特許第6446483号(P6446483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446483
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】回転電機のロータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20181217BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H02K1/27 501C
   H02K15/03 Z
   H02K1/27 501K
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-14687(P2017-14687)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-125925(P2018-125925A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピディン アンドレイ
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−526513(JP,A)
【文献】 特開2011−125104(JP,A)
【文献】 特開2002−369425(JP,A)
【文献】 特開2011−004519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、該ロータコアの内部に収容される永久磁石と、を備える回転電機のロータであって、
前記ロータコアは、環状のロータコア本体部と、該ロータコア本体部の外周に前記永久磁石を挟むように配置される複数のロータコア分割部と、を備え、
前記ロータコア分割部は、前記ロータコア本体部に対し線材による張力で係止され
前記ロータコアの軸方向一端側には、前記線材を引っ掛ける線材保持部が設けられ、
前記ロータコアの軸方向他端側には、前記線材に張力を発生させる張力生成部が設けられる、回転電機のロータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のロータであって、
前記ロータコア分割部は、前記ロータコア本体部から分離している、回転電機のロータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機のロータであって、
前記張力生成部は、ボルトの軸力を利用して前記線材に張力を発生させる、回転電機のロータ。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機のロータであって、
前記ロータコア分割部は、前記線材が貫通する貫通孔を有する、回転電機のロータ。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機のロータであって、
前記線材は、隣り合う前記ロータコア分割部の前記貫通孔を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される、回転電機のロータ。
【請求項6】
請求項4に記載の回転電機のロータであって、
前記線材は、それぞれの前記ロータコア分割部に形成された複数の前記貫通孔を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される、回転電機のロータ。
【請求項7】
請求項3に記載の回転電機のロータであって、
前記ロータコア分割部は、外周面に前記線材を収容される線材収容溝を有する、回転電機のロータ。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機のロータであって、
前記線材は、隣り合う前記ロータコア分割部の前記線材収容溝を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される、回転電機のロータ。
【請求項9】
請求項7に記載の回転電機のロータであって、
前記線材は、それぞれの前記ロータコア分割部に形成された複数の前記線材収容溝を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される、回転電機のロータ。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか1項に記載の回転電機のロータであって、
前記ロータコアの軸方向一端側には、サイドプレートが設けられ、
前記線材保持部は、前記サイドプレートに一体に形成されている、回転電機のロータ。
【請求項11】
請求項10に記載の回転電機のロータであって、
前記ロータコアの軸方向他端側には、他のサイドプレートが設けられ、
前記張力生成部は、
前記他のサイドプレート上に配置され、前記ボルトの軸方向への移動に伴って軸方向に移動する第1張力生成部材と、
該第1張力生成部材と傾斜面で当接し、前記第1張力生成部材の軸方向への移動に伴って径方向内側に移動する第2張力生成部材と、を備える、回転電機のロータ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転電機のロータの製造方法であって、
治具に前記線材を配置する線材配置工程と、
該線材配置工程の後、治具前記ロータコア本体部及び前記ロータコア分割部の間に前記永久磁石を挟むようにして前記治具に前記ロータコア本体部、前記ロータコア分割部、及び前記永久磁石を配置するロータコア配置工程と、
前記線材に張力を付与して、前記ロータコア本体部に対し前記ロータコア分割部を係止する張力付与工程と、を備える、回転電機のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコアと、ロータコアの内部に収容された永久磁石と、を備える回転電機のロータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、回転電機では、円環状に配置されたステータの内周側に、複数の永久磁石を有するロータが回転自在に設けられており、ステータに巻回された巻線に通電することによりロータが回転されるように構成されている。ロータは、ロータコアの円周方向に沿って形成された複数の磁石挿入孔に永久磁石が固定される。
【0003】
このような回転電機のロータとしては、永久磁石をロータコアの磁石挿入孔に挿入後、磁石挿入孔に設けられた注入部から樹脂を注入し、樹脂を固化させて永久磁石をロータコアに固定している。特許文献1には、複数の磁石挿入孔が形成されたロータコアを備え、永久磁石の長手方向両端と磁石挿入孔の内壁面との間に第1空間部及び第2空間部を形成すると共に、固定部材を注入する注入部と第1空間部及び第2空間部とを、それぞれ同一の長さの第1連通部及び第2連通部で連通している。これにより、注入部から注入される固定部材によって磁石挿入孔内での永久磁石の傾きを抑制するようにした回転電気のロータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−201936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図21に示すように、従来の埋込磁石同期モータ100のロータ101は、円周方向に沿って複数の磁石挿入孔102が形成されたロータコア103と、各磁石挿入孔102に挿入固定された永久磁石104と、を備える。このロータコア103によると、磁石挿入孔102とロータコア103の外周面105との間にブリッジ部106が形成されるため、該ブリッジ部106からの磁束漏れによりモータ効率が低下する虞がある。
【0006】
ブリッジ部106は、永久磁石104の磁束漏れを少なくするため、なるべく細くすることが好ましい。しかし、高速回転時に発生する遠心力に抗する強度を確保するためにはブリッジ部106はある程度太くせざるを得ない。このため、ブリッジ部106からの磁束漏れによるトルクの低下の虞があり、ロータの効率向上の観点から改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、ロータコアの磁束漏れを抑制可能な回転電機のロータ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
ロータコア(例えば、後述の実施形態でのロータコア20)と、該ロータコアの内部に収容される永久磁石(例えば、後述の実施形態での永久磁石30)と、を備える回転電機のロータ(例えば、後述の実施形態でのロータ10)であって、
前記ロータコアは、環状のロータコア本体部(例えば、後述の実施形態でのロータコア本体部21)と、該ロータコア本体部の外周に前記永久磁石を挟むように配置される複数のロータコア分割部(例えば、後述の実施形態でのロータコア分割部22)と、を備え、 前記ロータコア分割部は、前記ロータコア本体部に対し線材(例えば、後述の実施形態での線材70)による張力で係止され
前記ロータコアの軸方向一端側には、前記線材を引っ掛ける線材保持部(例えば、後述の実施形態での線材保持部50)が設けられ、
前記ロータコアの軸方向他端側には、前記線材に張力を発生させる張力生成部(例えば、後述の実施形態での張力生成部60)が設けられる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記ロータコア分割部は、前記ロータコア本体部から分離している。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、
前記張力生成部は、ボルト(例えば、後述の実施形態でのボルト65)の軸力を利用して前記線材に張力を発生させる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、
前記ロータコア分割部は、前記線材が貫通する貫通孔(例えば、後述の実施形態での貫通孔29)を有する。
【0012】
また、請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、
前記線材は、隣り合う前記ロータコア分割部の前記貫通孔を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される。
【0013】
また、請求項6に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、
前記線材は、それぞれの前記ロータコア分割部に形成された複数の前記貫通孔を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される。
【0014】
また、請求項7に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、
前記ロータコア分割部は、外周面に前記線材を収容される線材収容溝(例えば、後述の実施形態での線材収容溝28)を有する。
【0015】
また、請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の発明において、
前記線材は、隣り合う前記ロータコア分割部の前記線材収容溝を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される。
【0016】
また、請求項9に記載の発明では、請求項7に記載の発明において、
前記線材は、それぞれの前記ロータコア分割部に形成された複数の前記線材収容溝を通って、前記線材保持部及び前記張力生成部に保持される。
【0017】
また、請求項10に記載の発明では、請求項3〜9のいずれかに記載の発明において、
前記ロータコアの軸方向一端側には、サイドプレート(例えば、後述の実施形態での第1サイドプレート40A)が設けられ、
前記線材保持部は、前記サイドプレートに一体に形成されている。
【0018】
また、請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の発明において、
前記ロータコアの軸方向他端側には、他のサイドプレート(例えば、後述の実施形態での第2サイドプレート40B)が設けられ、
前記張力生成部は、
前記他のサイドプレート上に配置され、前記ボルトの軸方向への移動に伴って軸方向に移動する第1張力生成部材(例えば、後述の実施形態での第1張力生成部材61)と、
該第1張力生成部材と傾斜面(例えば、後述の実施形態での傾斜面61a、62a)で当接し、前記第1張力生成部材の軸方向への移動に伴って径方向内側に移動する第2張力生成部材(例えば、後述の実施形態での第2張力生成部材62)と、を備える。
【0019】
また、請求項12に記載の発明は、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転電機のロータの製造方法であって、
治具(例えば、後述の実施形態での治具15)に前記線材を配置する線材配置工程と、
該線材配置工程の後、前記治具に前記ロータコア本体部及び前記ロータコア分割部の間に前記永久磁石を挟むようにして前記ロータコア本体部、前記ロータコア分割部、及び前記永久磁石を配置するロータコア配置工程と、
前記線材に張力を付与して、前記ロータコア本体部に対し前記ロータコア分割部を係止する張力付与工程と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、ロータコアは、環状のロータコア本体部と、該ロータコア本体部の外周に永久磁石を挟むように配置される複数のロータコア分割部と、から構成され、ブリッジ部を設けなくてもよいので、ブリッジ部を介した磁束漏れの発生を防止することができる。また、ブリッジ部を設ける場合でも、ロータコア分割部はロータコア本体部に対して線材による張力で係止されるので、ブリッジ部を細くすることができ、磁束漏れを抑制することができる。
さらに、請求項1に記載の発明によれば、ロータコアの軸方向一端側には線材を引っ掛ける線材保持部が設けられ、ロータコアの軸方向他端側には線材に張力を発生させる張力生成部が設けられるので、張力生成部により線材に張力を発生させて、ロータコア分割部をロータコア本体部に対して係止することができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、ロータコア分割部は、ロータコア本体部から分離しているので、ブリッジ部を介した磁束漏れの発生を防止することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、ロータコア分割部は、線材が貫通する貫通孔を有するので、線材により確実にロータコア分割部を固定することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、線材は隣り合うロータコア分割部の貫通孔を通って線材保持部及び張力生成部に保持されるので、一組の線材保持部、張力生成部及び線材により、2つのロータコア分割部を確実に固定することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明によれば、線材はそれぞれのロータコア分割部に形成された複数の貫通孔を通って線材保持部及び張力生成部に保持されるので、それぞれのロータコア分割部が線材により係止され、ロータコア本体部に対しロータコア分割部の位置決めが容易となる。
【0026】
請求項7に記載の発明によれば、ロータコア分割部は、外周面に線材が収容される線材収容溝を有するので、線材により確実にロータコア分割部を固定することができる。また、予め環状に形成された線材を用いることで、組立てが容易になる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、線材は、隣り合うロータコア分割部の線材収容溝を通って、線材保持部及び張力生成部に保持されるので、一組の線材保持部、張力生成部及び線材により2つのロータコア分割部を固定することができる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、線材は、ロータコア分割部の複数の線材収容溝を通って、線材保持部及び張力生成部に保持されるので、ロータコア分割部毎に線材で係止され、ロータコア本体部に対してロータコア分割部を容易に位置決めすることができる。
【0029】
請求項10に記載の発明によれば、線材保持部がサイドプレートに一体に形成されているので、線材保持部を容易に製造できる。
【0030】
請求項11に記載の発明によれば、張力生成部は、ボルトの軸方向への移動に伴って軸方向に移動する第1張力生成部材と、第1張力生成部材の軸方向への移動に伴って径方向内側に移動する第2張力生成部材と、を備えるので、簡単な構成で張力生成部を構成できる。
【0031】
請求項12に記載の発明によれば、治具に前記線材を配置する線材配置工程と、治具ロータコア本体部及びロータコア分割部の間に永久磁石を挟むようにして治具にロータコア本体部、ロータコア分割部、及び永久磁石を配置するロータコア配置工程と、線材に張力を付与してロータコア本体部に対しロータコア分割部を係止する張力付与工程と、を備えるので、容易に回転電機のロータを組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機のロータの斜視図である。
図2図1に示す回転電機のロータの分解斜視図である。
図3図1に示す回転電機のロータからサイドプレートを取り外して示す要部拡大側面図である。
図4図1に示す回転電機のロータの要部拡大斜視図である。
図5図4のV−V断面図である。
図6】回転電機のロータの第1組立工程を示す斜視図である。
図7】回転電機のロータの第2組立工程を示す斜視図である。
図8】回転電機のロータの第3組立工程を示す斜視図である。
図9】回転電機のロータの第4組立工程を示す斜視図である。
図10】回転電機のロータの第5組立工程を示す斜視図である。
図11】回転電機のロータの第6組立工程を示す斜視図である。
図12】回転電機のロータの第7組立工程を示す斜視図である。
図13】回転電機のロータの第8組立工程を示す斜視図である。
図14】回転電機のロータの第9組立工程を示す斜視図である。
図15】組み付けられた回転電機のロータを治具から取り外した状態を示す斜視図である。
図16】第1変形例の回転電機のロータの要部拡大斜視図である。
図17】第2変形例の回転電機のロータの要部拡大斜視図である。
図18】第3変形例の回転電機のロータの要部拡大斜視図である。
図19】第4変形例の回転電機のロータの要部拡大側面図である。
図20】第5変形例の回転電機のロータの要部拡大側面図である。
図21】従来の回転電機のロータの要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1図5に示すように、本実施形態の回転電機のロータ10は、永久磁石埋め込み型ロータであり、環状のロータコア本体部21及び複数のロータコア分割部22を有するロータコア20と、複数の永久磁石30と、第1サイドプレート40A及び第2サイドプレート40Bと、第1サイドプレート40Aに設けられた線材保持部50と、第2サイドプレート40Bに設けられた張力生成部60と、ループ状の複数の線材70と、を主に備える。永久磁石30は、ロータコア本体部21の外周と各ロータコア分割部22との間に挟むように配置され、線材70で固定されている。図中、符号1は、ロータ10の外周部にロータ10と対向して配置されるステータである。また、図2では、線材70を省略している。
【0034】
ロータコア本体部21は、略円環形状を有する複数枚の電磁鋼板が積層されることで構成され、その中央部にロータ10の回転軸11が挿通されるシャフト孔23を有するとともに、その外周部に複数(図に示す実施例では12組)の磁石固定部24が等角度間隔で離間して設けられている。
【0035】
図3を参照して、各磁石固定部24は、周方向中央に形成された第1磁石固定部24Aと、第1磁石固定部24Aを挟んで周方向左右に配置された第2磁石固定部24B及び第3磁石固定部24Cと、を有し、第1磁石固定部24A、第2磁石固定部24B及び第3磁石固定部24Cが略V字形状に配置される。
【0036】
第1磁石固定部24A、第2磁石固定部24B及び第3磁石固定部24Cには、それぞれ後述する長方形状の永久磁石30が配置される。中央の第1磁石固定部24Aの両端には、永久磁石30の両端に当接して永久磁石30の周方向を位置決めする一対の突起部25Aが設けられている。また、第1磁石固定部24Aの左側の第2磁石固定部24Bの右端には、永久磁石30の右端に当接して永久磁石30の右方向位置を決める突起部25Bが設けられ、第1磁石固定部24Aの右側の第3磁石固定部24Cの左端には、永久磁石30の左端に当接して永久磁石30の左方向位置を決める突起部25Cが設けられている。
【0037】
ロータコア分割部22は、磁石固定部24(第1磁石固定部24A、第2磁石固定部24B及び第3磁石固定部24C)の形状に対応する略3角形状の複数枚の電磁鋼板が積層されることで構成され、ロータコア本体部21の磁石固定部24と同数(図に示す実施例では12個)設けられている。
【0038】
ロータコア分割部22の内面には、永久磁石30に当接して永久磁石30の径方向位置を決める、略V字形となる3つの平面26A,26B,26Cが形成されている。平面26Bの左端、及び平面26Cの右端には、それぞれ永久磁石30の左端、及び右端に当接して、磁石固定部24の突起部25B,25Cと協働して永久磁石30の周方向の位置決めを行う突起部27A,27Bが形成されている。また、ロータコア分割部22の外周には、周方向中央に略U字形の線材収容溝28が軸方向に形成されている。
【0039】
複数のロータコア分割部22が、ロータコア本体部21に組み付けられることで、磁石固定部24とロータコア分割部22との間には、永久磁石30を収容可能な磁石収容空間が形成される。そして、第1磁石固定部24Aと平面26Aとの間、第2磁石固定部24Bと平面26Bとの間、及び第3磁石固定部24Cと平面26Cとの間に、それぞれ略長方形の3つの永久磁石30が、外周に向かって略V字形に開くように挟持される。なお、ロータコア本体部21とロータコア分割部22とは、互いに独立しており、接触していない。
【0040】
略V字形に配置された3つの永久磁石30は、1つの磁極を構成する。1つの磁極を構成する3つの永久磁石30は、磁化方向が同じである。また、周方向で隣り合う磁極には、磁化方向が異なる永久磁石30が配置されることで、周方向で交互に磁極が反転するようになっている。
【0041】
図4も参照して、第1及び第2サイドプレート40A,40Bは、ロータコア20の外径と略同じ直径を有する円板であり、中央部には回転軸11が挿通可能な貫通孔42A,42Bが形成されると共に、その外周には複数(図に示す実施例では12本)の切欠き41が形成されている。切欠き41は、第1及び第2サイドプレート40A,40Bが、ロータコア20の側面に配置されたとき、ロータコア分割部22の外周に形成された線材収容溝28にそれぞれ対応する。切欠き41は、ロータコア20から軸方向に引き出された線材70をガイドする。
【0042】
第1サイドプレート40Aの一方の側面には、複数の線材保持部50が設けられている。線材保持部50は、それぞれ隣り合う切欠き41の延長線の内側で、周方向に延びる略矩形板状部材であり、内周側に線材70を係止可能な溝(図示せず)を有する。線材保持部50は、第1サイドプレート40Aと一体成型されてもよく、第1サイドプレート40Aにねじ等で固定されてもよい。
【0043】
図4および図5を参照して、第2サイドプレート40Bの側面には、張力生成部60が設けられている。張力生成部60は、第1張力生成部材61と、第2張力生成部材62と、複数(図に示す実施例では12個)のボス部63と、を備える。
【0044】
複数のボス部63は、それぞれ隣り合う切欠き41の延長線の内側で周方向に設けられており、雌ねじ(図示せず)が形成されている(図9参照)。
【0045】
第1張力生成部材61及び第2張力生成部材62は、略矩形板状部材であり、その両端には、略半円状の切欠き66,67がそれぞれ形成されている(図2参照)。切欠き66,67は、ボス部63と係合して第1張力生成部材61及び第2張力生成部材62を位置決めする。また、第1張力生成部材61及び第2張力生成部材62は、互いに同一方向に傾斜し、摺接可能な傾斜面61a,62aを備える。
【0046】
第1張力生成部材61及び第2張力生成部材62は、互いに重ね合わされ、第2張力生成部材62が軸方向内側に配置され、第1張力生成部材61が軸方向外側に配置されて、ボス部63の雌ねじに螺合するボルト65で固定される。
【0047】
第1張力生成部材61は、ボルト65での締結に伴って軸方向に移動する。また、第2張力生成部材62は、第1張力生成部材61の傾斜面61aと摺接する傾斜面62aの作用により、第1張力生成部材61の軸方向への移動に伴って径方向内側に移動するようになっている。
【0048】
ループ状に形成された複数(図に示す実施形態では6本)の線材70は、隣り合う一対のロータコア分割部22の線材収容溝28に収容されて、ロータコア20を軸方向に跨いで配置される。そして、ロータコア20の一方の端面(第1サイドプレート40A側)から突出するループ状の線材70は、線材保持部50に係止され、ロータコア20の他方の端面(第2サイドプレート40B側)から突出するループ状の線材70は、張力生成部60の第2張力生成部材62に係止される。
【0049】
次に、上記の構成を備えた回転電機のロータ10の組立方法について、図6図15を参照して詳細に説明する。
【0050】
先ず、図6に示すように、内周面16にループ状の線材70を挿入可能な複数(図に示す実施形態では12本)の線材保持溝17が周方向等間隔で設けられた円環状の治具15を準備し、該線材保持溝17に6本のループ状の線材70を挿入して保持する(線材配置工程)。
【0051】
さらに、治具15の中央に、一端に鍔部12を有する回転軸11を配置し、第1サイドプレート40Aの切欠き41と線材70との位相を合わせながら、貫通孔42Aに回転軸11を挿通して第1サイドプレート40Aを治具15の内周面16に嵌合させる。第1サイドプレート40Aは、線材保持部50を下に向けて嵌合する。
【0052】
次いで、図7に示すように、ロータコア本体部21のシャフト孔23に回転軸11を挿通しながらロータコア本体部21を治具15に嵌合させる。このとき、ロータコア本体部21の各磁石固定部24の周方向中心を線材70の位置に合わせて挿入する。
【0053】
次いで、図8に示すように、ロータコア本体部21の各磁石固定部24とロータコア分割部22との間で永久磁石30を挟持するように、ロータコア分割部22と永久磁石30とを治具15の内周面16に嵌合させる(ロータコア配置工程)。このとき、ロータコア分割部22の線材収容溝28と線材70との周方向位置を一致させてロータコア分割部22を治具15に挿入する。これにより、1本のループ状の線材70は、隣り合う一対のロータコア分割部22の線材収容溝28に収容される。
【0054】
図3を参照して、第1磁石固定部24Aに配置される永久磁石30は、第1磁石固定部24Aとロータコア分割部22の平面26Aで挟持されると共に、その両端が突起部25Aに当接して周方向及び径方向が位置決めされる。また、第2磁石固定部24Bに配置される永久磁石30は、第2磁石固定部24Bとロータコア分割部22の平面26Bで挟持されると共に、永久磁石30の右端が突起部25Bに、左端がロータコア分割部22の突起部27Aに当接して周方向及び径方向が位置決めされる。さらに、第3磁石固定部24Cに配置される永久磁石30は、第3磁石固定部24Cとロータコア分割部22の平面26Cで挟持されると共に、永久磁石30の左端が突起部25Cに、右端がロータコア分割部22の突起部27Bに当接して周方向及び径方向が位置決めされる。
【0055】
次いで、図9に示すように、第2サイドプレート40Bの貫通孔42Bに回転軸11を挿通しながら、第2サイドプレート40Bを治具15の内周面16に嵌合させてロータ10の一方の端面(図では上面)を塞ぐ。
【0056】
そして、図10に示すように、治具15の両端から軸方向に突出している線材70を、それぞれ第1及び第2サイドプレート40A,40Bの切欠き41で案内しながら、第1サイドプレート40A及び第2サイドプレート40Bの面に沿わせて略90°折り曲げ、第1サイドプレート40A側の線材70を線材保持部50に係止する。
【0057】
次いで、図11及び図12に示すように、第2サイドプレート40B側から突出するループ状の線材70を第2張力生成部材62の内周面に巻き掛けながら、第2張力生成部材62、第1張力生成部材61の順で、それぞれの切欠き67,66をボス部63に係合させて第2サイドプレート40B上に配置し、図13に示すように、ボルト65で固定する。
【0058】
ボルト65の締結に伴って第1張力生成部材61が軸方向に移動すると、第1張力生成部材61の傾斜面61aと傾斜面62aで摺接する第2張力生成部材62は、傾斜面61a,62aの作用により径方向内側に移動して線材70に張力を発生させる(張力付与工程)。
【0059】
1本のループ状の線材70は、隣り合う一対のロータコア分割部22の線材収容溝28に収容されているので、1本の線材70により隣り合う一対のロータコア分割部22がロータコア本体部21に対して固定される。
【0060】
これにより、複数のロータコア分割部22がロータコア本体部21に対して固定されると共に、複数の永久磁石30はロータコア本体部21と複数のロータコア分割部22とで挟持されて固定される。
【0061】
次いで、図14に示すように、ナット13を回転軸11の雄ねじに螺合し、回転軸11の鍔部12とナット13とで第1及び第2サイドプレート40A,40Bを締め付けて固定した後、図15に示すように、ロータ10を治具15から取り外して組み付けを終了する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る回転電機のロータ10によれば、ロータコア20は、環状のロータコア本体部21と、該ロータコア本体部21の磁石固定部24との間に永久磁石30を挟むように配置される複数のロータコア分割部22と、を備え、ロータコア分割部22は、ロータコア本体部21から分離するとともにロータコア本体部21に対し線材70による張力で係止されるので、ブリッジ部が形成されず、ブリッジ部を介した磁束漏れの発生を防止することができる。
【0063】
また、ロータコア20の軸方向一端側には、線材70を引っ掛ける線材保持部50を備え、ロータコア20の軸方向他端側には、ボルト65の軸力を利用して線材70に張力を発生させる張力生成部60を備えるので、ボルト締結することで張力生成部60により線材70に張力を発生させて、ロータコア分割部22をロータコア本体部21に対して係止することができる。
【0064】
また、ロータコア分割部22は、外周面に線材70が収容される線材収容溝28を有するので、線材70により確実にロータコア分割部22を固定することができる。また、予め環状に形成された線材70を用いることで、組立てが容易になる。
【0065】
また、線材70は、隣り合うロータコア分割部22の線材収容溝28を通って、線材保持部50及び張力生成部60に保持されるので、一組の線材保持部50、張力生成部60及び線材70により2つのロータコア分割部22を固定することができる。
【0066】
また、ロータコア20の軸方向一端側には第1サイドプレート40Aが設けられ、線材保持部50は、第1サイドプレート40Aに一体に形成されているので、線材保持部50を容易に製造できる。
【0067】
また、ロータコア20の軸方向他端側には第2サイドプレート40Bが設けられ、張力生成部60は、第2サイドプレート40B上に配置され、ボルト65の軸方向への移動に伴って軸方向に移動する第1張力生成部材61と、該第1張力生成部材61と傾斜面61a、62aで当接し、第1張力生成部材61の軸方向への移動に伴って径方向内側に移動する第2張力生成部材62と、を備えるので、簡単な構成で張力生成部60を構成できる。
【0068】
また、回転電機のロータ10は、治具15に線材70を配置する線材配置工程と、該線材配置工程の後、ロータコア本体部21及びロータコア分割部22の間に永久磁石30を挟むようにして治具15にロータコア本体部21、ロータコア分割部22、及び永久磁石30を配置するロータコア配置工程と、線材70に張力を付与して、ロータコア本体部21に対しロータコア分割部22を係止する張力付与工程と、により容易に回転電機のロータ10を組み立てることができる。
【0069】
以下、上記実施形態の回転電機のロータ10の変形例について説明する。なお、実施形態の回転電機のロータ10と同一又は同等部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
(第1変形例)
図16は、回転電機のロータの第1変形例の要部拡大斜視図である。本変形例の回転電機のロータ10は、第1及び第2サイドプレート40A,40Bを備えず、線材保持部50及び張力生成部60が直接、ロータコア本体部21の側面に配設されている点で上記実施形態のロータ10と異なる。
【0070】
本変形例に係る回転電機のロータ10によれば、第1及び第2サイドプレート40A,40Bを要せずとも、線材70は、隣り合うロータコア分割部22の線材収容溝28を通って、線材保持部50及び張力生成部60に保持されるので、一組の線材保持部50、張力生成部60及び線材70により2つのロータコア分割部22を固定することができる。
【0071】
(第2変形例)
図17は、回転電機のロータの第2変形例の要部拡大斜視図である。本変形例の回転電機のロータ10の第1及び第2サイドプレート40A,40Bには、切欠き41(図4参照)に代えて貫通孔43が形成されている。さらに各ロータコア分割部22には、線材収容溝28に変えて軸方向に貫通する貫通孔29(図18も参照)が周方向中央に形成されている。
【0072】
そして、隣り合うロータコア分割部22の貫通孔29に挿通された線材70が、第1及び第2サイドプレート40A,40Bの貫通孔43から引き出され、第1サイドプレート40Aに設けられた線材保持部50、及び第2サイドプレート40Bに設けられた張力生成部60に係止される。そして、張力生成部60により張力が付与された1本の線材70により、隣り合う一対のロータコア分割部22がロータコア本体部21に固定されている。
【0073】
(第3変形例)
図18は、回転電機のロータの第3変形例の要部拡大斜視図である。本変形例の回転電機のロータ10は、第1及び第2サイドプレート40A,40Bを備えず、線材保持部50及び張力生成部60が直接、ロータコア本体部21の側面に配設されている点で第2変形例のロータ10と異なる。この点以外は第2変形例と同様である。
【0074】
第2、及び第3変形例に係る回転電機のロータ10によれば、ロータコア分割部22は、線材70が貫通する貫通孔29を有するので、線材70により確実にロータコア分割部22を固定することができる。また、線材70は、隣り合うロータコア分割部22の貫通孔29を通って、線材保持部50及び張力生成部60に保持されるので、一組の線材保持部50、張力生成部60及び線材70により、2つのロータコア分割部22を確実に固定することができる。
【0075】
(第4変形例)
図19は、回転電機のロータの第4変形例の要部拡大側面図である。本変形例の回転電機のロータ10は、軸方向に貫通する2つの貫通孔29がロータコア分割部22に形成されている。2つの貫通孔29は、ロータコア分割部22の周方向中心に対して対称に形成されている。そして、線材70は、1つのロータコア分割部22に形成された2つの貫通孔29に挿通されて、線材保持部50及び張力生成部60に保持される。なお、第1及び第2サイドプレート40A,40Bは、配置されても、配置されなくともよい。
【0076】
本変形例に係る回転電機のロータ10によれば、線材70は、ロータコア分割部22の2つの貫通孔29を通って、線材保持部50及び張力生成部60に保持されるので、それぞれのロータコア分割部22が独立して線材70により係止され、ロータコア本体部21に対しロータコア分割部22が容易に位置決めされる。
【0077】
なお、ロータコア分割部22には、複数の貫通孔29に代えて、外周面に複数の線材収容溝28を設けてもよく、この場合、線材70は、ロータコア分割部22の複数の線材収容溝28を通って、線材保持部50及び張力生成部60に保持される。
【0078】
(第5変形例)
図20は、回転電機のロータの第5変形例の要部拡大側面図である。本変形例の回転電機のロータ10は、ロータコア本体部21とロータコア分割部22とが、一体に形成されたロータコア20を備える。ロータコア20の外周側には、永久磁石30を配置するための3つの磁石挿入孔31A,31B,31Cが設けられている。また、ロータコア20の外周には、中央の磁石挿入孔31Aの周方向中央に対応して略U字形の線材収容溝28が軸方向に形成されている。
【0079】
本変形例のロータコア20は、ロータコア本体部21とロータコア分割部22とが一体に成形されているので、複数のブリッジ部32が不可避的に形成される。ブリッジ部32は、磁束漏れの要因であるので、できるだけ細いことが望ましい。一方、ロータコア20が高速回転すると、ロータコア分割部22の遠心力がブリッジ部32に作用するため、ブリッジ部32は、この遠心力に耐える強度が必要である。
【0080】
本変形例のロータコア20のロータコア分割部22は、線材収容溝28を通り、線材保持部50及び張力生成部60に保持された線材70の張力で係止されるので、遠心力の一部を線材70が負担することによりブリッジ部32に作用する遠心力を低減することができ、これによりブリッジ部32を細くして磁束漏れを抑制することができる。
【0081】
尚、本発明は、前述した実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 回転電機のロータ
15 治具
20 ロータコア
21 ロータコア本体部
22 ロータコア分割部
28 線材収容溝
29 貫通孔
30 永久磁石
40A 第1サイドプレート(サイドプレート)
40B 第2サイドプレート(他のサイドプレート)
50 線材保持部
60 張力生成部
61 第1張力生成部材
61a 傾斜面
62 第2張力生成部材
62a 傾斜面
65 ボルト
70 線材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21