(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、領域等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。なお、以下の実施の形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
【0010】
また、以下の実施の形態における各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、後述する各構成、機能、処理部、処理手段等は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各構成、機能、処理部、処理手段等を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク等の記憶部に格納することができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0012】
<第一実施形態>
第一実施形態は、無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle :UAV)を適切なタイミングで飛行させて地形を示す計測データを収集し、鉱山用作業機械の地図情報を更新する実施形態である。ここでいう計測データとは、地形を計測する計測センサから出力されたデータであって、そのままでは鉱山用作業機械が参照できないデータである。本実施形態では、計測データは、UAVが上空から地表面を走査して各地表面の計測点の高度hを計測した出力値とする。
【0013】
また鉱山用作業機械として、オペレータの運転操作によらず自律走行ダンプトラック(以下「ダンプトラック」と略記する)を例に挙げる。ダンプトラックが参照する地図情報は、各地点の位置を示すノードと隣接するノードを連結するリンクとにより構成される。
【0014】
また本実施形態では後述するように、計測データから鉱山の地形を示す地形情報を生成し、これを基に地形の変化の有無を検出する。従って、地形情報は計測データを加工したデータとして説明するが、計測データそのものを地形情報として用いてもよい。即ち、地形の変化の有無が検出できれば、計測データそのものを地形情報として用いてもよい。この場合、地形情報を比較することは、計測データ間の比較と同義である。
【0015】
まず、
図1を参照して鉱山の概要を説明する。
図1は、鉱山の全体配置を示す図である。
図1に示すように鉱山1は、積込場2、放土場3、駐機場4とこれらを結ぶ搬送路5を含んで構成される。積込場2は、積込機201がダンプトラック150へ鉱物や表土層を積み込む作業を行う場所である。積込機201の一例としてショベルがあり、積込機201が掘削作業とダンプトラック150への積込作業とを行う。放土場3は、ダンプトラック150が表層土や鉱物を積下ろす場所である。駐機場4は、オペレータの交代やダンプトラック150の駐車を行う場所である。ダンプトラック150は、積込場2で積込機201を使って採掘された表層土や鉱物を積込み、搬送路5を通って表層土や鉱物を搬送し、放土場3では表層土や鉱物を放土する。
【0016】
駐機場4の敷地内には、オペレータがダンプトラック150の管制を行う管制センタ202が設けられる。管制センタ202には、ダンプトラック150に無線通信回線を介して通信接続された管制サーバ110が設置される。ダンプトラック150は、管制サーバ110からの制御情報に基づいて地図情報を参照しながら自律走行する。
【0017】
積込場2、放土場3、及び駐機場4には、それぞれ境界21、31、41が存在し、積込機201は境界21の付近で作業を行う。境界は例えば盛土や崖によって区別される。またダンプトラック150は境界21、31、41の内部で作業を行う。そのため、ダンプトラック150の安定走行や効率的な走行のためには境界の位置情報が正確に把握できることが望ましい。
【0018】
そこで、第一実施形態では、ダンプトラック150が通常稼働中に、鉱山1内のある基準時点(現時点でもよいし、過去のある時点でもよい)における地形を計測して稼働中計測データを生成し、管制サーバ110(地図作成装置に相当する)がこれを基に地形の変化が検出する。そして、地形の変化を検出するとUAV130を飛行させ、地形の変化点を計測して新たな計測データを生成し、これを基に地図情報を更新する。従ってUAV130は計測機械に相当する。なお、上記「通常稼働」とは、ダンプトラック150が積荷を放土場3に向けて搬送したり空荷になって積込場2へ戻り積込機201が指定する積込位置に停車したりする、所謂ダンプトラック150の鉱山1内における本来の稼働状況を意味し、第二実施形態で説明する移動機械としてのダンプトラック150の走行状況と区別するための用語である。
【0019】
次に
図2を参照して、
図1に示す鉱山の地図を作成するための地図作成システムの構成について説明する。
図2は、第一実施形態における地図作成システムの構成図である。
【0020】
図2に示す地図作成システム100は、管制サーバ110、UAV130、及びダンプトラック150を含んで構成される。管制サーバ110は、UAV130及びダンプトラック150のそれぞれと、無線通信を介して情報の送受信を行う。
【0021】
管制サーバ110は、計測データ記憶部111、位置情報記憶部112、地図情報記憶部113、地形情報記憶部114、地形情報作成部115、地図情報作成部116、管制制御部117、地形変化検出部118、飛行経路作成部119、地図情報更新部120、及び通信部121を含む。
【0022】
計測データ記憶部111は、鉱山の地形を計測した基準計測データであって、ダンプトラック150の地図情報を作成する際に用いた計測データを記憶する。また、ダンプトラック150が通常稼働中に鉱山1の地形を計測して生成した稼働中計測データや、UAV130が地形の変化点を計測して生成した新たな計測データを記憶してもよい。
【0023】
位置情報記憶部112は、UAV130やダンプトラック150から受信した位置情報を記憶する。
【0024】
地図情報記憶部113は、基準計測データを基に作成された地図情報であって、現在ダンプトラック150が参照しているものと同じ地図情報を記憶する。
【0025】
地形情報作成部115は、基準計測データ、稼働中計測データ、及び新たな計測データの其々に基づいて、鉱山の境界の形状及び位置を含む地形情報を作成する。作成された地形情報は、地形情報記憶部114に記憶される。
【0026】
地図情報作成部116は、鉱山の地形を計測した基準計測データから生成した地形情報に基づき、鉱山で稼働する作業機械(ダンプトラック150の他、積込機201を含んでもよい)が参照できる地図であって、作業機械の稼働領域を規定するための地図情報を作成する。
【0027】
管制制御部117は、地図情報記憶部113に記憶された地図情報を参照し、鉱山1内を走行するダンプトラック150が互いに干渉しないように管制制御する。一例として、各ダンプトラック150が積荷の搬送作業中に走行する通常走行経路を設定し、その通常走行経路上に自車両のみの走行を許可し、他車両の進入は不許可とする走行許可区間を設定してもよい。この場合他車両に対しては自車両の走行許可区間は閉塞区間として機能する。
【0028】
地形変化検出部118は、稼働中計測データ及び基準計測データの其々から生成した地形情報を比較した結果に基づいて、地図情報が示す鉱山の地形に対する実際の鉱山の地形の変化を検出する。
【0029】
飛行経路作成部119は、地形変化が検出された場合に、その地形変化が検出された地点の地形を新たに計測するために、UAV130を飛行させる飛行経路を作成する。従って、飛行経路作成部119は、移動経路作成部に相当する。飛行経路作成部119は、変化地点だけでなく、稼働中計測データには含まれていない鉱山の部分領域を計測できるように飛行経路を作成してもよい。更に、飛行経路作成部119は、変化点だけでなく、変化点を含む積込場や作業場の全体領域(鉱山の部分領域に相当する)、又はダンプトラック150の走行領域(作業機械の稼働領域に相当する)について、新たな計測データを収集するための飛行経路を作成してもよい。
【0030】
地図情報更新部120は、計測機械が移動経路に沿って移動しながら生成した新たな計測データに基づいて、地図情報の更新を行う。
【0031】
通信部121は、UAV130及びダンプトラック150との間で無線通信を介してデータの送受信を行う。
【0032】
UAV130は、計測データ記憶部131、位置情報記憶部132、通信部133、測位部134、制御部135、計測部136、及びデータ収集部137を含む。
【0033】
UAV130において、測位部134は、例えばGPS(Global Positioning System)や慣性計測センサにより鉱山における自身の位置や姿勢を特定するための装置である。測位部134によって特定された位置情報は、データ収集部137によって、所定時間間隔毎に位置情報記憶部132に保存される。位置情報は例えば取得時間、及び位置情報(緯度、経度、高度)のレコード情報を関連付けた情報である。通信部133は、保存された位置情報を所定の時間間隔で管制サーバ110に送信する。あるいは飛行終了後にまとめて転送してもよい。
【0034】
制御部135はUAV130を手動あるいは自動運転により制御するための装置であり、後述する飛行経路に基づいて飛行するようにUAV130の飛行制御を行う。
【0035】
計測部136は、UAV130が飛行しながら実際の地形を計測し、計測データを出力する。計測データの例として、空中から連続的に撮影された画像データ、あるいはレーザレーダを地表面に照射し、その反射波を受信したデータがある。取得された計測データは、計測データ記憶部131に所定時間間隔毎に位置情報と同期して保存される。通信部133は、保存された計測データを所定の時間間隔で管制サーバ110に送信する。あるいは飛行終了後にまとめて転送してもよい。
【0036】
ダンプトラック150は、計測データ記憶部151、位置情報記憶部152、地図情報記憶部153、通信部154、測位部155、制御部156、計測装置157、及びデータ収集部158を含む。
【0037】
地図情報記憶部153は、搬送路5上の走行経路を示す地図情報や、積込場2及び放土場3の地図情報を記憶する。この地図情報は、管制サーバ110の地図情報記憶部113に記憶された地図情報と同じである。
【0038】
測位部155は、例えばGPSや慣性計測センサにより鉱山における自車の位置や姿勢を特定するための装置である。測位部155によって特定された位置情報は、データ収集部158によって、所定時間間隔毎に位置情報記憶部152に保存される。位置情報は例えば取得時間、位置情報(緯度、経度、高度)のレコード情報として保存される。
【0039】
通信部154は、保存された位置情報を所定の時間間隔で管制サーバ110に送信する。あるいは走行終了後にまとめて転送してもよい。
【0040】
制御部156は、地図情報記憶部153に記憶された地図情報及び測位部155が特定した自車の位置情報を参照し、管制サーバ110における管制制御部117からの指示に従ってダンプトラック150の自律走行させるための制御を行う装置である。
【0041】
計測装置157は、稼働中計測データ、地形情報作成あるいは障害物を検知するための計測データを取得するための装置である。計測データの例として、画像センサによって取得された画像データ、あるいはレーザレーダのデータがある。取得された計測データは、所定時間間隔毎に位置情報と同期して計測データ記憶部151に保存される。
【0042】
通信部154は計測データ122を所定の時間間隔で管制サーバ110に送信される。あるいは走行終了後にまとめて転送してもよい。
【0043】
図3に本実施形態に係る地図作成システムの処理の概要を説明する。
図3は、本実施形態に係る地図作成システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
地図作成システム100は、地図情報作成部116が新規の地図情報を作成し(S301)、地形変化検出部118は、ダンプトラック150が走行中に収集した稼働中計測データを用いて、S301の地図情報(これはダンプトラック150が自律走行する際に参照している地図情報に相当する)を基準としたときの実際の地形変化、換言すると地図情報と実際の地形との乖離(変化量)を検出する(S302)。地形の変化量がダンプトラック150を自律走行させる際に無視できない程度の場合、飛行経路作成部119が地図を更新するために必要な新たな計測データをUAV130に取得させるために飛行経路を生成し(S303)、UAV130が生成された飛行経路に沿って飛行しながら収集した新たな計測データを用いて地図情報更新部120が地図更新処理を行う(S304)。その後、ステップ302へ戻り、地図作成システム100が起動中は地形の変化の検出及び更新処理を繰り返す。
【0045】
(新規地図作成処理)
図4を参照して新規地図作成処理について説明する。
図4は、新規地図作成処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
地形情報作成部115は、UAV130あるいはダンプトラック150によって収集された鉱山全体の基準計測データ及びそれに同期した位置情報(S401)を読み込む。
【0047】
地形情報作成部115は、計測データを基に点群データを作成する(S402)。点群データとは、地形を表現した、3次元空間座標の点の集合データである。点群データは、たとえばStructure from Motionと呼ばれる、複数の連続した画像データから物体の3次元形状を復元する既知の手法を用いて作成することが可能である。あるいはレーザレーダのデータからであれば、レーダの反射情報によって取得された物体までの距離情報から、UAV130あるいはダンプトラック150の位置と姿勢情報に基づいて座標変換することによって作成することが可能である。なお、計測データの集合がそのまま点群データである場合もあるし、計測データの欠損部分を補間したり、3次元空間座標を新たに定義して計測データから定義後の3次元空間座標の点群データに再構成したりする場合も含む。
【0048】
地形情報作成部115は、領域認識処理を行う(S403)。これはステップ402において作成された点群データを、積込場2あるいは放土場3といった作業場領域と、盛土や崖によって区切られた境界21、31とに区別するための処理である。領域認識処理は、例えば領域拡張法(Region Growing)と呼ばれる、隣接した点群の類似性を判定して領域を決定する既知の手法を用いて実現可能である。点群の類似性として、例えば点の輝度情報や法線ベクトルが考えられる。
【0049】
地形情報作成部115は、たとえば各点群データに作業場領域なのかあるいは境界なのか、境界に隣接する作業場領域なのかを示す属性情報を付与した情報を、領域認識処理結果として出力する。この領域認識処理結果には、境界の位置及び形状が含まれるので、領域認識処理結果は地形情報に相当する(S404)。
【0050】
図5は、ステップ401から404までの処理によって生成された地形情報の一例を示す図であって、(a)はステップ402の処理によって得られた点群データ、(b)はステップ403の処理によって得られた地形情報、(c)は稼働中計測データを基に構成された点群データの一例を示す。
【0051】
図5(a)では空間を等間隔で区切った格子(ボクセル)501によって表現し、点群が存在する空間には、各格子(ボクセル)には少なくともひとつの点群データが存在する。
図5(b)は、ステップ403の処理によって得られた、点群データ501を積込場2の領域502と境界21の領域503とに分割した後の地形情報504を示す。
【0052】
一方、ダンプトラック150によって取得されたデータによっても地形情報作成が可能であり、地形情報作成部115はダンプトラックから取得した計測データ(稼働中計測データ)および位置情報を用いて地形情報507を作成する機能も有する。処理の手順もUAV130によって取得されたデータを用いた場合と同等である。違いは、取得された点群データがカバーする領域の大きさの違いである。UAV130が飛行する領域は、積込場や放土場といった作業場領域全域をカバーすることが可能である。従って取得されたデータによって作成され地形情報504は、ダンプトラック150が作業あるいは走行する領域全域をカバーすることが可能である。
【0053】
一方ダンプトラック150が走行する経路は、管制制御部117によって指示された、作業場入口から積込機201までの経路505、および積込機201から作業場出口までの経路506である。この経路は積込機201の位置が同じである限り同じ経路であるので、限られた検知領域を有する計測装置157で計測された稼働中計測データを用いて作成された地形情報は、作業場領域全域をカバーすることができない。そのため、
図5(c)に示したように限られた領域をカバーする地形情報507となる。また放土場や搬送路を走行する場合も同様である。
【0054】
地図情報作成部116は、地形情報作成部115によって作成された、作業場領域全域をカバーする地形情報(
図5(b)参照)を読み込み、作業場境界を抽出する処理を行う(S405)。この処理は具体的には、入力データである地形情報504に格納された作業場
の領域502のうち、盛土や崖によって区切られた境界の領域503と隣接する点群データを抽出することによって実現可能である。
【0055】
地図情報作成部116は、ノード情報を生成する(S406)。具体的には、作業場のノード情報を生成する場合は、ステップ402において抽出された点群データがノード情報となる。あるいは所定の間隔で間引いてもよい。一方搬送路のノード情報を生成する場合は、抽出された点群データを道路の中心方向に所定の間隔だけ移動させることによって生成することができる。このようにして生成されたノード情報に、各ノードを識別するIIDを付与することにより、最終的なノード情報を生成する。
【0056】
地図情報作成部116は、リンク情報を生成する(S407)。リンク情報とは、2つのノード情報間の接続情報である。リンク情報は、空間的に隣接する2つのノードを接続することにより生成される。また、ある閾値内に近接する2つのノードは同一のノードとみなす処理を行うことによって、交差点等分岐のある道路構造をリンクの接続関係によって表現することができる。
【0057】
地図情報作成部116は、ノード情報(S406)及びリンク情報(S407)を含む地図情報を出力して(S408)、処理を終了する。
【0058】
図6は、ステップ408で生成された地図情報の一例を示す図であって、(a)は積込場2の地図を拡大した図、(b)は鉱山全体の地図を示す。
【0059】
図6(a)に示すように、地図情報作成部116は、積込場2内の地図は、積込場内
の領域502のうち境界
の領域503の内側に沿って並ぶノード及びリンクを選択し、地図情報601を生成する。
【0060】
同様に地図情報作成部116は、放土場3、駐機場4の各境界の内側にあるノード及びリンクからなる地図情報602、603を作成する。また、搬送路5上のノード及びリンクからなる地図情報604を生成する。生成された地図情報601、602、603及び604は、新規の地図情報として管制サーバ110における地図情報記憶部113、およびダンプトラック150の地図情報記憶部153に記憶される。
【0061】
(地形変化の検出処理)
図7を参照して地形変化の検出処理について説明する。
図7は、地形変化の検出処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
地形情報作成部115は、ダンプトラック150が稼働中に収集した稼働中計測データを読み込む(S701)。
【0063】
地形情報作成部115は稼働中計測データを基に地形情報を生成する(S702)。このときの地形情報は、ダンプトラック150が走行した領域の地形情報のみを含み、作業場全体を含まないので、以下部分地形情報(
図5(c)の符号507参照)という。
【0064】
地形変化検出部118は、作業場全体の地形情報(以下「全体地形情報」という。
図5(b)の符号504参照)と部分地形情報507とを比較する(S703)。各地形情報は基準計測データ又は稼働中計測データを基に生成されるので、地形情報の比較することは、基準計測データ又は稼働中計測データを比較することと同じ意味を有するが、計測データは各計測点の計測値から定義されるのに対し、地形情報はそれらを3次元実座標上に定義しなおしたデータ(正規化したデータ)であるので比較をする上ではより容易である。
【0065】
地形変化検出部118は、例えば全体の地形情報504における境界
の領域503の近傍付近に存在する点群データの属性と、部分地形情報507における同じ位置に存在する点群データの属性とを比較し、属性が変化した点の数をカウントすることによって変化量の有無(大小)を検出してもよい。
【0066】
地形変化検出部118は、地形の変化量が所定の閾値(地形変化があると判定するために設定された閾値であり、その値はダンプトラックの車体の大きさや操舵角、ショベルの旋回範囲等を適宜用いて定めてもよい。)以上であるか否かを判定する(S704)。本例ではステップ703において計算した属性が変化した点の数が所定の閾値以上であるかを判定する。肯定の場合(S704/Yes)、地形変化検出部118は、飛行経路作成部119に地形が変化した旨を通知し、飛行経路生成処理(S303)に進む。否定の場合(S704/No)、地形変化検出部118は、ステップ701へ戻り、稼働中計測データの取得、送信を待機する。
【0067】
飛行経路作成部119は、地図情報の更新のために必要な地形情報を取得するためにUAV130の飛行経路を作成する処理(飛行経路生成処理)を行う。以下
図8及び
図9を参照して、飛行経路生成処理について説明する。
図8は、飛行経路生成処理の流れを示すフローチャートである。
図9は、飛行経路作成部119において用いられる各データの関係を示した図である。
【0068】
まず、飛行経路作成部119は、更新対象となっている地図情報を読み込む(S801)。
【0069】
更に飛行経路作成部119は、ステップ703において地形変化検出部118が検出した地形の変化を示した点の位置情報(以下「地形変化点情報」という)を読み込む(S802)。
【0070】
飛行経路作成部119は、飛行領域を生成する(S803)。具体的には、地図情報において地形変化点を包含する矩形情報を生成し、その矩形情報を飛行領域とすることによって実現可能である。
【0071】
次いで飛行経路作成部119は、その矩形情報をカバーする飛行経路を生成する(S804)。
【0072】
通信部121はUAV130に対し生成された飛行経路を送信し(S805)、UAV130の通信部133が受信する。
【0073】
図9は、地図情報901、地形変化検出部118において検出された地形変化点情報902、飛行領域903、飛行経路904を示す。
【0074】
UAV130は作成された飛行経路904に基づいて飛行することで、ダンプトラック150が変化を検出した後の地形情報を作成するための新たな計測データ及び位置情報を収集することができる。
【0075】
(地図情報更新処理)
地図情報更新部120において、新たな計測データに基づいて地図情報を更新する処理(地図情報更新処理)を行う。
図10は、地図情報更新部120の処理手順を示すフローチャートである。
【0076】
地図情報更新部120は、管制サーバ110の地図情報記憶部113に現在記憶されている地図情報を読み込む(S1001)。
【0077】
更に地図情報更新部120は、管制サーバ110の地形情報記憶部114に現在記憶されている地形情報を読み込む(S1002)。この地形情報107は鉱山あるいは作業場全体の地形情報であって、ステップ1001で読み込んだ地図情報の基となった地形情報である。この地形情報に代えて、基準計測データを読み込んでもよい。
【0078】
地形情報作成部115は、UAV130が生成した新たな計測データ及び位置情報に基づいて新たな地形情報を作成し、地図情報更新部120に出力する。こうして、地図情報更新部120は新たな地形情報を取得する(S1003)。
【0079】
地図情報更新部120は、現在の境界付近の地形情報(基準計測データに由来)、及び境界付近の新たな地形情報(新たな計測データに由来)を比較して、境界が変化した地点を検出する(S1004)。
【0080】
地図情報更新部120は、地形情報が変化した地点の地図情報を、新たな地家形状情報を基に作成する。そして、現在の地図情報における変化した地点に相当する部分の地図情報を、新たに作成した地図情報に置き換え、更新後の地図情報を地図情報記憶部113に上書き(更新)記録する(S1005)。
【0081】
通信部121は、更新された地図情報をダンプトラック150に送信する(S1006)。以後、ダンプトラック150は、更新された地図情報を参照して自律走行する。
【0082】
本実施形態では、走行中のダンプトラックが収集した計測データを基に地形情報を作成し、現在の地形情報に対する変化量が閾値以上の場合に、その領域を含むUAVの飛行経路を生成して新たな計測データを収集する。そして新たな計測データを用いて地形情報及び地図情報を更新する。これにより、ダンプトラックが随時走行中に収集した計測データを基に地図情報の更新タイミングを判定するので、地形の変化をよりタイミングで把握し、地図を更新することができる。そのため、地形変化に対する地図の追従性を向上させることができる。また、新たな計測データの収集はUAVを用いることにより、鉱山の作業機械の稼働を止めたり変更させたりすることなく地図の更新が行える。また、UAVは、地図の更新が必要なときにだけ飛行させることができ、無駄に新たな計測データを収集しなくてもよい。
【0083】
<第二実施形態>
第二実施形態は、第一実施形態におけるUAV130の飛行に代わり、ダンプトラック150の経路を変更することによって新たな地形情報を取得するものである。従って、本実施形態ではダンプトラック150が計測機械として機能する。
【0084】
図11を参照して第二実施形態のシステム構成を説明する。
図11は、第二実施形態におけるシステム構成図である。
図11に示すように、第二実施形態に係る管制サーバ110が第一実施形態の管制サーバ110と異なる点は、管制サーバ110における飛行経路作成部119の代わりに、計測用走行経路作成部1101を備えたことにある。従って計測用走行経路作成部1101は、移動経路作成部に相当する。
【0085】
そしてUAV130を用いた飛行経路生成処理(S303)に替えて、計測用走行経路生成処理(S1200)を実行する。通常、管制制御部117は、運搬効率を優先して無駄を最小限にしたダンプトラック150の走行経路(以下「通常走行経路」という)を設定する。これに対し、計測用走行経路
作成部1101は、地形の変化を計測することを優先して、通常走行経路とは異なるアルゴリズムで計測用走行経路を生成する。例えば計測用走行経路
作成部1101は、計測機械としてのダンプトラック150が、新たな計測データを計測するために経由する経由地点を設定する。この経由地点は通常走行経路から外れた地点でもよい。
【0086】
次に
図12及び
図13を参照して計測用走行経路作成部1101によるダンプトラック150の計測用走行経路生成処理について説明する。
図12は計測用走行経路作成部1101の処理手順を示すフローチャートである。
図13は走行経路生成のための経由地点の設定方法を説明した図であって、(a)は通常走行経路を示し、(b)は計測用走行経路を示す。
【0087】
図12に示すように、計測用走行経路作成部1101は、管制サーバ110の地図情報記憶部113に記憶された現在の地図情報を読み込む(S1201)。
【0088】
更に計測用走行経路作成部1101は、管制制御部117から現在設定されている通常走行経路を示す情報を読み込む(S1202)。
【0089】
計測用走行経路作成部1101は、計測用走行経路の生成に用いる経由地点を設定する(S1203)。そして、その経由地点を通過するように通常走行経路を変更して計測用走行経路を生成し管制制御部117に通知する(S1204)。管制制御部117は、計測用走行経路に沿って走行するよう、ダンプトラック150の管制制御を行う。
【0090】
ステップ1203において、計測用走行経路作成部1101は、経由地点が通常走行経路上にあるかを確認し、もしあれば管制制御部117に通知してダンプトラック150を通常走行経路に沿って走行させながら新たな計測データを収集させてもよい。
【0091】
また、ステップ1203において、計測用走行経路作成部1101は、経由地点の設定のみを行い、ステップ1204において管制制御部117に通知してもよい。この場合、管制制御部117が、経由地点を通過するように通常走行経路を変更して計測用走行経路を作成してもよい。
【0092】
図13(a)に示すように、ダンプトラック150fが積込場2内を積込機201に向かって走行していると仮定する。搬送路5から積込機201に向かう往路の通常走行経路405を走行する際、ダンプトラック150fに搭載された計測装置157の検知領域1301fが積込場2の境界を表す地図情報601に対応する実地点を超えているので、積込機201に向かう際には計測装置157によって境界の変化を検知できるとする。なお、
図13を参照した説明において、実3次元空間における点は上記「実地点」といい、地図情報上の点は単に「点」と記載する。
【0093】
一方、積込機201から搬送路5に向かう復路の通常走行経路406を走行する際には、ダンプトラック150hに搭載された計測装置157の検知領域1301hが境界に到達しておらず、搬送路5に戻る際には境界の変化を検知できないとする。
【0094】
そこで、復路を走行中も、ダンプトラック150hに搭載された計測装置157の検知領域1301hが境界の変化を検知できるように、復路での経由地を設定する。そして、復路の通常走行経路406が経由地を通過するように変更して計測用走行経路を生成する。
【0095】
計側用走行経路生成方法の一例を
図13(b)を参照して説明する。計測用走行経路作成部1101は、復路の通常走行経路406上において、積込機201から所定の距離だけ離れた点1303を決定する。そしてその点を通り復路の通常走行経路406と直交する直線1304を決定する。そしてその直線1304上に存在し、かつ所定の距離(計測装置157の検知領域が境界線上の実地点を含む距離)だけ離れた点1305を経由地点として設定する。
【0096】
あるいは、積込機201から所定の距離だけ離れた境界
の地図
情報601上に点1306を決定する。そしてその点を通り復路の通常走行経路406と直交する直線1307を求める。そしてその直線1307上に存在し、かつ計測装置157の検知領域を考慮して点1306から所定の距離(計測装置157の検知領域が境界線上の実地点を含む距離)だけ離れた点1308を経由地点として設定する。また点1306は後述する地図情報更新部120から通知されるものとしてもよい。
【0097】
地図情報更新部120は、計測用走行経路を走行したダンプトラック150が収集した新たな計測データを基に、地図情報を更新する。
【0098】
図14は第二実施形態に係る地図情報更新部120の処理手順を示すフローチャートである。第一実施形態と同一の処理を行うステップについては、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0099】
第二実施形態では、新規地図作成処理(S301)において、UAVの計測データに代わり航測車両のGPS情報(位置情報)を用いた走行軌跡情報を生成し、地図情報作成部116がこの走行軌跡情報を用いて新規地図を作成してもよい。これにより、UAVを用いることなく、新規地図が作成できる。こうしてできた新規地図に対して、
図14の処理ステップに沿って地図更新処理を実行する。
【0100】
通信部121はダンプトラック150から新たな計測データを受信し、地形情報作成部115がそれに基づき地形情報を生成する(S1401)。この地形情報は、UAVが収集した新たな計測データに基づく地形情報よりも狭い領域のものである。そこで、以下ではダンプトラックが収集した新たな計測データに基づく地形情報を部分地形情報という。
【0101】
地図情報更新部120は、複数のダンプトラック150、あるいは同一ダンプトラック150が異なる時間帯に取得した部分地形情報をひとつの地形情報に統合する(S1402)。
【0102】
地図情報更新部120は、統合された地形情報が読み込み済の地図情報の境界をすべてカバーしているか否かを判定する(S1403)。そしてすべてカバーしていると判定すると(S1403/Yes)、ステップ1004移行の処理に進む。これ以降は、第一実施形態における処理内容と同一である。
【0103】
一方、地図情報更新部120が、すべてカバーしていないと判定すると(S1403/No)、新たな経由地点を設定するように計測用走行経路作成部1101に通知して(S1404)、再度、計測用走行経路生成処理(S1200)に戻る。その際、境界のどの位置が欠損しているかを地図情報及び地形情報を比較することによって特定し、その位置も合わせて通知する。
【0104】
計測用走行経路作成部1101は、再度の計測用走行経路生成処理(S1200)において、欠損している境界の計測データが収集できるように経由地点を設定する。
【0105】
本実施形態によれば、稼働中のダンプトラックの走行経路を変更して新たな計測データを収集するので、第一実施形態とは異なりUAVが不要になり、システムの構成要素を減らすことができる。
【0106】
上記各実施形態は、本発明を限定する趣旨ではなく、様々な変形例も本発明に含まれる。例えば上記実施形態では、積込場の更新についての例を説明したが、放土場や搬送路の更新についても同様の方法が適用できる。また、ダンプトラック150は一部あるいはすべての車両を有人ダンプトラックに置き換えてもよい。また無人航空機は人間が操作してもよいし、飛行経路に基づいて自律飛行してもよい。
【0107】
また上記では、移動機械(UAV、ダンプトラック)が収集したデータを計測データと称し、計測データを基に作成した各地点の属性を示すデータを地形情報と称し、計測データと地形情報とを分けて説明したが、計測データ及び地形情報は両者とも作業機械(ダンプトラック)の稼働領域を規定する際に作業機械が参照する地図情報を生成するために用いられるデータであるので、これらをまとめてRAWデータと称してもよい。この場合のRAWデータとは、地図情報を生成するために用いられるデータであって、そのままのデータ形式では作業機械が参照できないデータ形式により生成されたものであり、地図情報と対比して用いられる用語である。そして本発明及び各実施形態の説明において、計測データ及び地形情報をRAWデータに置き換えても(計測データから地形情報を生成する場合はRAWデータを地形が把握できるRAWデータに加工すると読み替える)、同様の構成及び効果を得ることができる。