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特許6446255パンチ金型装着方法及びパンチ金型交換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446255
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】パンチ金型装着方法及びパンチ金型交換装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/36 20060101AFI20181217BHJP
   B21D 37/04 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B21D28/36 Z
   B21D37/04 P
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-254760(P2014-254760)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-112600(P2016-112600A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】井室 元良
(72)【発明者】
【氏名】木村 成一
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−315897(JP,A)
【文献】 特開2011−078997(JP,A)
【文献】 特開2000−202546(JP,A)
【文献】 特開2012−250290(JP,A)
【文献】 実開昭55−129524(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/36
B21D 37/04
B25J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチガイドと、前記パンチガイドに対し使用姿勢で上下動可能かつ付勢部材により上方付勢されたパンチヘッドと、を有するパンチ金型を、パンチ金型交換装置によりタレットのパンチホルダに装着するパンチ金型装着方法であって、
前記パンチ金型交換装置を、前記パンチヘッドを把持するクランパと、前記クランパを備えて上下動するアームと、前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無を検出するパンチ検出センサと、を備えるものとし、
前記クランパで前記パンチヘッドを把持し前記パンチ金型を前記パンチホルダに対し上方から挿入するようアームを下降させるアーム下降ステップと、
前記アームを、基準挿入高さ位置に下降させた後に、前記クランパの把持を解除してチェック用高さ位置まで上昇させるアーム反転上昇ステップと、
前記アームが前記チェック用高さ位置にある状態で、又は前記チェック用高さ位置への上昇中の状態で、前記パンチ検出センサにより前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無を検出するパンチ検出ステップと、
を含むことを特徴とするパンチ金型装着方法。
【請求項2】
前記チェック用高さ位置を、前記パンチ金型が前記パンチホルダに正常に装着されている状態での前記パンチヘッドの高さ位置である基準高さ位置よりも上方に設定することを特徴とする請求項1記載のパンチ金型装着方法。
【請求項3】
前記チェック用高さ位置及び前記基準高さ位置を、装着する前記パンチ金型毎に、前記パンチ金型の情報が格納されている金型情報データベースから取得することを特徴とする請求項2記載のパンチ金型装着方法。
【請求項4】
パンチガイドと、前記パンチガイドに対し使用姿勢で上下動可能かつ付勢部材により上方付勢されたパンチヘッドと、を有するパンチ金型を、タレットのパンチホルダに装着するパンチ金型交換装置であって、
前記パンチヘッドを把持するクランパと、
前記クランパを備えて上下動するアームと、
前記クランパで把持した前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無を検出するパンチ検出センサと、
前記パンチ金型交換装置の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記クランパで前記パンチヘッドを把持した前記パンチ金型を、前記パンチホルダに対し上方から挿入するようアームを下降させると共に、前記アームを、基準挿入高さ位置に下降させた後に前記クランパの把持を解除してチェック用高さ位置まで上昇させ、前記チェック用高さ位置において、又は前記チェック用高さ位置への上昇中の状態で、前記パンチ検出センサから出力された前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無情報に基づき前記パンチ金型の装着の成否を判定する成否判断部を備えることを特徴とするパンチ金型交換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記チェック用高さ位置を、前記パンチ金型が前記パンチホルダに正常に装着されている状態での前記パンチヘッドの高さ位置である基準高さ位置よりも上方に設定すると共に、設定した前記チェック用高さ位置を記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項4記載のパンチ金型交換装置。
【請求項6】
前記チェック用高さ位置及び前記基準高さ位置を、装着する前記パンチ金型毎に前記制御部が取得するための前記パンチ金型の情報が格納されている金型情報データベースを備えることを特徴とする請求項5記載のパンチ金型交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチ金型装着方法及びパンチ金型交換装置に係り、特に、パンチ金型を、バッファタレット等の金型収納部からタレットパンチプレスのタレットへ移動装着する際のパンチ金型装着方法とその動作を行うパンチ金型交換装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
タレットパンチプレスで用いられるパンチ金型の一般的構造が、特許文献1に記載されている。
特許文献1に示されるように、パンチ金型は、タレットへの装着時にタレットのパンチホルダに支持される筒状のパンチガイドと、パンチガイドに対し使用姿勢で上下動可能に支持されるパンチヘッドと、パンチヘッドをパンチガイドに対して常に上方に付勢するストリッパースプリングと、を備えて構成されている。
【0003】
また、このようなパンチ金型を、加工待機時に格納しておくバッファタレット(ストレージタレット)が知られている。そして、パンチ金型を、バッファタレットからタレットパンチプレスのタレットに移動装着する金型交換装置の一例が、特許文献2に記載されている。
特許文献2に示されるように、金型交換装置は、パンチ金型のパンチヘッドを把持するパンチグリッパ(クランパ)と、パンチグリッパを先端側に備え、立設された軸に対して旋回及び昇降するアームと、を備えている。さらに、金型交換装置は、パンチグリッパで把持したパンチヘッドの上面の接触圧に基づいてパンチ金型の把持有無を検出するパンチ確認センサと、過負荷で生じるパンチグリッパのアームに対する折れ曲がりを検出する折れ検出センサと、を備えている。
【0004】
特許文献2に記載された金型交換装置は、パンチ金型をタレットのパンチホルダへ上方から挿入して装着する際に、引っ掛かりなどの不具合で挿入が途中でできなくなると、下降を継続しようとするアームに対し、挿入抵抗が過大となることで下降できなくなったパンチグリッパが屈曲し、その屈曲を折れ検出センサによりエラー検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−250290号公報
【特許文献2】特開2011−078997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2に記載されたような従来技術では、パンチ金型の引っ掛かりが、挿入ストロークの最終段階で生じるとエラー検出できない場合があった。
詳しくは、挿入途中でパンチ金型が引っ掛かると、パンチガイドはそれ以降下降できないものの、アーム及びパンチグリッパは、ストリッパースプリングを圧縮させながらパンチヘッドと共に下降する。
そのため、パンチ金型の装着完了位置に対応したアームの下降目標位置がストリッパースプリングの圧縮ストローク範囲内にあると、パンチ金型が正常に挿入されてアームが下降目標位置に達したのか、パンチ金型が所定位置まで挿入されていない状態でストリッパースプリングの圧縮によりアームが下降目標位置に達したのか、が判別できない。
そのため、パンチ金型のタレットへの装着不具合をより確実に検出すべく改良の余地があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、パンチ金型のタレットへの装着不具合をより確実に検出できるパンチ金型装着方法及びパンチ金型交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は次の手順、構成を有する。
1) パンチガイドと、前記パンチガイドに対し使用姿勢で上下動可能かつ付勢部材により上方付勢されたパンチヘッドと、を有するパンチ金型を、パンチ金型交換装置によりタレットのパンチホルダに装着するパンチ金型装着方法であって、
前記パンチ金型交換装置を、前記パンチヘッドを把持するクランパと、前記クランパを備えて上下動するアームと、前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無を検出するパンチ検出センサと、を備えるものとし、
前記クランパで前記パンチヘッドを把持し前記パンチ金型を前記パンチホルダに対し上方から挿入するようアームを下降させるアーム下降ステップと、
前記アームを、基準挿入高さ位置に下降させた後に、前記クランパの把持を解除してチェック用高さ位置まで上昇させるアーム反転上昇ステップと、
前記アームが前記チェック用高さ位置にある状態で、又は前記チェック用高さ位置への上昇中の状態で、前記パンチ検出センサにより前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無を検出するパンチ検出ステップと、
を含むことを特徴とするパンチ金型装着方法である。
2) 前記チェック用高さ位置を、前記パンチ金型が前記パンチホルダに正常に装着されている状態での前記パンチヘッドの高さ位置である基準高さ位置よりも上方に設定することを特徴とする1)に記載のパンチ金型装着方法である。
3) 前記チェック用高さ位置及び前記基準高さ位置を、装着する前記パンチ金型毎に、前記パンチ金型の情報が格納されている金型情報データベースから取得することを特徴とする2)に記載のパンチ金型装着方法である。
4) パンチガイドと、前記パンチガイドに対し使用姿勢で上下動可能かつ付勢部材により上方付勢されたパンチヘッドと、を有するパンチ金型を、タレットのパンチホルダに装着するパンチ金型交換装置であって、
前記パンチヘッドを把持するクランパと、
前記クランパを備えて上下動するアームと、
前記クランパで把持した前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無を検出するパンチ検出センサと、
前記パンチ金型交換装置の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記クランパで前記パンチヘッドを把持した前記パンチ金型を、前記パンチホルダに対し上方から挿入するようアームを下降させると共に、前記アームを、基準挿入高さ位置に下降させた後に前記クランパの把持を解除してチェック用高さ位置まで上昇させ、前記チェック用高さ位置において、又は前記チェック用高さ位置への上昇中の状態で、前記パンチ検出センサから出力された前記パンチヘッドの前記アームへの接触有無情報に基づき前記パンチ金型の装着の成否を判定する成否判断部を備えることを特徴とするパンチ金型交換装置である。
5) 前記制御部は、前記チェック用高さ位置を、前記パンチ金型が前記パンチホルダに正常に装着されている状態での前記パンチヘッドの高さ位置である基準高さ位置よりも上方に設定することを特徴とする4)に記載のパンチ金型交換装置である。
6) 前記チェック用高さ位置及び前記基準高さ位置を、装着する前記パンチ金型毎に、前記パンチ金型の情報が格納されている金型情報データベースから取得することを特徴とする5)に記載のパンチ金型交換装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パンチ金型のタレットへの装着不具合をより確実に検出できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るパンチ金型交換装置の実施例であるチェンジャ1を含むタレットパンチプレスシステムTの模式的平面図である。
図2図2は、チェンジャ1を説明するための模式的側面図である。
図3図3は、チェンジャ1のブロック図である。
図4図4は、パンチ金型Pの正常装着状態を説明するための断面図である。
図5図5は、チェンジャ1によるパンチ金型Pの装着動作を説明するためのフロー図である。
図6図6は、パンチ金型Pの装着動作における挿入チェック動作を説明するための図4に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るパンチ金型交換装置の実施例として、パンチ金型交換装置であるチェンジャ1をその動作と共に図1図6を参照して説明する。
【0012】
図1は、チェンジャ1を含むタレットパンチプレスシステムT(以下、プレスシステムTと称する)の概略構成を説明する模式的平面図である。
プレスシステムTは、タレットパンチプレス本体11と、金型を保管格納するラック12と、金型を加工待機時などにおいて一時保管するバッファタレット13と、ラック12とバッファタレット13との間での金型交換を行うトラバーサ14と、を備えている。さらに、プレスシステムTは、バッファタレット13とタレットパンチプレス本体11のタレット15との間での金型の交換をするチェンジャ1と、プレスシステムTの全体動作を制御する制御部であるNC装置16と、を備えている。
【0013】
バッファタレット13には、パンチ金型P(図2参照)を装着するための装着孔としてバッファパンチホルダ13aが複数設けられている。
タレット15には、パンチ金型Pを装着するための装着孔としてパンチホルダ15aが複数設けられている。
タレット15は、パンチ金型装着用の上タレットとダイ金型装着用の下タレットとの上下二段構造になっているが、以下の説明では、上タレットのみをタレット15として図示し説明する。
【0014】
NC装置16は、記憶部MRを有する。記憶部MRには、プレスシステムTの動作プログラムPG及びタレット15に装着されるパンチ金型Pなどに関する情報が格納された金型情報データベースDBが記憶されている(図3参照)。
金型情報データベースDBに格納される金型に関する情報には、例えば、金型番号,金型種別,各部位の寸法(形状寸法),使用履歴がある。
【0015】
タレットパンチプレス本体11は、X−Y平面状に延在しワークWを支持するテーブル11aと、X軸方向の中央部においてテーブル11aをY軸方向でアーチ状に跨ぐよう延設された中央フレーム11bと、を有する。
中央フレーム11bにおけるラック12側には、タレット15が設けられている。
また、タレットパンチプレス本体11は、テーブル11a上をY方向に移動可能なキャリッジベース11cと、キャリッジベース11cに対しX方向に移動可能に支持されたキャリッジ11dと、を有する。
キャリッジ11dは、板状のワークWを把持可能な複数のワーククランパ11eを有している。
【0016】
この構成により、ワーククランパ11eに把持されたワークWは、テーブル11a上を任意の軌跡で移動し、かつ任意の位置に位置決め可能となっている。
キャリッジベース11c,キャリッジ11d,及びワーククランパ11eの動作は、各動作に対応して設けられた駆動部により実行される。ここでは、各駆動部をまとめて本体駆動部MH(図3参照)と称する。本体駆動部MHの動作は、NC装置16により制御される。
ワークWは、NC装置16の制御により、タレット15上の複数金型の中から加工のために選択された金型が位置決めされる所定の加工位置に移動されると共に、図示しないパンチ機構により、位置決めされた上タレットのパンチ金型及び下タレットのダイ金型の協働でのパンチ加工が施される。
【0017】
図2は、チェンジャ1及び上タレット15を説明するための模式的側面図である。
図2では、チェンジャ1がパンチ金型Pを把持し、タレット15の一つのパンチホルダ15aの上方に位置決めさせた状態が示されている。
図2では、複数のパンチホルダ15aの内の、任意のパンチホルダについて示されている。
【0018】
パンチホルダ15aは、下方側が小径の段付き孔として形成され、大径側の部分に、コイルばねであるリフタースプリング15cが装着されている。
リフタースプリング15cは、パンチ加工動作時にパンチ金型Pのフランジ21bにより図2の下方に押されて圧縮されると共に、パンチ加工終了後にその反発力でフランジ21bを上方付勢し、パンチガイド21aを通常位置へ復帰させる。
【0019】
パンチ金型Pは、パンチホルダ15aに装着された際に支持される筒状のパンチガイド21aと、リフタースプリング15cに当接支持されるフランジ21bと、円板状のパンチヘッド21c及びパンチヘッド21cから図2の下方に延出するパンチボディ21c2と、を有する。パンチヘッド21cは、パンチボディ21c2と一体的にパンチガイド21a側に挿入されて上下動可能に支持される。
さらに、パンチ金型Pは、パンチヘッド21cをパンチガイド21aに対して常時離れる方向(使用姿勢で上方)に付勢する付勢部材であるコイル状のストリッパースプリング21dを有している。
【0020】
チェンジャ1は、例えばタレットパンチプレス本体11側のフレームなどに立設された支柱31と、支柱31に対して回動(矢印Da参照)及び上下動(矢印Db参照)可能に取り付けられたアームホルダ32と、アームホルダ32から径外方に延出したアーム33と、を有している。また、アーム33は、先端部にクランプ部34を有している。
【0021】
アームホルダ32は、支柱31に対し、昇降駆動部Maの動作により上下動するようになっている。図3(プレスシステムTのブロック図)に示されるように、昇降駆動部Maの動作についての情報は、エンコーダMa1により昇降動作情報JMaとしてNC装置16に向け送出される。
NC装置16は、昇降駆動部Maの動作を制御し、昇降動作情報JMaに基づいて、アームホルダ32、すなわちアーム33の高さ位置を把握する。
【0022】
アームホルダ32は、支柱31に対し、回動駆動部Mbの動作により支柱31の軸線CL1まわりの矢印Da方向に駆動部(図示せず)の動作で回動するようになっている。図3に示されるように、回動駆動部Mbの動作についての情報は、エンコーダMb1により回動動作情報JMbとしてNC装置16に向け送出される。
NC装置16は、回動駆動部Mbの動作を制御し、回動動作情報JMbに基づいて、アーム33の回動位置を把握する。
【0023】
アーム33は、アームホルダ32の昇降に伴い上下動する。また、アームホルダ32の回動に伴い軸線CL1まわりに旋回する。
クランプ部34は、パンチ金型Pのパンチヘッド21cを直径方向に挟んで把持する一対のクランパ34aと、一対のクランパ34aを互いに離接(矢印Dc参照)させるクランパ駆動部34bと、を有している。
クランパ駆動部34bの動作は、NC装置16により制御される。
【0024】
クランプ部34には、クランパ34aで把持したパンチ金型Pのパンチヘッド21cの接触有無を検出するパンチ検出センサ35が備えられている。
パンチ検出センサ35の種類は限定されず、例えば圧力センサが用いられる。
パンチ検出センサ35は、パンチヘッド21cがアーム33に接触していることを検出すると、パンチ検出情報J1としてNC装置16に向け送出する(図3参照)。
【0025】
アーム33は、クランプ部34に対し所定の値以上の過剰な上向きの力が付与されたときに、アームホルダ32に対し上方への回動が許容されるようになっている(図2の矢印Dd参照)。アームホルダ32には、この上方回動の発生を検出する挿入負荷検出センサ36が備えられている。
このアーム33の上方回動は、例えばパンチホルダ15aへのパンチ金型Pの挿入負荷が異常に高くなって所定の値以上となった場合に生じるようになっている。
挿入負荷検出センサ36は、アーム33の上方回動を検出すると、挿入負荷検出情報J2としてNC装置16に向け送出する(図3参照)。
【0026】
チェンジャ1は、上述の構成により、アーム33の旋回及び一対のクランパ34aの把持で、パンチ金型Pを、バッファタレット13のバッファパンチホルダ13aとタレット15のパンチホルダ15aとの間で装脱かつ移動可能とされている。
【0027】
NC装置16は、パンチ金型Pがパンチホルダ15aへ正常に装着されたか否かを判断する成否判断部16aを備えている(図3参照)。
そして、NC装置16は、パンチ金型Pのパンチホルダ15aへの装着動作を、次に説明する基準高さ位置HB,基準挿入高さ位置HR,及びチェック用高さ位置HCの三つの高さ位置に基づいて実行する。
【0028】
図4は、パンチホルダ15aにパンチ金型Pが正常に装着された状態(以下、正常装着状態と称する)が示されている。この正常装着状態で、パンチガイド21aは、リフタースプリング15cに支持され高さ位置が規定されている。
ここで、パンチ金型Pの寸法において、パンチヘッド21cが最上位置にある自然状態での全高を高さHp、タレット15の上面15bから自然状態のパンチヘッド21cの上面21c3の位置までの高さを高さHp1とする。正常装着状態のこの上面21c3の高さ位置を、基準高さ位置HBとする。
NC装置16は、この基準高さ位置HBの情報を、金型情報データベースDBに格納されたパンチ金型の全長(ハイト)に関する情報から装着するパンチ金型P毎に取得する。
【0029】
基準挿入高さ位置HRは、パンチ金型Pをパンチホルダ15aへ挿入する動作におけるアーム33の下面33aの最下降位置であり、この実施例において基準高さ位置HBと同じとされる。
チェンジャ1で行うパンチ金型Pのパンチホルダ15aへの挿入動作において、アーム33の下面33a(図2参照)が基準挿入高さ位置HRまで下降できたことが、装着成功の一つの条件となっている。
アーム33の下面33aは、パンチ金型Pの挿入動作においてパンチヘッド21cの上面21c3が当接する面である。
【0030】
基準挿入高さ位置HRの基準点をどこにするかは限定されないが、例えば、タレット15の上面15bとする。
上面15bを基準点とした場合、図4において、基準挿入高さ位置HRは、上面15bから上方に距離Hhr=Hp1となる位置である。
NC装置16は、距離Hhrを、金型情報データベースDBにおける高さHp1に設定する。この設定は、装着するパンチ金型P毎に行う。
【0031】
チェック用高さ位置HCは、後述するパンチ金型Pの挿入動作手順において、アーム33を下降してその下面33aを基準挿入高さ位置HRに到達させた後、アーム33を上昇して下面33aを到達させる高さ位置である。
具体的には、図4に示されるように、チェック用高さ位置HCは、正常装着状態のパンチ金型Pにおけるパンチヘッド21cの上面21c3から、上方に距離Hb隔てた位置とされる。
すなわち、チェック用高さ位置HCは、タレット15の上面15bから上方に距離Hhc=(Hp1+Hb)となる位置である。
距離Hbは、ストリッパースプリング21dの圧縮ストロークSTaの範囲内で設定され、金型情報データベースDBに、金型の形状寸法の項目と紐付して予め格納しておく。
NC装置16は、距離Hhcを、装着するパンチ金型Pの固有番号に基づき、金型情報データベースDBに格納された金型に関する情報の中の形状寸法を参照して取得する。この取得は、装着するパンチ金型P毎に行う。あるいは、距離Hhcを予め定め、一つの共通の値としてパラメータ設定しておき、NC装置16の記憶部MRに記憶させ、その値を複数の金型に使用することも可能である。
【0032】
次に、チェンジャ1によるパンチ金型Pの、バッファパンチホルダ13aからパンチホルダ15aへの移動装着の動作について、図5及び図6も参照して説明する。
【0033】
アーム33は当初、待機位置(初期位置)にあるものとする。待機位置は、バッファタレット13とタレット15との間の中間回動位置である。
NC装置16は、回動駆動部Mbを動作させて、アーム33を待機位置からバッファタレット13側に旋回させる(Step1)。
【0034】
NC装置16は、この旋回においてバッファタレット13に装着されている所望のパンチ金型Pの直上にクランプ部34を位置させる。そして、昇降駆動部Maを動作させてアーム33を下降し、クランパ駆動部34bを動作させ一対のクランパ34aでパンチ金型Pのパンチヘッド21cを把持させる。
この把持後、昇降駆動部Maによりアーム33を上昇させてパンチ金型Pをバッファタレット13から抜き取る(Step2)
【0035】
NC装置16は、回動駆動部Mbを動作させて、アーム33をタレット15側に旋回させる(Step3)。この旋回により、パンチ金型Pを、装着するパンチホルダ15aの直上に位置決めする(Step4)。この位置決めした状態が図2に相当する。
【0036】
NC装置16は、昇降駆動部Maを動作させて、アーム33を降下させ、パンチ金型Pをパンチホルダ15aに挿入する(Step5)。
【0037】
NC装置16は、下降するアーム33の下面33aが、パンチ金型Pが所定の装着状態となる位置である基準挿入高さ位置HR(この例では基準高さ位置HBと同じ)に達したか否かを、昇降動作情報JMaに基づいて判定する(Step6)。
(Step6)の判定が否(No)の場合、挿入が過負荷になっているか否かを挿入負荷検出情報J2に基づいて判定する(Step7)。
【0038】
(Step7)の判定が否(No)の場合、(Step6)に戻る。
(Step7)の判定が是(Yes)の場合、NC装置16は、パンチ金型Pのパンチホルダ15aへの挿入が失敗したと判断して、アラーム処理を実行する(Step8)。
アラーム処理では、例えば、プレスシステムTの動作停止及びエラー発生を告知する音声の出力を行う処理である。
【0039】
(Step6)の判定が是(Yes)の場合、NC装置16は、パンチ検出情報J1に基づいてパンチヘッド21cがアーム33に接触しているか否かを判定する(Step9)。
【0040】
(Step9)の判定が否(No)の場合、NC装置16は、パンチ金型Pのパンチホルダ15aへの装着が失敗したと判断し、アラーム処理を実行する(Step8)。この判定が否となる場合として、パンチ金型Pの破損、誤装着、パンチ検出センサ35の故障、などの不具合発生が想定される。
(Step9)の判定が是(Yes)の場合、NC装置16は、チェック用高さ位置HCのタレット15の上面15bからの距離Hhcを、金型情報データベースDB、或いはパラメータ設定値を参照して取得する(Step10)。この取得は、装着するパンチ金型P毎に行う。
【0041】
NC装置16は、クランパ駆動部34bを動作させてクランパ34aによるパンチヘッド21cの把持を解除し(Step11)、その後、昇降駆動部Maを動作させて、アーム33を、その下面33aがチェック用高さ位置HCになるよう上昇させる(Step12)。
【0042】
下面33aがチェック用高さ位置HCに達したら、NC装置16は、パンチ検出情報J1に基づいてパンチヘッド21cがアーム33に接触しているか否かを判定する(Step13)。
【0043】
(Step13)の判定が是(Yes)の場合、(Step8)へ移行し、NC装置16は、成否判断部16aにおいて、パンチ金型Pのパンチホルダ15aへの挿入が十分行われず装着が失敗したと判断してアラーム処理を実行する(Step8)。
(Step13)の判定が否(No)の場合、NC装置16は、成否判断部16aにおいて、パンチ金型Pがパンチホルダ15aへ正常に装着されたと判断し(Step14)、アーム33をさらに上昇させると共に旋回して待機位置(初期位置)に移動させ(Step15)、動作を終了する。
【0044】
この装着手順によれば、NC装置16は、(Step10)〜(Step13)においてアーム33の挿入チェック動作を実行させる。
挿入チェック動作は、(Step5)の実行で、アーム33の下面33aが所定の基準挿入高さ位置HRに達したと判定された(Step6:是)後に、アーム33を反転上昇させ、下面33aを基準挿入高さ位置HRからチェック用高さ位置HCに移動(上昇)させる(図7:矢印Df参照)。
さらに、チェック用高さ位置HCにおいてパンチ検出情報J1に基づいてパンチヘッド21cがアーム33の下面33aに接触しているか否かを判定する(Step13)、という動作である。
【0045】
例えば、パンチ金型Pが、パンチホルダ15aの挿入最終段階で何らかの理由で引っ掛かって挿入不能となった場合を、図6を参照して説明する。
パンチ金型Pが挿入不能となった位置の、フランジ21bの下面からタレット15の上面15bまでの距離を距離Heとする。
ここで、距離Heが、距離Hbより大きく、かつコイルばねPdの圧縮ストロークSTaよりも小さいとする。この場合、(Step6)のアーム33下降で、アーム33の下面33aは、ストリッパースプリング21dを圧縮させながら基準挿入高さ位置HRに達することができ、判定が是(Yes)となる。
また、当然にパンチヘッド21cの上面21c3は、ストリッパースプリング21dの反発力でアーム33の下面33aに接触するので、(Step9)も是(Yes)となる。
すなわち、パンチ金型Pの装着が成功しているか不完全で失敗しているかは、ここまでの動作で判断されず、(Step10)〜(Step13)の挿入チェック動作によって判断される。
【0046】
この挿入チェック動作において、NC装置16は、まず、アーム33をその下面33aがチェック用高さ位置HCに達するよう上昇させる(矢印Df参照)。
ここで、パンチ金型Pが、図4に示されるように正常装着されていれば、チェック用高さ位置HCへの上昇の途中で、パンチヘッド21cは、上下ストロークの上端位置に達して上昇が規制されるので、アーム33の下面33aから離れる。
一方、パンチ金型Pが、図6に示されるように挿入が不完全で装着失敗している場合は、距離Heが、距離Hbより大きいので、アーム33の下面33aがチェック用高さ位置HCに達してもまだパンチヘッド21cは上下ストロークの上端位置に達してなく、アーム33の下面33aに接触している。この接触が(Step13)での是判定で検出されるので、装着失敗であると判断できる。
【0047】
上述のように、距離Hbが小さいほど、小さい距離Heでの装着失敗を(Step13)の判定で検出可能となるので、距離Hbをできるだけ小さく設定することが好ましい。
【0048】
このように、チェンジャ1を用いた上述の装着方法によれば、パンチ金型のタレットへの装着不具合をより確実に検出することができる。
【0049】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0050】
実施例では、チェック用高さ位置HCを、対応するパンチ金型Pそれぞれに応じた位置として取得するが、これに限定されず、予め定めた一つの位置としてもよい。この場合の位置は、例えば、タレット15に装着して加工に供されるすべてのパンチ金型Pのうちの、最も高い位置となるチェック用高さ位置HCを採用する。
採用したチェック用高さ位置HCの情報は、作業者が予め入力設定する、或いは、NC装置16が動作開始前に金型情報データベースDBの全パンチ金型情報を参照して抽出設定する。
これにより、NC装置16は、チェック用高さ位置HCを、装着するパンチ金型P毎に参照して求める必要がなくなるので、NC装置16のCPUは、特に処理能力が高速でなくても利用可能となる。
また同様に、基準高さ位置HB,高さHp1,及び距離Hbの各値を予め定め一つの共通の値群としてパラメータ設定すると共にNC装置16の記憶部MRに記憶させておき、その値群を複数の金型に使用することも可能である。
【0051】
基準挿入高さ位置HRは、図4に示された正常装着状態の基準高さ位置HBに対し、パンチヘッド21cを、所定の距離だけ下方へ押し込んだ位置としてもよい。所定の距離は、ストリッパースプリング21dの圧縮ストロークSTaよりも小さい距離である。
この場合、挿入チェック動作を、(Step11)でクランプ解除した後に、アーム33を上昇させ、アーム33が上昇中の状態でパンチヘッド21cがアーム33の下面33aから離れた高さ位置(非接触高さ位置)を検出し、検出した高さ位置と該当するパンチ金型Pの基準高さ位置HBとを比較し、両位置が合致しているか否かを判定してもよい。
NC装置16は、成否判断部16aにおいて、この比較結果に基づいてパンチ金型Pの装着の成否を判定する。詳しくは、検出した非接触高さ位置が基準高さ位置HBと合致していない場合に、装着失敗と判定する。
この動作の場合、挿入チェック動作におけるアーム33の上昇距離が短くなるので、稼働効率が向上する。また、挿入失敗を早く検出することができ、この点でも稼働効率が向上する。
【0052】
(Step8)のアラーム処理の前に、一回又は複数回のリトライ動作を実行するようにしてもよい。
リトライ動作は、パンチヘッド21cをクランプした状態で(クランプ解除後であれば再クランプして)アーム33を上昇させて(Step4)へ戻り、(Step4)以降を再度実行する動作である。
リトライ動作を実行することで、挿入失敗が偶発的に発生した場合、次回以降の試行で成功するので、プレスシステムTの動作を停止させることがなく、稼働効率が向上する。
【符号の説明】
【0053】
1 チェンジャ(パンチ金型交換装置)、 11 タレットパンチプレス本体
11a テーブル
11b 中央フレーム、 11c キャリッジベース
11d キャリッジ、 11e ワーククランパ、 12 ラック
13 バッファタレット 13a バッファパンチホルダ
14 トラバーサ、 15 タレット(上タレット)
15a パンチホルダ、 15b 上面、 15c リフタースプリング
16 NC装置、 16a 成否判断部
21a パンチガイド、 21b フランジ
21c パンチヘッド、 21c2 パンチボディ、 21c3 上面
21d ストリッパースプリング
31 支柱、 32 アームホルダ、 33 アーム、 33a 下面
34 クランプ部 34a クランパ、 34b クランパ駆動部
35 パンチ検出センサ 36 挿入負荷検出センサ
CL1 軸線
DB 金型情報データベース
Ha,Hb,Hhr,He 距離、 Hp,Hp1 高さ
HB 基準高さ位置、 HC チェック用高さ位置、 HR 基準挿入高さ位置
JMa 昇降動作情報、 JMb 回動動作情報
J1 パンチ検出情報、 J2 挿入負荷検出情報
Ma 昇降駆動部、 Ma1 エンコーダ
Mb 回動駆動部、 Mb1 エンコーダ
MH 本体駆動部、 MR 記憶部
P パンチ金型、 PG 動作プログラム、 STa 圧縮ストローク
T タレットパンチプレスシステム(プレスシステム)、 W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6