特許第6446434号(P6446434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6446434水素化油の製造方法及び単環芳香族炭化水素の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446434
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】水素化油の製造方法及び単環芳香族炭化水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 69/04 20060101AFI20181217BHJP
   C10G 45/52 20060101ALI20181217BHJP
   C10G 47/16 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C10G69/04
   C10G45/52
   C10G47/16
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-511934(P2016-511934)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2015060142
(87)【国際公開番号】WO2015152248
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2017年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-75737(P2014-75737)
(32)【優先日】2014年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正典
(72)【発明者】
【氏名】伊田 領二
(72)【発明者】
【氏名】柳川 真一朗
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−154151(JP,A)
【文献】 特開2010−235670(JP,A)
【文献】 特開2001−246253(JP,A)
【文献】 特表2009−541035(JP,A)
【文献】 特開2012−062356(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金およびパラジウムを担持してなる触媒を用いて、硫黄分を100質量ppm以上、かつ多環芳香族炭化水素を30容量%以上含む灯軽油留分中の多環芳香族炭化水素を水素化反応させて単環芳香族炭化水素に転化して水素化油を得る水素化油製造工程と、
水素化油を、結晶性アルミノシリケート、リンを担持した結晶性アルミノシリケート、リンを担持した結晶性アルミノガロシリケート/結晶性アルミノジンコシリケート、又は、ガリウム/亜鉛及びリンを担持した結晶性アルミノシリケートからなる単環芳香族炭化水素製造用触媒に、反応圧力0.1MPaG〜2.0MPaG、接触時間2〜150秒の条件で接触させ、分解改質反応させて、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を含む生成物を得る分解改質工程と、
を含む、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記水素化反応における水素分圧を1.0MPaG以上3.0MPaG以下とし、反応温度を260℃以上340℃以下とすることを特徴とする請求項1記載の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項3】
前記灯軽油留分中の二環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化率を50容量%以上とすることを特徴とする請求項2記載の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項4】
前記灯軽油留分が、流動接触分解装置から留出する灯軽油留分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化油の製造方法及び炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法に関する。
本願は、2014年4月1日に日本に出願された、特願2014−075737号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(以下、「FCC」と称する。)装置で生成する分解軽油であるライトサイクル油(以下、「LCO」と称する。)等の多環芳香族炭化水素分を含む油は、これまでは主に軽油や重油向けの燃料基材として用いられていた。近年、これら多環芳香族分を含む原料から、高オクタン価ガソリン基材や石油化学原料として利用できる、付加価値が高い炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、粗キシレン。以下、これらをまとめて「BTX」と称する。)を効率よく製造する技術が提案されている。
【0003】
多環芳香族分からBTXを製造する方法としては、例えば特許文献1、特許文献2に、多環芳香族分を含む炭化水素を前段で水素化した後、後段で水素化分解する方法が知られている。
ところで、LCOは硫黄含有量が高く、したがってLCOを水素化して多環芳香族分を単環芳香族に転化しようとした場合、従来ではNi−Mo触媒やCo−Mo触媒などの硫化物触媒が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−148295号公報
【特許文献2】特開2007−154151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石油精製で使用されるニッケル―モリブデン(Ni−Mo)触媒やコバルト−モリブデン(Co−Mo)触媒を用いて硫黄含有量が高い原料油中の多環芳香族分を単環芳香族に転化しようとした場合、比較的高い水素分圧(例えば3MPaG〜4MPaG)で、かつ、高い反応温度で水素化反応させる必要がある。
しかしながら、近年では装置コストの低減化やエネルギーコストの低減化が要望されており、したがって水素分圧や反応温度等の運転条件の緩和が望まれている。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、灯軽油留分(kerosene and light oil fraction)から多環芳香族を低減した水素化油を製造する方法として、従来に比べて運転条件を緩和できる水素化油の製造方法と、この方法を用いたBTXの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、貴金属触媒は高活性であるものの耐硫黄性が低いとされているため、硫黄含有量が高い原料油中の多環芳香族炭化水素を単環芳香族炭化水素に転化する、水素化油の製造には用いられていない。しかし、本発明者は前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、このような水素化油の製造において良好な耐硫黄性を発揮し、しかも低圧でも高い活性が得られる貴金属触媒を見いだし、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の一の態様(aspect)にかかる水素化油の製造方法は、白金およびパラジウムを担持してなる触媒を用いて、硫黄分を100質量ppm以上、かつ多環芳香族炭化水素を30容量%以上含む灯軽油留分中の多環芳香族炭化水素を水素化反応させて単環芳香族炭化水素に転化することを特徴とする。
【0009】
また、前記水素化油の製造方法においては、前記水素化反応における水素分圧を1.0MPaG以上3.0MPaG以下とし、反応温度を260℃以上340℃以下としてもよい。
また、前記水素化油の製造方法においては、前記灯軽油留分中の二環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化率を50容量%以上としてもよい。
また、前記水素化油の製造方法においては、前記灯軽油留分が、流動接触分解装置から留出する灯軽油留分であってもよい。
【0010】
本発明の他の態様にかかるBTXの製造方法は、前記の製造方法によって得られた水素化油を、アルミノシリケート触媒からなる単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させ、分解改質反応させて、BTXを含む生成物を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硫黄分を有する灯軽油留分から多環芳香族炭化水素を低減した水素化油を製造するに際して、従来に比べて水素分圧などの運転条件を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るBTXの製造方法を実施するのに用いられる製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る水素化油の製造方法を有するBTXの製造方法を例にして、本実施形態を詳しく説明する。図1は、本実施形態に係るBTXの製造方法を実施するのに用いられる製造装置の一例を示す図である。
図1に示す製造装置1は、灯軽油を原料油として水素化油を製造し、さらに得られた水素化油からBTXを含む留分の生成を行うものである。
【0014】
[水素化油の製造方法]
本実施形態に係る水素化油の製造方法において使用される原料油は、(原料油の全質量に対し)硫黄分を100質量ppm以上(0.01質量%以上)、かつ多環芳香族炭化水素を30容量%以上含む灯軽油留分である。このような灯軽油留分としては、例えば流動接触分解装置で生成する灯軽油留分、石炭液化油、直留灯油、直留軽油、コーカー灯油、コーカー軽油、エチレン製造装置より留出する熱分解重質油などが挙げられる。中でも、流動接触分解装置で生成する灯軽油留分が好適に用いられる。
【0015】
このような灯軽油留分は、芳香族炭化水素を多く含有し、芳香族炭化水素の中でも多環芳香族炭化水素を比較的多く含有する。具体的には、前記したように多環芳香族炭化水素を30容量%以上含む場合が多い。このように多環芳香族炭化水素を30容量%以上含む灯軽油留分の場合、これを原料として後述する分解改質反応を行い、BTXを製造しようとすると、多環芳香族炭化水素がコーク生成の要因となるので、分解改質反応の前段で水素化精製等を行うことが望ましい。
【0016】
すなわち、本実施形態に係る水素化油の製造方法は、主に分解改質反応によってBTXを製造するプロセスにおいて、コーク生成の要因となる多環芳香族炭化水素を予め単環芳香族炭化水素に転化し、BTXの製造効率を高めるために適用される方法である。ただし、本実施形態の水素化油の製造方法は、このような分解改質反応によるBTX製造プロセスにのみ適用されることなく、得られる水素化油を用いる種々のプロセスに適用されるのはもちろんである。
【0017】
ここで、原料油となる灯軽油留分中の硫黄分については、その量が増加するにつれて後述する触媒の活性が低下し、多環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化率が低下する傾向にあるため、過度に高濃度であるのは好ましくない。具体的には、灯軽油留分中の硫黄分としてはその上限が、(原料油の全質量に対し)3000質量ppm以下(0.30質量%以下)であることが好ましく、1500質量ppm以下(0.15質量%以下)であることがより好ましく、800質量ppm以下(0.08質量%以下)であることがさらに好ましい。3000質量ppm以下とすることで、触媒の活性低下を抑えることができ、前記の水素化転化率低下を少なくすることができる。
【0018】
なお、硫黄分が100質量ppm未満の灯軽油留分を原料油としても、多環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化を行うことはできる。しかし、このような硫黄分が少ない原料油を低コストで用意するのは難しく、また、このような硫黄分が少ない原料油については燃料油などとしての利用がコスト上有利になるため、本実施形態に適用するのは好ましくない。
【0019】
また、原料油となる灯軽油留分中の多環芳香族炭化水素の含有量については、30容量%以上含んでいれば特に上限については制限はない。しかしながら、得られた水素化油を分解改質反応によるBTX製造プロセスに用いる場合には、残留する多環芳香族炭化水素の量が多いと前記したようにコーク生成の要因となるため、好ましくない。したがって、特に得られた水素化油を分解改質反応によるBTX製造プロセスに用いる場合には、原料油となる灯軽油留分中の多環芳香族炭化水素の含有量については、その上限が60容量%以下であることが好ましく、50容量%以下であることがより好ましい。
【0020】
多環芳香族炭化水素は反応性が低く、後述する分解改質反応では単環芳香族炭化水素に転化されにくい物質ではある。しかし、一方で多環芳香族炭化水素は、本実施形態に係る水素化油の製造方法、すなわち水素化反応にて水素化されるとナフテノベンゼン類に転換され、次いで分解改質反応に供給されることで単環芳香族炭化水素に転化可能である。しかしながら、多環芳香族炭化水素の中でも3環以上の芳香族炭化水素は、前記水素化反応において多くの水素を消費し、かつ水素化反応物であっても分解改質反応における反応性が低いため、多く含むことは好ましくない。したがって、原料油中の3環以上の芳香族炭化水素は25容量%以下であることが好ましく、15容量%以下であることがより好ましく、10容量%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
なお、ここでいう多環芳香族分とは、JPI−5S−49「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して測定、あるいはFIDガスクロマトグラフ法または2次元ガスクロマトグラフ法にて分析される2環芳香族炭化水素含有量(2環芳香族分)および、3環以上の芳香族炭化水素含有量(3環以上の芳香族分)の合計値を意味する。以降、多環芳香族炭化水素、2環芳香族炭化水素、3環以上の芳香族炭化水素の含有量が容量%で示されている場合は、JPI−5S−49に準拠して測定されたものであり、質量%で示されている場合は、FIDガスクロマトグラフ法または2次元ガスクロマトグラフ法に基づいて測定されたものである。
【0022】
本実施形態に係る水素化油の製造方法では、前記の灯軽油(例えばLCO)を、水素化反応装置2によって水素化処理する。ここで、この水素化反応においては、原料油(灯軽油留分)を完全に水素化することなく、部分水素化をするに留めるようにする。すなわち、主として原料油中の2環芳香族炭化水素を選択的に水素化し、芳香環を1つのみ水素化した1環芳香族炭化水素(ナフテノベンゼン類等)に転化する。ここで、1環芳香族炭化水素としては、例えばインダン、テトラリン、アルキルベンゼン等が挙げられる。
【0023】
このような水素化による2環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素(1環芳香族炭化水素)への転化率、すなわち水素化転化率としては、45容量%以上とするのが好ましく、50容量%以上とするのがより好ましい。45容量%以上とすることで、得られた水素化油を原料油として分解改質反応によるBTXの製造を行った場合に、BTXを効率良く製造することができる。また、50容量%以上とすることで、分解改質反応によりBTXをより効率良く製造することができる。
【0024】
なお、原料油としての灯軽油留分には、前述したように3環以上の芳香族炭化水素が含まれる。しかし、後述する本実施形態の水素化処理条件では、3環以上の芳香族炭化水素の単環芳香族炭化水素への転化はほとんど起こらない。したがって、本実施形態では、2環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化率と、多環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化率とが、ほぼ同じになる。
【0025】
このように原料油を部分的に水素化処理して水素化油を製造すると、水素化反応装置2での水素消費量を抑えると同時に、処理時の発熱量も抑制することができる。例えば、2環芳香族炭化水素の代表例であるナフタレンをデカリンに水素化する際には、ナフタレン1モル当たりの水素消費量は5モルとなるが、テトラリンに水素化する場合には水素消費量が2モルで実現可能となる。また、原料油中にインデン類が含まれる場合は、インダン類にまで水素化を行えばよい。
なお、この水素化反応に用いられる水素については、後述する分解改質反応にて生成される水素を用いる事も可能である。
【0026】
(水素化処理用触媒)
水素化反応装置2内に収容され、前記の水素化処理に用いられる水素化処理用触媒としては、本実施形態では白金(Pt)およびパラジウム(Pd)を担持してなる触媒が用いられる。白金やパラジウムは、それぞれ単独で用いた場合には原料油(灯軽油留分)中の硫黄分によって活性が大きく低下するものの、これらを併用することにより、硫黄分による活性低下が抑えられる。
【0027】
本実施形態に係る水素化処理用触媒は、白金およびパラジウムが固体酸性質を有する担体に担持されたものであることが好ましい。前記固体酸性質を有する担体の好ましい例としては、アルミナ−シリカ、アルミナ−ボリア、アルミナ−チタニア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−シリカ−ジルコニア、アルミナ−シリカ−チタニア、あるいは各種ゼオライト、セビオライト、モンモリロナイト等の各種粘土鉱物などの多孔性無機化合物をアルミナに添加した担体などを挙げることができる。
【0028】
前記水素化処理用触媒は、アルミニウム酸化物を含む無機担体に、該無機担体と前記金属(白金およびパラジウム)との合計質量である全触媒質量を基準として、白金およびパラジウムの合計量を好ましくは0.1〜2.0質量%、より好ましくは0.3〜0.8質量%担持させて得られる触媒とする。金属の合計量が下限未満である場合には、触媒が充分な水素化処理活性を発揮しない傾向にあり、一方、上限を超える場合には、触媒コストが上昇する上に、担持金属の凝集等が起こり易くなり、触媒が充分な水素化処理活性を発揮しない傾向にある。
【0029】
また、白金とパラジウムとの量比については、質量比で、1:9〜9:1であるのが好ましい。このような量比にすることで、この水素化処理用触媒は良好な耐硫黄性を発揮し、しかも低圧でも高い活性が得られるものとなる。なお、このような範囲から外れると、水素化処理用触媒の硫黄分による活性低下が顕著になり、好ましくない。
【0030】
前記金属(白金、パラジウム)を前記無機担体に担持する際に用いられる前記金属種の前駆体については、特に限定されないものの、該金属の無機塩、有機金属化合物等が使用され、水溶性の無機塩が好ましく使用される。担持工程においては、これら金属前駆体の溶液、好ましくは水溶液を用いて担持を行う。担持操作としては、例えば、浸漬法、含浸法、共沈法等の公知の方法が好ましく採用される。
【0031】
前記金属前駆体が担持された担体は、乾燥後、好ましくは酸素の存在下にて焼成され、金属種は一旦酸化物とされることが好ましい。さらに、原料油の水素化処理を行う前に、水素気流化で還元処理を行う。
水素還元の条件としては、特に限定されないものの、触媒1Lあたり400〜500NL/hで圧力は水素化処理と同一、処理時間は15〜20時間の条件にて、前記水素化処理触媒に連続的に接触せしめることが好ましい。
【0032】
このような水素化処理用触媒を用いた水素化処理を行う水素化反応装置2としては、公知の水素化反応器で行うことができる。ただし、本実施形態に係る水素化処理(水素化油の製造方法)では、前記した白金およびパラジウムを担持してなる水素化処理用触媒を用いているので、従来のNi−Mo触媒やCo−Mo触媒を用いた水素化反応に比較して同等の水素化転化率(2環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化率)が得られる条件で運転する場合に、その運転条件を従来に比べて格段に緩和することができる。
【0033】
(水素分圧)
すなわち、本実施形態に係る水素化処理(水素化油の製造方法)では、水素化反応装置2の入口での水素分圧を、1MPaG以上3MPaG以下、好ましくは1MPaG以上2.5MPaG以下で行うことができる。これに対して従来のNi−Mo触媒やCo−Mo触媒を用いた水素化反応では、3MPaGを超える水素分圧、通常は4MPaG以上の水素分圧で水素化処理を行っている。したがって、本実施形態に係る水素化処理では、水素化反応装置2の耐圧性能を従来に比べ低くすることができ、これによって水素化反応装置2やその周辺機器等の建設費やメンテナンス費用を従来に比べて格段に引き下げることができる。さらに、運転条件が緩和することで安全性を高めることもできる。
なお、水素分圧が1MPaG未満の場合には、触媒上のコーク生成が激しくなり、触媒寿命が短くなるため好ましくない。
【0034】
また、水素化反応装置2による水素化反応のLHSV(Liquid Hourly Space Velocity;液空間速度)は、0.05〜10h−1であることが好ましい。下限としては0.1h−1以上がより好ましく、0.2h−1以上がさらに好ましい。また、上限としては5h−1以下がより好ましく、3h−1以下がさらに好ましい。LHSVが0.05h−1未満の場合には、反応器の建設費が過大となり経済性が損なわれる懸念がある。一方、LHSVが10h−1を超える場合には、原料油の水素化処理が十分に進行せず、目的とする水素化物が得られない可能性がある。
【0035】
(反応温度)
水素化反応装置2による水素化反応における反応温度(水素化温度)は、特に限定されないものの、240℃以上350℃以下であることが好ましく、260℃以上340℃以下であることがより好ましい。240℃以上350℃以下の範囲とすれば、後述する実験結果から明らかなように、水素分圧を2MPaGとする圧力条件下で水素化転化率を45容量%以上にすることができる。また、260℃以上340℃以下の範囲とすれば、後述する実験結果から明らかなように、水素分圧を2MPaGとする圧力条件下で水素化転化率を50容量%以上にすることができる。なお、水素分圧を変えた場合には、この反応温度の好ましい範囲も変化する。すなわち、水素分圧を2MPaGより高くした場合には、水素分圧が2MPaGのときと同等の水素化転化率を得るためには、反応温度を前記範囲より低くすることができる。一方、水素分圧を2MPaGより低くした場合には、水素分圧が2MPaGのときと同等の水素化転化率を得るためには、反応温度を前記範囲より高くする必要がある。
【0036】
水素化反応装置2による水素化反応における水素/油比は、100〜2000NL/Lであることが好ましい。下限としては110NL/L以上がより好ましく、120NL/L以上がさらに好ましい。また、上限としては1800N/L以下がより好ましく、1500NL/L以下がさらに好ましい。水素/油比が100NL/L未満の場合には、反応器出口での触媒上のコーク生成が進行し、触媒寿命が短くなる傾向にある。一方、水素/油比が2000NL/Lを超える場合には、リサイクルコンプレッサーの建設費が過大になり、経済性が損なわれる懸念がある。
【0037】
水素化反応装置2の水素化処理における反応形式については、特に限定されないものの、通常は固定床、移動床等の種々のプロセスから選ぶことができ、中でも固定床が、建設コストや運転コストが安価であるため好ましい。また、水素化反応装置2は塔状であることが好ましい。
【0038】
次に、このような水素化処理(水素化油の製造方法)によって得られた水素化油を原料油として、分解改質反応によりBTXを含む生成物を得る方法、すなわち、本実施形態に係るBTXの製造方法について説明する。
【0039】
(水素化油)
前記水素化反応装置2(水素化反応)から得られる水素化油(部分水素化物)としては、以下の性状を有することが好ましい。
蒸留性状は、10容量%留出温度(T10)が140℃以上200℃以下、90容量%留出温度(T90)が200℃以上390℃以下、より好ましくはT10が160℃以上190℃以下、T90が210℃以上370℃以下である。T10が140℃未満では、この水素化油からなる原料油に、目的物の一つであるキシレンが含まれる可能性があるため、好ましくない。一方、T90が390℃を超える(重質になる)と、水素化処理用触媒へのコーク析出等により触媒性能が低下すること、及び後述する単環芳香族炭化水素製造用触媒へのコーク析出が多くなり所定の性能が出なくなること、水素消費量が多くなり経済的でなくなること、といった点から好ましくない。
【0040】
原料油である水素化処理油は、図1に示すように後段の脱水素塔3にて水素が除去された後、分解改質反応装置4に供給され、分解改質反応に供される。また、分解改質反応装置4には、前記水素化油とともに多環芳香族を多く含まず水素化の必要性が低い、炭素数9〜10程度の炭化水素を主とする留分を直接供給する事もできる。
【0041】
[分解改質反応]
分解改質反応装置4は、単環芳香族炭化水素製造用触媒(以下、BTX製造用触媒と称する)を充填したもので、この触媒に供給された原料油(水素化油)を接触させ、反応させて、BTXを含む生成物を得る。
(BTX製造用触媒)
BTX製造用触媒は、結晶性アルミノシリケートを含む触媒、すなわちアルミノシリケート触媒からなるものである。結晶性アルミノシリケートの含有量は、特に限定されないものの、10〜100質量%が好ましく、20〜95質量%がより好ましく、25〜90質量%がさらに好ましい。
【0042】
(結晶性アルミノシリケート)
結晶性アルミノシリケートとしては、BTXの収率をより高くできることから、中細孔ゼオライト及び/又は大細孔ゼオライトを主成分としたものであることが好ましい。
中細孔ゼオライトは、10員環の骨格構造を有するゼオライトであり、中細孔ゼオライトとしては、例えば、AEL型、EUO型、FER型、HEU型、MEL型、MFI型、NES型、TON型、WEI型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。これらの中でも、BTXの収率をより高くできることから、MFI型が好ましい。
大細孔ゼオライトは、12員環の骨格構造を有するゼオライトであり、大細孔ゼオライトとしては、例えば、AFI型、ATO型、BEA型、CON型、FAU型、GME型、LTL型、MOR型、MTW型、OFF型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。これらの中でも、工業的に使用できる点では、BEA型、FAU型、MOR型が好ましく、BTXの収率をより高くできることから、BEA型が好ましい。
【0043】
結晶性アルミノシリケートは、中細孔ゼオライトおよび大細孔ゼオライト以外に、10員環以下の骨格構造を有する小細孔ゼオライト、14員環以上の骨格構造を有する超大細孔ゼオライトを含有してもよい。
ここで、小細孔ゼオライトとしては、例えば、ANA型、CHA型、ERI型、GIS型、KFI型、LTA型、NAT型、PAU型、YUG型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。
超大細孔ゼオライトとしては、例えば、CLO型、VPI型の結晶構造のゼオライトが挙げられる。
【0044】
また、結晶性アルミノシリケートは、ケイ素とアルミニウムとのモル比率(Si/Al比)が100以下であり、50以下であることが好ましい。結晶性アルミノシリケートのSi/Al比が100を超えると、BTXの収率が低くなる。
また、十分なBTX収率を得るためには、結晶性アルミノシリケートのSi/Al比は、10以上であることが好ましい。
【0045】
また、BTX製造用触媒としては、さらにガリウム及び/又は亜鉛を含んでもよい。ガリウム及び/又は亜鉛を含むことで、より効率的なBTX製造が期待できる。
ガリウムおよび/または亜鉛を含む結晶性アルミノシリケートとしては、結晶性アルミノシリケートの格子骨格内にガリウムが組み込まれたもの(結晶性アルミノガロシリケート)、結晶性アルミノシリケートの格子骨格内に亜鉛が組み込まれたもの(結晶性アルミノジンコシリケート)、結晶性アルミノシリケートにガリウムを担持したもの(Ga担持結晶性アルミノシリケート)、結晶性アルミノシリケートに亜鉛を担持したもの(Zn担持結晶性アルミノシリケート)、それらを少なくとも1種以上含んだものが挙げられる。
【0046】
Ga担持結晶性アルミノシリケート及び/又はZn担持結晶性アルミノシリケートは、結晶性アルミノシリケートにガリウム及び/又は亜鉛をイオン交換法、含浸法等の公知の方法によって担持したものである。この際に用いるガリウム源および亜鉛源は、特に限定されないものの、硝酸ガリウム、塩化ガリウム等のガリウム塩、酸化ガリウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛塩、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0047】
触媒におけるガリウム及び/又は亜鉛の含有量の上限は、触媒全量を100質量%とした場合、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
ガリウム及び/又は亜鉛の含有量が5質量%を超えると、BTX収率が低くなるため好ましくない。
また、ガリウム及び/又は亜鉛の含有量の下限は、触媒全量を100質量%とした場合、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。ガリウム及び/又は亜鉛の含有量が0.01質量%未満であると、BTXの収率が低くなることがあり好ましくない。
【0048】
結晶性アルミノガロシリケート及び/又は結晶性アルミノジンコシリケートは、SiO、AlO及びGaO/ZnO構造が骨格中において四面体配位をとる構造のもので、水熱合成によるゲル結晶化、結晶性アルミノシリケートの格子骨格中にガリウム及び/又は亜鉛を挿入する方法、または結晶性ガロシリケート及び/又は結晶性ジンコシリケートの格子骨格中にアルミニウムを挿入する方法で得ることができる。
【0049】
また、BTX製造用触媒としては、リンを含有するものが好ましい。触媒におけるリンの含有量は、触媒全量を100質量%とした場合、0.1〜10.0質量%であることが好ましい。リンの含有量の下限は、経時的なBTX収率低下を防止できるため、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。一方、リンの含有量の上限は、BTX収率を高くできることから、10.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。
【0050】
BTX製造用触媒にリンを含有させる方法としては、特に限定されないものの、例えばイオン交換法、含浸法等により、結晶性アルミノシリケートまたは結晶性アルミノガロシリケート、結晶性アルミノジンコシリケートにリンを担持させる方法、ゼオライト合成時にリン化合物を含有させて結晶性アルミノシリケートの骨格内の一部をリンに置き換える方法、ゼオライト合成時にリンを含有した結晶促進剤を用いる方法、などが挙げられる。その際に用いるリン酸イオン含有水溶液としては、特に限定されないものの、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム及びその他の水溶性リン酸塩などを任意の濃度で水に溶解させて調製したものを、好ましく使用することができる。
【0051】
このようなBTX製造用触媒は、前記のように、結晶性アルミノシリケート、リンを担持した結晶性アルミノシリケート、リンを担持した結晶性アルミノガロシリケート/結晶性アルミノジンコシリケート、又は、ガリウム/亜鉛及びリンを担持した結晶性アルミノシリケートを焼成(焼成温度300〜900℃)することにより、形成することができる。
【0052】
また、BTX製造用触媒は、分解改質反応装置の反応形式に応じて、粉末状、粒状、ペレット状等に形成される。通常、固定床の反応器では、粒状またはペレット状に形成されたものが用いられる。
粒状またはペレット状の触媒を得る場合には、必要に応じて、バインダーとして触媒に不活性な酸化物を配合した後、各種成形機を用いて成形すればよい。このような固定床反応器で用いる触媒としては、バインダーとしてシリカ、アルミナなどの無機物質が好ましく用いられる。
【0053】
BTX製造用触媒がバインダー等を含有する場合、前述のリン含有量の好ましい範囲を満たしさえすれば、バインダーとしてリンを含むものを用いても構わない。
また、BTX製造用触媒がバインダーを含有する場合、バインダーと結晶性アルミノシリケートとを混合した後、またはバインダーとリンを担持した結晶性アルミノシリケートとを混合した後、またはバインダーと結晶性アルミノガロシリケート及び/又は結晶性アルミノジンコシリケートとを混合した後に、リンを添加して触媒を製造してもよい。
【0054】
(反応形式)
分解改質反応装置4の反応形式、すなわち分解改質反応装置4によって前記原料油をBTX製造用触媒と接触させ、分解改質反応させる際の反応形式としては、固定床、流動床、移動床のいずれも採用可能である。固定床は流動床や移動床に比べて建設コストや運転コストが格段に安価である。一方、流動床は触媒に付着したコーク分を連続的に除去可能で、かつ安定的に反応を行うことができる。したがって、本実施形態では、分解改質反応装置4の反応形式として、前述したように固定床、流動床、移動床のいずれも採用可能である。
【0055】
例えば、分解改質反応装置4として固定床を採用した場合、図1に示すように分解改質反応装置4(固定床反応器)を複数基用いるのが好ましい。固定床の反応器1基で反応と再生を繰り返す事も可能であるが、反応を連続して行うためには2基以上の反応器を設置し、これら反応器間で反応と再生とを交互に繰り返すのが好ましい。
【0056】
なお、図1では分解改質反応装置4(固定床反応器)を2基記載しているが、これに限定されることなく、3基以上設置してもよい。すなわち、固定床の分解改質反応装置では、分解改質反応の進行に連れて、特に前記触媒表面にコークが付着し、触媒の活性が低下する。このように活性が低下すると、この分解改質反応では、BTX留分の収率が低下する。そのため、触媒の再生処理が必要となる。
【0057】
したがって、固定床の分解改質反応装置4(固定床反応器)では、予め設定された所定時間運転した後、コークの付着によって活性が低下した触媒の再生処理を行う。すなわち、2基以上の分解改質反応装置4(固定床反応器)を用い、これらを定期的に切り替えながら分解改質反応とBTX製造用触媒の再生とを繰り返す。1基の分解改質反応装置4で連続的に運転する運転時間としては、装置の大きさや各種運転条件(反応条件)によっても異なるものの、数時間〜10日程度とされる。分解改質反応装置4(固定床反応器)の反応器数を多くすれば、1反応器あたりの連続運転時間を短くすることができ、触媒の活性低下を抑えることができるため、再生に要する時間も短縮することができる。
【0058】
また、分解改質反応装置4として流動床を採用した場合、図示しないものの、この分解改質反応装置4を、反応器と再生器とを備える構成とする。そして、反応器と再生器との間で触媒を循環させ、連続的に反応−再生を繰り返すようにする。反応器にて触媒に接触させる際の原料油としては、気相状態であることが好ましい。また、原料油は、必要に応じてガスによって希釈してもよい。このような流動床の分解改質反応装置4を用いれば、原料油中に重質分が多く含まれていても、触媒に付着したコーク分を連続的に除去することができ、安定的に分解改質反応を行うことができる。
【0059】
(反応温度)
原料油(水素化油)を触媒と接触、反応させる際の反応温度は、特に制限されないものの、350℃〜700℃が好ましく、400℃〜650℃がより好ましい。反応温度が350℃未満では、反応活性が十分でない。反応温度が700℃を超えると、エネルギー的に不利になると同時に、コーク生成が著しく増大し目的物の製造効率が低下する。
【0060】
(反応圧力)
原料油(水素化油)を触媒と接触、反応させる際の反応圧力は、0.1MPaG〜2.0MPaGである。すなわち、原料油とBTX製造用触媒との接触を、0.1MPaG〜2.0MPaGの圧力下で行う。
本実施形態では、水素化分解による従来の方法とは反応思想が全く異なるため、水素化分解では優位とされる高圧条件を全く必要としない。むしろ、必要以上の高圧は、分解を促進し、目的としない軽質ガスを副生するため好ましくない。また、高圧条件を必要としないことは、反応装置設計上においても優位である。すなわち、反応圧力が0.1MPaG〜2.0MPaGであれば、水素移行反応を効率的に行うことが可能である。
【0061】
(接触時間)
原料油(水素化油)と触媒との接触時間は、実質的に所望する反応が進行すれば特に制限されないものの、例えば、触媒上のガス通過時間で2〜150秒が好ましく、3〜100秒がより好ましく、5〜80秒がさらに好ましい。接触時間が2秒未満では、実質的な反応が困難である。接触時間が150秒を超えると、コーキング等による触媒への炭素質の蓄積が多くなる、または分解による軽質ガスの発生量が多くなり、さらには装置も巨大となり好ましくない。
【0062】
(再生処理)
分解改質反応装置4として固定床を用いた場合には、この固定床反応器によって分解改質反応処理を所定時間行ったら、分解改質反応処理の運転は別の分解改質反応装置4に切り替え、分解改質反応処理の運転を停止した分解改質反応装置4については、活性が低下したBTX製造用触媒の再生を行う。
【0063】
触媒の活性低下は、主に触媒表面へのコークの付着が原因であるため、再生処理としては、触媒表面からコークを除去する処理を行う。具体的には、分解改質反応装置4に空気を流通させ、触媒表面に付着したコークを燃焼させる。分解改質反応装置4は充分に高温に維持されているため、単に空気を流通させるだけで、触媒表面に付着したコークは容易に燃焼する。ただし、通常の空気を分解改質反応装置4に供給し流通させると、急激な燃焼を生じるおそれがある。そこで、予め窒素を混入して酸素濃度を下げた空気を、分解改質反応装置4に供給し流通させるのが好ましい。すなわち、再生処理に用いる空気としては、例えば酸素濃度を数%〜10%程度に下げたものを用いるのが好ましい。また、必ずしも反応温度と再生温度を同一にする必要はなく、適宜好ましい温度を設定する事ができる。
【0064】
一方、分解改質反応装置4として流動床を用いた場合には、流動床反応器と再生器との間で触媒を連続的に循環させ、反応−再生を繰り返す。したがって、触媒の再生を連続的に行うことができる。
【0065】
(BTX留分の精製回収)
分解改質反応装置4から導出された分解改質反応生成物には、炭素数2〜4のオレフィンを含有するガス、BTX留分、C9以上の芳香族炭化水素が含まれる。そこで、分解改質反応装置4の後段に設けられた精製回収装置5により、この分解改質反応生成物を各成分に分離し、精製回収する。
【0066】
精製回収装置5は、BTX留分回収塔6と、ガス分離塔7とを有している。
BTX留分回収塔6は、前記の分解改質反応生成物を蒸留し、炭素数8以下の軽質留分と炭素数9以上の重質留分とに分離する。ガス分離塔7は、BTX留分回収塔6で分離された炭素数8以下の軽質留分を蒸留し、ベンゼン、トルエン、キシレンを含むBTX留分と、これらより低沸点のガス留分とに分離する。これにより、BTX留分を高効率で製造することができる。
【0067】
(リサイクル処理)
また、BTX留分回収塔6で分離された炭素数9以上の重質留分(ボトム留分)については、リサイクル路8によって水素化反応装置2に戻し、原料油としての灯軽油とともに再度水素化反応工程に供する。すなわち、この重質留分(ボトム留分)は、水素化反応装置2を経て分解改質反応装置4に戻され、分解改質反応に供されるようになる。
【0068】
本実施形態の水素化油の製造方法によれば、硫黄分を100質量ppm以上、かつ多環芳香族炭化水素を30容量%以上含む灯軽油留分から水素化油を製造するに際して、良好な耐硫黄性を発揮し、しかも低圧でも高い活性が得られる白金およびパラジウムを担持してなる触媒を用いて、前記灯軽油留分中の多環芳香族炭化水素を水素化反応させて単環芳香族炭化水素に転化するようにしたので、多環芳香族炭化水素を効率良く単環芳香族炭化水素に転化して水素化油を製造することができ、さらに、従来に比べて水素分圧などの運転条件を緩和することができる。
【0069】
したがって、特に水素分圧を低くすることができるため、水素化反応装置2の耐圧性能を従来に比べ低くすることができ、これによって水素化反応装置2やその周辺機器等の建設費やメンテナンス費用を従来に比べて格段に引き下げることができる。さらに、運転条件が緩和することで安全性を高めることもできる。
また、従来に比べて水素分圧を同等にし、しかも水素化転化率が同等となるように運転する場合には、従来に比べて反応温度を低くすることができ、したがってエネルギーコストを低減することができる。
【0070】
また、前記水素化反応装置2による水素化反応の水素分圧を1.0MPaG以上3.0MPaG以下とし、反応温度を260℃以上340℃以下とすれば、後述する実験結果から明らかなように、二環芳香族炭化水素(多環芳香族炭化水素)から単環芳香族炭化水素への水素化転化率を50容量%以上にすることができる。
【0071】
また、灯軽油留分中の多環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素への水素化転化率を50容量%以上にすれば、得られた水素化油を原料油として分解改質反応によるBTXの製造を行った場合に、BTXをより効率良く製造することができる。
【0072】
本実施形態のBTXの製造方法によれば、前記の製造方法によって得られた水素化油を、アルミノシリケート触媒からなる単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させ、分解改質反応させて、BTXを含む生成物を得るので、BTXを効率良く製造することができる。
【0073】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では本発明に係る水素化油の製造方法で得られた水素化油を、分解改質反応によるBTX製造プロセスの原料油として用いる場合について説明したが、前述したように本発明はこれに限定されることなく、本発明は得られる水素化油を用いる種々のプロセスに適用可能である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(水素化処理用触媒の調製)
ケイ酸ナトリウム水溶液を(濃度29質量%、2350g)をpH14でゲル化せしめた後、pH7で2時間熟成せしめて得たスラリーに、硫酸ジルコニウム(四水和物、350g)を含む水溶液を加え、さらにそのスラリーをpH7に調整してシリカ−ジルコニア複合水酸化物を生成せしめた。これを30分熟成せしめた後、硫酸アルミニウム(14水和物、420g)を含む水溶液を加えてpH7に調整し、シリカ−ジルコニア−アルミナ複合水酸化物を生成せしめた。このスラリーからシリカ−ジルコニア−アルミナ複合酸化物をろ過し、洗浄した後、加熱濃縮によって水分を調整し、押し出し成型、乾燥、焼成を行い触媒担体(多孔質担体)を得た。得られた担体中の各構成成分の比率は、酸化物として、アルミナ20質量%、シリカ57質量%、ジルコニア23質量%であった。
この担体に、担体の吸水率に見合う容量になるように濃度を調製したテトラアンミン白金(II)クロライドとテトラアンミンパラジウム(II)クロライドの混合水溶液を用いて金属を含浸せしめ、乾燥、焼成を行い、水素化精製触媒(触媒1)を得た。触媒1における白金、パラジウムの担持量はそれぞれ触媒全体に対して0.3質量%、0.5質量%であった。
【0075】
(灯軽油[原料油])
水素化油の製造に供する原料油として、LCOを用意した。このLCOの性状を表1に示す。なお、表1中の硫黄分、単環芳香族、2環芳香族、3環以上芳香族は、いずれも灯軽油留分中に含まれる硫黄分(質量ppm)、各芳香族の量(容量%)を示している。
【0076】
【表1】
【0077】
(灯軽油の水素化処理反応)
表1に示す灯軽油留分を原料油として用い、反応温度240℃〜350℃、LHSV=3.3h−1、水素油比270NL/L、圧力2MPaG、3MPaGにて水素化処理を行った。運転条件、および得られた水素化油における二環芳香族炭化水素から多環芳香族炭化水素への水素化転化率を表2に示す。
また、比較のため、NiMo触媒を用いて同様の水素化を行った。得られた結果を表2に併記する。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示した結果より、同じ水素分圧下、かつ同じ反応温度では、Pt−Pd触媒を用いた実施例3の方が、Ni−Moを用いた比較例1より高い水素化転化率が得られることが確認された。同様に、同じ水素分圧下、かつ同じ反応温度では、Pt−Pd触媒を用いた実施例2の方が、Ni−Moを用いた比較例2より高い水素化転化率が得られることが確認された。また、同等の水素化転化率を得るための運転条件(水素分圧、反応温度)としては、例えば比較例1に比べて実施例1の方が、また、比較例3に比べて実施例2の方が、穏やかな条件で行えることも確認された。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0081】
1…炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法、2…水素化反応装置、3…脱水素塔、4…分解改質反応装置、5…精製回収装置、6…BTX留分回収塔、7…ガス分離塔、8…リサイクル路
図1