(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水素化ホウ素ナトリウム、水及び溶媒が供給され、前記水素化ホウ素ナトリウムを加水分解して水素を発生させると共に、生成したメタホウ酸ナトリウムを前記溶媒と共に排出する反応部と、
前記反応部から排出された溶液から溶媒を蒸発させて無水メタホウ酸ナトリウムを得る蒸発器と、
前記蒸発器から排出された溶媒蒸気を液化する凝縮器と、
前記反応部及び前記凝縮器で発生した熱を回収し、前記蒸発器に前記熱を供給するヒートポンプと、
を有し、
前記凝縮器で液化された溶媒が前記反応部に供給される水素発生装置。
水素化ホウ素ナトリウムを貯留する原料貯留部と、前記蒸発器で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留する副生成物貯留部とを備え、脱着可能な原料タンクを有する請求項1又は2に記載の水素発生装置。
水素化ホウ素ナトリウム、水及び溶媒が供給され、前記水素化ホウ素ナトリウムを加水分解して水素を発生させると共に、生成したメタホウ酸ナトリウムを前記溶媒と共に排出する反応装置と、
前記反応装置から排出された溶液から溶媒を蒸発させて無水メタホウ酸ナトリウムを得る蒸発装置と、
前記蒸発装置から排出された溶媒蒸気を液化する凝縮装置と、
前記反応装置及び前記凝縮装置で発生した熱を回収し、前記蒸発装置に前記熱を供給するヒートポンプと、
を有し、
前記凝縮装置で液化された溶媒が前記反応装置に供給される水素発生システム。
水素化ホウ素ナトリウムを貯留する原料貯留部と、前記蒸発装置で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留する副生成物貯留部とを備える原料タンクを有する請求項5又は6に記載の水素発生システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水素化ホウ素ナトリウムを用いて水素を発生する従来の水素発生装置及び水素発生システムは、下記化学式2に示すように、加水分解反応に必要な水(2H
2O)に加えて、加水分解反応により生じる反応熱と副生成物であるメタホウ酸ナトリウムを反応部外に排出するために多量の水(18H
2O)が必要となる。
【0008】
【化2】
【0009】
図7は水素化ホウ素ナトリウムを用いる従来の水素発生装置の構成を示す概念図である。
図7に示すように、従来の水素発生装置100は、例えば、原料タンク101、用役水タンク102、反応部103、廃液タンク104を備えている。この水素発生装置100では、原料タンク101から反応部103に水素化ホウ素ナトリウムが供給されると共に、用役水タンク102から水素生成部103に水が供給され、反応部103で加水分解反応を生じさせて水素を発生させる。反応部103で発生した水素は、例えば燃料電池200に燃料として供給される。一方、加水分解反応により生じたメタホウ酸ナトリウムは、余剰水と共に廃液タンク104に排出される。
【0010】
図7に示す従来の水素発生装置100は、大量の水を使用するため、用役水タンク102及び廃液タンク104の容積を大きくする必要があり、装置全体が大型化すると共に、大量の水を含む廃液が発生し、その輸送に手間やコストがかかるという問題がある。また、この水素発生装置100では、副生成物であるメタホウ酸ナトリウムが、水と共に排出され、水に溶解している状態又は冷却により析出して水和物(NaBO
2・2H
2O、NaBO
2・4H
2O)の状態で回収される。このため、従来の水素発生装置100から回収されたメタホウ酸ナトリウムを水素化ホウ素ナトリウムの原料として用いる場合は、脱水(無水化)工程が必要となるという問題もある。
【0011】
そこで、本発明は、メタホウ酸ナトリウムの回収が容易で、かつ装置全体或いはシステム全体を従来よりも小型化することができる水素発生装置、水素発生システム及び燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る水素発生装置は、水素化ホウ素ナトリウム、水及び溶媒が供給され、前記水素化ホウ素ナトリウムを加水分解して水素を発生させると共に、生成したメタホウ酸ナトリウムを前記溶媒と共に排出する反応部と、前記反応部から排出された溶液から溶媒を蒸発させて無水メタホウ酸ナトリウムを得る蒸発器と、前記蒸発器から排出された溶媒蒸気を液化する凝縮器と、前記反応部及び前記凝縮器で発生した熱を回収し、前記蒸発器に前記熱を供給するヒートポンプとを有し、前記凝縮器で液化された溶媒が前記反応部に供給される。
この水素発生装置には、前記凝縮器で液化された溶媒を一時的に貯留する溶媒バッファタンクを設けることができる。
本発明の水素発生装置は、前記蒸発器で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留する脱着可能な副生成物回収タンクを有していてもよい。
又は、本発明の水素発生装置は、水素化ホウ素ナトリウムを貯留する原料貯留部と、前記蒸発器で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留する副生成物貯留部とを備え、脱着可能な原料タンクを有していてもよい。
【0013】
本発明に係る水素発生システムは、水素化ホウ素ナトリウム、水及び溶媒が供給され、前記水素化ホウ素ナトリウムを加水分解して水素を発生させると共に、生成したメタホウ酸ナトリウムを前記溶媒と共に排出する反応装置と、前記反応装置から排出された溶液から溶媒を蒸発させて無水メタホウ酸ナトリウムを得る蒸発装置と、前記蒸発装置から排出された溶媒蒸気を液化する凝縮装置と、前記反応装置及び前記凝縮装置で発生した熱を回収し、前記蒸発装置に前記熱を供給するヒートポンプとを有し、前記凝縮装置で液化された溶媒が前記反応装置に供給される。
この水素発生システムには、前記凝縮装置で液化された溶媒を一時的に貯留する溶媒バッファタンクを設けることができる。
本発明の水素発生システムは、前記蒸発装置で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留する副生成物回収タンクを有していてもよい。
又は、本発明の水素発生システムは、水素化ホウ素ナトリウムを貯留する原料貯留部と、前記蒸発装置で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留する副生成物貯留部とを備える原料タンクを有していてもよい。
【0014】
本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池と、前述した水素発生装置又は前述した水素発生システムとを有する。
この燃料電池システムは、前記燃料電池で生成した水を回収する生成水回収装置を有していてもよく、その場合、前記生成水回収装置で回収された水が前記水素発生装置の反応部又は前記水素発生システムの反応装置に供給される。
前記燃料電池には、例えば固体高分子形燃料電池を用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メタホウ酸ナトリウムを無水物の粉体で回収できるため、生成物の回収及び再利用が容易となり、更に、回収用タンクや用役水タンクの容積を低減して、水素発生装置、水素発生システム及び燃料電池システムを実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る水素発生装置について説明する。
図1は本実施形態の水素発生装置の構成を示す概念図である。
図1に示すように、本実施形態の水素発生装置10は、反応部1と、蒸発器2と、凝縮器3と、ヒートポンプ4とを備えており、更に、必要に応じて、原料タンク5、用役水タンク6、副生成物回収タンク7、溶媒バッファタンク8などが設けられる。
【0019】
[反応部1]
反応部1は、水素化ホウ素ナトリウムを加水分解して水素を発生させると共に、生成したメタホウ酸ナトリウムを溶媒と共に排出するものである。反応部1の構成は特に限定されるものではないが、例えば非特許文献1に記載されている小型遠心リアクターを用いることができる。この反応部1で発生した水素(H
2)は、燃料として燃料電池に供給しても、別途設けられた回収容器に収容してもよい。一方、副生成物のメタホウ酸ナトリウムは、溶媒と共に反応部1外に排出される。
【0020】
[蒸発器2]
蒸発器2は、反応部1から排出された溶液から溶媒を蒸発させて無水メタホウ酸ナトリウムを得るものである。蒸発器2を用いて、溶媒を高温下で短時間に蒸発させると、溶媒が水の場合や溶媒に水が含まれている場合でも、結晶水は形成されず、無水のメタホウ酸ナトリウムが得られる。蒸発器2の構成は、特に限定されるものではなく、溶液を連続的に加熱して溶媒を蒸発させることが可能なものであればよい。なお、蒸発器2で生成した無水メタホウ酸ナトリウムの粉末は例えば副生成物回収タンク7に送られ、溶媒蒸気は凝集器3に送られる。
【0021】
[凝縮器3]
凝縮器3は、蒸発器2から排出された溶媒蒸気を液化するものである。凝縮器3の構成は、特に限定されるものではなく、公知の凝縮器を用いることができる。凝縮器3で液化して得た溶媒は、例えば後述する溶媒バッファタンク8に一時的に貯留された後、反応部1に供給されて再利用される。
【0022】
[ヒートポンプ4]
ヒートポンプ4は、反応部1及び凝縮器3で発生した熱を吸熱して回収し、回収した熱を高温にして蒸発器2に供給するものである。
図2は
図1に示すヒートポンプ4の構成を模式的に示す図である。ヒートポンプ4の構成は、特に限定されるものではないが、例えば、吸熱極41となる蒸発器、排熱極42となる凝縮器、圧縮ポンプ43及び膨張弁44を備えるものを使用することができる。
【0023】
図2に示すヒートポンプ4では、膨張弁44により急激に膨張させて低温低圧とした冷媒45を、吸熱極(蒸発器)41において外部から熱を吸収して蒸発させる。その際、吸熱極(蒸発器)41では、反応部1及び凝縮器3を熱源とし、これらからの排熱Q
2a,Q
2bを気化熱Q
2として吸収する。気化した冷媒45は、圧縮ポンプ43で圧縮されて高温高圧の状態で排熱極(凝縮器)42に供給され、排熱極(凝縮器)42において液化される。その際、圧縮ポンプ43には駆動エネルギーQ
1として電力が供給され、排熱極(凝縮器)42からは熱源から吸収した熱よりも高温の凝固熱Q
3(=Q
1+Q
2a+Q
2b)が発生し、この熱が蒸発器2に供給される。
【0024】
反応部1で起こる加水分解反応は、発熱反応であり、水素化ホウ素ナトリウム1モルあたり217kJの熱が発生する。例えば、冷媒45に炭酸ガスを用いた場合、ヒートポンプ4の吸熱極41の冷媒45の温度は例えば20℃程度であり、排熱極42の冷媒45の温度は例えば130℃程度となる。そして、反応部1に供給される溶媒にエタノール(沸点:80.3℃、気化熱:393J/g)を用いた場合、蒸発器43において、ヒートポンプ4の排熱極42から供給される熱量のみで、反応部1から排出される溶液中のエタノール成分を蒸発させることができる。
【0025】
このヒートポンプ4を用いることにより、反応部1及び凝縮器3の熱を利用して蒸発器2内を加熱できるため、外部からエネルギーを供給しなくても又は最小限のエネルギー供給で、溶媒を蒸発させて、無水のメタホウ酸ナトリウムを得ることができる。
【0026】
[原料タンク5]
原料タンク5は、反応部1に供給される水素化ホウ素ナトリウムを貯留するものであり、装置内に設けられていても、装置とは別に設けられていてもよい。また、装置内に設けられている場合は、装置に固定されていても、カートリッジのように脱着可能となっていてもよい。
【0027】
[用役水タンク6]
用役水タンク6は、反応部1に供給される加水分解用の水を貯留するものであり、前述した原料タンク5と同様に、装置内に設けられていても、装置とは別に設けられていてもよい。また、装置内に設けられている場合は、装置に固定されていても、脱着可能となっていてもよい。この用役水タンク6には、反応部1に接続された排水口の他に、例えば内部に水を供給するための給水口などが設けられていてもよい。
【0028】
[副生成物回収タンク7]
副生成物回収タンク7は、蒸発器2で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留するものであり、装置内に設けられていても、装置とは別に設けられていてもよい。また、装置内に設けられている場合は、装置に固定されていても、カートリッジのように脱着可能となっていてもよい。なお、副生成物回収タンク7が水素発生装置内に固定設置されている場合は、作用性の観点から、内部に貯留されている無水メタホウ酸ナトリウムを回収するための回収口を設けることが望ましい。
【0029】
[溶媒バッファタンク8]
溶媒バッファタンク8は、凝縮器3で液化された溶媒を一時的に貯留し、貯留された溶媒を適宜反応部1に供給するものである。この溶媒バッファタンク8も、前述した各タンクと同様に、装置内に設けられていても、装置とは別に設けられていてもよい。溶媒バッファタンク8には、凝縮器3に接続された導入口及び反応部1に接続された排出口の他に、例えば内部に溶媒を追加するための給液口が設けられていてもよい。なお、溶媒に水を使用する場合は、別途溶媒バッファタンク8を設けず、凝縮器3で液化された溶媒(水)を用役水タンク6に貯留し、用役水タンク6から反応部1に供給するようにしてもよい。
【0030】
[動作]
次に、本実施形態の水素発生装置を用いて、水素を発生する方法について説明する。
図1に示すように、反応部1には、原料タンク5から水素化ホウ素ナトリウムが、用役水タンク6から水が、溶媒バッファタンク8から溶媒がそれぞれ供給される。そして、反応部1において水素化ホウ素ナトリウムが加水分解され、水素が発生する。このとき発生する反応熱Q
2aは、ヒートポンプ4により回収される。また、反応により生じた水素は、例えば燃料として燃料電池に供給したり、別途設けられた回収容器に収容したりすることができる。
【0031】
一方、副生成物であるメタホウ酸ナトリウムは、溶媒と共に蒸発器2に搬送される。ここで、メタホウ酸ナトリウム搬送用の溶媒は、加水分解反応に影響がないものであればよく、例えば水、エタノール(C
2H
5OH)、t-ブチルアルコール((CH
3)
3OH)、1,2−ジメトキシエタン(C
4H
10O
2)などを使用することができる。なお、エネルギー効率の観点から、搬送用溶媒は、気化熱が水の1/2以下のものを使用することが好ましく、前述した溶媒の中でも、特に、気化熱が水の約1/6と小さいエタノールが好ましい。
【0032】
溶媒にエタノールを使用した場合、反応部1での反応は、下記化学式3により表される。
【0034】
上記化学式3に示すように、反応部1に供給された水(2H
2O)は、反応により分解消費される。一方、搬送用溶媒であるエタノール(αC
2H
5OH)は、そのまま残り、副生成物であるメタホウ酸ナトリウム(NaBO
2)を系外に搬出する。本実施形態の水素発生装置では、メタホウ酸ナトリウムを粉体で回収するため、その後の工程で、溶液から溶媒を蒸発させる。この蒸発処理のエネルギー効率を考慮すると、反応部1からメタホウ酸ナトリウム(NaBO
2)を排出するための溶媒には、気化熱が小さいものを使用することが望ましい。
【0035】
従来、副生成物搬送用に用いられていた水は、沸点が100℃であり、気化熱も2250J/gと大きいが、エタノールは沸点が81℃、気化熱393J/gと、水に比べて約1/6と小さい。このため、搬送用の溶媒にエタノールを使用すると、蒸発器2で行う蒸発処理に必要な熱エネルギーを小さくすることができる。これにより、加水分解の反応熱を回収利用することで、蒸発器2の熱源を十分に賄うことが可能となる。なお、本実施形態の水素発生装置は、溶媒として水を使用することを排除するものではなく、エタノールを使用した場合に比べて、エネルギー効率は劣るが、溶媒に水を使用しても、無水メタホウ酸ナトリウムの粉末を得ることが可能であり、また、従来法に比べて使用する水の量を低減することが可能である。
【0036】
反応部1から排出された溶液は、蒸発器2において、ヒートポンプ4から供給される熱Q
3によって加熱されて、溶媒蒸気と無水メタホウ酸ナトリウム(NaBO
2)とに分離される。蒸発器2で生成した無水メタホウ酸ナトリウムの粉末は、例えば副生成物回収タンク7に貯留される。また、溶媒蒸気は、凝縮器3で液化された後、溶媒バッファタンク8に送られ、再度反応部1に供給される。なお、本実施形態の水素発生装置10では、凝縮器3で発生する凝縮熱Q2bも、ヒートポンプ4により回収され、蒸発器2に供給される。
【0037】
以上のように、本実施形態の水素発生装置では、反応熱を回収し、その後の反応に利用しているため、水は反応に必要な分だけ供給すればよい。これにより、用役水タンクの容量を、従来に比べて大幅に低減することができる。また、副生成物運搬用の溶媒は、メタホウ酸ナトリウムから分離・回収し、循環利用しているため、廃液タンクが不要になる。その結果、本実施形態の水素発生装置は、従来の装置よりも小型化及び軽量化することが可能となる。更に、本実施形態の水素発生装置は、副生成物であるメタホウ酸ナトリウムを無水の粉体として回収できるため、回収時の作業性及び輸送性に優れ、回収後の再利用も容易である。
【0038】
(第1の実施形態の変形例)
次に、本発明の第1の実施形態の変形例に係る水素発生装置について説明する。
図3は本変形例の水素発生装置の構成を示す概念図であり、
図4はその原料タンク15の構成を模式的に示す図である。なお、
図3においては
図1に示す水素発生装置の構成要素と同じものには同じ符号を付し、以下詳細な説明は省略する。前述した第1の実施形態の水素発生装置10では、原料タンク5と副生成物回収タンク7とを別々に設けていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図3に示すように、原料タンク15が副生成物回収タンクを兼ねていてもよい。
【0039】
[原料タンク15]
図4に示すように、本変形例の水素発生装置20は、原料タンク15の内部に例えば上下方向又は左右方向に移動可能な隔離壁が設けられており、この隔離壁により原料タンク15の内部が原料貯留部15aと副生成物貯留部15bに区画されている。この場合、例えば反応前は、原料タンク15の大部分は原料貯留部15aとなり、原料である水素化ホウ素ナトリウムが充填されている。そして、反応が進行して水素化ホウ素ナトリウムが減少すると、原料貯留部15aが減少し、空いたスペースが副生成物貯留部15bとなり、無水メタホウ酸ナトリウムが貯留される。
【0040】
原料タンク15内に設けられる隔離壁は、板状体の他、
図4に示すような袋体16とすることもできる。この場合、原料タンク15から袋体16を取り出すことで、無水メタホウ酸ナトリウムを回収することができる。なお、作業性などの観点から、原料タンク15は、脱着可能とし、タンクを交換するだけで、新規原料の補充と副生成物の回収が同時にできるようになっていることが好ましい。
【0041】
更また、本変形例の水素発生装置は、原料タンク15を複数個設置して、1つの原料タンク15が空になったら、次の原料タンク15から原料が供給されるようにしてもよい。この場合、空になったものから順次、新しい原料タンク15に交換することで、原料タンク15に直接原料を補充することができなくても、装置全体としては原料補給が可能となる。
【0042】
以上のように、本変形例の水素発生装置は、原料タンク内に副生成物貯留部が設けられているため、別途副生成物回収タンクを設ける必要がなく、更なる小型化・軽量化を実現することができる。また、本変形例の水素発生装置は、原料である水素化ホウ素ナトリウムの補充と、副生成物である無水メタホウ酸ナトリウムの回収を一度に行うことができるため、作業効率が向上する。なお、本変形例の水素発生装置における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る水素発生システムについて説明する。前述した第1の実施形態及びその変形例では、装置内に反応部、蒸発器、凝集器及びヒートポンプが設けられた形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれ独立した装置から構成される水素発生システムとすることもできる。
【0044】
具体的には、本実施形態の水素発生システムは、反応装置と、蒸発装置と、凝縮装置と、ヒートポンプとを少なくとも備え、各装置には配管が接続され、この配管を介して相互に接続されている。この水素発生システムには、必要に応じて原料タンク、用役水タンク、溶媒バッファタンクなどが設けられる。
【0045】
本実施形態の水素発生システムで、水素を発生する場合は、原料タンクから反応装置に水素化ホウ素ナトリウムが供給され、用役水タンクから反応装置に水が供給され、溶媒バッファタンクから溶媒が供給される。反応装置において発生した水素は、外部に取り出され、燃料として燃料電池に供給されたり、別途設けられた回収容器に収容されたりする。また、加水分解反応により発生した熱は、ヒートポンプにより回収される。
【0046】
一方、副生成物であるメタホウ酸ナトリウムは、溶媒と共に蒸発装置に搬送され、蒸発装置において、ヒートポンプから供給される熱によって加熱される。蒸発装置では、高温で加熱することにより、メタホウ酸ナトリウムを含む廃液から溶媒を蒸発させて、無水メタホウ酸ナトリウム(NaBO
2)粉末を得る。そして、この無水メタホウ酸ナトリウムは、副生成物回収タンク又は原料タンクの副生成物貯留部に貯留される。また、蒸発装置で生成した溶媒蒸気は、凝縮装置で凝縮(液化)した後、溶媒バッファタンクに一時的に貯留され、循環利用される。なお、凝縮装置で発生する凝縮熱も、ヒートポンプにより回収され、蒸発装置での加熱に利用される。
【0047】
本実施形態の水素発生システムは、ヒートポンプにより反応熱を回収し、蒸発装置で利用しているため、反応装置に過剰に水を供給する必要がない。これにより、用役水タンクの容量を従来よりも小さくすることができる。また、副生成物運搬用の溶媒は、副生成物であるメタホウ酸ナトリウムから分離し、回収して循環利用しているため、大型の廃液タンクを設ける必要もない。その結果、本実施形態の水素発生システムは、小型化、省スペース化及び軽量化を実現することが可能である。
【0048】
更に、本実施形態の水素発生システムは、副生成物であるメタホウ酸ナトリウムを無水の粉体として回収できるため、回収時の作業性及び輸送性に優れており、回収後の再利用も容易となる。なお、本実形態の水素発生システムにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態及びその変形例と同様である。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池システムについて説明する。
図5は本実施形態の燃料電池システムの構成を示す概念図である。なお、
図5においては
図1に示す水素発生装置の構成要素と同じものには同じ符号を付し、以下詳細な説明は省略する。
図5に示すように、本実施形態の燃料電池システム50は、
図1に示す水素発生装置10に燃料電池9を組み込み、燃料電池9から排出される生成水を、用役水バッファタンク36などを介して、反応部1に供給されるようにしたものである。
【0050】
[燃料電池9]
燃料電池9は、水素発生システムから供給された水素(H
2)と空気中の酸素(O
2)とを反応させて、電気エネルギーを発生させるものであり、その反応は下記化学式4で表される。従来の燃料電池では、空気中の酸素以外の成分や反応により生じた生成水(4H
2O)は、排気口から電池外に放出しているが、本実施形態の燃料電池システムでは、生成水を回収し、反応部1における加水分解反応に利用する。
【0052】
本実施形態の燃料電池システム50に組み込まれる燃料電池9は、特に限定されるものではないが、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。一般の燃料電池は、反応部の温度が200〜1000℃と高温であるため、生成水(4H
2O)も高温蒸気として排出される。この場合、生成水を液体の状態で回収するために、大掛かりな装置が必要となる場合がある。これに対して、固体高分子形燃料電池は、反応部温度が80℃程度であり、生成水(4H
2O)も液体として排出されるため、他の燃料電池に比べて分離回収が容易である。このように、燃料電池9に、固体高分子形燃料電池を用いることにより、小型の循環型燃料電池システムを実現することが可能となる。
【0053】
[用役水バッファタンク36]
本実施形態の燃料電池システム50では、用役水タンクの代わりに、用役水バッファタンク36が設けられている。用役水バッファタンク36は、燃料電池9から排出された生成水(4H
2O)を一時的に貯留し、適宜反応部1に供給するものである。用役水バッファタンク36は、他のタンクと同様に、装置内に設けられていても、装置とは別に設けられていてもよい。また、用役水バッファタンク36には、燃料電池9に接続された導入口及び反応部1に接続された排出口の他に、生成水とは別に水を追加するための給水口が設けられていてもよい。
【0054】
本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池から排出される生成水を分離・回収して、水素化ホウ素ナトリウムの加水分解反応に用いているため、用役水タンクが不要となり、その分の容積を低減することができる。燃料電池から回収される生成水の量は、反応部での加水分解反応に必要な量を満たしているため、新規に水を補充する必要がなく、小型で循環型の燃料電池システムを実現することが可能となる。
【0055】
なお、本実形態の燃料電池システムにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。また、本実施形態では、前述した第1の実施形態の水素発生装置を用いたシステムを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2の実施形態の水素発生システムに燃料電池を組み込んでもよく、その場合も同様の効果が得られる。
【0056】
(第3の実施形態の変形例)
次に、本発明の第3の実施形態の変形例に係る燃料電池システムについて説明する。
図6は本変形例の燃料電池システムの構成を示す概念図である。なお、
図6においては
図3に示す水素発生装置の構成要素と同じものには同じ符号を付し、以下詳細な説明は省略する。
【0057】
図6に示すように、本変形例の燃料電池システム60は、
図3に示す第1の実施形態の変形例の水素発生装置20に燃料電池9を組み込んだものである。即ち、副生成物貯留タンク7をなくし、水素化ホウ素ナトリウムを貯留する原料貯留部と、蒸発装置で得た無水メタホウ酸ナトリウムを貯留する副生成物貯留部とを備える原料タンク15を設けた以外は、前述した第3の実施形態の燃料電池システムと同様である。
【0058】
本変形例の燃料電池システムも、燃料電池から排出される生成水を分離・回収して、水素化ホウ素ナトリウムの加水分解反応に用いているため、用役水タンクが不要となり、小型で循環型の燃料電池システムを実現することが可能となる。なお、本変形例の燃料電池システムにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態の変形例と同様である。
【0059】
本発明の水素発生装置、水素発生システム及び燃料電池システムは、本発明者が提案した特願2015−543194号に記載の水素化ホウ素ナトリウムの製造技術と組み合わせることにより、環境負荷が少ない循環型水素キャリアを実現することが可能となる。