(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の一実施形態に関し説明する。なお、本発明の特徴を明確にするため、各実施形態では、あえて従来技術の説明を省略した部分もある。
(第一の実施形態)
【0009】
図1は、銀行等の金融機関に設置されるATM(Automatic Teller Machine)1000を示し、顧客の要求する種々の取引を自動的に実行する装置である。
図1のようにATM1000はシャッタを有した硬貨処理装置101とカード及び明細書機構部102と通帳機構部103と、紙幣入出金機構部104と入力兼表示機能を有する操作部105とを備える。
【0010】
硬貨処理装置101は、利用者により硬貨入出金口に投入された硬貨を計数して収納し、又は操作部105の入力部から入力された入金金額等に応じて、収納庫に収納されている硬貨を硬貨入出金口に繰出す。硬貨処理装置101の詳細は、後述する。
【0011】
カード明細書機構部102は、カード機構部と、明細書機構部とを備える。
【0012】
カード機構部は、利用者がATM1000との間で取引を行なう場合に使用するキャッシュカードの挿入を受け付け、挿入されたキャッシュカードに付加された磁気ストライプ情報や、キャッシュカードのエンボス部分のイメージを読み取る。またカード機構部は、取引が終了した場合等において、挿入されたキャッシュカードを排出する。また、明細書機構部は、取引した内容を明細書に印字し、印字した明細票を排出する。
【0013】
通帳機構部103は、利用者がATM1000との間で取引を行なう場合に使用する通帳の挿入動作を受け付ける。また、通帳機構部103は、挿入された通帳に付加された磁気ストライプ情報を読み取る。さらに、通帳機構部103は、取引した内容を通帳の所定のページに印字し、取引が終了した場合等に、印字した通帳を排出する。
【0014】
紙幣入出金機構部104は、利用者が取引する紙幣の取り出しや受け入れを行なうための紙幣入出金口と、紙幣を収納する収納庫とを含む。
【0015】
紙幣入出金機構部104は、紙幣入出金口に投入された紙幣の真偽を判定して収納庫に収納し、又は操作部105から入力された入金金額等に応じて、収納庫に収納されている紙幣を繰出し、入出金口に放出する。
【0016】
操作部105は、表示部と入力部とを含むタッチパネル等から構成されている。操作部105は、取引に関する操作案内や、入力された預金金額や排出金額等を表示したり、開始する取引の種類の指定や、預金金額や払出金額等の入力を受け付ける。
【0017】
ATMの構成は、上述した通りだが、これに限るものではない。一部の機構部がないこともある。
【0018】
図2は、
図1に示した硬貨処理装置101の概略構造を示す図である。硬貨処理装置101は、バラ状態の硬貨20を取り扱いの対象としている。
【0019】
図2に示すように、硬貨処理装置101はシャッタ1と、一時保留部2と、入出金口3と、出金搬送部4と、繰出し部5と、硬貨識別部6と、入金搬送部7と、金種別スタッカ8と、縦搬送部9と、一括スタッカ10と、運用カートリッジ11と、出金判別部12と、異物排出部13と、入手金口残留センサ60と、繰出し部残留検知センサ61と、一時保留部残留検知センサ62と、出金搬送部残留検知センサ63と、を含んで構成されている。
【0020】
図2を用いて硬貨処理装置における硬貨の流れを簡単に説明する。
【0021】
まず、入金時における硬貨搬送のルートを説明する。操作部105が、顧客による入金取引の開始を受け付け、制御部51は、シャッタ1を開く。その後、硬貨20が顧客によって入出金口3に投入され、制御部51は、所定時間経過後にシャッタ1を閉じる。入出金口3の内部は硬貨20を一括して受け入れる凹形状のバッケットになっており、制御部51は、そのバッケットを開き、硬貨20を落とし、繰出し部5に移動させる。その後、制御部51は、硬貨20を硬貨識別部6、入金搬送部7と搬送し、一時保留部2に至る。硬貨識別部6は、硬貨20の真偽、金種を判別している。
【0022】
制御部51は、一旦、硬貨20を一時保留部2に保留し、取引が中止した場合には搬送路30、出金搬送路4と搬送し、さらに図面には記載のないルートにより搬送し、入出金口3にもどし、顧客に返金する。一方、取引が成立した場合は、制御部51は、一時保留部2から搬送路30、繰出し部5、硬貨識別部6、入金搬送部7と硬貨を搬送し、金種別スタッカ8に、硬貨識別部6による識別結果に応じて、各金種に仕分けされ収納される。
【0023】
出金時における硬貨の搬送ルートを説明する。制御部105が、顧客による出金取引の開始を受け付ける。制御部51は、顧客による操作部105からの入力情報に基づき、金種別スタッカ8から所定の金額を出力し、横搬送路14、出金搬送路4を通り、入出金口3に出金し、シャッタ1を開き、顧客に硬貨を出金する。
【0024】
シャッタ1は、入出金口3を開放または閉塞するものである。シャッタ1は、操作部105が、指定された取引された取引の種類や、入金金額等の数値や取引を終了する指定を受け付けると、制御部51からの指示に応じて、入出金口部3の開閉を行なう。
【0025】
一時保留部2は、硬貨20を一括して一時的に保留するものである。
一時保留部2は、硬貨識別部6から出力された真硬貨を、一時的に蓄え、一定の時間が経過した場合に、一時的に蓄えた硬貨出金搬送部4に搬送するものである。一時保留部2に蓄えられた硬貨は、最終的に金種別スタッカ8に収納されるようになっている。
【0026】
入出金口3は、硬貨処理装置101の上部に設けられ、投入された入金すべき硬貨20を一時的に保持した後に硬貨処理装置101の内部に取り込む。また、硬貨処理装置101の内部から搬送される出金すべき硬貨20を一時的に保持した後にシャッタ1を開とすることで外部に放出する。さらに、入出金口3は、入出金処理が終了した後の偽貨や搬送可能な異物を、シャッタ1を開とすることで利用者に放出する。入出金口3の下部は、制御部51からの指示によって開閉し、一時的に保持した硬貨20を繰出し部5に排出することが可能となっている。
【0027】
出金搬送部4は、一時保留部2などから搬送される硬貨を入出金口3に搬送するものである。出金搬送部4は、一時保留部2から真硬貨が排出されると、1枚ずつに分離された硬貨を入出金口3に搬送する。なお、出金搬送部4上に設置された硬貨分離部(図示なし)が硬貨を1枚ずつに分離する。
【0028】
繰出し部5は、入出金口3から送られてきた硬貨20を搬送する。繰出し部5は、1枚ずつに分離された硬貨を硬貨識別部6に搬送する。なお、繰り出し部5上に設置された硬貨分離部(図示なし)が硬貨を1枚ずつの硬貨に分離する。
【0029】
硬貨識別部6は、繰出し部5から送られてきた硬貨20の真偽または金種を識別するものである。硬貨識別部6は、繰出し部5が送り出した硬貨の金種を判定し、判定した金種の硬貨の真偽を識別する。硬貨識別部6は、繰出し部5から搬送された硬貨が、真硬貨であると判定した場合には、その真硬貨一時保留部2に出力し、偽硬貨であると判定した場合には、その偽硬貨を返却搬送部(図示なし)に出力する。
【0030】
また、硬貨識別部6は、硬貨の真偽を判定して真硬貨を一時保留部2に出力し、その後、真硬貨が出金搬送部4、入出金口3を通過して、再び繰出し部5によって送り出された場合に、送り出された真硬貨の金種を判別し、判別した金種の硬貨を、入金搬送部7に搬送する。
【0031】
入金搬送部7は、入金する硬貨20を金種別スタッカ8に金種別搬送するものである。入金搬送部7は、硬貨識別部6から搬送された真硬貨を金種別スタッカ8に搬送する。入金搬送部7には、金種ごとに硬貨識別部6から搬送される硬貨を金種別スタッカ8に収納するための搬送路が、金種ごとに設けられている。したがって、硬貨識別部6が硬貨の金種を判定すると、判定した金種の搬送路に硬貨が出力されるようになっている。
【0032】
金種別スタッカ8は、入金搬送部7により搬送される硬貨20を金種別に収納するものである。金種別スタッカ8は、制御部51からの指示によって、金種別スタッカ8に収納されていた硬貨を横搬送部14に放出する。横搬送部14は、放出された硬貨を出金搬送部4に搬送する。
【0033】
縦搬送部9は、一括スタッカ10や運用カートリッジ11の硬貨を搬送するものである。縦搬送部9は、運用カートリッジ11にストックされている硬貨を、出金搬送部4に搬送する。
【0034】
一括スタッカ10は、一時保留部2などから排出される硬貨20を一括して収納するものである。一括スタッカ10は、金種別スタッカ8が収納している硬貨や、一時保留部2が蓄えている硬貨の枚数が所定の枚数を超え、金種別スタッカ8や、一時保留部2に収納等できなくなった場合に剰余分の硬貨を収納する。
【0035】
運用カートリッジ11は、補充用の硬貨(図示なし)をセットするものである。運用カートリッジ11は、金種別スタッカ8に硬貨が収納されていない等の状態になった場合に補充する硬貨をあらかじめ収納している。入出金口3に投入された硬貨20は、硬貨処理装置101内の上述した各部を通って、運用カートリッジ11に搬送される。
【0036】
出金判別部12は、出金搬送部4の出口に設置されるものである。出金判別部12では、通過した硬貨の種別を判別することが可能である。出金判別部12は、出金搬送部4が入出金口3に搬送した硬貨の金種を判別し、硬貨が通過したか否かを検知する。
【0037】
異物排出部13は、繰出し部5にある異物を装置外に排出するものであり、例えば、搬送路上に設けられた開閉可能なフラッパを有している。異物排出部13は、制御部51からの指示に応じて、上述したフラッパを開閉させる。
【0038】
入出金口残留検知センサ60は入出金口3にある残留物を検出するものであり、繰出し部残留検知センサ61は繰出し部5にある残留物を検出するものである。また、一時保留部残留検知センサ62は一時保留部2にある残留物を検出するものであり、出金搬送部残留検知センサ63は出金搬送部4にある残留物を検出するものである。これらのセンサは、例えば、従来から知られている光センサから構成される。但し、センサの種類を特に限定するものではない。
【0039】
図3は、
図2に示した硬貨処理装置101の機能的な構成を示すブロック図である。なお、
図2においては、本構成に関係する主要な構成のみ示している。
【0040】
図3に示すように、硬貨処理装置101は、上述した各部と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等からなるメモリ58と、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサから構成され、上述した硬貨処理装置101の各部の動作を制御する制御部51を有している。これらの各部は、制御部51を介して、上位装置59であって、硬貨処理装置101を内蔵する自動取引装置1000と接続される。また、制御部51の内部又は外部にタイマーを有し、センサによる検知時間や各処理における処理時間を測定することが可能な構成となっていてもよい。また、センサによる硬貨検知などの検知回数をカウントできる構成となっていてもよい。
【0041】
また、メモリ58内には、硬貨識別部6で計数した結果を金種毎に管理する硬貨識別部枚数カウンタ40、一時保留部2に収納した硬貨を金種毎に管理する一時保留部収納枚数カウンタ41、硬貨残留検知基準値テーブル42を有している。また、メモリ58は、以下の処理で記載している各処理の所定時間を記憶していても良い。当然、所定時間は、プログラムに書き込まれていてもよい。 メモリやCPUの構成は上記した構成に限定する必要はない。
【0042】
図4は、
図2に示した金種別スタッカ8の概略構造を示す図である。本実施形態では、日本の硬貨を例に説明する。金種別スタッカは、1円を収納する1円スタッカ201、5円を収納する5円スタッカ202、10円を収納する10円スタッカ203、50円を収納する50円スタッカ204、100円を収納する100円スタッカ205、500円を収納する500円スタッカ206のスタッカを有する。硬貨識別部6で硬貨の金種を判別し、硬貨の金種ごとに各金種のスタッカに収納される。金種別スタッカは、1円を搬送する1円搬送ベルト211、5円を搬送する5円搬送ベルト212、10円を搬送する10円搬送ベルト213、50円を搬送する50円搬送ベルト214、100円を搬送する100円搬送ベルト215、500円を搬送する500円搬送ベルト216であり、これらのベルトは共通の駆動源により駆動されるベルト駆動ローラ208、209により駆動されてもよい。当然スタッカ毎に別々の駆動源であってもよい。また、金種別スタッカ8の各金種のスタッカは、それぞれに逆転分離ローラ207を有しているが、逆転分離ローラ207は、共通の駆動源によって駆動されていてもよい。当然スタッカ毎に別々の駆動源であってもよい。また、搬送ベルトの駆動源と逆転分離ローラの駆動源とが共通であっても、別々であってもよい。
【0043】
図5は、
図4の金種別スタッカ8の断面図を示す。
図6は、
図5のA-A断面図である。
図5、
図6を用いて金種別スタッカ8に備えられた金種毎のスタッカに関し説明する。ここでは、1円を収納する1円スタッカを例に説明するが、他の金種のスタッカも同様である。
【0044】
1円スタッカは、硬貨302を搬送する搬送ベルト211と、この搬送ベルト211の上面に所定の間隔をあけて対設した逆転分離ローラ207と、搬送ベルト211上の硬貨の有無を検知する残留センサ303と、スタッカの壁面301、306と、搬送硬貨の複数枚繰り出しを防止するストッパ304と、ストッパを通過した硬貨を検知する通過センサ305を備える。なお、ストッパ304、通過センサ305は1円スタッカの外側に配置されていてもよい。
【0045】
搬送ベルト211は、搬送ベルト上面に堆積された硬貨を、逆転分離ローラ207とその下方に対向する搬送ベルト211との対向面間に搬送し、逆転分離ローラ207により、堆積された硬貨を崩し又ははじき、一枚ずつ繰出す。
【0046】
逆転分離ローラ207は、一度に2枚以上の硬貨が搬送されない様に搬送ベルト211とは逆方向に回転し、重なった硬貨(上側に堆積している硬貨)をはじき飛ばす。
【0047】
ストッパ304は、ソレノイド等により上下に駆動する。ストッパ304は、制御部51からの制御により、搬送ベルト211又はその先にある搬送ベルトとの高さを調整し、逆転分離ローラ207を通過した硬貨の繰り出しをさらに制限する。逆転分離ローラ207が硬貨を1枚ずつに分離できなかった場合であっても、ストッパ304により、硬貨を確実に1枚ずつ分離し、繰出すことが可能となる。
【0048】
残留センサ303は、搬送ベルト211に堆積されている硬貨の有無を検知する。硬貨枚数が少なくなってくると、残留センサ303は、硬貨を検知する時間が短く又は回数が少なくなる。すなわち、残留センサ303の硬貨を検知する時間又は回数により、搬送ベルト211に堆積されている硬貨の量(枚数あるいは概数)を判断することが可能となる。残留センサは、光センサや、磁気センサであってもよい。
【0049】
通過センサ305は、ストッパ304を通過した硬貨を検知する。硬貨処理装置は、残留センサ303が、硬貨が大量にあることを検知しているにも関わらず、通過センサ305で硬貨を検知できない場合は、搬送ベルト211を逆方向に搬送する。逆転分離ローラ207と搬送ベルト211の間に硬貨が詰まっていた場合に、硬貨の詰まりを解消することが可能となる。通過センサは、光センサや、磁気センサであってもよい。
【0050】
続いて、硬貨の滞留を防止するための、硬貨処理装置の制御について説明する。特に、硬貨の枚数が少ないことにより、逆転分離ローラ207が硬貨をはじき飛ばすことが繰り返される場合に有効な制御について説明する。なお、硬貨処理装置の制御部51が、金種別スタッカ8に以下で示す動作をさせる。
【0051】
具体的な制御フローを示す。
図6では、1枚の硬貨が滞留している場合に搬送ベルト211による硬貨の搬送速度を変更する制御に関し説明する。硬貨処理装置は、搬送ベルト211により第一の搬送速度(通常搬送)で、搬送ベルト211上に堆積している硬貨を搬送する(S701)。
【0052】
逆転分離ローラ207は、搬送ベルト211上に堆積していた硬貨を崩し、又は重なっていた硬貨をはじき飛ばす。搬送ベルト211は、逆転分離ローラにより崩され又ははじき飛ばされた硬貨を逆転分離ローラと搬送ベルト211の間に搬送し、1枚ずつ硬貨を搬送する。このようにして、順次硬貨を搬送していく。
【0053】
残留センサ303は、硬貨の有無を検知しており、S701からS707の処理は、残留センサ303が硬貨有りを検知している場合(所定時間内に硬貨の有りを検知する場合)に実施される。所定時間内に残留センサ303が硬貨を検知できなかった場合は、制御部は、搬送ベルトが硬貨を正常に搬送したと判断して、処理を終了する。
【0054】
硬貨処理装置は、残留センサ303により、硬貨の残留状態を検知する(S702)。硬貨処理装置の制御部51は、検知状態に基づき、硬貨が1枚滞留していると判断した場合、搬送ベルトに211により第二の搬送速度(搬送スピード1)で硬貨を搬送する(S703)。
【0055】
続いて、硬貨処理装置の制御部51は、搬送ベルトに211により第二の搬送速度で硬貨を搬送しながら、残留センサ303により、硬貨の残留状態を検知する(S704)。硬貨処理装置の制御部51は、検知状態に基づき、硬貨が1枚滞留していると判断した場合、搬送ベルトに211により第三の搬送速度(搬送スピード2)で硬貨を搬送する(S705)。
【0056】
続いて、硬貨処理装置の制御部51は、第三の搬送速度で硬貨を搬送しながら、残留センサ303により、硬貨の残留状態を検知する(S706)。硬貨処理装置の制御部51は、検知状態に基づき、硬貨が1枚滞留していると判断した場合、1枚の滞留を解消できないと判断し、上位装置にエラーを通知し、搬送ベルト211による搬送を停止する(S707)。
【0057】
一方、S702で、硬貨処理装置の制御部51が、検知状態に基づき、硬貨が1枚滞留していないと判断した場合、さらに検知状態に基づき、硬貨が2枚以上滞留しているか否かを判断する(S708)。2枚以上滞留していると判断した場合は、通常搬送を継続する。
【0058】
一方、硬貨の残留がなくなった場合は、分離動作が正常に完了したとして、搬送ベルト211の搬送を停止する(708)。
【0059】
図10は、残留センサ303が、複数枚(例えば3枚以下)の硬貨が残留を検知している場合に、制御部51が段階的に搬送速度を遅くする際の制御フローを示す。
【0060】
制御部51は、残留センサ303の検知状態に基づき、4枚以上の硬貨が残留していると判断した場合は、通常搬送を継続する(S1001)。一方、制御部51は、残留センサ303の検知状態に基づき、4枚以上の硬貨が残留していない及び1枚〜3枚の硬貨が残留していると判断した場合は、搬送ベルトによる搬送速度を通常搬送速度よりも遅い、搬送スピード1に落とす(S1002、S1003、S1004)
制御部51は、残留センサ303の検知状態に基づき、所定時間内の残留枚数の変化(減少)の有無を判断する(S1005)。
【0061】
制御部51は、所定時間内に残留枚数が減少していると判断し、残留している硬貨がある場合は、次の所定時間継続して同じ搬送速度(搬送スピード1)で搬送する(S1005、S1006)。そのときの搬送ベルトによる搬送速度で残留している硬貨を減らすことに効果があると考えられるためである。
【0062】
一方、制御部51は、所定時間内に残留枚数が減少していないと判断した場合は、搬送ベルトによる搬送速度を搬送スピード1よりも遅い搬送スピード2に落とす処理を行う(S1005)。搬送スピード1では、残留している硬貨を減らすことに効果がないと考えられるためである。
【0063】
制御部51は、残留センサ303の検知状態に基づき、所定時間内の残留枚数の変化(減少)の有無を判断する(S1008)。
【0064】
制御部51は、所定時間内に残留枚数が減少していると判断し、残留している硬貨がある場合は、次の所定時間継続して同じ搬送速度(搬送スピード2)で搬送する(S1008)。そのときの搬送ベルトによる搬送速度で残留している硬貨を減らすことに効果があると考えられるためである。
【0065】
一方、制御部51は、所定時間内に残留枚数が減少していないと判断し、硬貨が残留していると判断した場合は、エラーを通知する(S1008、S1009、S1010)
硬貨が残留していないと判断した場合は(S1003、S1006、S1009)、処理を終了する(S1010)。
【0066】
ここで、硬貨の検知方法について説明する。上述の通り、残留センサ303は、硬貨の有無を検知する。硬貨処理装置の制御部51は、残留センサ303が硬貨有を検知している時間又は硬貨無を検知している時間に基づき硬貨の残留状態を判断する。すなわち、硬貨処理装置の制御部51は、硬貨有の時間が長い場合は、硬貨が大量に残留していると判断し、硬貨有の時間が短い場合は、硬貨が少量残留していると判断する。
【0067】
ここで、搬送ベルト211の搬送速度を変えた場合、残留センサ303が、硬貨有無を検知する時間が変わることがある。特に、硬貨の枚数が少ない場合に、硬貨有無を検知する時間が変わる。例えば、硬貨が1枚の場合、搬送ベルト211による搬送速度が遅いと、残留センサ303は、1枚の硬貨の有を長い時間検知することになる。一方、搬送ベルト211による搬送速度が速いと、残留センサ303は、1枚の硬貨の有を短い時間検知することになる。
【0068】
このため、硬貨処理装置が、残留センサ303により硬貨の滞留を検知し、搬送ベルト211の搬送速度を遅くした場合、搬送速度を遅くする前に利用していた所定時間(第一の所定時間)とは異なる所定時間(第二の所定時間)により、硬貨の残留を検知することが好ましい。例えば、残留センサ303が、硬貨有を検知する場合であれば、第二の所定時間は、第一の所定時間より長い値であることが好ましい。
【0069】
図8は、メモリ58に記憶されている硬貨残留検知基準値テーブル42である。硬貨残留検知基準値テーブル42は、搬送ベルト211の搬送速度毎(通常搬送、搬送スピード1、搬送スピード2)に1枚の硬貨が滞留していることを検知するための上述した所定時間を記憶している。所定時間は、1円硬貨のサイズ(直径など)と搬送速度に基づき計算された値である。例えば、1円硬貨のサイズを搬送速度割った値などである。なお、複数枚(例えば、2枚)の滞留を検知したい場合は、1枚の場合の2倍の値となってもよい。また、硬貨の種類が異なる場合は、その硬貨のサイズ(直径など)で計算すればよい。
【0070】
なお、所定時間は、テーブルとして記憶していなくともプログラム上判断できるようになっていればよい。
【0071】
上述の制御により、逆転分離ローラにより弾き飛ばされる硬貨を分離することが可能となる。特に、制御部が、逆転分離ローラを動作させたまま、搬送速度を遅くすることにより、複数枚の硬貨が残留している場合でも、逆転分離ローラによる硬貨の一枚分離を継続しつつ、上述の逆転分離ローラにより硬貨が弾かれることによる滞留の継続を抑制することが可能となる。
【0072】
以下第二の実施形態に関し説明する。なお、第一の実施形態と異なる点に関し説明する。
(第二の実施形態)
【0073】
硬貨処理装置は、別の硬貨の検知方法を有していてもよい。例えば、硬貨処理装置の制御部51は、所定時間内に残留センサ303が硬貨の有無の変化を所定回数繰り返したか否かを判断する。
【0074】
硬貨処理装置の制御部51は、残留センサ303により所定時間内に硬貨の有無を所定回数繰り返し検知した場合は、所定枚数の硬貨の残留が有と判断し、搬送ベルト211による硬貨の搬送速度を通常搬送時よりも遅くする。
【0075】
一方、制御部51は、残留センサ303により所定時間内に硬貨の有無を所定回数繰り返さなかった場合(さらに硬貨が有が続いている場合)は、まだ大量の硬貨が残留しているので、通常搬送時の搬送速度を継続する。制御部51は、残留センサ303により所定時間内に硬貨の有無が所定回数繰り返さなかった場合(さらに硬貨が無が続いている場合)は、硬貨はなくなったと判断し、搬送を終了する。
【0076】
メモリ58は、
図9に示す搬送速度毎の所定時間又は所定回数を記憶した硬貨残留検知基準テーブル42を有している。例えば、所定時間は、金種別スタッカの端面301から逆転分離ローラ207までの距離を搬送速度で割った値であってもよい。あるいは、所定時間は、金種別スタッカの端面301から逆転分離ローラ207までの距離を搬送速度で割った値を3倍した値でもよい。また、所定回数は、所定時間が金種別スタッカの端面301から逆転分離ローラ207までの距離を搬送速度で割った値である場合、1回となってもよい。
【0077】
なお、所定時間及び所定回数は、テーブルとして記憶されていなくともプログラム上判断できるようになっていればよい。
【0078】
上述の方法により、制御部は、残留硬貨の量(枚数を含む)を判断することが可能となる。
【0079】
以下第三の実施形態に関し説明する。なお、第一の実施形態、第二の実施形態と異なる点に関し説明する。
(第三の実施形態)
【0080】
硬貨処理装置の金種別スタッカは、上述の通り、複数のスタッカ201〜206備え、各スタッカ毎に残留センサ、逆転分離ローラ、搬送ベルト211〜216を備える、硬貨処理装置は、各搬送ベルトを共通の駆動源209、208で動作させる。このような場合、硬貨処理装置が、500円などの重い硬貨を分離することに合わせ、搬送ベルト211〜216を回転させると1円などの軽い硬貨は逆転分離ローラにより、想定外にはじき飛ばされることが生じる。
【0081】
従って、制御部51は、第一の実施形態又は第二の実施形態の制御を、1円、5円などの軽い硬貨を収納するスタッカの残留センサ303の検知状態に基づき実施する。すなわち、硬貨処理装置の制御部51は、1円スタッカ又は5円スタッカで、残留センサ303が所定時間よりも短く硬貨を検知した場合、又は所定時間内に残留センサ303が硬貨の有無の変化を所定回数繰り返した場合に、硬貨処理装置の制御部51は、第一の実施形態又は第二の実施形態で示した段階的に搬送速度を落とす制御を実施してもよい。
【0082】
一方、10円スタッカ、50円スタッカ、100円スタッカ、500円スタッカの残留センサ303が所定時間よりも短く硬貨を検知した場合、又は所定時間内に残留センサ303が硬貨の有無の変化を所定回数繰り返した場合には、硬貨処理装置は、第一の実施形態又は第二の実施形態に示す段階的に搬送速度を落とす制御を実施しないものとしてもよい。
【0083】
あるいは、硬貨処理装置は、第一の実施形態又は第二の実施形態に示す制御を実施するための条件を、重い硬貨の方が軽い硬貨よりも厳しく設定してもよい。
【0084】
具体的には、硬貨処理装置の制御部は、重い硬貨に関しては残留センサ303が1枚を検知した場合に第一の制御を実施し、軽い硬貨に関しては残留センサ303が2枚を検知した場合に第一の制御を実施してもよい。
【0085】
また、硬貨処理装置は、重い硬貨に関しては所定時間内に1回以上検知した場合に第二の制御を実施し、軽い硬貨に関しては所定時間内に2回以上検知した場合に第二の制御を実施してもよい。
【0086】
これにより、重い硬貨(例えば、10円スタッカ、50円スタッカ、100円スタッカ、500円スタッカの硬貨)が少量になった場合に、搬送ベルトによる硬貨の搬送速度を遅くすることにはならないため、処理速度の低下を抑制できる。第三の実施形態で、軽い硬貨として1円、5円、重い硬貨として10円、50円、100円、500円としたがこれらは一例であり、1円〜100円までを軽い硬貨、500円を重い硬貨と扱ってもよく、上記の例に限ることはない。
【0087】
以下第四の実施形態に関し説明する。なお、第一の実施形態〜第三の実施形態と異なる点に関し説明する。
(第四の実施形態)
【0088】
第四の実施形態では、硬貨処理装置の制御部51は、硬貨の残留状態に応じて、逆転分離ローラ207の回転速度を変更する。
【0089】
例えば、第一の実施形態、第二の実施形態、第三の実施形態と同様の方法により検知した硬貨の残留状態が所定状態となった(所定枚数より少量と硬貨処理装置が判断した)場合に、逆転分離ローラ207の回転速度を遅くする又は停止する。これにより、残留硬貨が逆転分離ローラ207によりはじき飛ばされることを抑制できる。
【0090】
すなわち、
図7では、S701、S703、S705で、
図10では、S1001、S1004、S1007で、搬送速度を段階的に遅くする旨説明したが、これらのステップにおいて、逆転分離ローラ207の回転速度を段階的に遅くすればよい。
【0091】
また、第一の実施形態、第二の実施形態、第三の実施形態に加え、逆転分離ローラ207の回転速度も段階的に遅くしてもよい。
【0092】
以下第五の実施形態に関し説明する。なお、第一の実施形態〜第四の実施形態と異なる点に関し説明する。
(第五の実施形態)
【0093】
硬貨処理装置の各金種のスタッカは、通過センサ305を有している。そこで、第一〜第四の実施形態の制御を実施する際に、通過センサ305による硬貨検知結果を利用してもよい。
【0094】
具体的には、制御部51は、所定時間、通過センサ305で硬貨の繰り出しを検知できていない場合に、第一〜第四の実施形態の制御を実施する。通過センサ305で、硬貨が検知できている場合は、少なくとも残留硬貨の一部を分離できているため、硬貨枚数が少なくなったからといって、第一〜第四の実施形態を実施しなくとも、処理全体の遅れとはならないためである。
【0095】
一方、通過センサ305で硬貨が検知できていない及び残留センサ303で硬貨を検知できている場合は、分離動作に何らかの問題が生じている可能性がある。特に、残留センサ303で硬貨の枚数が所定枚より少ない場合に、第一〜第四の実施形態の制御をすることにより、逆転分離ローラにより弾き飛ばされる硬貨を分離することが可能となり、処理全体を効率よく実施することができる。
【0096】
第一の実施形態から第五の実施形態を用いて、本発明の特徴を説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。各実施形態を組み合わせてもよい。
【0097】
以上の通り、上述の実施形態では、少なくとも以下の内容を開示している。
【0098】
硬貨処理装置(制御部)は、第一の検知センサ(残留センサ)が硬貨有りを検知し、第一の検知センサにより検知された硬貨が第一の所定量以下であると判断した場合に、搬送ベルトの搬送速度を遅くする。これにより、硬貨の残留を防止することが可能となる。
【0099】
また、硬貨処理装置(制御部)は、第二の検知センサ(通過センサ)で硬貨の有りを所定時間検知しない場合に、前記搬送ベルトの搬送速度を遅くすることを特徴とする。これにより、搬送速度を遅くしたことによる処理速度の低下を抑制することが可能となる。
【0100】
また、硬貨処理装置(制御部)は、第一の検知センサが硬貨有りを検知している時間に基づき、分離ローラ(逆転分離ローラ)により分離されていない硬貨の量を判断し、第一の検知センサが硬貨有りを検知している時間が所定時間以内となった場合に、前記搬送ベルトの搬送速度を遅くする。これにより、残留硬貨の枚数を精度よく検知することが可能となり、搬送速度を遅くしたことによる処理速度の低下を抑制することが可能となる。
【0101】
また、硬貨処理装置(制御部)は、第一の搬送速度又は第一の搬送速度よりも遅い第二の搬送速度で硬貨を搬送するように搬送ベルトを制御し、搬送ベルトが第一の搬送速度で硬貨を搬送するように制御する場合に、第一の検知センサが硬貨有りを検知し、第一の検知センサにより検知された硬貨が第一の所定量以下であると判断した場合に、第二の搬送速度で硬貨を搬送するように制御し、第二の搬送速度で硬貨を搬送する場合に、第一の検知センサにより検知された硬貨が第二の搬送速度に対応した第二の所定量以下であるか否かを判断する。
【0102】
これにより、第二の搬送速度になった場合でも、硬貨の量を精度よく検知することが可能となる。
【0103】
また、硬貨処理装置(制御部)は、搬送ベルトを第二の搬送速度よりも遅い第三の搬送速度で硬貨を搬送するように制御し、第二の搬送速度で硬貨を搬送する場合に、前記第一の検知センサにより検知された硬貨が第二の搬送速度に対応した第二の所定量以下である場合に、前記第三の搬送速度で硬貨を搬送するように制御する。
【0104】
これにより、より高い確率で、硬貨の残留を防止することが可能となる
また、硬貨処理装置(制御部)は、硬貨を金種ごとに分けて収納する複数のスタッカを有し、複数のスタッカは、第一の金種の硬貨を収納する第一のスタッカと、前記第一の金種の硬貨よりも重い第二の金種の硬貨を収納する第二のスタッカとを有し第一及び第二のスタッカのそれぞれは、搬送ベルト、分離ローラ、第一の検知センサ、第二の検知センサを備え、駆動部は、第一及び第二のスタッカのそれぞれに備えられた搬送ベルトを共通に動作させる一つの駆動部を含み、
第一のスタッカにおいて、第一の検知センサが硬貨有りを検知し、第一の検知センサにより検知された硬貨が第一の所定量以下であると判断した場合に、前記搬送ベルトの搬送速度を遅くし、第二のスタッカにおいて、第一の検知センサが硬貨有りを検知し、第一の検知センサにより検知された硬貨が第一の所定量以下であると判断した場合に、搬送ベルトの搬送速度を変化させない。
【0105】
これにより、搬送速度を遅くしたことによる処理速度の低下を抑制することが可能となる。