特許第6446328号(P6446328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446328
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/00 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B01D23/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-108814(P2015-108814)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-221440(P2016-221440A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】小川 智宏
(72)【発明者】
【氏名】半田 裕利
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−087011(JP,A)
【文献】 特開平05−103919(JP,A)
【文献】 特開2014−185642(JP,A)
【文献】 実開昭51−032038(JP,U)
【文献】 実開平02−121109(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0018915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを収容する濾過容器と、スラリーを濾過する濾布とを備え、
前記濾過容器は、板状の底蓋と、該底蓋の側に配置され底蓋の側に対向する開放された容器本体とを備え、
該容器本体は、前記底蓋の外縁部面に対向する環状の裾部を外周全域に亘って備え、
前記底蓋の面、前記容器本体の内周面および裾部の面にはグラスライニングが施され、
前記濾布は、その外縁部を前記底蓋の外縁部面と前記裾部の面との間に介入させるよう前記底蓋と容器本体との間に配置されるものであり、
前記底蓋の外縁部面と前記裾部の面との間に、該外縁部面と前記裾部の面とに密に挟持される環状体が配置され、
該環状体は、前記濾布の外縁部を嵌め込む段部を備えたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記環状体において前記裾部の面側に前記段部が形成され、前記濾布の外縁部が、前記環状体の面と前記裾部の面と間に挟持される請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記環状体は、前記濾布の外縁部を挟持する第一環状部および第二環状部に分割された請求項1または請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記環状体は、前記濾布の外縁部に接触する摩擦部材を備えた請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記環状体を前記底蓋の外縁部面に位置決めする位置決め手段を備えた請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記環状体と前記底蓋の外縁部面との間、および前記環状体と前記裾部の面との間をシールするシール部材を備えた請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーを濾過するための濾過装置に関し、特に濾過装置における濾過材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スラリーを濾過するためのこの種の濾過装置として、図8に表した濾過装置100が知られている。この濾過装置100は、スラリーを収容する濾過容器101と、スラリーを濾過する濾過手段102とを備える。濾過容器101は円板状の下蓋103、および下蓋103の上側に配置される筒状(ベル型)の容器本体104を備える。容器本体104の下部には、下蓋103の外縁部に対向する環状の裾部105が形成されている。下蓋103の上面、および容器本体104において裾部105の下面を含む内周面には、グラスライニングが施されている。
【0003】
濾過手段102は、円盤状の多孔板106と、多孔板106の上に配置されるシート状のメッシュ部材107と、メッシュ部材107の上に配置される濾布108とを備える。濾布108の外縁部は保護シート109により囲繞され、保護シート109には環状のガスケット110が上から重ねられる。
【0004】
図8に示す濾過装置100において、容器本体104に対して下蓋103を離脱させた状態(この場合、旋回させて離脱させる)で、下蓋103に、濾過手段102である多孔板106、メッシュ部材107、濾布108(保護シート109)、およびガスケット110を載せる。その後に下蓋103を、容器本体104と上下方向で対向するよう移動させて位置決めし、下蓋103の外縁部と容器本体104の裾部105とを、クランプ部材111で挟持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の濾過装置100では、濾布108が正確な位置からずれてしまうとシールできなくなり、スラリーの粒子が濾液側へ漏れる可能性がある。したがって、スラリーを円滑に濾過するためには、濾過容器101に対して濾布108を正確な位置に配置することが必要である。しかしながら、図8に示す濾過装置100では、単に下蓋103に、多孔板106、メッシュ部材107、濾布108、およびガスケット110を載せるだけである。このため、濾布108の位置が不安定であり、濾布108を正確な位置に配置することが難しいという課題がある。
【0006】
そこで本発明は、濾過容器に対して濾布を容易に正確な位置に配置できる濾過装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る濾過装置は、スラリーを収容する濾過容器と、スラリーを濾過する濾布とを備え、前記濾過容器は、板状の底蓋と、該底蓋の側に配置され底蓋の側に対向する開放された容器本体とを備え、該容器本体は、前記底蓋の外縁部面に対向する環状の裾部を外周全域に亘って備え、前記底蓋の面、前記容器本体の内周面および裾部の面にはグラスライニングが施され、前記濾布は、その外縁部を前記底蓋の外縁部面と前記裾部の面との間に介入させるよう前記底蓋と容器本体との間に配置されるものであり、前記底蓋の外縁部面と前記裾部の面との間に、該外縁部面と前記裾部の面とに密に挟持される環状体が配置され、該環状体は、前記濾布の外縁部を嵌め込む段部を備えたことを特徴としている。
【0008】
上記構成を備える本発明の濾過装置では、環状体を底蓋の外縁部面に載置して環状体の段部に濾布の外縁部を嵌め込むことで、濾布は所定の位置に容易に設置できる。そして、底蓋の外縁部面と容器本体の裾部の面とで環状体を挟持した状態で、濾過容器にスラリーを収容すると、スラリーが濾布によって濾過される。
【0009】
本発明の濾過装置では、前記環状体において前記裾部の面側に前記段部が形成され、前記濾布の外縁部が、前記環状体の面と前記裾部の面と間に挟持された構成を採用できる。
【0010】
上記構成によれば、底蓋の面に対して濾布を離間して配置できるため、グラスライニングが施された底蓋の面に、濾布を装着する部分を形成することなく、底蓋の面を平坦面とすることができる。
【0011】
本発明の濾過装置では、前記環状体は、前記濾布の外縁部を挟持する第一環状部および第二環状部に分割された構成を採用できる。
【0012】
上記構成によれば、第一環状部と第二環状部とを離脱させた状態で、濾布の外縁部を段部に嵌め込み、濾布の外縁部を、第一環状部および第二環状部で挟持することで、容易に濾布の位置決めができる。
【0013】
本発明の濾過装置では、前記環状体は、前記濾布の外縁部に接触する摩擦部材を備えた構成を採用できる。
【0014】
上記構成によれば、濾布の外縁部に摩擦部材が接触することで、所定の位置にある濾布の位置ずれが抑制される。
【0015】
本発明の濾過装置では、前記環状体を前記底蓋の外縁部面に位置決めする位置決め手段を備えた構成を採用できる。
【0016】
上記構成によれば、環状体が位置決め手段により位置決めされることで、環状体の段部で位置決めされる濾布も、その分だけ正確に位置決めされる。
【0017】
本発明の濾過装置では、前記環状体と前記底蓋の外縁部面との間、および前記環状体と前記裾部の面との間をシールするシール部材を備えた構成を採用できる。
【0018】
上記構成によれば、濾布が段部に嵌り込んでいても、濾過容器に収容されたスラリーが、シール部材によりシールされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の濾過装置では、環状体を底蓋の外縁部上面に載置して環状体の段部に濾布の外縁部を嵌め込むことで、濾布を所定の位置に容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一の実施形態に係る濾過装置の全体構成を表す一部破断図である。
図2】同平面図である。
図3】同要部断面図である。
図4】同図3の部分拡大断面図である。
図5】本発明の第二の実施形態に係る濾過装置の要部拡大断面図である。
図6】本発明の第三の実施形態に係る濾過装置の要部拡大断面図である。
図7】本発明の第四の実施形態に係る濾過装置の要部拡大断面図である。
図8】従来の濾過装置の全体構成を表す一部破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る濾過装置を、図面を参照しつつ説明する。はじめに第一の実施形態に係る濾過装置を、図1ないし図4を参照しつつ説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、濾過装置1は、スラリーを収容する濾過容器2を備えている。濾過容器2は、底蓋である円板状の下蓋3と、下蓋3の上側に配置された容器本体4とを備えている。下蓋3はその円中心から位置ずれした位置に、濾液排出口5が形成されている。下蓋3の上面(一方面に相当する)3a、濾液排出口5の内面および下面フランジ面には、グラスライニングが施されている。
【0023】
容器本体4は、胴部4Aと上蓋4Bとを組付けて構成され、下側(他方側に相当する)を開放したベル型ハウジング形状に形成されている。容器本体4の上蓋4Bには、スラリーを濾過容器2内に滴下させるためのノズル(図示せず)を挿入する滴下用開口6が形成されている。また、濾過容器2内のスラリーの状態を監視する窓部7が形成されている。容器本体4は、下蓋3の外縁部上面に対向する環状の裾部8を、下端外周全域に亘って備えている。裾部8の一方面である上面には、後述するクランプ部材27を係止させる係止凹部が形成されている。容器本体4の内周面および裾部8の下面(他方面に相当する)8aには、グラスライニングが施されている。濾過装置1は、スラリーを濾過する濾過手段9と、濾過手段9を所定の位置に設置するための環状体10とを、さらに備える。なお、下蓋3の外縁部下面には、クランプ部材27を係止させる係止凹部が形成されている。
【0024】
図3および図4に示すように、濾過手段9は、円シート状に形成された濾布11と、円シート状の二枚のメッシュ部材12,13とを備える。濾布11はスラリーを濾過するものである。メッシュ部材12,13は濾布11で濾過された濾液を分流させるものであり、濾布11の下側に配置される。濾布11の直径は、メッシュ部材12,13の直径に比べて大きく設定されている。
【0025】
環状体10は、合成樹脂製(例えば、ポリテトラフルオロエチレン製)であり、下蓋3の外縁部上面と容器本体4の裾部8の下面8aとに挟持される。環状体10は下蓋3と略同一径に設定される。環状体10は、濾過手段9を所定の位置に位置決めする構成を備えている。すなわち、環状体10の内径はメッシュ部材12,13の外径に比べてわずかに大きく設定されて、下蓋3の上面3aに載置されたメッシュ部材12,13を、内径側に収納できるよう構成されている。
【0026】
環状体10は、濾布11の外縁部11aを嵌め込む段部を備えている。本実施形態では、環状体10は、濾布11の外縁部11aを上下方向で挟持する第一環状部14、および第二環状部15に分割されてなる。第一環状部14の下面14aは、平坦面に形成されている。第一環状部14は、径方向外側部16と、径方向途中部17と、径方向内側部18とから一体的に形成されている。
【0027】
径方向外側部16は、下蓋3の上面3aと裾部8の下面8aに挟持される。径方向途中部17は、径方向外側部16に対して径方向内側にあって径方向外側部16に一体的に形成されている。径方向途中部17は、径方向外側部16に比べて薄く(上下方向の高さを低く)設定されている。これにより、径方向外側部16と径方向途中部17との境界に、径方向外側部16の径方向内端から下がる(径方向途中部17の径方向外端から上がる)、上下方向に沿った環状の上下方向段付面(段部)19が形成されている。
【0028】
この上下方向段付面19の内側に、濾布11の径方向外端が嵌め込まれる。径方向内側部18は、径方向途中部17に対してさらに径方向内側に一体的に形成されている。径方向内側部18は、径方向途中部17に比べてさらに薄く設定されている。これにより、径方向途中部17と径方向内側部18との境界に、径方向途中部17の径方向内端部から斜め下方に下がる(径方向内側部18の径方向外端部から斜め上方に上がる)傾斜方向段付面20が形成されている。この傾斜方向段付面20は、濾布11の径方向外端から内側寄りの部分が保持される面である。径方向内側部18の径方向内端面18aは、上下方向に沿う環状面に形成されている。なお、径方向途中部17および径方向内側部18においては、その下面が下蓋3の上面3aに接触するよう載置されているが、裾部8の下面8aには接触しない。
【0029】
濾過装置1は、環状体10と下蓋3の外縁部上面との間、および環状体10と裾部8の下面8aとの間をシールするシール部材21,22を備えている。シール部材21,22はOリングであり、径方向外側部16の上面および下面にそれぞれ形成された環状の外装着溝23,24に嵌め込まれている。また、径方向途中部17は、所定位置に配置された濾布11の位置ずれを抑制するための摩擦部材25を備える。摩擦部材25はOリングであり、径方向途中部17の上面に形成された環状の途中装着溝26に嵌め込まれている。
【0030】
第二環状部15は、第一環状部14の径方向途中部17および径方向内側部18に亘るよう、径方向途中部17および径方向内側部18に載置されることで組合わされ、第一環状部14と組合わされて用いられる。第二環状部15は、第一環状部14と組合せた状態で、環状体10の断面形状が略矩形となる断面形状に形成されている。第二環状部15は、径方向外側部16に対して径方向内側に配置され、且つ径方向途中部17および径方向内側部18に対して上側に配置されている。
【0031】
図3に示すように、第二環状部15の上面15aは、第二環状部15を第一環状部14に組合せて、後述するクランプ部材27でクランプした状態で、第一環状部14の径方向外側部16の上面16aと面一となる平面である。第二環状部15は、径方向外側部16の上下方向段付面19に径方向内外で対向する径方向対向面15bを備える。第二環状部15の底面は、径方向途中部17および径方向内側部18に上下方向で対向し、傾斜方向段付面20に対向する傾斜対向面15cを備えている。
【0032】
第二環状部15の径方向内端面15dは、径方向内側部18の径方向内端面18aと面一となる環状面である。径方向内端面15dは、容器本体4の内周面に対して径方向内側にある。また、第二環状部15の上面15aと径方向内端面15dとは環状傾斜面15eによって連続している。環状傾斜面15eは、容器本体4の内周面に比べて径方向内側に配置されている。
【0033】
なお、符合27は、下蓋3、環状体10、および容器本体4を一体化するよう濾過容器2の外周縁部で、下蓋3、および容器本体4(裾部8)を上下方向にクランプするクランプ部材を表している。クランプ部材27は、濾過容器2の外周縁部の周方向複数箇所に配置される。
【0034】
符合28は、環状体10(第一環状部14)を、下蓋3の上面3aに位置決めするための位置決め部材(位置決め手段に相当する)を表している。位置決め部材28は、略L字型のアングル29と、アングル29を移動固定自在に下蓋3に取付けるためのボルト30とを備える。アングル29は、下蓋3の下面に当接する当接部29a、当接部29aの先端から下蓋3の側面に沿う立上部29b、立上部29bの先端から下蓋3の上面3aに沿うよう折曲された当接部29cを備えている。当接部29aには下蓋3の径方向に沿う長孔29dが形成されている。当接部29cは第一環状部14の外端面に当接する部分である。
【0035】
図1に戻って、濾過装置1は、濾過容器2を支持する支持装置35を備えている。支持装置35は、荷台36と、容器本体4を支持する本体支持部37と、下蓋3を昇降自在および旋回自在に支持する下蓋支持部38とを備える。
【0036】
本体支持部37は、荷台36に立設された柱部材39と、柱部材39の上端部に基端部が固定されて先端部が容器本体4の上面に固定された梁部材40とを備える。
【0037】
下蓋支持部38は、上下方向高さを位置決めされた容器本体4に対して、下蓋3を昇降させ得るとともに、柱部材39回りに回動(旋回)させ得るよう構成されている。すなわち、下蓋3の下面に取付けられるとともに柱部材39に旋回支持される旋回アーム41、旋回アーム41を昇降させる昇降用シリンダ42、旋回アーム41に取付けられたキャスタ43等を備えている。
【0038】
次に、下蓋3に濾過手段9を設置して上記濾過装置1を使用可能状態とするための手順を説明する。すなわち、昇降用シリンダ42を収縮させるよう駆動して、旋回アーム41を容器本体4に対して下降させる。この場合、容器本体4は梁部材40によって位置保持されており、下蓋3は旋回アーム41に支持されているから、クランプ部材27を取外した状態で旋回アーム41が下降すると、旋回アーム41とともに下蓋3が下降し、容器本体4から下方へ離間する。下蓋3の下降量は、キャスタ43が荷台36上に到達するまでである。
【0039】
続いて、下蓋3を柱部材39回りに旋回させて、図2の仮想線で示すように、下蓋3を容器本体4の側方へ離脱させる。このようにすることで下蓋3の上面3aが露出される。そして、シール部材21,22および摩擦部材25を装着した状態の第一環状部14を、下蓋3の上面3aに載置し、位置決め部材28を、ボルト30を用いて下蓋3に、周方向に複数個取付け、長孔29dの範囲でアングル29を水平方向に移動させて、各位置決め部材28のアングル29の当接部29cを、第一環状部14の外端面に当接させた状態で、ボルト30を締付ける。これによって、第一環状部14が下蓋3の上面3aで確実に位置決めされる。
【0040】
続いて、第一環状部14の径方向内側部18の径方向内端面18a(径方向内側部18の内側)に、メッシュ部材12,13を嵌め込む。さらに、メッシュ部材12,13の上に、濾布11を載せる。このとき、濾布11では、その外縁部11aを径方向途中部17に載せるようにすることで、濾布11の外縁部11aが、上下方向段付面19に嵌め込まれ、位置決めされる。
【0041】
濾布11を、その外縁部11aが上下方向段付面19に嵌め込まれるよう設置し終えたら、第二環状部15を第一環状部14に載せるように、濾布11の外縁部11aに載せる。そうすると、濾布11の外縁部11aが第二環状部15の重みで押えられて、容器本体4が下蓋3を覆って濾布11を目視できなくても、濾布11全体を正しい位置(濾過を確実に行える所定位置であり、下蓋3と同心となる位置)に保持することができる。
【0042】
濾布11は、一般的に丸めた形態で納品される。すなわち、納品された濾布11には巻き癖が発生している。このような場合でも、本実施形態のように、濾布11の外縁部11aを、上下方向段付面19に嵌め込むようにして、第二環状部15で押えるようにすれば、濾布11を容易に且つ正確な位置に設置することができる。
【0043】
上記のようにして濾過手段9を設置し終えたら、下蓋3を柱部材39回りに、前述とは反対方向に旋回させて、容器本体4の下方位置(直下位置)に移動する。続いて、昇降用シリンダ42を伸長させて下蓋3を上昇させ、環状体10の上面15a,16aを裾部8の下面8aに当接させる。そして、クランプ部材27を用いて、下蓋3、環状体10、および容器本体4を一体化するよう濾過容器2の外周縁部で、下蓋3、および容器本体4(裾部8)を上下方向にクランプする。
【0044】
このようにすると、第二環状部15の上面15aは、第一環状部14の径方向外側部16の上面16aと面一となるよう押圧され、押圧された分だけ濾布11の外縁部11aが圧縮力を受け、濾布11は確実に位置保持される。
【0045】
また、濾布11の外縁部11aの一部は、傾斜方向段付面20、傾斜対向面15cの間に挟まれて径方向内側が下方へ傾斜させられて、濾布11は位置保持される。さらに、摩擦部材25であるOリングが圧縮変形してその弾性復元力により、摩擦部材25が濾布11の外縁部11aに圧接して、濾布11が位置保持される。
【0046】
濾布11を所定位置に位置決めするためには、下蓋3の一部を穿設し基準部材を挿通して、該基準部材を基準に濾布11を位置決めすることが考えられる。しかしながら、下蓋3の上面3aにはグラスライニングが施されているため、下蓋3を穿設することができない。これに対し本実施形態では、下蓋3の一部を穿設することなく、下蓋3に環状体10を載置することで、容易に濾布11を所定位置に位置決めすることができる。また、濾布11は下蓋3の上面3aに対し、径方向内側部18の厚み高さ分だけ離間することから、下蓋3の上面3aに、濾布11を装着するための加工をする必要がなく、上面3aを平坦な面とすることができる。
【0047】
クランプ部材27を用いて、下蓋3、および容器本体4を上下方向にクランプすると、シール部材21,22が圧縮変形し、シール部材21,22の弾性復元力により、シール部材21が裾部8の下面8aに圧接し、シール部材22が下蓋3の上面3aに圧接して、容器本体4を内部と外部とで、確実にシールする。このため、クランプ部材27の設置個数の増加を抑えることができる。特に、濾布11に浸透し、その径方向外側へ向けて移動した濾液は、シール部材21によってシールされる。
【0048】
そして、滴下用開口6から濾過容器2内にスラリーを収容し、スラリーを濾過手段9によって濾過させると、濾液が濾液排出口5から排出される。なお、第二環状部15の上面15aと径方向内端面15dとは環状傾斜面15eによって連続しており、環状傾斜面15e周りのスラリーは、環状傾斜面15eに案内されるように濾布11へ移動することで、第二環状部15の上面15aにスラリーが残留しにくい。
【0049】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。第一の実施形態では、環状体10を第一環状部14と第二環状部15とに分割した場合を例示した。これに対して図5に示す第二の実施形態では、環状体10は二分割されていない一体物として環状に形成されている。この環状体10の断面形状は、第一の実施形態の環状体10の断面形状と略同一である。
【0050】
但し、第二の実施形態における濾過装置1では、濾布11の外縁部11aを嵌め込む段部として、環状体10の下面に径方向内端から径方向途中まで、濾布11の外縁部11aを収容可能な環状の収容溝10aが形成されており、この収容溝10aの径方向外端の上下方向段付面10bが段部として用いられる。濾布11の外縁部11aは、少なくともその径方向外端側が裾部8の下面8aに位置している。この構成において、上下方向段付面10bに濾布11の外縁部11aを嵌め込むことで、濾布11を所定位置に、確実に設置することができる。
【0051】
また、第二の実施形態では、収容溝10aの径方向途中部に、環状の装着溝10cが形成されており、装着溝10cに摩擦部材25(Oリング)が装着されている。下蓋3の上面3aに、メッシュ部材12,13を装着する円状装着溝3bが形成されている。
【0052】
第二の実施形態における濾過装置1では、メッシュ部材12,13が円状装着溝3bに装着されることで、濾布11は平坦な姿勢で所定位置に保持される。そして、摩擦部材25の弾性復元力により、濾布11の外縁部11aは下蓋3の上面3aに圧接されて、位置保持される。他の構成は第一の実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を繰り返さない。
【0053】
図6に示す第三の実施形態では、第二の実施形態と同様に、環状体10は一体物であり、上下方向段付面10bは、環状体10の上面に環状の収容溝10aを形成することで設けられている。濾布11の外縁部11aは、少なくともその径方向外端側が裾部8の下面8aに位置している。また、摩擦部材25は、環状体10の上面側に配置され、且つ裾部8の下面8aの下に位置付けられて、濾布11の位置ずれを抑制している。
【0054】
この構成では、第一の実施形態のように、環状体10の内径側にメッシュ部材12,13を収容できるから、第二の実施形態のように、下蓋3の上面3aに円状装着溝3bを形成しなくてよい。
【0055】
図7に示す第四の実施形態では、環状体10と、濾液を分流させるための円盤状の多孔板45とが一体的に形成されている。他の構成は第三の実施形態と同様である。
【0056】
上記各実施形態では、下蓋3を容器本体4に対して旋回させることで離脱させて、濾布11の設置を行う場合を例示した。しかしながら、下蓋3を容器本体4に対して旋回させることで離脱させる構成に限らず、本発明は、下蓋3を容器本体4に対して直線上に引出して離脱させるタイプの濾過装置1にも、適用できる。
【0057】
上記各実施形態では、底蓋を下蓋3とし、容器本体4を下蓋3の上側に配置する場合を例示し、上下方向を特定した。しかしながら、濾過容器を傾斜させて用いる濾過装置でも本願発明は適用でき、一方側、他方側、一方面、他方面は傾斜方向を基準に特定される。
【0058】
上記各実施形態では段部を段付面として特定した。しかしながら、段部は段付面とその径方向内側に形成された凹部とを備えた構成として特定することもできる。このように特定する場合では、第一の実施形態における段部は、上下方向段付面19、および径方向途中部17の上面であり、第二の実施形態ないし第四の実施形態における段部は、上下方向段付面10b、および収容溝10aの底面である。そして、何れの実施形態においても、濾布11の外縁部11aは段部に嵌め込まれて、所定の位置に位置決めされる。
【0059】
第一の実施形態では、第二環状部15は一つの環状部材からなる場合を例示した。しかしながら、第二環状部15は、複数個の分割体を周方向で組合せて環状の部材に形成することもできる。このような構成とすることで、第二環状部15の径が大きくなっても、コストの上昇を抑えつつ製造が可能であり、しかも設置がし易い。
【符号の説明】
【0060】
1…濾過装置、2…濾過容器、3…下蓋、3a…上面、3b…円状装着溝、4…容器本体、8…裾部、8a…下面、9…濾過手段、10…環状体、10a…収容溝、10b…上下方向段付面、10c…装着溝、11…濾布、11a…外縁部、14…第一環状部、15…第二環状部、15b…径方向対向面、15c…傾斜対向面、15d…径方向内端面、15e…環状傾斜面、16…径方向外側部、17…径方向途中部、18…径方向内側部、19…上下方向段付面、20…傾斜方向段付面、21,22…シール部材、25…摩擦部材、26…途中装着溝、28…位置決め部材
図1
図2
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図5
図6
図7
図8