(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、
図1ないし
図12を参照して説明する。
【0031】
図1は、第1の実施形態に係る連続式高せん断加工装置1の構成を概略的に示している。高せん断加工装置1は、第1の押出機2、第2の押出機3および第3の押出機4を備えている。第1の押出機2、第2の押出機3および第3の押出機4は、互いに直列に接続されている。
【0032】
第1の押出機2は、例えば二種類の非相溶性の樹脂を予備的に混練するための要素である。ブレンドされる樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなメタクリレート系樹脂およびポリカーボネート樹脂(PC)を使用している。ブレンドされる二種類の樹脂は、例えばペレットの状態で第1の押出機2に供給される。
【0033】
本実施形態では、樹脂の混練・溶融の度合いを強化するため、第1の押出機2として同方向回転型の二軸混練機を用いている。
図2および
図3は、二軸混練機の一例を開示している。二軸混練機は、バレル6と、バレル6の内部に収容された二本のスクリュ7a,7bと、を備えている。バレル6は、二つの円筒を組み合わせた形状を有するシリンダ部8を含んでいる。前記樹脂は、バレル6の一端部に設けた供給口9からシリンダ部8に連続的に供給される。さらに、バレル6は、シリンダ部8に供給された樹脂を加熱するためのヒータを備えている。
【0034】
スクリュ7a,7bは、互いに噛み合った状態でシリンダ部8に収容されている。スクリュ7a,7bは、図示しないモータから伝わるトルクを受けて互いに同方向に回転される。
図3に示すように、スクリュ7a,7bは、夫々フィード部11、混練部12およびポンピング部13を備えている。フィード部11、混練部12およびポンピング部13は、スクリュ7a,7bの軸方向に沿って一列に並んでいる。
【0035】
フィード部11は、螺旋状に捩じれたフライト14を有している。スクリュ7a,7bのフライト14は、互いに噛み合った状態で回転するとともに、供給口9から供給された二種類の樹脂を混練部12に向けて搬送する。
【0036】
混練部12は、スクリュ7a,7bの軸方向に並んだ複数のディスク15を有している。スクリュ7a,7bのディスク15は、互いに向かい合った状態で回転するとともに、フィード部11から送られた樹脂を予備的に混練する。混練された樹脂は、スクリュ7a,7bの回転によりポンピング部13に送り込まれる。
【0037】
ポンピング部13は、螺旋状に捩じれたフライト16を有している。スクリュ7a,7bのフライト16は、互いに噛み合った状態で回転するとともに、予備的に混練された樹脂をバレル6の吐出端から押し出す。
【0038】
このような二軸混練機によると、スクリュ7a,7bのフィード部11に供給された樹脂は、スクリュ7a,7bの回転に伴うせん断発熱およびヒータにより加熱されたバレル6からの熱を受けて溶融する。二軸混練機での予備的な混練により溶融された樹脂は、ブレンドされた原料を構成する。原料は、
図1に矢印Aで示すように、バレル6の吐出端から第2の押出機3に連続的に供給される。
【0039】
原料が第2の押出機3に供給される時点では、原料は第1の押出機2での予備的な混練により溶融されて流動性を有している。したがって、原料を本格的に混練する第2の押出機3の負担を軽減することができる。
【0040】
第2の押出機3は、原料の高分子成分がナノ分散化された微視的な分散構造を有する混練物を生成するための要素である。本実施形態では、第2の押出機3として単軸押出機を用いている。単軸押出機は、バレル20と、一本のスクリュ21と、を備えている。スクリュ21は、溶融された原料にせん断作用および伸長作用を繰り返し付加する機能を有している。スクリュ21を含む第2の押出機3の構成に関しては、後で詳細に説明する。
【0041】
第3の押出機4は、第2の押出機3から押し出された混練物に含まれるガス成分を除去するための要素である。本実施形態では、第3の押出機4として単軸押出機を用いている。
図4に示すように、単軸押出機は、バレル22と、バレル22に収容された一本のベントスクリュ23と、を備えている。バレル22は、真っ直ぐな円筒状のシリンダ部24を含んでいる。第2の押出機3から押し出された混練物は、シリンダ部24の軸方向に沿う一端部からシリンダ部24に連続的に供給される。
【0042】
バレル22は、ベント口25を有している。ベント口25は、シリンダ部24の軸方向に沿う中間部に開口されているとともに、真空ポンプ26に接続されている。さらに、バレル22のシリンダ部24の他端部は、ヘッド部27で閉塞されている。ヘッド部27は、混練物を吐出させる吐出口28を有している。
【0043】
ベントスクリュ23は、シリンダ部24に収容されている。ベントスクリュ23は、図示しないモータから伝わるトルクを受けて一方向に回転される。ベントスクリュ23は、螺旋状に捩じれたフライト29を有している。フライト29は、ベントスクリュ23と一体的に回転するとともに、シリンダ部24に供給された混練物をヘッド部27に向けて連続的に搬送する。
【0044】
混練物は、ベント口25に対応する位置に搬送された時に、真空ポンプ26のバキューム圧を受ける。これにより、混練物に含まれるガス状物質やその他の揮発成分が混練物から連続的に除去される。ガス状物質やその他の揮発成分が取り除かれた混練物は、ヘッド部27の吐出口28から高せん断加工装置1の外に連続的に吐出される。
【0045】
次に、第2の押出機3について詳細に説明する。
【0046】
図5および
図6に示すように、第2の押出機3のバレル20は、真っ直ぐな筒状であって、水平に配置されている。バレル20は、複数のバレルエレメント31に分割されている。
【0047】
各バレルエレメント31は、円筒状の貫通孔32を有している。バレルエレメント31は、夫々の貫通孔32が同軸状に連続するように一体的に結合されている。バレルエレメント31の貫通孔32は、互いに協働してバレル20の内部に円筒状のシリンダ部33を規定している。シリンダ部33は、バレル20の軸方向に延びている。
【0048】
供給口34がバレル20の軸方向に沿う一端部に形成されている。供給口34は、シリンダ部33に連通するとともに、当該供給口34に第1の押出機2でブレンドされた原料が連続的に供給される。
【0049】
バレル20は、図示しないヒータを備えている。ヒータは、バレル20の温度が原料の混練に最適な値となるようにバレル20の温度を調整する。さらに、バレル20は、例えば水あるいは油のような冷媒が流れる冷媒通路35を備えている。冷媒通路35は、シリンダ部33を取り囲むように配置されている。冷媒は、バレル20の温度が予め決められた上限値を超えた時に冷媒通路35に沿って流れ、バレル20を強制的に冷却する。
【0050】
バレル20の軸方向に沿う他端部は、ヘッド部36で閉塞されている。ヘッド部36は、吐出口36aを有している。吐出口36aは、供給口34に対しバレル20の軸方向に沿う反対側に位置されるとともに、第3の押出機4に接続されている。
【0051】
図5ないし
図7に示すように、スクリュ21は、スクリュ本体37を備えている。本実施形態のスクリュ本体37は、一本の回転軸38と、複数の円筒状の筒体39と、で構成されている。
【0052】
回転軸38は、第1の軸部40および第2の軸部41を備えている。第1の軸部40は、バレル20の一端部の側である回転軸38の基端に位置されている。第1の軸部40は、継手部42およびストッパ部43を含んでいる。継手部42は、図示しないカップリングを介してモータのような駆動源に連結される。ストッパ部43は、継手部42に同軸状に設けられている。ストッパ部43は、継手部42よりも径が大きい。第2の軸部41は、第1の軸部40のストッパ部43の端面から同軸状に延びている。第2の軸部41は、バレル20の略全長に亘る長さを有するとともに、ヘッド部36と向かい合う先端を有している。
【0053】
第2の軸部41は、ストッパ部43よりも径が小さいソリッドな円柱状である。
図8および
図9に示すように、第2の軸部41の外周面に一対のキー45a,45bが取り付けられている。キー45a,45bは、第2の軸部41の周方向に180°ずれた位置で第2の軸部41の軸方向に延びている。
【0054】
さらに、スクリュ本体37は、真っ直ぐな軸線O1を有している。軸線O1は、第1の軸部40および第2の軸部41を同軸状に貫通するとともに、回転軸38の軸方向に水平に延びている。
【0055】
図6ないし
図10に示すように、筒体39は、スクリュ本体37の外径を規定する要素であって、第2の軸部41の上に同軸状に挿入されている。本実施形態によると、全ての筒体39の外径D1は、互いに同一に設定されている。
【0056】
筒体39は、その軸方向に沿う両端に端面39aを有している。端面39aは、軸線O1と直交する方向に沿うフラットな面である。一対のキー溝47a,47bが筒体39の内周面に形成されている。キー溝47a,47bは、筒体39の周方向に180°ずれた位置で筒体39の軸方向に延びているとともに、筒体39の両方の端面39aに開口されている。
【0057】
筒体39は、キー溝47a,47bを第2の軸部41のキー45a,45bに合わせた状態で第2の軸部41の先端の方向から第2の軸部41の上に挿入される。本実施形態では、第2の軸部41の上に最初に挿入された筒体39と第1の軸部40のストッパ部43の端面との間に第1のカラー48が介在されている。さらに、全ての筒体39を第2の軸部41の上に挿入した後、第2の軸部41の先端面に固定ねじ49を介して第2のカラー50が固定されている。
【0058】
固定ねじ49は、締結具の一例であり、第2のカラー50は端板の一例である。第2のカラー50を第2の軸部41の先端面に固定することで、全ての筒体39が第1のカラー48と第2のカラー50との間で第2の軸部41の軸方向に締め付けられ、隣り合う筒体39の端面39aが隙間なく密着されている。
【0059】
この結果、全ての筒体39が第2の軸部41の上で同軸状に結合され、外径が一定のセグメント式のスクリュ本体37が構成される。それとともに、回転軸38と筒体39とが一体構造物として組み立てられ、筒体39が回転軸38に追従して軸線O1を中心に回転するようになっている。
【0060】
本実施形態において、筒体39は、キー45a,45bにより回転軸38に固定されることに限定されるものではない。例えば、キー45a,45bの代わりに、
図2に示すようなスプラインを用いて筒体39を回転軸38に固定してもよい。
【0061】
スクリュ21は、バレル20のシリンダ部33に収容されている。スクリュ21のスクリュ本体37は、シリンダ部33に対し同軸状に位置されており、当該スクリュ本体37の外周面とシリンダ部33の内周面との間に搬送路51が形成されている。
図8および
図9に示すように、搬送路51は、シリンダ部33の径方向に沿う断面形状が円環形であり、シリンダ部33の軸方向に延びている。さらに、回転軸38の継手部42およびストッパ部43は、バレル20の一端部からバレル20の外に突出されている。
【0062】
本実施形態では、スクリュ21を回転軸38の基端の方向から見た時に、スクリュ21は、駆動源からのトルクを受けて
図5に矢印で示すように反時計回り方向に左回転する。スクリュ21の回転数は、600rpm〜3000rpmとすることが好ましい。
【0063】
図5ないし
図7および
図10に示すように、スクリュ本体37は、原料を搬送する複数の搬送部54と、原料の流動を制限する複数の障壁部55と、を有している。搬送部54および障壁部55は、スクリュ本体37の軸方向に交互に並べて配置されている。スクリュ本体37の軸方向は、スクリュ本体37の長手方向と言い換えることができる。
【0064】
各搬送部54は、螺旋状に捩じれたフライト56を有している。フライト56は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路51に向けて張り出しており、当該フライト56の頂部が搬送部54の外周面を構成している。フライト56は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように捩じれている。言い換えると、フライト56は、フライト56の捩じれ方向が左ねじと同じように左に捩じれている。
【0065】
スクリュ本体37の軸方向に沿う搬送部54の長さは、例えば原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。さらに、搬送部54とは、少なくとも筒体39の外周面にフライト56が形成された領域のことであるが、フライト56の始点と終点との間に領域に特定されるものではない。
【0066】
すなわち、筒体39の外周面のうちフライト56から外れた領域も搬送部54とみなされることがあるし、フライト56を有する筒体39と隣り合う位置に円筒状のスペーサあるいは円筒状のカラーが配置された場合、当該スペーサやカラーも搬送部54に含まれることがあり得る。
【0067】
各障壁部55は、螺旋状に捩じれたフライト57を有している。フライト57は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路51に向けて張り出しており、当該フライト57の頂部が障壁部55の外周面を構成している。フライト57は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。言い換えると、フライト57は、フライト57の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0068】
フライト57のピッチは、フライト56のピッチと同じか、フライト56のピッチよりも小さい。さらに、フライト56,57の頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間には、僅かなクリアランスが確保されている。
【0069】
スクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部55の長さは、例えば原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。障壁部55は、搬送部54により送られる原料の流動を堰き止めるように機能する。すなわち、障壁部55は、原料の搬送方向の下流側で搬送部54と隣り合うとともに、搬送部54によって送られる原料がフライト57の頂部とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過するのを妨げるように構成されている。
【0070】
本実施形態では、バレル20の一端部に対応するスクリュ本体37の基端に障壁部55が位置され、バレル20の他端部に対応するスクリュ本体37の先端部には、吐出用フライト58が設けられている。吐出用フライト58は、スクリュ本体37の先端部に位置された筒体39の外周面から搬送路51に向けて張り出している。吐出用フライト58は、スクリュ本体37の基端から先端の方向に原料を搬送するように捩じれている。バレル20の供給口34は、スクリュ本体37の基端に最も近い一つの搬送部54の軸方向に沿う中間部と向かい合っている。
【0071】
本実施形態によると、フライト56,57,58は、全て外径D1が等しい複数の筒体39の外周面から搬送路51に向けて張り出している。このため、筒体39の外周面は、スクリュ21の谷径を規定している。スクリュ21の谷径は、スクリュ21の全長に亘って一定値に保たれている。
【0072】
図5ないし
図7、
図10に示すように、スクリュ本体37は、スクリュ本体37の軸方向に延びる複数の通路60を有している。通路60は、スクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。さらに、スクリュ本体37の軸方向に沿う中間部では、
図9に示すように、スクリュ本体37の軸方向に延びる四つの通路60がスクリュ本体37の周方向に90°の間隔を存して並んでいる。
【0073】
図6および
図10に示すように、各通路60は、一つの障壁部55と、当該障壁部55を挟んだ二つの搬送部54とを一つのユニットとした時に、これら搬送部54および障壁部55に対応する三つの筒体39の間に跨って形成されている。
【0074】
具体的に述べると、各通路60は、第1ないし第3の通路要素61,62,63で規定されている。第1の通路要素61は、通路60の入口と言い換えることができる。第1の通路要素61は、前記一つのユニット毎に障壁部55よりもスクリュ本体37の基端の側に位置された搬送部54に対応する筒体39の外周面に開口されている。第1の通路要素61の開口端は、搬送部54に対応する筒体39の外周面上において、当該搬送部54よりもスクリュ本体37の基端の側で隣り合う障壁部55との境界付近に位置されている。さらに、第1の通路要素61の開口端は、フライト56から外れている。
【0075】
本実施形態では、第1の通路要素61は、筒体39の外周面に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。そのため、第1の通路要素61は、円形の断面形状を有する穴であり、軸線O1と直交するように筒体39の外周面から筒体39の径方向に延びている。第1の通路要素61の底61aは、ドリルの先端で円錐状に削り取られた傾斜面となっている。
【0076】
第2の通路要素62は、原料が流通する通路本体と言い換えることができる。第2の通路要素62は、搬送部54および障壁部55に対応する三つの筒体39の間に跨るようにスクリュ本体37の軸線O1と平行に延びている。したがって、第2の通路要素62は、途中で分岐することなくスクリュ本体37の軸方向に一直線状に設けられているとともに、予め決められた全長を有している。
【0077】
図10に最もよく示されるように、第2の通路要素62は、前記三つの筒体39のうちスクリュ本体37の基端の側の筒体39の内部に形成された第1の部分65aと、前記三つの筒体39のうち中間の筒体39の内部に形成された第2の部分65bと、前記三つの筒体39のうちスクリュ本体37の先端の側の筒体39の内部に形成された第3の部分65cと、で構成されている。第1の部分65a、第2の部分65bおよび第3の部分65cは、スクリュ本体37の軸方向に沿って同軸状に配列されている。
【0078】
第2の通路要素62の第1の部分65aは、筒体39の軸方向に直線状に延びているとともに、当該筒体39のうち隣り合う中間の筒体39の側の端面39aに開口されている。第1の部分65aの開口端とは反対側の端部は、筒体39の端壁39bで閉塞されている。本実施形態によると、第2の通路要素62の第1の部分65aは、筒体39の端面39aに例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。このため、第1の部分65aは、円形の断面形状を有する穴で規定されている。
【0079】
第2の通路要素62の第2の部分65bは、中間の筒体39に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。第2の部分65bは、中間の筒体39を軸方向に貫通するとともに、中間の筒体39の両方の端面39aに開口されている。そのため、第2の部分65bは、円形の断面形状を有する穴で規定されている。
【0080】
第2の通路要素62の第3の部分65cは、筒体39の軸方向に直線状に延びているとともに、当該筒体39のうち隣り合う中間の筒体39の側の端面39aに開口されている。第3の部分65cの開口端とは反対側の端部は、筒体39の端壁39bで閉塞されている。本実施形態によると、第2の通路要素62の第3の部分65cは、筒体39の端面39aに例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。このため、第3の部分65cは、円形の断面形状を有する穴で規定されている。
【0081】
図6および
図10に示すように、第1の部分65aの開口端、第2の部分65bの開口端および第3の部分65cの開口端は、隣り合う三つの筒体39を回転軸38の軸方向に締め付けた時に、互いに連通するように同軸状に突き合わされている。
【0082】
第3の通路要素65cは、通路60の出口と言い換えることができる。第3の通路要素65cは、前記一つのユニット毎に障壁部55よりもスクリュ本体37の先端の側に位置された搬送部54に対応する筐体39の外周面に開口されている。第3の通路要素63の開口端は、搬送部54に対応する筒体39の外周面上において、当該搬送部54よりもスクリュ本体37の先端の側で隣り合う障壁部55との境界付近に位置されている。さらに、第3の通路要素65cの開口端は、フライト56から外れている。
【0083】
さらに、本実施形態では、第3の通路要素63は、筒体39の外周面に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。そのため、第3の通路要素63は、円形の断面形状を有する穴であり、筒体39の外周面から筒体39の径方向に延びている。第3の通路要素63の底63aは、ドリルの先端で円錐状に削り取られた傾斜面となっている。
【0084】
第1の通路要素61の開口端と第3の通路要素63の開口端とは、二つの搬送部54および一つの障壁部55を間に挟んでスクリュ本体37の軸方向に互いに離れている。言い換えると、第1の通路要素61の開口端と第3の通路要素63の開口端との間でスクリュ本体37の表面の形態が変化している。
【0085】
図10に示すように、第2の通路要素62の第1の部分65aの開口端とは反対側の端部は、筒体39の内部で第1の通路要素61に接続されている。第1の通路要素61および第2の通路要素62の第1の部分65aは、共に円形の断面形状を維持したまま互いに連通されている。さらに、第2の通路要素62の第1の部分65aの端部は、第1の通路要素61の円錐状の底61aを外れた位置で第1の通路要素61に接続されている。第2の通路要素62の第1の部分65aは、第1の通路要素61の底61aに接続してもよい。
【0086】
このため、第1の通路要素61は、スクリュ本体37の外周面に開口するように第2の通路要素62の第1の部分65aの端部から筒体39の径方向に立ち上げられた第1の立ち上がり部と言い換えることができる。
【0087】
第2の通路要素62の第3の部分65cの開口端とは反対側の端部は、筒体39の内部で第3の通路要素63に接続されている。第3の通路要素63および第2の通路要素62の第3の部分65cは、共に円形の断面形状を維持したまま互いに連通されている。さらに、第2の通路要素62の第3の部分65cの端部は、第3の通路要素63の円錐状の底63aを外れた位置で第3の通路要素63に接続されている。第2の通路要素62の第3の部分65cは、第3の通路要素63の底63aに接続してもよい。
【0088】
このため、第3の通路要素63は、スクリュ本体37の外周面に開口するように第2の通路要素62の第3の部分65cの端部から筒体39の径方向に立ち上げられた第2の立ち上がり部と言い換えることができる。
【0089】
加えて、スクリュ本体37の中間部では、通路60の入口となる第1の通路要素61と、隣り合う他の通路60の出口となる第3の通路要素63とが、隣り合う二つの障壁部55の間で搬送路51に通じている。
【0090】
それとともに、筒体39の内部に通路60を設けたことで、当該通路60は、スクリュ本体37の軸線O1に対し偏心している。このため、通路60は、スクリュ本体37が回転した時に軸線O1の回りを公転する。
【0091】
第2の通路要素62を構成する穴の内径は、例えば1mm以上、6mm未満、好ましくは1mm以上、5mm以下に設定するとよい。さらに、第2の通路要素62の内径は、入口となる第1の通路要素61の内径よりも小さい。それとともに、第2の通路要素62の径方向に沿う断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路51の断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0092】
本実施形態によると、筒体39は、第1ないし第3の通路要素61,62,63を構成する穴の形状を定める円筒状の壁面66を有している。壁面66で囲まれた第1ないし第3の通路要素61,62,63は、原料の流通のみを許容する中空の空間であって、当該空間内にスクリュ本体37を構成する要素は存在しない。さらに、壁面66は、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0093】
本実施形態において、複数の筒体39を回転軸38から取り外してスクリュ21を分解した際に、少なくともフライト56,57,58の一部が形成された筒体39は、スクリュエレメントと言い換えることができる。
【0094】
さらに、本実施形態によると、スクリュ21のスクリュ本体37は、回転軸38の上にスクリュエレメントとしての複数の筒体39を順次挿入することで構成される。このため、例えば原料の混練度合いに応じて搬送部54および障壁部55の交換や組み換えが可能であるとともに、交換・組み換え時の作業を容易に行なうことができる。
【0095】
加えて、複数の筒体39を回転軸38の軸方向に締め付けて隣り合う筒体39の端面39aを互いに密着させることで、通路60の第2の通路要素(通路本体)62が形成され、当該第2の通路要素62を介して第1の通路要素(入口)61と第3の通路要素(出口)63との間が一体的に連通される。
【0096】
このため、スクリュ本体37に通路60を形成するに当たっては、スクリュ本体37の全長に比べて長さが大幅に短い個々の筒体39に加工を施せばよい。よって、通路60を形成する際の作業性および取扱いが容易となる。
【0097】
このような構成の連続式高せん断加工装置1によると、第1の押出機2は、複数の樹脂を予備的に混練する。この混練により溶融された樹脂は、ブレンドされた流動性を有する原料となって第2の押出機3の供給口34に連続的に供給される。
【0098】
第2の押出機3に供給された原料は、
図11に矢印Bで示すように、スクリュ21の基端に最も近い搬送部54の外周面に投入される。スクリュ21は、回転軸38の基端の方向から見た時に反時計回り方向に左回転するので、搬送部54のフライト56は、
図11に実線の矢印で示すように、供給口34から投入された原料をスクリュ本体37の基端の側で隣り合う障壁部55に向けて搬送する。すなわち、フライト56は、供給口34から投入された原料をスクリュ本体37の基端に向けて逆送りする。
【0099】
この際、搬送路51内で旋回するフライト56とシリンダ部33の内周面との間の速度差によって生じるせん断作用が原料に付加されるとともに、フライト56の微妙なねじれ具合により原料が攪拌される。この結果、原料が本格的に混練され、原料の高分子成分の分散化が進行する。
【0100】
せん断作用を受けた原料は、搬送路51に沿って搬送部54と障壁部55との間の境界に達する。障壁部55のフライト57は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように右方向に捩じれているので、フライト56によって送り込まれる原料をフライト57が堰き止める。言い換えると、障壁部55のフライト57は、スクリュ21が左回転した時に、フライト56によって送り込まれる原料の流動を制限するとともに、原料が障壁部55の外周面とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを伝って通り抜けるのを妨げる。
【0101】
この結果、搬送部54と障壁部55との境界で原料の圧力が高まる。具体的に述べると、
図12は、搬送路51のうちスクリュ本体37の搬送部54に対応した箇所の原料の充満率をグラデーションで表しており、色調が濃くなる程に原料の充満率が高くなっている。
図12から明らかなように、搬送路51では、障壁部55に近づくに従い原料の充満率が高まっており、障壁部55の直前では、原料の充満率が100%となっている。
【0102】
このため、障壁部55の直前に原料の充満率が100%の原料溜まりRが形成される。原料溜まりRでは、原料の流動が堰き止められたことにより原料の圧力が上昇している。圧力が上昇した原料は、
図11および
図12に破線の矢印で示すように、通路60の第1の通路要素61から第2の通路要素62に流入する。
【0103】
第2の通路要素62の径方向に沿う断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路51の断面積よりも小さい。言い換えると、第2の通路要素62の内径は、スクリュ本体37の外径よりも遥かに小さいので、原料が第2の通路要素62を通過する際に原料が急激に絞られて、当該原料に伸長作用が付加される。
【0104】
加えて、第2の通路要素62の断面積が搬送路51の断面積よりも十分に小さいために、原料溜まりRに溜まった原料が通路60に流入するにも拘らず、障壁部55の直前の原料溜まりRが消滅することはない。このため、例えばフライト56によって障壁部55に送り込まれる原料の流量が多少減少したとしても、流量の減少分を原料溜まりRに溜まった原料で補填することができる。よって、原料は、常に安定した状態で通路60に供給される。
【0105】
第2の通路要素62を通過した原料は、
図12に実線の矢印で示すように、第3の通路要素63を通じてスクリュ本体37の先端の側で隣り合う搬送部54に帰還される。帰還された原料は、搬送部54のフライト56によりスクリュ本体37の基端に向けて搬送され、この搬送の過程で再びせん断作用を受ける。せん断作用を受けた原料は、通路60の第1の通路要素61から第2の通路要素62に流入するとともに、当該第2の通路要素62を流通する過程で再び伸長作用を受ける。
【0106】
本実施形態では、複数の搬送部54および複数の障壁部55がスクリュ本体37の軸方向に交互に並んでいるとともに、複数の通路60がスクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。このため、供給口34からスクリュ本体37に投入された原料は、
図10および
図11に矢印で示すように、せん断作用および伸長作用を交互に繰り返し受けながらスクリュ本体37の基端から先端の方向に連続的に搬送される。よって、原料の混練の度合いが強化され、原料の高分子成分の分散化が促進される。
【0107】
複数の通路60の第2の通路要素62は、個々に第1の通路要素61および第3の通路要素63を介してスクリュ本体37の外周面に開口されている。このため、各通路60において、第1の通路要素61から第2の通路要素62に流入した原料は、必ず第3の通路要素63を通ってスクリュ本体37の外周面に帰還し、複数の通路60の間で原料が混じり合うことはない。
【0108】
よって、原料の混練度が過剰となるのを回避することができ、所望する混練度に見合った適切な混練が可能となる。
【0109】
スクリュ本体37の先端に達した原料は、十分に混練された混練物となって通路60の出口63からシリンダ部33とヘッド部36との間の隙間に導かれる。さらに、混練物は、ヘッド部36の吐出口36aから第3の押出機4に連続的に供給される。
【0110】
第3の押出機4では、既に述べたように、混練物に含まれるガス状物質やその他の揮発成分が混練物から連続的に除去される。ガス状物質やその他の揮発成分が取り除かれた混練物は、ヘッド部27の吐出口28から高せん断加工装置1の外に途切れることなく連続的に吐出される。吐出された混練物は、水槽内に蓄えられた冷却水に浸漬される。これにより、混練物が強制的に冷却されて、所望の樹脂成形品が得られる。
【0111】
第2の押出機3では、第1の押出機2から供給された原料がスクリュ本体37の軸方向に複数回に亘って反転を繰り返しながら搬送され、この搬送の過程で原料にせん断作用および伸長作用が繰り返し付加される。言い換えると、原料がスクリュ本体37の外周面上の同一の箇所で何回も循環することがないので、原料を第2の押出機3から第3の押出機4に間断なく供給することができる。
【0112】
これにより、十分に混練された混練物を連続的に成形することができ、バッジ式の高せん断成形装置との比較において、混練物の生産効率を飛躍的に高めることができる。
【0113】
それとともに、本実施形態では、第1の押出機2で予備的に混練された樹脂が途切れることなく第2の押出機3に供給され続けるので、第1の押出機2の内部で樹脂の流れが一時的に停滞することはない。このため、予備的に混練された樹脂が第1の押出機2の内部に滞留することにより生じる樹脂の温度変化、粘度変化あるいは相変化を防止することができる。よって、常に品質が均一の原料を第1の押出機2から第2の押出機3に供給することができる。
【0114】
第1の実施形態によると、原料に伸長作用を付加する通路60は、スクリュ本体37の回転中心となる軸線O1に対し偏心した位置でスクリュ本体37の軸方向に延びているので、通路60は、軸線O1の回りを公転する。言い換えると、通路60を規定する円筒状の壁面66は、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0115】
このため、原料が通路60を通過する際に、原料は遠心力を受けるものの当該原料が通路60の内部で活発に攪拌されることはない。よって、通路60を通過する原料がせん断作用を受け難くなり、通路60を通過して搬送部54に帰還する原料が受けるのは主に伸長作用となる。
【0116】
したがって、第1の実施形態のスクリュ21によれば、原料にせん断作用を付加する箇所および原料に伸長作用を付加する箇所を明確に定めることができる。このことから、原料の混練の度合いを見極める上で有利な構成となるとともに、混練の度合いを精度よく制御することができる。この結果、原料の高分子成分がナノ分散化された微視的な分散構造を有する混練物を生成することが可能となる。
【0117】
加えて、複数の通路60の全てが軸線O1に対し偏心しているので、複数の通路60を通過する原料に均等に伸長作用を付加することができる。すなわち、複数の通路60の間での混練の条件のばらつきを解消することができ、均一な混練を行なうことができる。
【0118】
第1の実施形態によると、複数の筒体39の外径D1が互いに同一に設定されているので、搬送路51は、スクリュ本体37の軸方向に沿う全長に亘って一様な円環状の断面形状を有することになる。このため、搬送路51を介して原料にせん断作用および伸長作用を繰り返し付加する際に、せん断作用および伸長作用を順次スムーズに原料に付加することができ、より一層均一な混練を行うことができる。
【0119】
さらに、第1の実施形態によると、従来の単軸押出機のスクリュが備えている可塑化ゾーンを有することなく、搬送部54、障壁部55および通路60を組み合わせて配置したスクリュ21としているので、第2の押出機3を容易に操作することができる。
【0120】
[第1の実施形態の変形例]
図13および
図14は、第1の実施形態と関連性を有する変形例を開示している。
【0121】
図13に示す変形例では、第2の通路要素62の第2の部分65bが設けられた筒体39の外周面に、障壁部55を構成する全てのフライト57と、搬送部54を構成する一部のフライト56とが連続して形成されている。すなわち、二種類のフライト56,57が形成された筒体39の内部に、第2の通路要素62の第2の部分65bが位置されている。
【0122】
このような構成の場合、第2の通路要素62の第2の部分65bが設けられる筒体39として、
図14に示されるような外周面の全ての領域に障壁部55用のフライト57が形成された専用の筒体68を準備すれば、当該筒体68を二種類のフライト56,57が形成された前記筒体39と入れ換えることが可能となる。
【0123】
これにより、通路60を形成する三つの筒体39,68の長さの範囲内で搬送部54用のフライト56が占める領域と障壁部55用のフライト57が占める領域との割合を、例えば原料の混練の度合いに応じて変更することができる。
【0124】
[第2の実施形態]
図15は、第2の実施形態を開示している。第2の実施形態は、スクリュ21の回転軸38に関する事項が第1の実施形態と相違している。それ以外の第2の押出機3の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0125】
図12に示すように、冷媒通路71が回転軸38の内部に形成されている。冷媒通路71は、回転軸38の軸線O1に沿って同軸状に延びている。冷媒通路71の一端は、継手部42の箇所でロータリジョイント72を介して出口配管73に接続されている。冷媒通路71の他端は、回転軸38の先端で液密に塞がれている。
【0126】
冷媒導入管74が冷媒通路71の内部に同軸状に挿入されている。冷媒導入管74の一端は、ロータリジョイント72を介して入口配管75に接続されている。冷媒導入管74の他端は、冷媒通路71の他端付近で冷媒通路71内に開口されている。
【0127】
第2の実施形態では、水又は油等の冷媒が入口配管75からロータリジョイント72および冷媒導入管74を介して冷媒通路71に送り込まれる。冷媒通路71に送り込まれた冷媒は、冷媒通路71の内周面と冷媒導入管74の外周面との間の隙間を通って回転軸38の継手部42に帰還するとともに、ロータリジョイント72を介して出口配管73に戻される。
【0128】
第2の実施形態によると、冷媒が回転軸38の軸方向に沿って循環するので、当該冷媒を利用してスクリュ本体37を冷却することができる。このため、原料に接するスクリュ本体37の温度を適正に調節することができ、原料の温度上昇に基づく樹脂の劣化および粘度の変化等を未然に防止することができる。
【0129】
[第3の実施形態]
図16ないし
図22は、第3の実施形態を開示している。第3の実施形態は、スクリュ21のスクリュ本体37に関する事項が第1の実施形態と相違している。それ以外の第2の押出機3の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0130】
図16および
図17に示すように、スクリュ本体37を構成する複数の筒体39は、第1の実施形態と同様に、第1のカラー48と第2のカラー50との間で第2の軸部41の軸方向に締め付けられ、隣り合う筒体39の端面39aが隙間なく密着されている。
【0131】
スクリュ本体37は、原料を搬送する複数の搬送部81と、原料の流動を制限する複数の障壁部82と、を有している。搬送部81および障壁部82は、スクリュ本体37の軸方向に交互に並べて配置されている。
【0132】
図17および
図19に示すように、各搬送部81は、螺旋状に捩じれたフライト84を有している。フライト84は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路51に向けて張り出しており、当該フライト84の頂部が搬送部81の外周面を構成している。フライト84は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。言い換えると、フライト84は、フライト84の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0133】
スクリュ本体37の軸方向に沿う搬送部81の長さは、例えば原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。さらに、搬送部81とは、少なくとも筒体39の外周面にフライト84が形成された領域のことであるが、フライト84の始点と終点との間の領域に特定されるものではない。
【0134】
言い換えると、筒体39の外周面のうちフライト84から外れた領域も搬送部81とみなされることがある。それとともに、フライト84を有する筒体39と隣り合う位置に円筒状のスペーサあるいは円筒状のカラーが配置された場合、当該スペーサやカラーも搬送部81に含まれることがあり得る。
【0135】
各障壁部82は、螺旋状に捩じれたフライト85を有している。フライト85は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路51に向けて張り出しており、当該フライト85の頂部が障壁部82の外周面を構成している。フライト85は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように捩じれている。言い換えると、フライト85は、フライト85の捩じれ方向が左ねじと同じように左に捩じれている。
【0136】
障壁部82のフライト85のピッチは、搬送部81のフライト84のピッチと同じか、フライト84のピッチよりも小さい。さらに、フライト84,85の頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間には、僅かなクリアランスが確保されている。
【0137】
スクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部82の長さは、例えば原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。障壁部82は、搬送部81により送られる原料の流動を堰き止めるように機能する。すなわち、障壁部82は、原料の搬送方向の下流側で搬送部81と隣り合うとともに、搬送部81によって送られる原料がフライト85の頂部とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過するのを阻止するように構成されている。
【0138】
よって、本実施形態に係る第2の押出機3では、障壁部82の位置で原料の流動が堰き止められ、原料が障壁部82の外周面とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過しないことを前提としている。
【0139】
本実施形態によると、スクリュ本体37の基端では、複数の搬送部81がスクリュ本体37の軸方向に連続して配列されている。バレル20の供給口34は、スクリュ本体37の基端において一つの搬送部81の軸方向に沿う中間部と向かい合っている。同様に、スクリュ本体37の先端では、複数の搬送部81がスクリュ本体37の軸方向に連続して配列されている。
【0140】
図17および
図19に示すように、スクリュ本体37の中間部では、搬送部81を構成するフライト84および障壁部82を構成するフライト85が共通する筒体39の周方向に沿う外周面に連続して形成されている。すなわち、一つの筒体39の外周面に機能が異なる二種類のフライト84,85が軸方向に連続して形成されている。障壁部82を構成するフライト85は、搬送部81を構成するフライト84に対しスクリュ本体37の先端の側に位置されている。
【0141】
さらに、本実施形態では、フライト84,85は、全て外径D1が等しい複数の筒体39の外周面から搬送路51に向けて張り出している。このため、筒体39の外周面は、スクリュ21の谷径を規定している。スクリュ21の谷径は、スクリュ21の全長に亘って一定値に保たれている。
【0142】
図16ないし
図20に示すように、スクリュ本体37は、スクリュ本体37の軸方向に延びる複数の通路86を有している。通路86は、スクリュ本体37の軸方向に沿う同一の直線上に位置するように一列に整列されている。各通路86は、二種類のフライト84,85が形成された二つの筒体39の間に跨るように、当該筒体39の内部に形成されている。具体的に述べると、各通路86は、第1ないし第3の通路要素87,88,89で規定されている。
【0143】
第1の通路要素87は、通路86の入口と言い換えることができる。第1の通路要素87は、隣り合う二つの筒体39のうちの一方の筒体39の外周面に開口されている。第1の通路要素87の開口端は、搬送部81と障壁部82との境界に位置されているとともに、搬送部81のフライト84および障壁部82のフライト85から外れている。
【0144】
さらに、本実施形態では、第1の通路要素87は、一方の筒体39の外周面に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。そのため、第1の通路要素87は、円形の断面形状を有する穴であり、軸線O1と直交するように一方の筒体39の外周面から筒体39の径方向に延びている。第1の通路要素87の底87aは、ドリルの先端で円錐状に削り取られた傾斜面となっている。
【0145】
第2の通路要素88は、原料が流通する通路本体と言い換えることができる。第2の通路要素88は、隣り合う二つの筒体39の間に跨るように、スクリュ本体37の軸線O1と平行に延びている。したがって、第2の通路要素88は、途中で分岐することなくスクリュ本体37の軸方向に一直線状に設けられているとともに、予め決められた全長を有している。
【0146】
図20に最もよく示されるように、第2の通路要素88は、一方の筒体39の内部に形成された第1の部分91aと、他方の筒体39の内部に形成された第2の部分91bと、を備えている。
【0147】
第2の通路要素88の第1の部分91aは、一方の筒体39の軸方向に直線状に延びているとともに、一方の筒体39のうち他方の筒体39の側の端面39aに開口されている。第1の部分91aの開口端とは反対側の端部は、一方の筒体39の軸方向に沿う中間部で閉塞されている。本実施形態によると、第2の通路要素88の第1の部分91aは、一方の筒体39の端面39aの側から一方の筒体39に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。このため、第1の部分91aは、円形の断面形状を有する穴で規定されている。
【0148】
第2の通路要素88の第2の部分91bは、他方の筒体39の軸方向に直線状に延びているとともに、他方の筒体39のうち一方の筒体39の側の端面39aに開口されている。第2の部分91bの開口端とは反対側の端部は、他方の筒体39の内部で閉塞されている。
【0149】
本実施形態によると、第2の通路要素88の第2の部分91bは、他方の筒体39の端面39aの側から他方の筒体39に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。このため、第2の部分91bは、第1の部分91aと同様に円形の断面形状を有する穴で規定されている。
【0150】
図17および
図20に最もよく示されるように、第1の部分91aの開口端と第2の部分91bの開口端とは、隣り合う二つの筒体39を回転軸38の軸方向に締め付けた時に、互いに連通するように同軸状に突き合わされている。
【0151】
第3の通路要素89は、通路86の出口と言い換えることができる。第3の通路要素89は、隣り合う二つの筒体39のうち他方の筒体39の外周面に開口されている。第3の通路要素89の開口端は、搬送部81の上流端に位置されるとともに、当該搬送部81が有するフライト84から外れている。この結果、第1の通路要素87の開口端と第3の通路要素89の開口端とは、障壁部82を間に挟んでスクリュ本体37の軸方向に互いに離れている。
【0152】
さらに、本実施形態では、第3の通路要素89は、他方の筒体39の外周面に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。そのため、第3の通路要素89は、円形の断面形状を有する穴であり、軸線O1と直交するように他方の筒体39の外周面から筒体39の径方向に延びている。第3の通路要素89の底89aは、ドリルの先端で円錐状に削り取られた傾斜面となっている。
【0153】
図20に示すように、第2の通路要素88の第1の部分91aの開口端と反対側の端部は、一方の筒体39の内部で第1の通路要素87に接続されている。第1の通路要素87および第2の通路要素88の第1の部分91aは、共に円形の断面形状を維持したまま互いに連通されている。さらに、第2の通路要素88の第1の部分91aは、第1の通路要素87の円錐状の底87aを外れた位置で第1の通路要素87に接続されている。第2の通路要素88の第1の部分91aは、第1の通路要素87の底87aに接続してもよい。
【0154】
このため、第1の通路要素87は、スクリュ本体37の外周面に開口するように第2の通路要素88の第1の部分91aの端部から
筒体39の径方向に立ち上げられた第1の立ち上がり部と言い換えることができる。
【0155】
第2の通路要素88の第2の部分91bの開口端と反対側の端部は、他方の筒体39の内部で第3の通路要素89に接続されている。第3の通路要素89および第2の通路要素88の第2の部分91bは、共に円形の断面形状を維持したまま互いに連通されている。さらに、第2の通路要素88の第2の部分91bは、第3の通路要素89の円錐状の底89aを外れた位置で第3の通路要素89に接続されている。第2の通路要素88の第2の部分91bは、第3の通路要素89の底89aに接続してもよい。
【0156】
このため、第3の通路要素89は、スクリュ本体37の外周面に開口するように第2の通路要素88の第2の部分91bの端部から
筒体39の径方向に立ち上げられた第2の立ち上がり部と言い換えることができる。
【0157】
本実施形態によると、筒体39の内部に通路86を設けたことで、当該通路86は、スクリュ本体37の軸線O1に対し偏心している。このため、通路86は、スクリュ本体37が回転した時に軸線O1の回りを公転する。
【0158】
第2の通路要素88を構成する穴の内径は、例えば1mm以上、6mm未満、好ましくは1mm以上、5mm以下に設定するとよい。さらに、第2の通路要素88の内径は、入口となる第1の通路要素87の内径よりも小さい。それとともに、第2の通路要素88の径方向に沿う断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路51の断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0159】
本実施形態によると、筒体39は、第1ないし第3の通路要素87,88,89を構成する穴の形状を定める円筒状の壁面92を有している。壁面92で囲まれた第1ないし第3の通路要素87,88,89は、原料の流通のみを許容する中空の空間であって、当該空間内にスクリュ本体37を構成する要素は存在しない。さらに、壁面92は、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0160】
さらに、本実施形態では、フライト84,85が形成された複数の筒体39を回転軸38から取り外した時に、第1の通路要素87および第3の通路要素89の少なくともいずれか一方が設けられ、内部に第2の通路要素88が設けられた筒体39は、スクリュエレメントと言い換えることができる。
【0161】
このような構成によると、第1の押出機2でブレンドされた流動性を有する原料は、第2の押出機3の供給口34から搬送路51に連続的に供給される。第2の押出機3に供給された原料は、
図21に矢印Cで示すように、スクリュ本体37の基端に位置された一つの搬送部81の外周面に投入される。スクリュ21は、回転軸38の基端の方向から見た時に反時計回り方向に左回転するので、搬送部81のフライト84は、
図21に実線の矢印で示すように、供給口34から投入された原料をスクリュ本体37の先端に向けて搬送する。
【0162】
この際、搬送路51内で旋回するフライト84とシリンダ部33の内周面との間の速度差により生じるせん断作用が原料に付加されるとともに、フライト84の微妙なねじれ具合により原料が攪拌される。この結果、原料が本格的に混練され、原料の高分子成分の分散化が進行する。
【0163】
せん断作用を受けた原料は、搬送路51に沿って搬送部81と障壁部82との間の境界に達する。障壁部82のフライト85は、スクリュ21が左回転した時に、原料をスクリュ本体37の先端から基端に向けて搬送するので、フライト84によって送り込まれる原料をフライト85が堰き止める。
【0164】
すなわち、障壁部82のフライト85は、スクリュ21が左回転した時に、搬送部81のフライト84によって送り込まれる原料の流動を制限するとともに、原料が障壁部82の外周面とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを伝って通り抜けるのを妨げる。
【0165】
この結果、搬送部81と障壁部82との間の境界で原料の圧力が高まる。具体的に述べると、
図22は、搬送路51のうち通路86に対応した箇所の原料の充満率をグラデーションで表しており、色調が濃くなる程に原料の充満率が高くなっている。
図22から明らかな通り、搬送路51では、障壁部82に近づくに従い原料の充満率が高まっており、障壁部82の直前では、原料の充満率が100%となっている。
【0166】
このため、障壁部82の直前に原料の充満率が100%の原料溜まりRが形成される。原料溜まりRでは、原料の流動が堰き止められたことに伴い原料の圧力が上昇している。圧力が上昇した原料は、
図21および
図22に破線の矢印で示すように、搬送部81と障壁部82との間の境界に開口された通路86の第1の通路要素87から第2の通路要素88に流入する。第2の通路要素88に流入した原料は、スクリュ本体37の基端から先端に向けて第2の通路要素88を流通する。
【0167】
第2の通路要素88の径方向に沿う断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路51の断面積よりも小さい。言い換えると、第2の通路要素88の内径は、スクリュ本体37の外径よりも遥かに小さいので、原料が第2の通路要素88を通過する際に原料が急激に絞られて、当該原料に伸長作用が付加される。
【0168】
加えて、第2の通路要素88の断面積が搬送路51の断面積よりも十分に小さいために、原料溜まりRに溜まった原料が通路86に流入するにも拘らず、障壁部82の直前の原料溜まりRが消滅することはない。このため、例えば搬送部81のフライト84によって障壁部82に送り込まれる原料の流量が多少減少したとしても、流量の減少分を原料溜まりRに溜まった原料で補填することができる。よって、原料は、常に安定した状態で通路86に供給される。
【0169】
図22に破線の矢印で示すように、通路86の第2の通路要素88を通過した原料は、第3の通路要素89から隣り合う搬送部81の筒体39の外周面に帰還される。帰還された原料は、隣り合う搬送部81のフライト84によってスクリュ本体37の先端の方向に搬送され、この搬送の過程で再びせん断作用を受ける。せん断作用を受けた原料は、次の通路86の第1の通路要素87から第2の通路要素88に流入するとともに、第2の通路要素88を通過する過程で再び伸長作用を受ける。
【0170】
スクリュ本体37の軸方向に沿う中間部では、複数の搬送部81および複数の障壁部82がスクリュ本体37の軸方向に交互に並んでいるとともに、複数の通路86がスクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。このため、供給口34からスクリュ本体37に投入された原料は、せん断作用および伸長作用を交互に繰り返し受けながらスクリュ本体37の基端から先端の方向に途切れることなく連続的に搬送される。よって、原料の混練の度合いが強化され、原料の高分子成分の分散化が促進される。
【0171】
複数の通路86の第2の通路要素88は、個々に第1の通路要素87および第3の通路要素89を介してスクリュ本体37の外周面に開口されている。このため、各通路86において、第1の通路要素87から第2の通路要素88に流入した原料は、必ず第3の通路要素89を通ってスクリュ本体37の外周面に帰還し、複数の通路86の間で原料が混じり合うことはない。
【0172】
よって、原料の混練度が過剰となるのを回避することができ、所望する混練度に見合った適切な混練が可能となる。
【0173】
第3の実施形態によると、原料に伸長作用を付加する通路86は、スクリュ本体37の回転中心となる軸線O1に対し偏心した位置でスクリュ本体37の軸方向に延びているので、通路86は、軸線O1の回りを公転する。言い換えると、通路86を規定する円筒状の壁面92は、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0174】
このため、原料が通路86を通過する際に、原料が通路86の内部で活発に攪拌されることはない。よって、通路86を通過する原料がせん断作用を受け難くなり、通路86を通過して搬送部81の外周面に帰還する原料が受けるのは主に伸長作用となる。
【0175】
したがって、第3の実施形態のスクリュ21においても、原料にせん断作用を付加する箇所および原料に伸長作用を付加する箇所を明確に定めることができ、前記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0176】
[第3の実施形態の変形例]
図23は、第3の実施形態と関連性を有する変形例を開示している。変形例は、スクリュ本体37の障壁部82の構成が第3の実施形態と相違している。
図23に示すように、障壁部82は、スクリュ本体37の軸方向に延びる円筒形の大径部95で構成されている。大径部95は、スクリュ本体37の周方向に連続する外周面95aを有するとともに、スクリュ本体37の軸方向に沿う長さがスクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部82の長さと同等に設定されている。大径部95の外周面95aは、凹みや切欠きが存在しない滑らかな面とすることが好ましい。
【0177】
[第4の実施形態]
図24ないし
図31は、第4の実施形態を開示している。第4の実施形態は、スクリュ21のスクリュ本体37に関する事項が第1の実施形態と相違している。それ以外の第2の押出機3の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第4の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0178】
図24ないし
図26に示すように、スクリュ本体37を構成する複数の筒体39は、第1の実施形態と同様に、第1のカラー48と第2のカラー50との間で第2の軸部41の軸方向に締め付けられ、隣り合う筒体39の端面39aが隙間なく密着されている。
【0179】
スクリュ本体37は、原料を搬送する複数の搬送部101と、原料の流動を制限する複数の障壁部102と、原料を一時的に循環させる複数の循環部103と、を有している。搬送部101、障壁部102および循環部103は、スクリュ本体37の軸方向に並べて配置されている。
【0180】
各搬送部101は、螺旋状に捩じれたフライト105を有している。フライト105は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路51に向けて張り出しており、当該フライト105の頂部が搬送部101の外周面を構成している。フライト105は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。言い換えると、フライト105は、フライト105の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0181】
本実施形態では、スクリュ本体37の基端および先端に夫々複数の搬送部101が連続して配置されている。バレル20の供給口34は、スクリュ本体37の基端において一つの搬送部101の軸方向に沿う中間部と向かい合っている。
【0182】
スクリュ本体37の軸方向に沿う搬送部101の長さは、例えば原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。さらに、搬送部101とは、少なくとも筒体39の外周面にフライト105が形成された領域のことであるが、フライト105の始点と終点との間の領域に特定されるものではない。
【0183】
言い換えると、筒体39の外周面のうちフライト105から外れた領域も搬送部101とみなされることがある。それとともに、フライト105を有する筒体39と隣り合う位置に円筒状のスペーサあるいは円筒状のカラーが配置された場合、当該スペーサやカラーも搬送部101に含まれることがあり得る。
【0184】
障壁部102は、スクリュ本体37の基端と先端との間の中間部においてスクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。各障壁部102は、螺旋状に捩じれたフライト107を有している。フライト107は、筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路51に向けて張り出しており、当該フライト107の頂部が障壁部102の外周面を構成している。フライト107は、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように捩じれている。言い換えると、フライト107は、フライト107の捩じれ方向が左ねじと同じように左に捩じれている。障壁部102のフライト107のピッチは、搬送部101のフライト105のピッチと同じか、フライト105のピッチよりも小さい。
【0185】
さらに、スクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部102の全長は、搬送部101の全長よりも短い。加えて、フライト107の頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間のクリアランスは、フライト105との頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間のクリアランスよりも若干小さい。
【0186】
スクリュ本体37の軸方向に沿う障壁部102の長さは、例えば原料の種類、原料の混練度合い、単位時間当たりの混練物の生産量等に応じて適宜設定される。障壁部102は、搬送部101により送られる原料の流動を堰き止めるように機能する。すなわち、障壁部102は、搬送部101によって送られる原料がフライト107の頂部とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過するのを制限するように構成されている。
【0187】
循環部103は、障壁部102に対し回転軸38の基端の方向から隣り合っている。各循環部103は、螺旋状に捩じれた第1ないし第3のフライト110,111,112を有している。本実施形態では、障壁部102からスクリュ本体37の基端に向けて第1のフライト110、第2のフライト111および第3のフライト112の順に並んでいる。
【0188】
第1ないし第3のフライト110,111,112は、夫々筒体39の周方向に沿う外周面から搬送路51に向けて張り出しており、当該フライト110,111,112の頂部が循環部103の外周面を構成している。
【0189】
第1ないし第3のフライト110,111,112は、スクリュ本体37の軸方向に連続して配置されているとともに、スクリュ21が左回転した時に、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように捩じれている。言い換えると、第1ないし第3のフライト110,111,112は、個々の捩じれ方向が右ねじと同じように右に捩じれている。
【0190】
第1のフライト110のピッチは、隣り合う障壁部102のフライト107のピッチと同じか、フライト107のピッチよりも大きい。第2のフライト111のピッチは、第1のフライト110のピッチよりも小さい。第3のフライト112のピッチは、第2のフライト111のピッチよりも大きい。第1ないし第3のフライト110,111,112の頂部とバレル20のシリンダ部33の内周面との間には、僅かなクリアランスが確保されている。
【0191】
本実施形態のスクリュ21によると、各種のフライト105,107,110,111,112は、全て外径D1が等しい複数の筒体39の外周面から搬送路51に向けて張り出している。このため、筒体39の外周面は、スクリュ21の谷径を規定している。スクリュ21の谷径は、スクリュ21の全長に亘って一定値に保たれている。
【0192】
図24ないし
図26に示すように、スクリュ本体37は、スクリュ本体37の軸方向に延びる複数の通路115を有している。通路115は、循環部103の第1のフライト110の位置で筒体39の内部に形成されており、スクリュ本体37の軸方向に互いに間隔を存して一列に並んでいる。
【0193】
各通路115は、スクリュ本体37の軸線O1と平行に延びている。言い換えると、通路115は、途中で分岐することなく筒体39の軸方向に一直線状に延びており、予め決められた全長を有している。
【0194】
筒体39の内部に通路115を設けたことで、当該通路115はスクリュ本体37の軸線O1から偏心している。このため、通路115は、スクリュ本体37が軸線O1を中心に回転した時に、軸線O1の回りを公転する。
【0195】
図27に示すように、通路115は、例えば円形の断面形状を有する孔で規定されている。通路115を構成する孔の内径は、例えば1mm以上、6mm未満、好ましくは1mm以上、5mm以下に設定するとよい。通路115の径方向に沿う断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路51の断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0196】
さらに、第1のフライト110が形成された筒体39は、孔を規定する円筒状の壁面116を有している。壁面116で囲まれた通路115は、原料の流通のみを許容する中空の空間であって、当該空間内にスクリュ本体37を構成する要素は存在しない。それとともに、壁面116は、スクリュ本体37が軸線O1を中心に回転した時に、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0197】
図26および
図31に示すように、各通路115は、入口117および出口118を有している。入口117は、循環部103に対し回転軸38の先端の方向から隣り合う障壁部102の直前に位置されている。本実施形態では、循環部103を構成する筒体39の端面に、筒体39の外周面に開口された溝120が形成され、当該溝120の内面に入口117が開口されている。
【0198】
出口118は、第1のフライト110と第2のフライト111との間の境界に位置されている。本実施形態では、循環部103を構成する筒体39の端面に、筒体39の外周面に開口された溝121が形成され、当該溝121の内面に出口118が開口されている。このため、入口117および出口118は、第1のフライト110に対応した位置でスクリュ本体37の軸方向に互いに離れている。
【0199】
本実施形態によると、溝120の内面に開口された入口117の開口面積および溝121の内面に開口された出口118に開口面積は、通路115の径方向に沿う面積と同等もしくは大きくすることが望ましい。
【0200】
さらに、複数の筒体39を回転軸38から取り外してスクリュ21を分解した際に、第1のフライト110および通路115が設けられた筒体39は、スクリュエレメントと言い換えることができる。同様に、他のフライト105,107,111,112が形成された複数の筒体39にしても、回転軸38から取り外した状態ではスクリュエレメントと言い換えることができる。
【0201】
このような構成によると、第1の押出機2でブレンドされた流動性を有する原料は、第2の押出機3の供給口34から搬送路51に連続的に供給される。第2の押出機3に供給された原料は、
図30に矢印Dで示すように、スクリュ本体37の基端に位置された一つの搬送部101の外周面に投入される。
【0202】
スクリュ21は、回転軸38の基端の方向から見た時に反時計回り方向に左回転するので、搬送部101のフライト105は、供給口34から投入された原料を隣り合う循環部103に向けて搬送する。循環部103の第1ないし第3のフライト110,111,112は、
図30および
図31に実線の矢印で示すように、引き続き原料をスクリュ本体37の先端の方向に搬送する。
【0203】
この際、搬送路51内で旋回するフライト105,110,111,112とシリンダ部33の内周面との間の速度差によって生じるせん断作用が原料に付加されるとともに、フライト105,110,111,112の微妙なねじれ具合により原料が攪拌される。この結果、原料が本格的に混練され、原料の高分子成分の分散化が進行する。
【0204】
せん断作用を受けた原料は、搬送路51に沿って循環部103と障壁部102との間の境界に達する。障壁部102のフライト107は、スクリュ21が左回転した時に、原料をスクリュ本体37の先端から基端に向けて搬送するので、第1のフライト110によって送り込まれる原料をフライト107が堰き止める。
【0205】
すなわち、障壁部102のフライト107は、スクリュ21が左回転した時に、循環部103の第1のフライト110によって送り込まれる原料の流動を制限するとともに、原料が障壁部102の外周面とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを伝って通り抜けるのを妨げる。
【0206】
この結果、循環部103と障壁部102との間の境界で原料の圧力が高まる。具体的に述べると、
図31は、搬送路51のうち通路115に対応した箇所の原料の充満率をグラデーションで表しており、色調が濃くなる程に原料の充満率が高くなっている。
図31から明らかなように、搬送路51では、循環部103の第2のフライト111から障壁部102に近づくに従い原料の充満率が高まっており、障壁部102の直前では、原料の充満率が100%となっている。
【0207】
このため、障壁部102の直前に原料の充満率が100%の原料溜まりRが形成される。原料溜まりRでは、原料の流動が堰き止められたことに伴い原料の圧力が上昇している。圧力が上昇した原料は、
図30および
図31に破線の矢印で示すように、溝120を介して障壁部102の直前に位置する入口117に導かれるとともに、当該入口117から通路115に流入する。通路115に流入した原料は、スクリュ本体37の先端から基端に向けて通路115内を流通する。通路115内での原料の流れ方向は、フライト105,110,111,112によって送られる原料の流れ方向に対し逆向きとなる。
【0208】
通路115の径方向に沿う断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路51の断面積よりも小さい。言い換えると、通路115の内径は、スクリュ本体37の外径よりも遥かに小さいので、原料が通路115を通過する際に原料が急激に絞られて、当該原料に伸長作用が付加される。
【0209】
加えて、通路115の断面積が搬送路51の断面積よりも十分に小さいために、原料溜まりRに溜まった原料が通路115に流入するにも拘らず、障壁部102の直前の原料溜まりRが消滅することはない。このため、例えば第1のフライト110を介して障壁部102に送り込まれる原料の流量が多少減少したとしても、流量の減少分を原料溜まりRに溜まった原料で補填することができる。よって、原料は、常に安定した状態で通路115に送り込まれる。
【0210】
通路115を通過した原料は、出口118から溝121を通じて循環部103を構成する筒体39の外周面の上に帰還される。帰還された原料は、第1のフライト110によってスクリュ本体37の先端に向けて搬送され、この搬送の過程で再びせん断作用を受ける。
【0211】
本実施形態では、第1のフライト110により障壁部102に向けて搬送された原料の一部は、再び入口117から通路115に導かれ、循環部103の箇所で一時的に循環を繰り返す。障壁部102に向けて搬送された残りの原料は、障壁部102のフライト107の頂部とシリンダ部33の内周面との間のクリアランスを通過して隣り合う循環部103に流入する。流入した原料は、隣の循環部103の第1ないし第3のフライト110,111,112によってスクリュ本体37の先端の方向に搬送される。
【0212】
複数の通路115は、個々に入口117および出口118を介して循環部103の筒体39の外周面に開口されている。このため、各通路115において、入口117から流入した原料は、必ず出口118を通って循環部103の筒体39の外周面に帰還し、複数の通路115の間で原料が混じり合うことはない。
【0213】
よって、原料の混練度が過剰となるのを回避することができ、所望する混練度に見合った適切な混練が可能となる。
【0214】
本実施形態のスクリュ21によると、複数の障壁部102および複数の循環部103がスクリュ本体37の軸方向に沿って交互に並んでいる。それとともに、複数の通路115が複数の循環部103の第1のフライト110に対応した位置でスクリュ本体37の軸方向に間隔を存して並んでいる。このため、供給口34からスクリュ本体37に供給された原料は、せん断作用および伸長作用を交互に繰り返し受けながらスクリュ本体37の基端から先端の方向に途切れることなく連続的に搬送される。よって、原料の混練の度合いが強化され、原料の高分子成分の分散化が促進される。
【0215】
第4の実施形態によると、原料に伸長作用を付加する通路115は、スクリュ本体37の回転中心となる軸線O1に対し偏心した位置でスクリュ本体37の軸方向に延びているので、通路115は、軸線O1の回りを公転する。言い換えると、通路115を規定する筒状の壁面116は、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0216】
このため、原料が通路115を通過する際に、原料は遠心力を受けるものの当該原料に壁面116の自転に伴うせん断力が働くことはない。よって、通路115を通過して循環部103の筒体39の外周面に帰還する原料が受けるのは、主に伸長作用となる。
【0217】
したがって、第4の実施形態のスクリュ21においても、原料にせん断作用を付加する箇所および原料に伸長作用を付加する箇所を明確に定めることができ、前記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0218】
[第4の実施形態の変形例1]
図32は、第4の実施形態と関連性を有する変形例1を開示している。
【0219】
変形例1は、原料に伸長作用を付加する通路115に関する事項が第4の実施形態と相違している。それ以外の構成は、基本的に第4の実施形態と同様である。
【0220】
図32に示すように、循環部103の第1のフライト110は、回転軸38の上で隣り合う二つの筒体39の間に跨って形成されている。第1のフライト110が形成された二つの筒体39は、回転軸38の軸方向に沿う長さLが互いに均等である。
【0221】
加えて、原料に伸長作用を付加する通路115は、第1のフライト110が形成された二つの筒体39の間に跨るように、これら二つの筒体39の内部に形成されている。具体的に述べると、通路115は、第1ないし第3の通路要素131,132,133で規定されている。
【0222】
第1の通路要素131は、通路115の入口と言い換えることができる。第1の通路要素131は、隣り合う二つの筒体39のうち障壁部102と隣り合う一方の筒体39の外周面に開口されている。第1の通路要素63の開口端は、第1のフライト110から外れているとともに、隣り合う障壁部102の直前に位置されている。
【0223】
さらに、第1の通路要素131は、一方の筒体39の外周面に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。そのため、第1の通路要素131は、円形の断面形状を有する穴であり、軸線O1と直交するように一方の筒体39の外周面から筒体39の径方向に延びている。第1の通路要素131の底131aは、ドリルの先端で円錐状に削り取られた傾斜面となっている。
【0224】
第2の通路要素132は、原料が流通する通路本体と言い換えることができる。
図32に示すように、第2の通路要素132は、隣り合う二つの筒体39の間に跨るように、スクリュ本体37の軸線O1と平行に延びている。したがって、第2の通路要素132は、途中で分岐することなくスクリュ本体37の軸方向に一直線状に設けられているとともに、予め決められた全長を有している。
【0225】
第2の通路要素132は、一方の筒体39の内部に形成された第1の部分134aと、他方の筒体39の内部に形成された第2の部分134bと、を備えている。第2の通路要素132の第1の部分134aは、一方の筒体39の軸方向に直線状に延びているとともに、一方の筒体39のうち他方の筒体39の側の端面39aに開口されている。第1の部分134aの開口端とは反対側の端部は、一方の筒体39の端壁39bで閉塞されている。
【0226】
本実施形態によると、第2の通路要素131の第1の部分134aは、一方の筒体39の端面39aの側から一方の筒体39に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。このため、第1の部分134aは、円形の断面形状を有する穴で規定されている。
【0227】
第2の通路要素132の第2の部分134bは、他方の筒体39の軸方向に直線状に延びているとともに、他方の筒体39のうち一方の筒体39の側の端面39aに開口されている。第2の部分134bの開口端とは反対側の端部は、他方の筒体39の端壁39bで閉塞されている。
【0228】
本実施形態によると、第2の通路要素132の第2の部分134bは、他方の筒体39の端面39aの側から他方の筒体39に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。このため、第2の部分134bは、第1の部分134aと同様に円形の断面形状を有する穴で規定されている。
【0229】
さらに、第1の部分134aの開口端と、第2の部分134bの開口端とは、隣り合う二つの筒体39を回転軸38の軸方向に締め付けた時に、互いに連通するように同軸状に突き合わされている。
【0230】
第3の通路要素133は、通路115の出口と言い換えることができる。第3の通路要素133は、隣り合う二つの筒体39のうちの他方の筒体39の外周面に開口されている。第3の通路要素133の開口端は、第1のフライト110から外れているとともに、循環部103の第2のフライト111の直前に位置されている。したがって、第1の通路要素131および第3の通路要素133は、スクリュ本体37の軸方向に互いに離れている。
【0231】
本実施形態では、第3の通路要素133は、他方の筒体39の外周面に例えばドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。そのため、第3の通路要素133は、円形の断面形状を有する穴であり、他方の筒体39の外周面から筒体39の径方向に延びている。第3の通路要素133の底133aは、ドリルの先端で円錐状に削り取られた傾斜面となっている。
【0232】
図32に示すように、第2の通路要素132の第1の部分134aの開口端とは反対側の端部は、一方の筒体39の内部で第1の通路要素131に接続されている。第1の通路要素131および第2の通路要素132の第1の部分134aは、共に円形の断面形状を維持したまま互いに連通されている。さらに、第2の通路要素132の第1の部分134aは、第1の通路要素131の円錐状の底131aを外れた位置で第1の通路要素131に接続されている。
【0233】
このため、第1の通路要素131は、スクリュ本体37の外周面に開口するように第2の通路要素132の第1の部分134aの端部から筒体39の径方向に立ち上げられた第1の立ち上がり部と言い換えることができる。
【0234】
第2の通路要素132の第2の部分134bの開口端とは反対側の端部は、他方の筒体39の内部で第3の通路要素133に接続されている。第3の通路要素133および第2の通路要素132の第2の部分134bの端部は、共に円形の断面形状を維持したまま互いに連通されている。さらに、第2の通路要素132の第2の部分134bは、第3の通路要素133の円錐状の底133aを外れた位置で第3の通路要素133に接続されている。
【0235】
このため、第3の通路要素133は、スクリュ本体37の外周面に開口するように第2の通路要素132の第2の部分134bの端部から筒体39の径方向に立ち上げられた第2の立ち上がり部と言い換えることができる。
【0236】
第2の通路要素132を構成する穴の内径は、例えば1mm以上、6mm未満、好ましくは1mm以上、5mm以下に設定するとよい。さらに、第2の通路要素132の内径は、入口となる第1の通路要素131の内径よりも小さい。それとともに、第2の通路要素132の径方向に沿う断面積は、シリンダ部33の径方向に沿う搬送路51の断面積よりも遥かに小さく設定されている。
【0237】
さらに、筒体39は、第1ないし第3の通路要素131,132,133を構成する穴の形状を定める円筒状の壁面135を有している。壁面135で囲まれた第1ないし第3の通路要素131,132,133は、原料の流通のみを許容する中空の空間であって、当該空間内にスクリュ本体37を構成する要素は存在しない。加えて、壁面135は、スクリュ本体37が回転した時に、軸線O1を中心に自転することなく軸線O1の回りを公転する。
【0238】
このような構成の通路115においても、原料が通路115を通過する際に、原料は遠心力を受けるものの、当該原料にせん断力が働くことはなく、前記第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0239】
なお、通路115の第2の通路要素132は、必ずしもスクリュ本体37の軸線O1と平行に形成する必要はない。例えば、
図32に二点鎖線で示すように、第2の通路要素132を軸線O1に対し筒体39の径方向に傾斜させ、第2の通路要素132の第1の通路要素131とは反対側の端部を筒体39の外周面に直接開口させるようにしてもよい。
【0240】
この構成によれば、原料の出口となる第3の通路要素133を省略することができ、通路115の形状を簡素化することができる。
【0241】
[第4の実施形態の変形例2]
図33は、第4の実施形態と関連性を有する変形例2を示している。
【0242】
図33に示す変形例2では、第1のフライト110が形成された二つの筒体39の長さが互いに異なっている。具体的に述べると、第2の通路要素132の第1の部分134aが形成された一方の筒体39の全長L1が、第2の通路要素132の第2の部分134bが形成された他方の筒体39の全長L2よりも長く設定されている。
【0243】
変形例2によれば、第1のフライト110が形成された二つの筒体39の他に、回転軸38の軸方向に沿う長さL3が異なる二つの他の筒体39を用意すれば、第1のフライト110を有する二つの筒体39の長さを三段階に亘って調節することができる。具体的に述べると、全長L1の筒体39と全長L2の筒体39との組み合わせ、全長L1の筒体39と全長L3の筒体39との組み合わせ、および全長L2の筒体39と全長L3の筒体39との組み合わせが可能となる。よって、通路115の全長を容易に変更することができる。
【0244】
[第4の実施形態の変形例3]
図34ないし
図36は、第4の実施形態の変形例1と関連性を有する変形例3を示している。
【0245】
図34および
図35に示すように、第2の通路要素132の第1の部分134aの開口端とは反対側の端部は、第1の通路要素131と直交するように第1の通路要素131の円錐状の底131aに接続されている。第1の通路要素131の底131aは、第2の通路要素132に連通された円形の開口140aを有している。開口140aは、スクリュ本体37の外周面に向けて拡開するように傾斜された底131aの他の部分と向かい合っている。
【0246】
第2の通路要素132の第2の部分134bの開口端とは反対側の端部は、第3の通路要素133と直交するように第3の通路要素133の円錐状の底133aに接続されている。第3の通路要素133の底133aは、第2の通路要素132に連通された円形の開口140bを有している。開口140bは、スクリュ本体37の外周面に向けて拡開するように傾斜された底133aの他の部分と向かい合っている。
【0247】
変形例3によると、第1の通路要素131に流れ込んだ原料は、
図35(A)に矢印で示すように、第1の通路要素131の底131aに達した時点で底131aの傾斜に沿って開口140aの方向に案内される。このため、原料は、第1の通路要素131の底131aに滞留することなく円滑に第2の通路要素132に流入する。
【0248】
第2の通路要素132を通過した原料は、開口140bから第3の通路要素133の底133aに流入する。第3の通路要素133に流入した原料は、
図36(A)に矢印で示すように、底133aの傾斜に沿ってスクリュ本体37の外周面の方向に案内される。このため、原料は、第3の通路要素133の底133aに滞留することなく円滑にスクリュ本体37の外周面に帰還する。
【0249】
したがって、通路115内に局所的な原料の滞留が発生するのを回避することができ、通路115を通過する原料に所望の伸長作用を付加することができる。
【0250】
変形例3において、第1の通路要素131の底131aおよび第3の通路要素133の底133aの形状は円錐に限らず、例えば半球状に形成してもよい。
【0251】
[第4の実施形態の変形例4]
図37は、第4の実施形態の変形例1と関連性を有する変形例4を示している。
【0252】
変形例4は、第2の通路要素132の第2の部分134bの構成が変形例1と相違している。
図37に示すように、第2の部分134bは、およびストレート部134cおよびテーパ部134dを有している。ストレート部134cおよびテーパ部134dは、筒体39の端面39aの側から当該筒体39に切削加工を施すことにより形成されている。
【0253】
ストレート部134cは、第3の通路要素133に接続されている。ストレート部134cの内径は、第2の通路要素132の第1の部分134aの内径よりも小さい。テーパ部134dは、他方の筒体39の端面39aに開口されているとともに、ストレート部134cに同軸状に連通されている。テーパ部134dは、他方の筒体39の端面39aからストレート部134cの方向に進むに従い内径が連続的に減少している。このため、原料に伸長作用を付加する主要な要素である第2の通路要素132は、原料の流れ方向に沿う中間部で内径が変化している。
【0254】
テーパ部134dは、例えば他方の筒体39の端面39aに下孔を形成した後、テーパリーマを用いて下孔の内周面を切削することにより形成される。下孔は、ストレート部134cを兼ねている。
【0255】
変形例4によると、第2の通路要素132の第2の部分134bは、ストレート部134cの上流にテーパ部134dを有し、当該テーパ部134dが第2の通路要素132の中間部に位置されている。このため、第2の通路要素132は、その中間部で内径が次第に減じられており、原料が第2の通路要素132を通過する際に、原料に付加される伸長作用を強化することができる。
【0256】
[第4の実施形態の変形例5]
図38は、第4の実施形態と関連性を有する変形例5を示している。
【0257】
図38に示す変形例5では、一つの筒体39の内部に通路115が形成されている。通路115の第2の通路要素132は、例えば筒体39の一方の端面39aの側から筒体39にドリルを用いた機械加工を施すことにより形成されている。
【0258】
これにより、筒体39の内部に筒体39を軸方向に貫通する円形の断面形状を有する貫通孔150が形成され、当該貫通孔150が筒体39の両方の端面39aに開口されている。貫通孔150は、筒体39の内部で第1の通路要素131および第3の通路要素133と交差している。
【0259】
さらに、貫通孔150の二つの開口端は、個々に栓体151a,151bで液密に閉塞されている。これにより、一つの筒体39の内部に第1の通路要素131と第3の通路要素133との間を結ぶ第2の通路要素132が規定されている。
【0260】
なお、筒体39に貫通孔150を形成するに際して、貫通孔150の先端を筒体39の他方の端面39aに開口させずに筒体39の端壁39bで閉塞するようにしてもよい。
【0261】
[第4の実施形態の変形例6]
図39は、変形例5をさらに発展させた変形例6を示している。
【0262】
図39に示すように、一つの筒体39を貫通する貫通孔150は、上流部150a、下流部150bおよび中間部150cを有している。上流部150a、下流部150bおよび中間部150cは、筒体39の軸方向に沿って同軸状に一列に並んでいる。上流部150aは、筒体39の内部で第1の通路要素131交差するとともに、筒体39の一方の端面39aに開口されている。上流部150aの開口端は、栓体151aで液密に閉塞されている。
【0263】
下流部150bは、上流部150aよりも内径が小さく形成されている。下流部150bは、筒体39の内部で第3の通路要素133と交差するとともに、筒体39の他方の端面39aに開口されている。下流部150bの開口端は、栓体151bで液密に閉塞されている。
【0264】
中間部150cは、上流部150aと下流部150bとの間に位置されている。中間部150cは、上流部150aから下流部150bの方向に進むに従い内径が連続的に減少している。このため、原料に伸長作用を付加する主要な要素である第2の通路要素132は、原料の流れ方向に沿う中間部で内径が変化している。
【0265】
変形例6によると、通路115の第2の通路要素132は、その中間部150cの内径が上流から下流に向けて次第に減じられている。そのため、原料が第2の通路要素132を通過する際に、原料に付加される伸長作用を強化することができる。
【0266】
[第5の実施形態]
図40は、第5の実施形態を開示している。第5の実施形態は、原料に伸長作用を付加するための構成が第1の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0267】
図40に示すように、筒体39の内周面に一対の溝161a,161bが形成されている。溝161a,161bは、スクリュ本体37の軸方向に延びるとともに、スクリュ本体37の径方向に互いに離れている。さらに、溝161a,161bは、筒体39の内周面に開口されている。
【0268】
溝161a,161bの開口端は、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、第2の軸部41の外周面によって閉塞されている。そのため、溝161a,161bは、第2の軸部41の外周面と協働して原料に伸長作用を付加する通路162を規定している。本実施形態では、通路162は回転軸38と筒体39との間の境界に位置されている。
【0269】
第5の実施形態によると、通路162は、スクリュ本体37の内部で回転軸38の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。したがって、前記第1の実施形態と同様に、通路162は、スクリュ本体37が回転した時に軸線O1の回りを公転する。
【0270】
第5の実施形態では、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、スクリュ本体37の内部に通路162が形成される。通路162を規定する溝161a,161bは、筒体39の内周面に開口されているので、溝161a,161bを形成する作業を容易に行なうことができる。
【0271】
したがって、例えば通路162の断面形状を変更する必要が生じた際にも容易に対応することが可能となる。
【0272】
[第6の実施形態]
図41は、第6の実施形態を開示している。第6の実施形態は、原料に伸長作用を付加するための構成が第5の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、第5の実施形態と同様である。
【0273】
図41に示すように、回転軸38の第2の軸部41の外周面に一対の溝171a,171bが形成されている。溝171a,171bは、第2の軸部41の軸方向に延びるとともに、第2の軸部41の径方向に互いに離れている。さらに、溝171a,171bは、第2の軸部41の外周面に開口されている。
【0274】
溝171a,171bの開口端は、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、筒体39の内周面によって閉塞されている。そのため、溝171a,171bは、筒体39の内周面と協働して原料に伸長作用を付加する通路172を規定している。本実施形態では、通路172は回転軸38と筒体39との間の境界に位置されている。
【0275】
第6の実施形態によると、通路172は、スクリュ本体37の内部で回転軸38の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。したがって、前記第5の実施形態と同様に、通路172は、スクリュ本体37が回転した時に軸線O1の回りを公転する。
【0276】
第6の実施形態では、筒体39を回転軸38の第2の軸部41の上に挿入した時に、スクリュ本体37の内部に通路172が形成される。通路172を規定する溝171a,171bは、回転軸38の外周面に開口されているので、溝171a,171bを形成する作業を容易に行なうことができる。
【0277】
したがって、例えば通路172の断面形状を変更する必要が生じた際にも容易に対応することが可能となる。
【0278】
[第7の実施形態]
図42は、第7の実施形態を開示している。第7の実施形態は、原料に伸長作用を付加するための構成が第1の実施形態と相違している。それ以外のスクリュ21の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0279】
図42に示すように、第2の軸部41の外周面から突出されたキー45a,45bの先端面に凹所181a,181bが形成されている。凹所181a,181bは、第2の軸部41の軸方向に沿って延びているとともに、キー45a,45bの先端面に開口されている。凹所181a,181bの開口端は、キー45a,45bを筒体39のキー溝47a,47bに嵌合した時に、キー溝47a,47bの内周面によって閉塞されている。
【0280】
そのため、凹所181a,181bは、キー溝47a,47bの内周面と協働して原料に伸長作用を付加する通路182を規定している。本実施形態では、通路182は、キー45a,45bと筒体39との境界に位置されている。
【0281】
第7の実施形態によると、通路182は、スクリュ本体37の内部で回転軸38の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。したがって、前記第1の実施形態と同様に、通路152は、スクリュ本体37が回転した時に軸線O1の回りを公転する。
【0282】
第7の実施形態では、回転軸38のキー45a,45bを筒体39のキー溝47a,47bに嵌合した時に、スクリュ本体37の内部に通路182が形成される。通路182を規定する凹所181a,181bは、キー45a,45bの先端面に開口されているので、凹所181a,181bを形成する作業を容易に行なうことができる。
【0283】
したがって、例えば通路182の断面形状を変更する必要が生じた際にも容易に対応することが可能となる。
【0284】
第7の実施形態において、キー溝47a,47bの内周面に第2の軸部41の軸方向に延びる他の凹所を設け、当該他の凹所を前記凹所181a,181bと合致させることで前記通路182を規定するようにしてもよい。
【0285】
[第8の実施形態]
図43は、第8の実施形態を開示している。第8の実施形態は、スクリュ21の構成および原料に伸長作用を付加するための構成が第1の実施形態と相違している。
【0286】
図43に示すように、スクリュ21は、ソリッドなスクリュ本体200を備えている。スクリュ本体200は、真っ直ぐな一本の軸状部材201で構成されている。軸状部材201は、その中心部を同軸状に貫通する軸線O1を有するとともに、バレル20のシリンダ部33に同軸状に収容されている。
【0287】
軸状部材201は、周方向に連続する外周面201aを有し、当該外周面201aがバレル20のシリンダ部33の内周面と向かい合っている。軸状部材201の外周面201aには、原料を搬送するフライト202が形成されている。
【0288】
さらに、軸状部材201の内部に原料に伸長作用を付加する一対の通路203が形成されている。通路203は、軸状部材201の軸方向に延びているとともに、軸線O1を間に挟んで互いに平行に配置されている。このため、通路203は、スクリュ本体200の内部で軸状部材201の軸線O1に対し偏心した位置に設けられている。よって、前記第1の実施形態と同様に、通路203は、スクリュ本体200が回転した時に軸線O1の回りを公転する。
【0289】
原料に伸長作用を付加する通路203は、スクリュ本体
200が一本の棒状部材201で構成される場合でも、スクリュ本体200に形成することができる。このため、スクリュ本体は、回転軸と筒体とを組み合わせた構成に特定されるものではない。
【0290】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0291】
例えば、原料に伸長作用を付加する通路は、断面形状が円形の孔に限らない。当該通路は、例えば断面形状が楕円形や多角形の孔で構成してもよく、通路の断面形状に特に制約はない。
【0292】
加えて、前記第1の実施形態では、スクリュ本体37を回転軸38の基端の方向から見た時に、スクリュ21が反時計回り方向に左回転する場合を例に掲げて説明したが、本発明はこれに制約されるものではない。例えば、スクリュ21は、時計回り方向に右回転させてもよい。
【0293】
この場合、スクリュ21の搬送部54が有するフライト56は、スクリュ本体37の先端から基端に向けて原料を搬送するように、右ねじと同様に右に捩じれていればよい。同様に、障壁部55が有するフライト57は、スクリュ本体37の基端から先端に向けて原料を搬送するように、左ねじと同様に左に捩じれていればよい。
【0294】
それとともに、第2の押出機3から押し出された混練物に含まれるガス成分を除去する第3の押出機は、単軸押出機に特定されるものではなく、二軸押出機を用いてもよい。
【0295】
本発明に係る連続式高せん断加工装置は、少なくとも原料を予備的に混練する第1の押出機および原料を本格的に混練する第2の押出機を備えていればよく、ガス状物質や揮発成分を除去する第3の押出機は省略してもよい。第3の押出機を省略する場合、第2の押出機の中間部にガス状物質や揮発成分を混練過程にある原料から取り除く少なくとも一つのベント口を設けるとよい。