特許第6446198号(P6446198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446198
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/08 20060101AFI20181217BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20181217BHJP
   F16K 11/074 20060101ALI20181217BHJP
   F16K 11/16 20060101ALI20181217BHJP
   F25B 39/00 20060101ALI20181217BHJP
   F25B 41/04 20060101ALI20181217BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F16K3/08
   F16K31/04 Z
   F16K11/074 Z
   F16K11/16 Z
   F25B39/00 J
   F25B41/04 B
   F25B41/06 U
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-161188(P2014-161188)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-38009(P2016-38009A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095669
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 登
(72)【発明者】
【氏名】横江 悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章宏
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/081037(WO,A1)
【文献】 特開平11−013909(JP,A)
【文献】 特開平11−166645(JP,A)
【文献】 特開2002−081561(JP,A)
【文献】 特開平09−042489(JP,A)
【文献】 特開2000−346227(JP,A)
【文献】 特開2003−021254(JP,A)
【文献】 特開2004−156771(JP,A)
【文献】 米国特許第5316042(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0204924(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00−3/36
F16K 11/00−11/24
F16K 15/00−15/20
F16K 31/00−31/05
F25B 31/00−31/02
F25B 39/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
流体の流入孔および流出孔が形成された弁座面を有する基台と、
前記基台の前記弁座面側に被せられ前記基台とともにバルブ室を区画するケース体と、
前記流出孔を開閉する第一の弁体と、
前記流入孔を開閉する第二の弁体と、を備え、
前記バルブ室には、前記駆動源の出力部と、前記第一の弁体と、前記第二の弁体と、が収容され、
前記第一の弁体は、一方の端面が前記弁座面における前記流出孔の周縁部に摺接する略円柱状の部材であり、前記第一の弁体が前記駆動源の駆動力を受けて回動することにより、前記流出孔が閉塞された状態と前記流出孔の全体または一部が開放された状態とが切り換えられ
前記第二の弁体は、一方の端面が前記弁座面における前記流入孔の周縁部に摺接する略円柱状の部材であり、前記第二の弁体が前記駆動源の駆動力を受けて回動することにより、前記流入孔が閉塞された状態と前記流入孔の全体または一部が開放された状態とが切り換えられることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記バルブ室には、前記第一の弁体を付勢する弾性部材がさらに収容され、
前記第一の弁体は、前記弾性部材により前記流出孔側に付勢され、前記流出孔の周縁部に押圧されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記駆動源はステッピングモータであり、
前記駆動源の出力部は前記ステッピングモータのロータおよびロータピニオンであり、
前記第一の弁体および前記第二の弁体は共通の部品からなり、
前記第一の弁体および前記第二の弁体の外周面には前記ロータピニオンと噛合する歯部が形成され、
前記ロータピニオンが回転すると、前記第一の弁体および前記第二の弁体は同方向へ回転することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記第一の弁体および前記第二の弁体による前記流入孔および前記流出孔の開閉状態の組み合わせには、前記流入孔を閉状態とし、同時に前記流出孔を開状態とする組み合わせが含まれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
冷蔵庫の筐体内に設置され、
前記流体は冷蔵庫の冷媒であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブ装置に関し、さらに詳しくは、逆流防止機構を備えるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、流体の流出孔(13a、13b)を開閉する弁体(30)が備えられたバルブ装置(1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−144468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体の流出孔にスライド弁などの弁体を設け、弁体を変位させることにより流路を遮断および連通するバルブ装置が一般に知られている。かかる弁体と流出孔との接触面に隙間があると、その隙間から流体が漏出するおそれがあるため、流路を遮断する際には流出孔の全周にわたって弁体を密着させておく必要がある。弁体を流出孔に密着させる方法としては、板バネやコイルバネなどの弾性部材により弁体を流出孔側へ付勢する方法が考えられる。その場合、弾性部材が弁体を必要以上に押圧すると、弁体の開閉動作を阻害してしまうおそれがあるため、弾性部材の付勢力は弁体が接触面から浮かない程度とすべきである。
【0005】
一方で、バルブ装置から流出した流体が何らかの理由により逆流した場合、弾性部材の付勢力よりも逆流した流体の圧力の方が大きいと、弁体が弾性部材とともに押動され弁体と流出孔との接触面に隙間が生じることとなる。逆流した流体はかかる隙間からバルブ装置内へと侵入し、さらに流入孔からバルブ装置外へと流出する。また、逆流した流体に押動されることにより弾性部材が降伏点を超えて湾曲した場合、弾性部材が破損または塑性変形し、バルブ装置による流量の制御が不能となるおそれがある。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、何らかの理由により流体の逆流が生じた場合でも、かかる逆流した流体のバルブ装置内への侵入量および流入孔からの流出量を低減し、加えて、弁体を付勢する弾性部材の損傷を防止することができるバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のバルブ装置は、駆動源と、流体の流入孔および流出孔が形成された弁座面を有する基台と、前記基台の前記弁座面側に被せられ前記基台とともにバルブ室を区画するケース体と、前記流出孔を開閉する第一の弁体と、前記流入孔を開閉する第二の弁体と、を備え、前記バルブ室には、前記駆動源の出力部と、前記第一の弁体と、前記第二の弁体と、が収容され、前記第一の弁体は、一方の端面が前記弁座面における前記流出孔の周縁部に摺接する略円柱状の部材であり、前記第一の弁体が前記駆動源の駆動力を受けて回動することにより、前記流出孔が閉塞された状態と前記流出孔の全体または一部が開放された状態とが切り換えられ、前記第二の弁体は、一方の端面が前記弁座面における前記流入孔の周縁部に摺接する略円柱状の部材であり、前記第二の弁体が前記駆動源の駆動力を受けて回動することにより、前記流入孔が閉塞された状態と前記流入孔の全体または一部が開放された状態とが切り換えられることを要旨とする。
【0008】
流出孔に第一の弁体を設けるのみならず、流入孔側にも第二の弁体を設けることにより、逆流した流体が第一の弁体を押し上げてバルブ室内に侵入したとしても、第二の弁体で流入孔を閉塞することにより逆流した流体をバルブ室内に留め、流入孔からバルブ装置外へと流体が逆流することが防止できる。
【0009】
また、前記バルブ室には、前記第一の弁体を付勢する弾性部材がさらに収容され、前記第一の弁体は、前記弾性部材により前記流出孔側に付勢され、前記流出孔の周縁部に押圧されている構成としても良い。
【0010】
第一の弁体が弾性部材により流出孔側へと付勢および押圧されることにより、第一の弁体が流出孔に密着し、バルブ装置による流量の調整精度が向上する。また、流入孔が第二の弁体により閉塞されることにより、バルブ室へ逆流可能な流体量自体が制限されるため、第一の弁体が持ち上げられることによる弾性部材への影響も低減される。
【0012】
この場合、前記駆動源はステッピングモータであり、前記駆動源の出力部は前記ステッピングモータのロータおよびロータピニオンであり、前記第一の弁体および前記第二の弁体は共通の部品からなり、前記第一の弁体および前記第二の弁体の外周面には前記ロータピニオンと噛合する歯部が形成され、前記ロータピニオンが回転すると、前記第一の弁体および前記第二の弁体は同方向へ回転する構成とすることが望ましい。
【0013】
第一の弁体と共通の部品を用いた第二の弁体を流入孔側に設け、また、その駆動方法も共通とすることにより、流入孔と流出孔の開閉機構が単純化されるとともに部品管理の効率化にも資する。さらに、流出孔の流量制御と同精度の流量制御を流入孔でも行うこと可能となり、バルブ装置の逆流防止性能が向上する。
【0014】
また、前記第一の弁体および前記第二の弁体による前記流入孔および前記流出孔の開閉状態の組み合わせには、前記流入孔を閉状態とし、同時に前記流出孔を開状態とする組み合わせが含まれる構成としても良い。
【0015】
流体が逆流した際に、あえて第一の弁体を開状態とすることにより、逆流した流体に第一の弁体が持ち上げられて弾性部材が塑性変形することを防止できる。ただし、かかる構成が効果を奏するのは、逆流が生じるタイミングが予め把握できている場合に限られる。
【0016】
また、冷蔵庫の筐体内に設置され、前記流体は冷蔵庫の冷媒である構成としても良い。
【0017】
冷蔵庫を循環する冷媒の液化や気化に伴う圧力の変化により、何らかの理由で冷媒の流出側の方の圧力が高くなった場合でも、本発明にかかる冷媒バルブにより冷媒の逆流が防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるバルブ装置によれば、流体の逆流が生じた場合でも、かかる逆流した流体のバルブ装置内への侵入量および流入孔からの流出量を低減し、加えて、弁体を付勢する弾性部材の損傷を防止することができるバルブ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態における冷媒バルブ装置の斜視図である。
図2】冷媒バルブ装置の底面図である。
図3】冷媒バルブ装置の図2におけるX−X線断面図である。
図4】弁体駆動機構を示す斜視図である。
図5】弁体駆動機構を上方および下方から見た分解斜視図である。
図6】弁体における流路連通状態を示す断面図である。
図7】冷媒バルブ装置の冷媒流路を示す断面図である。
図8】弁体の開閉状態の他の組み合わせを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(全体構成)
以下、本発明にかかるバルブ装置の実施形態である冷媒バルブ装置について図面を用いて詳細に説明する。図1は本実施形態における冷媒バルブ装置1の斜視図である。冷媒バルブ装置1は、冷蔵庫内の冷媒流路における圧縮器と冷却器との間に配設され、庫内を冷却する冷媒の供給量を調節する。
【0021】
冷媒バルブ装置1は、バルブ本体2と、流体である冷媒がバルブ本体2に流入する流入管3と、冷媒がバルブ本体2から流出する流出管4と、外部の制御装置との電気的な接続を確保するためのコネクタ5と、冷媒バルブ装置1を冷蔵庫内に取り付けるための取付プレート6とを備えている。なお、以下の説明では、便宜上、流入管3および流出管4の延設方向を上下方向とし、バルブ本体2側を上側、流入管3および流出管4側を下側として説明する。
【0022】
図2は冷媒バルブ装置1を流入管3および流出管4の側から見た図である。バルブ本体2の底面には円盤形状の基台10の下面が露出している。基台10には弁座15aおよび弁座15bが嵌合されており、流出管4は弁座15aの冷媒出口22に、流入管3は弁座15bの冷媒入口12にそれぞれ連結されている。
【0023】
図3は冷媒バルブ装置1を図2のX−X線で切断した断面図である。図3に示すように、バルブ本体2は、基台10と、開口を下に向けて上方から基台10に被せられたカップ状のケース体である密閉カバー11とを有している。密閉カバー11は、上方から下方に向かって円形の底部31と、底部31の外周縁から下方に延びる小径筒部32と、小径筒部32よりも大径の大径筒部33と、大径筒部33の下端縁(開口縁)から外周側に広がるケース側フランジ34を備えている。小径筒部32と大径筒部33の間には基台10の中心軸線L0と交差する方向に延びて小径筒部32と大径筒部33を連続させている環状部35が設けられている。基台10の外周縁には上面が下げられることにより板厚が薄く形成された環状の基台側フランジ16が形成されている。密閉カバー11は、大径筒部33の下端開口縁の内側に基台10の上側部分が挿入され、ケース側フランジ34が基台側フランジ16に上方から当接した状態で基台10に固定されている。密閉カバー11は基台10に被せられて、基台10と共にバルブ室36を区画している。
【0024】
バルブ本体2には、密閉カバー11の内外を利用して、駆動源としてのステッピングモータ60が構成されている。ステッピングモータ60の出力部であるロータ61およびロータピニオン50はバルブ室36内に配置されている。ロータ61は、上端が密閉カバー11の底部31に固定され、下端が基台10の中心に固定されたロータ支軸62に回転可能に支持されている。ロータ支軸62の軸線は基台10の中心軸線L0と一致しており、弁座15aおよび弁座15bに取り付けられた支軸25aおよび支軸25bと平行に延びている。ロータ61には環状の駆動マグネット63が搭載されている。
【0025】
ステッピングモータ60のステータ64は、密閉カバー11の環状部35に載置されて、密閉カバー11の外周側に配置されている。ステータ64は駆動コイル65を搭載しており、駆動コイル65は密閉カバー11の小径筒部32を介してロータ61の駆動マグネット63と対向している。駆動コイル65はコネクタ5と電気的に接続されており、ステッピングモータ60はコネクタ5を介して接続される外部の制御装置によって駆動制御される。ステータ64およびコネクタ5は外装ケース46の内側に収納されている。
【0026】
(弁体駆動機構)
図4は弁体駆動機構を示す斜視図である。図5(a)は弁体駆動機構の要部を上方から見た分解斜視図であり、図5(b)はこれらを下方から見た分解斜視図である。図4および図5に示すように、本実施形態における冷媒バルブ装置1の弁体駆動機構は、駆動源であるステッピングモータ60のロータ61と、ロータ61のピニオン構成部材54に設けられたロータピニオン50と噛合する歯部59aを外周面に備える第一の弁体20aと、第一の弁体20aの下側に位置し、第一の弁体20aの底面が摺接する弁座面24aを備える弁座15aと、ロータピニオン50と噛合する歯部59bを外周面に備える第二の弁体20bと、第二の弁体20bの下側に位置し、第二の弁体20bの底面が摺接する弁座面24bを備える弁座15bと、からなる。
【0027】
これら第一の弁体20aおよび弁座15aと、第二の弁体20bおよび弁座15bは、共通の部品により構成されており、駆動源であるステッピングモータ60も共通とされている。これにより、第二の弁体20bとして別構成の弁体を新たに用意する場合に比べ、冷媒入口12および冷媒出口22の開閉機構が単純化されるとともに部品管理の効率化が図れている。また、以下の説明における第一の弁体20aおよび弁座15aの構造は、当然、第二の弁体20bおよび弁座15bも備える構造である。
【0028】
基台10には弁座15aが嵌合される弁座装着孔14a、および弁座15bが嵌合される弁座装着孔14bが形成されており、弁座15aおよび弁座15bは、軸線方向から見た平面形状が円形をしており、上面は平坦な弁座面24a、24bとなっている。弁座15aの中心軸線L1から外れた位置には、冷媒の流出孔である冷媒出口22が形成されており、弁座15bにおける、中心軸線L0を中心として冷媒出口22と略対称となる位置には、冷媒の流入孔である冷媒入口12が形成されている。弁座面24a、24bは基台10の上面の一部を構成している。
【0029】
第一の弁体20aは、一方の端面が弁座面24aの冷媒出口22の周縁部に摺接する略円柱状の部材であり、第一の弁体20aがステッピングモータ60の駆動力を受けて回動することにより、冷媒出口22が閉塞された状態と冷媒出口22の全体または一部が開放された状態とが切り換えられる。第一の弁体20aは、歯部59aを備える回動部材である歯車部51aと、歯車部51aの下側に位置し、歯車部51aと軸線方向の端面同士が接触した状態で歯車部51aに固定され、歯車部51aと一体に回動する弁部27aと、からなる。
【0030】
弁部27aの底面と、弁座面24aは平坦に研磨加工されていることにより隙間なく密着可能とされ、摺接面の隙間から冷媒が漏出することが防止されている。
【0031】
図5に示すように、歯車部51aの周方向の一箇所からは、径方向外側に突出する突起部511aが設けられている。突起部511aは、歯車部51aが回動して所定の角度位置に達したときに、ピニオン構成部材54の被当接部55に軸線L1回りの一方側あるいは他方側から当接して、歯車部51aの回動可能範囲を規制する。
【0032】
歯車部51aの弁部27aとの対向面には、弁部27a側に突出した凸部61a、62a、63aが周方向に等間隔に形成されており、弁部27aの歯車部51aとの対向面には、凸部61a、62a、63aと嵌合される凹部70a、71a、72aが形成されている。凹部72aは切欠き部79aに貫通された貫通孔であり、凹部72aに嵌合された凸部63aは、切欠き部79a側でかしめられる。凸部63aがかしめられることにより、歯車部51aは弁部27aにガタ付きなく固定され、ステッピングモータ60によって高い精度で弁部27aの回動を制御することができる。また、かしめ作業を行う対象が、切欠き部79aに設けられた凹部72aに嵌合される凸部63aであることから、研磨加工された弁部27a底面の擦傷や変形が防止されている。
【0033】
尚、本実施形態における切欠き部79aおよび切欠き部79bは、冷媒出口22と冷媒入口12の形成位置と同様に、中心軸線L0を中心として略対称位置に配設されており、ステッピングモータ60が回転することにより、冷媒出口22および冷媒入口12を同時に開放および閉塞する。
【0034】
第一の弁体20aおよび第二の弁体20bの上方には、上面視略円形の板状部材である支持板17が配設されている。支持板17の周方向の対称位置には切り抜き加工により弾性部材である二つの腕部171、172が形成されている。腕部171、172は支持板17の周方向に沿って伸び、その基端部以外が支持板17から切り離されていることにより上下方向に弾性変形可能となっている。腕部171、172の先端部はやや膨らんだ円形状になっており、かかる先端部に設けられた孔に支軸25a、25bがそれぞれ挿通され、弁座15a、15bとともに支軸25a、25bの位置を固定している。さらに同先端部は第一の弁体20aおよび第二の弁体20bの上面に当接してこれらを付勢することにより、第一の弁体20aを冷媒出口22の周縁部に、第二の弁体20bを冷媒入口12の周縁部に押圧している。
【0035】
図6は弁部27aの切欠き部79aと冷媒出口22が軸線L1方向で重なることで冷媒出口22が開放された状態、および、弁部27bの切欠き部79bと冷媒入口12が軸線L1方向で重なることで冷媒入口12が開放された状態を示す断面図である。
【0036】
(弁体の開閉動作)
上述のように、第一の弁体20aと第二の弁体20bは共通の部品からなり、駆動源も共通としている。よって、ロータ61およびロータピニオン50が一定量回転すると、第一の弁体20aと第二の弁体20bは同方向へ同角度回動することとなる。尚、本実施形態においては第一の弁体20aと第二の弁体20bとが共通の部品からなるため、その回転角度も一致しているが、これら弁体を構成する歯車部51aまたは歯車部51bの歯数を変えることにより、ロータピニオン50の回転量に対するこれら弁体の回転角度に違いを出すことも可能である。
【0037】
図7(a)に示すように、冷媒の流路を連通させる際には第一の弁体20aと第二の弁体20bの両方が開状態となる角度までステッピングモータ60を回転させる。これにより冷媒は流入管3を上昇して冷媒入口12からバルブ室36へと流入し、バルブ室36内で水平方向に広がり、冷媒出口22から流出して流出管4を下降していく。
【0038】
一方、冷媒の流路を遮断する際には、図7(b)に示すように、第一の弁体20aと第二の弁体20bの両方が閉状態となる角度までステッピングモータ60を回転させる。冷蔵庫を循環する冷媒の液化や気化に伴う圧力の変化などにより冷媒が逆流し(流出管4を上昇し)、逆流した冷媒が第一の弁体20aを押し上げて冷媒出口22からバルブ室36に侵入しても、第二の弁体20bにより冷媒入口12が閉塞されていることから、バルブ室36に侵入した冷媒が冷媒入口12から冷媒バルブ装置1外へと流出することが阻止される。
【0039】
また、冷媒入口12は、冷媒出口22に用いられている第一の弁体20aと同一部材である第二の弁体20bにより閉塞されていることから、通常の流量制御と同等の閉塞精度により冷媒の冷媒入口12への侵入を阻止することができる。
【0040】
さらに、冷媒入口12が閉塞されていることによりバルブ室36は密閉空間となるため、バルブ室36に流入可能な冷媒量も小さなものとなる。よって、第一の弁体20aが押し上げられることによる腕部171の湾曲量も抑えられ、腕部171の破損や塑性変形のおそれが低減される。
【0041】
本実施形態における冷媒入口12と冷媒出口22の開閉状態の組み合わせは、第一の弁体20aと第二の弁体20bの切欠き部79a、79bが中心軸線L0を中心として略対称位置にあるため、両方開放と両方閉塞の二つのみであるが、弁部27aまたは弁部27bの配設角度を変えることにより、または、上述のように歯車部51aまたは歯車部51bの歯数を変更してロータピニオン50の回転量に対する第一の弁体20aおよび第二の弁体20bの回転角度に違いを出すことにより、図8のように第一の弁体20aを開状態としつつ、第二の弁体20bを閉状態とする組み合わせを含めることも可能である。
【0042】
冷媒が逆流するタイミングが予め把握できている場合、逆流に合わせてあえて第一の弁体20aを開放し、上記開閉状態とすることにより、第一の弁体20aが逆流した冷媒により押し上げられることがなくなり、腕部171の破損や塑性変形を未然に防止することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 冷媒バルブ装置
2 バルブ本体
3 流入管
4 流出管
5 コネクタ
6 取付プレート
10 基台
11 密閉カバー
12 冷媒入口
22 冷媒出口
60 ステッピングモータ
61 ロータ
50 ロータピニオン
36 バルブ室
20a 第一の弁体
20b 第二の弁体
51a、51b 歯車部
27a、27b 弁部
15a、15b 弁座
24a、24b 弁座面
17 支持板
171、172 腕部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8