【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
Sang-Min Yoo, Jeffrey S. Walling et al.,A Switched-Capacitor RF Power Amplifier,IEEE Journal of Solid-State Circuits,米国,IEEE,2011年 9月 6日,pages.2977-2987
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2つの入力端子と、2つの出力端子とを有し、前記2つの入力端子から入力された信号のいずれかを前記2つの出力端子のいずれかに出力する指示を行う選択信号に従って、前記入力された信号を処理して出力する論理回路と、
前記論理回路と、当該論理回路の一方の出力端子に直列接続された同相成分用の容量と、当該論理回路の他方の出力端子に直列接続された直交成分用の容量と、を有するD級単位アンプと、
前記D級単位アンプが複数並列に接続されたスイッチトキャパシタパワーアンプと、
前記選択信号に応じて、送信信号の同相成分と直交成分のいずれかを前記2つの入力端子の一方の端子に出力する第一の入力信号選択回路と、
前記選択信号に応じて、同相成分用の搬送波信号の正相、同相成分用の搬送波信号の逆相、直交成分用の搬送波信号の正相、直交成分用の搬送波信号の逆相のいずれかを前記2つの入力端子の他方の端子に出力する第二の入力信号選択回路と、
を具備し、
前記同相成分用の容量と前記直交成分用の容量とは、各前記容量の出力側において接続される、送信装置。
前記第二の入力信号選択回路は、前記搬送波信号の周波数の2倍の周波数での切り替えを停止し、デジタル値である同相成分と直交成分の符号ビットの変化時のみ切り替える、
請求項1に記載の送信装置。
【背景技術】
【0002】
無線通信においては、低コストで消費電力の低い送信装置が求められることが多い。消費電力の低減には、消費電力の大きい電力増幅器を低消費電力化することが有効である。消費電力の小さい電力増幅器の一つにD級アンプがある。
【0003】
D級アンプは、等価的には、電源と出力間のスイッチと、グランドと出力間のスイッチとのいずれかを交互にオンさせて出力する構成であり、理想的には、負荷に流れる電流以外には消費電流がないため、電力効率が高いという特徴がある。
【0004】
しかしながら、従来のD級アンプは、出力電力の制御方法とその線形性に関して、以下のような技術的な課題があった。
【0005】
D級アンプの出力は、理想的には、スイッチを経由して電源またはグランドに接続されるため、その出力電圧振幅は電源とグランド間で振れる。このため、電源電圧を変化させることにより出力電圧振幅の制御が可能であるが、電源電圧を変化させるには、低ノイズ、かつ、高速に応答するLDO(Low Drop Out)レギュレータが必要である。高速のLDOは、トランジスタの抵抗損で電圧を変化させるため、電力ロスが発生する。また、電源電圧が低くなると、前述のスイッチのオン抵抗が大きくなり、電源電圧に対する出力電圧振幅の線形性が悪くなり、振幅変動がある変調信号を入力した場合の出力信号歪特性が劣化する。
【0006】
これらの課題を解決する1つの手段として、スイッチトキャパシタパワーアンプ(以下、「SCPA(Switched Capacitor Power Amplifier)」という)がある(非特許文献1参照)。SCPAは、D級アンプの高効率性を活かしつつ、前述の課題を解決している。
【0007】
SCPAの等価回路は、AND出力に直列容量を備えたD級単位アンプが複数並列接続された構成である。並列接続されたD級単位アンプのうち、出力電力制御信号に比例した数だけが動作状態となり、それ以外のD級単位アンプのAND出力はグランド電位固定となる。この構成によれば、動作状態のD級単位アンプからの出力信号は、直列容量を経由して出力側へ伝えられるとともに、停止状態のD級単位アンプの直列容量を経由してグランドへも伝えられる。つまり、動作状態のD級単位アンプからの出力信号は、容量のアッテネータを経由して出力側へ伝えられ、出力電力は容量比で決まる。
【0008】
SCPAの半導体への実装を考えた場合、製造ばらつきがあっても高い相対精度が期待できるので、補正を用いなくても線形性が非常に高く、広い出力電力可変範囲を確保できる。また、AND出力の直列容量は、D級単位アンプが動作状態または停止状態でも、電源かグランドといった接地点に常に接続されているため、出力インピーダンスが出力電力制御信号に依らず一定となる。この結果、インダクタとのLC共振周波数は、出力電力制御信号に依らず一定であり、安定して出力信号から基本波周波数成分のみを取り出すことができる。
【0009】
また、
図1に示すように、非特許文献2に開示の送信装置では、2個のデジタル型パワーアンプを同相成分(I)と直交成分(Q)用のミキサーとして利用し、直交変調器に加え、パワーアンプの機能も実現している。パワーアンプの出力において、アナログ信号になるまではデジタル信号であるため、従来のアナログ直交変調器で必要となっていた同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)用のアナログミキサー、DAコンバータ及びポストフィルタの必要がない。また、大半の信号処理がデジタル信号処理であるため、近年の微細半導体プロセスにより、低コスト化を図ることができる。さらに、搬送波信号として、25%Dutyの信号を用いているので、同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)のいずれかのみがパワーアンプの出力に接続される。この結果、同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)を合成する際、バランを用いることなく、それぞれのパワーアンプ出力を直結できる(上記文献では、差動−片相変換用にバランを用いている)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献2に示された送信装置では、2個のデジタル型パワーアンプを同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)用のミキサーとして利用し、直交変調器に加え、パワーアンプの機能も実現するが、2個のパワーアンプは、半導体集積回路上で大きな面積を占めるため、コスト上のデメリットとなってしまう。特に、近年の微細半導体プロセスでは、半導体単位面積あたりのコストが高いため、その影響が大きい。
【0012】
また、非特許文献1に示されたSCPAでは、ポーラ(Polar)変調方式を想定しているので1個のパワーアンプしか必要としないが、送信装置として用いるには、同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とから振幅成分(r)と位相成分(θ)へとデータを変換するコーデックと、搬送波に対して位相成分(θ)を変調させる位相変調器とが別途必要となる。この結果、半導体集積回路上での面積を増加させ、コストアップの要因となってしまう。
【0013】
非特許文献2に示された送信装置では、搬送波信号として、25%Dutyの信号を用いている。このため、同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)のいずれかのみが時分割にてパワーアンプの出力に接続される。つまり、時分割にて同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)を切り替えることができれば、原理的には、1つのパワーアンプでも直交変調器を構成することが可能であると考えられる。しかしながら、この場合、下記の問題が発生する。
【0014】
図2は、1個のSCPAの構成を簡素化して示す図である。SCPAは、前述の通り、AND出力に直列容量を備えたD級単位アンプが複数並列接続された構成である。
図2では、トータルN個のD級単位アンプから構成されており、そのうちBB個が動作状態(D級単位アンプのAND出力はVDDまたはグランド電位の方形波を出力)、N−BB個が停止状態(D級単位アンプのAND出力はグランド電位で固定)である。動作状態のD級単位アンプからの出力信号は、容量アッテネータC1、C2にて減衰されて出力側へ伝達される。
【0015】
ここで、時分割で同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とを理想的に切り替える直交変調器の動作について説明する。
図3は、ベースバンド信号(同相成分と直交成分)の値に比例した振幅を有する搬送波信号(同相成分と直交成分)を、搬送波周期の1/4毎に時分割にて交互に出力する様子を示した図である。一般的に、アパーチャ効果を考慮しない理想的なDAコンバータは、δ関数列を用いたインパルス列で表されるが、SCPAも高速に動作するDAコンバータの一つと考えることができるため、δ関数列を用いて説明する。
【0016】
図3において、I(t)、Q(t)はベースバンド信号(同相成分と直交成分)、T0は、搬送波信号の1周期の1/4の時間である。太線で表される同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)のインパルスは、時分割で交互に出力されている。
図3のI(t)、Q(t)の波形は、δ関数列を用いるとそれぞれ式(1)、(2)のように表される。
【数1】
【数2】
【0017】
ベースバンド信号I(t)及びQ(t)のサンプリング後データをis(t)、qs(t)とし、式(1)及び式(2)をフーリエ変換すると、式(3)及び式(4)となる。ただし、ω0=2π/T0、4・T0=T04、ω04=2π/T04とする。
【数3】
【数4】
【0018】
ここで、オイラーの公式e
ーjθ=cosθ−j・sinθより、e
ーj・n・π=+1(n=偶数)、e
ーj・n・π=−1(n=奇数)であるから、式(3)及び式(4)の第1項と第2項は、n=偶数時に等しくなる。この結果、式(3)及び式(4)はゼロとなる。つまり、2次、4次といった偶数次の高調波スペクトラムは現れないことを意味している。
【0019】
次に、n=奇数の場合の式(3)及び式(4)について考える。
【数5】
【数6】
【0020】
式(5)及び式(6)は、同じ角速度ω04を用い、基本波(n=1)では、π/2の位相差を有し、波形I(t)、Q(t)の周波数スペクトラムをω04だけ周波数シフトさせたスペクトラムである。また、このスペクトラムは、全てのn次高調波(n=奇数)に現れる。波形I(t)、Q(t)は、直交しているので、式(5)及び式(6)を加算した信号は、直交変調器としての機能を有することが分かる。なお、SCPAでは、出力に設けられたLC共振器によって高調波を低減して、基本波周波数成分(1次)を取り出すことができる。また、搬送波周期の1/4よりも短い期間(例えば、1/8,1/16等)を用いても、直交変調器を構成することが可能であるが、消費電流の増大を招くという問題が発生してしまうので、これらの期間についての数式による同様の証明は省略する。
【0021】
次に、前述した課題である、1つのSCPAを用いて、搬送波周期の1/4の時間毎に同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とを切り替える際に発生する不要な高調波成分について説明する。
【0022】
不要な高調波成分は、他の無線通信に対して妨害信号となるため、法定許容値以下に低減しなければならない。しかし、低減のためにフィルターを追加するとコストと電力ロスが増大してしまう。特に、偶数次高調波は、基本波に近いため、フィルターにて減衰させる場合には、電力ロスの影響が大きい。先に述べた通り、数式で表されるような理想的な条件では、偶数次の高調波スペクトラムは現れない。しかしながら、従来のSCPAを用いて、搬送波周期の1/4の時間毎に同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とを切り替えた場合には、不要な偶数次の高調波スペクトラムが発生してしまう。
【0023】
図4は、並列に3ビットを入力するSCPAの構成を示している。BB{2}〜BB{0}は、同相成分(BB_I)、直交成分(BB_Q)といったデジタルベースバンド信号である。BB{2}がMSB(Most Significant Bit)、BB{0}がLSB(Least Significant Bit)である。各AND出力には、重み付けされた容量が直列接続されている。基本動作は、
図2の構成と同様あるため、ここではその説明を省略する。
【0024】
図4のSCPAに入力される各種信号の波形及びA0〜A2点における信号波形を
図5に示す。
図5では、搬送波信号の約1周期分に相当する時間を表している。また、BB{0}、BB{1}はL(0)であり、BB{2}はL(0)とH(1)が交互に繰り返される。これは、デジタルベースバンド信号として、BB_I=4、BB_Q=0が入力されることに相当し、搬送波1周期の1/4の時間毎に同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とを切り替えている。BB{2}が接続されているANDの出力であるA2点の波形に着目すると、時間0・T0にてHになり、時間1・T0にてLになる。
【0025】
次に、δ関数列を用いて、A2点の電圧の時間変化を表すと、式(7)のように表される。Va2(t)がA2点の電圧である。
【数7】
【0026】
式(7)をフーリエ変換すると、式(8)のように表される。
【数8】
【0027】
Va2s(t)は、Va2(t)のサンプリング後データである。式(8)は、前述の式(3)及び式(4)と異なり、nの値が偶数でも奇数でもゼロにならない。つまり、
図5のA2点の信号スペクトラムは、奇数次と偶数次の全ての高調波に現れることを意味している。
【0028】
本発明の目的は、1つのSCPAを用いて、同相成分と直交成分とを合成した際に、不要な偶数次高調波成分の発生を抑制する送信装置及び送信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の一態様に係る送信装置は、2つの入力端子と、2つの出力端子とを有し、前記2つの入力端子から入力された信号のいずれかを前記2つの出力端子のいずれかに出力する指示を行う選択信号に従って、前記入力された信号を処理して出力する論理回路と、前記論理回路と、当該論理回路の前記2つの出力端子にそれぞれ直列接続された容量とを有するD級単位アンプと、前記D級単位アンプを複数並列に接続されたデジタルアンプと、前記選択信号に応じて、送信信号の同相成分と直交成分のいずれかを前記デジタルアンプに出力する第一の入力信号選択回路と、前記選択信号に応じて、同相成分用の搬送波信号と直交成分用の搬送波信号のいずれかを前記デジタルアンプに出力する第二の入力信号選択回路と、を具備する構成を採る。
【0030】
本発明の送信方法は、送信信号の同相成分と直交成分のいずれかをデジタルアンプに出力するステップと、同相成分用の搬送波信号と直交成分用の搬送波信号のいずれかを前記デジタルアンプに出力するステップと、前記送信信号の同相成分と直交成分のいずれかと、前記同相成分用の搬送波信号と前記直交成分用の搬送波信号のいずれかとのうち、一方を処理して、容量がそれぞれ直列接続された2つの出力端子のいずれかに出力するステップと、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、1つのSCPAを用いて、同相成分と直交成分とを正しく合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、実施の形態において、同一機能を有する構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
(実施の形態1)
図6は、本発明の実施の形態1に係る直交変調器10の構成を示す図である。以下、
図6を用いて直交変調器10の構成について説明する。
【0035】
デジタルアンプ11は、D級単位アンプ101が複数並列接続されており、D級単位アンプ101は、2つの信号入力端子、2つの信号出力端子、及び、いずれの信号出力端子に出力するかを選択する選択信号の入力端子を持った論理回路102と、論理回路102の2つの信号出力端子に直列接続された容量103、104とで形成される。
【0036】
デジタルアンプ11には、第一の入力信号選択回路12から出力されるデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)または直交成分(BB_Q)と、第二の入力信号選択回路13から出力される搬送波信号である出力信号15とが入力される。
【0037】
この論理回路102の出力信号は、奇数次高調波成分を含む方形波であるため、インダクタ16と、論理回路102の2つの信号出力端子に直列接続された容量103、104との直列共振で、基本波信号成分のみを取り出している。
【0038】
なお、デジタルアンプ11は、デジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)の値に応じた電圧振幅の出力信号が得られるが、この原理は、
図2、3を用いて説明した背景技術と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0039】
第一の入力信号選択回路12は、デジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とが入力され、選択信号に応じて、同相成分と直交成分のいずれかを選択してデジタルアンプ11へ出力する。
【0040】
第二の入力信号選択回路13は、同相成分用搬送波信号(LO_I、LO_IB)と直交成分用搬送波信号(LO_Q、LO_QB)といった差動信号が入力され、第一の入力信号選択回路12と同様に選択信号に応じて、同相成分と直交成分のいずれかを選択してデジタルアンプ11へ出力するが、正相(LO_I、LO_Q)または逆相(LO_IB、LO_QB)のいずれを出力するかは、デジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)の値の正負に応じて切り替えている。これにより、IQ平面上の4象限全てを表すことが可能となる。
【0041】
今、BB_I、BB_Qが負の値である場合の直交変調器出力Cout17を式(1)で表すと、搬送波信号の位相θにπを加算することと等しくなる。これは、搬送波信号の逆相信号を用いることで実現できる。
直交変調器出力Cout17=(−I)×COSθ+(−Q)×SINθ
=I×COS(θ+π)+Q×SIN(θ+π)…(1)
【0042】
次に、
図6に示した直交変調器10の動作タイミングについて
図7を用いて説明する。図中のモード(Mode)は、同相成分と直交成分のいずれを出力しているかを示している。この図では、デジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)の値が共に正の値であるため、搬送波信号は正相(LO_I、LO_Q)が用いられており、搬送波の2倍の周波数を持つ選択信号のHまたはLに応じて、LO_IとLO_Qとが切り替えられることを示している。
【0043】
図8は、
図6に示した論理回路102の内部構成の一例を示す図である。この例では、論理回路102は、2つの出力端子201、202を備え、出力端子201、202には、Pch CMOSトランジスタ203及びNch CMOSトランジスタ204がカスコード接続されており、このカスコードトランジスタのON/OFFによって2つの出力端子201、202のいずれかに信号を出力する。
【0044】
また、
図9は、
図6に示した論理回路102の内部構成の他の一例を示す図である。この例では、論理回路102は、第一の入力信号選択回路12の出力信号14と第二の入力信号選択回路13の出力信号15が入力されるNAND(否定論理積)回路の後に、出力端子201、202専用に同一の出力段回路を2個備える。
図8の例と同様に、論理回路102は、搬送波の2倍の周波数を持つ選択信号のHまたはLに応じて2つの出力端子201、202のいずれかに信号を出力する。この構成の特徴は、カスコードトランジスタがないので、電力ロスが発生しないことである。また、適切なレイアウト設計により、半導体集積回路上での面積を有効に活用することが可能である。
【0045】
ここで、従来のSCPA2個を用いて、同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)用のミキサーとして利用し、直交変調器とパワーアンプの機能を実現した論理回路102(半導体集積回路)のレイアウトを
図10に示す。
【0046】
ここでは、
図2に示した従来のSCPAにおけるD級単位アンプのAND出力で用いられるNchとPchトランジスタが、半導体集積回路上最も面積が大きいため、その部分のみを示している。また、第一のNchトランジスタと第一のPchトランジスタが同相成分(BB_I)用であり、第二のNchトランジスタと第二のPchトランジスタが直交成分(BB_Q)用である。
【0047】
なお、
図10(a)の平面図では、同相成分(BB_I)用と直交成分(BB_Q)用トランジスタを隣接して配置しているが、後に述べる本発明のレイアウト例(
図11)との面積比較のためであり、実際には、同相成分(BB_I)用と直交成分(BB_Q)用のSCPAは、それぞれ個別に一塊でレイアウト設計される。その理由は、前述の通り、線形性と広い出力電力可変範囲を実現するためには、1つのSCPAにおける複数のD級単位アンプ間の高い相対精度が必須だからである。つまり、第一のNchトランジスタと第一のPchトランジスタは、第二のNchトランジスタと第二のPchトランジスタとから離れた場所に配置される。
【0048】
しかしながら、同相成分(BB_I)用と直交成分(BB_Q)用のSCPAを離れた場所に配置すると、それぞれの出力信号を結合するまでの配線の寄生抵抗と寄生容量にて出力電力を損失してしまうというデメリットがある。
【0049】
また、
図10(a)のレイアウト図では、第一及び第二のNchトランジスタと第一及び第二のPchトランジスタの面積に対して、全体の面積の方が非常に大きいことが分かる。この理由について
図10(b)を用いて説明する。
図10(b)は、半導体集積回路の縦構造図である。第一及び第二のNchトランジスタは、P型のWell層(PW)の内部に形成され、第一及び第二のPchトランジスタは、N型のWell層(NW)の内部に形成される。また、半導体の構造上、PW、NWは、それぞれGND電位、電源電位に接続しなければならない。このため、PWコンタクト領域、NWコンタクト領域を設け、前述の電位にそれぞれ接続する。また、出力端子201、202から半導体基盤(Psub)への不要な漏れ電力による様々なアイソレーション課題を防ぐため、PWとNW以外にディープエヌWell(DNW)を用いることが好ましい。そして、このDNW分離領域も電源電位に接続しなければならない。
【0050】
これらの理由により、第一及び第二のNchトランジスタと第一及び第二のPchトランジスタの面積よりも、その周辺の領域であるPWコンタクト領域、NWコンタクト領域、DNW分離領域の方が大きくなってしまう。また、前述の通り、SCPAは、D級単位アンプ101が複数並列接続されている。このため、1つのD級単位アンプ101の論理回路102で用いられる出力段のトランジスタは、複数分割されたトランジスタサイズでよいが、小さなトランジスタサイズであっても、前述のPWコンタクト領域、NWコンタクト領域、DNW分離領域が必要である。この結果、面積の小さなトランジスタほど、トランジスタの面積に対するPWコンタクト領域、NWコンタクト領域、DNW分離領域の面積が相対的に大きく見える。
【0051】
これに対し、
図9に示した論理回路102(半導体集積回路)のレイアウトを
図11に示す。
図11は、出力端子201、202で用いられる第一及び第二のNchトランジスタ(または第一及び第二のPchトランジスタ)が隣接して、同一の分離領域に配置されている。この配置では、同相成分(BB_I)用と直交成分(BB_Q)用の出力信号を結合するまでの配線の寄生抵抗と寄生容量にて出力電力を損失してしまうことがない。また、必要なPWコンタクト領域、NWコンタクト領域、DNW分離領域を共用することが可能となるため、
図11(a)の配置では、
図10(a)の配置と比べて半導体集積回路上の面積を有効に活用することができる。
【0052】
図12(a)は、同相成分用搬送波信号(LO_I、LO_IB)及び直交成分用搬送波信号(LO_Q、LO_QB)と、選択信号とを生成する手段の一例を示す図である。搬送波信号の2倍の周波数を持つ発振器301の差動出力信号を1/2分周器302に入力し、搬送波信号を生成する(
図12(b)参照)。選択信号は、発振器301の発振信号を直接用いる。
【0053】
図13(a)は、同相成分用搬送波信号(LO_I、LO_IB)及び直交成分用搬送波信号(LO_Q、LO_QB)と、選択信号とを生成する手段の他の一例を示す図である。互いに90度ずつ位相が異なる4つの信号を出力する発振器401とEX−OR(排他的論理和)回路402とから構成されている。
【0054】
図13(b)は、
図13(a)の構成における動作タイミングを示しており、選択信号は、発振器出力位相1と2といった90度位相が異なる2つの信号をEX−OR回路402に入力し、その出力信号を用いる。
【0055】
図14は、
図6に示した第二の入力信号選択回路13の動作タイミングを示している。前述の通り、第二の入力信号選択回路13は、同相成分用搬送波信号(LO_I、LO_IB)と直交成分用搬送波信号(LO_Q、LO_QB)といった差動信号が入力され、選択信号に応じて、同相成分と直交成分のいずれかの搬送波信号をデジタルアンプ100へ出力する。
【0056】
また、第二の入力信号選択回路13は、正相(LO_I、LO_Q)または逆相(LO_IB、LO_QB)のいずれを出力するかは、デジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)の値の正負に応じて切り替えている。この切り替えには、
図14(a)〜(d)の4つの組合せがある。すなわち、LO_IとLO_Qとの切り替え(
図14(a))、LO_IBとLO_Qとの切り替え(
図14(b))、LO_IとLO_QBとの切り替え(
図14(c))、及び、LO_IBとLO_QBとの切り替え(
図14(d))である。例えば、
図14(a)に示すLO_IとLO_Qとの切り替えを見ると、出力信号15は、選択信号に応じて、LO_I、LO_Qが切り替わっていることが分かる。
【0057】
しかし、実際の回路動作を考えると、出力信号15には、選択信号の立下りエッジのタイミングにて、一瞬だけスパイク波形が出力される。スパイク波形発生の原因としては、
図14(a)に破線で示したように、LO_Qが図中右側へ僅かにずれることが想定される。
【0058】
この対策として、選択信号に応じた同相成分と直交成分との切り替えを止め、デジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)の正負の組み合せに応じ、LO_I、LO_IB、LO_Q、LO_QBのいずれかを出力する。これにより、スパイク波形の発生をなくし、スパイク波形による不要な消費電流の増加を防ぐことができる。
【0059】
このように、実施の形態1によれば、D級単位アンプ101の出力に、同相成分(BB_I)用と直交成分(BB_Q)用の容量103、104をそれぞれ設けることにより、同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とを切り替える前後で、異なる容量値が入れ替わることがなくなり、容量103と容量104のDC動作電圧の違いから容量103と容量104に不要な電流が流れることがなくなり、1つのSCPAを用いて、同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とを正しく合成することができる。
【0060】
また、論理回路102の出力段トランジスタである2つのNchトランジスタ及び2つのPchトランジスタを半導体上、同一の分離領域内で隣接して配置することにより、半導体集積回路上の面積を削減し、コストを削減することができる。
【0061】
(実施の形態2)
図15は、本発明の実施の形態2に係る送信装置20の構成を示す図である。以下、
図15を用いて送信装置20の構成について説明する。
【0062】
デジタルアンプ11は、D級単位アンプ101が複数並列接続されており、D級単位アンプ101は、2つの入力端子と1つの出力端子とを有し、一方の入力端子から入力された信号の論理に応じて、2つの入力端子への入力信号に対する論理演算結果と、一定電圧(VREF)とのいずれかを1つの出力端子に出力するスイッチ111を有する基本アンプ回路110と、基本アンプ回路110の出力端子に直列接続された容量112とで形成される。なお、入力データ変換器600は、第一の入力信号選択回路12と第二の入力信号選択回路13とを含む。
【0063】
基本アンプ回路110の出力信号は、奇数次高調波成分を含む方形波であるため、インダクタ16と、基本アンプ回路110の出力端子に直列接続された容量112との直列共振で、基本波信号成分を取り出している。
【0064】
図16は、本発明の実施の形態2に係る並列に3ビットを入力するSCPAの構成を示す図であり、
図17は、
図16のSCPAに入力される各種信号の波形及びA0〜A2点における信号波形を示す図である。
【0065】
図16において、デジタルベースバンドデータの各ビットBB{2}〜BB{0}がHの場合は、各ビットに対応したANDの出力に接続されたスイッチが、ANDの出力に接続され、BB{2}〜BB{0}がLの場合は、スイッチがVREF(=VDD/2)に接続される。
【0066】
図17では、搬送波信号の約1周期分に相当する時間を表している。
図5と同様に、デジタルベースバンド信号として、BB_I=4、BB_Q=0が入力されており、搬送波1周期の1/4の時間毎に同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)とを切り替えている。
図16のSCPAにおいても
図4のSCPAと同様の重み付けがされているので、BB_Iの出力期間である時間0・T0から1・T0までは、デジタルベースバンド入力信号であるBB{2}のみがHとなり、BB{1}、BB{0}はLとなる。つまり、A1点とA0点にそれぞれ接続されたC×2とC×1の容量は、VREFに接続される。ただし、BB{2}はHであるため、A2点には、搬送波信号と同じHの波形が現れる。なお、このA2点のHの信号は、ANDの電源電圧(VDD)と等しい。
【0067】
次に、BB_Qの出力期間である時間1・T0から2・T0までは、デジタルベースバンド入力信号であるBB{2}、BB{1}、BB{0}は全てLとなる。この結果、各ビットに対応したANDの出力に接続されたスイッチが、VREF(=VDD/2)に接続され、A2点、A1点及びA0点にそれぞれ接続された容量(C×4とC×2とC×1の)は、VREF(=VDD/2)に接続される。
【0068】
次に、BB_Iの出力期間である時間2・T0から3・T0までは、デジタルベースバンド入力信号であるBB{2}のみがHとなり、BB{1}、BB{0}はLとなる。つまり、A1点とA0点にそれぞれ接続されたC×2とC×1の容量は、VREFに接続される。ただし、BB{2}は、Hであるため、A2点には、搬送波信号を同じLの波形が現れる。なお、このA2点のLの信号は、ANDのGND電位(0V)と等しい。
【0069】
さらに、BB_Qの出力期間である時間3・T0から4・T0までは、前述した時間1・T0から2・T0までと同様であり、各ビットに対応したANDの出力に接続されたスイッチが、VREF(=VDD/2)に接続され、A2点、A1点及びA0点にそれぞれ接続された容量(C×4とC×2とC×1の)は、VREF(=VDD/2)に接続される。
【0070】
上記時間0・T0から4・T0までの動作を考えると、基本アンプ回路110の時間平均出力電圧が電源電圧(VDD)の半分になる。また、B点に現れる電圧波形は、A2点に現れるANDの電源電圧(VDD)からANDのGND電位(0V)までの波形をC×4とC×(2+1)で形成される容量アッテネータにて減衰させた電圧振幅となることが分かる。ただし、B点の直流動作電圧は、直流電圧を伝達できる負荷(抵抗)とインダクタ(L)を経由して伝えられるGND電位である。
【0071】
ところで、
図4に示したSCPAと比較すると、本実施の形態のSCPAの方がA2点の電圧波形の上下の対称性が良い。一般的に、HとLの時間が等しい時、偶数次の高調波成分が低い。また、A2点の電圧波形は、δ関数列を用いて次式(9)のように表される。
【数9】
【0072】
式(9)をフーリエ変換すると、次式(10)のように表される。
【数10】
【0073】
Va2s(t)は、Va2(t)のサンプリング後データである。
【0074】
ここで、オイラーの公式e
ーjθ=cosθ−j・sinθより、e
ーj・n・π=+1(n=偶数)、e
ーj・n・π=−1(n=奇数)であるので、式(10)はn=偶数時に第1項及び第3項と、第2項及び第4項とがそれぞれ相殺される。つまり、
図17のA2点の電圧信号のスペクトラムは、偶数次の高調波を含まないことを意味している。この結果、不要な偶数次高調波成分を減衰させるためのフィルターを追加する必要がなく、コストアップと電力ロスが発生しない。
【0075】
図18と
図19は、
図15に示したデジタルアンプ11の内部構成の例を示す図である。この例では、デジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)は、8ビットのデジタルデータである。
【0076】
また、
図18と
図19のデジタルアンプは、論理的には同じになるが、
図19の構成の方が、アレー領域として示した部分の回路素子が少ない。このアレー領域とは、基本アンプ回路の出力端子に用いられるNchトランジスタ及びPchトランジスタと、基本アンプ回路の出力端子に、基本アンプ回路の電源電圧の半分である一定電圧を与えるスイッチと、前記基本アンプ回路の前記出力端子に直列接続された前記容量とが1つの単位セル(半導体集積回路上のレイアウト配置)として、複数個の単位セルを半導体集積回路上に密集させた領域のことである。単位セルの前段には、単位セルを駆動するバッファが設けられる。
【0077】
図18の構成では、全てのD級単位アンプ101に、AND回路とОR回路がそれぞれ装備されているが、
図19の構成では、デジタルベースバンドデータの各ビット(BB{7}、BB{6}、BB{5}・・・)に対して、AND回路とОR回路が1組だけ用いられている。これにより、同じ論理を出力する重複回路を減らすことができるので、消費電流を低減することができる。
【0078】
(実施の形態3)
図20は、本発明の実施の形態3に係る送信装置30の構成を示す図である。以下、
図20を用いて送信装置30の構成について説明する。
【0079】
デジタルアンプ11は、D級単位アンプ501が複数並列接続されており、D級単位アンプ501は、1つの入力端子と1つの出力端子とを有し、入力端子から入力された信号の論理に応じた論理出力を出力端子に出力する基本アンプ回路502と、基本アンプ回路502の出力端子に直列接続された容量112とで形成される。なお、入力データ変換器650は、第一の入力信号選択回路12、第1の入力信号変換回路601及び第2の入力信号変換回路602を含む。
【0080】
第一の入力信号選択回路12は、選択信号と、送信信号の変換後のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I_C)及び直交成分(BB_Q_C)とが入力され、選択信号に応じて、変換後のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I_C)及び直交成分(BB_Q_C)のいずれか一方を出力信号(PAIN)として、デジタルアンプ11に出力する。
【0081】
第一の入力信号変換回路601は、送信信号の変換前のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)に加えて、同相成分用搬送波信号(LO_I、LO_IB)といった差動信号が入力され、第一の入力信号選択回路12に、変換後のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I_C)を出力する。また、第二の入力信号変換回路602は、送信信号の変換前のデジタルベースバンドデータである直交成分(BB_Q)に加えて、直交成分用搬送波信号(LO_Q、LO_QB)といった差動信号が入力され、第一の入力信号選択回路12に、変換後のデジタルベースバンドデータである直交成分(BB_Q_C)を出力する。
【0082】
第一の入力信号変換回路601は、入力された変換前のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)の値の正負に応じて、搬送波信号の正相(LO_I)または逆相(LO_IB)のいずれかを用いる。また、第二の入力信号変換回路602は、入力された変換前のデジタルベースバンドデータである直交成分(BB_Q)の値の正負に応じて、搬送波信号の正相(LO_Q)または逆相(LO_QB)のいずれかを用いる。また、第一の入力信号変換回路601及び第二の入力信号変換回路602は、搬送波信号がHの期間では、デジタルベースバンドデータの最大値の約半分の値に変換前のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)または直交成分(BB_Q)に比例した値を加算する。また、搬送波信号がLの期間では、デジタルベースバンドデータの最大値の約半分の値に変換前のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)または直交成分(BB_Q)に比例した値を減算する。
【0083】
次に、
図20に示した送信装置30の動作タイミングについて
図21を用いて説明する。
図20では、搬送波信号(LO)の約2.5周期分に相当する時間を表している。図中のモード(Mode)は、同相成分と直交成分のいずれを出力しているかを示している。この図では、変換前のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)と直交成分(BB_Q)の値が共に正の値であるため、搬送波信号は正相(LO_I、LO_Q)が用いられており、搬送波の2倍の周波数を有する選択信号のHまたはLに応じて、変換後のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I_C)と直交成分(BB_Q_C)とが切り替えられることを示している。
【0084】
最初の時間(0〜搬送波周期の1/2まで)では、第一の入力信号変換回路601に入力される変換前のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I)は64である。デジタルベースバンドデータは8ビットであり、最大値の半分の値は128である。この時、選択された搬送波信号(LO_I)はHであるので、第一の入力信号変換回路601は、最大値の半分の値(=128)にデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I=64)の半分の値を加算する。すなわち、128+(64÷2)=160といった演算が行われる。
【0085】
次の時間(搬送波周期の1/2〜1まで)では、選択された搬送波信号(LO_I)がLに変わるので、第一の入力信号変換回路601は、最大値の半分の値(=128)にデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I=64)の半分の値を減算する。すなわち、128−(64÷2)−1=95といった演算が行われる。これは、変換後のデジタルベースバンドデータが、最大値の半分の値を中心としたデジタルベースバンドデータであり、その振幅は、変換前のデジタルベースバンドデータの大きさに比例することを意味している。上記演算は、デジタル値にて処理されるため、割り算で発生した小数点以下の値は切り捨てられる。また、搬送波信号(LO_I)がLの期間のみ−1しているのは、搬送波信号(LO_I)がHの時の演算結果(=160)の2進数表記の全ビットを反転するだけで95というデジタル値が得られるためである。
【0086】
入力データ変換器650は、上記のような演算結果から得られた変換後のデジタルベースバンドデータである同相成分(BB_I_C)または直交成分(BB_Q_C)を選択信号に応じてデジタルアンプ11に出力することにより、直交変調器としての機能を実現する。
【0087】
この構成によれば、変換後デジタルベースバンドデータの各ビットであるBB_I_C{7}〜{0}及びBB_Q_C{7}〜{0}の時間変化は、常にDuty=50%の波形となる。この理由は、搬送波信号のHからLへの変化時に、2進数表記の変換後デジタルベースバンドデータBB_I_C{7}〜{0}とBB_Q_C{7}〜{0}の全ビットを反転しているためである。さらに、第一の入力信号選択回路12にて、搬送波の2倍の周波数を有する選択信号のHまたはLに応じて、BB_I_CかBB_Q_Cを切り替えた信号であるPAIN{7}〜{0}の時間変化も、常にDuty=50%の波形となる。Duty=50%の波形は、電圧の時間波形における上下の対称性が良く、HとLの時間が等しいので偶数次の高調波成分が発生しない。この結果、出力電圧のスペクトラムは、偶数次の高調波を含まないことを意味しており、偶数次高調波成分を減衰させるためのフィルターを追加する必要がない。
【0088】
(実施の形態4)
図22は、本発明の実施の形態4に係る送信装置40の構成を示す図である。以下、
図22を用いて送信装置40の構成について説明する。
【0089】
入力データ変換器650は、実施の形態3における、第一の入力信号選択回路12及び第一及び第二の入力信号変換回路601、602と同様の機能を備える。しかしながら、実施の形態4における入力データ変換器650は、搬送波の2倍の周波数を有する選択信号が必要ないため、低消費電力化に対して非常に有効である。
【0090】
実施の形態3におけるデジタルアンプ11への入力信号(PAIN)は、搬送波信号(LO_I、LO_Q)と同一周波数かつ同じDuty(=50%)を有する信号である。つまり、実施の形態3のように、第一の入力信号選択回路12が、選択信号のHまたはLに応じて、BB_I_C及びBB_Q_Cを切り替えるものではなく、搬送波信号(LO_I、LO_IB、LO_Q、LO_QB)のいずれかを、デジタルアンプ11への入力信号(PAIN)とすればよいことを意味している。
【0091】
まず、変換後のデジタルベースバンドデータBB_I_Cの各ビットの時間波形を決定する要因は次の2つである。(1)搬送波信号=Hの期間での演算結果(=160(
図21参照))のHまたはLの論理。(2)変換前のデジタルベースバンドデータ(BB_I=64)の値の正または負の論理。また、(1)と(2)の組合せは、以下の4通りである。
A:演算結果=Hかつ変換前デジタルベースバンドデータ=正
B:演算結果=Lかつ変換前デジタルベースバンドデータ=負
C:演算結果=Lかつ変換前デジタルベースバンドデータ=正
D:演算結果=Hかつ変換前デジタルベースバンドデータ=負
【0092】
この結果、変換後のデジタルベースバンドデータBB_I_Cの各ビットの時間波形は、A、Bの場合は、
図21におけるBB_I_C{7}の時間波形と同じである。また、C、Dの場合は、
図21におけるBB_I_C{7}の時間波形を180度位相反転した波形である。つまり、BB_I_Cの各ビットの時間波形の位相としては、2種類の位相状態がある。また、変換後のデジタルベースバンドデータBB_Q_Cも同様に各ビット2種類の位相状態がある。
【0093】
仮に、実施の形態3と同様に、変換後のデジタルベースバンドデータBB_I_CとBB_Q_Cを搬送波の2倍の周波数を有する選択信号のHまたはLに応じて切り替えたとすると、そのタイミングパターンは4種類に分類され、
図23に示した第一のタイミング図から第四のタイミング図に示すようになる。
図23に示した通り、入力データ変換器650は、その出力信号(PAIN)として、搬送波信号(LO_I、LO_IB、LO_Q、LO_QB)のいずれかを、デジタルアンプ11への入力信号(PAIN{7}〜{0})とすればよいことが分かる。
【0094】
このように、入力データ変換器650は、変換前のデジタルベースバンドデータの値の正または負の論理に加えて、演算結果の論理によって、搬送波信号(LO_I、LO_IB、LO_Q、LO_QB)のいずれかを選択及び出力している。なお、実施の形態3と同様に、
図23に示したデジタルアンプ11への入力信号(PAIN)の時間変化も、常にDuty=50%の波形となるので、偶数次の高調波成分が発生しない。この結果、偶数次高調波成分を減衰させるためのフィルターを追加する必要がない。