特許第6446415号(P6446415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許6446415-飛行装置 図000002
  • 特許6446415-飛行装置 図000003
  • 特許6446415-飛行装置 図000004
  • 特許6446415-飛行装置 図000005
  • 特許6446415-飛行装置 図000006
  • 特許6446415-飛行装置 図000007
  • 特許6446415-飛行装置 図000008
  • 特許6446415-飛行装置 図000009
  • 特許6446415-飛行装置 図000010
  • 特許6446415-飛行装置 図000011
  • 特許6446415-飛行装置 図000012
  • 特許6446415-飛行装置 図000013
  • 特許6446415-飛行装置 図000014
  • 特許6446415-飛行装置 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446415
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】飛行装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20181217BHJP
   B64C 25/36 20060101ALI20181217BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20181217BHJP
   A63H 27/133 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B64C39/02
   B64C25/36
   B64C27/08
   A63H27/133 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-162795(P2016-162795)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2017-61298(P2017-61298A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-188163(P2015-188163)
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松江 武典
(72)【発明者】
【氏名】川崎 宏治
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 正己
(72)【発明者】
【氏名】松浦 道弘
(72)【発明者】
【氏名】吉川 覚
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−051841(JP,A)
【文献】 特開2014−149621(JP,A)
【文献】 特開2010−241409(JP,A)
【文献】 特開2015−117003(JP,A)
【文献】 特開2014−227166(JP,A)
【文献】 特開2003−026097(JP,A)
【文献】 特開2015−123918(JP,A)
【文献】 米国特許第08794564(US,B2)
【文献】 国際公開第2014/177661(WO,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1536574(KR,B1)
【文献】 特開2016−211878(JP,A)
【文献】 特開2015−223995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64C 25/36
B64C 27/08 −27/10
A63H 27/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスラスタ(13)を有し、前記スラスタ(13)で発生する推進力を制御することにより、飛行姿勢が変化する飛行ユニット(11)と、
前記飛行ユニット(11)に設けられ、前記飛行ユニット(11)の周辺の対象面(17)に接する2つ以上の接触部(33、81)と、
前記接触部(33、81)のそれぞれに設けられ、前記接触部(33、81)と前記対象面(17)との接触によって加わる力を接触力として検出する接触力検出部(71)と、
前記接触力検出部(71)で検出したそれぞれの前記接触力が等しくなるように前記飛行ユニット(11)の姿勢を制御する姿勢制御部(41)と、
を備える飛行装置。
【請求項2】
前記姿勢制御部(41)は、2つ以上の前記接触部(33、81)について前記接触力検出部(71)で検出した前記接触力のばらつきが予め設定した許容範囲に収まるように前記飛行ユニット(11)の姿勢を制御する請求項1記載の飛行装置。
【請求項3】
前記姿勢制御部(41)は、2つ以上の前記接触部(33、81)について前記接触検出部(71)で検出した前記接触力のばらつきが予め設定した許容範囲より大きくなると、前記飛行ユニット(11)の姿勢を予め設定された目標姿勢に制御する請求項1記載の飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるドローンと称される飛行装置は、地面や機器の搭載面から離陸し、特定の姿勢を維持しながら飛行する。この飛行装置は、車輪を備えることにより、地上や設備の床面に沿って移動を確保することも提案されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、飛行装置は、空中を飛行可能であることから、床面に限らず、垂直に近い壁面や天井面などに沿うことも可能である。例えば、トンネルの内壁に沿って飛行装置を移動可能であれば、トンネルの内壁は飛行装置を用いて検査することができる。しかしながら、特許文献1の場合、床面に沿った移動が可能とするだけであり、壁面や天井面、あるいは段差を含む面などの複雑な対象面の移動が困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013−531573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、壁面や天井面、あるいは段差を含む面などの複雑な対象面についても姿勢を維持したまま移動する飛行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明では、接触力検出部は、飛行ユニットに設けられた接触部が対象面との接触によって加わる力を検出する。姿勢制御部は、接触部にそれぞれ設けられている接触力検出部で検出した力に基づいて、検出した力が等しくなるように飛行ユニットの姿勢を制御する。これにより、飛行ユニットは、複数の接触部に加わる力が等しくなるように姿勢が制御される。そのため、飛行ユニットは、対象面に対して、接触部ごとに加わる力に偏りのない姿勢となる。その結果、飛行ユニットは、対象面に沿った姿勢を維持する。したがって、飛行ユニットは、壁面や天井面などの複雑な対象面に沿って姿勢を維持したまま移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態による飛行装置の構成を示すブロック図
図2】第1実施形態による飛行装置の構成を示す模式図
図3】第1実施形態による飛行装置が対象面に沿っている状態を示す模式図
図4】第1実施形態による飛行装置における処理の流れを示す概略図
図5】第1実施形態による飛行装置が対象面に沿って移動する状態を示す模式図
図6】第1実施形態による飛行装置が対象面に沿って移動する状態を示す模式図
図7】第2実施形態による飛行装置の構成を示す模式図
図8】第2実施形態による飛行装置が対象面に沿っている状態を示す模式図
図9】第2実施形態による飛行装置の構成を示すブロック図
図10】第2実施形態による飛行装置における処理の流れを示す概略図
図11】第3実施形態による飛行装置における処理の流れを示す概略図
図12】第4実施形態による飛行装置が対象面に沿っている状態を示す模式図
図13】第5実施形態による飛行装置の構成を示す模式図
図14】第6実施形態による飛行装置の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、飛行装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図2および図3に示すように第1実施形態による飛行装置10は、飛行ユニット11を備えている。飛行ユニット11は、機体本体12、スラスタ13および基体部14を備えている。機体本体12は、飛行ユニット11の骨格を構成している。スラスタ13は、この機体本体12に設けられている。第1実施形態の場合、飛行ユニット11は、4つのスラスタ13を有している。スラスタ13は、それぞれモータ15およびプロペラ16を有している。スラスタ13は、プロペラ16をモータ15で回転駆動することにより、推進力を発生する。飛行装置10は、図3に示すように対象面17に沿って移動する。すなわち、飛行装置10は、設備の床面、壁面および天井面などの各種の面を対象面17として、この対象面17に沿って移動する。
【0011】
基体部14は、制御ユニット18および検査部19を有している。制御ユニット18は、4つのスラスタ13をはじめとする飛行装置10の全体を制御する。検査部19は、例えばカメラなどを有しており、飛行装置10が検査の対象とする対象面17の可視的な検査などを実施する。なお、検査部19は、カメラなどのように可視的な検査に限らず、例えば赤外線のように不可視的な検査や、超音波のような音響的な検査など、任意な手段によって検査を行なう構成とすることができる。また、飛行装置10は、検査部19に限らず、例えば物品を運搬するための容器など、任意の装備を設けることができる。
【0012】
制御ユニット18は、図1に示すように姿勢計測部21および演算部22などを有している。姿勢計測部21は、変化検出部に相当し、例えば3軸の加速度センサ23、3軸の角速度センサ24、3軸の地磁気センサ25、および高度センサ26などを有しており、飛行ユニット11を含む飛行装置10の飛行姿勢や飛行位置を検出する。演算部22は、例えばCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されている。
【0013】
飛行装置10は、図2および図3に示すようにアクチュエータ31を備えている。アクチュエータ31は、いずれも機体本体12に設けられており、スラスタ13で発生する推進力の向きを変更する。すなわち、推進力を発生するスラスタ13は、アクチュエータ31でその取り付け角度が変更される。制御ユニット18は、アクチュエータ31の取り付け角度を変更することにより、スラスタ13が発生する推進力の向きを制御し、飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する。制御ユニット18は、複数のスラスタ13およびアクチュエータ31を個別または総括して制御する。なお、図2に示す例の場合、飛行装置10は、2つのスラスタ13を駆動する2つのアクチュエータ31を備えている。しかし、アクチュエータ31は、1つのスラスタ13を個別に駆動する構成としてもよい。この場合、飛行装置10は、4つのアクチュエータ31を備えることになる。
【0014】
飛行装置10は、接触部としてのタイヤ33を備えている。タイヤ33は、機体本体12に設けられている。第1実施形態の場合、飛行装置10は、4つのタイヤ33を備えている。これら4つのタイヤ33は、対象面17と接することにより、飛行ユニット11を含む飛行装置10の移動を案内する。
【0015】
制御ユニット18は、図1に示すように姿勢制御部としての姿勢制御部41を有している。姿勢制御部41は、例えば演算部22でコンピュータプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に実現されている。なお、姿勢制御部41は、ソフトウェア的に限らず、ハードウェア的またはソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現する構成としてもよい。姿勢制御部41は、姿勢計測部21で検出した飛行ユニット11の飛行姿勢の変化を取得する。そして、姿勢制御部41は、この取得した飛行姿勢の変化が予め設定した変化許容値Lを超えたか否かを判断する。姿勢制御部41は、この変化許容値Lを超えているとき、飛行姿勢の変化が変化許容値Lより小さくなるように飛行ユニット11の目標姿勢を制御する。具体的には、姿勢制御部41は、飛行姿勢の変化が変化許容値Lより小さくなるように、飛行ユニット11が目標とする飛行姿勢を目標姿勢として設定する。姿勢制御部41は、姿勢計測部21で検出した最新の飛行姿勢と、既に取得した直前の飛行姿勢とから飛行姿勢の変化量を飛行姿勢変化量として算出する。そして、この飛行姿勢変化量が変化許容値Lを超えているとき、飛行姿勢変化量が変化許容値Lよりも小さくなるように飛行ユニット11の目標姿勢を設定する。姿勢制御部41は、設定された目標姿勢に基づいて、スラスタ13およびアクチュエータ31を駆動する。これにより、飛行ユニット11の飛行姿勢は変化する。このように、姿勢制御部41は、姿勢計測部21で検出した飛行ユニット11の飛行姿勢に基づいて、スラスタ13およびアクチュエータ31を制御し、飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する。
【0016】
次に、上記の構成による飛行装置10における飛行姿勢の制御の流れを図4に基づいて説明する。
制御ユニット18は、飛行装置10の飛行が開始されると、ガイドモードであるか否かを判断する(S101)。すなわち、制御ユニット18は、床面、壁面および天井面などの対象面17に沿って飛行するガイドモードであるか、または通常の飛行を行なう通常モードであるかを判断する。姿勢制御部41は、S101において制御ユニット18でガイドモードであると判断されると(S101:Yes)、姿勢計測部21から飛行姿勢に関するデータを取得する(S102)。姿勢計測部21は、加速度センサ23で飛行ユニット11に加わる加速度、角速度センサ24で飛行ユニット11に加わる角速度、および地磁気センサ25で飛行ユニット11における地磁気を検出する。また、姿勢計測部21は、高度センサ26で飛行ユニット11の高度を検出する。姿勢制御部41は、これら加速度センサ23、角速度センサ24、地磁気センサ25、および高度センサ26で検出されたデータを取得する。
【0017】
姿勢制御部41は、姿勢計測部21から取得した加速度、角速度、地磁気および高度に関するデータから飛行ユニット11の最新の飛行姿勢Snを算出する(S103)。飛行姿勢Snは、加速度、角速度、地磁気および高度などの関数として予め設定された条件に基づいて算出される。姿勢制御部41は、S103において最新の飛行姿勢Snを算出すると、この最新の飛行姿勢Snの前回に算出した前回の飛行姿勢Sbが記憶されているか否かを判断する(S104)。姿勢制御部41は、飛行装置10の飛行開始から飛行装置10の飛行姿勢を算出する。そのため、飛行装置10が飛行を開始した直後に、飛行姿勢の初回の算出を行なう場合を除き、制御ユニット18の演算部22を構成する図示しないRAMには前回の飛行姿勢Sbが記憶されている。姿勢制御部41は、S104において、この前回の飛行姿勢Sbが算出され、すでに記憶されているかを判断する。姿勢制御部41は、S104において前回の飛行姿勢Sbが記憶されていないと判断すると(S104:No)、算出した最新の飛行姿勢Snを制御ユニット18の図示しないRAMに記憶してS102へリターンする。
【0018】
姿勢制御部41は、前回の飛行姿勢Sbが記憶されていると判断すると(S104:Yes)、前回の飛行姿勢Sbを取得する(S105)。すなわち、姿勢制御部41は、制御ユニット18の図示しないRAMから前回の飛行姿勢Sbを取得する。姿勢制御部41は、S103で算出した最新の飛行姿勢Snと、S105で取得した前回の飛行姿勢Sbとから、飛行姿勢変化量ΔSを算出する(S106)。具体的には、姿勢制御部41は、ΔS=|Sn−Sb|として、飛行姿勢変化量ΔSを算出する。
【0019】
姿勢制御部41は、S106で算出した飛行姿勢変化量ΔSが、変化許容値Lを超えたか否かを判断する(S107)。すなわち、姿勢制御部41は、飛行姿勢変化量ΔSと変化許容値Lとの間に、ΔS>Lの関係が成立しているか否かを判断する。姿勢制御部41は、飛行姿勢変化量ΔSが変化許容値Lを超えているとき(S107:Yes)、飛行ユニット11の目標姿勢を変更する(S108)。すなわち、姿勢制御部41は、飛行姿勢変化量ΔSが変化許容値Lを超えているとき、この飛行姿勢変化量ΔSが変化許容値Lよりも小さくなるように飛行ユニット11の目標姿勢を変更する。具体的には、姿勢制御部41は、算出した飛行姿勢変化量ΔS、および最新の飛行姿勢Snに基づいて目標姿勢を設定し、設定した目標姿勢に向けて複数のスラスタ13およびアクチュエータ31を制御する。すなわち、姿勢制御部41は、目標姿勢に基づいてスラスタ13の回転数、およびアクチュエータ31の取り付け角度などを制御する。このスラスタ13およびアクチュエータ31の制御量は、飛行姿勢変化量ΔSおよび最新の飛行姿勢Snに相関する。したがって、姿勢制御部41は、あらかじめ設定されている変化許容値L、S103で算出した最新の飛行姿勢Sn、およびS106で算出した飛行姿勢変化量ΔSを用いて、スラスタ13およびアクチュエータ31の目標姿勢として制御量を設定し、この目標姿勢に基づく制御量に応じて飛行姿勢を変更する。また、姿勢制御部41は、S103で算出した最新の飛行姿勢Snを制御ユニット18のRAMに記憶する(S109)。
【0020】
姿勢制御部41は、S108で変更した目標姿勢に基づいて、飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する(S110)。姿勢制御部41は、S107において、飛行姿勢変化量ΔSが変化許容値Lを超えていないと判断したとき(S107:No)、S110へ移行し、飛行ユニット11の飛行姿勢の制御を継続する。また、制御ユニット18は、ガイドモードでない、つまり通常モードであると判断すると(S101:No)、S110へ移行し、飛行ユニット11の飛行姿勢の制御を継続する。
【0021】
以上のような処理によって、飛行装置10は、飛行を継続している間、飛行姿勢が制御される。
このような処理を行なう第1実施形態の飛行装置10は、図5の(A)から(F)に示すように対象面17として、床面だけでなく、壁面および天井面に沿って飛行する。すなわち、飛行装置10は、図5の(A)から(C)に示すように対象面17としてほぼ垂直な壁面に沿って上方へ移動する。そして、飛行装置10は、図5の(D)から(F)に示すように、壁面から天井面に姿勢を変化させながら対象面17に沿って移動する。このとき、スラスタ13は、飛行ユニット11を対象面17に向けて推進力を発生する。この場合、飛行ユニット11のタイヤ33は、対象面17に接触している。なお、タイヤ33は、対象面17に接していなくてもよい。
【0022】
また、図6の(A)から(I)に示すように壁面などの対象面17に段差50がある場合、飛行装置10は、この段差50を乗り越えるように飛行姿勢を適宜変更する。すなわち、飛行装置10は、図6の(A)から(C)に示すように対象面17に沿って段差50まで移動すると、(D)から(F)に示すようにその姿勢を変化させる。そして、飛行装置10は、段差50を乗り越えた後、図6の(G)から(I)に示すように姿勢を変化させたまま対象面17に沿って移動する。このように、飛行装置10は、対象面17の段差50を乗り越えることができる。
【0023】
以上、説明した第1実施形態では、姿勢計測部21は、飛行ユニット11の姿勢の変化を検出する。姿勢制御部41は、この姿勢計測部21で検出した飛行ユニット11の姿勢の変化から、この姿勢の変化が予め設定した変化許容値Lを超えたか否かを判断する。そして、姿勢制御部41は、姿勢の変化が変化許容値Lよりも小さくなるまで飛行ユニット11の姿勢を変更する。これにより、飛行ユニット11の姿勢は、飛行する対象面17に沿って飛行姿勢の変化が変化許容値Lよりも小さくなるように維持される。そのため、飛行ユニット11は、必要以上に大きな姿勢の変化が生じない。したがって、飛行ユニット11は、壁面や天井面、あるいは段差50などを含む複雑な対象面17に沿って姿勢を維持したまま移動することができる。
【0024】
(第2実施形態)
図7および図8に示すように第2実施形態による飛行装置10は、第1実施形態の飛行装置10の構成に加え、接触力検出部としての接触力センサ71を備えている。また、制御ユニット18は、距離検出部としての距離センサ72を有している。距離センサ72は、飛行ユニット11の機体本体12に設けられている。距離センサ72は、飛行ユニット11と対象面17との間の距離を検出し、制御ユニット18の演算部22へ出力する。距離センサ72は、例えばレーザ光などの光照射や超音波などを用いて、対象面17までの距離を非接触で検出する。
【0025】
接触力センサ71は、接触部としてのタイヤ33またはその近傍に設けられている。接触力センサ71は、タイヤ33と対象面17との間の接触力を検出する。接触力センサ71は、タイヤ33のそれぞれに対応して設けられている。第2実施形態のように4つのタイヤ33を有する飛行装置10の場合、4つの接触力センサ71が設けられている。これにより、接触力センサ71は、タイヤ33のそれぞれに加わる接触力を個別に検出する。接触力センサ71は、検出した接触力を電気信号として制御ユニット18へ出力する。
【0026】
制御ユニット18は、図9に示すように接触力センサ71および距離センサ72に接続している。姿勢制御部41は、接触力センサ71からそれぞれ接触力のデータを取得する。そして、姿勢制御部41は、この取得した接触力のデータ、および距離センサ72から取得した対象面17までの距離のデータから対象面17に接地するように飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する。姿勢制御部41は、対象面17に接地した後、すべての接触力センサ71で検出した接触力が等しくなるように飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する。飛行ユニット11の飛行姿勢が対象面17に沿っているとき、4つのタイヤ33に加わる力は均等になる。そのため、飛行ユニット11の飛行姿勢が対象面17に沿って安定しているとき、4つの接触力センサ71で検出した接触力は等しくなる。一方、飛行ユニット11の飛行姿勢が対象面17に沿って不安定なとき、4つの接触力センサ71で検出した接触力は不均一となる。そこで、姿勢制御部41は、飛行ユニット11の飛行姿勢が対象面17に沿って安定するように、4つの接触力センサ71で検出する接触力を均等化させる。つまり、姿勢制御部41は、4つの接触力センサ71で検出した接触力のばらつきが予め設定した許容範囲に収まるようにスラスタ13およびアクチュエータ31を制御して、飛行ユニット11の姿勢を制御する。言い換えると、姿勢制御部41は、4つの接触力センサ71で検出した接触力が等しくなるようにスラスタ13およびアクチュエータ31を制御する。ここで、上述の許容範囲は、例えば接触力のばらつきの偏差が数%〜数十%以内などのように、適用する飛行ユニット11に応じて任意に設定することができる。このように、姿勢制御部41は、接触力センサ71で検出した接触力に基づいて、スラスタ13およびアクチュエータ31を制御し、飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する。このとき、姿勢制御部41は、距離センサ72で取得した対象面17までの距離も利用して飛行ユニット11の飛行姿勢を制御してもよい。また、姿勢制御部41は、姿勢計測部21で検出した飛行ユニット11の飛行姿勢を用いて、飛行ユニット11の飛行姿勢を補正してもよい。
【0027】
次に、第2実施形態による飛行装置10における飛行姿勢の制御の流れを図10に基づいて説明する。なお、第1実施形態と共通する処理については、説明を省略する。
制御ユニット18は、飛行装置10の飛行が開始されると、ガイドモードであるか否かを判断する(S201)。姿勢制御部41は、S201においてガイドモードであると判断されると(S201:Yes)、接触力を検出する(S202)。すなわち、姿勢制御部41は、4つの接触力センサ71から4つのタイヤ33に加わる接触力を取得する。
【0028】
姿勢制御部41は、S202で接触力を検出すると、4つの接触力センサ71で検出した接触力のばらつきを算出する(S203)。そして、姿勢制御部41は、算出した接触力のばらつきが許容範囲に収まっているか否かを判断する(S204)。姿勢制御部41は、接触力のばらつきが許容範囲に収まっていると判断すると(S204:Yes)、飛行ユニット11の目標姿勢を維持したまま飛行ユニット11の飛行を継続する(S205)。一方、姿勢制御部41は、算出した接触力のばらつきが許容範囲に収まっていないと判断すると(S204:No)、飛行ユニット11の目標姿勢を変更する(S206)。すなわち、姿勢制御部41は、4つの接触力センサ71で検出した接触力が等しくなるように、スラスタ13およびアクチュエータ31を制御し、飛行ユニット11の目標姿勢を変更する。
【0029】
第2実施形態では、接触力センサ71は、飛行ユニット11に設けられたタイヤ33が対象面17との接触によって加わる力を検出する。姿勢制御部41は、タイヤ33にそれぞれ設けられている接触力センサ71で検出した力に基づいて、検出した力が等しくなるように飛行ユニット11の姿勢を制御する。これにより、飛行ユニット11は、複数のタイヤ33に加わる力が等しくなるように姿勢が制御される。そのため、飛行ユニット11は、対象面17に対して、タイヤ33ごとに加わる力に偏りのない姿勢となる。その結果、飛行ユニット11は、対象面17に沿った姿勢を維持する。したがって、飛行ユニット11は、壁面や天井面などの複雑な対象面17に沿って姿勢を維持したまま移動することができる。また、第2実施形態では、姿勢制御部41は、接触力センサ71の出力値を用いて飛行ユニット11の飛行姿勢を制御している。そのため、姿勢制御部41は、接触力センサ71の出力値を要素として、スラスタ13およびアクチュエータ31を制御する。したがって、処理が簡略化され、応答性の向上を図ることができる。
【0030】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第2実施形態の変形であり、処理の流れが第2実施形態と異なっている。以下、第3実施形態による飛行装置10の処理の流れを図11に基づいて説明する。なお、第2実施形態と共通する処理については、説明を省略する。
制御ユニット18は、飛行装置10の飛行が開始されると、ガイドモードであるか否かを判断する(S301)。姿勢制御部41は、S301においてガイドモードであると判断されると(S301:Yes)、接触力を検出する(S302)。姿勢制御部41は、S302で接触力を検出すると、4つの接触力センサ71で検出した接触力のばらつきを算出する(S303)。そして、姿勢制御部41は、算出した接触力のばらつきが許容範囲に収まっているか否かを判断する(S304)。姿勢制御部41は、接触力のばらつきが許容範囲に収まっていると判断すると(S304:Yes)、飛行ユニット11の目標姿勢を維持したまま飛行ユニット11の飛行を継続する(S305)。
【0031】
一方、姿勢制御部41は、算出した接触力のばらつきが許容範囲に収まっていないと判断すると(S304:No)、飛行ユニット11の制御を停止する(S306)。すなわち、姿勢制御部41は、接触力のばらつきが許容範囲を超えるとき、通常のアルゴリズムに沿った飛行姿勢の制御を停止する。そして、姿勢制御部41は、通常の飛行姿勢の制御を停止した後、飛行ユニット11の目標姿勢を設定する(S307)。すなわち、姿勢制御部41は、通常のアルゴリズムと無関係な飛行姿勢を、目標姿勢として強制的に設定する。この目標姿勢は、例えば飛行ユニット11の進行方向に対して垂直な軸を中心に90°以上回転した位置などのように、それまでの飛行姿勢と大きく異なる姿勢となるように予め設定されている。飛行ユニット11は、対象面17に沿って飛行しているとき、段差50などの障害物に遭遇することがある。このとき、飛行ユニット11の飛行姿勢は、段差50などの障害物によって変化をともなう。そのため、姿勢制御部41は、飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する。
【0032】
第3実施形態の場合、姿勢制御部41は、接触力センサ71で検出する接触力が等しくなるように制御する。ところが、この段差50などの障害物が大きいとき、接触力を制御するだけでは段差50などの障害物を迅速に回避できないおそれがある。そこで、第3実施形態では、段差50などの障害物によって接触力のばらつきが許容範囲を超えるような大きな飛行姿勢の変化が生じる場合、姿勢制御部41は飛行ユニット11の制御を停止する。その上で、姿勢制御部41は、通常のアルゴリズムに沿った飛行姿勢の制御とは大きく異なる目標姿勢を設定する。姿勢制御部41は、S307で設定した目標姿勢に基づいて飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する(S308)。姿勢制御部41は、目標姿勢に基づいて飛行ユニット11の飛行姿勢を変更すると、通常のアルゴリズムによる飛行姿勢の制御に復帰した後(S309)、処理を継続する。
【0033】
第3実施形態では、姿勢制御部41は、接触力のばらつきが許容範囲を超える場合、通常のアルゴリズムによる飛行姿勢の制御とは大きく異なる目標姿勢を設定する。これにより、対象面17に段差50などの大きな変化が生じるとき、飛行ユニット11の飛行姿勢は通常の制御とは異なる目標姿勢に強制的に変更される。そのため、飛行ユニット11は、飛行姿勢が大きく変化し、段差50などの障害物を迅速に回避する。したがって、飛行ユニット11の移動速度の向上を図ることができる。
【0034】
(第4、第5実施形態)
図12に示すように第4実施形態の飛行装置10は、タイヤ33の外径が大きく設定されている。具体的には、第3実施形態による飛行装置10のタイヤ33は、プロペラ16を含むスラスタ13の外形的な寸法よりも大きく設定されている。そのため、飛行装置10に設けられているスラスタ13のプロペラ16は、飛行装置10の姿勢にかかわらず、対象面17に接触しない。すなわち、飛行装置10は、大きなタイヤ33によって対象面17に接触し、これに内包される大きさであるスラスタ13のプロペラ16が対象面17に接しない。
したがって、第4実施形態では、プロペラ16を含むスラスタ13の損傷を低減することができる。
【0035】
第5実施形態の飛行装置は、図13に示すように接触部としてオムニホイール81を備えている。第5実施形態による飛行装置10は、オムニホイール81を備えることにより、姿勢にかかわらず対象面17にオムニホイール81が接する。例えば、飛行装置10が対象面17として天井に沿って移動する場合でも、飛行ユニット11のスラスタ13が発生する推進力でオムニホイール81が天井に押し付けられる。また、例えば、飛行装置10が壁面と壁面との間の隙間に沿って移動する場合でも、スラスタ13の発生する推進力でいずれか一方または両方の壁面にオムニホイール81が接する。さらに、オムニホイール81を備える飛行装置10は、オムニホイール81の回転自由度の高さによって、自由な方向への移動が容易になる。
したがって、第5実施形態では、オムニホイール81と対象面17との接触を常に維持することができ、姿勢の自由度および対象面17に沿った飛行ユニット11の移動の自由度を高めることができる。
【0036】
(第6実施形態)
図14に示すように第6実施形態による飛行装置10は、第2実施形態の接触力センサ71に代えて複数の距離センサ72を備えている。第6実施形態の場合、飛行装置10は、4つの距離センサ72を備えている。なお、距離センサ72は、2つ以上の複数であればよく、4つに限るものではない。
【0037】
姿勢制御部41は、距離センサ72を用いて検出した対象面17までの距離に基づいて、この飛行ユニット11から対象面17までの距離が予め設定された範囲内に収まるように飛行ユニット11の飛行姿勢を制御する。この場合、姿勢制御部41は、4つの距離センサ72で検出した対象面17までの距離を用いて、飛行ユニット11の姿勢を制御する。これにより、飛行ユニット11は、飛行中において、対象面17までの距離が所定の範囲内に収まり、大きな姿勢の変化を招かない。したがって、飛行ユニット11は、壁面や天井面などの複雑な対象面17に沿って姿勢を維持したまま移動することができる。また、第5実施形態では、非接触の距離センサ72を用いることにより、タイヤ33などの接触部に相当する構成がない状態、つまり飛行ユニット11が対象面17から浮遊した状態でも、飛行ユニット11は飛行姿勢が維持される。したがって、より空間的な制約が厳しい場合でも、飛行ユニット11の安定した姿勢での飛行を維持することができる。
【0038】
(その他の実施形態)
以上説明した複数の実施形態では、機体本体12に4つのタイヤ33またはオムニホイール81を設ける例について説明した。しかし、飛行装置10の移動を案内するタイヤ33やオムニホイール81などの接触部は、機体本体12に少なくとも2つ設ければよく、4つに限るものではない。当然、接触部は、5つ以上であってもよい。また、個別に説明した複数の実施形態は、組み合わせて適用してもよい。例えば第6実施形態のように距離センサ72で距離を検出することによる移動と、第2実施形態および第3実施形態のように接触力センサ71で接触力を検出することによる移動とを組み合わせたり、第6実施形態の移動から連続して第2実施形態および第3実施形態の移動に切り替えたりする構成でもよい。
【0039】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0040】
図面中、10は飛行装置、11は飛行ユニット、13はスラスタ、17は対象面、21は姿勢計測部(変化検出部)、33はタイヤ(接触部)、41は姿勢制御部(姿勢制御部)、71は接触力センサ(接触力検出部)、72は距離センサ(距離検出部)、81はオムニホイール(接触部)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14