして固定される。
【0023】
図6に示すように、音響スピーカー50,50は、後頭部Hの左右の側方に位置するように、音響機器取り付け面41の左右の縁部に配置されとともに、その長手方向が上下方向を指向するように配置される。また、音響スピーカー50,50は、略水平に音声S1を出力できるように振動板57を前方に向けて配置されるとともに、出力した音声S1が前方側ほど左右の外側に広がるように、外向きに傾斜して配置される。
このように、上下に細長い音響スピーカー50,50をヘッドレスト装置10に設けたため、振動板57の全体としての大きさを保ちながらヘッドレスト装置10の横幅を小さくできる。このため、音質を確保できるとともに、着座者が後方を確認する際に、ヘッドレスト装置10が邪魔にならず、後方の視認性が良い。また、ヘッドレスト装置10は、音響スピーカー50,50を有していても横幅が大きくならないため、汎用性が高く、様々な車種に適応可能である。
【0024】
また、音響スピーカー50,50は、上下に細長いため、
図4及び
図6に示すように、音響スピーカー50,50の音声S1は、左右方向には狭い範囲で出力され、上下方向には広い範囲で出力される。すなわち、音響スピーカー50,50の音声S1の指向性は、左右方向では狭く、上下方向では、左右方向よりも広い。
これにより、上下方向に広い範囲に音声S1を出力でき、着座者の頭部の高さ位置や、ヘッドレスト装置10の上下の調整位置に影響されずに、着座者に常に音質の高い音を提供できる。また、左右方向に音声S1が広がり難いため、着座者に対してパーソナルな音響空間を提供でき、着座者の隣のシート側にヘッドレスト装置10の出力する音が届くことを抑制できる。
【0025】
さらに、音響スピーカー50,50は、出力した音声S1が前方側ほど左右の外側に広がるように、外向きに傾斜して配置されているため、音響スピーカー50,50の左右の間隔を小さくしてヘッドレスト装置10を小型化した構成であっても、音が着座者の耳に届くように音を左右に広がらせることができ、良好なステレオ感を着座者に感じさせることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、クッション芯材12で音響スピーカー50,50を支持することで、密閉された中空のクッション芯材12のエンクロージャー部40を、低音を増強させるエンクロージャーとして使用している。このため、専用のエンクロージャーを設ける必要がなく、構造を簡略化できる。また、比較的大きな内部空間40aを有するクッション芯材12をエンクロージャーとして使用するため、音質が良い。
【0027】
図3及び
図5に示すように、音響機器取り付け面41は、サブウーハー52が取り付けられるウーハー取り付け面60を下部に備える。詳細には、ウーハー取り付け面60は、スピーカー支持孔59,59の下方においてクッション芯材12の幅方向の中央に設けられており、前下方を向くように傾斜している。サブウーハー52は、ウーハー取り付け面60に取り付けられることで前下方を向き、前下方に音声S2を出力する。サブウーハー52の振動板は、制御基板53により制御される駆動部(不図示)によって駆動される。このように、サブウーハー52を下向きに設けることで、着座者の体の下の部分に音を伝達でき、着座者に低音を感じ易くさせることができるという効果が得られる。
【0028】
図2、
図3及び
図5に示すように、音響機器取り付け面41の受け面部58は、エンクロージャー部40の内側へ向かって窪む集音部61を備える。集音部61は、音響スピーカー50,50の間でヘッドレスト装置10の幅方向の中央部に配置されるとともに、サブウーハー52の上方でヘッドレスト装置10の上下方向の中央部に配置され、後頭部Hの後方に位置する。集音部61は、後端側ほど先細る略円錐状に形成されており、集音部61の略円錐形状の軸線(不図示)は、前方へ略水平に延びている。集音部61の前面には、集音部61内に音を取り込む集音開口部61aが形成されている。なお、集音部61は集音可能な形状であれば良く、略円錐形状に限定されるものではない。集音部61は、例えば、略角錐状または略円錐台形状等の形状であっても良い。
【0029】
音響マイク51は、効率良く音響マイク51に集音できるように、集音部61内の中央に配置される。
本実施の形態では、音響マイク51を音響スピーカー50,50の間に配置し、音響スピーカー50,50を外向きに配置したため、音響スピーカー50,50の音声S1が音響マイク51に直接的に受音されることを防止でき、音響マイク51が音声S1に影響されることを防止できる。
さらに、サブウーハー52は、音響マイク51の下方で前下方に音声S2を出力するため、音声S2が直接的に音響マイク51に受音されることを防止でき、音響マイク51が音声S2に影響されることを防止できる。また、サブウーハー52は、後頭部Hの後方側から前下方に音声S2を出力するため、音声S2は、主として、頭部よりも体積の大きい着座者の胴体部を介して着座者に伝達される。このため、着座者に低音を感じ易くさせることができ、迫力のある低音を提供できる。
【0030】
また、サブウーハー52は、音響スピーカー50,50と同様に、密閉された中空のクッション芯材12のエンクロージャー部40によって支持されており、低音を増強させるエンクロージャーとしてエンクロージャー部40を使用している。このため、専用のエンクロージャーを設ける必要がなく、構造を簡略化できる。また、比較的大きな内部空間40aを有するクッション芯材12をエンクロージャーとして使用するため、音質が良い。
すなわち、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52は、クッション芯材12のエンクロージャー部40をエンクロージャーとして共用している。ここで、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52を同一のエンクロージャー部40に設けた場合、相互に干渉して音質に影響が出ることが考えられるが、ヘッドレスト装置10は、頭部に近接して設けられるものであり、音の出力が比較的小さくて済むため、上記干渉の影響は小さなものとなる。
【0031】
さらに、前側ケース固定ボルト21が挿通される固定部34(
図2)は、音響マイク51の上方において音響スピーカー50,50の間、及び、音響スピーカー50,50の下方においてサブウーハー52の左右側方にそれぞれ設けられている。このため、音響スピーカー50,50、音響マイク51及びサブウーハー52をバランス良く配置しながら、前側ケース30を強固に固定できる位置に設けられた固定部34によって前側ケース30を固定でき、クッション芯材12の密閉性を確保できる。
【0032】
図4〜
図6に示すように、クッション13は、クッション芯材12の前面12aを覆う前面クッション部62と、クッション芯材12の残りの面を覆う後部側クッション部63とを備える。
後部側クッション部63は、残りの面である後面12b、右側面12e、左側面12f、下面12dの後部及び天面12cの後部を覆う。前面クッション部62は、前面12aの全体、下面12dの前部及び天面12cの前部を覆う。前面クッション部62と後部側クッション部63とは、縁部で繋ぎ合わされて袋状に形成されており、被せられるようにしてクッション芯材12に装着される。
【0033】
後部側クッション部63は、音を高効率で減衰する素材で構成される減衰層63aと、遮音性の高い素材で構成される遮音層63bとの2層を備える。
減衰層63aは、例えば、ウレタン等の吸音性能が高く、且つ、クッション性が高い樹脂で構成される。ウレタンは、例えば、多孔質構造を備える連続気泡体のものを用いることで、高い吸音性が得られる。
【0034】
遮音層63bは、縫製可能であり、且つ、振動(音)の減衰性及び遮音性が高い軟質樹脂材料により構成される。遮音層63bは、例えば、エラストマーにより構成され、一例としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーから構成される。
減衰層63aは、クッション芯材12の後面12bに密着する内層であり、遮音層63bは、外側に露出する外層である。減衰層63aの外面と遮音層63bの内面とは、密着して接合されており、減衰層63aと遮音層63bとは一体化されている。減衰層63aは遮音層63bよりも厚く形成されている。
すなわち、後部側クッション部63は、ヘッドレストとしてのクッション性を備えるとともに、音を効率良く減衰及び遮音できる素材から構成されている。
【0035】
前面クッション部62は、繊維体を編んで立体的な網状に構成した立体網状クッション体であり、いわゆる繊維パッドである。上記繊維体としては、例えば、ポリプロピレンの繊維体や、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートとの混紡繊維体が挙げられる。詳細には、前面クッション部62は、上記立体網状クッション体からなる前面クッション部本体62aと、前面クッション部本体62aの表面を覆う前面パッド部62bとを備える。前面パッド部62bは、前面クッション部本体62aよりも網目が粗な立体網状クッション体により構成されている。
前面クッション部62は、高いクッション性を備えるとともに、立体網状構造により、高い通音性及び通気性を備える。すなわち、前面クッション部62は、ヘッドレストとしてのクッション性を備えるとともに、音を効率良く通音できる素材から構成されている。
【0036】
音響スピーカー50,50及びサブウーハー52から前方に出力される音声S1,S2は、高い通音性を備えた前面クッション部62を通って前方に出力される。他方、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52から後方に出力される音は、後部側クッション部63によってヘッドレスト装置10内で減衰及び遮断され、後方の外側にはほとんど出力されない。詳細には、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52から後方に出力される音は、まず、減衰層63aで減衰されて弱められ、その後、遮音層63bで減衰及び遮音されるため、後方に漏れ出す音を効果的に遮音できる。これにより、通音性の高い前面クッション部62を通して前方に音を供給できるとともに、後方に漏れる音を後部側クッション部63によって小さくできるため、着座者にパーソナルな音響空間を提供できる。
【0037】
また、前面クッション部62は、略全面が通音性の良い素材で構成されており、クッションの一部に通音孔等を設けた構成に比して、前面クッション部62が音に与える影響を小さくできる。このため、ヘッドレスト装置10の音質が良い。また、上記通音孔等を設けた構成では、頭部で通音孔が塞がれてしまうことが考えられ、この場合、音質が劣化する。これに対し、本実施の形態では、前面クッション部62の略前面が通音性の良い素材で構成されており、頭部によって前面クッション部62の全体が塞がれてしまうことがないため、良い音質が得られる。ここで、前面クッション部62における通音性の良い素材で構成される部分は、正面視において頭部を前面クッション部62側に投影した投影部の領域よりも広い領域に亘って設けられることが望ましい。すなわち、前面クッション部62における通音性の良い素材で構成される部分は、頭部がヘッドレスト装置10に当接した状態で、正面視において頭部で隠れない範囲まで設けられることが望ましい。
【0038】
次に、ヘッドレスト装置10の出力する音声の低音の再生能力をさらに増強する構成について説明する。
図1、
図3及び
図6に示すように、ヘッドレストステー15,15は、その全長に亘って中空のパイプ状に形成されており、ヘッドレストステー15,15内を軸方向に貫通する中空部70をそれぞれ有する。中空部70は、エンクロージャー部40内で開口する上部開口71(連通孔)と、このクッション芯材12の外側で開口する下部開口72(連通孔)とを備える。下部開口72は、背もたれ部5の内部で開口する。
本実施の形態では、上部開口71はヘッドレストステー15,15の上端に位置し、下部開口72はヘッドレストステー15,15の下端に位置する。
すなわち、エンクロージャー部40の内部空間40aとエンクロージャー部40の外側の空間とは、ヘッドレストステー15,15の中空部70を介して連通している。
【0039】
音響スピーカー50,50及びサブウーハー52が駆動されると、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52の振動によってエンクロージャー部40内の空気Aは押し出される。詳細には、この空気Aは、
図1に示すように、ヘッドレストステー15,15の上部開口71から中空部70に入り、中空部70を通って下部開口72から外側に流れる。このため、ヘッドレストステー15,15をいわゆるバスレフダクトとして使用でき、専用のダクトを設けることなく、音響スピーカー50,50及びサブウーハー52の低音の再生能力を増強できる。
【0040】
なお、上部開口71及び下部開口72の位置は、ヘッドレストステー15,15の上端及び下端に限らず、優れた音響特性が得られる位置に設けられれば良い。上部開口71及び下部開口72の位置や大きさは、エンクロージャー部40の容積、音響スピーカー50,50のサイズ及び能力等を考慮し、優れた音響特性が得られるように設定される。例えば、上部開口71及び下部開口72に替えて、ヘッドレストステー15,15の側面に設けられて中空部70に連通する上部開口及び下部開口をそれぞれ設けることができ、この際、優れた音響特性が得られるように、上部開口と下部開口との間の距離を調整しても良い。また、必要とされる音響特性に応じて、ヘッドレストステー15,15の片方のみに上部開口71及び下部開口72を設け、1本のヘッドレストステー15のみをバスレフダクトとして使用しても良い。
【0041】
また、各上部開口71,71は、正面視で音響スピーカー50,50に重なる位置に配置され、
音響スピーカー50,50の後方にそれぞれ位置する。このため、左右の音響スピーカー50,50の駆動に起因する空気の流れを左右の上部開口71,71を介してバランス良く中空部70,70に流すことができ、左右のバランス良く低音を増強できる。
【0042】
次に、制御基板53を効率良く冷却する構成について説明する。
図7は、
図5における下部クロスメンバ17の周辺部の拡大図である。
図3、
図5及び
図7を参照し、下部クロスメンバ17は、ヘッドレストステー15,15を左右に繋ぐ棒状に形成されている。下部クロスメンバ17は、板材を略L字状に折り曲げるようにして形成されており、その長手方向に垂直な断面視において、略水平に伸びる横板部85と、横板部85の一端から上方に延びる縦板部86とを備える。
縦板部86は、鉛直方向に対して横板部85の他端側に傾斜しており、横板部85と縦板部86とが成す角は90°よりも小さい。
【0043】
横板部85は、他端から上方に延びる固定板部87を長手方向の両端にそれぞれ有し、固定孔部22は固定板部87に形成される。また、横板部85は、横板部85を他端側から切り欠いた切り欠き部85aを固定板部87,87の間に有する。
縦板部86は、長手方向の両端に固定孔部20をそれぞれ備える。縦板部86は、ヘッドレスト装置10の前面側に面する外側面86aと、外側面86aの裏側の内側面86bとを備える。
下部クロスメンバ17は、横板部85の他端及び縦板部86の上端を介し、長手方向の両端部がヘッドレストステー15,15にそれぞれ溶接される。
【0044】
制御基板53は、集積回路であるLSI53aと、LSI53aを支持する基板53bとを備える。制御基板53は、内側面86b上において固定孔部20,20の間に設けられる。
制御基板53は、下部クロスメンバ17の内側面86bとLSI53aとの間に設けられる熱伝導部材88を介して内側面86bに取り付けられる。熱伝導部材88としては、熱伝導率の高い材質で構成されるシート状のものや、放熱グリスを用いることができる。
【0045】
制御基板53の熱は、熱伝導部材88を介して下部クロスメンバ17に伝達され、さらに、下部クロスメンバ17からヘッドレストステー15,15及び上部クロスメンバ16に伝達され、フレーム11の全体から空気中に放熱される。すなわち、金属製で放熱性が高いフレーム11を制御基板53の放熱部材として用いるため、専用の放熱板等を追加せずに簡単な構成で制御基板53の熱を効率良く放熱できる。特に、ヘッドレストステー15,15は、下部がエンクロージャー部40の外側に延びているため、効果的に放熱できる。また、専用の放熱板等を追加しないため、エンクロージャー部40の内部空間40aの容積を大きく確保でき、低音の再生能力が良い。
なお、本第1の実施の形態では、制御基板53はエンクロージャー部40の内側に設けられているが、エンクロージャー部40を備えない構成において制御基板53がクッション13の内側に設けられる場合、制御基板53がフレーム11に接触して設けられていれば、フレーム11を介した熱伝導によって制御基板53を効率良く放熱できる。
【0046】
また、エンクロージャー部40の内部空間40aの空気A(
図1)は、ヘッドレストステー15,15の中空部70を通って下部開口72から外側に排出される。このため、制御基板53の放熱により熱せられた空気を中空部70を介して外側に排出でき、簡単な構成で制御基板53の熱を効率良く放熱できる。
また、LSI53aに熱伝導部材88を接触させるため、LSI53aの熱を効率良く下部クロスメンバ17に伝達できる。
さらに、着座者が背もたれ部5にもたれ掛かることで、背もたれ部5のクッションが変形し、これにより発生した空気流の一部は、下部開口72から中空部70に流れ、内部空間40aに流入し、制御基板53を冷却する。このため、着座者の動きによって発生する空気流を利用して制御基板53を効率良く冷却できる。
【0047】
図8は、ヘッドレスト装置10の音のボリュームと制御基板53の温度との関係を示す図表である。
図8では、制御基板53を熱伝導部材88を介して内側面86bに取り付けた場合の結果R1と、制御基板53をフレーム11に接触させずに内部空間40aに設けた場合の結果R2とが示されている。
図8に示すように、音のボリュームが大きくなるほど音響スピーカー50,50等が要する電流が大きくなるため、制御基板53の温度は、ボリュームの増加に伴い増加する。
本実施の形態では、制御基板53を下部クロスメンバ17に取り付けることで、制御基板53をフレーム11に接触させない場合に比して、ボリュームの大きさに係わらず略20℃だけ温度を低下させることができた。
また、ボリュームが大きくなるほど音響スピーカー50,50等の振動が大きくなり、中空部70を流れて排出される空気Aの流量も増加する。すなわち、本実施の形態では、音のボリュームが大きくなるのに従って、自然に空気Aの流量が増加し、制御基板53の熱を放熱する能力が増加する。このため、効率良く制御基板53の熱を放熱できる。
【0048】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、ヘッドレスト装置10は、密閉構造のクッション芯材12と、クッション芯材12に配置される音響スピーカー50,50と、クッション芯材12を貫通する中空のヘッドレストステー15,15とを有し、ヘッドレストステー15,15は、中空部70を介してクッション芯材12の内部の空気を外側に流通させる。これにより、ヘッドレストステー15,15を、低音の再生能力を向上させるダクトとして用いることができ、簡単な構造で低音の再生能力を向上できる。
【0049】
また、ヘッドレストステー15,15は、パイプ形状の上端及び下端に、空気の連通孔である上部開口71,71及び下部開口72,72を備えるため、要求特性に合わせて上部開口71,71及び下部開口72,72の位置を設定することで音響特性を簡単な構成で最適化できる。
また、音響スピーカー50,50は左右一対で設けられ、ヘッドレストステー15,15は、音響スピーカー50,50に近接する位置に左右一対で設けられる。このため、左右の音響スピーカー50,50の低音の再生能力をバランス良く向上できる。
さらに、下部開口72,72は、着座者の耳から離れた背もたれ部5内で開口するため、下部開口72,72から放出される空気流の音が着座者に聞こえてしまうことを抑制できる。このため雑音を低減して音質を向上できる。
【0050】
また、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、ヘッドレスト装置10は、ヘッドレスト装置10の内側に設けられる金属製のフレーム11を備え、フレーム11は、シート1の背もたれ部5に接続されるヘッドレストステー15,15を一体に備え、発熱体としての制御基板53がフレーム11に固定される。このため、制御基板53の熱をヘッドレストステー15,15を含む金属製のフレーム11を介して外側に効率良く放熱できる。
【0051】
また、ヘッドレストステー15,15は、中空に構成されており、中空部70,70を介してヘッドレスト装置10の内部の空気を外側に流通させるため、中空部70,70から外側に流れる空気Aによって制御基板53の熱を外側に効率良く放熱できる。
さらに、フレーム11は、密閉構造のクッション芯材12の内側に設けられてクッション芯材12を支持し、ヘッドレストステー15,15は、クッション芯材12の内側の内部空間40aを外側に連通させる。このため、密閉構造のクッション芯材12の内側の内部空間40aの空気を中空部70,70から外側に流通させることができ、制御基板53の熱を外側に効率良く放熱できる。
【0052】
また、クッション芯材12には、音響スピーカー50,50が設けられるため、ヘッドレスト装置10から音を出力できるとともに、音響スピーカー50,50の出力による空気の流れによって、中空部70,70の空気Aの流通を促進できる。このため、制御基板53の熱を外側に効率良く放熱できる。
また、制御基板53は、音響スピーカー50,50の音響信号処理回路であるため、中空部70,70から外側に流れる空気Aによって、音響信号処理回路の発熱を効率良く放熱できる。
また、ヘッドレストステー15,15は、クッション芯材12の内部空間40aを背もたれ部5の内部に連通させるため、背もたれ部5の変形等による背もたれ部5内の空気の流動によって中空部70,70の空気の流通を促進できる。このため、制御基板53の熱を外側に効率良く放熱できる。
【0053】
[第2の実施の形態]
以下、
図9及び
図10を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、制御基板53は下部クロスメンバ17に設けられるものとして説明したが、本第2の実施の形態は、制御基板53が下部クロスメンバ17を有しないフレーム311に設けられる点が上記第1の実施の形態と異なる。
【0054】
図9は、第2の実施の形態におけるフレーム311の上部を示す正面図である。
フレーム311(フレーム部材)の上部は、クッション芯材12の内側に位置し、クッション芯材12はフレーム311に支持される。
フレーム311は、金属製の中空の丸パイプを略U字状に曲げて形成されており、略鉛直に延びる一対のヘッドレストステー部315,315(ヘッドレストステー)と、ヘッドレストステー部315,315を繋ぐ略半円の円弧状の屈曲部316とを備える。フレーム311は、その全長に亘る中空部370を備える。
ヘッドレストステー部315,315は、中空部370を外側に連通させる不図示の下部開口(連通孔)を下端部に備える。また、ヘッドレストステー部315,315は、中空部370を外側に連通させる上部開口371(連通孔)を上端部に備える。上部開口371は、内部空間40aに開口する。
【0055】
ヘッドレストステー部315,315は、周囲のヘッドレストステー部315,315よりも外径が小径に形成された小径部317,317を途中に有する。小径部317,317の中空部317a,317aの内径は、周囲のヘッドレストステー部315,315の中空部370の内径よりも小さい。すなわち、中空部317a,317aの断面積は、その周囲の中空部370の断面積よりも小さい。このため、中空部317a,317aを流れる空気の流速は、その周囲の中空部370を流れる空気の流速よりも大きい。
制御基板53は、左右のヘッドレストステー部315,315に跨って設けられる。詳細には、制御基板53は、長手方向の両端部が小径部317,317に取り付けられる。
【0056】
図10は、図
9のZ矢視図である。
制御基板53は、小径部317,317の外周面とLSI53aとの間に設けられる熱伝導部材88を介して小径部317,317に取り付けられる。
本第2の実施の形態では、ヘッドレストステー部315,315において制御基板53の近傍の部分である小径部317,317は、中空部317a,317aの断面積が周囲よりも小さく形成されているため、制御基板53の近傍の中空部317a,317aを流れる空気の流速を大きくできる。このため、制御基板53の熱を外側に効率良く放熱できる。
また、内側に凹んだ小径部317,317に制御基板53が配置されるため、制御基板53をコンパクトに配置できる。
さらに、ヘッドレストステー部315,315をバスレフダクトとして使用するため、低音を増強できる。
【0057】
なお、ヘッドレストステー部315,315に小径部317,317を設けずに、ヘッドレストステー部315,315を全長に亘って略同一径としても良い。この場合、制御基板53は、ヘッドレストステー部315,315の外周部に熱伝導部材88を介して取り付けられる。
また、上記第1の実施の形態のヘッドレストステー15,15の途中に、周囲のヘッドレストステー15,15の外径よりも小さい小径部を設け、この小径部の中空部の断面積を小さくしても良い。この場合、小径部を制御基板53の両端部の近傍に設けることで、制御基板53の近傍の中空部の流速を大きくでき、放熱の効率を向上できる。
また、上記第2の実施の形態では、ヘッドレストステー部315,315は、周囲のヘッドレストステー部315,315よりも外径が小径に形成された小径部317,317を途中に有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、小径部317,317に替えて、ヘッドレストステー部315,315の途中をプレス加工等により凹まして平面状の部分を設け、この平面状の部分に制御基板53を配置しても良い。すなわち、上記平面状の部分は、断面視でかまぼこ形状であり、このかまぼこ形状の平板状の部分に制御基板53を取り付けることで、ヘッドレストステー部315,315と制御基板53との接触面積を大きくすることができ、制御基板53の熱を効率良くヘッドレストステー部315,315に伝達することができる。
【0058】
[第3の実施の形態]
以下、
図11を参照して、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態とは異なる位置に空気の連通孔が設けられている。
【0059】
図11は、第3の実施の形態におけるフレーム111の構成を示す図である。
ヘッドレスト装置110は、フレーム11に替えてフレーム111を備える。
フレーム111は、背もたれ部5の上面に形成された取り付け孔部(不図示)に挿入されるヘッドレストステー115,115と、エンクロージャー部40(
図4)の内側でヘッドレストステー115,115の上端部を左右に連結するクロスメンバ117とを備える。
【0060】
各ヘッドレストステー115,115は、中空のパイプ状のステー本体175と、ステー本体175の上端に連結される中空の延長パイプ部176と、ステー本体175の下端を塞ぐ蓋部材177とを備える。ステー本体175及びクロスメンバ117は金属製である。延長パイプ部176及び蓋部材177はステー本体175の材質よりも軽量な樹脂製である。
クロスメンバ117は、延長パイプ部176に設けられる。ステー本体175と延長パイプ部176とは繋げられて一体化され、その全長に亘る中空部170を備える。延長パイプ部176は、エンクロージャー部40内で開口する上部開口171(連通孔)を上端に備える。すなわち、ステー本体175に延長パイプ部176を追加することで、各ヘッドレストステー115,115の開口位置が上方に移動している。また、延長パイプ部176は樹脂性で軽量であるため、重量を大きく増加させずに、上部開口171の位置を調整できる。
【0061】
ステー本体175の下端の開口175aは、蓋部材177によって塞がれる。ステー本体175は、開口175aよりも上方の側面に、中空部170に連通する側面開口172(連通孔)を備える。側面開口172は、背もたれ部5の内部に開口する。すなわち、ステー本体175の下端の開口175aを蓋部材177で塞ぐとともにその上方に側面開口172を設けることで、中空部170の下端側の開口の位置が上方に移動している。蓋部材177は樹脂性で軽量であるため、各ヘッドレストステー115,115の重量を大きく増加させることがない。
このように、延長パイプ部176及び蓋部材177をステー本体175に追加することで、音響特性の優れた任意の位置に上部開口171及び側面開口172を設けることができる。なお、延長パイプ部176及び蓋部材177は同時に用いられる必要はなく、必要な音響特性に応じて単独で用いられることができる。
また、第3の実施の形態では、連通孔として上部開口171及び側面開口172を例に挙げて説明したが、これに限らず、連通孔は、エンクロージャー部40の内側とエンクロージャー部40の外側とに少なくとも一対設けられていれば良く、連通孔の位置は、音響特性や配置スペースの制約等によって任意の位置に設定される。すなわち、連通孔は、ヘッドレストステー115,115の側面に一対設けられても良く、或いは、ヘッドレストステー115,115の端と側面とに設けられても良い。
【0062】
[第4の実施の形態]
以下、
図12及び
図13を参照して、本発明を適用した第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
第4の実施の形態は、ヘッドレストステー15,15の下部開口72に連通する拡張エンクロージャー281が背もたれ部5に設けられる点が、上記第1の実施の形態と異なる。
【0063】
図12は、第4の実施の形態に係るシート201の構造を示す模式図である。
図13は、シート201の内部構成を示す図である。
音響装置としてのシート201(音響装置)は、座面部3と、背もたれ部5と、ヘッドレスト装置10とを備える。
背もたれ部5は、シートフレーム(不図示)と、シートフレームの周囲に設けられるクッション(不図示)と、このクッションを覆うカバー部材280とを備える。
カバー部材280は、背もたれ部5の前面の略全体に設けられて着座者の背中に接触する背もたれ前面部280aと、背もたれ後面部280bとを備える。
背もたれ前面部280aは、通気性の良い、例えば樹脂や布等の素材により構成される。背もたれ後面部280bは、背もたれ前面部280aよりも通気性が低い(背もたれ前面部280aよりも通音性が低い)、例えば木材、コルク及び樹脂等の素材により構成される。
【0064】
背もたれ部5の内部には、箱状の拡張エンクロージャー281が設けられている。拡張エンクロージャー281は、前記クッションの内部に埋め込まれるようにして配置される。拡張エンクロージャー281は、着座者側へ内部の空気を放出させるポート282を、背もたれ前面部280aに面する前面に備える。
ヘッドレスト装置10のヘッドレストステー15,15は、拡張エンクロージャー281に接続される。詳細には、ヘッドレストステー15,15は、拡張エンクロージャー281の上面281aを貫通して拡張エンクロージャー281の内部空間に侵入し、ヘッドレストステー15,15の下部開口72は、拡張エンクロージャー281の内部空間に開口する。
【0065】
すなわち、エンクロージャー部40の内部空間40aと拡張エンクロージャー281の内部空間とは、ヘッドレストステー15,15の中空部70を介して連通している。
音響スピーカー50,50及びサブウーハー52の駆動によりエンクロージャー部40から放出された空気は、中空部70を通って拡張エンクロージャー281内に流れ、ポート282から前方の着座者側に放出される。
このため、拡張エンクロージャー281によって音響装置のエンクロージャーの容積を拡大して低音を増強できるとともに、音響スピーカー50,50の駆動に連動する空気流を着座者に直接的に当てることができ、着座者に音を感じ易くさせることができる。なお、拡張エンクロージャー281を設けるだけでエンクロージャーの容積を拡大して低音を増強できるため、ポート282を設けない構成としても良い。
さらに、背もたれ前面部280aは、背もたれ後面部280bよりも通音声が高く構成されている。このため、拡張エンクロージャー281の放出する音を背もたれ前面部280a側に指向させて出力でき、着座者側に良好な低音を感じさせることができる。
【0066】
なお、上記第1〜第4の実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記第1〜第4の実施の形態に限定されるものではない。
上記第1〜第4の実施の形態では、発熱体としての制御基板53は、音
響信号処理回路や、音響マイク51を制御するための制御回路などが搭載されているものであるとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。発熱体は電子機器に関するものであれば良く、例えば、電動シートの動作を制御する制御基板や、ヘッドレスト装置10に内蔵されたセンサー基板等であっても良い。
また、上記第4の実施の形態では、背もたれ部5の内部には、箱状の拡張エンクロージャー281が設けられるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、拡張エンクロージャー281を設けずに、背もたれ前面部280aを孔空きの表皮や通気性の良い素材で形成して通気性が高い構成とし、背もたれ後面部280b及び背もたれ部5の左右の側面の略全体をゴム系等の通気性の低い素材で覆う構成としても良い。この場合、背もたれ部5から放出される音を背もたれ前面部280a側に指向させて出力でき、拡張エンクロージャー281を設けた場合と同様の効果を得られる。