(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記効用値は、電気機器に対して発揮することが求められている機能の最適値に対する、所定の供給電力のときに発揮される機能の程度の比率として算出されることを特徴とする請求項1に記載の需用電力制御装置。
前記効用値は、電気機器に対して発揮することが求められている機能の最適値に対する、所定の供給電力のときに発揮される機能の程度の比率として算出されることを特徴とする請求項4に記載の需用電力制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に記載の配電システムによれば、電力ピーク時間帯に、第2系統の負荷(ピークシフト用負荷)に対しては蓄電池から給電され、第3系統の負荷(ピークカット用負荷)に対しては給電が停止される。そのため、バッテリの容量を増加させることなく、ピーク電力をカットすることができる。
【0007】
しかしながら、この配電システムでは、電力ピーク時間帯に第3系統の負荷(ピークカット用負荷)への給電が停止されるため、該電力ピーク時間帯に、第3系統に接続されている負荷(すなわち電気機器)を使用することができない。そのため、例えば、この配電システムを工場や事務所等に適用した場合には、負荷の使用制限による業務効率の低下等を招くおそれ、すなわち電力需要者(ユーザ)の利便性を損なうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、需要電力を適確に抑制しつつ、電力需要者(ユーザ)の利便性の低下を最小限に抑えることが可能な需要電力制御装置、及び、需用電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る需要電力制御装置は、商用電力系統から受電した電力を分配して供給する電力系統に接続された複数の電気機器に供給される電力を計測する計測手段と、各電気機器の供給電力と、該供給電力に対して各電気機器に求められている機能が発揮される程度を示す指標値である効用値との関係を、各電気機器ごとに記憶する記憶手段と、計測手段により計測された各電気機器に供給される電力の総量が、予め定められた所定のしきい値を超える場合に、該しきい値に基づいて、各電気機器それぞれの効用値が同一となるように目標効用値を設定する目標効用値設定手段と、記憶手段に記憶されている各電気機器の供給電力と効用値との関係に基づいて、各電気機器の効用値が、目標効用値設定手段により設定された目標効用値以下となるように、各電気機器それぞれの目標供給電力を定める供給電力設定手段と、供給電力設定手段により定められた目標供給電力と一致するように各電気機器それぞれに供給する電力を制御する供給電力制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る需要電力制御方法は、商用電力系統から受電した電力を分配して供給する電力系統に接続された複数の電気機器に供給される電力を計測する計測ステップと、各電気機器の供給電力と、該供給電力に対して各電気機器に求められている機能が発揮される程度を示す指標値である効用値との関係を、各電気機器ごとに記憶する記憶ステップと、計測手段により計測された各電気機器に供給される電力の総量が、予め定められた所定のしきい値を超える場合に、該しきい値に基づいて、各電気機器それぞれの効用値が同一となるように目標効用値を設定する目標効用値設定ステップと、記憶ステップにおいて記憶された各電気機器の供給電力と効用値との関係に基づいて、各電気機器の効用値が、目標効用値設定ステップにおいて設定された目標効用値以下となるように、各電気機器それぞれの目標供給電力を定める供給電力設定ステップと、供給電力設定ステップにおいて定められた目標供給電力と一致するように各電気機器それぞれに供給する電力を制御する供給電力制御ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る需要電力制御装置、又は、需要電力制御方法によれば、各電気機器の供給電力と、該供給電力に対して各電気機器に求められている機能が発揮される程度を示す指標値である効用値との関係が、各電気機器ごとに記憶されており、各電気機器に供給される電力の総量が予め定められた所定のしきい値を超える場合に、該しきい値に基づいて、各電気機器それぞれの効用値が同一となるように目標効用値が設定されるとともに、記憶されている各電気機器の供給電力と効用値との関係に基づいて、各電気機器の効用値が目標効用値以下となるように、各電気機器それぞれの目標供給電力が定められる。そして、目標供給電力と一致するように各電気機器それぞれに供給される電力が調節される。
【0012】
すなわち、受電電力が所定のしきい値を超える場合には、すべての電気機器の効用値が同一(又はそれ以下)となるように、各電気機器に供給される電力が調節される。換言すると、各電気機器の機能の発揮の程度(効用)が等しくなるように、限られた受電電力を各電気機器に分配して供給することができる。すなわち、同一効用値を確保することで、受電電力(需要電力)を所定値(目標値)以下に保ちつつ、すべての電気機器の機能をバランスさせて発揮させることができる。そのため、受電電力を制限する場合に、機能が極端に低下する電気機器が出ないように制限することができる。その結果、需要電力を適確に抑制しつつ、電力需要者(ユーザ)の利便性の低下を最小限に抑えることが可能となる。
【0013】
本発明に係る需要電力制御装置、又は、需要電力制御方法では、上記効用値が、電気機器に対して発揮することが求められている機能の最適値に対する、所定の供給電力のときに発揮される機能の程度の比率として算出されることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、電気機器ごとに異なり、また、同一の電気機器であっても電力需要者(ユーザ)によって異なり得る効用値を、個別具体的に、かつ適切に設定することができる。
【0015】
本発明に係る需要電力制御装置では、記憶手段が、各電気機器ごとに、該電気機器の供給電力と効用値との関係を定めたテーブルデータを記憶し、供給電力設定手段が、設定された目標効用値を用いてテーブルデータを検索し、各電気機器それぞれの目標供給電力を求めることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る需要電力制御方法では、記憶ステップにおいて、各電気機器ごとに、該電気機器の供給電力と効用値との関係を定めたテーブルデータを記憶し、供給電力設定ステップにおいて、設定された目標効用値を用いてテーブルデータを検索し、各電気機器それぞれの目標供給電力を求めることが好ましい。
【0017】
この場合、各電気機器の供給電力と効用値との関係を定めたテーブルデータが各電気機器ごとに予め記憶されており、テーブルデータを検索することにより、各電気機器それぞれの目標供給電力が求められる。そのため、例えば演算で求める場合と比較して、処理負荷を低減することができ、かつ処理速度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、需要電力を適確に抑制しつつ、電力需要者(ユーザ)の利便性の低下を最小限に抑えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
まず、
図1を用いて、実施形態に係る需要電力制御装置1の構成について説明する。
図1は、需要電力制御装置1、及び需要電力制御装置1が適用された高圧受電設備5の構成を示すブロック図である。なお、ここでは、需要電力制御装置1が、例えば事務所や工場等の高圧受電契約の需要家が保有する高圧受電設備5に適用された場合を例にして説明する。
【0022】
高圧受電設備5は、電力事業者が展開している商用電力系統から需要家が電力を受電するための設備である。
図1に例示された高圧受電設備5では、引き込まれた商用電力系統は、DS(Disconnecting Switch:断路器)21、VCT(Voltage Current and Transformer:電力供給用計器用変成器)22、OCR(Over−Current Relay:過電流継電器)23、及び、VCB(真空遮断器)24を介して、母線25に接続されている。なお、VCT22には、受電電力を計測するとともに、受電電力に応じたパルス信号を出力するWH(Watt−hour meter:電力量計)26が接続されている。
【0023】
母線25には、LBS(AC Load Break Switch:高圧交流負荷開閉器)26を介して接続されたTr(Transformer:変圧器)28によって降圧された電力を複数(
図1の例では5つ)の電気機器40(例えば、照明機器、OA機器、空調機器、冷凍・冷蔵機器、産業機械(電動工作機器)等)に供給する複数(
図1の例では5系統)の電力系統32が接続されている。なお、電気系統32や電気機器40の数は本実施形態(5つ)には限られない。
【0024】
需要電力制御装置1は、主として、電力計測器11、電力計/電力コントローラ175、及びシステムコントローラ17等を有して構成されている。
【0025】
電力計測器11は、VCT22の二次側で変成された電圧・電流・周波数を検出する。電力計測器11は、システムコントローラ17に接続されており、検出された値は、システムコントローラ17に出力される。
【0026】
各電力計/電力コントローラ175は、上述した各電力系統32(各電気機器40)に取り付けられており、該電力系統32に流れる電流・電圧の値、すなわち各電気機器40に供給される電力値を検出する。また、電力計/電力コントローラ175は、システムコントローラ17からの供給電力制御情報(目標供給電力)に基づいて、接続されている電気機器40に供給する電力を調節する。すなわち、電力計/電力コントローラ175は、特許請求の範囲に記載の計測手段及び供給電力制御手段として機能する。
【0027】
電力計/電力コントローラ175は、例えば無線LAN(又はPLC:Power Line Communication)等を介してシステムコントローラ17と通信可能に接続されており、検出した電力値(電流値)をシステムコントローラ17に送信するとともに、上記供給電力制御情報(目標供給電力)をシステムコントローラ17から受信する。
【0028】
システムコントローラ17は、演算を行うCPU、プログラムやデータ等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、記憶内容が保持されるバックアップRAM、CPUに各処理を実行させるためのアプリケーションプログラムやテーブルデータ等のデータを記憶するハードディスク等の記憶装置、及び入出力I/F等を有して構成されている。なお、システムコントローラ17は、専用機として専用に設計してもよいし、汎用のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)等を利用して構成してもよい。
【0029】
システムコントローラ17は、各電力計/電力コントローラ175により計測された各電気機器40に供給される電力の総量、及び/又は、電力計測器11により計測された受電電力に基づいて、一定時間(例えば30分間)の平均電力値(需用電力)が、予め定められた所定の電力値を超えないように、各電力計/電力コントローラ175を駆動して、各電気機器40に供給される電力を調節する。
【0030】
その際に、システムコントローラ17は、需要電力のピークを適確に抑制しつつ、電力需要者(ユーザ)の利便性の低下を最小限に抑える機能を有している。そのため、システムコントローラ17は、記憶部171、目標効用値設定部172、供給電力設定部173を機能的に備えている。システムコントローラ17では、ハードディスク等に記憶されているプログラムがCPUによって実行されることにより、記憶部171、目標効用値設定部172、供給電力設定部173の各機能が実現される。
【0031】
記憶部171は、上述したROMやハードディスクからなり、予め、各電気機器40の供給電力と、該供給電力に対して各電気機器40に求められている機能が発揮される程度を示す指標値である効用値との関係を、各電気機器40ごとに記憶する。すなわち、記憶部171は、特許請求の範囲に記載の記憶手段として機能する。
【0032】
ここで、効用値は、各電気機器40に対して発揮することが求められている機能(例えば、照明機器であれば照度を調節すること、空調機器であれば室温を調節すること)の最適値に対する、所定の供給電力のときに発揮される機能の程度の比率として算出される。換言すると、効用量とは、電気機器40の機能のアウトプット(出力)に対して得られるユーザの満足度と定義することもできる。
【0033】
ここで、電気機器40の供給電力(消費電力)と効用値との関係を
図2に示す。
図2は、電気機器40の供給電力(消費電力)と効用値との関係を説明するための図である。供給電力がもたらす効用(機能の発揮の程度)は、
図2に示されるような略S字カーブを描くと考えられる。すなわち、所定以上の電力供給がなければ効用(求められている機能)を発揮できない。所定以上の電力供給がなされる場合、供給電力の増大に伴って効用(機能が発揮される程度)も増加する。しかしながら、供給電力がさらに増大して一定値以上になると効用は増加することなく、減少するようになる。例えば、照明機器の場合、供給電力が小さく輝度が低いと照明機器としてユーザが望む機能を発揮できない。一方、供給電力が大きく、輝度が高すぎると、例えば、目が疲労し作業効率が低下する(効用が低下する)。
【0034】
すなわち、効用値は、機能の最大値(例えば最大輝度、最高温度/最低温度等)に対する比率ではなく、電力需要者(ユーザ)により要求される最適値(例えば最適輝度、最適温度等)に対する比率として定義される。よって、効用値は、例えば、電気機器40の種類、電力需要者(ユーザ)の業種・業態、外部環境等によって異なる。
【0035】
そこで、各電気機器40の供給電力と効用値との関係を定めるときには、まず、上記略S字カーブのうち、求められている機能を発揮できない領域(左端側)、及び、供給電力の増加に対して機能が低下する領域(右端側)を除外する。さらに、取扱いを容易にするため、上記除外処理が施された略S字カーブを次式(1)で示される一次関数で近似(直線近似)する。
U=a・P−b ・・・(1)
ただし、Uは効用値、Pは供給電力、aは係数、bは定数である。
【0036】
ここで、上式(1)中の係数a(効用関数の傾き)は、弾力性を表す。例えば、生産設備等で、稼働させるには略一定の供給電力を要し、それ以下の供給電力ではラインが稼働せず、効用がゼロになってしまうようなもの(厳密には、一部停止、一次停止なども可能であり、係数aは無限大ではないと考えられる)は、弾力性が小さく、係数aが大きくなる(
図3の第1象限に一点鎖線で示される電気機器C参照)。逆に、照明機器のように弾力性が比較的大きい機器は、係数aが小さく(傾きが緩やかに)なる(
図3の第1象限に実線で示される電気機器A参照)。すなわち、弾力性が大きいほど、係数a(効用関数の傾き)が小さくなり、供給電力を大きく削減しても効用は急激には低下しないことになる。
【0037】
さらに、記憶部171では、各電気機器40ごとに、上述した効用関数(一次式)を、供給電力と効用値との関係を定めたテーブルデータ(効用値−目標供給電力テーブル)に変換して記憶する。ここで、
図3の第1象限に、3つの電気機器A,B,Cそれぞれの供給電力と効用値との関係(効用関数)を示す。
図3は、効用値−目標供給電力テーブルの設定方法、及び、各電気機器40の供給電力の総量と目標効用値との関係を説明するための図である。この例では、
図3の第1象限に示される3つの電気機器A,B,Cそれぞれの供給電力と効用値との関係(効用関数)がテーブルデータ化されて、記憶される。
【0038】
また、
図3の第2象限に、3つの電気機器A,B,Cそれぞれの供給電力の総和(受電電力)と効用値(目標効用値)との関係を示す。記憶部171には、このような各電気機器40の供給電力の総和(受電電力)と効用値(目標効用値)との関係もデータとして予め記憶される。そして、この関係に基づいて、受電電力(需用電力)を所定のしきい値以下に抑える際の目標効用値が定められる(詳細は後述する)。
【0039】
ここで、電気機器40が単一である場合には、その効用は供給電力の制御に委ねられるが、供給電力のもたらす効用が異なる複数の電気機器40を同時に使用する場合、全供給電力と全効用の挙動は単一でなくなる。異なる電気機器40の供給電力が同一になるように制御すると、各電気機器で効用が異なり、システム全体として効用が低くなるおそれがある。よって、システムコントローラ17は、効用値が同一になるように電気機器40ごとに供給電力を調節することでシステム全体の効用の低下を抑制する。
【0040】
図1に戻り、目標効用値設定部172は、各電力計/電力コントローラ175により計測された各電気機器40に供給される電力の総量(又は、電力計測器11により計測された受電電力)が、予め定められた所定のしきい値を超える場合に、該しきい値に基づいて、各電気機器40それぞれの効用値が同一となるように目標効用値を設定する(
図3の第2象限参照)。すなわち、目標効用値設定部172は、特許請求の範囲に記載の目標効用値設定手段として機能する。
【0041】
より具体的には、目標効用値設定部172は、上述した記憶部171に記憶されている各電気機器40の供給電力の総和(受電電力)と効用値(目標効用値)との関係を示すデータに基づいて、目標効用値を設定する。なお、目標効用値(最大需要電力)を超えないときは、各電気機器40の効用値はそれぞれ任意に調節することができる。目標効用値設定部172で設定された目標効用値は、供給電力設定部173に出力される。
【0042】
供給電力設定部173は、各電気機器40の効用値が、目標効用値設定部172により設定された目標効用値と一致するように(又はそれ以下となるように)、記憶部171に記憶されている各電気機器40の供給電力と効用値との関係に基づいて、各電気機器40それぞれの目標供給電力を定める。すなわち、供給電力設定部173は、特許請求の範囲に記載の供給電力設定手段として機能する。
【0043】
より詳細には、供給電力設定部173は、設定された目標効用値を用いて、効用値−目標供給電力テーブルを検索し、各電気機器40それぞれについて目標供給電力を求める(
図3の第1象限参照)。ここで、上述したように、
図3の第2象限の横軸は第1象限の各電気機器40の供給電力の総和を示し、供給電力の総和を所定の値に抑えるときの効用値(目標効用値)が縦軸の値として求められる。そのとき、第1象限を見ると各電気機器40に割り当てられる供給電力(目標供給電力)が求められる。なお、供給電力設定部173により求められた各電気機器40それぞれの目標供給電力(供給電力制御情報)は、電力計/電力コントローラ175に出力される。
【0044】
上述した電力計/電力コントローラ175は、例えば無線LAN(又はPLC(Power Line Communication))等を介して、供給電力設定部173により定められた目標供給電力を受信し、該目標供給電力と一致するように各電気機器40それぞれに供給する電力を調節する。
【0045】
次に、
図4を参照しつつ、需要電力制御装置1の動作について説明する。
図4は、需要電力制御装置1による需用電力抑制処理(ピークカット処理)の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、システムコントローラ17によって、所定のタイミングで繰り返して実行される。
【0046】
ステップS100(記憶ステップに相当)では、各電気機器40の供給電力と効用値との関係が、各電気機器40ごとに記憶される。より具体的には、本ステップでは、各電気機器40への供給電力と効用値との関係を、各電気機器40それぞれについて定めたテーブルデータ(効用値−目標供給電力テーブル)が記憶される。なお、効用値−目標供給電力テーブルの設定方法は上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0047】
次に、ステップS102(計測ステップに相当)では、各電力計/電力コントローラ175により計測された各電気機器40それぞれに供給される電力値、及び、電力計測器11により検出された受電点の電力が読み込まれる。
【0048】
続いて、ステップS104では、各電気機器40に供給される電力の総量、すなわち受電電力が、予め定められた所定のしきい値を超えたか否かについての判断が行われる。ここで、各電気機器40に供給される電力の総量が所定のしきい値を超えた場合には、ステップS106に処理が移行する。一方、各電気機器40に供給される電力の総量が所定のしきい値を超えていないときには、本処理から一旦抜ける。
【0049】
ステップS106(目標効用値設定ステップに相当)では、上記所定のしきい値に応じて、各電気機器40それぞれの効用値が同一となるように目標効用値が設定される。なお、目標効用値の設定のしかたについては上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0050】
続くステップS108(供給電力設定ステップに相当)では、ステップS100において記憶された各電気機器40の供給電力と効用値との関係に基づいて、各電気機器40の効用値が、ステップS106において設定された目標効用値と同一(又はそれ以下)となるように、各電気機器40それぞれの目標供給電力が定められる。より具体的には、設定された目標効用値を用いて効用値−目標供給電力テーブルが検索され、各電気機器40それぞれの目標供給電力が求められる。
【0051】
そして、続くステップS110(供給電力制御ステップに相当)では、ステップS108において定められた目標供給電力と一致するように各電気機器40それぞれに供給される電力が調節される。
【0052】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、各電気機器40の供給電力と効用値との関係が、各電気機器40ごとに記憶されており、各電気機器40に供給される電力の総量が予め定められた所定のしきい値を超える場合に、該しきい値に基づいて各電気機器40それぞれの効用値が同一となるように目標効用値が設定されるとともに、記憶されている各電気機器40の供給電力と効用値との関係に基づいて、各電気機器40の効用値が目標効用値と一致(又はそれ以下)となるように、各電気機器40それぞれの目標供給電力が定められる。そして、目標供給電力と一致するように各電気機器40それぞれに供給する電力が制御される。
【0053】
すなわち、受電電力が所定のしきい値を超える場合には、すべての電気機器40の効用値が同一(又はそれ以下)となるように、各電気機器40に供給される電力が制御される。換言すると、各電気機器40の機能の発揮の程度(効用)が等しくなるように、限られた受電電力を各電気機器40に分配して供給することができる。すなわち、同一効用値を確保することで、受電電力(需要電力)を所定値(目標値)以下に保ちつつ、すべての電気機器40の機能をバランスさせて発揮させることができる。そのため、受電電力を制限する場合に、機能が極端に低下する電気機器40が出ないように制限することができる。その結果、需要電力のピークを適確に抑制しつつ、電力需要者(ユーザ)の利便性の低下を最小限に抑えることが可能となる。
【0054】
特に、本実施形態によれば、上記効用値が、電気機器40に対して発揮することが求められている機能の最適値に対する、所定の電力が供給されているときに発揮される機能の程度の比率として算出される。そのため、電気機器40ごとに異なり、また、同一の電気機器40であっても電力需要者(ユーザ)によって異なり得る効用値を、個別具体的に、かつ適切に設定することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、各電気機器40の供給電力と効用値との関係を定めたテーブルデータ(効用値−目標供給電力テーブル)が、各電気機器40それぞれについて予め記憶されており、この効用値−目標供給電力テーブルを検索することにより、各電気機器40それぞれの目標供給電力が求められる。そのため、例えば演算で求める場合と比較して、処理負荷を低減することができ、かつ処理速度を向上させることが可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、需要電力制御装置1を、工場や事務所等の高圧受電契約の需要家が保有する高圧受電設備(キュービクル)に適用した場合を例にして説明したが、需要電力制御装置1は、一般家庭でのピーク抑制(ピークカット)にも適用することができる。
【0057】
上記実施形態では、予め、各電気機器40ごとに効用値−目標供給電力テーブルを記憶し、該効用値−目標供給電力テーブルを用いて各電気機器40それぞれの目標供給電力を求めたが、演算(効用関数)により各電気機器40それぞれの目標供給電力を求める構成としてもよい。
【0058】
上記実施形態では、本発明を電気機器類に適用した場合を例にして説明したが、例えば、複合商業施設において、電力消費形態が異なる、例えば、レストランや食材店、衣料品店等に適用することもできる。すなわち、業種・業態による差異は電気機器類毎の消費電力に対する効用値の差と考えることができる。例えば、食材店では照明機器より冷房機器の方が重要であり、衣料品店では照明機器の方が重要となる。
【0059】
上記実施形態では、需要電力のピークをカットする場合を例にして説明したが、本発明は、ピーク以外の需用電力の抑制(省エネルギー化)にも用いることができる。