(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2表面に垂直な方向から見たとき、前記第1領域のうち前記孔の周囲を取り囲む部分は前記延在部分によって覆われている、請求項1または2に記載の複合構造体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜
図3を参照して、実施の形態1における電子機器について説明する。本実施の形態における電子機器201は、複合構造体を備える。ここでいう、「複合構造体」とは、以下の実施の形態のいずれかで説明するものである。複合構造体について詳しくは、実施の形態2以降で述べる。
【0011】
電子機器201は、ここではスマートフォンであるものとして説明するが、電子機器はスマートフォンには限られない。本実施の形態で示す構成は、後述のように多種多様な電子機器に適用可能である。
【0012】
図1に示した例でいうと、電子機器201は、正面に表示部31を備える。電子機器201は、背面および側面を実質的に覆うように外装カバー30を備える。
図1に示した例では電子機器201の外装カバー30に覆われていない部分には筐体20が見えている。
【0013】
電子機器201の外装カバー30を外した状態で、表示部31とは反対側すなわち背面が上側になるようにした状態の斜視図を
図2に示す。筐体20は、正面側筐体部品21と背面側筐体部品22とを含む。背面側筐体部品22の外面の一部を覆うように板金アンテナ10が配置されている。筐体20に外装カバー30が付いている状態では板金アンテナ10は覆い隠される。
【0014】
図2に示した背面側筐体部品22および板金アンテナ10は、複合構造体を構成するものの一部である。複合構造体は第1部材と第2部材とを含む。第1部材は板金アンテナ10を含む。第2部材は背面側筐体部品22を含む。
図2に示した装置から複合構造体に相当する部分を取り出し、その一部を拡大したところを
図3に示す。
図3は、
図2における左上の部分に相当する。
図3では、
図2とは異なる側から見たところを表示している。複合構造体についての詳細な構造は、実施の形態2以降で述べるとおりである。
【0015】
(作用・効果)
本実施の形態では、以下の実施の形態で説明されるような複合構造体を備えているので、少ない部品点数で簡単に防水構造を実現することができている。本実施の形態によれば、アンテナによる通信機能を備えていながら防水性能を有する電子機器とすることができる。防水性を具備しつつ、所望の性能を確保するための構造を少ない部品点数で実現することができる。
【0016】
なお、
図1に示した外装カバー30の形状は、あくまで一例であってこれに限るものではない。外装カバー30の形状は、他の部品の形状、配置などに応じて適宜変わりうる。本実施の形態における電子機器としては、外装カバー30は必須ではなく、外装カバー30はあってもなくてもよい。
【0017】
本実施の形態では、背面側筐体部品22が第2部材に相当する例を示したが、背面側筐体部品22の代わりに正面側筐体部品21が第2部材に相当する構成であってもよい。
【0018】
なお、本実施の形態では、「電子機器」という語を用いているが、電子機器としてはさまざまな機器が想定されうる。電子機器は、たとえば携帯電話、携帯情報端末、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ゲーム機、テレビ受像機、携帯音楽プレーヤー、CDプレーヤー、DVDプレーヤー、電子辞書、電子書籍リーダー、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ラジオ受信機、カーナビゲーションシステムなどであってもよい。携帯電話の概念にはスマートフォンが含まれる。
【0019】
(実施の形態2)
(構成)
図3〜
図8を参照して、実施の形態2における複合構造体について説明する。
図4は、
図3におけるIV−IV線に関する矢視断面図である。
【0020】
本実施の形態における複合構造体は、アンテナ構造体を含む。ここでは、板金アンテナを含むアンテナ構造体を例にとって説明するが、複合構造体はここに示したものに限らない。
【0021】
本実施の形態における複合構造体101は、第1部材としての板金アンテナ10と、互いに逆の側を向く第1表面3および第2表面4を有し、第1表面3の側と第2表面4の側とを連通させる貫通孔5を有する第2部材としての背面側筐体部品22と、貫通孔5に板金アンテナ10が通っている状態で板金アンテナ10と背面側筐体部品22との相対的位置関係を固定しつつ貫通孔5を封止する封止部6とを備える。背面側筐体部品22において、第1表面3は外側表面であり、第2表面4は内側表面である。背面側筐体部品22は、貫通孔5の第2表面4側に隣接して第2表面4に開口する封止剤室7を有する。封止部6は、封止剤室7の内部で封止剤が硬化した部分を含む。板金アンテナ10は帯状である。板金アンテナ10は、第1表面3の側で延在する第1部分51と、第2表面4の側で第2表面4に沿って延在する延在部分としての第2部分42と、第1部分51および第2部分52の間に介在し、封止剤室7および貫通孔5を貫通する貫通部分としての中間部分53とを含む。第2部分52はアンテナ端子部11を含む。
【0022】
封止剤室7の近傍を
図4における下側から見た斜視図を
図5に示す。
図5では、説明の便宜のため、封止部6を取り除いた状態を示している。封止剤室7に封止部6が充填されている状態を平面的に見たところを
図6に示す。封止剤室7の内部空間の内訳を
図7に示す。
【0023】
図7に示すように、封止剤室7は、中間部分53および第2部分52によって覆われる第1領域61と、中間部分53を挟んで第1領域の反対側に位置する第2領域62と、第1領域61および第2領域62の両方に接しつつ中間部分53の一方の主面から他方の主面へとまたがる第3領域63とを含んでいる。
図7に示したように、第3領域63は複数個存在していてもよい。
【0024】
板金アンテナ10の第2部分52は、第1領域61の一部を露出させる孔としての注入孔15を有する。注入孔15は、第1領域61へと封止剤を注入するための開口部である。たとえば
図7に示すようにノズル25によって注入孔15から第1領域61へと注入された封止剤は、矢印91a,91bに示すように第1領域61から第3領域63へと進行し、さらに矢印92a,92bに示すように第2領域62へと進行し、最終的に第2領域62の中で互いに衝突する。このようにして、封止剤が中間部分53を取り囲む。このように板金アンテナ10の中間部分53を取り囲んだ状態で封止剤が硬化することによって、
図6に示したように封止部6が形成されている。
【0025】
なお、
図4に示すように、背面側筐体部品22の第2表面4には凹部4aが設けられていてもよい。板金アンテナ10は、他の部品との間で電気的接続を行なうためのアンテナ端子部11を備える。本実施の形態では、アンテナ端子部11は凹部4aに収まっている。
図4に示すように、板金アンテナ10には固定孔14が設けられていてもよい。
図4に示した例では、板金アンテナ10の第1部分51に固定孔14が設けられている。この場合、背面側筐体部品22に設けられたピン9が固定孔14に挿入されることによって板金アンテナ10は背面側筐体部品22に対して固定されている。
【0026】
第1部材としての板金アンテナ10を単独で取り出したところを
図8に示す。板金アンテナ10は、通常、一体的に形成された帯状の金属片である。板金アンテナ10は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とを含む。第2部分52の一部または全部がアンテナ端子部11となっている。板金アンテナ10は、アンテナ端子部11とは反対の側に延在するアンテナ本体部12を備える。板金アンテナ10は、通常、このように途中で曲がった構造を有している。板金アンテナ10は、あくまで第1部材の一例として例示したものであって、第1部材は板金アンテナ以外のものであってもよい。また、第1部材が板金アンテナであったとしても、その形状、サイズなどはここに示したものに限らない。
図8に示したものはあくまで一例である。
【0027】
アンテナ端子部11の表面に対しては、
図4に示したように、配線基板18に設置されたバネ接点端子17が相対的に押し当てられ、電気的接続が行なわれる。
図4では、二点鎖線で配線基板18およびバネ接点端子17を表示しているが、これらの位置、形状などはあくまで一例であり、図示したものに限らない。
【0028】
(作用・効果)
本実施の形態では、板金アンテナが通っている貫通孔が封止部によって封止されているので、筐体部品の外側と内側との間で水が流通することは防止することができる。したがって、板金アンテナの性能を発揮可能な状態を維持しつつ筐体部品の防水構造を実現することができている。Oリング付きナットとビスとの組合せを用いる方法に比べても、本実施の形態では、Oリング付きナットとビスとの2つの部品は不要であるので、部品点数を削減することができている。すなわち、少ない部品点数で簡単に防水構造を実現することができる。防水性を具備しつつ、所望の性能を確保するための構造を少ない部品点数で実現することができる。
【0029】
封止部6は、接着剤が充填されることによって形成された部分を含むことが好ましい。この構成を採用することにより、簡単に封止部を形成することができる。封止部は、一部のみが接着剤が充填されることによって形成されたものであってもよいが、全体が接着剤が充填されることによって形成されたものであってもよい。ここで、充填に用いるものとしては、接着剤に代えて何らかの樹脂などを用いてもよい。
【0030】
本実施の形態では、板金アンテナ10の第2部分52は、封止剤室7の第1領域61の一部を露出させる注入孔15を有するので、この注入孔15を通じて封止剤室7への封止剤の注入を正確に行なうことができる。また、封止剤室7への封止剤の注入状態を容易に安定させることができる。これによって、完成品の特性を安定させることができる。ここで例示しているように第1部材が板金アンテナ10である場合には、アンテナ特性を安定させることができる。注入孔15は第2表面4に垂直な方向に向かって開口しているので、注入孔15を用いれば第2表面4に垂直な方向から封止剤を注入することも可能である。したがって、ロボットなどを用いて注入作業を自動化することも容易である。たとえば1つの電子機器に対応する複合構造体が複数の貫通孔5を備えており、各貫通孔5ごとに封止をする必要がある場合には、ロボットを用いることによって、これらの複数箇所の貫通孔5に対応する注入作業を同時並行的に行なうことも可能である。
【0031】
第1領域61は、封止剤室7の中でも隠れて見えにくい領域であるが、本実施の形態では、このような第1領域61に対して注入孔15を利用して封止剤が直接注入されうるので、確実な注入を行なうことができる。
【0032】
本実施の形態では、注入孔15を通じて第1領域61へと封止剤の注入が行なわれるのであり、第1領域61より後で第2領域62へと封止剤が流入する。万が一封止剤が封止剤室7から溢れたとしても、そのような溢れが生じる可能性がある第2領域62は、第1領域62の反対側すなわちアンテナ端子部11などのように電気的接続を行なう部位とは反対側である。したがって、溢れた封止剤による電気的接続への悪影響をなるべく回避することができる。
【0033】
図6におけるIX−IX線に関する矢視断面図を
図9に示す。ただし、
図9では、説明の便宜のため、封止部6を取り除いた状態を示している。
【0034】
第1領域61の一部を露出させる孔としての注入孔15は、封止剤を注入する器具の先端を受け入れるための形状を有することが好ましい「封止剤を注入する器具」とは、たとえばノズルである。「封止剤を注入する器具」は、たとえばシリンジであってもよい。本実施の形態で示した例では、注入孔15は、第2部材としての背面側筐体部品22の幅方向中央に円形にあけられた開口部となっている。たとえば封止剤を注入する器具が、円筒形状の先端を有するノズル25である場合、注入孔15は、このノズル25の先端の直径よりやや大きい直径の円形の開口部であればよい。ノズル25の先端を注入孔15に挿入することによってノズル25を位置決めすることができる。
図9では、ノズル25が注入孔15に差し込まれた様子を示している。ノズル25で封止剤を注入する様子を
図10に示す。
【0035】
図9および
図10に示すように、第2表面4に垂直な方向から見たとき、第1領域61のうち注入孔15の周囲を取り囲む部分は第2部分52によって覆われていることが好ましい。注入孔15を経由して注入される封止剤は、第2表面4にほぼ垂直な方向に進行しつつ封止剤室7内へと進入することとなるが、この際に、封止剤室7の下面に衝突して上側に跳ね返る場合がある。しかし、注入孔15の周囲を取り囲む部分が、第1部材としての板金アンテナ10の第2部分52によって覆い隠されていれば、注入された封止剤のうち下面で跳ね返ったものが封止剤室7から出てしまうことを防止することができる。
【0036】
図5〜
図7に示すように、第2表面4に垂直な方向から見たとき、
第3領域63a,63bは丸みを帯びた形状を有することが好ましい。このような形状であることにより、封止剤室7内に注入された封止剤が円滑に進行することができるからである。注入された封止剤は、封止剤室7内を進行する途中で進行方向を転換する必要があるが、その際に流れの勢いをなるべく失なわずに方向転換できることが好ましい。そのためには、封止剤の流れの折返し点に相当する第3領域63a,63bは丸みを帯びた形状を有することが好ましい。ここでいう「丸みを帯びた形状」とは、ここで示したように、平面的に見れば丸みを帯びているが断面で見たときには丸みを帯びていない形状であってもよい。ただし、これに限らず、たとえば平面的に見ても断面で見ても丸みを帯びている形状であってもよい。
【0037】
ここまで、第1部材は板金アンテナ10であるものとして説明してきたが、第1部材は、板金アンテナとは限らず他のものであってもよい。第1部材は、板金アンテナを含むことが好ましい。本実施の形態における複合構造体を、電子機器の板金アンテナおよびその周辺に適用することで、防水構造の恩恵を特に顕著に享受することができるからである。
【0038】
第2部材は、筐体部品を含むことが好ましい。上述の複合構造体を、電子機器の筐体部品およびその周辺に適用することで、防水構造の恩恵を特に顕著に享受することができるからである。
【0039】
1つの筐体部品に複数の複合構造体を構築することも可能である。1つの電子機器が複数の複合構造体を備えることとしてもよい。この際には、構成の異なる複数の複合構造体が1つの電子機器の中に併存していてもよい。
【0040】
実施の形態1における電子機器は、実施の形態2で説明したいずれかの複合構造体を備える、電子機器である。あるいは、実施の形態1における電子機器は、これより後で述べるいずれかの実施の形態における複合構造体を備える、電子機器であってもよい。実施の形態1における電子機器は、上述のいずれかの複合構造体を備えているので、防水性を確保しつつ所望の性能を有する電子機器とすることができる。
【0041】
(実施の形態3)
(構成)
図11〜
図12を参照して、実施の形態3における複合構造体について説明する。本実施の形態では、第1部材が板金アンテナ以外のものである。第1部材は、
図11および
図12に示すように給電端子26である。ここでは1つの背面側筐体部品22において、2つの給電端子26が1つの対をなすように配置されている。個々の給電端子26は、帯状の導電体である。給電端子26は、第2部材としての背面側筐体部品22に設けられた貫通孔5を貫通するように配置されている。このような給電端子26においても、実施の形態2で説明したような複合構造体の構成を適用することができる。
【0042】
本実施の形態で示したように、第1部材が給電端子26であり、第2部材は背面側筐体部品22であってよい。本実施の形態においても、第1表面3が筐体部品の外側表面となり、第2表面4が筐体部品の内側表面となる点は実施の形態2と同様である。
図11および
図12で見えている部分は、第1部材としての給電端子26のうち、実施の形態2でいうところの第1部分51に相当する。
【0043】
(作用・効果)
本実施の形態では、防水性を具備しつつ、給電のための性能を確保するための構造を少ない部品点数で実現することができる。
【0044】
(実施の形態4)
(構成)
図13〜
図14を参照して、実施の形態4における複合構造体について説明する。本実施の形態では、第1部材は
図13および
図14に示すようにフレキシブル基板(FPC)27である。
図13に示した例では、フレキシブル基板27はいわゆるキーFPCであり、2個のキー28を備えている。フレキシブル基板27は、第2部材としての背面側筐体部品22に設けられた貫通孔5を貫通するように配置されている。背面側筐体部品22の裏側から見た様子を
図14に示す。基板33が配置されており、基板33の表面にコネクタ34が設けられている。貫通孔5を通ったフレキシブル基板27の一端は、封止剤室7を通り抜けてコネクタ34に接続されている。
図14に示した例では、説明の便宜のために、封止剤室7内の封止部は表示していないが、実際には、封止剤室7内には封止剤が充填されて硬化することによって封止部となっている。このようなフレキシブル基板27においても、実施の形態2で説明したような構造を適用することができる。
【0045】
本実施の形態では、第1部材がフレキシブル基板27であり、第2部材は背面側筐体部品22であってよい。本実施の形態においても、第1表面3が筐体部品の外側表面となり、第2表面4が筐体部品の内側表面となる点は、実施の形態2と同様である。第1部材としてのフレキシブル基板27のうち
図13で見えている部分は、実施の形態2でいうところの第1部分51に相当する。第1部材としてのフレキシブル基板27のうち
図14で見えている部分は、実施の形態2でいうところの第2部分52に相当する。
【0046】
ここでは、フレキシブル基板27がキーFPCである例を示したが、他の種類のフレキシブル基板においても同様に構造を適用することができる。
【0047】
(作用・効果)
本実施の形態では、防水性を具備しつつ、キー設置のための性能を確保するための構造を少ない部品点数で実現することができる。
【0048】
なお、本実施の形態において、第2部材は、背面側筐体部品22の代わりに正面側筐体部品21であってもよい。
【0049】
(実施の形態5)
(製造方法)
図15〜
図17を参照して、実施の形態5における複合構造体の製造方法について説明する。本実施の形態における複合構造体の製造方法のフローチャートを
図15に示す。ここでは一例として、実施の形態2で説明した複合構造体を得るための製造方法について説明する。
【0050】
本実施の形態における複合構造体の製造方法は、第1部材と、互いに逆の側を向く第1表面および第2表面を有し、前記第1表面の側と前記第2表面の側とを連通させる貫通孔を有する第2部材とを用意する第1工程S1と、前記貫通孔に前記第1部材を挿入する第2工程S2と、第2工程S2より後で、前記貫通孔を含む部分に封止剤を注入する第3工程S3と、第3工程S3で注入された前記封止剤を硬化させることで、前記第1部材と前記第2部材とを相対的に固定しつつ前記貫通孔を封止する第4工程S4とを含む。前記第2部材は、前記貫通孔の前記第2表面側に隣接して前記第2表面に開口する封止剤室を有する。前記第1部材は、前記第2部材の前記第2表面の側で前記第2表面に沿って延在する延在部分と、前記封止剤室および前記貫通孔を貫通する貫通部分とを含む。前記封止剤室は、前記貫通部分および前記延在部分によって囲まれる第1領域と、前記貫通部分を挟んで前記第1領域の反対側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域の両方に接しつつ前記貫通部分の一方の主面から他方の主面へとまたがる第3領域とを含んでいる。前記延在部分は、前記第1領域の一部を露出させる孔を有する。第3工程S3では、前記封止剤を注入する器具の先端を前記孔にあてがうことによって、前記孔を経由して前記第1領域へと前記封止剤の注入を行なう。第3工程S3では、前記第1領域へと注入された前記封止剤は、前記第2領域を経由して前記第3領域へと進行することによって、前記貫通部分を取り囲むように配置される。
【0051】
各工程について具体的に説明する。第1工程S1では、たとえば
図8に示したような第1部材としての板金アンテナ10と、
図16に示すような第2部材としての背面側筐体部品22を用意する。
【0052】
第2工程S2では、第2部材の貫通孔5に第1部材としての板金アンテナ10を挿入する。この結果、
図17に示すような構造が得られる。板金アンテナ10の第2部分52には予め、第1領域61の一部を露出させる孔としての注入孔15が設けられている。
【0053】
この後に行なう第3工程S3の際の様子は、
図7、
図9、
図10に示したとおりである。貫通孔を含む部分すなわち封止剤室に封止剤が注入される。注入はたとえばノズル25によって行なうことができる。すなわち、たとえばノズル25の先端を第1部材の注入孔15にあてがうことによって、注入孔15を経由して第1領域61へと封止剤の注入を行なう。
【0054】
この後に行なう第3工程S3の際の様子は、
図7、
図9、
図10に示したとおりである。貫通孔を含む部分に封止剤が注入される。ここでいう「貫通孔を含む部分」とは、たとえば、貫通孔5と封止剤室7とを合わせた部分である。注入はたとえばノズル25によって行なうことができる。すなわち、たとえばノズル25の先端を第1部材の第2部分52の注入孔15にあてがうことによって、注入孔15を経由して第1領域61へと封止剤の注入を行なう。
【0055】
第4工程S4では、第3工程S3で注入された封止剤を硬化させることで、第1部材と第2部材とを相対的に固定しつつ貫通孔5を封止する。なお、第3工程S3と第4工程S4とは、同時並行して行なわれてもよい。
【0056】
(作用・効果)
本実施の形態における複合構造体の製造方法によれば、防水性を具備しつつ所望の性能を確保するための構造を、少ない部品点数で実現することができる複合構造体を得ることができる。本実施の形態では、第1領域61へと封止剤を注入するための注入孔15を有する第1部材を用い、第3工程S3では、封止剤を注入する器具の先端を注入孔15にあてがうことによって、注入孔15を経由して第1領域61へと封止剤の注入を行なうので、封止剤の注入を正確に行なうことができる。また、封止剤の注入状態を容易に安定させることができる。
【0057】
(実施の形態6)
(構成)
図18〜
図19を参照して、実施の形態6における複合構造体について説明する。本実施の形態における複合構造体101iを
図18に示す。
図18におけるXIX−XIX線に関する矢視断面図を
図19に示す。複合構造体101iの基本的な構成は、実施の形態2で説明したものと同様であるが、実施の形態2に比べて以下の点で異なる。
【0058】
複合構造体101iにおいては、貫通孔5を塞ぐようにシート35が貼られている。シート35は背面側筐体部品22の外側表面3および板金アンテナ10の表面にまたがるように貼られている。シート35の貼付は、たとえば接着によるものであってよい。シート35の材質は、特に限定されないが、たとえばポリカーボネートであってもよい。シート35の厚みはたとえば0.15mmである。
【0059】
複合構造体101iを組み立てる際には、たとえば、背面側筐体部品22の貫通孔5に板金アンテナ10を挿入した後で、貫通孔5の外側の端を塞ぐようにシート35を貼りつけ、この状態で、シート35が貼られた面が下方を向くような姿勢とし、上方を向く第2部分52の注入孔15から封止剤の注入を行なえばよい。
【0060】
(作用・効果)
本実施の形態においても、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。さらに本実施の形態では、シート35が底の役割を果たし、重力による封止剤の下方への変位や落下を防止するので、硬化前の封止剤が貫通孔5および封止剤室7の内部に留まりやすくなる。すなわち、封止剤が適切な位置に配置された状態で封止剤を固めることが容易となる。また、封止剤が固まった後の状態においては、外側すなわち
図19における上方から背面側筐体部品22を見たとき、封止部6はシート35によって覆い隠されているので、ユーザが封止部6に触れることを防止することができる。シート35は、封止部6を保護する役割を果たす。
【0061】
(実施の形態7)
図20〜
図21を参照して、実施の形態7における複合構造体について説明する。本実施の形態における複合構造体101jを
図20に示す。
図20におけるXXI−XXI線に関する矢視断面図を
図21に示す。複合構造体101jの基本的な構成は、実施の形態6で説明したものと同様であるが、実施の形態6に比べて以下の点で異なる。
【0062】
複合構造体101jにおいては、貫通孔5の近傍にシート35の位置決めのための凸部36が設けられている。
図20および
図21に示した例では、凸部36は壁状の突起であり、平面視したときにL字形となっている。シート35が貼られる際には、凸部36にシート35の端を側方から押し当てることによってシート35の位置決めがなされている。凸部36は背面側筐体部品22の一部である。凸部36は、背面側筐体部品22のうちの他の部分と共に一体的に成形されたものであることが好ましい。ここでは、凸部36がL字形である例を示したが、形状はL字形とは限らない。凸部36は連続した1つのL字形に限らず、互いに垂直な関係にある2本の辺が離れて並んでいる形状であってもよい。凸部36は、たとえばピン状の複数の突起であってもよい。これらのピン状の突起にシート35を側方から押し当てることによって、シート35の位置決めができるようにしてあってもよい。
【0063】
(実施の形態8)
図22を参照して、実施の形態8における複合構造体について説明する。本実施の形態における複合構造体101kを
図22に示す。複合構造体101kの基本的な構成は、実施の形態6で説明したものと同様であるが、実施の形態6に比べて以下の点で異なる。
【0064】
図19、
図21に示した例では、シート35の途中に段差が生じていたが、このような段差はない方が好ましい。そこで、本実施の形態における複合構造体101kでは、
図22に示すように、背面側筐体部品22の上面3のうち貫通孔5の近傍の一部にかさ上げ部37が設けられている。かさ上げ部37は台地状に高くなっている部分である。かさ上げ部37の上面は平坦である。
図22に示した例では、かさ上げ部37の高さは板金アンテナ10の厚みとほぼ同じである。この構成を採用することにより、シート35がほぼ曲がらず平坦な状態を維持したままシート35を貼り付けることができる。このように平坦な状態で貼り付けた方がシート35に作用する負担を減らすことができるので、シート35の信頼性を増すこととなる。かさ上げ部37は、貫通孔5の周囲でシート35が重なる領域に設ければよい。
図22に示した例では、凸部36は示されていないが、凸部36とかさ上げ部37とは併用してもよい。すなわち、たとえばかさ上げ部37の上面に、さらに突出するように位置決め用の凸部36を設けておいてもよい。
【0065】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。