(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スクリュ要素が前記スクリュの長手方向に沿って規則的に配列された際、その配列された前記スクリュ要素の個数に基づいて、前記バレルブロックを組み合わせることで、前記バレルの長さを変更可能である請求項1に記載の押出機。
前記スクリュ要素には、原料に対して、せん断作用を付与する部分と、伸長作用を付与する部分とが含まれ、これらの部分が、前記スクリュの長手方向に沿って一定の規則性を有して設けられている請求項1に記載の押出機。
前記スクリュを回転させて原料を混練する際に、前記スクリュ要素ごとに生じる各種状態は、前記複数のバレルブロックのそれぞれにおいて、前記スクリュの長手方向に沿った特定の位置に規定される請求項1に記載の押出機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、
図1ないし
図11を参照して説明する。
【0018】
図1には、第1の実施形態に係る連続式高せん断加工装置(混練装置)1の構成が概略的に示されている。高せん断加工装置1は、第1の押出機(処理機)2、第2の押出機3および第3の押出機(脱泡機)4を備えている。第1の押出機2、第2の押出機3および第3の押出機4は、互いに直列に接続されている。
【0019】
第1の押出機2は、例えば二種類の非相溶性の樹脂などの材料を、予備的に混練し、溶融するための処理機である。ここでは、二種類の樹脂として、ポリカーボネート樹脂(PC)、および、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を適用する。これらの樹脂は、例えばペレットの状態で第1の押出機2に供給される。
【0020】
本実施形態では、樹脂の混練・溶融の度合いを強化するため、第1の押出機2として同方向回転型の二軸混練機を用いている。
図2および
図3は、二軸混練機の一例を開示している。二軸混練機は、バレル6と、バレル6の内部に収容された二本のスクリュ7a,7bと、を備えている。バレル6は、二つの円筒を組み合わせた形状を有するシリンダ部8を含んでいる。前記樹脂は、バレル6の一端部に設けた供給口9からシリンダ部8に連続的に供給される。さらに、バレル6は、樹脂を溶融するためのヒータを備えている。
【0021】
スクリュ7a,7bは、互いに噛み合った状態でシリンダ部8に収容されている。スクリュ7a,7bは、図示しないモータから伝わるトルクを受けて互いに同方向に回転される。
図3に示すように、スクリュ7a,7bは、それぞれ、フィード部11、混練部12およびポンピング部13を備えている。フィード部11、混練部12およびポンピング部13は、スクリュ7a,7bの軸方向に沿って一列に並んでいる。
【0022】
フィード部11は、螺旋状に捩じれたフライト14を有している。スクリュ7a,7bのフライト14は、互いに噛み合った状態で回転するとともに、供給口9から供給された二種類の樹脂を混練部12に向けて搬送する。
【0023】
混練部12は、スクリュ7a,7bの軸方向に並んだ複数のディスク15を有している。スクリュ7a,7bのディスク15は、互いに向かい合った状態で回転するとともに、フィード部11から送られた樹脂を予備的に混練する。混練された樹脂は、スクリュ7a,7bの回転によりポンピング部13に送り込まれる。
【0024】
ポンピング部13は、螺旋状に捩じれたフライト16を有している。スクリュ7a,7bのフライト16は、互いに噛み合った状態で回転するとともに、予備的に混練された樹脂をバレル6の吐出端から押し出す。
【0025】
このような二軸混練機によると、スクリュ7a,7bのフィード部11に供給された樹脂は、スクリュ7a,7bの回転に伴うせん断発熱およびヒータの熱を受けて溶融する。二軸混練機での予備的な混練により溶融された樹脂は、ブレンドされた原料を構成する。原料は、
図1に矢印Aで示すように、バレル6の吐出端から第2の押出機3に連続的に供給される。
【0026】
さらに、第1の押出機2を二軸混練機として構成することで、樹脂を溶融させるだけでなく、当該樹脂にせん断作用を付与することができる。このため、原料が第2の押出機3に供給される時点で、当該原料は、第1の押出機2での予備的な混練により溶融されて最適な粘度に保たれる。また、第1の押出機2を二軸混練機として構成することで、第2の押出機3に連続して原料を供給する際、単位時間当たりに、所定量の原料を安定して供給することができる。したがって、原料を本格的に混練する第2の押出機3の負担を軽減することができる。
【0027】
第2の押出機3は、原料の高分子成分がナノ分散化された微視的な分散構造を有する混練物を生成するための要素である。本実施形態では、第2の押出機3として単軸押出機を用いている。単軸押出機は、バレル20と、一本の押出機用スクリュ21(以下、スクリュ21という)と、を備えている。スクリュ21は、溶融された原料にせん断作用および伸長作用を繰り返し付与する機能を有している。スクリュ21を含む第2の押出機3の構成に関しては、後で詳細に説明する。
【0028】
第3の押出機4は、第2の押出機3から吐出された混練物に含まれるガス成分を吸引・除去するための要素である。本実施形態では、第3の押出機4として単軸押出機を用いている。
図4に示すように、単軸押出機は、バレル22と、バレル22に収容された一本のベントスクリュ23と、を備えている。バレル22は、真っ直ぐな円筒状のシリンダ部24を含んでいる。第2の押出機3から押し出された混練物は、シリンダ部24の軸方向に沿う一端部からシリンダ部24に連続的に供給される。
【0029】
バレル22は、ベント口25を有している。ベント口25は、シリンダ部24の軸方向に沿う中間部分に開口されているとともに、真空ポンプ26に接続されている。さらに、バレル22のシリンダ部24の他端部は、ヘッド部27で閉塞されている。ヘッド部27は、混練物を吐出させる吐出口28を有している。
【0030】
ベントスクリュ23は、シリンダ部24に収容されている。ベントスクリュ23は、図示しないモータから伝わるトルクを受けて一方向に回転される。ベントスクリュ23は、螺旋状に捩じれたフライト29を有している。フライト29は、ベントスクリュ23と一体的に回転するとともに、シリンダ部24に供給された混練物をヘッド部27に向けて連続的に搬送する。混練物は、ベント口25に対応する位置に搬送された時に、真空ポンプ26のバキューム圧を受ける。すなわち、真空ポンプによってシリンダ部24内を負圧に引くことで、混練物に含まれるガス状物質やその他の揮発成分が混練物から連続的に吸引・除去される。ガス状物質やその他の揮発成分が取り除かれた混練物は、ヘッド部27の吐出口28から高せん断加工装置1の外に連続的に吐出される。
【0031】
次に、第2の押出機3について詳細に説明する。
【0032】
図1、
図5、
図6に示すように、第2の押出機3のバレル20は、真っ直ぐな筒状であって、水平に配置されている。バレル20は、ブロック化された複数のバレルブロック31a,31b,31cを互いに組み合わせて一体化されている。なお、
図1には、3つのバレルブロック31bが示されているが、これはあくまで一例であり、例えば後述する「スクリュ要素」の数に応じて変更されるスクリュ21の長さに基づいて、バレルブロック31bの数を増減させることができることは言うまでもない。
【0033】
各バレルブロック31a,31b,31cは、円筒状の貫通孔32を有している。各バレルブロック31a,31b,31cは、それぞれの貫通孔32が同軸状に連続するように一体的に組み合わされている。各バレルブロック31a,31b,31cの貫通孔32は、互いに協働してバレル20の内部に円筒状のシリンダ部33を規定している。シリンダ部33は、バレル20の軸方向に延びている。
【0034】
バレル20の軸方向に沿う一端部のバレルブロック31aには、供給口34が形成されている。供給口34は、シリンダ部33に連通するとともに、当該供給口34に第1の押出機2でブレンドされた原料が連続的に供給される。
【0035】
各バレルブロック31a,31b,31cには、ヒータ200が設けられている。ヒータ200は、シリンダ部33を覆うように、各バレルブロック31a,31b,31cの外面に沿って配置されている。各ヒータ200は、バレル20の温度が原料の混練に最適な値となるようにバレル20の温度を調整する。さらに、各バレルブロック31a,31b,31cには、例えば水あるいは油のような冷媒が流れる冷媒通路35が設けられている。冷媒通路35は、シリンダ部33を取り囲むように配置されている。冷媒は、バレル20の温度が予め決められた上限値を超えた時に冷媒通路35に沿って流れ、バレル20を強制的に冷却する。
【0036】
バレル20の軸方向に沿う他端部のバレルブロック31cは、ヘッド部36で閉塞されている。ヘッド部36は、吐出口36aを有している。吐出口36aは、供給口34に対しバレル20の軸方向に沿う反対側に位置されるとともに、第3の押出機4に接続されている。
【0037】
このようなバレル20において、上記した各バレルブロック31a,31b,31cおよびヘッド部36には、その四隅に、例えばタイバーやタイロッドなどの連結棒201を挿通可能な貫通孔(図示しない)が軸方向に沿って穿孔されている(
図1参照)。各バレルブロック31a,31b,31cおよびヘッド部36を軸方向に沿って並列させた状態で、その四隅の貫通孔相互に亘って連結棒201を挿通し、当該連結棒201の両端をナット202,203で締め付けることで、これらバレルブロック31a,31b,31cおよびヘッド部36を相互に一体化させることができる。
【0038】
この場合、一方のナット202をバレルブロック31a(バレル20)の外端面20aに埋設し、その回転を不能にするとともに、他方のナット203をヘッド部36(バレル20)の外端面20bに回転可能に設けるようにする(
図1参照)。そうすると、他方のナット203を締め付けるだけで、各バレルブロック31a,31b,31cおよびヘッド部36を簡単に一体化させることができる。
【0039】
さらに、各バレルブロック31a,31b,31cおよびヘッド部36が相互に対向する端面は、鏡面仕上げとすることが好ましい。これにより、連結棒201によって、各バレルブロック31a,31b,31cおよびヘッド部36を軸方向に締め付けた際、隣り合う端面同士を隙間無く密着させることができる。この結果、バレル20のシリンダ部33内を液密状にすることができる。
なお、
図1以外の各図面において、当該図面における線図を理解し易くするため、連結棒201は表記されていない。
【0040】
さらに、
図5、
図6、
図11に示すように、各バレルブロック31a,31b,31cには、液密状のシリンダ部33内の温度や圧力を測定するために、温度センサ204や圧力センサ205を取り付けることができるようになっている。すなわち、各バレルブロック31a,31b,31cには、各種のセンサを取り付けるための取り付け孔(図示しない)が設けられている。取り付け孔は、各バレルブロック31a,31b,31cの外面からシリンダ部33(貫通孔32)まで連通させて形成されている。当該取り付け孔に温度センサ204や圧力センサ205を挿し込むことで、例えば原料を混練している状態におけるシリンダ部33内の温度や圧力を正確に測定することができる。
【0041】
図5ないし
図7に示すように、スクリュ21は、スクリュ本体37を備えている。本実施形態のスクリュ本体37は、一本の回転軸38と、複数の円筒状の筒体39と、で構成されている。
【0042】
回転軸38は、第1の軸部40および第2の軸部41を備えている。第1の軸部40は、バレル20の一端部の側である回転軸38の基端に位置されている。第1の軸部40は、継手部42およびストッパ部43を含んでいる。継手部42は、図示しないカップリングを介してモータのような駆動源に連結される。ストッパ部43は、継手部42に同軸状に設けられている。ストッパ部43は、継手部42よりも径が大きい。
【0043】
第2の軸部41は、第1の軸部40のストッパ部43の端面から同軸状に延びている。第2の軸部41は、バレル20の略全長に亘る長さを有するとともに、ヘッド部36と向かい合う先端を有している。第1の軸部40および第2の軸部41を同軸状に貫通する真っ直ぐな軸線O1は、回転軸38の軸方向に水平に延びている。
【0044】
第2の軸部41は、ストッパ部43よりも径が小さいソリッドな円柱状である。
図8および
図9に示すように、第2の軸部41の外周面に一対のキー45a,45bが取り付けられている。キー45a,45bは、第2の軸部41の周方向に180°ずれた位置で第2の軸部41の軸方向に延びている。
【0045】
図6ないし
図9に示すように、各筒体39は、第2の軸部41が同軸状に貫通するように構成されている。筒体39の内周面に一対のキー溝49a,49bが形成されている。キー溝49a,49bは、筒体39の周方向に180°ずれた位置で筒体39の軸方向に延びている。
【0046】
筒体39は、キー溝49a,49bを第2の軸部41のキー45a,45bに合わせた状態で第2の軸部41の先端の方向から第2の軸部41の上に挿入される。本実施形態では、第2の軸部41の上に最初に挿入された筒体39と第1の軸部40のストッパ部43の端面との間に第1のカラー44が介在されている。さらに、全ての筒体39を第2の軸部41の上に挿入した後、第2の軸部41の先端面に第2のカラー51を介して固定ねじ52がねじ込まれている。
【0047】
このねじ込みにより、全ての筒体39は、第1のカラー44と第2のカラー51との間で第2の軸部41の軸方向に締め付けられ、隣り合う筒体39の端面が隙間なく密着された状態に保持されている。
【0048】
このとき、全ての筒体39が第2の軸部41上で同軸状に結合されることで、当該各筒体39と回転軸38とが一体的に組み立てられた状態となる。これにより、各筒体39を回転軸38とともに軸線O1を中心に回転させること、すなわち、スクリュ本体37を軸線O1を中心に回転させることが可能となる。
【0049】
かかる状態において、各筒体39は、スクリュ本体37の外径D1(
図8参照)を規定する構成要素となる。すなわち、第2の軸部41に沿って同軸状に結合された各筒体39は、その外径D1が互いに同一に設定されている。スクリュ本体37(各筒体39)の外径D1は、回転軸38の回転中心である軸線O1を通って規定される直径である。
【0050】
これにより、スクリュ本体37(各筒体39)の外径D1が一定値であるセグメント式のスクリュ21が構成される。セグメント式のスクリュ21は、回転軸38(すなわち、第2の軸部41)に沿って、複数のスクリュエレメントを、自由な順番および組み合わせで保持させることができる。スクリュエレメントとしては、例えば、少なくとも後述するフライト56,57,58の一部が形成された筒体39を、1つのスクリュエレメントとして規定することができる。
【0051】
このように、スクリュ21をセグメント化することで、例えば、当該スクリュ21の仕様の変更や調整、あるいは、保守やメンテナンスについて、その利便性を格段に向上させることができる。
【0052】
なお、本実施形態において、円筒状の筒体39は、キー45a,45bにより回転軸38に固定されることに限定されるものではない。例えば、キー45a,45bの代わりに、
図2に示すようなスプラインを用いて筒体39を回転軸38に固定してもよい。
【0053】
さらに、セグメント式のスクリュ21は、バレル20のシリンダ部33に同軸状に収容されている。具体的には、複数のスクリュエレメントが回転軸38(第2の軸部41)に沿って保持されたスクリュ本体37が、シリンダ部33に回転可能に収容されている。この状態において、回転軸38の第1の軸部40(継手部42、ストッパ部43)は、バレル20の一端部からバレル20の外に突出されている。
【0054】
さらに、この状態において、スクリュ本体37の周方向に沿う外周面と、シリンダ部33の内周面との間には、原料を搬送するための搬送路53が形成されている。搬送路53は、シリンダ部33の径方向に沿う断面形状が円環形であり、シリンダ部33に沿って軸方向に延びている。
【0055】
本実施形態において、スクリュ21は、駆動源からのトルクを受けると、
図5に矢印で示すように、当該スクリュ21の基端の側から見て逆時計回りに左回転する。このとき、スクリュ21の回転数は、600rpm〜3000rpmとすることが好ましい。
【0056】
図5ないし
図7に示すように、スクリュ本体37は、原料を搬送するための複数の搬送部54,59と、原料の流動を制限するための複数の障壁部55と、を有している。すなわち、バレル20の一端部に対応するスクリュ本体37の基端に障壁部55が配置され、バレル20の他端部に対応するスクリュ本体37の先端に吐出用搬送部59が配置されている。さらに、障壁部55と搬送部59との間において、スクリュ本体37の基端から先端に向かって、搬送部54と障壁部55とが軸方向に交互に並べて配置されている。
なお、バレル20の供給口34は、スクリュ本体37の基端の側に配置された搬送部54に向けて開口している。
【0057】
各搬送部54は、螺旋状に捩じれたフライト56を有している。フライト56は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。フライト56は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、フライト56は、当該フライト56の捩じれ方向が左ねじと同じように左に捩じれている。
【0058】
さらに、吐出用搬送部59は、螺旋状に捩じれたフライト58を有している。フライト58は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。フライト58は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、フライト58は、当該フライト58の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0059】
各障壁部55は、螺旋状に捩じれたフライト57を有している。フライト57は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。フライト57は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、フライト57は、当該フライト57の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0060】
各障壁部55のフライト57の捩じれピッチは、搬送部54,59のフライト56,58の捩じれピッチと同じか、それよりも小さく設定されている。さらに、フライト56,57,58の頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間には、僅かなクリアランスが確保されている。
【0061】
この場合、障壁部55の外径部(フライト57の頂部)と、シリンダ部33の内周面との間のクリアランスは、0.1mm以上かつ2mm以下の範囲に設定することが好ましい。さらに好ましくは、当該クリアランスを、0.1mm以上かつ0.7mm以下の範囲に設定する。これにより、原料が当該クリアランスを通過して搬送されるのを確実に制限することができる。
【0062】
なお、スクリュ本体37の軸方向は、スクリュ本体37の長手方向、換言すると、スクリュ21の長手方向と言い換えることができる。
ここで、スクリュ本体37の軸方向に沿う搬送部54,59の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量などに応じて適宜設定される。搬送部54,59とは、少なくとも筒体39の外周面にフライト56,58が形成された領域のことであるが、フライト56,58の始点と終点との間の領域に特定されるものではない。
【0063】
すなわち、筒体39の外周面のうちフライト56,58から外れた領域も、搬送部54,59とみなされることがある。例えば、フライト56,58を有する筒体39と隣り合う位置に円筒状のスペーサあるいは円筒状のカラーが配置された場合、当該スペーサやカラーも搬送部54,59に含まれることがあり得る。
【0064】
さらに、スクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部55の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量などに応じて適宜設定される。障壁部55は、搬送部54により送られる原料の流動を堰き止めるように機能する。すなわち、障壁部55は、原料の搬送方向の下流側で搬送部54と隣り合うとともに、搬送部54によって送られる原料がフライト57の頂部とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過するのを妨げるように構成されている。
【0065】
さらに、上記したスクリュ21において、各フライト56,57,58は、互いに同一の外径D1を有する複数の筒体39の外周面から搬送路53に向けて張り出している。このため、各筒体39の周方向に沿う外周面は、当該スクリュ21の谷径を規定する。スクリュ21の谷径は、スクリュ21の全長に亘って一定値に保たれている。
【0066】
図5ないし
図7、
図10に示すように、スクリュ本体37は、スクリュ本体37の内部に、軸方向に延びる複数の通路60を有している。通路60は、一つの障壁部55と、当該障壁部55を挟んだ二つの搬送部54とを一つのユニットとした時に、これら一組の搬送部54の筒体39と、障壁部55の筒体39との間に跨って形成されている。
【0067】
この場合、通路60は、スクリュ本体37の軸方向に沿って、所定の間隔(例えば、等間隔)で並んでいる。そして、スクリュ本体37の軸方向に沿う中間部分では、スクリュ本体37の軸方向に延びる四つの通路60がスクリュ本体37の周方向に90°の間隔を存して並んでいる。
【0068】
さらに、通路60は、筒体39の内部において、回転軸38の軸線O1から偏心した位置に設けられている。言い換えると、通路60は、軸線O1から外れており、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1の回りを公転するようになっている。
【0069】
図8および
図9に示すように、通路60は、例えば円形の断面形状を有する孔である。当該孔の内径は、例えば、1mm以上かつ6mm未満、好ましくは、1mm以上かつ5mm未満に設定されている。さらに、搬送部54および障壁部55の筒体39は、孔を規定する筒状の壁面61を有している。すなわち、通路60は、中空の空間のみから成る孔であって、壁面61は、中空の通路60を周方向に連続して取り囲んでいる。これにより、通路60は、原料の流通のみを許容する中空の空間として構成されている。換言すると、通路60の内部には、スクリュ本体37を構成する他の要素は一切存在しない。さらに、壁面61は、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0070】
図5、
図6、
図11に示すように、各通路60は、入口62、出口63、入口62と出口63との間を連通する通路本体64を有している。入口62および出口63は、一つの障壁部55の両側から離間して設けられている。具体的には、当該障壁部55に対してスクリュ本体37の基端の側から隣接した搬送部54において、入口62は、当該搬送部54の下流端の付近の外周面に開口されている。また、当該障壁部55に対してスクリュ本体37の先端の側から隣接した搬送部54において、出口63は、当該搬送部54の上流端の付近の外周面に開口されている。
【0071】
通路本体64は、スクリュ本体37の軸方向に沿って、途中で分岐することなく、一直線状に延びている。一例として図面には、通路本体64が軸線O1と平行に延びている状態が示されている。通路本体64の両側は、軸方向に閉塞されている。
【0072】
入口62は、通路本体64の一方側、すなわち、スクリュ本体37の基端寄りの部分に設けられている。この場合、入口62は、通路本体64の一方側の端面からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよいし、あるいは、通路本体64の一方側の端面寄りの部分、すなわち端面の手前の部分からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよい。なお、入口62の開口方向は、軸線O1に直交する方向に限らず、軸線O1を交差する方向でもよい。この場合、通路本体64の一方側から複数方向に開口し、これにより、複数の入口62を設けるようにしてもよい。
【0073】
別の捉え方をすると、入口62は、前記一つのユニット毎に、障壁部55よりもスクリュ本体37の基端の方向に離間した搬送部54の外周面に開口されている。入口62は、搬送部54を構成する筒体39に外周面上において、スクリュ本体37の基端の方向に最も遠ざかった位置に設けることが望ましい。これにより、入口62は、当該入口62が開口された搬送部54に対して、スクリュ本体37の基端の方向で、隣り合う障壁部55の直前に位置される。
【0074】
出口63は、通路本体64の他方側(一方側とは反対側)、すなわち、スクリュ本体37の先端寄りの部分に設けられている。この場合、出口63は、通路本体64の他方側の端面からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよいし、あるいは、通路本体64の他方側の端面寄りの部分、すなわち端面の手前の部分からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよい。なお、出口63の開口方向は、軸線O1に直交する方向に限らず、軸線O1を交差する方向でもよい。この場合、通路本体64の一方側から複数方向に開口し、これにより、複数の出口63を設けるようにしてもよい。
【0075】
別の捉え方をすると、出口63は、前記一つのユニット毎に、その障壁部55よりもスクリュ本体37の先端の方向に離間した搬送部54の外周面に開口されている。出口63は、搬送部54を構成する筒体39の外周面上において、スクリュ本体37の先端の方向に最も遠ざかった位置に設けることが望ましい。
【0076】
これら入口62と出口63との間を結ぶ通路本体64は、前記一つのユニット毎に障壁部55を横切るとともに、当該障壁部55を挟んだ二つの搬送部54の間に跨る長さを有している。この場合、通路本体64の口径は、入口62および出口63の口径よりも小さく設定してもよいし、同一の口径に設定してもよい。いずれの場合でも、当該通路本体64の口径によって規定される通路断面積は、上記した円環形の搬送路53の径方向に沿う円環断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0077】
本実施形態において、フライト56,57,58が形成された複数の筒体39を回転軸38から取り外してスクリュ21を分解した際に、少なくともフライト56,57,58の一部が形成された筒体39は、上記したスクリュエレメントと言い換えることができる。
【0078】
そうすると、スクリュ21のスクリュ本体37は、回転軸38の外周上にスクリュエレメントとしての複数の筒体39を順次配置することで構成することができる。このため、例えば原料の混練度合いに応じて搬送部54および障壁部55の交換や組み換えが可能であるとともに、交換・組み換え時の作業を容易に行なうことが可能となる。
【0079】
さらに、複数の筒体39を第2の軸部41の軸方向に締め付けて隣り合う筒体39の端面を互いに密着させることで、通路60の通路本体64が形成され、当該通路本体64を介して通路60の入口62から出口63までが一体的に連通される。このため、スクリュ本体37に通路60を形成するに当たっては、スクリュ本体37の全長に比べて長さが大幅に短い個々の筒体39に加工を施せばよい。よって、通路60を形成する際の作業性および取扱いが容易となる。
【0080】
このような構成の連続式高せん断加工装置1によると、第1の押出機2は、複数の樹脂を予備的に混練する。この混練により樹脂は、流動性を有する原料となって、当該第1の押出機2から第2の押出機3の供給口34を介して、搬送路53に連続的に供給される。
【0081】
第2の押出機3に供給された原料は、
図10の矢印Bで示すように、スクリュ本体37の基端に側に位置された搬送部54の外周面に投入される。このとき、スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転すると、搬送部54のフライト56は、当該原料を、
図10の実線の矢印で示すように、スクリュ本体37の基端に隣り合った障壁部55に向けて連続的に搬送する。
【0082】
このとき、搬送路53に沿って旋回するフライト56と、シリンダ部33の内周面との間の速度差によって生じるせん断作用が原料に付与されるとともに、フライト56の微妙な捩じれ具合により原料が攪拌される。この結果、原料が本格的に混練され、原料の高分子成分の分散化が進行する。
【0083】
せん断作用を受けた原料は、搬送路53に沿って搬送部54と障壁部55との間の境界に達する。障壁部55のフライト57は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように右方向に捩じれている。この結果、当該フライト57によって原料の搬送が堰き止められる。言い換えると、障壁部55のフライト57は、スクリュ21が左回転した時に、フライト56によって搬送される原料の流動を制限することで、原料が障壁部55とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通り抜けるのを妨げる。
【0084】
このとき、搬送部54と障壁部55との境界で原料の圧力が高まる。具体的に説明すると、
図11には、搬送路53のうちスクリュ本体37の搬送部54に対応した箇所の原料の充満率がグラデーションで表されている。すなわち、当該搬送路53において、色調が濃くなる程に原料の充満率が高くなっている。
図11から明らかなように、搬送部54に対応した搬送路53において、障壁部55に近づくに従い原料の充満率が高まっており、障壁部55の直前で、原料の充満率が100%となっている。
【0085】
このため、障壁部55の直前で、原料の充満率が100%となる「原料溜まりR」が形成される。原料溜まりRでは、原料の流動が堰き止められたことで、当該原料の圧力が上昇している。圧力が上昇した原料は、
図10および
図11に破線の矢印で示すように、搬送部54の外周面に開口された入口62から通路本体64に連続的に流入し、当該通路本体64内を、スクリュ本体37の基端から先端に向けて連続的に流通する。
【0086】
上記したように、通路本体64の口径によって規定される通路断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路53の円環断面積よりも遥かに小さい。別の捉え方をすると、通路本体64の口径に基づく広がり領域は、円環形状の搬送路53の広がり領域よりも遥かに小さい。このため、入口62から通路本体64に流入する際に、原料が急激に絞られることで、当該原料に伸長作用が付与される。
【0087】
さらに、通路断面積が円環断面積よりも十分に小さいため、原料溜まりRに溜まった原料が消滅することはない。すなわち、原料溜まりRに溜まった原料は、その一部が連続的に入口62に流入する。この間、新たな原料が、フライト56によって、障壁部55に向けて送り込まれる。この結果、原料溜まりRにおける障壁部55の直前の充満率は、常に100%に維持される。このとき、フライト56による原料の搬送量に多少の変動が生じたとしても、その変動状態が、原料溜まりRに残存した原料で吸収される。これにより、原料を、連続して安定的に通路60に供給することができる。よって、当該通路60において、原料に対し、途切れること無く連続的に伸長作用を付与することができる。
【0088】
通路本体64を通過した原料は、
図11に実線の矢印で示すように、出口63から流出する。これにより、当該原料は、障壁部55に対しスクリュ本体37の先端の側で隣り合う他の搬送部54の外周面上に連続的に帰還する。帰還した原料は、搬送部54のフライト56によってスクリュ本体37の基端の方向に連続的に搬送され、この搬送の過程で再びせん断作用を受ける。せん断作用を受けた原料は、入口62から通路本体64に連続的に流入するとともに、当該通路本体64を流通する過程で再び伸長作用を受ける。
【0089】
本実施形態では、複数の搬送部54および複数の障壁部55がスクリュ本体37の軸方向に交互に並んでいるとともに、複数の通路60がスクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。このため、供給口34からスクリュ本体37に投入された原料は、
図10および
図11に矢印で示すように、せん断作用および伸長作用を交互に繰り返し受けながらスクリュ本体37の基端から先端の方向に連続的に搬送される。よって、原料の混練の度合いが強化され、原料の高分子成分の分散化が促進される。
【0090】
そして、スクリュ本体37の先端に達した原料は、十分に混練された混練物となって通路60の出口63から流出する。流出した混練物は、吐出用搬送部59のフライト58によって、シリンダ部33とヘッド部36との間の隙間に連続的に搬送された後、吐出口36aから第3の押出機4に連続的に供給される。
【0091】
第3の押出機4では、既に述べたように、混練物に含まれるガス状物質やその他の揮発成分が混練物から連続的に除去される。ガス状物質やその他の揮発成分が取り除かれた混練物は、ヘッド部27の吐出口28から高せん断加工装置1の外に連続的に吐出される。吐出された混練物は、水槽内に蓄えられた冷却水に浸漬される。これにより、混練物が強制的に冷却されて、所望の樹脂成形品が得られる。
【0092】
以上、第1の実施形態によれば、第2の押出機3では、第1の押出機2から供給された原料がスクリュ本体37の軸方向に複数回に亘って反転を繰り返しながら搬送され、この搬送の過程で原料にせん断作用および伸長作用が繰り返し付与される。言い換えると、原料がスクリュ本体37の外周面上の同一の箇所で何回も循環することがないので、原料を第2の押出機3から第3の押出機4に間断なく供給することができる。
【0093】
これにより、十分に混練された混練物を連続的に成形することができ、バッジ式の押出機との比較において、混練物の生産効率を飛躍的に高めることができる。
【0094】
それとともに、本実施形態では、第1の押出機2で予備的に混練された樹脂が途切れることなく第2の押出機3に供給され続ける。このため、第1の押出機2の内部で樹脂の流れが一時的に滞ることはない。これにより、混練された樹脂が第1の押出機2の内部に滞ることで生じる樹脂の温度変化、粘度変化あるいは相変化を防止することができる。この結果、常に品質が均一の原料を、第1の押出機2から第2の押出機3に供給することができる。
【0095】
さらに、第1の実施形態によれば、見かけ上の連続生産では無く、混練物の完全連続生産が可能となる。すなわち、第1の押出機2から第2の押出機3および第3の押出機4に亘って、原料を絶え間なく連続的に搬送しながら、第2の押出機3において原料に対してせん断作用と伸長作用とを交互に付与することができる。かかる構成によれば、第1の押出機2から第2の押出機3には、溶融状態の原料が安定して供給される。
【0096】
さらに、第1の実施形態によれば、完全連続生産する上で、第1の押出機2と第2の押出機3の運転条件を相互に関連付けながら、それぞれを最適な運転条件に設定することができる。例えば、第1の押出機2で樹脂を予備的に混練する際は、スクリュ回転数を従来の100rpmから300rpmで運転できる。このため、樹脂の十分な加熱と溶融、並びに、予備的な混練が可能となる。一方、第2の押出機3は、スクリュ21を600rpmから3000rpmの高速で回転させることが可能となる。このため、樹脂に対して、せん断作用と伸長作用を交互に効果的に付与することができる。
【0097】
これに伴い、第1の押出機2および第2の押出機3は、それぞれの役割ないし機能に応じたスクリュを備えればよい。すなわち、第1の押出機2の場合には、供給された材料を予備的に混練する役割ないし機能に応じたスクリュ7a,7bを備えればよい。一方、第2の押出機3の場合には、第1の押出機2から供給された溶融状態の原料にせん断作用と伸長作用を付与する役割ないし機能に応じたスクリュ21を備えればよい。これにより、第1の押出機2および第2の押出機3の長尺化を防止することができる。
【0098】
ここで、上記した完全連続生産にて、せん断作用と伸長作用を交互に付与して原料を混練した場合について、その混練物に対する高分散確認試験の結果について述べる。
試験に際し、スクリュ有効長(L/D)50に対する混練部12の有効長(L/D)を7.9に設定した第1の押出機2にポリカーボネート樹脂(PC)、および、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の二種類の材料を供給し、予備的に混練することで溶融状態の材料を生成した。そして、その溶融状態の材料を、第2の押出機3の原料として、第1の押出機2から第2の押出機3に連続的に供給した。
【0099】
当該試験において、スクリュ21を、上記したせん断・伸長動作が10回繰り返されるように構成する。そして、スクリュ21の仕様を次のように設定する。すなわち、スクリュ径を36mm、スクリュ有効長(L/D)を25、スクリュ回転数を1400rpm、原料供給量を1.4kg/h、バレル設定温度を260℃に、それぞれ設定する。
かかる試験によれば、目的とした透明な混練物を連続して得ることができた。
【0100】
第1の実施形態によると、原料に伸長作用を付与する通路60は、スクリュ本体37の回転中心となる軸線O1に対し偏心した位置でスクリュ本体37の軸方向に延びているので、通路60は、軸線O1の回りを公転する。言い換えると、通路60を規定する筒状の壁面61は、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0101】
このため、原料が通路60を通過する際に、原料は遠心力を受けるものの当該原料が通路60の内部で活発に攪拌されることはない。よって、通路60を通過する原料がせん断作用を受け難くなり、通路60を通過して搬送部54の外周面に帰還する原料が受けるのは主に伸長作用となる。
【0102】
したがって、第1の実施形態のスクリュ21によれば、原料にせん断作用を付与する箇所および原料に伸長作用を付与する箇所を明確に定めることができる。このことから、原料の混練の度合いを見極める上で有利な構成となるとともに、混練の度合いを精度よく制御することができる。この結果、原料の高分子成分がナノ分散化された微視的な分散構造を有する混練物を生成することが可能となる。
【0103】
加えて、複数の通路60の全てが軸線O1に対し偏心しているので、複数の通路60を通過する原料に均等に伸長作用を付与することができる。すなわち、複数の通路60の間での混練の条件のばらつきを解消することができ、均一な混練を行なうことができる。
【0104】
さらに、本実施形態に係るスクリュ21では、一つの障壁部55と、その両側に隣接した二つの搬送部54と、これら搬送部54から障壁部55に亘って形成された少なくとも1本の通路60と、を一つのユニットとした場合、当該ユニットが一定の規則性を有して軸方向(スクリュ21の長手方向)に沿って設けられている。
【0105】
この一つのユニットは、原料を混練するための最少単位として、軸方向に沿って一定の長さを有する「スクリュ要素」と捉えることができる。本実施形態に係るスクリュ21においては、かかる「スクリュ要素」と障壁部55とが交互に並べて配置されている。換言すると、「スクリュ要素」は、障壁部55を介して等間隔に配置されている。
【0106】
これにより、各「スクリュ要素」ごとに生じる各種状態、例えば“圧力上昇”や、それに伴う“温度上昇”なども、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に表れる。“圧力上昇”については、例えば、搬送部54によって搬送された原料が障壁部55によって堰き止められた部分(原料溜まりR)で顕著に表れ、当該“原料溜まりR”の位置が、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に表れる。
【0107】
さらに、各「スクリュ要素」には、原料に対してせん断作用を付与する部分(搬送部54)と、原料に対して伸長作用を付与する部分(通路60)が含まれ、これらの部分も、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に構成される。
【0108】
この場合、上記した複数のバレルブロック31a,31b,31cのうち、バレル20の両端のバレルブロック31a,31cを除いた中間の各バレルブロック31bについて、これらを、それぞれ、スクリュ21の長手方向に沿った各「スクリュ要素」の長さに対応させて構成することが好ましい。
【0109】
バレルブロック31bと「スクリュ要素」とを対応させる方策として、例えば、スクリュの長手方向に沿ったバレルブロック31bの長さと、スクリュ21の長手方向に沿った「スクリュ要素」の長さとを対応付ける場合が想定される。この場合、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの整数倍に設定してもよいし、あるいは、整数分の1に設定してもよい。さらに、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの等倍に設定してもよい。
【0110】
図面には一例として、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの等倍に設定したスクリュ21の構成が示されている。すなわち、一つのバレルブロック31bの長さの範囲内に、上記した「スクリュ要素」の一つが対応付けられている。具体的には、一つのバレルブロック31bの長さは、一つの「スクリュ要素」の両側に隣接した二つの障壁部55の中央部分相互に亘る範囲に設定されている。
【0111】
ここで、例えば、3つの「スクリュ要素」を一定の規則性、すなわち、等間隔に軸方向(スクリュ21の長手方向)に沿って設ける場合を想定すると、当該スクリュ21の基端と先端との間において、「スクリュ要素」と障壁部55とが交互に3回繰り返されて配置されている。
【0112】
このとき、バレル20については、かかるスクリュ21を回転可能に挿通されるシリンダ部33を構成するために、両端に配置されるバレルブロック31a,31cの間に、3つのバレルブロック31bを介在させ、その状態で、上記した連結棒201によって相互に一体化させればよい。
【0113】
これにより、当該バレル20は、3つの「スクリュ要素」の規則性を考慮したバレル構造となる。このとき、上記したスクリュ21をバレル20のシリンダ部33に回転可能に挿通させた状態において、一つの「スクリュ要素」に対して一つのバレルブロック31bが対峙する位置関係が構成される。
【0114】
かかる構成によれば、スクリュ21を回転させて原料を混練する際に、上記した「スクリュ要素」ごとに生じる各種状態(例えば、圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、各バレルブロック31bにおいて、それぞれ、スクリュ21の長手方向に沿った特定の位置に規定されることになる。
【0115】
例えば、搬送部54によって搬送された原料が障壁部55によって堰き止められた状態を想定すると、このとき、搬送部54と障壁部55との境界では、“原料溜まりR”と称する状態が表れる。さらに、搬送部54と障壁部55との境界では、原料の圧力が高まることで、“圧力上昇”ないし“温度上昇”と称する状態が表れる。
【0116】
このような各種状態(圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、各「スクリュ要素」のスクリュ21の長手方向において、常に、一定の位置に表れる。そうなると、当該各「スクリュ要素」と対峙する位置関係にある各バレルブロック31bにおいて、各種状態(圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、必然的に、各バレルブロック31bのスクリュ21の長手方向において、常に、特定の位置に規定されることになる。
【0117】
従って、当該「特定の位置」に、例えば上記した温度センサ204や圧力センサ205などの測定素子を配置することで、原料の混練中に生じる圧力や温度の変化をダイレクトかつリアルタイムに測定することができる。そして、測定結果に基づいて、例えば、上記したヒータ200のON/OFF制御や冷媒通路35への冷媒の流動制御を行うことで、バレル20の温度を、原料の混練に最適な状態に維持することができる。
【0118】
「特定の位置」は、バレルブロック31bごとに、事前に把握することができる。よって、例えば、バレルブロック31bの製造段階で、上記した測定素子を取り付けるための取り付け孔(図示しない)をあらかじめ形成することができる。これにより、当該「特定の位置」に、上記した測定素子を取り付けるだけで、スクリュ要素ごとに生じる各種状態をダイレクトかつリアルタイムに測定することが可能となる。
【0119】
図面には一例として、通路60の入口62に対向するように、温度センサ204および圧力センサ205が配置され、さらに、障壁部55の両側に隣接した二つの搬送部54に対向するように、ヒータ200および冷媒通路35が配置されたバレルブロック31bが示されているが、これはあくまで一例であり、各「スクリュ要素」の範囲内で自由に配置することができる。
【0120】
このように、バレルブロック31bを、スクリュ21の長手方向に沿った「スクリュ要素」の長さに対応させて構成することで、当該「スクリュ要素」の規則性を考慮したバレル構造に容易に変更することが可能なバレル20を実現することができる。例えば、「スクリュ要素」を一つ増やす場合には、それに対応させて、バレルブロック31bを一つ増やせばよく、逆に、「スクリュ要素」を一つ減らす場合には、それに対応させて、バレルブロック31bを一つ減らせばよい。
【0121】
これにより、スクリュ21の構成の変更や、それに伴うスクリュ長の変更があっても、バレルブロック31bの追加や削除だけで対応することができる。このため、シリンダ部33の長さに合わせて、当該スクリュ21の長さを微調整するなど、従来では必要となっていた面倒な作業が一切不要となる。
【0122】
さらに、「スクリュ要素」の規則性を考慮したバレル構造に変更しても、それによって実現される第2の押出機3は、変更前のものと同様に、第1の押出機(処理機)と第3の押出機(脱泡機)4との間に接続させることができる。
【0123】
さらに、「スクリュ要素」の規則性を考慮したバレル構造とすることで、温度管理や圧力管理を、一つの「スクリュ要素」を含む一つのゾーンごとに行うことができる。実際の混練では、原料の搬送方向に沿って温度や圧力がランダムに変動するため、ゾーンごとに温度や圧力の管理を行うことで、温度や圧力の変動に対応することができる。
【0124】
なお、上記した実施形態では、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの等倍に設定したスクリュ21を想定したが、これに代えて、整数倍(例えば、2倍)に設定した場合、一つのバレルブロック31bを増減させると、二つの「スクリュ要素」を同時に増減させる点に留意すべきである。また、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの整数分の1倍(例えば、1/2倍)に設定した場合、一つの「スクリュ要素」を増減させるためには、二つのバレルブロック31bを増減させる必要がある点に留意すべきである。
【0125】
[第2の実施形態]
図12ないし
図17は、第2の実施形態を開示している。第2の実施形態は、スクリュ本体37に関する事項が第1の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0126】
図12および
図13に示すように、スクリュ本体37を構成する複数の円筒状の筒体39は、第1の実施形態と同様に、第1のカラー44と第2のカラー51との間で第2の軸部41の軸方向に締め付けられ、隣り合う筒体39の端面が隙間なく密着されている。
【0127】
このとき、全ての筒体39が第2の軸部41上で同軸状に結合されているとともに、当該各筒体39と回転軸38とが一体的に組み立てられた状態となる。これにより、各筒体39を回転軸38とともに軸線O1を中心に回転させること、すなわち、スクリュ本体37を軸線O1を中心に回転させることが可能となる。
【0128】
かかる状態において、各筒体39は、スクリュ本体37の外径D1(
図14参照)を規定する構成要素となる。すなわち、第2の軸部41に沿って同軸状に結合された各筒体39は、その外径D1が互いに同一に設定されている。スクリュ本体37(各筒体39)の外径D1は、回転軸38の回転中心である軸線O1を通って規定される直径である。
【0129】
これにより、スクリュ本体37(各筒体39)の外径D1が一定値であるセグメント式のスクリュ21が構成される。セグメント式のスクリュ21は、回転軸38(すなわち、第2の軸部41)に沿って、複数のスクリュエレメントを、自由な順番および組み合わせで保持させることができる。スクリュエレメントとしては、例えば、少なくとも後述するフライト84,86の一部が形成された筒体39を、1つのスクリュエレメントとして規定することができる。
【0130】
このように、スクリュ21をセグメント化することで、例えば、当該スクリュ21の仕様の変更や調整、あるいは、保守やメンテナンスについて、その利便性を格段に向上させることができる。
【0131】
さらに、セグメント式のスクリュ21は、バレル20のシリンダ部33に同軸状に収容されている。具体的には、複数のスクリュエレメントが回転軸38(第2の軸部41)に沿って保持されたスクリュ本体37が、シリンダ部33に回転可能に収容されている。この状態において、回転軸38の第1の軸部40(継手部42、ストッパ部43)は、バレル20の一端部からバレル20の外に突出されている。
【0132】
さらに、この状態において、スクリュ本体37の周方向に沿う外周面と、シリンダ部33の内周面との間には、原料を搬送するための搬送路53が形成されている。搬送路53は、シリンダ部33の径方向に沿う断面形状が円環形であり、シリンダ部33の軸方向に延びている。
【0133】
図12ないし
図15に示すように、スクリュ本体37は、原料を搬送するための複数の搬送部81と、原料の流動を制限するための複数の障壁部82と、を有している。すなわち、バレル20の一端部に対応するスクリュ本体37の基端に複数の搬送部81が配置され、バレル20の他端部に対応するスクリュ本体37の先端に複数の搬送部81が配置されている。さらに、これら搬送部81の間において、スクリュ本体37の基端から先端に向かって、搬送部81と障壁部82とが軸方向に交互に並べて配置されている。
なお、バレル20の供給口34は、スクリュ本体37の基端の側に配置された搬送部81に向けて開口している。
【0134】
各搬送部81は、螺旋状に捩じれたフライト84を有している。フライト84は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。フライト84は、スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転した時に、当該スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、フライト84は、当該フライト84の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0135】
各障壁部82は、螺旋状に捩じれたフライト86を有している。フライト86は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。フライト86は、スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転した時に、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、フライト86は、当該フライト86の捩じれ方向が左ねじと同じように左に捩じれている。
【0136】
各障壁部82のフライト86の捩じれピッチは、搬送部81のフライト84の捩じれピッチと同じか、それよりも小さく設定されている。さらに、フライト84,86の頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間には、僅かなクリアランスが確保されている。この場合、障壁部82の外径部(フライト86の頂部)と、シリンダ部33の内周面との間のクリアランスは、0.1mm以上かつ2mm以下の範囲に設定することが好ましい。さらに好ましくは、当該クリアランスを、0.1mm以上かつ0.7mm以下の範囲に設定する。これにより、原料が当該クリアランスを通過して搬送されるのを確実に制限することができる。
【0137】
ここで、スクリュ本体37の軸方向に沿う搬送部81の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量などに応じて適宜設定される。搬送部81とは、少なくとも筒体39の外周面にフライト84が形成された領域のことであるが、フライト84の始点と終点との間の領域に特定されるものではない。
【0138】
すなわち、筒体39の外周面のうちフライト84から外れた領域も搬送部81とみなされることがある。例えば、フライト84を有する筒体39と隣り合う位置に円筒状のスペーサあるいは円筒状のカラーが配置された場合、当該スペーサやカラーも搬送部81に含まれることがあり得る。
【0139】
さらに、スクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部82の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。障壁部82は、搬送部81により送られる原料の流動を堰き止めるように機能する。すなわち、障壁部82は、原料の搬送方向の下流側で搬送部81と隣り合うとともに、搬送部81によって送られる原料がフライト86の頂部とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過するのを妨げるように構成されている。
【0140】
さらに、上記したスクリュ21において、各フライト84,86は、互いに同一の外径D1を有する複数の筒体39の外周面から搬送路53に向けて張り出している。このため、各筒体39の周方向に沿う外周面は、当該スクリュ21の谷径を規定する。スクリュ21の谷径は、スクリュ21の全長に亘って一定値に保たれている。
【0141】
図12、
図13、
図16に示すように、スクリュ本体37は、スクリュ本体37の軸方向に延びる複数の通路88を有している。通路88は、一つの障壁部82と、当該障壁部82を挟んだ二つの搬送部81とを一つのユニットとした時に、双方の搬送部81の筒体39と障壁部82の筒体39との間に跨って形成されている。この場合、通路88は、スクリュ本体37の軸方向に沿った同一の直線上において、所定の間隔(例えば、等間隔)で一列に並んでいる。
【0142】
さらに、通路88は、筒体39の内部において、回転軸38の軸線O1から偏心した位置に設けられている。言い換えると、通路88は、軸線O1から外れており、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1の回りを公転するようになっている。
【0143】
図14に示すように、通路88は、例えば円形の断面形状を有する孔である。当該孔の内径は、例えば、1mm以上かつ6mm未満、好ましくは、1mm以上かつ5mm未満に設定されている。さらに、搬送部81および障壁部82の筒体39は、孔を規定する筒状の壁面89を有している。すなわち、通路88は、中空の空間のみから成る孔であって、壁面89は、中空の通路88を周方向に連続して取り囲んでいる。これにより、通路88は、原料の流通のみを許容する中空の空間として構成されている。換言すると、通路88の内部には、スクリュ本体37を構成する他の要素は一切存在しない。さらに、壁面89は、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0144】
図12、
図13、
図17に示すように、各通路88は、入口91、出口92、入口91と出口92との間を連通する通路本体93を有している。入口91および出口92は、一つの障壁部82の両側に接近して設けられている。別の捉え方をすると、隣り合う二つの障壁部82の間に隣接した一つの搬送部81において、入口91は、当該搬送部81の下流端の付近の外周面に開口されているとともに、出口92は、当該搬送部81の上流端の付近の外周面に開口されている。
【0145】
通路本体93は、スクリュ本体37の軸方向に沿って、途中で分岐することなく、一直線状に延びている。一例として図面には、通路本体93が軸線O1と平行に延びている状態が示されている。通路本体93の両側は、軸方向に閉塞されている。
【0146】
入口91は、通路本体93の一方側、すなわち、スクリュ本体37の基端寄りの部分に設けられている。この場合、入口91は、通路本体93の一方側の端面からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよいし、あるいは、通路本体93の一方側の端面寄りの部分、すなわち端面の手前の部分からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよい。なお、入口91の開口方向は、軸線O1に直交する方向に限らず、軸線O1を交差する方向でもよい。この場合、通路本体93の一方側から複数方向に開口し、これにより、複数の入口91を設けるようにしてもよい。
【0147】
出口92は、通路本体93の他方側(一方側とは反対側)、すなわち、スクリュ本体37の先端寄りの部分に設けられている。この場合、出口92は、通路本体93の他方側の端面からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよいし、あるいは、通路本体93の他方側の端面寄りの部分、すなわち端面の手前の部分からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよい。なお、出口92の開口方向は、軸線O1に直交する方向に限らず、軸線O1を交差する方向でもよい。この場合、通路本体93の一方側から複数方向に開口し、これにより、複数の出口92を設けるようにしてもよい。
【0148】
これら入口91と出口92との間を結ぶ通路本体93は、前記一つのユニット毎に障壁部82を横切るとともに、当該障壁部82を挟んだ二つの搬送部81の間に跨る長さを有している。この場合、通路本体93の口径は、入口91および出口92の口径よりも小さく設定してもよいし、同一の口径に設定してもよい。いずれの場合でも、当該通路本体93の口径によって規定される通路断面積は、上記した円環形の搬送路53の径方向に沿う円環断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0149】
本実施形態において、フライト84,86が形成された複数の筒体39を回転軸38から取り外してスクリュ21を分解した際に、少なくともフライト84,86の一部が形成された筒体39は、上記したスクリュエレメントと言い換えることができる。
【0150】
そうすると、スクリュ21のスクリュ本体37は、回転軸38の外周上にスクリュエレメントとしての複数の筒体39を順次配置することで構成することができる。このため、例えば原料の混練度合いに応じて搬送部81および障壁部82の交換や組み換えが可能であるとともに、交換・組み換え時の作業を容易に行なうことが可能となる。
【0151】
さらに、複数の筒体39を第2の軸部41の軸方向に締め付けて隣り合う筒体39の端面を互いに密着させることで、通路88の通路本体93が形成され、当該通路本体93を介して通路88の入口91から出口92までが一体的に連通される。このため、スクリュ本体37に通路88を形成するに当たっては、スクリュ本体37の全長に比べて長さが大幅に短い個々の筒体39に加工を施せばよい。よって、通路88を形成する際の作業性および取扱いが容易となる。
【0152】
このような構成の連続式高せん断加工装置1によると、第1の押出機2は、複数の樹脂を予備的に混練する。この混練により溶融された樹脂は、流動性を有する原料となって、当該第1の押出機2から第2の押出機3の供給口34を介して、搬送路53に連続的に供給される。
【0153】
第2の押出機3に供給された原料は、
図16に矢印Cで示すように、スクリュ本体37の基端の側に位置された搬送部81の外周面に投入される。このとき、スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転すると、搬送部81のフライト84は、当該原料を、
図16の実線の矢印で示すように、スクリュ本体37の先端に向けて連続的に搬送する。
【0154】
このとき、搬送路53に沿って旋回するフライト84とシリンダ部33の内周面との間の速度差によって生じるせん断作用が原料に付与されるとともに、フライト84の微妙な捩じれ具合により原料が攪拌される。この結果、原料が本格的に混練され、原料の高分子成分の分散化が進行する。
【0155】
せん断作用を受けた原料は、搬送路53に沿って搬送部81と障壁部82との間の境界に達する。障壁部82のフライト86は、スクリュ21が左回転した時に、原料をスクリュ本体37の先端から基端に向けて搬送するように左方向に捩じれている。この結果、当該フライト86によって原料の搬送が堰き止められる。言い換えると、障壁部82のフライト86は、スクリュ21が左回転した時に、フライト84によって搬送される原料の流動を制限することで、原料が障壁部82とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通り抜けるのを妨げる。
【0156】
このとき、搬送部81と障壁部82との境界で原料の圧力が高まる。具体的に説明すると、
図17には、搬送路53のうちスクリュ本体37の搬送部81に対応した箇所の原料の充満率がグラデーションで表されている。すなわち、当該搬送路53において、色調が濃くなる程に原料の充満率が高くなっている。
図17から明らかなように、搬送部81に対応した搬送路53において、障壁部82に近づくに従い原料の充満率が高まっており、障壁部82の直前で、原料の充満率が100%となっている。
【0157】
このため、障壁部82の直前で、原料の充満率が100%となる「原料溜まりR」が形成される。原料溜まりRでは、原料の流動が堰き止められたことで、当該原料の圧力が上昇している。圧力が上昇した原料は、
図16および
図17に破線の矢印で示すように、搬送部81の下流端に開口された入口91から通路本体93に連続的に流入し、当該通路本体93内を、スクリュ本体37の基端から先端に向けて連続的に流通する。
【0158】
上記したように、通路本体93の口径によって規定される通路断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路53の円環断面積よりも遥かに小さい。別の捉え方をすると、通路本体93の口径に基づく広がり領域は、円環形状の搬送路53の広がり領域よりも遥かに小さい。このため、入口91から通路本体93に流入する際に、原料が急激に絞られることで、当該原料に伸長作用が付与される。
【0159】
さらに、通路断面積が円環断面積よりも十分に小さいため、原料溜まりRに溜まった原料が消滅することはない。すなわち、原料溜まりRに溜まった原料は、その一部が連続的に入口91に流入する。この間、新たな原料が、フライト84によって、障壁部82に向けて送り込まれる。この結果、原料溜まりRにおける障壁部82の直前の充満率は、常に100%に維持される。このとき、フライト84による原料の搬送量に多少の変動が生じたとしても、その変動状態が、原料溜まりRに残存した原料で吸収される。これにより、原料を、連続して安定的に通路88に供給することができる。よって、当該通路88において、原料に対し、途切れること無く連続的に伸長作用を付与することができる。
【0160】
通路本体93を通過した原料は、
図17に実線の矢印で示すように、出口92から流出する。これにより、当該原料は、障壁部82に対しスクリュ本体37の先端の側で隣り合う他の搬送部81の外周面上に連続的に帰還する。帰還した原料は、他の搬送部81のフライト84によってスクリュ本体37の先端の方向に連続的に搬送され、この搬送の過程で再びせん断作用を受ける。せん断作用を受けた原料は、入口91から通路本体93に連続的に流入するとともに、当該通路本体93を流通する過程で再び伸長作用を受ける。
【0161】
本実施形態では、複数の搬送部81および複数の障壁部82がスクリュ本体37の軸方向に交互に並んでいるとともに、複数の通路88がスクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。このため、供給口34からスクリュ本体37に投入された原料は、
図16および
図17に矢印で示すように、せん断作用および伸長作用を交互に繰り返し受けながらスクリュ本体37の基端から先端の方向に連続的に搬送される。よって、原料の混練の度合いが強化され、原料の高分子成分の分散化が促進される。
【0162】
そして、スクリュ本体37の先端に達した原料は、十分に混練された混練物となって、吐出口36aから第3の押出機4に連続的に供給され、当該混練物に含まれるガス状物質やその他の揮発成分が混練物から連続的に除去される。
【0163】
以上、第2の実施形態によれば、見かけ上の連続生産では無く、混練物の完全連続生産が可能となる。すなわち、第1の押出機2で予備的に混練された樹脂が途切れることなく第2の押出機3に供給され続けるので、第1の押出機2の内部で樹脂の流れが一時的に滞ることはない。このため、混練された樹脂が第1の押出機2の内部に滞ることで生じる樹脂の温度変化、粘度変化あるいは相変化を防止することができる。この結果、常に品質が均一の原料を、第1の押出機2から第2の押出機3に供給することができる。
【0164】
さらに、第2の実施形態によれば、原料に対するせん断作用領域および伸長作用領域の軸方向の長さを個々に設定することができる。このため、原料を混練するのに最適なせん断作用および伸長作用の付与回数および付与時間を設定することができる。
【0165】
さらに、第2の実施形態によれば、原料に伸長作用を付与する通路88は、スクリュ本体37の回転中心となる軸線O1に対し偏心した位置でスクリュ本体37の軸方向に延びているので、通路88は、軸線O1の回りを公転する。言い換えると、通路88を規定する筒状の壁面89は、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0166】
このため、原料が通路88を通過する際に、原料が通路88の内部で活発に攪拌されることはない。よって、通路88を通過する原料がせん断作用を受け難くなり、通路88を通過して搬送部81の外周面に帰還する原料が受けるのは主に伸長作用となる。したがって、第2の実施形態のスクリュ21においても、原料にせん断作用を付与する箇所および原料に伸長作用を付与する箇所を明確に定めることができる。
【0167】
ここで、上記した完全連続生産にて、せん断作用と伸長作用を交互に付与して原料を混練した場合について、その混練物に対する高分散確認試験の結果について述べる。
試験に際し、スクリュ有効長(L/D)50に対する混練部12の有効長(L/D)を7.9に設定した第1の押出機2にポリカーボネート樹脂(PC)、および、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の二種類の材料を供給し、予備的に混練することで溶融状態の材料を生成した。そして、その溶融状態の材料を、第2の押出機3の原料として、第1の押出機2から第2の押出機3に連続的に供給した。
【0168】
当該試験において、スクリュ21を、上記したせん断・伸長動作が8回繰り返されるように構成する。そして、スクリュ21の仕様を次のように設定する。すなわち、スクリュ径を36mm、スクリュ有効長(L/D)を16.7、スクリュ回転数を2300rpm、原料供給量を10.0kg/h、バレル設定温度を240℃にそれぞれ設定する。
かかる試験によれば、目的とした透明な混練物を連続して得ることができた。
【0169】
さらに、本実施形態に係るスクリュ21では、一つの障壁部82と、その両側に隣接した二つの搬送部81と、これら搬送部81から障壁部82に亘って形成された1本の通路88と、を一つのユニットとした場合、当該ユニットが一定の規則性を有して軸方向(スクリュ21の長手方向)に沿って設けられている。
【0170】
この一つのユニットは、原料を混練するための最少単位として、軸方向に沿って一定の長さを有する「スクリュ要素」と捉えることができる。本実施形態に係るスクリュ21においては、かかる「スクリュ要素」が軸方向に沿って等間隔に配置されている。
【0171】
これにより、各「スクリュ要素」ごとに生じる各種状態、例えば“圧力上昇”や、それに伴う“温度上昇”なども、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に表れる。“圧力上昇”については、例えば、搬送部81によって搬送された原料が障壁部82によって堰き止められた部分(原料溜まりR)で顕著に表れ、当該“原料溜まりR”の位置が、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に表れる。
【0172】
さらに、各「スクリュ要素」には、原料に対してせん断作用を付与する部分(搬送部81)と、原料に対して伸長作用を付与する部分(通路88)が含まれ、これらの部分も、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に構成される。
【0173】
本実施形態では、上記した複数のバレルブロック31a,31b,31cのうち、バレル20の両端のバレルブロック31a,31cを除いた中間の各バレルブロック31bについて、これらを、それぞれ、スクリュ21の長手方向に沿った各「スクリュ要素」の長さに対応させて構成している。この場合、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの整数倍に設定してもよいし、あるいは、整数分の1に設定してもよい。さらに、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの等倍に設定してもよい。
【0174】
図面には一例として、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの等倍に設定したスクリュ21の構成が示されている。すなわち、一つのバレルブロック31bの長さの範囲内に、上記した「スクリュ要素」の一つが対応付けられている。具体的には、一つのバレルブロック31bの長さは、一つの「スクリュ要素」において、障壁部82の両側に隣接する搬送部81のうち、少なくとも通路88の入口91および出口92が含まれる範囲に設定されている。
【0175】
ここで、例えば、3つの「スクリュ要素」を一定の規則性、すなわち、等間隔に軸方向(スクリュ21の長手方向)に沿って設ける場合を想定すると、当該スクリュ21の基端と先端との間において、「スクリュ要素」が軸方向に沿って3つ並んで配置されている。
【0176】
このとき、バレル20については、かかるスクリュ21を回転可能に挿通されるシリンダ部33を構成するために、両端に配置されるバレルブロック31a,31cの間に、3つのバレルブロック31bを介在させ、その状態で、上記した連結棒201によって相互に一体化させればよい。
【0177】
これにより、当該バレル20は、3つの「スクリュ要素」の規則性を考慮したバレル構造となる。このとき、上記したスクリュ21をバレル20のシリンダ部33に回転可能に挿通させた状態において、一つの「スクリュ要素」に対して一つのバレルブロック31bが対峙する位置関係が構成される。
【0178】
かかる構成によれば、スクリュ21を回転させて原料を混練する際に、上記した「スクリュ要素」ごとに生じる各種状態(例えば、圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、各バレルブロック31bにおいて、それぞれ、スクリュ21の長手方向に沿った特定の位置に規定されることになる。
【0179】
例えば、搬送部81によって搬送された原料が障壁部82によって堰き止められた状態を想定すると、このとき、搬送部81と障壁部82との境界では、“原料溜まりR”と称する状態が表れる。さらに、搬送部81と障壁部82との境界では、原料の圧力が高まることで、“圧力上昇”ないし“温度上昇”と称する状態が表れる。
【0180】
このような各種状態(圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、各「スクリュ要素」のスクリュ21の長手方向において、常に、一定の位置に表れる。そうなると、当該各「スクリュ要素」と対峙する位置関係にある各バレルブロック31bにおいて、各種状態(圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、必然的に、各バレルブロック31bのスクリュ21の長手方向において、常に、特定の位置に規定されることになる。
【0181】
従って、当該「特定の位置」に、例えば上記した温度センサ204や圧力センサ205などの測定素子を配置することで、原料の混練中に生じる圧力や温度の変化をダイレクトかつリアルタイムに測定することができる。そして、測定結果に基づいて、例えば、上記したヒータ200のON/OFF制御や冷媒通路35への冷媒の流動制御を行うことで、バレル20の温度を、原料の混練に最適な状態に維持することができる。
【0182】
「特定の位置」は、バレルブロック31bごとに、事前に把握することができる。よって、例えば、バレルブロック31bの製造段階で、上記した測定素子を取り付けるための取り付け孔(図示しない)をあらかじめ形成することができる。これにより、当該「特定の位置」に、上記した測定素子を取り付けるだけで、スクリュ要素ごとに生じる各種状態をダイレクトかつリアルタイムに測定することが可能となる。
【0183】
図面には一例として、通路88の入口91に対向するように、温度センサ204および圧力センサ205が配置され、さらに、通路88の入口91および出口92が含まれる範囲に対向するように、ヒータ200および冷媒通路35が配置されたバレルブロック31bが示されているが、これはあくまで一例であり、各「スクリュ要素」の範囲内で自由に配置することができる。
また、上記した構成に起因する作用効果および留意点については、第1の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0184】
[第3の実施形態]
図18ないし
図26は、第3の実施形態を開示している。第3の実施形態は、スクリュ本体37に関する事項が第1の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0185】
図18および
図19に示すように、スクリュ本体37を構成する複数の円筒状の筒体39は、第1の実施形態と同様に、第1のカラー44と第2のカラー51との間で第2の軸部41の軸方向に締め付けられ、隣り合う筒体39の端面が隙間なく密着されている。
【0186】
このとき、全ての筒体39が第2の軸部41上で同軸状に結合されているとともに、当該各筒体39と回転軸38とが一体的に組み立てられた状態となる。これにより、各筒体39を回転軸38とともに軸線O1を中心に回転させること、すなわち、スクリュ本体37を軸線O1を中心に回転させることが可能となる。
【0187】
かかる状態において、各筒体39は、スクリュ本体37の外径D1(
図21参照)を規定する構成要素となる。すなわち、第2の軸部41に沿って同軸状に結合された各筒体39は、その外径D1が互いに同一に設定されている。スクリュ本体37(各筒体39)の外径D1は、回転軸38の回転中心である軸線O1を通って規定される直径である。
【0188】
これにより、スクリュ本体37(各筒体39)の外径D1が一定値であるセグメント式のスクリュ21が構成される。セグメント式のスクリュ21は、回転軸38(すなわち、第2の軸部41)に沿って、複数のスクリュエレメントを、自由な順番および組み合わせで保持させることができる。スクリュエレメントとしては、例えば、少なくとも後述するフライト105,107,110,111,112の一部が形成された筒体39を、1つのスクリュエレメントとして規定することができる。
【0189】
このように、スクリュ21をセグメント化することで、例えば、当該スクリュ21の仕様の変更や調整、あるいは、保守やメンテナンスについて、その利便性を格段に向上させることができる。
【0190】
さらに、セグメント式のスクリュ21は、バレル20のシリンダ部33に同軸状に収容されている。具体的には、複数のスクリュエレメントが回転軸38(第2の軸部41)に沿って保持されたスクリュ本体37が、シリンダ部33に回転可能に収容されている。この状態において、回転軸38の第1の軸部40(継手部42、ストッパ部43)は、バレル20の一端部からバレル20の外に突出されている。
【0191】
さらに、この状態において、スクリュ本体37の周方向に沿う外周面と、シリンダ部33の内周面との間には、原料を搬送するための搬送路53が形成されている。搬送路53は、シリンダ部33の径方向に沿う断面形状が円環形であり、シリンダ部33の軸方向に延びている。
【0192】
図18ないし
図20に示すように、スクリュ本体37は、原料を搬送するための複数の搬送部101と、原料の流動を制限するための複数の障壁部102と、原料を一時的に循環させる複数の循環部103と、を有している。すなわち、バレル20の一端部に対応するスクリュ本体37の基端に複数の搬送部101が配置され、バレル20の他端部に対応するスクリュ本体37の先端に複数の搬送部101が配置されている。さらに、これら搬送部101の間において、スクリュ本体37の基端から先端に向かって、循環部103と障壁部102とが軸方向に交互に並べて配置されている。
なお、バレル20の供給口34は、スクリュ本体37の基端の側に配置された搬送部54に向けて開口している。
【0193】
各搬送部101は、螺旋状に捩じれたフライト105を有している。フライト105は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。フライト105は、スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転した時に、当該スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、フライト105は、当該フライト105の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0194】
各障壁部102は、螺旋状に捩じれたフライト107を有している。フライト107は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。フライト107は、スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転した時に、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、フライト107は、当該フライト107の捩じれ方向が左ねじと同じように左に捩じれている。
【0195】
循環部103は、障壁部102に対して、回転軸38の基端の側から隣接している。各循環部103は、螺旋状に捩じれた第1ないし第3のフライト110,111,112を有している。第1ないし第3のフライト110,111,112は、それぞれ、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路53に向けて張り出している。
【0196】
第1ないし第3のフライト110,111,112は、スクリュ本体37の軸方向に沿って連続して配置されている。スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。すなわち、第1ないし第3のフライト110,111,112は、当該第1ないし第3のフライトの捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0197】
この場合、各障壁部102のフライト107の捩じれピッチは、搬送部101のフライト105および循環部103のフライト110,111,112の捩じれピッチと同じか、それよりも小さく設定されている。さらに、第2のフライト111の捩じれピッチは、第1および第3のフライト110,112の捩じれピッチよりも小さく設定されている。さらに、フライト105,107,110,111,112の頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間には、僅かなクリアランスが確保されている。
【0198】
さらに、第1ないし第3のフライト110,111,112において、第3のフライト112は搬送方向の上流側に配置され、第1のフライト110は搬送方向の下流側に配置されている。第2のフライト111は、第3のフライト112と第1のフライト110との間に配置されている。
【0199】
本実施形態において、各障壁部102は、当該各障壁部102を越えて原料が流動できるように設計されている。具体的には、各障壁部102は、スクリュ21をバレル20のシリンダ部33に回転可能に挿通させた状態において、当該各障壁部102とシリンダ部33との間を原料が通過できるように設計されている。この場合、各障壁部102の外径部(フライト107の頂部)と、シリンダ部33の内周面とのクリアランスは、0.1mm以上かつ3mm以下の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、当該クリアランスを0.1mm以上かつ1.5mm以下の範囲に設定する。
【0200】
ここで、スクリュ本体37の軸方向に沿う搬送部101の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量などに応じて適宜設定される。搬送部101とは、少なくとも筒体39の外周面にフライト105が形成された領域のことであるが、フライト105の始点と終点との間の領域に特定されるものではない。
【0201】
すなわち、筒体39の外周面のうちフライト105から外れた領域も搬送部101とみなされることがある。例えば、フライト101を有する筒体39と隣り合う位置に円筒状のスペーサあるいは円筒状のカラーが配置された場合、当該スペーサやカラーも搬送部101に含まれることがあり得る。
【0202】
さらに、スクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部102の長さは、例えば、原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。本実施形態に係る障壁部102は、搬送部101により送られる原料の流動を堰き止めつつ、その一部の原料が当該障壁部102を越えて流動できるように機能する。
【0203】
さらに、上記したスクリュ21において、各フライト105,107,110,111,112は、互いに同一の外径D1を有する複数の筒体39の外周面から搬送路53に向けて張り出している。このため、各筒体39の周方向に沿う外周面は、当該スクリュ21の谷径を規定する。スクリュ21の谷径は、スクリュ21の全長に亘って一定値に保たれている。
【0204】
図18ないし
図20に示すように、スクリュ本体37は、スクリュ本体37の軸方向に延びる複数の通路115を有している。通路115は、それぞれの循環部103の筒体39に形成されている。この場合、通路115は、スクリュ本体37の軸方向に沿う同一の直線上において、所定の間隔(例えば、等間隔)で一列に並んでいる。
【0205】
さらに、通路115は、筒体39の内部において、回転軸38の軸線O1から偏心した位置に設けられている。言い換えると、通路115は、軸線O1から外れており、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1の回りを公転するようになっている。
【0206】
図21に示すように、通路115は、例えば円形の断面形状を有する孔である。当該孔の内径は、例えば、1mm以上かつ6mm未満、好ましくは、1mm以上かつ5mm未満に設定されている。さらに、循環部103の筒体39は、孔を規定する筒状の壁面116を有している。すなわち、通路115は、中空の空間のみから成る孔であって、壁面116は、中空の通路115を周方向に連続して取り囲んでいる。これにより、通路115は、原料の流通のみを許容する中空の空間として構成されている。換言すると、通路115の内部には、スクリュ本体37を構成する他の要素は一切存在しない。さらに、壁面116は、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0207】
図18、
図19、
図26に示すように、各通路115は、入口117、出口118、入口117と出口118との間を連通する通路本体119を有している。入口117および出口118は、循環部103を構成する筒体39の外周面に開口されている。図面には、通路115の一例が示されている。当該通路115において、通路本体119は、第1のフライト110が形成された筒体39に設けられ、入口117および出口118は、当該筒体39の外周面に開口されている。入口117および出口118の開口位置は、当該筒体39の外周面の範囲内で自由に設定することができる。
【0208】
通路本体119は、スクリュ本体37の軸方向に沿って、途中で分岐することなく、一直線状に延びている。一例として図面には、通路本体119が軸線O1と平行に延びている状態が示されている。通路本体119の両側は、軸方向に閉塞されている。
【0209】
入口117は、通路本体119の一方側、すなわち、スクリュ本体37の先端寄りの部分に設けられている。この場合、入口117は、通路本体119の一方側の端面からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよいし、あるいは、通路本体119の一方側の端面寄りの部分、すなわち端面の手前の部分からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよい。なお、入口117の開口方向は、軸線O1に直交する方向に限らず、軸線O1を交差する方向でもよい。この場合、通路本体119の一方側から複数方向に開口し、これにより、複数の入口117を設けるようにしてもよい。
【0210】
出口118は、通路本体119の他方側(一方側とは反対側)、すなわち、スクリュ本体37の基端寄りの部分に設けられている。この場合、入口118は、通路本体119の他方側の端面からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよいし、あるいは、通路本体119の他方側の端面寄りの部分、すなわち端面の手前の部分からスクリュ本体37の外周面に開口させるようにしてもよい。なお、入口118の開口方向は、軸線O1に直交する方向に限らず、軸線O1を交差する方向でもよい。この場合、通路本体119の一方側から複数方向に開口し、これにより、複数の出口118を設けるようにしてもよい。
【0211】
これら入口117と出口118との間を結ぶ通路本体119は、それぞれの循環部103において、第1のフライト110が形成された筒体39に亘る長さを有している。この場合、通路本体119の口径は、入口117および出口118の口径よりも小さく設定してもよいし、同一の口径に設定してもよい。いずれの場合でも、当該通路本体119の口径によって規定される通路断面積は、上記した円環形の搬送路53の径方向に沿う円環断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0212】
本実施形態において、フライト105,107,110,111,112が形成された複数の筒体39を回転軸38から取り外してスクリュ21を分解した際に、少なくともフライト105,107,110,111,112の一部が形成された筒体39は、上記したスクリュエレメントと言い換えることができる。
【0213】
そうすると、スクリュ21のスクリュ本体37は、回転軸38の外周上にスクリュエレメントとしての複数の筒体39を順次配置することで構成することができる。このため、例えば原料の混練度合いに応じて搬送部101および障壁部102の交換や組み換えが可能であるとともに、交換・組み換え時の作業を容易に行なうことが可能となる。
【0214】
さらに、複数の筒体39を第2の軸部41の軸方向に締め付けて隣り合う筒体39の端面を互いに密着させることで、通路115の通路本体119が形成され、当該通路本体119を介して通路115の入口117から出口118までが一体的に連通される。このため、スクリュ本体37に通路115を形成するに当たっては、スクリュ本体37の全長に比べて長さが大幅に短い個々の筒体39に加工を施せばよい。よって、通路115を形成する際の作業性および取扱いが容易となる。
【0215】
なお、
図22および
図23に示すように、第1のフライト110が形成された筒体39は、通路115の通路本体119を分断するように2分割されている。一方の筒体39tにおいて、分割面39aから軸方向に穿孔された横穴が出口118に連通している。他方の筒体39pにおいて、分割面39bから軸方向に穿孔された横穴が入口117に連通している。かかる構成において、分割面39a,39b同士を当接させることで、両側が筒体39の外周面に開口された一連の通路115が構成されている。
【0216】
なお、他の通路115としては、例えば
図24に示すように、第1のフライト110の筒体39を軸方向に貫通して形成してもよい。この場合、通路115の入口117および出口118は、筒体39の軸方向の両端面を一部凹状に切り欠いた入口溝120および出口溝121の内面に開口されている。かかる構成によれば、筒体39を分割しなくても、当該筒体39に横穴を貫通させるだけで、一連の通路115を構成することができる。
【0217】
このような構成の連続式高せん断加工装置1によると、第1の押出機2は、複数の樹脂を予備的に混練する。この混練により溶融された樹脂は、流動性を有する原料となって、当該第1の押出機2から第2の押出機3の供給口34を介して、搬送路53に連続的に供給される。
【0218】
第2の押出機3に供給された原料は、
図25に矢印Dで示すように、スクリュ本体37の基端の側に位置された搬送部101の外周面に投入される。このとき、スクリュ本体37の基端から見てスクリュ21が逆時計回りに左回転すると、搬送部101のフライト105は、当該原料を、
図25の実線の矢印で示すように、スクリュ本体37の先端に向けて連続的に搬送する。
【0219】
この後、循環部103に到達した原料は、当該循環部103の第1ないし第3のフライト110,111,112によって、
図25および
図26に実線の矢印で示すように、さらにスクリュ本体37の先端の方向に連続的に搬送される。
【0220】
この間、搬送路53に沿って旋回するフライト105,110,111,112とシリンダ部33の内周面との間の速度差によって生じるせん断作用が原料に付与されるとともに、フライト105,110,111,112の微妙な捩じれ具合により原料が攪拌される。この結果、原料が本格的に混練され、原料の高分子成分の分散化が進行する。
【0221】
せん断作用を受けた原料は、搬送路53に沿って循環部103と障壁部102との間の境界に達する。言い換えると、当該原料は、搬送方向の下流側に配置された第1のフライト110によって、循環部103と障壁部102との間の境界に送り込まれる。一方、障壁部102のフライト107は、スクリュ21が左回転した時に、原料をスクリュ本体37の先端から基端に向けて搬送する。
【0222】
この結果、第1のフライト110によって送り込まれた原料は、フライト107によって堰き止められる。言い換えると、障壁部102のフライト107は、スクリュ21が左回転した時に、第1のフライト110によって送り込まれた原料の流動を制限する。
【0223】
このとき、循環部103と障壁部102との境界で原料の圧力が高まる。具体的に説明すると、
図26には、搬送路53のうち通路115に対応した箇所の原料の充満率がグラデーションで表している。すなわち、当該搬送路53において、色調が濃くなる程に原料の充満率が高くなっている。
図26から明らかなように、通路115に対応した搬送路53において、障壁部102に近づくに従い原料の充満率が高まっており、障壁部102の直前で、原料の充満率が100%となっている。
【0224】
このため、障壁部102の直前で、原料の充満率が100%となる原料溜まりRが形成される。原料溜まりRでは、原料の流動が堰き止められたことで、当該原料の圧力が上昇している。圧力が上昇した原料は、
図25および
図26に破線の矢印で示すように、入口117から通路本体119に連続的に流入し、当該通路本体119内を、スクリュ本体37の先端から基端に向けて連続的に流通する。このとき、通路本体119内での原料の流れ方向は、フライト105,110,111,112によって送られる原料の流れ方向に対し逆向きとなる。
【0225】
上記したように、通路本体119の口径によって規定される通路断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路53の円環断面積よりも遥かに小さい。別の捉え方をすると、通路本体119の口径に基づく広がり領域は、円環形状の搬送路53の広がり領域よりも遥かに小さい。このため、入口117から通路本体119に流入する際に、原料が急激に絞られることで、当該原料に伸長作用が付与される。
【0226】
さらに、通路断面積が円環断面積よりも十分に小さいため、原料溜まりRに溜まった原料が消滅することはない。すなわち、原料溜まりRに溜まった原料は、その一部が連続的に入口117に流入する。この間、新たな原料が、第1のフライト110によって、障壁部102に向けて送り込まれる。この結果、原料溜まりRにおける障壁部102の直前の充満率は、常に100%に維持される。このとき、第1のフライト110による原料の搬送量に多少の変動が生じたとしても、その変動状態が、原料溜まりRに残存した原料で吸収される。これにより、原料を、連続して安定的に通路115に供給することができる。よって、当該通路115において、原料に対し、途切れること無く連続的に伸長作用を付与することができる。
【0227】
通路本体119を通過した原料は、
図26に実線の矢印で示すように、出口118から流出する。これにより、当該原料は、循環部103の外周面上に連続的に帰還する。帰還した原料は、第1のフライト110によってスクリュ本体37の先端の側で隣り合う障壁部102に向けて連続的に搬送され、この搬送の過程で再びせん断作用を受ける。
【0228】
この場合、第2のフライト111の捩じれピッチを、第1のフライト110の捩じれピッチよりも小さく設定することで、第2のフライト111が形成された部分に逆流防止機能を持たせることができる。これにより、出口118から循環部103に帰還された原料を漏れなく障壁部102に向けて搬送することができる。
【0229】
本実施形態では、障壁部102に向けて搬送された原料の一部は、再び入口117から通路115に連続的に導かれ、循環部103の箇所で一時的に循環を繰り返す。障壁部102に向けて搬送された残りの原料は、障壁部102のフライト107の頂部とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過して隣り合う循環部103に連続的に流入する。
【0230】
複数の障壁部102および複数の循環部103は、スクリュ本体37の軸方向に沿って交互に並んでいるとともに、循環部103の第1のフライト110に対応した位置に設けられた通路115が、スクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。このため、供給口34からスクリュ本体37に供給された原料は、せん断作用および伸長作用を交互に繰り返し受けながらスクリュ本体37の基端から先端の方向に連続的に搬送される。よって、原料の混練の度合いが強化され、原料の高分子成分の分散化が促進される。
【0231】
そして、スクリュ本体37の先端に達した原料は、十分に混練された混練物となって、吐出口36aから第3の押出機4に連続的に供給され、当該混練物に含まれるガス状物質やその他の揮発成分が混練物から連続的に除去される。
【0232】
以上、第3の実施形態によれば、見かけ上の連続生産では無く、混練物の完全連続生産が可能となる。すなわち、第1の押出機2で予備的に混練された樹脂が途切れることなく第2の押出機3に供給され続けるので、第1の押出機2の内部で樹脂の流れが一時的に滞ることはない。このため、混練された樹脂が第1の押出機2の内部に滞ることで生じる樹脂の温度変化、粘度変化あるいは相変化を防止することができる。この結果、常に品質が均一の原料を、第1の押出機2から第2の押出機3に供給することができる。
【0233】
さらに、第3の実施形態によれば、通路115が形成された循環部103によって、原料に対して、せん断作用と伸長作用とを交互に数回付与することができる。この場合、循環部103を軸方向に沿って複数配置することで、原料に対するせん断作用と伸長作用の付与回数をさらに増加させることができる。
【0234】
さらに、第3の実施形態によれば、原料に伸長作用を付与する通路115は、スクリュ本体37の回転中心となる軸線O1から偏心した位置で、スクリュ本体37の軸方向に延びている。よって、通路115は、軸線O1の回りを公転する。言い換えると、通路115を規定する筒状の壁面116は、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0235】
このため、原料が通路115を通過する際に、原料が通路115の内部で活発に攪拌されることはない。これにより、通路115を通過する原料がせん断作用を受け難くなり、通路115を通過して循環部103の外周面に帰還する原料が受けるのは、主に伸長作用となる。したがって、第3の実施形態のスクリュ21においても、原料にせん断作用を付与する箇所および原料に伸長作用を付与する箇所を明確に定めることができる。
【0236】
ここで、上記した完全連続生産にて、せん断作用と伸長作用を交互に付与して原料を混練した場合について、その混練物に対する高分散確認試験の結果について述べる。
試験に際し、スクリュ有効長(L/D)50に対する混練部12の有効長(L/D)を7.9に設定した第1の押出機2にポリカーボネート樹脂(PC)、および、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の二種類の材料を供給し、予備的に混練することで溶融状態の材料を生成した。そして、その溶融状態の材料を、第2の押出機3の原料として、第1の押出機2から第2の押出機3に連続的に供給した。
【0237】
当該試験において、スクリュ21を、上記した循環部103を軸方向に沿って3か所配置させるとともに、各通路115に原料を通過させるように構成する。そして、スクリュ21の仕様を次のように設定する。すなわち、スクリュ径を36mm、スクリュ有効長(L/D)を16.7、スクリュ回転数を2500rpm、原料供給量を10.0kg/h、バレル設定温度を240℃にそれぞれ設定する。
かかる試験によれば、目的とした透明な混練物を連続して得ることができた。
【0238】
さらに、本実施形態に係るスクリュ21では、循環部103(第1ないし第3のフライト110,111,112が形成された部分)と、第1のフライト110の部分に設けられた通路115と、を一つのユニットとした場合、当該ユニットが一定の規則性を有して軸方向(スクリュ21の長手方向)に沿って設けられている。
【0239】
この一つのユニットは、原料を混練するための最少単位として、軸方向に沿って一定の長さを有する「スクリュ要素」と捉えることができる。本実施形態に係るスクリュ21においては、かかる「スクリュ要素」と障壁部102とが交互に並べて配置されている。換言すると、「スクリュ要素」は、障壁部102を介して等間隔に配置されている。
【0240】
これにより、各「スクリュ要素」ごとに生じる各種状態、例えば“圧力上昇”や、それに伴う“温度上昇”なども、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に表れる。“圧力上昇”については、例えば、第1ないし第3のフライト110,111,112によって搬送された原料が障壁部102によって堰き止められた部分(原料溜まりR)で顕著に表れ、当該“原料溜まりR”の位置が、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に表れる。
【0241】
さらに、各「スクリュ要素」には、原料に対してせん断作用を付与する部分(第1ないし第3のフライト110,111,112が形成された部分)と、原料に対して伸長作用を付与する部分(通路115)が含まれ、これらの部分も、スクリュ21の軸方向に沿って等間隔に構成される。
【0242】
本実施形態では、上記した複数のバレルブロック31a,31b,31cのうち、バレル20の両端のバレルブロック31a,31cを除いた中間の各バレルブロック31bについて、これらを、それぞれ、スクリュ21の長手方向に沿った各「スクリュ要素」の長さに対応させて構成している。この場合、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの整数倍に設定してもよいし、あるいは、整数分の1に設定してもよい。さらに、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの等倍に設定してもよい。
【0243】
図面には一例として、バレルブロック31bの長さを、「スクリュ要素」の長さの等倍に設定したスクリュ21の構成が示されている。すなわち、一つのバレルブロック31bの長さの範囲内に、上記した「スクリュ要素」の一つが対応付けられている。具体的には、一つのバレルブロック31bの長さは、一つの「スクリュ要素」において、上記した第1ないし第3のフライト110,111,112が形成された部分、および、障壁部102のフライト107が形成された部分の双方が含まれる範囲に設定されている。
【0244】
ここで、例えば、3つの「スクリュ要素」を一定の規則性、すなわち、等間隔に軸方向(スクリュ21の長手方向)に沿って設ける場合を想定すると、当該スクリュ21の基端と先端との間において、「スクリュ要素」が軸方向に沿って3つ並んで配置されている。
【0245】
このとき、バレル20については、かかるスクリュ21を回転可能に挿通されるシリンダ部33を構成するために、両端に配置されるバレルブロック31a,31cの間に、3つのバレルブロック31bを介在させ、その状態で、上記した連結棒201によって相互に一体化させればよい。
【0246】
これにより、当該バレル20は、3つの「スクリュ要素」の規則性を考慮したバレル構造となる。このとき、上記したスクリュ21をバレル20のシリンダ部33に回転可能に挿通させた状態において、一つの「スクリュ要素」に対して一つのバレルブロック31bが対峙する位置関係が構成される。
【0247】
かかる構成によれば、スクリュ21を回転させて原料を混練する際に、上記した「スクリュ要素」ごとに生じる各種状態(例えば、圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、各バレルブロック31bにおいて、それぞれ、スクリュ21の長手方向に沿った特定の位置に規定されることになる。
【0248】
例えば、第1ないし第3のフライト110,111,112(循環部103)によって搬送された原料が障壁部102によって堰き止められた状態を想定すると、このとき、循環部103と障壁部102との境界では、“原料溜まりR”と称する状態が表れる。さらに、循環部103と障壁部102との境界では、原料の圧力が高まることで、“圧力上昇”ないし“温度上昇”と称する状態が表れる。
【0249】
このような各種状態(圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、各「スクリュ要素」のスクリュ21の長手方向において、常に、一定の位置に表れる。そうなると、当該各「スクリュ要素」と対峙する位置関係にある各バレルブロック31bにおいて、各種状態(圧力上昇、温度上昇、原料溜まりR)は、必然的に、各バレルブロック31bのスクリュ21の長手方向において、常に、特定の位置に規定されることになる。
【0250】
従って、当該「特定の位置」に、例えば上記した温度センサ204や圧力センサ205などの測定素子を配置することで、原料の混練中に生じる圧力や温度の変化をダイレクトかつリアルタイムに測定することができる。そして、測定結果に基づいて、例えば、上記したヒータ200のON/OFF制御や冷媒通路35への冷媒の流動制御を行うことで、バレル20の温度を、原料の混練に最適な状態に維持することができる。
【0251】
「特定の位置」は、バレルブロック31bごとに、事前に把握することができる。よって、例えば、バレルブロック31bの製造段階で、上記した測定素子を取り付けるための取り付け孔(図示しない)をあらかじめ形成することができる。これにより、当該「特定の位置」に、上記した測定素子を取り付けるだけで、スクリュ要素ごとに生じる各種状態をダイレクトかつリアルタイムに測定することが可能となる。
【0252】
図面には一例として、通路115の入口117に対向するように、温度センサ204および圧力センサ205が配置され、さらに、通路115の入口117および出口118が含まれる範囲に対向するように、ヒータ200および冷媒通路35が配置されたバレルブロック31bが示されているが、これはあくまで一例であり、各「スクリュ要素」の範囲内で自由に配置することができる。
また、上記した構成に起因する作用効果および留意点については、第1の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0253】
[第4の実施形態]
図27は、第4の実施形態を開示している。上記した第1の実施形態では、第1の押出機(処理機)2を、二軸混練機として構成した場合について説明したが、これに代えて、第4の実施形態では、第1の押出機2を、単軸押出機として構成した場合を想定する。
【0254】
図27に示すように、第4の実施形態に係る第1の押出機2において、バレル6は、単軸のスクリュ7を回転可能に収容するシリンダ部8を備えている。バレル6には、上記した第1の実施形態と同様に、例えばペレット化された材料をシリンダ部8内に供給可能な供給口9と、当該樹脂を溶融するためのヒータ(図示しない)と、溶融された樹脂を吐出可能な吐出口6aとが設けられている。
【0255】
スクリュ7は、軸線O2を中心に回転可能であって、その外周面には、螺旋状に捩じれたフライト122が形成されている。フライト122は、供給口9から供給された樹脂を吐出口6aに向けて連続的に搬送するように構成されている。このため、フライト122は、供給口9の側から見た場合のスクリュ7の回転方向とは逆方向に捩じれている。図面には一例として、スクリュ7を左回転させて樹脂を搬送する場合のフライト122が示されている。この場合、フライト122の捩じれ方向は、右ねじと同じように、時計回りに設定されている。
【0256】
さらに、スクリュ7の外周面には、供給口9の側から吐出口6aに向かって順に、供給部P1、圧縮部P2、搬送部P3、が連続的に構成されている。供給部P1は、円柱形状を有し、その外周面7−P1とシリンダ部8との隙間は、広く設定されている。搬送部P3は、円柱形状を有し、その外周面7−P3とシリンダ部8との隙間は、狭く設定されている。言い換えると、搬送部P3において、外周面7−P3とシリンダ部8との隙間を狭めることで、フライト122の高さが低く設定されている。これにより、吐出口6aにおける吐出安定性の向上が図られている。圧縮部P2は、供給部P1から搬送部P3に向かって末広がり形状を有し、その外周面7−P2とシリンダ部8との隙間は、供給部P1から搬送部P3に向かって連続的に狭くなるように設定されている。
【0257】
ここで、スクリュ7を左回転させた状態において、供給口9からシリンダ部8に供給されたペレット状の樹脂は、フライト122によって、供給部P1から圧縮部P2、搬送部P3の順に搬送された後、吐出口6aから吐出される。供給部P1において、樹脂は、その温度が低く固体の状態である。圧縮部P2において、樹脂は、主に、ヒータにより加熱されつつ、連続的に狭くなった隙間からの圧縮を受ける。搬送部P3において、樹脂は、溶融されて混合された原料を構成する。そして、バレル6の吐出口6aから吐出した原料は、
図1に矢印Aで示すように、第2の押出機3に連続的に供給される。
【0258】
以上、第4の実施形態によれば、第1の押出機2を単軸押出機とした場合でも、上記した第1の実施形態に係る二軸混練機の場合と同様に、第2の押出機3による混練処理に最適な粘度の原料を生成することができる。これにより、第2の押出機3の負担を軽減することができる。
【0259】
例えば、既に予備的な混練がされた材料、すなわち、樹脂にフィラー(添加物)が練り込まれてペレット化された材料に対して、せん断作用と伸長作用とを交互に付与する場合を想定すると、単軸押出機を用いることで、添加物の物性劣化や繊維の切断を発生させること無く、当該材料を混練することができる。
【0260】
また、原料に添加剤を添加する場合、当該添加剤を第1の押出機2または第2の押出機3に投入すると、第2の押出機3での高速回転により、添加剤の物性劣化や分解が生じる可能性がある。この場合、第3の押出機4を二軸押出機とすることにより、脱気のみならず、添加剤の原料への練り込み(混練)も可能となる。
【0261】
[第5の実施形態]
図28は、第5の実施形態を開示している。第5の実施形態は、原料に伸長作用を付与するための構成が第1の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0262】
図28に示すように、筒体39の内周面に一対の溝131a,131bが形成されている。溝131a,131bは、スクリュ本体37の軸方向に延びるとともに、スクリュ本体37の径方向に互いに離れている。さらに、溝131a,131bは、筒体39の内周面に開口されている。
【0263】
溝131a,131bの開口端は、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、第2の軸部41の外周面によって閉塞されている。そのため、溝131a,131bは、第2の軸部41の外周面と協働して原料に伸長作用を付与する通路132を規定している。本実施形態では、通路132は回転軸38と筒体39との間の境界部分に位置されている。
【0264】
第5の実施形態によると、通路132は、スクリュ本体37の内部で回転軸38の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。したがって、前記第1の実施形態と同様に、通路132は、軸線O1から外れており、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1の回りを公転するようになっている。
【0265】
第5の実施形態では、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、スクリュ本体37の内部に通路132が形成される。通路132を規定する溝131a,131bは、筒体39の内周面に開口されているので、溝131a,131bを形成する作業を容易に行なうことができる。
【0266】
したがって、例えば通路132の断面形状を変更する必要が生じた際にも容易に対応することが可能となる。
【0267】
[第6の実施形態]
図29は、第6の実施形態を開示している。第6の実施形態は、原料に伸長作用を付与するための構成が第5の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0268】
図29に示すように、回転軸38の第2の軸部41の外周面に一対の溝141a,141bが形成されている。溝141a,141bは、第2の軸部41の軸方向に延びるとともに、第2の軸部41の径方向に互いに離れている。さらに、溝141a,141bは、第2の軸部41の外周面に開口されている。
【0269】
溝141a,141bの開口端は、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、筒体39の内周面によって閉塞されている。そのため、溝141a,141bは、筒体39の内周面と協働して原料に伸長作用を付与する通路142を規定している。本実施形態では、通路142は回転軸38と筒体39との間の境界部分に位置されている。
【0270】
第6の実施形態によると、通路142は、スクリュ本体37の内部で回転軸38の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。したがって、前記第5の実施形態と同様に、通路142は、軸線O1から外れており、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1の回りを公転するようになっている。
【0271】
第6の実施形態では、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、スクリュ本体37の内部に通路142が形成される。通路142を規定する溝141a,141bは、回転軸38の外周面に開口されているので、溝141a,141bを形成する作業を容易に行なうことができる。
【0272】
したがって、例えば通路142の断面形状を変更する必要が生じた際にも容易に対応することが可能となる。
【0273】
[第7の実施形態]
図30は、第7の実施形態を開示している。第7の実施形態は、原料に伸長作用を付与するための構成が第1の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0274】
図30に示すように、第2の軸部41の外周面から突出されたキー45a,45bの先端面に凹所151a,151bが形成されている。凹所151a,151bは、第2の軸部41の軸方向に沿って延びているとともに、キー45a,45bの先端面に開口されている。凹所151a,151bの開口端は、キー45a,45bを筒体39のキー溝49a,49bに嵌合した時に、キー溝49a,49bの内周面によって閉塞されている。
【0275】
そのため、凹所151a,151bは、キー溝49a,49bの内周面と協働して原料に伸長作用を付与する通路152を規定している。本実施形態では、通路152は、キー45a,45bと筒体39との境界部分に位置されている。
【0276】
第7の実施形態によると、通路152は、スクリュ本体37の内部で回転軸38の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。したがって、前記第1の実施形態と同様に、通路152は軸線O1から外れており、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1の回りを公転するようになっている。
【0277】
第7の実施形態では、回転軸38のキー45a,45bを筒体39のキー溝49a,49bに嵌合した時に、スクリュ本体37の内部に通路152が形成される。通路152を規定する凹所151a,151bは、キー45a,45bの先端面に開口されているので、凹所151a,151bを形成する作業を容易に行なうことができる。
【0278】
したがって、例えば通路152の断面形状を変更する必要が生じた際にも容易に対応することが可能となる。
【0279】
第7の実施形態において、キー溝49a,49bの内周面に第2の軸部41の軸方向に延びる他の凹所を設け、当該他の凹所を前記凹所151a,151bと合致させることで前記通路152を規定するようにしてもよい。
【0280】
[第8の実施形態]
図31は、第8の実施形態を開示している。第8の実施形態は、スクリュ21の構成および原料に伸長作用を付与するための構成が第1の実施形態と相違している。
【0281】
図31に示すように、スクリュ21は、ソリッドなスクリュ本体161を備えている。スクリュ本体161は、真っ直ぐな一本の軸状部材162で構成されている。軸状部材162は、その中心部を同軸状に貫通する軸線O1を有するとともに、バレル20のシリンダ部33に同軸状に収容されている。
【0282】
さらに、軸状部材162は、周方向に連続する外周面162aを有し、当該外周面162aがバレル20のシリンダ部33の内周面と向かい合っている。軸状部材162の外周面162aには、原料を搬送するフライト(図示せず)が形成されている。
【0283】
さらに、軸状部材162の内部に原料に伸長作用を付与する一対の通路164が形成されている。通路164は、軸状部材162の軸方向に延びているとともに、軸線O1を間に挟んで互いに平行に配置されている。このため、通路164は、スクリュ本体161の内部で軸状部材162の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。よって、前記第1の実施形態と同様に、通路164は、軸線O1から外れており、スクリュ本体161が回転した時に、軸線O1の回りを公転するようになっている。
【0284】
原料に伸長作用を付与する通路164は、スクリュ本体161が一本の棒状部材162で構成される場合でも、スクリュ本体161に形成することができる。このため、スクリュ本体は、回転軸と筒体とを組み合わせた構成に特定されるものではない。
【0285】
[その他の実施形態]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0286】
例えば、原料に伸長作用を付与する通路は、断面形状が円形の孔に限らない。当該通路は、例えば断面形状が楕円形や多角形の孔で構成してもよく、通路の断面形状に特に制約はない。
【0287】
加えて、前記した各実施形態では、スクリュ本体を回転軸38の基端の方向から見た時に、スクリュ21が逆時計回り方向に左回転する場合を例に掲げて説明したが、本発明はこれに制約されるものではない。例えば、スクリュ21は、当該スクリュ21の基端の側から見て時計回り方向に右回転させてもよい。
【0288】
この場合、例えば第1の実施形態において、スクリュ21の搬送部54が有するフライト56は、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように、右ねじと同様に右に捩じれていればよい。同様に、障壁部55が有するフライト57は、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように、左ねじと同様に左に捩じれていればよい。
【0289】
さらに、スクリュ本体の障壁部は、螺旋状に捩じれたフライトで構成されることに制約されない。例えば、障壁部は、スクリュ本体の周方向に連続する外周面を有する円環状の大径部で構成してもよい。大径部は、スクリュ本体の軸方向に沿う幅を有するとともに、その外周面に凹みや切欠き等が存在しない滑らかな円環状とすることが望ましい。
【0290】
それとともに、第2の押出機3から押し出された混練物に含まれるガス成分を除去する第3の押出機4は、単軸押出機に特定されるものではなく、二軸押出機を用いてもよい。第3の押出機4を二軸押出機として構成する場合、
図4に示されたベントスクリュ23を2本並列させるとともに、双方のフライト29をその位相が90°ずれた状態で互いに噛み合わせればよい。2本のスクリュ23を同方向に回転させることで、混練物の表面更新を促進させることができるため、当該混練物に含まれるガス成分の吸引・除去効率を向上させることができる。なお、ガス成分が吸引・除去された混練物は、ヘッド部27の吐出口28から高せん断加工装置1の外に連続的に吐出される。
【0291】
本発明に係る連続式高せん断加工装置は、少なくとも原料を予備的に混練する第1の押出機および原料を本格的に混練する第2の押出機を備えていればよく、ガス状物質や揮発成分を除去する第3の押出機は省略してもよい。第3の押出機を省略する場合、第2の押出機の中間部にガス状物質や揮発成分を混練過程にある原料から取り除く少なくとも一つのベント口を設けるとよい。
【0292】
さらに、第1の押出機(処理機)2としては、上記した二軸混練機(
図2および
図3参照)や単軸押出機(
図27参照)に限定されず、例えば、多軸スクリュ押出機、バンバリーミキサ、ニーダ、オープンロールなどの各種の混練機を用いることができる。