特許第6446231号(P6446231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446231
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20181217BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20181217BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B41J2/165 207
   B41J2/18
   B41J2/175 121
   B41J2/175 501
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-217086(P2014-217086)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-83807(P2016-83807A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏幸
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−056306(JP,A)
【文献】 特開2012−153004(JP,A)
【文献】 特開2000−108376(JP,A)
【文献】 特開平09−156125(JP,A)
【文献】 特開2013−010219(JP,A)
【文献】 特開2009−269361(JP,A)
【文献】 特開2007−152725(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0106932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッド、前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留する加圧タンク、前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取る負圧タンク、および前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとの間でインクを循環させる循環経路を有する印刷部と、
前記加圧タンクに正圧を付与し、前記負圧タンクに負圧および正圧を選択的に付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部を制御して前記加圧タンクおよび前記負圧タンクに正圧を付与することで、前記インクジェットヘッドのノズルからインクを排出させるパージを実行するものであり、パージの開始後、パージ終了条件が満足されるとパージを終了させる制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールを有し、
前記パージ終了条件は、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの液面高さが規定高さにまで下降したことであり、
前記制御部は、パージ時において、パージ対象の前記ヘッドモジュールの数に応じて前記規定高さを設定することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記印刷部を複数備え、
前記パージ終了条件は、パージ対象の前記各印刷部における前記加圧タンクおよび前記負圧タンクの液面高さが前記規定高さにまで下降したことであり、
前記制御部は、パージ時において、パージ対象の前記印刷部ごとにパージ対象の前記ヘッドモジュールの数に応じて前記規定高さを設定することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッド、前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留する加圧タンク、前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取る負圧タンク、および前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとの間でインクを循環させる循環経路をそれぞれ有する複数の印刷部と、
前記加圧タンクに正圧を付与し、前記負圧タンクに負圧および正圧を選択的に付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部を制御して前記加圧タンクおよび前記負圧タンクに正圧を付与することで、前記インクジェットヘッドのノズルからインクを排出させるパージを実行するものであり、パージの開始後、パージ終了条件が満足されるとパージを終了させる制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールを有し、
前記パージ終了条件は、前記加圧タンクおよび前記負圧タンクに正圧を付与するための前記圧力付与部の起動からの経過時間が規定時間に到達したことであり、
前記制御部は、パージ時において、すべての前記印刷部におけるパージ対象の前記ヘッドモジュールの数に応じて前記規定時間を設定することを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記圧力付与部は、すべての前記印刷部に共通のものであって、前記各印刷部との接続を個別に切断する切断部を有し、
前記制御部は、パージ時において、パージ対象外の前記印刷部と前記圧力付与部との接続を前記切断部により切断することを特徴とする請求項またはに記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記循環経路は、パージ時における前記各ヘッドモジュールへのインクの流入を個別に遮断するインク遮断部を有し、
前記制御部は、パージ時において、パージ対象外の前記ヘッドモジュールへのインクの流入を前記インク遮断部により遮断することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク循環式のインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを循環させつつインクジェットヘッドからインクを吐出して印刷するインク循環式のインクジェット印刷装置が知られている。
【0003】
インク循環式のインクジェット印刷装置の中には、インクジェットヘッドに対して上流側に設けられた加圧タンク、下流側に設けられた負圧タンクにそれぞれ正圧、負圧を付与してインク循環を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなインクジェット印刷装置では、印刷を行う際、エアポンプを用いて加圧タンク、負圧タンクにそれぞれ正圧、負圧を付与する。これにより、加圧タンクからインクジェットヘッドへ向けてインクが流れる。インクジェットヘッドで消費されなかったインクは、負圧タンクに回収される。加圧タンクへは、負圧タンクからインクポンプによりインクが送られる。このようにして、インク循環が行われる。
【0005】
ところで、インクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドのノズルに増粘インク等が付着することがある。そして、この増粘インク等の付着物によりノズルからのインクの吐出方向の乱れや不吐出などの吐出不良が発生することがある。
【0006】
そこで、インクジェット印刷装置では、メンテナンスとして、インクジェットヘッドを加圧してノズルからインクを強制的に排出させる、いわゆるパージを行う。パージにより、ノズルから増粘インク等が押し出され、吐出不良が解消する。
【0007】
上述したインク循環式のインクジェット印刷装置でパージを行う場合、加圧タンクを加圧することでインクジェットヘッドに加圧インクを供給し、ノズルからインクを強制的に排出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−153004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したインク循環式のインクジェット印刷装置におけるパージでは、加圧タンクに加えられた圧力が負圧タンク側へ逃げ、インクジェットヘッドを十分に加圧できないことがある。このため、パージを行ってもノズルから増粘インク等が排出されず、吐出不良を解消できないことがある。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、吐出不良を解消する性能を向上できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴は、インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッド、前記インクジェットヘッドに供給するインクを貯留する加圧タンク、前記インクジェットヘッドで消費されなかったインクを受け取る負圧タンク、および前記加圧タンクと前記インクジェットヘッドと前記負圧タンクとの間でインクを循環させる循環経路を有する印刷部と、前記加圧タンクに正圧を付与し、前記負圧タンクに負圧および正圧を選択的に付与する圧力付与部と、前記圧力付与部を制御して前記加圧タンクおよび前記負圧タンクに正圧を付与することで、前記インクジェットヘッドのノズルからインクを排出させるパージを実行する制御部とを備えることにある。
【0012】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴は、前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールを有し、前記循環経路は、パージ時における前記各ヘッドモジュールへのインクの流入を個別に遮断するインク遮断部を有し、前記制御部は、パージ時において、パージ対象外の前記ヘッドモジュールへのインクの流入を前記インク遮断部により遮断することにある。
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴は、前記印刷部を複数備え、前記圧力付与部は、すべての前記印刷部に共通のものであって、前記各印刷部との接続を個別に切断する切断部を有し、前記制御部は、パージ時において、パージ対象外の前記印刷部と前記圧力付与部との接続を前記切断部により切断することにある。
【0014】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴は、前記インクジェットヘッドは、複数のヘッドモジュールを有し、前記循環経路は、パージ時における前記各ヘッドモジュールへのインクの流入を個別に遮断するインク遮断部を有し、前記制御部は、パージ時において、パージ対象の前記印刷部の前記インクジェットヘッドにおけるパージ対象外の前記ヘッドモジュールへのインクの流入を前記インク遮断部により遮断することにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第1の特徴によれば、制御部は、圧力付与部を制御して加圧タンクおよび負圧タンクに正圧を付与することで、インクジェットヘッドのノズルからインクを排出させるパージを実行する。このように、加圧タンクとともに負圧タンクにも正圧を付与することで、ノズルに強い圧力をかけることができる。このため、ノズルから増粘インク等が排出されやすくなる。したがって、吐出不良を解消する性能を向上できる。
【0016】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第2の特徴によれば、制御部は、パージ時において、パージ対象外のヘッドモジュールへのインクの流入をインク遮断部により遮断する。これにより、パージ対象外のヘッドモジュールがあれば、ヘッドモジュールごとにパージを省略することができる。この結果、インクの無駄を抑制できる。
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第3の特徴によれば、制御部は、パージ時において、パージ対象外の印刷部と圧力付与部との接続を切断部により切断する。これにより、圧力付与部がすべての印刷部に共通の構成でも、パージが不要な印刷部ではパージを省略することができる。この結果、インクの無駄を抑制できる。
【0018】
本発明に係るインクジェット印刷装置の第4の特徴によれば、制御部は、パージ時において、パージ対象の印刷部のインクジェットヘッドにおけるパージ対象外のヘッドモジュールへのインクの流入をインク遮断部により遮断する。これにより、パージ対象の印刷部でも、パージ対象外のヘッドモジュールがあれば、ヘッドモジュールごとにパージを省略することができる。この結果、インクの無駄をより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示すインクジェット印刷装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図3図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部および圧力付与部の概略構成図である。
図4】(a)は負圧側加圧用切替弁の負圧側減圧設定の説明図、(b)は負圧側加圧用切替弁の負圧側減圧設定の説明図である。
図5】液面維持制御の説明図である。
図6】パージ時の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0021】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すインクジェット印刷装置の制御部の構成を示すブロック図である。図3は、図1に示すインクジェット印刷装置の印刷部および圧力付与部の概略構成図である。なお、以下の説明における上下方向は鉛直方向であり、図3における紙面の上下を上下方向とする。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、4つの印刷部2と、圧力付与部3と、搬送部4と、操作パネル5と、制御部6とを備える。
【0024】
印刷部2は、インクを循環させつつ、搬送部4により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷する。4つの印刷部2は、それぞれ異なる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のインクを吐出する。4つの印刷部2は、吐出するインクの色が異なる以外は、同様の構成を有する。
【0025】
図3に示すように、印刷部2は、インクジェットヘッド11と、インク循環部12と、インク補給部13とを備える。
【0026】
インクジェットヘッド11は、インク循環部12により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド11は、複数のヘッドモジュール16を有する。
【0027】
ヘッドモジュール16は、インクを貯留するインクチャンバ(図示せず)と、インクを吐出する複数のノズル(図示せず)とを有する。インクチャンバ内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、ノズルからインクが吐出される。
【0028】
インク循環部12は、インクを循環させつつインクジェットヘッド11にインクを供給する。インク循環部12は、加圧タンク21と、負圧タンク22と、循環経路23と、インクポンプ24と、インク温度調整部25と、インク温度センサ26とを備える。
【0029】
加圧タンク21は、インクジェットヘッド11に供給するインクを貯留する。加圧タンク21のインクは、後述のインク循環管41および分配器44を介してインクジェットヘッド11に供給される。加圧タンク21内には、インクの液面上に空気層31が形成されている。加圧タンク21は、後述の加圧側連通管73を介して、後述の加圧共通気室71に接続されている。加圧タンク21は、インクジェットヘッド11より低い位置(下方)に配置されている。
【0030】
加圧タンク21には、加圧タンク液面センサ32と、インクフィルタ33とが設けられている。
【0031】
加圧タンク液面センサ32は、加圧タンク21内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。基準高さは、加圧タンク21の上端より下方にある。加圧タンク液面センサ32は、加圧タンク21内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0032】
インクフィルタ33は、インク内のゴミ等を除去する。
【0033】
負圧タンク22は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを後述の回収器45から受け取って貯留する。また、負圧タンク22は、後述するインク補給部13のインクカートリッジ66から供給されるインクを貯留する。負圧タンク22内には、インクの液面上に空気層36が形成されている。負圧タンク22は、後述の負圧側連通管81を介して、後述の負圧共通気室79に接続されている。負圧タンク22は、加圧タンク21と同じ高さに配置されている。
【0034】
負圧タンク22には、負圧タンク液面センサ37が設けられている。負圧タンク液面センサ37は、負圧タンク22内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。基準高さは、負圧タンク22の上端より下方にある。負圧タンク液面センサ37は、負圧タンク22内の液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
【0035】
循環経路23は、加圧タンク21とインクジェットヘッド11と負圧タンク22との間でインクを循環させるための経路である。循環経路23は、インク循環管41〜43と、分配器44と、回収器45とを備える。
【0036】
インク循環管41は、加圧タンク21と分配器44とを接続する。インク循環管41の一部は、後述のヒータ61を経由する部分と後述のヒートシンク63を経由する部分とに分岐している。インク循環時において、インク循環管41には、加圧タンク21から分配器44に向かってインクが流れる。
【0037】
インク循環管42は、回収器45と負圧タンク22とを接続する。インク循環時において、インク循環管42には、回収器45から負圧タンク22に向かってインクが流れる。
【0038】
インク循環管43は、負圧タンク22と加圧タンク21とを接続する。インク循環時において、インク循環管43には、負圧タンク22から加圧タンク21に向かってインクが流れる。
【0039】
分配器44は、インク循環管41を介して加圧タンク21から供給されるインクを、インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16に分配する。分配器44は、インクバス51と、複数の入力管52と、複数の入力側開閉弁53とを備える。
【0040】
インクバス51は、各ヘッドモジュール16に分配されるインクを貯留する。インク循環時において、インク循環管41を介して加圧タンク21からインクバス51にインクが流入し、入力管52を介してインクバス51からヘッドモジュール16へインクが流出する。
【0041】
入力管52は、インクバス51とヘッドモジュール16の入力ポート(図示せず)とを接続する。入力管52は、各ヘッドモジュール16に1本ずつ対応して設けられている。インク循環時において、入力管52には、インクバス51からヘッドモジュール16に向かってインクが流れる。
【0042】
入力側開閉弁53は、入力管52内のインクの流路を開閉する。入力側開閉弁53と後述の出力側開閉弁58とにより、パージ時におけるヘッドモジュール16へのインクの流入を個別に遮断することができる。入力側開閉弁53は、請求項のインク遮断部の一部に相当する。
【0043】
回収器45は、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール16から回収する。回収器45は、インクバス56と、複数の出力管57と、複数の出力側開閉弁58とを備える。
【0044】
インクバス56は、各ヘッドモジュール16から回収されるインクを貯留する。インク循環時において、出力管57を介してヘッドモジュール16からインクバス56にインクが流入し、インク循環管42を介してインクバス56から負圧タンク22へインクが流出する。
【0045】
出力管57は、ヘッドモジュール16の出力ポート(図示せず)とインクバス56とを接続する。出力管57は、各ヘッドモジュール16に1本ずつ対応して設けられている。インク循環時において、出力管57には、ヘッドモジュール16からインクバス56へインクが流出する。
【0046】
出力側開閉弁58は、出力管57内のインクの流路を開閉する。出力側開閉弁58は、請求項のインク遮断部の一部に相当する。
【0047】
インクポンプ24は、負圧タンク22から加圧タンク21へインクを送液する。インクポンプ24は、インク循環管43の途中に設けられている。
【0048】
インク温度調整部25は、インク循環部12におけるインクの温度を調整する。インク温度調整部25は、インク循環管41の途中に設けられている。インク温度調整部25は、ヒータ61と、ヒータ温度センサ62と、ヒートシンク63と、冷却ファン64とを備える。
【0049】
ヒータ61は、インク循環管41内のインクを加熱する。ヒータ温度センサ62は、ヒータ61の温度を検出する。ヒートシンク63は、放熱によりインク循環管41内のインクを冷却する。冷却ファン64は、ヒートシンク63に冷却風を送る。
【0050】
インク温度センサ26は、インク循環部12におけるインクの温度を検出する。インク温度センサ26は、インク循環管41の途中に設けられている。
【0051】
インク補給部13は、インク循環部12にインクを補給する。インク補給部13は、インクカートリッジ66と、インク補給弁67と、インク補給管68とを備える。
【0052】
インクカートリッジ66は、インクジェットヘッド11による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ66内のインクは、インク補給管68を介してインク循環部12の負圧タンク22に供給される。
【0053】
インク補給弁67は、インク補給管68内のインクの流路を開閉する。負圧タンク22へインクを補給する際、インク補給弁67が開かれる。
【0054】
インク補給管68は、インクカートリッジ66と負圧タンク22とを接続する。インク補給管68には、インクカートリッジ66から負圧タンク22に向かってインクが流れる。
【0055】
圧力付与部3は、加圧タンク21に正圧を付与し、負圧タンク22に負圧および正圧を選択的に付与する。圧力付与部3は、すべての印刷部2に共通のものである。圧力付与部3は、加圧共通気室71と、4つの加圧側連通弁72と、4本の加圧側連通管73と、加圧側大気開放弁74と、加圧側大気開放管75と、加圧側圧力調整弁76と、加圧側圧力調整管77と、加圧側圧力センサ78と、負圧共通気室79と、4つの負圧側連通弁80と、4本の負圧側連通管81と、負圧側大気開放弁82と、負圧側大気開放管83と、負圧側圧力調整弁84と、負圧側圧力調整管85と、負圧側圧力センサ86と、エアポンプ87と、負圧側加圧用切替弁88と、エアポンプ用配管89と、切替弁大気連通管90と、加圧側切替弁接続管91と、負圧側切替弁接続管92と、合流管93と、エアフィルタ94と、オーバーフローパン95とを備える。なお、加圧側連通弁72および負圧側連通弁80が、請求項の切断部に相当する。
【0056】
加圧共通気室71は、複数の印刷部2の加圧タンク21の圧力を等しくするための気室である。加圧共通気室71は、4本の加圧側連通管73により4つの印刷部2の加圧タンク21の空気層31に接続されている。
【0057】
加圧側連通弁72は、加圧側連通管73内の空気の流路を開閉する。4つの加圧側連通弁72は、各印刷部2に1つずつ対応して設けられている。加圧側連通弁72は、加圧側連通管73の途中に配置されている。加圧側連通弁72が開放されているとき、当該加圧側連通弁72に対応する印刷部2の加圧タンク21の空気層31と加圧共通気室71とが連通される。これにより、対応する加圧側連通弁72が開放されている各印刷部2の加圧タンク21どうしが、加圧共通気室71および加圧側連通管73を介して連通される。加圧側連通弁72が閉鎖されているとき、当該加圧側連通弁72に対応する印刷部2の加圧タンク21と加圧共通気室71との接続が切断される。
【0058】
加圧側連通管73は、加圧共通気室71と加圧タンク21の空気層31とを接続する。4本の加圧側連通管73は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。
【0059】
加圧側大気開放弁74は、加圧共通気室71を介して加圧タンク21を密閉状態(大気から遮断した状態)と大気開放状態(大気に通じた状態)との間で切り替えるために、加圧側大気開放管75内の空気の流路を開閉する。
【0060】
加圧側大気開放管75は、加圧共通気室71を介して加圧タンク21を大気開放するための空気の流路を形成する。加圧側大気開放管75は、一端が加圧共通気室71に接続され、他端が合流管93に接続されている。
【0061】
加圧側圧力調整弁76は、加圧共通気室71および加圧タンク21の圧力を調整するために、加圧側圧力調整管77内の空気の流路を開閉する。
【0062】
加圧側圧力調整管77は、加圧共通気室71および加圧タンク21の圧力調整のための空気の流路を形成する。加圧側圧力調整管77は、一端が加圧共通気室71に接続され、他端が合流管93に接続されている。
【0063】
加圧側圧力センサ78は、加圧共通気室71内の圧力を検出する。加圧共通気室71内の圧力は、開放されている加圧側連通弁72に対応する印刷部2の加圧タンク21の圧力と等しい。開放されている加圧側連通弁72に対応する印刷部2の加圧タンク21の空気層31と加圧共通気室71とが連通されているためである。
【0064】
負圧共通気室79は、複数の印刷部2の負圧タンク22の圧力を等しくするための気室である。負圧共通気室79は、4本の負圧側連通管81により4つの印刷部2の負圧タンク22の空気層36に接続されている。
【0065】
負圧側連通弁80は、負圧側連通管81内の空気の流路を開閉する。4つの負圧側連通弁80は、各印刷部2に1つずつ対応して設けられている。負圧側連通弁80は、負圧側連通管81の途中に配置されている。負圧側連通弁80が開放されているとき、当該負圧側連通弁80に対応する印刷部2の負圧タンク22の空気層36と負圧共通気室79とが連通される。これにより、対応する負圧側連通弁80が開放されている各印刷部2の負圧タンク22どうしが、負圧共通気室79および負圧側連通管81を介して連通される。負圧側連通弁80が閉鎖されているとき、当該負圧側連通弁80に対応する印刷部2の負圧タンク22と負圧共通気室79との接続が切断される。加圧側連通弁72と負圧側連通弁80とを閉鎖することで、印刷部2の圧力付与部3との接続を個別に切断できる。
【0066】
負圧側連通管81は、負圧共通気室79と負圧タンク22の空気層36とを接続する。4本の負圧側連通管81は、各印刷部2に1本ずつ対応して設けられている。
【0067】
負圧側大気開放弁82は、負圧共通気室79を介して負圧タンク22を密閉状態と大気開放状態との間で切り替えるために、負圧側大気開放管83内の空気の流路を開閉する。
【0068】
負圧側大気開放管83は、負圧共通気室79を介して負圧タンク22を大気開放するための空気の流路を形成する。負圧側大気開放管83は、一端が負圧共通気室79に接続され、他端が合流管93に接続されている。
【0069】
負圧側圧力調整弁84は、負圧共通気室79および負圧タンク22の圧力を調整するために、負圧側圧力調整管85内の空気の流路を開閉する。
【0070】
負圧側圧力調整管85は、負圧共通気室79および負圧タンク22の圧力調整のための空気の流路を形成する。負圧側圧力調整管85は、一端が負圧共通気室79に接続され、他端が合流管93に接続されている。
【0071】
負圧側圧力センサ86は、負圧共通気室79内の圧力を検出する。負圧共通気室79内の圧力は、開放されている負圧側連通弁80に対応する印刷部2の負圧タンク22の圧力と等しい。開放されている負圧側連通弁80に対応する印刷部2の負圧タンク22の空気層36と負圧共通気室79とが連通されているためである。
【0072】
エアポンプ87は、負圧側加圧用切替弁88から加圧共通気室71へ向けて空気を送る。エアポンプ87は、エアポンプ用配管89の途中に設けられている。
【0073】
負圧側加圧用切替弁88は、エアポンプ87の駆動により負圧共通気室79に付与される圧力を正圧と負圧との間で切り替える。負圧側加圧用切替弁88は、四方弁からなる。負圧側加圧用切替弁88は、第1ポート96a、第2ポート96b、第3ポート96c、第4ポート96d、および第5ポート96eを有する。
【0074】
第1ポート96aにはエアポンプ用配管89が接続されている。第2ポート96bには切替弁大気連通管90が接続されている。第3ポート96cは、キャップ97により封止されている。第4ポート96dには負圧側切替弁接続管92が接続されている。第5ポート96eには加圧側切替弁接続管91が接続されている。
【0075】
負圧側加圧用切替弁88は、内部の弁体(図示せず)の駆動により、各ポートの接続関係を切り替えることができる。これにより、負圧側加圧用切替弁88は、負圧側減圧設定と負圧側加圧設定との間で設定変更可能になっている。負圧側減圧設定における各ポートの接続関係を図4(a)に示す。また、負圧側加圧設定における各ポートの接続関係を図4(b)に示す。
【0076】
図4(a)に示すように、負圧側減圧設定では、第1ポート96aと第4ポート96dとが接続され、第2ポート96bと第3ポート96cとが接続される。このとき、第5ポート96eは、負圧側加圧用切替弁88の内部の弁体により閉鎖される。この設定では、エアポンプ87の駆動により、負圧共通気室79から空気が吸引されて負圧共通気室79が減圧されるとともに、加圧共通気室71に空気が流入して加圧共通気室71が加圧される。すなわち、負圧共通気室79に負圧が付与され、加圧共通気室71に正圧が付与される。なお、第3ポート96cはキャップ97により封止されているため、外部の空気が第3ポート96c、第2ポート96bを通過して切替弁大気連通管90に流入することはない。
【0077】
図4(b)に示すように、負圧側加圧設定では、第1ポート96aと第2ポート96bとが接続され、第4ポート96dと第5ポート96eとが接続される。このとき、第3ポート96cは、負圧側加圧用切替弁88の内部の弁体により閉鎖される。この設定では、エアポンプ87の駆動により、エアポンプ用配管89から加圧共通気室71に空気が流入して加圧共通気室71が加圧される。また、加圧共通気室71から加圧側切替弁接続管91、負圧側加圧用切替弁88、負圧側切替弁接続管92を介して負圧共通気室79に空気が送られて負圧共通気室79も加圧される。すなわち、加圧共通気室71および負圧共通気室79に正圧が付与される。
【0078】
エアポンプ用配管89は、エアポンプ87の駆動により負圧側加圧用切替弁88から加圧共通気室71へ流れる空気の流路を形成する。エアポンプ用配管89は、一端が負圧側加圧用切替弁88の第1ポート96aに接続され、他端が加圧共通気室71に接続されている。
【0079】
切替弁大気連通管90は、負圧側加圧用切替弁88の第2ポート96bと合流管93とを接続する。加圧側切替弁接続管91は、負圧側加圧用切替弁88の第5ポート96eと加圧共通気室71とを接続する。負圧側切替弁接続管92は、負圧側加圧用切替弁88の第4ポート96dと負圧共通気室79とを接続する。
【0080】
合流管93は、一端がオーバーフローパン95に接続され、他端(上端)がエアフィルタ94を介して大気に通じている。合流管93のオーバーフローパン95側の端は、通常時は、後述のオーバーフローボール98により閉鎖されている。合流管93には、加圧側大気開放管75、加圧側圧力調整管77、負圧側大気開放管83、負圧側圧力調整管85、および切替弁大気連通管90が接続されている。これにより、加圧側大気開放管75、加圧側圧力調整管77、負圧側大気開放管83、負圧側圧力調整管85、および切替弁大気連通管90が大気に連通される。
【0081】
エアフィルタ94は、合流管93への空気中のゴミ等の進入を防止する。エアフィルタ94は、合流管93の上端に設置されている。
【0082】
オーバーフローパン95は、例えばインク補給弁67の異常により、加圧タンク21、負圧タンク22からインクが溢れ、さらに加圧共通気室71、負圧共通気室79からもインクが溢れ出た場合に、合流管93を流れてくるインクを受け取る。
【0083】
オーバーフローパン95には、オーバーフローボール98が設けられている。オーバーフローボール98は、オーバーフローパン95にインクがない場合に、オーバーフローパン95の底面に開口する合流管93の端を閉鎖し、合流管93への外部の空気の流入を防ぐものである。合流管93からオーバーフローパン95へインクが流れてくると、オーバーフローボール98は浮き上がり、オーバーフローパン95にインクが流入できる。
【0084】
また、オーバーフローパン95には、オーバーフロー液面センサ99が設けられている。オーバーフロー液面センサ99は、オーバーフローパン95内のインクの液面高さが所定高さに達しているか否かを検出するためのものである。
【0085】
オーバーフローパン95は、廃液タンク(図示せず)に接続されており、オーバーフロー液面センサ99で液面が検出されると、廃液タンクへインクが排出されるようになっている。
【0086】
搬送部4は、給紙台(図示せず)から用紙を取り出し、その用紙を搬送経路に沿って搬送する。搬送部4は、用紙を搬送するためのローラ、ローラを駆動させるモータ(いずれも図示せず)等を有する。
【0087】
操作パネル5は、各種の入力画面等を表示するとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける。操作パネル5は、各種の操作キー、タッチパネル等を有する入力部と、液晶表示パネル等を有する表示部(いずれも図示せず)とを備える。
【0088】
制御部6は、インクジェット印刷装置1全体の動作を制御する。図2に示すように、制御部6は、主コントローラ101と、メカコントローラ102とを備える。
【0089】
主コントローラ101は、インクジェット印刷装置1全体の制御を司る。主コントローラ101は、CPU(Central Processing Unit)111と、メモリ112と、HDD(Hard Disk Drive)113と、外部I/F(インタフェース)114と、メカコントローラI/F115と、ユーザI/F116と、ヘッドI/F117とを備える。
【0090】
CPU111は、演算処理を実行する。メモリ112は、一時的なデータの保存や演算時におけるCPU111のワークエリアとして使用されるものである。HDD113は、各種のプログラム等を記憶する。
【0091】
外部I/F114は、ネットワークを介して外部の装置との間でデータの送受信を行う。メカコントローラI/F115は、主コントローラ101にメカコントローラ102を接続する。ユーザI/F116は、主コントローラ101に操作パネル5を接続する。ヘッドI/F117は、主コントローラ101にインクジェットヘッド11を接続する。
【0092】
メカコントローラ102は、印刷部2におけるインク循環およびインク補給の制御、圧力付与部3による圧力制御、および搬送部4による用紙搬送の制御を行う。メカコントローラ102は、CPU121と、メモリ122と、センサI/F123と、主コントローラI/F124と、アクチュエータI/F125と、ドライバユニット126とを備える。
【0093】
CPU121は、演算処理を実行する。メモリ122は、一時的なデータの保存や演算時におけるCPU121のワークエリアとして使用されるものである。
【0094】
センサI/F123は、メカコントローラ102に加圧タンク液面センサ32等の各種センサを接続する。主コントローラI/F124は、メカコントローラ102を主コントローラ101に接続する。アクチュエータI/F125は、ドライバユニット126に制御信号を送信する。
【0095】
ドライバユニット126は、インクポンプ24、エアポンプ87、搬送部4のモータ等のそれぞれを駆動させる各種ドライバを有する。
【0096】
制御部6は、インク循環動作を行いつつ、インクジェットヘッド11からインクを吐出させて印刷を行う。インク循環動作は、圧力付与部3により加圧タンク21、負圧タンク22にそれぞれ正圧、負圧を付与し、加圧タンク21および負圧タンク22の液面高さに応じてインクポンプ24の駆動を制御することで、循環経路23に沿ってインクを循環させる動作である。
【0097】
また、制御部6は、メンテナンスとして、インクジェットヘッド11のヘッドモジュール16のノズルからインクを強制的に排出させるパージを実行する。具体的には、制御部6は、圧力付与部3を制御して加圧タンク21および負圧タンク22に正圧を付与することで、強制的にノズルからインクを排出させる。
【0098】
次に、インクジェット印刷装置1の印刷時の動作について説明する。
【0099】
印刷ジョブが入力されると、主コントローラ101のCPU111は、印刷ジョブを画像データとジョブデータとに分割し、ジョブデータをメカコントローラ102へ送信する。ジョブデータは、印刷枚数、用紙種類等を示す情報を含むものである。
【0100】
次いで、メカコントローラ102のCPU121は、加圧側大気開放弁74および負圧側大気開放弁82を閉鎖する。これにより、各印刷部2の加圧タンク21が加圧共通気室71を介して密閉状態となり、負圧タンク22が負圧共通気室79を介して密閉状態となる。
【0101】
なお、インクジェット印刷装置1が動作しない待機状態では、加圧側大気開放弁74および負圧側大気開放弁82は開放されている。また、加圧側圧力調整弁76および負圧側圧力調整弁84は、待機中から閉鎖されている。入力側開閉弁53、出力側開閉弁58、加圧側連通弁72、および負圧側連通弁80は、待機中からすべて開放されている。負圧側加圧用切替弁88は、負圧側減圧設定になっている。
【0102】
次いで、CPU121は、エアポンプ87を起動する。これにより、負圧共通気室79から加圧共通気室71へ空気が送られることで、負圧共通気室79および負圧タンク22が減圧され、加圧共通気室71および加圧タンク21が加圧される。これにより、加圧タンク21からインクジェットヘッド11を経由して負圧タンク22へ向かうインクの流れが生じ、インク循環が始まる。
【0103】
エアポンプ87の起動後、CPU121は、加圧タンク21および負圧タンク22の圧力がそれぞれの設定圧に達し、それが維持されるように、エアポンプ87の駆動、および、加圧側圧力調整弁76および負圧側圧力調整弁84の開閉を制御する。加圧タンク21および負圧タンク22の設定圧は、インクを循環させつつインクジェットヘッド11のノズル圧を適正値にするための圧力値として予め設定されたものである。
【0104】
加圧タンク21および負圧タンク22の圧力が設定圧になった後、主コントローラ101のCPU111およびメカコントローラのCPU121は、印刷ジョブを実行する。具体的には、メカコントローラのCPU121は、ジョブデータに基づき、搬送部4により用紙を搬送させる。また、主コントローラ101のCPU111は、画像データに基づき、搬送される用紙にインクジェットヘッド11からインクを吐出させる。これにより、用紙に画像が印刷される。印刷ジョブの実行中は、加圧タンク21からインクジェットヘッド11へインクが供給され、インクジェットヘッド11で消費されなかったインクが負圧タンク22に流入する。
【0105】
このようにインク循環および印刷を行う際、CPU121は、液面維持制御を行う。液面維持制御は、加圧タンク21および負圧タンク22の液面高さを基準高さで維持しつつインク循環するための、加圧タンク21および負圧タンク22の液面高さに応じたインクポンプ24およびインク補給弁67の制御である。
【0106】
具体的には、図5に示すように、加圧タンク液面センサ32および負圧タンク液面センサ37がともにオンの状態では、CPU121は、インクポンプ24をオフとし、インク補給弁67を閉鎖する。加圧タンク液面センサ32がオンで負圧タンク液面センサ37がオフの状態でも同様に、CPU121は、インクポンプ24をオフとし、インク補給弁67を閉鎖する。
【0107】
加圧タンク液面センサ32がオフで負圧タンク液面センサ37がオンの状態では、CPU121は、インクポンプ24をオンとし、インク補給弁67を閉鎖する。
【0108】
加圧タンク液面センサ32および負圧タンク液面センサ37がともにオフの状態では、CPU121は、インクポンプ24をオフとし、インク補給弁67を開放する。
【0109】
すなわち、加圧タンク液面センサ32がオフで負圧タンク液面センサ37がオンの状態になると、液面維持制御により、インクポンプ24が負圧タンク22から加圧タンク21へインクを送る。また、加圧タンク液面センサ32および負圧タンク液面センサ37がともにオフの状態になると、液面維持制御により、インクカートリッジ66から負圧タンク22へインクが補給される。このようにして、加圧タンク21および負圧タンク22の液面高さが維持されつつ、インク循環および印刷が行われる。
【0110】
印刷ジョブが終了すると、CPU121は、加圧側大気開放弁74および負圧側大気開放弁82を開放する。ここで、インクポンプ24、エアポンプ87が駆動中の場合は、CPU121は、それを停止する。また、加圧側圧力調整弁76、負圧側圧力調整弁84、インク補給弁67が開放されている場合は、CPU121は、それを閉鎖する。これにより、インク循環動作が終了し、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
【0111】
次に、インクジェット印刷装置1のパージ時の動作について説明する。
【0112】
インクジェット印刷装置1において、吐出検査により吐出不良が検出されると、パージを行う。吐出検査は、例えば、次のように行われる。まず、制御部6は、所定のテストパターンを各印刷部2により用紙に印刷させる。制御部6は、テストパターンの印刷画像がスキャナで読み取られた画像データを取得し、その画像データを解析して、各インクジェットヘッド11の各ヘッドモジュール16に吐出不良のノズルがあるか否かを判断する。少なくともいずれかのヘッドモジュール16に吐出不良のノズルがあると判断すると、制御部6は、パージを実行する。
【0113】
図6は、パージ時の動作を説明するためのフローチャートである。なお、パージを開始する際、インクジェット印刷装置1は待機状態である。
【0114】
図6のステップS1において、メカコントローラのCPU121は、パージ対象外の印刷部2に対応する加圧側連通弁72および負圧側連通弁80を閉鎖する。これにより、パージ対象外の印刷部2と圧力付与部3との接続が切断される。
【0115】
ここで、パージ対象の印刷部2は、インクジェットヘッド11にパージ対象のヘッドモジュール16がある印刷部2である。パージ対象のヘッドモジュール16は、吐出不良のノズルがあるヘッドモジュール16である。パージ対象外の印刷部2は、パージ対象の印刷部2以外の印刷部2であり、すべてのヘッドモジュール16がパージ対象外のヘッドモジュール16である印刷部2である。パージ対象外のヘッドモジュール16は、パージ対象のヘッドモジュール16以外のヘッドモジュール16であり、吐出不良のノズルがないヘッドモジュール16である。
【0116】
次いで、ステップS2において、CPU121は、パージ対象の印刷部2のインクジェットヘッド11におけるパージ対象外のヘッドモジュール16に対応する入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を閉鎖する。
【0117】
次いで、ステップS3において、CPU121は、加圧側大気開放弁74および負圧側大気開放弁82を閉鎖する。これにより、パージ対象の印刷部2の加圧タンク21が加圧共通気室71を介して密閉状態となり、負圧タンク22が負圧共通気室79を介して密閉状態となる。
【0118】
次いで、ステップS4において、CPU121は、負圧側加圧用切替弁88を負圧側加圧設定とする。
【0119】
次いで、ステップS5において、CPU121は、エアポンプ87を起動する。これにより、加圧共通気室71およびパージ対象の印刷部2の加圧タンク21が加圧され始めるとともに、負圧共通気室79およびパージ対象の印刷部2の負圧タンク22も加圧され始める。パージ対象の印刷部2の加圧タンク21および負圧タンク22の圧力は徐々に上昇する。そして、ある程度の圧力まで達すると、パージ対象のヘッドモジュール16のノズルからインクが排出され始める。
【0120】
ここで、インクジェット印刷装置1の待機状態において、インク循環管41,42、インクバス51,56、入力管52、出力管57、およびヘッドモジュール16は、インクで満たされている。この状態で、エアポンプ87の駆動により加圧タンク21および負圧タンク22が加圧されるので、パージ対象のヘッドモジュール16のノズルからインクが押し出されるように排出される。
【0121】
負圧タンク22が加圧されることで、負圧側の経路(インク循環管42、インクバス56、出力管57)では、インク循環時(印刷時)とは逆方向の、負圧タンク22からヘッドモジュール16へ向かうインクの流れが生じることになる。加圧側の経路(インク循環管41、インクバス51、入力管52)では、インク循環時と同方向の、加圧タンク21からヘッドモジュール16へ向かうインクの流れが生じる。
【0122】
エアポンプ87の起動後、ステップS6において、CPU121は、パージ終了条件が満足されたか否かを判断する。具体的には、CPU121は、加圧側圧力センサ78および負圧側圧力センサ86の少なくともいずれか一方の検出値に基づき、加圧タンク21および負圧タンク22の圧力が規定圧力に到達したか否かを判断する。なお、パージ時には、負圧側加圧用切替弁88を負圧側加圧設定として加圧タンク21および負圧タンク22を加圧しているため、加圧タンク21の圧力と負圧タンク22の圧力とは等しくなる。
【0123】
パージ終了条件は満足されていないと判断した場合(ステップS6:NO)、CPU121は、ステップS6を繰り返す。
【0124】
パージ終了条件が満足されたと判断した場合(ステップS6:NO)、ステップS7において、CPU121は、エアポンプ87を停止する。これにより、ノズルからのインクの排出が終了する。
【0125】
次いで、ステップS8において、CPU121は、負圧側加圧用切替弁88を負圧側減圧設定とする。
【0126】
次いで、ステップS9において、CPU121は、加圧側大気開放弁74および負圧側大気開放弁82を開放する。
【0127】
次いで、ステップS10において、CPU121は、パージ対象の印刷部2におけるパージ対象外のヘッドモジュール16に対応する入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を開放する。すなわち、CPU121は、ステップS2で閉鎖した入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を開放する。
【0128】
次いで、ステップS11において、CPU121は、パージ対象外の印刷部2に対応する加圧側連通弁72および負圧側連通弁80を開放する。すなわち、CPU121は、ステップS2で閉鎖した加圧側連通弁72および負圧側連通弁80を開放する。これにより、一連の動作が終了となる。
【0129】
なお、パージ後は、図示しないワイパによりヘッドモジュール16のノズル面(下面)がワイプされる。これにより、パージにより排出されてノズル面に付着したインクや増粘インク等がノズル面から除去される。
【0130】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、制御部6は、圧力付与部3により加圧タンク21および負圧タンク22に正圧を付与することで、インクジェットヘッド11のノズルからインクを排出させるパージを実行する。このように、加圧タンク21とともに負圧タンク22にも正圧を付与することで、加圧側の経路および負圧側の経路の両方からインクジェットヘッド11を加圧し、ノズルに強い圧力をかけることができる。このため、ノズルから増粘インク等が排出されやすくなる。したがって、吐出不良を解消する性能を向上できる。
【0131】
また、制御部6は、パージ対象外の印刷部2に対応する加圧側連通弁72および負圧側連通弁80を閉鎖することで、パージ対象外の印刷部2と圧力付与部3との接続を切断する。これにより、圧力付与部3がすべての印刷部2に共通の構成であるインクジェット印刷装置1でも、パージが不要な印刷部2ではパージを省略することができる。この結果、インクの無駄を抑制できる。
【0132】
また、制御部6は、パージ対象の印刷部2のインクジェットヘッド11におけるパージ対象外のヘッドモジュール16に対応する入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を閉鎖することで、パージ対象外のヘッドモジュール16へのインクの流入を遮断する。これにより、パージ対象の印刷部2でも、パージ対象外のヘッドモジュール16があれば、ヘッドモジュール16ごとにパージを省略することができる。この結果、インクの無駄をより抑制できる。
【0133】
なお、上記実施の形態では、加圧タンク21および負圧タンク22の圧力が規定圧力に到達したことをパージ終了条件としたが、パージ終了条件はこれに限らない。
【0134】
例えば、エアポンプ87の起動からの経過時間が規定時間に到達したことをパージ終了条件としてもよい。
【0135】
また、この場合において、全印刷部2におけるパージ対象のヘッドモジュール16の数に応じた規定時間を設定してもよい。具体的には、パージ対象のヘッドモジュール16が少ないほど、規定時間を短くすることができる。
【0136】
ここで、前述のように、エアポンプ87の起動後、パージ対象の印刷部2の加圧タンク21および負圧タンク22の圧力は徐々に上昇する。そして、パージ対象のヘッドモジュール16のノズルからのインクの排出が始まると、加圧タンク21および負圧タンク22の圧力の上昇率が低下する。パージ対象のヘッドモジュール16が少ないほど、加圧タンク21および負圧タンク22の圧力の上昇率の低下の度合いが小さくなる。このため、パージ対象のヘッドモジュール16が少ないほど、各ヘッドモジュール16から所定量のインクを排出するために要する時間が短くなる。そこで、パージ対象のヘッドモジュール16の数に応じた規定時間を設定することで、インクの無駄を抑制できる。
【0137】
また、加圧タンク21および負圧タンク22の液面高さを検出する液面高さセンサを設け、パージ対象の各印刷部2における加圧タンク21および負圧タンク22の液面高さが規定高さにまで下降したことをパージ終了条件としてもよい。
【0138】
また、この場合において、パージ対象の印刷部2ごとに、パージ対象のヘッドモジュール16の数に応じた規定高さを設定してもよい。具体的には、パージ対象の各印刷部2において、パージ対象のヘッドモジュール16が少ないほど、規定高さを高くすることができる。
【0139】
パージ対象の印刷部2において、パージ対象のヘッドモジュール16が少ないほど、各ヘッドモジュール16から所定量のインクを排出するために必要な合計のインク量は少ない。そこで、パージ対象のヘッドモジュール16の数に応じた規定高さを設定することで、インクの無駄を抑制できる。
【0140】
上記実施の形態では、循環経路23に入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を備え、圧力付与部3に加圧側連通弁72および負圧側連通弁80を備えた構成について説明したが、入力側開閉弁53、出力側開閉弁58、加圧側連通弁72、および負圧側連通弁80を省略してもよい。この場合、パージ時の動作において、図6のフローチャートのステップS1,S2,S10,S11が省略され、すべての印刷部2のすべてのヘッドモジュール16でパージが行われる。
【0141】
また、入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を備え、加圧側連通弁72および負圧側連通弁80を省略した構成としてもよい。この場合、パージ対象のヘッドモジュール16がない印刷部2(パージ対象外の印刷部2)では、すべてのヘッドモジュール16に対応する入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を閉鎖すればよい。
【0142】
また、加圧側連通弁72および負圧側連通弁80を備え、入力側開閉弁53および出力側開閉弁58を省略した構成としてもよい。この場合、パージ対象の印刷部2では、すべてのヘッドモジュール16でパージが行われる。この場合でも、パージが不要な印刷部2のパージを省略することができ、インクの無駄を抑制できる。
【0143】
上記実施の形態では、インクジェットヘッド11が複数のヘッドモジュール16からなる場合について説明したが、インクジェットヘッドが主走査方向における印字幅をカバーする単一部材からなるものでもよい。
【0144】
上記実施の形態では、4つの印刷部2を有するインクジェット印刷装置1について説明したが、印刷部2の数はこれに限らない。
【0145】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0146】
1 インクジェット印刷装置
2 印刷部
3 圧力付与部
4 搬送部
5 操作パネル
6 制御部
11 インクジェットヘッド
12 インク循環部
13 インク補給部
21 加圧タンク
22 負圧タンク
23 循環経路
24 インクポンプ
41〜43 インク循環管
44 分配器
45 回収器
51,56 インクバス
52 入力管
53 入力側開閉弁
57 出力管
58 出力側開閉弁
71 加圧共通気室
72 加圧側連通弁
73 加圧側連通管
74 加圧側大気開放弁
75 加圧側大気開放管
76 加圧側圧力調整弁
77 加圧側圧力調整管
78 加圧側圧力センサ
79 負圧共通気室
80 負圧側連通弁
81 負圧側連通管
82 負圧側大気開放弁
83 負圧側大気開放管
84 負圧側圧力調整弁
85 負圧側圧力調整管
86 負圧側圧力センサ
87 エアポンプ
88 負圧側加圧用切替弁
89 エアポンプ用配管
90 切替弁大気連通管
91 加圧側切替弁接続管
92 負圧側切替弁接続管
93 合流管
101 主コントローラ
102 メカコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6