特許第6446270号(P6446270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446270
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20181217BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F01D25/00 X
   F01D25/00 V
   F01D25/00 C
   F02C7/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-1252(P2015-1252)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-125439(P2016-125439A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 智美
(72)【発明者】
【氏名】皆川 守
(72)【発明者】
【氏名】門脇 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】北原 大道
(72)【発明者】
【氏名】依田 秀夫
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0206057(US,A1)
【文献】 特開平05−065803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 13/00−15/12、23/00−25/36
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
H01F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動翼を備える動翼列と、
前記動翼列を収容する静止体と、
前記静止体の前記動翼に対面する位置に設け少なくとも1つの孔部と
前記孔部に収容可能で前記動翼を脱磁する脱磁装置と、を備えていることを特徴とするタービン。
【請求項2】
請求項に記載のタービンにおいて、
前記静止体の前記孔部に対して前記動翼列の回転方向にずれた位置に、前記動翼の挙動を計測する少なくとも1つのセンサを備えることを特徴とするタービン。
【請求項3】
請求項に記載のタービンにおいて、
前記センサは、電磁式センサであることを特徴とするタービン。
【請求項4】
請求項に記載のタービンにおいて、
前記脱磁装置は、交流磁場を発生させることを特徴とするタービン。
【請求項5】
請求項に記載のタービンにおいて、
前記脱磁装置に接続する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記交流磁場の大きさがゼロから閾値以上の第1の値まで徐々に増加し、該第1の値で維持された後、該第1の値から徐々に減少してゼロとなるように、前記脱磁装置を制御することを特徴とするタービン。
【請求項6】
請求項に記載のタービンにおいて、
前記脱磁装置に接続し、前記脱磁装置を入り切りするスイッチを備えることを特徴とするタービン。
【請求項7】
請求項に記載のタービンにおいて、
前記センサに接続し、前記センサで取得した応答波形に基づき前記動翼の着磁又は電磁加振の度合いを判断する判断装置を備えることを特徴とするタービン。
【請求項8】
請求項1に記載のタービンにおいて、
前記脱磁装置に代えて前記孔部に収容可能なダミーを備えていることを特徴とするタービン。
【請求項9】
請求項1に記載のタービンにおいて、
前記動翼列は、前記タービンの低圧段落に配置された動翼列であることを特徴とするタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
タービン動翼(動翼)のうち、特に作動流体の流れ方向の下流側(低圧側)に位置する段落群(最終翼群)の動翼は、タービンの出力に与える影響が大きいため、健全に動作するよう管理することが重要である。
【0003】
最終翼群の動翼は翼長が長いため翼の剛性が低く、励振されると振動変位が大きくなり易い。蒸気タービンにおいては、最終翼群の動翼の周囲では作動流体の流れ方向の下流側に設けられた排気室の真空度や圧力などの変化により作動流体の流れが乱れ易く、動翼が励振され易い。そのため、タービン運転中における最終翼群の動翼の挙動(例えば、振動変位)を計測し、動翼の余寿命を評価したり動翼の破損等の危険を感知する場合がある。動翼の挙動を計測する方法として、動翼のカバー上に被感知体を取り付け、動翼近傍に配置した電磁式のセンサで磁場の変化を感知して行うものがある(特許文献1,2等を参照)。
【0004】
ところで、動翼は組み立て作業等の合間に着磁する場合がある。動翼が着磁すると動翼周辺の磁場が変化するため、特許文献1,2の方法では動翼の挙動を正確に計測できない可能性がある。したがって、動翼が着磁した場合には、動翼に対し脱磁又は消磁(以下、まとめて脱磁と言う)を行う必要がある。
【0005】
一方、脱磁方法として、例えば、ビデオテープ、管路、磁気探傷検査後のタービンロータ等を対象とするものがある(特許文献3,4,5等を参照)。しかし、動翼を対象とした脱磁方法を開示する文献は特にない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2008/0206057号公報
【特許文献2】特開平7−26901号公報
【特許文献3】米国特許第4,930,033号公報
【特許文献4】特許第2733009号公報
【特許文献5】特開2013−160647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
動翼を対象とした脱磁方法は、組み立て前に、一般的に、交流の磁場を発生する門型の機械に動翼を通して行われる。しかし、全周連結翼構造など動翼列を分解して動翼単体を取り出すことが容易にはできない構造において、動翼列を組み立てた後に動翼が着磁すると、上述した方法とは別の方法で脱磁を行う必要がある。仮に、動翼列を分解することなく脱磁を行う方法があったとしても、実機プラントで車室を閉めた状態では、脱磁装置を動翼に十分に近づけることができず、脱磁を行うことができない。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、車室を開けることなく、かつ動翼列から動翼を分解することなく動翼の脱磁が可能なタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の動翼を備える動翼列と、前記動翼列を収容する静止体と、前記静止体の前記動翼に対面する位置に設け少なくとも1つの孔部と、前記孔部に収容可能で前記動翼を脱磁する脱磁装置と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車室を開けることなく、かつ動翼列から動翼を分解することなく動翼の脱磁が可能なタービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンの低圧段落に配置された動翼列の一構成例を下流側から見た概略図である。
図2図1の動翼列の一部を拡大して表す概略図である。
図3図1の動翼列を静止体の断面とともに表す概略図である。
図4図3の矢印IV−IV線による矢視断面図である。
図5図3の矢印V−V線による矢視断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンの動翼列の一部を静止体の断面とともにタービンロータの周方向に沿って見た概略図である。
図7】脱磁装置に流す交流電流を例示する図である。
図8】脱磁状態の動翼列の応答波形(脱磁応答波形)を例示した図である。
図9】着磁状態の動翼列の応答波形(着磁応答波形)を例示した図である。
図10】電磁加振状態の動翼列の応答波形(電磁加振応答波形)を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
(構成)
本実施形態に係る蒸気タービンは、静止体内に動翼列と静翼列とを有する翼段落を複数備えている。蒸気タービンの作動流体流路を流れる作動流体は静翼列で整流され、動翼列を固定するタービンロータを回転させる。
【0013】
図1は本実施形態に係る蒸気タービンの低圧段落に配置された動翼列の一構成例を下流側から見た概略図、図2図1の動翼列の一部を拡大して表す概略図である。以下、蒸気タービンの低圧段落に配置された動翼列に本発明を適用した構成を説明するが、他の段落に配置された動翼列に本発明を適用した構成も基本的に同様である。
【0014】
図1,2に示すように、動翼1は、プロフィル部3及びカバー部4を備えている。動翼1は、ディスク2の外周部にタービンロータの周方向に沿って複数設けられて動翼列を構成している。カバー部4は、各プロフィル部3の翼長方向の外周部に設けられている。図1では、動翼1は、作動流体流路を流れる作動流体により、下流側から見て時計回り(図1の矢印Y方向)に回転する。ただし、本発明には回転方向は影響しない。タービンロータの動翼1に対して作動流体の流れ方向の上流側に、複数の静翼を備える静翼列(不図示)が設けられている。
【0015】
動翼1は、プロフィル部3を予め捩った状態で組み付けることで隣接翼同士のカバー部4に押し付け力を作用させる方法、又は、動翼1の回転時の遠心力の作用でプロフィル部3に発生する捩り戻りによって、隣接翼同士のカバー部4の接触面5に押し付け力を作用させる方法等により、複数の動翼1が連結した構造(全周連結翼構造)である。図2は前者の連結構造を例示している。
【0016】
図3図1の動翼列を静止体の断面とともに表す概略図である。図3において、図1と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0017】
図3に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン100は、動翼1及び静止体Cを備えている。静止体Cは、動翼1に対して蒸気タービン100の径方向の外周側に設けられていて、動翼1及び静翼を収容するように構成されている。静止体Cは、例えば、車室(ケーシング)であるが、動翼1の外周側に設けられた他の部材(例えば、ダイアフラム)があるときはそれも静止体Cに含まれる。
【0018】
静止体Cには、脱磁装置F(後述する)を収容可能な孔部6とセンサS(後述する)を収容可能な孔部7とが設けられている。孔部6及び孔部7はそれぞれ脱磁装置F及びセンサSの形状に応じて形成されており、孔部6,7の大きさや形状は異なる場合もあれば同様となる場合もあり得る。以下、孔部6及び孔部7について説明する。
【0019】
図4は、図3の矢印IV−IV線による矢視断面図である。
【0020】
図4に示すように、本実施形態では、静止体Cに孔部6として外周側孔部6A及び上流側孔部6Bが設けられている。
【0021】
外周側孔部6Aは、動翼1の先端部(本例ではカバー部4)に対して、蒸気タービン100の径方向の外側(図4の矢印Z方向)に対向するように静止体Cに設けられている。外周側孔部6Aは、静止体Cにタービンロータの周方向に沿って複数設けられている(図3を参照)。
【0022】
上流側孔部6Bは、動翼1の先端部(本例ではカバー部4)に対して、蒸気タービン100の軸方向の上流側(図4の矢印Xと反対方向)に対向するように静止体Cに設けられている。特に図示していないが、外周側孔部6Aと同様、上流側孔部6Bも静止体Cにタービンロータの周方向に沿って複数設けられている。なお、図4は、上流側孔部6Bを、タービンロータの周方向において、静止体Cの外周側孔部6Aと対応する位置に設けた場合を例示しているが、外周側孔部6Aとずらした位置に設けても良い。また、適切な効果が得られるのであれば、外周側孔部6Aのみ、または上流側孔部6Bのみの設置としても良い。
【0023】
図4の構成例では、外周側孔部6A及び上流側孔部6Bにそれぞれ脱磁装置Fが収容されている。脱磁装置Fは、例えば、通電により交流磁場を発生させるように構成されている。動翼1が矢印Y方向(図3を参照)に回転することにより脱磁装置Fに対面する位置(脱磁位置)を通過し、脱磁される。動翼1を脱磁させるには、動翼1が脱磁位置を少なくとも1回通過する必要がある。動翼列の全ての動翼1を脱磁する場合には、例えば、駆動装置(不図示)により動翼1を手動で1周以上回転させることが好ましい。
【0024】
図5図3の矢印V−V線による矢視断面図である。
【0025】
図5に示すように、本実施形態では、静止体Cに孔部7として外周側孔部7A及び上流側孔部7Bが設けられている。
【0026】
外周側孔部7Aは、動翼1の先端部(本例ではカバー部4)に対して、蒸気タービン100の径方向(図5の矢印Z方向)に対向するように静止体Cに設けられている。
【0027】
上流側孔部7Bは、動翼1の先端側(本例ではカバー部4)に対して、蒸気タービン100の軸方向の上流側(図5の矢印Xと反対方向)に対向するように静止体Cに設けられている。特に図示してないが、外周側孔部7Aと同様、上流側孔部7Bも、外周側孔部6Bに対して動翼1の回転方向にずれて、静止体Cにタービンロータの周方向に沿って複数設けられている。なお、図5は、上流側孔部7Bを、タービンロータの周方向において、静止体Cの外周側孔部7Aと対応する位置に設けた場合を例示しているが、外周側孔部7Aとずらした位置に設けても良い。
【0028】
図5に示すように、外周側孔部7A及び上流側孔部7BにそれぞれセンサSが収容されている。センサSは、蒸気タービン運転中における動翼1の挙動を計測するためのものである。なお、図5は、外周側孔部7A及び上流側孔部7BにセンサSを収容した場合を例示したが、動翼1の挙動を計測できれば、外周側孔部7A及び上流側孔部7Bの一方にセンサSを収容すれば良い。
【0029】
(効果)
(1)本実施形態では、静止体Cの動翼1に対面する位置に、動翼1を脱磁する脱磁装置Fを収容可能な孔部6を設けているので、孔部6に脱磁装置Fを収容させて動翼1を回転させることにより、動翼1を脱磁できる。そのため、静止体を開けることなく、かつ動翼列を分解することなく動翼を脱磁できる。
【0030】
(2)上述した、プロフィル部3を予め捩った状態で組み付けることで隣接翼同士のカバー部4に押し付け力を作用させる方法の場合、隣接する動翼1のカバー部4同士は、動翼1の連結を開始した直後から常に接触面5で接触する(図2を参照)。また、上述した、動翼1の回転時の遠心力の作用でプロフィル部3に発生する捩り戻りによって、隣接翼同士のカバー部4に押し付け力を作用させる方法の場合、動翼1の静止時に隣接する動翼1のカバー部4同士の間には間隙が形成されるが、微小な大きさである。カバー部4同士の間に脱磁装置Fを設置するスペースはなく、しかも回転体側に脱磁装置Fを設置するのは、取り付け、取り外し、配線等を考慮すると好ましくない。したがって、全周連結翼構造を備える動翼列の動翼を車室を閉めた状態で脱磁するためには、動翼列の外周側に脱磁装置を設けるより他ない。しかしながら、一般的に、タービンの動翼列の周辺に脱磁装置を設けるスペースを確保することは困難である。
【0031】
これに対し、本実施形態は、静止体Cに脱磁装置Fを収容可能な孔部6を設ける構成としているため、動翼1の周辺に脱磁装置Fを設けるスペースを確保する必要がない。
【0032】
(3)本実施形態では、静止体Cに外周側孔部6A及び上流側孔部6Bを設けている。そのため、動翼1の脱磁時に外周側孔部6A及び上流側孔部6Bに脱磁装置Fを収容させることにより、動翼1の外周側及び上流側から脱磁をすることができる。したがって、動翼1の脱磁効果を向上させることができる。
【0033】
(4)本実施形態に係る蒸気タービン100は、単に静止体Cに孔部6を設けるだけで良いので、蒸気タービンの静止体に対し簡単な作業を施すことにより容易に得ることができる。
【0034】
<第2実施形態>
(構成)
図6は、本実施形態に係る蒸気タービンの動翼列の一部を静止体の断面とともにタービンロータの周方向に沿って見た概略図である。図6において、上記第1実施形態の蒸気タービン100と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る蒸気タービン100は、外周側孔部6Aに脱磁装置Fの代わりにダミーDを収容させ、さらに制御装置8を備える点で第1実施形態の蒸気タービン100と異なる。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0036】
ダミーDは、外周側孔部6Aの内部と作動流体流路との連通を遮断し、作動流体流路から外周側孔部6Aへの作動流体の流入を抑制するためのものでる。なお、図6は、外周側孔部6Aの内部を充填するようにダミーDを形成した場合を例示しているが、上述の機能を発揮できれば、ダミーDの形状は限定されない。また、図6では、外周側孔部6AにダミーDを収容させているが、上流側孔部6BにダミーDを収容させても良い。
【0037】
制御装置8は、脱磁装置Fに接続し、脱磁装置Fに流す交流電流の大きさ(周波数)を制御する機能を有している。一般的に、脱磁装置が発生させる交流磁場の大きさは、脱磁装置を流れる交流電流の大きさと相関している。そのため、制御装置8は、脱磁装置Fに流す交流電流の大きさを制御することにより、脱磁装置Fが発生させる交流磁場の大きさを制御する。なお、脱磁装置Fに流す交流電流の大きさは、脱磁装置Fに流したときに脱磁装置Fが発生させる交流磁場が動翼1を脱磁できるような値であれば良い。
【0038】
図7は、脱磁装置Fに流す交流電流を例示する図である。縦軸は交流電流の振幅A、横軸は脱磁装置Fに交流電流を流し始めてからの経過時間tを示している。
【0039】
図7の例では、制御装置8は、振幅がゼロから徐々に増加し(第1の工程)、設定値A1で設定時間t1だけ維持し(第2の工程)、設定値A1から徐々に減少してゼロとなる(第3の工程)ように、交流電流の大きさを制御する。上述の設定時間t1は、動翼列の全ての動翼1に脱磁のための交流磁場を十分に作用させることができる時間である。なお、図7では、第1の工程〜第3の工程を例示しているが、振幅を所望の値で一定時間だけ維持して動翼1を脱磁できれば、第1の工程における振幅の上がり方や第3の工程における振幅の下がり方は限定されない。
【0040】
図7に例示した交流電流を脱磁装置Fに流すと、脱磁装置Fは、交流磁場の大きさがゼロから閾値以上の任意の値(第1の値)まで徐々に増加し、第1の値で時間t1だけ維持された後、第1の値から徐々に減少してゼロとなるような交流磁場を発生させる。上述の第1の値は、図7において振幅が設定値A1に到達したときの交流電流に対応した交流磁場の大きさである。
【0041】
図6に示すように、制御装置8はスイッチ9及び比較装置10を備えている。
【0042】
スイッチ9は脱磁装置Fを入り切りする機能を有している。なお、図6は、制御装置8がスイッチ9を備える場合を例示しているが、上述の機能を発揮できれば、スイッチ9を制御装置8と別個に設けても良い。
【0043】
比較装置10は、センサSと電気的に接続していて、センサSで計測された動翼1の応答波形を、予め計測して例えば自己又は制御装置8の記憶装置に記憶した脱磁の必要がない動翼1の応答波形(基準応答波形)と比較し、例えば基準応答波形との差分により動翼1の着磁や電磁加振の度合い等を判断する機能を有する。なお、図6は、制御装置8が比較装置10を備える構成を例示しているが、上述した機能を発揮できれば、比較装置10を制御装置8と別個に設けても良い。また、比較装置10を設ける代わりに、例えば、センサSで取得した動翼1の応答波形と基準応答波形とを表示装置や印刷装置等の出力装置に表示し、作業者が両者を比較して動翼1の着磁や電磁加振の度合い等を判定しても良い。
【0044】
比較装置10の動作について説明する。
【0045】
図8は脱磁状態の動翼1の応答波形(脱磁応答波形)を例示した図である。縦軸は磁場(磁場の強さ)、横軸は動翼1の回転開始後の経過時間を示している。
【0046】
図8に示す脱磁応答波形の各周期は、動翼列の各動翼1に対応している。脱磁応答波形の各周期では、磁場の強さが、動翼1がセンサSに対面する位置(検出位置)に近づくに従って増加し、動翼1が検出位置に到達したときに最大となり、動翼1が検出位置から遠ざかるに従って減少する。
【0047】
図8に示すように、脱磁応答波形の各周期には、磁場の強さが閾値TGを下から上に跨ぐ点(通過点P)が存在する。センサSは、磁場の強さが閾値TGを跨ぐ(すなわち、通過点Pが存在する)場合に、その周期に対応する動翼1の挙動を正確に計測することができる。一方、センサSは、磁場の強さが閾値TGを跨がない(すなわち、通過点Pが存在しない)場合には、その周期に対応する動翼1の挙動を正確に計測することができない。
【0048】
図8に示す脱磁応答波形は、基準応答波形と同様の形状となる。そのため、比較装置10は、脱磁応答波形と基準応答波形とを比較し、動翼1が脱磁状態にあると判断する。
【0049】
図9は着磁状態の動翼1の応答波形(着磁応答波形)を例示した図である。縦軸は磁場(磁場の強さ)、横軸は動翼1の回転開始後の経過時間を示している。
【0050】
図9に示すように、着磁応答波形は脱磁応答波形(図8を参照)と異なり、着磁した動翼1に対応する周期において乱れが生じている。すなわち、着磁した動翼1に対応する周期において、磁場の強さが閾値TGを跨がない(通過点Pが存在しない)。この場合、比較装置10は、着磁応答波形と基準応答波形とを比較し、動翼1が着磁状態にあると判定してその着磁の度合いを判断する。なお、図9に示す着磁応答波形では、着磁した動翼1に対応する周期において通過点Pが存在していない。そのため、センサSは、通過点Pが存在していない周期に対応する動翼1の挙動を正確に計測することができない。
【0051】
比較装置10により動翼1の着磁の度合いが判断された後、制御装置8は、比較装置10の判断結果に基づき、脱磁装置Fに交流電流を流して動翼1の着磁の度合いに応じた交流磁場を発生させ、動翼1を脱磁する。なお、制御装置8は、必要に応じて、脱磁装置Fに交流電流を流す前に脱磁装置Fに直流電流を流して直流磁場を発生させ、着磁応答波形を上げ下げさせても良い。以降は、上述と同様の方法で動翼1を脱磁する。
【0052】
図10は電磁加振状態の動翼1の応答波形(電磁加振応答波形)を例示した図である。縦軸は磁場(磁場の強さ)、横軸は動翼1の回転開始後の経過時間を示している。電磁加振とは、直流磁石又は交流磁石により動翼1を強制加振させることを言い、強制加振させた状態の動翼1の振動特性を取得する場合等に実施される。図10に示すように、電磁加振応答波形は脱磁応答波形(図8を参照)に比べて磁場の強さが強くなる(つまり、応答波形の振幅が大きくなる)。この場合、比較装置10は、電磁加振応答波形と基準応答波形とを比較し、動翼1が電磁加振状態にあると判定してその電磁加振の度合いを判断する。
【0053】
(効果)
本実施形態でも、静止体Cの動翼1に対面する位置に、動翼1を脱磁する脱磁装置Fを収容可能な孔部6を設けているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態では次の効果が得られる。
【0054】
本実施形態に係る蒸気タービン100は、脱磁装置Fを入り切りするスイッチ9を備えている。そのため、動翼1に対する脱磁装置Fの誤作動を抑制することができ、蒸気タービン100の安全性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る蒸気タービン100は、センサSで計測された動翼1の応答波形を基準応答波形と比較し、動翼1の着磁や電磁加振の度合い等を判断する判断装置10を備えている。したがって、動翼1の残留磁場を計測する装置等を別途設けることなく、容易に動翼1の着磁の度合い等を判断することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る蒸気タービン100は、孔部6の内部と作動流体流路との連通を遮断し、作動流体流路から孔部6への作動流体の流入を抑制するダミーDを備えている。したがって、複数の孔部6のうち脱磁装置Fを収容しない孔部6にダミーDを収容させることにより、蒸気タービン100の運転時に作動流体が孔部6へ流入して漏れ損失などが発生することを抑制できる。また、蒸気タービン100の運転時における熱的影響を考慮して脱磁装置Fを孔部6から抜き取った場合には、孔部6にダミーDを収容させることにより、作動流体が孔部6へ流入して漏れ損失などが発生することを抑制できる。
【0057】
<その他>
本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、各実施形態の構成の一部を削除することも可能である。
【0058】
上述した各実施形態では、静止体Cに孔部6及び孔部7を複数設けた場合を例示したが、動翼1を脱磁し、動翼1の挙動を計測することができる限りにおいては、孔部6及び孔部7は静止体Cに少なくとも1つ設けてあれば良い。
【0059】
また、上述した各実施形態では、動翼1の外周側及び上流側に孔部6及び孔部7を設けた場合を例示したが、動翼1を脱磁し、動翼1の挙動を計測することができる限りにおいては、孔部6及び孔部7を動翼1の下流側に設けても良い。
【0060】
また、上述した各実施形態では、本発明を全周連結翼構造を備える動翼列を対象として適用した場合を説明したが、例えば、ガスタービン、動翼先端が連結していない構造を備える動翼列、試験設備における運転、エンジン等の回転体などを対象として本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1 動翼
2 ディスク
3 プロフィル部
4 カバー部
5 接触面
6(6A,6B) 孔部
7(7A,7B) 孔部
8 制御装置
9 スイッチ
10 判断装置
100 蒸気タービン
C 静止体
F 脱磁装置
S センサ
D ダミー
X 軸方向
Y 回転方向
Z 径方向
A,A1 振幅
t,t1 時間
P 通過点
TG 閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10