(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
経路探索装置が、道路網を表すノードおよびリンクを含むネットワークデータと、1のリンクに対応する該当リンクに関連付けられるリンク情報と、を含む道路情報を記憶する道路情報記憶部を参照し、前記道路情報に基づき、前記ノードおよび前記リンクを辿って探索枝を伸ばしつつ該探索枝の先の注目ノードに対して、該注目ノードに達するまでの累計コストを付与し、該注目ノードに付与された累計コストの中から、所定の条件を満たす累計コストを確定させていくことで、異なる二点間の推奨経路を探索する経路探索工程を備える経路探索方法であって、
前記リンク情報は、前記該当リンクの一端のノードに進入するリンクである進入リンクと、前記該当リンクの他端のノードから退出するリンクである退出リンクと、前記進入リンクから進入して前記退出リンクから退出する場合における前記該当リンクの旅行時間を表すコストと、を示す情報を含み、
前記経路探索工程では、既に累計コストが確定したノードである確定ノードの退出リンクを該当リンクとして含み、かつ、前記確定ノードに至る該当リンクを進入リンクとして含む1または複数のリンク情報を前記道路情報から取得し、取得された1または複数の前記リンク情報に含まれる該当リンクの他端に存在するノードに対して前記探索枝を伸ばす、
経路探索方法。
道路網を表すノードおよびリンクを含むネットワークデータと、1のリンクに対応する該当リンクに関連付けられるリンク情報と、を含む道路情報を記憶する道路情報記憶部を参照し、前記道路情報に基づき、前記ノードおよび前記リンクを辿って探索枝を伸ばしつつ該探索枝の先の注目ノードに対して、該注目ノードに達するまでの累計コストを付与し、該注目ノードに付与された累計コストの中から、所定の条件を満たす累計コストを確定させていくことで、異なる二点間の推奨経路を探索する経路探索機能、
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムであり、
前記リンク情報は、前記該当リンクの一端のノードに進入するリンクである進入リンクと、前記該当リンクの他端のノードから退出するリンクである退出リンクと、前記進入リンクから進入して前記退出リンクから退出する場合における前記該当リンクの旅行時間を表すコストと、を示す情報を含み、
前記経路探索機能は、既に累計コストが確定したノードである確定ノードの退出リンクを該当リンクとして含み、かつ、前記確定ノードに至る該当リンクを進入リンクとして含む1または複数のリンク情報を前記道路情報から取得し、取得された1または複数の前記リンク情報に含まれる該当リンクの他端に存在するノードに対して前記探索枝を伸ばす、
コンピュータプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、最適経路を探索するための技術に対する要求は高く、特許文献1に記載された技術よりも、精度良
く経路を探索可能な技術が望まれている。
【0005】
こうした課題の他、従来の経路探索装置においては、処理効率の向上や、装置の小型化、低コスト化、省資源化、使い勝手の向上等が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第一の形態は、
道路網を表すノードおよびリンクを含むネットワークデータと、1のリンクに対応する該当リンクに関連付けられるリンク情報と、を含む道路情報を記憶する道路情報記憶部と、
前記道路情報に基づき、前記ノードおよび前記リンクを辿って探索枝を伸ばしつつ該探索枝の先の注目ノードに対して、該注目ノードに達するまでの累計コストを付与し、該注目ノードに付与された累計コストの中から、所定の条件を満たす累計コストを確定させていくことで、異なる二点間の推奨経路を探索する経路探索部と、
を備え、
前記リンク情報は、前記該当リンクの一端のノードに進入するリンクである進入リンクと、前記該当リンクの他端のノードから退出するリンクである退出リンクと、前記進入リンクから進入して前記退出リンクから退出する場合における前記該当リンクの旅行時間を表すコストと、を示す情報を含んでおり、
前記経路探索部は、既に累計コストが確定したノードである確定ノードの退出リンクを該当リンクとして含み、かつ、前記確定ノードに至る該当リンクを進入リンクとして含む
1または複数のリンク情報を前記道路情報から取得し、取得された
1または複数の前記リンク情報に含まれる該当リンクの他端に存在するノードに対して前記探索枝を伸ばす、
経路探索装置である。このような形態の経路探索装置であれば、精度良く経路を探索できる。その他、本発明は、以下の形態としても実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、経路探索装置が提供される。この経路探索装置は、道路網を表すノードおよびリンクを含むネットワークデータと、1のリンクに対応する該当リンクに関連付けられる情報である単独リンク情報および1以上のノードを跨がる複数のリンクに対応する該当リンク列に関連付けられる情報である複合リンク情報で構成されるリンク情報と、を含む道路情報を記憶する道路情報記憶部と;前記道路情報に基づき、前記ノードおよび前記リンクを辿って探索枝を伸ばしつつ該探索枝の先の注目ノードに対して、該注目ノードに達するまでの累計コストを付与し、該注目ノードに付与された累計コストの中から、所定の条件を満たす累計コストを確定させていくことで、異なる二点間の推奨経路を探索する経路探索部と、を備える。前記単独リンク情報は、前記該当リンクの一端のノードに進入するリンクである進入リンクと、前記該当リンクの他端のノードから退出するリンクである退出リンクと、前記進入リンクから進入して前記退出リンクから退出する場合における前記該当リンクのコストと、を示す情報を含む。前記複合リンク情報は、前記該当リンク列の一端のノードに進入するリンクである進入リンクと、前記該当リンク列の他端のノードから退出するリンクである退出リンクと、前記進入リンクから進入して前記退出リンクから退出する場合における前記該当リンク列のコストと、を示す情報を含む。前記経路探索部は、既に累計コストが確定したノードである確定ノードの退出リンクを該当リンクとして含み、かつ、前記確定ノードに至る該当リンクを進入リンクとして含むリンク情報を前記道路情報から取得し、取得された前記リンク情報に含まれる該当リンクまたは該当リンク列の他端に存在するノードに対して前記探索枝を伸ばす。このような形態の経路探索装置では、単独リンク情報および複合リンク情報には、それぞれ、進入リンクと退出リンクを表す情報が含まれ、さらに、複合リンク情報には、一以上のノードを跨ぐ道路を複数の該当リンクによって表した該当リンク列が含まれている。そのため、複合リンク情報に対して、複数の道路区間に跨がって発生する渋滞に応じたコストを対応付けることで、右左折渋滞等の影響が複数のリンクに跨がって影響する場合にも、正確なコストに基づいて精度良く経路を探索することができる。
【0008】
(2)上記形態の経路探索装置において、前記道路情報記憶部には、一の複合リンク情報が記憶されている場合に、該複合リンク情報と、進入リンクおよび該当リンク列が共通し、異なる退出リンクを有する他の複合リンク情報も合わせて記憶されていてもよく、前記道路情報記憶部には、前記複合リンク情報と進入リンクが共通し、かつ、該複合リンク情報の該当リンク列に、全ての該当リンクと退出リンクとが含まれるリンク情報は、記憶されていないものとしてもよい。このような形態によれば、複合リンク情報によって表される経路が、それよりも区間の短い複数のリンク情報の組み合わせによって表されることがない。よって、複合リンク情報に設定されたコストが、経路探索に的確に反映されることになるので、渋滞を回避可能な経路を的確に探索することができる。
【0009】
(3)上記形態の経路探索装置において、前記経路探索部は、前記注目ノードにおいて、退出リンクが共通するリンク情報が複数存在し、更に、該複数のリンク情報の経路が一致する場合には、該複数のリンク情報の中で最も多くの該当リンクを含むリンク情報のコストに基づいて、前記注目ノードに累計コストを付与してもよい。このような形態によれば、単独リンク情報よりも多くの該当リンクを含む複合リンク情報に基づいて経路探索が行われる。そのため、複合リンク情報に設定されたコストが、経路探索に的確に反映されることになり、渋滞を回避可能な経路を精度良く探索することができる。
【0010】
(4)上記形態の経路探索装置において、前記経路探索部は、退出リンクが共通する前記複数のリンク情報に含まれる一のリンク情報および他のリンク情報が、前記一のリンク情報の該当リンクおよび進入リンクに、前記他のリンク情報の該当リンクと進入リンクとが含まれる関係である場合に、前記一のリンク情報の経路と前記他のリンク情報の経路とが一致すると判断してもよい。このような形態であれば、一のリンク情報および他のリンク情報について、注目ノードまでのすべての経路が一致するか否か判断する必要がないので、効率的に経路探索を行うことができる。
【0011】
本発明は、経路探索装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、経路探索方法や、コンピュータプログラム、データ構造、コンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態としての経路探索装置200を含む経路探索システム10の概略構成を示す説明図である。経路探索システム10は、端末装置としてのスマートフォン100と、サーバ装置として構成された経路探索装置200とを備える。スマートフォン100は、送受信アンテナと無線基地局と交換局とを含む通信キャリア70を介して、インターネット80に接続された経路探索装置200にアクセスすることができる。なお、
図1には、スマートフォン100を1台のみ示したが、経路探索システム10には、複数のスマートフォン100が含まれていても良い。
【0014】
スマートフォン100は、制御部110と、無線通信部120と、タッチパネル124と、表示部126と、マイク128と、スピーカ130と、GPS受信機136と、記憶部138と、を備える。
【0015】
無線通信部120は、通信キャリア70を介したデータ通信や音声通信を行うための回路である。表示部126は、地図画像等の種々の画像を表示する装置である。タッチパネル124は、表示部126に重畳して設けられており、指やペンによるユーザからのタッチ操作を受け付ける。GPS受信機136は、GPS(Global Positioning System/全地球測位システム)を構成する人工衛星から受信した電波に基づいて、スマートフォン100(ユーザ)の現在位置(経度・緯度)を測位する。マイク128は、音声通信時においてユーザから発せられた音声を取得する。スピーカ130は、経路案内のための音声や、音声通信時において通話相手から受信した音声を出力する。
【0016】
制御部110は、CPUやメモリを備えたコンピュータとして構成されており、スマートフォン100の動作全体を制御する。制御部110は、メモリに記録されたコンピュータプログラムがCPUによって実行されることにより、経路探索要求部112および経路案内部114として機能する。
【0017】
経路探索要求部112は、無線通信部120を通じて経路探索装置200に対して、ユーザから指定された異なる二点(出発地と目的地)間の推奨経路の探索を要求する。以下では、この要求のことを、「経路探索要求」という。経路探索装置200からは、この経路探索要求に応じて、指定された出発地から目的地までの経路を表す経路情報が送信される。経路探索要求部112は、経路探索装置200から経路情報を受信すると記憶部138に記憶させる。
【0018】
経路案内部114は、記憶部138に記憶された経路情報を用いて表示部126に経路を表示するとともに、GPS受信機136によって測位された現在位置を表示部126に表示し、スマートフォン100のユーザに対して経路の案内を行う。
【0019】
経路探索装置200は、通信部202と、制御部204と、道路情報記憶部210と、を備えている。通信部202は、インターネット80を介してスマートフォン100と通信を行う。道路情報記憶部210には、交差点や行き止まりを表すノードと、道路を表すリンクとによって道路のつながり状態が表された道路ネットワークデータが記憶されている。各ノードおよび各リンクには、それぞれ、固有のIDが割り当てられている。
【0020】
制御部204は、CPUやメモリを備えており、経路探索装置200の動作全体を制御する。制御部204は、メモリに記憶されたコンピュータプログラムがCPUによって実行されることにより、経路探索部206として機能する。コンピュータプログラムは、各種の記録媒体に記録されていてもよい。
【0021】
経路探索部206は、通信部202を通じてスマートフォン100から経路探索要求を受信した場合に、道路情報記憶部210に記憶された道路情報を用いて、周知のダイクストラ法を応用した経路探索を行う。そして、探索された経路を表す経路情報を、通信部202を通じてスマートフォン100に送信する。
【0022】
道路情報記憶部210には、道路網を表すノードおよびリンクを含む道路ネットワークデータと、リンクに関連付けられたリンク情報216と、を含む道路情報が記憶されている。リンク情報216には、単独リンク情報と、複合リンク情報とが含まれる。単独リンク情報とは、隣り合う2つのノード間に存在する1つの道路(リンク)に対して付与される情報である。一方、複合リンク情報とは、一以上のノードを跨ぐ道路、つまり、連続した2本以上の道路(リンク列)によって構成された道路区間に対して付与される情報である。
【0023】
図2は、リンク情報(単独リンク情報および複合リンク情報)のデータ構造を示す説明図である。
図2(A)の上段に示すように、単独リンク情報には、「リンク情報ID」と、「該当リンク」のIDと、「退出リンク」のIDと、「進入リンク」のIDと、「コスト」とが含まれる。「リンク情報ID」は、各単独リンク情報に対して割り当てられた固有のIDである。「該当リンク」は、隣り合うノード間に存在する1つの道路を表す。「退出リンク」は、該当リンクが表す道路の一端から退出する道路を表す。「進入リンク」は、該当リンクが表す道路の他端に進入する道路を表す。「コスト」は、進入リンクから該当リンクに進入して退出リンクに抜けるまでに要する平均的な旅行時間を表す。
図2(A)の下段には、ノードN1とノードN2との間に存在する該当リンクL2を実線で示し、その該当リンクL2に進入する進入リンクL1と、該当リンクL2から退出する退出リンクL5とをそれぞれ破線で示している。単独リンク情報は、進入リンクと退出リンクの1つの組み合わせに対して1つ記憶されている。そのため、例えば、2つの四叉路の間に存在する1つの道路(1つの片側車線)に対しては、3つの進入リンクと3つの退出リンクの組み合わせに応じて、9個(=3×3)の単独リンク情報を記憶させることができる。
【0024】
図2(B)の上段に示すように、複合リンク情報には、「リンク情報ID」と、「該当リンク列」と、「退出リンク」のIDと、「進入リンク」のIDと、「コスト」とが含まれる。「リンク情報ID」は、その複合リンク情報に割り当てられた固有のIDである。「該当リンク列」は、一以上のノードを跨がる道路を表し、複数のリンクのIDによって構成される。「退出リンク」は、該当リンク列が表す道路の一端から退出する道路を表す。「進入リンク」は、該当リンク列が表す道路の他端に進入する道路を表す。「コスト」は、進入リンクから該当リンク列に進入して退出リンクに抜けるまでに要する平均的な旅行時間を表す。
図2(B)の下段には、ノードN1とノードN3との間に存在する該当リンク列L2−L3を実線で示し、その該当リンク列L2−L3に進入する進入リンクL1と、該当リンク列L2−L3から退出する退出リンクL6とをそれぞれ破線で示している。なお、複合リンク情報は、進入リンクと退出リンクのすべての組み合わせに対して記憶されているわけではなく、原則として、その該当リンク列全体に渋滞の影響がおよぶ道路区間に対して記憶されている。以下では、複合リンク情報によって表されるリンクのことを、「複合リンク」ともいう。
【0025】
図3は、経路探索装置200によって実行される経路探索処理のフローチャートである。経路探索装置200の制御部204は、まず、通信部202を通じてスマートフォン100の経路探索要求部112から経路探索要求を受信する(ステップS100)。この経路探索要求には、出発地および目的地を示す情報が含まれる。ユーザは、スマートフォン100の表示部126上に表示される所定のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を用いて、出発地や目的地を指定する。
【0026】
経路探索要求を受信すると、経路探索部206は、経路探索要求によって指定された出発地と目的地とを結ぶ推奨経路を、道路情報記憶部210内の単独リンク情報および複合リンク情報を用いて探索する(ステップS200)。つまり、経路探索部206は、出発地から目的地までノードおよびリンクを辿って探索枝を伸ばしていき、その探索枝の先の注目ノードに対して、そのノードに達するまでの累計コストと探索枝(つまり、前のラベル)とを表す候補ラベルを付与し、付与された候補ラベルの中から所定の条件を満たすラベル(本実施形態では最小コストとなるラベル)を選択して確定させていくことで、推奨経路を求める。経路探索が終了すると、経路探索部206は、探索された経路を表す経路情報を、スマートフォン100に対して送信する(ステップS300)。
【0027】
図4は、本実施形態の経路探索処理において探索の枝を伸ばす具体例を示す説明図である。ここで、本実施形態では、各ノードに付与するラベルには、
図2に示したリンク情報に基づいて、ラベル番号と、ノード番号と、該当リンクと、退出リンクと、前のラベル番号と、累計コストと、を表す情報が記録される。
図4(A)に示すように、ノードN1に付与されたラベルLB1(該当リンク=リンクL1、退出リンク=リンクL2)が、既に、確定していたとする。そうすると、経路探索部206は、そのラベルLB1の退出リンクL2の先に存在するノードに対して探索の枝を伸ばす。具体的には、経路探索部206は、ラベルLB1の退出リンクL2を該当リンクとして含み、かつ、ラベルLB1の該当リンクL1を進入リンクとして含むリンク情報(単独リンク情報または複合リンク情報)を道路情報記憶部210から取得し、取得されたリンク情報に基づき、探索の枝を伸ばした先のノードに候補ラベルを付与する。
図4(B)には、単独リンク情報に基づき、候補ラベルLB2,LB3,LB4が、ノードN2に対して付与され、複合リンク情報に基づき、候補ラベルLB5が、ノードN3に対して付与された例を示した。ラベルLB2,LB3,LB4は、共通する該当リンクL2を有しており、それぞれ、異なる退出リンクを有している。また、ラベルLB5は、2つの該当リンクL2,L3を包含しており、退出リンクとしてリンクL6を有している。
【0028】
図5は、本実施形態の経路探索処理において、注目ノードに付与された候補ラベルの中から不要なラベルを除外する方法を示す説明図である。経路探索部206は、注目ノードにおいて、該当リンクと退出リンクの組み合わせが競合するラベルが存在する場合には、それらの累計コストを比較し、累計コストが最も小さいラベルをその注目ノードの候補ラベルとして選択する。選択しなかったラベルは、候補ラベルから除外する。こうすることで、累計コストの大きいラベルからは探索の枝が伸びないことになる。
図5に示した例では、ノードN2に対して付与されたラベルLB2,LB5,LB6が、該当リンク(リンクL2)と退出リンク(リンクL3)の組み合わせが競合する。そのため、経路探索部206は、それらのラベルの累計コストを比較し、最も累計コストの小さいラベルLB2を候補ラベルとして選択し、他のラベルLB5およびラベルLB6を、候補ラベルから除外する。
【0029】
第1実施形態では、
図4および
図5に示した手法に従って、出発地から各ノードに探索の枝を伸ばしていき、順次、各ノードに付与した候補ラベルの中から、最小コストとなるラベルを確定していく。そして、確定されたラベルに含まれる該当リンクを結ぶ経路が推奨経路として探索される。ただし、第1実施形態では、道路情報記憶部210に記憶されるリンク情報について以下に説明するような特徴がある。
【0030】
図6は、本実施形態において道路情報記憶部210に記憶されるリンク情報の特徴を示す図である。本実施形態では、
図6(A)に示すように、ある道路区間(リンクL2−L3)に対して複合リンク情報(CL1)が記憶されている場合には、
図6(B)に示すように、その複合リンク情報(CL1)と進入リンクと該当リンク列とが共通し、退出リンクだけが異なる、他の複合リンク情報(CL2,CL3)も、それらの複合リンク情報(CL2,CL3)が表す区間に渋滞が生じるか否かにかかわらず、あわせて道路情報記憶部210に記憶されている。
【0031】
さらに、本実施形態では、
図6(A)に示すように、ある道路区間に対して複合リンク情報(CL1)が記録されている場合には、その複合リンク情報に包含される単独リンク情報(SL1)または複合リンク情報が、予め削除されており、
図6(B)に示すように、道路情報記憶部210に記憶されていない。本実施形態において、「リンク情報Aがリンク情報Bに包含される」とは、リンク情報Aとリンク情報Bのそれぞれの進入リンクが一致し、かつ、リンク情報Bの退出リンクと全ての該当リンクとが、リンクAの該当リンク列に含まれることをいう。
【0032】
図7〜10は、
図6に示したリンク情報を用いて経路探索を行う具体例を示す図である。
図7に示すように、ノードN2に付与されたラベルLB2(該当リンク=リンクL1、退出リンク=リンクL2)が確定していたとする。すると、経路探索部206は、確定ラベルLB2から探索の枝を伸ばす。そうすると、ラベルLB2の該当リンクL1と同一の進入リンクを有し、かつ、ラベルLB2の退出リンクL2が該当リンクに含まれるリンク情報(単独リンク情報および複合リンク情報)が道路情報記憶部210から取得される。
図8には、該当リンクとしてリンクL2とリンクL3とを有し、退出リンクが異なる3種類の複合リンク情報が取得された例を示した。ノードN4には、これらの複合リンク情報に基づいて、ラベルLB3,LB4,LB5が付与されている。これらの複合リンク情報は、
図6(B)に示したように、予め道路情報記憶部210に記憶されている。また、
図8には、該当リンクとしてリンクL2を含み、退出リンクが異なる2種類の単独リンク情報が取得された例を示した。ノードN3には、これらの単独リンク情報に基づいて、ラベルLB6,LB7が付与されている。こうして取得された単独リンク情報には、同時に取得された複合リンク情報に包含されるリンク情報は含まれない。
図6(B)に示したように、複合リンク情報に包含されるリンク情報は道路情報記憶部210に記憶されていないからである。
【0033】
上記のように、本実施形態では、複合リンク情報に包含される単独リンク情報は道路情報記憶部210に記憶されていないため、複合リンク情報に包含される単独リンク情報に基づいて、ノードにラベルが付与されることがない。そのため、
図9に示すような、複合リンク情報CL1に包含される単独リンク情報SL1は、
図8に示した例では取得されていない。よって、
図8に示した状況では、
図9のように連続した複数のリンク情報SL1,SL2によって探索の枝が伸ばされることがない。そのため、この時点でノードN4に付与された候補ラベルは、複合リンク情報に対応するラベルLB3,LB4,LB5だけとなる。さらに、
図10に示すように、異なる経路から伸びたラベルLB8が注目ノードN4に付与された場合には、ラベルLB3とラベルLB8のそれぞれの累計コストが比較されて経路が選択される。
【0034】
以上で説明した第1実施形態によれば次のような利点がある。複合リンク情報は、渋滞が生じる区間に対して記憶されているため、複合リンク情報が表す経路のコストは、その経路に含まれる単独リンク情報のコストの合計値よりも一般的に大きくなる。そのため、同一の区間について、複合リンク情報に基づくコストと複数の単独リンク情報とに基づくコストが比較された場合には、渋滞の影響が反映された複合リンク情報が選択されず、複数の単独リンク情報が選択されるおそれがある。そうすると、渋滞の影響が反映された複合リンク情報のコストが、経路探索に活かされないことになる。ところが、本実施形態では、
図6に示したように、複合リンク情報に包含されるリンク情報は、道路情報記憶部210に記憶されていない。そのため、複合リンク情報によって表される区間が、それよりも区間の短い複数のリンク情報の組み合わせによって表されることがない。よって、複合リンク情報に設定されたコストが、経路探索に的確に反映されることになるので、渋滞を回避可能な経路を的確に探索することができる。また、本実施形態では、単独リンク情報だけではなく、複数のリンクに対してまとめてコストが割り当てられた複合リンク情報を用いて経路探索を行うため、右左折渋滞等の影響が複数のリンクに跨がって影響する場合にも、正確なコスト(旅行時間)に基づいて、最適な経路を探索することができる。さらに、本実施形態では、複合リンク情報に包含されるリンク情報が、道路情報記憶部210から予め削除されているため、特別な処理を行うことなく経路を探索することができる。
【0035】
図11および
図12は、第1実施形態による他の利点を説明するための図である。本実施形態では、渋滞が生じる区間について複合リンク情報が道路情報記憶部210に記憶されている場合において、
図6(B)に示したように、その複合リンク情報だけではなく、退出リンクが異なる他の複合リンク情報についても合わせて記憶されている。これに対して、例えば、
図11(A)に示すように、渋滞が生じる区間についてだけ複合リンク情報CL1が記憶されており、退出リンクが異なる他の複合リンク情報が記憶されていない場合には、複合リンク情報CL1に包含されるリンク情報が予め削除されていることから、
図11(B)に示すような経路(複合リンク情報CL1と同一の進入リンクを含み、異なる退出リンクを含む経路)を探索することができなくなる。しかし、本実施形態では、
図6(B)に示したような複合リンク情報CL2,CL3も道路情報記憶部210に記憶されているので、これらの複合リンク情報を用いることで、
図11(B)に示した経路も問題なく探索することができる。
【0036】
また、本実施形態では、複合リンク情報に包含されるリンク情報が予め削除されている。前述のとおり、「リンク情報Aがリンク情報Bに包含される」とは、リンク情報Aとリンク情報Bのそれぞれの「進入リンク」が一致し、かつ、リンク情報Bの退出リンクと全ての該当リンクとが、リンクAの該当リンク列に含まれることをいう。これに対して、例えば、
図12(A)に示すように、複合リンク情報(CL1)と「退出リンク(L10)」が一致し、かつ、複合リンク情報(CL1)の該当リンク列に該当リンクが含まれるリンク情報(SL3)を削除してしまうと、
図12(B)に示すような経路(複合リンク情報が表す経路と進入リンクのみが異なる経路)を探索することができなくなる。よって、本実施形態のように、退出リンクではなく、進入リンクが一致することを「包含」の条件とすることで、複合リンク情報が表す経路と進入リンクのみが異なる経路も問題なく探索することが可能になる。
【0037】
B.第2実施形態:
第2実施形態では、
図6に示したようなリンク情報の特徴は採用しない。つまり、第2実施形態では、複合リンク情報は、その複合リンク情報が表す道路区間が、渋滞が生じ得る道路区間ではない限り、道路情報記憶部210には記憶されない。また、複合リンク情報に包含されるリンク情報は、道路情報記憶部210から予め削除されることはなく、道路情報記憶部210にそのまま記憶されている。
【0038】
第2実施形態における経路探索システム10の構成は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。第2実施形態と第1実施形態とでは、
図3に示した経路探索処理のステップS200の処理(道路情報記憶部210内の単独リンク情報および複合リンク情報を用いて探索する処理)が一部異なる。以下では、第1実施形態と異なる処理について説明する。
【0039】
図13は、第2実施形態の経理探索処理において実行されるラベル付与処理のフローチャートである。ラベル付与処理とは、注目ノードに対して候補ラベルを付与するための処理である。まず、経路探索部206は、これからラベルを付与しようとする注目ノードに対して、競合するラベル(競合ラベル)が既に付与されているか否かを判断する(ステップS210)。競合ラベルとは、これから付与しようとするラベル(注目ラベル)と同一のノードに付与されており、かつ、そのノードへ進入する該当リンクとそのノードから退出する退出リンクの組み合わせが同一のラベルである。競合ラベルが存在する場合には、経路探索部206は、注目ノードに至るまでの注目ラベルの経路と、競合ラベルの経路とが一致するか否かを判断する(ステップS212)。注目ノードに至るまでの経路が一致するとは、一方のラベルの該当リンクと進入リンクとに、他方のラベルの該当リンクと進入リンクとが含まれる関係になることをいう。このような関係になれば、両者のそれ以前の経路は必ず同じ経路になるからである。このように、ステップS212の処理では、注目ノードまでの全ての経路が一致するか否かを判断する必要がないので、効率的に経路探索を行うことができる。
【0040】
注目ラベルの経路と競合ラベルの経路とが一致しない場合には(ステップS212:NO)、経路探索部206は、注目ラベルの累計コストと競合ラベルの累計コストとを比較する(ステップS216)。その結果、注目ラベルよりも競合ラベルの方が累計コストが小さければ(ステップS216:YES)、経路探索部206は、競合ラベルを候補ラベルとして選択し、注目ラベルを候補ラベルから除外する(ステップS220)。一方、注目ラベルの方が競合ラベルよりも累計コストが小さければ(ステップS216:NO)、経路探索部206は、注目ラベルを候補ラベルとして選択し、競合ラベルを候補ラベルから除外する(ステップS218)。つまり、注目ラベルの経路と競合ラベルの経路とが一致しない場合には、第1実施形態と同様に、累計コストの比較によって候補ラベルが選択される。
【0041】
これに対して、注目ラベルの経路と競合ラベルの経路とが一致する場合には(ステップS212:YES)、経路探索部206は、注目ラベルの区間の長さと競合ラベルの区間の長さとを比較する(ステップS214)。その結果、注目ラベルの方が、競合ラベルより長い区間であれば(ステップS214:YES)、経路探索部206は、注目ラベルを候補ラベルとして選択し、競合ラベルを候補ラベルから除外する(ステップS218)。一方、競合ラベルの方が、注目ラベルよりも長い区間であれば(ステップS214:NO)、経路探索部206は、競合ラベルを候補ラベルとして選択し、注目ラベルを候補ラベルから除外する(ステップS220)。区間が長いとは、そのラベルに対応したリンク情報(複合リンク情報または単独リンク情報)に含まれる該当リンクの数が多いということである。つまり、例えば、一方のラベルに対応するリンク情報が複合リンク情報であり、他方のラベルに対応するリンク情報が単独リンク情報であれば、複合リンク情報に対応するラベルが常に候補ラベルとして選択されることになる。
【0042】
図14〜
図17は、
図13に示したラベル付与処理の具体例を示す説明図である。
図14に示すように、ノードN1において、リンクL1から進入してリンクL2へ退出するラベルとして、ラベルLB1が確定していたとする。そうすると、経路探索部206は、ノードN1から探索の枝を、ラベルLB1の退出リンクL2の方向に伸ばし、進入リンクとしてリンクL1を有し、該当リンクにリンクL2を含むリンク情報を道路情報記憶部210から取得する。
図14には、探索の枝が伸ばされた結果、複合リンク情報に基づきラベルLB4がノードN3に付与され、単独リンク情報に基づき、ラベルLB2がノードN2に付与された例を示した。このような状態において、経路探索部206は、ノードN2において、リンクL2から進入してリンクL3へ退出するラベルとして、ラベルLB2を確定させたとする。
【0043】
ラベルLB2が確定すると、経路探索部206は、ラベルLB2から探索の枝をラベルLB2の退出リンクL3の方向に伸ばすために、例えば、進入リンクとしてリンクL2を、該当リンクとしてリンクL3を、退出リンクとしてリンクL6を、それぞれ有する単独リンク情報を道路情報記憶部210から取得する。そして、経路探索部206は、取得した単独リンク情報に基づき、
図15に示すように、ラベルLB3をノードN3に付与しようとする。そうすると、ノードN3には、既に、進入する該当リンクと退出する退出リンクの組み合わせが同一のラベルLB4が付与されているため、現在注目しているラベルLB3に対して、ラベルLB4は、競合ラベルとなる(
図13のステップS210:YES)。そうすると、注目ラベルLB3の経路と競合ラベルLB4の経路とは一致していることから(
図13のステップS212:YES)、区間の長い競合ラベルLB4が候補ラベルとして選択され、区間の短い注目ラベルLB3は候補ラベルから除外されることになる(
図13のステップS214)。
【0044】
続いて、
図16に示すように、ノードN2に対して、該当リンクとしてリンクL8を有し、退出リンクとしてリンクL3を有するラベルLB5が付与され、そのラベルLB5が、確定されたとする。そうすると、経路探索部206は、そのラベルLB5から、退出リンクL3の方向に探索の枝を伸ばす。その結果、経路探索部206は、
図17に示すように、進入リンクとしてリンクL8を、該当リンクとしてリンクL3を、退出リンクとしてリンクL6を、それぞれ有するラベルLB6を、ノードN3に対して付与しようとする。そうすると、ノードN3には、既に、ラベルLB6と競合するラベルLB4が存在する。しかし、ラベルLB6とラベルLB4とは、競合する関係ではあるものの(
図13のステップS210:YES)、それらの経路は同一ではない(
図13のステップS212:NO)。よって、経路探索部206は、注目ラベルLB6の累計コストと競合ラベルLB4の累計コストとを比較する(
図13のステップS216)。
図17には、その比較の結果、注目ラベルLB6が候補ラベルとして選択され、競合ラベルLB4は候補ラベルから除外された例を示している。
【0045】
以上で説明した第2実施形態によれば、退出リンクが同一であり、かつ、経路も同一のラベル同士であれば、区間がより長いラベル、つまり、渋滞の影響がコストに反映された複合リンク情報に基づくラベルが、候補ラベルとして注目ノードに付与されることになる。よって、本実施形態によっても、渋滞の影響が反映された複合リンク情報のコストが、経路探索に的確に反映されることになるので、第1実施形態と同様に、渋滞を回避可能な経路を的確に探索することが可能になる。また、本実施形態においても、単独リンク情報だけではなく、複数のリンクに対してまとめてコストが割り当てられた複合リンク情報を用いて経路探索を行うため、右左折渋滞等の影響が複数のリンクに跨がって影響する場合にも、正確なコスト(旅行時間)に基づいて、最適な経路を探索することができる。
【0046】
C.変形例:
上記実施形態では、各リンク情報に、コストとして、旅行時間が対応付けられている。しかし、コストは旅行時間に限られない。例えば、道路の長さをコストとして対応付けても良い。また、コストは、曜日や時間帯別に異なる値が対応付けられていてもよい。
【0047】
上記実施形態において、リンク情報によって表される道路の途中に目的地が存在する場合には、そのリンク情報のコストを、ノード間における目的地の位置に応じて按分して直前のノードまでの累計コストに加算してもよい。こうすることで、目的地までのコストを正確に求めることができる。
【0048】
上記実施形態では、複合リンク情報を、渋滞が生じる連続した道路区間に対して記憶させている。これに対して、複合リンク情報を、通常に走行するよりも早く通過可能な連続した道路区間に対して記憶させても良い。
【0049】
上記実施形態では、経路探索装置200が経路探索を行い、スマートフォン100が経路案内を行っている。これに対して、スマートフォン100が道路情報記憶部210および経路探索部206を備え、スマートフォン100が単体で経路探索を行うこととしてもよい。この場合、スマートフォン100が、本願の経路探索装置に対応する。また、スマートフォン100に限らず、例えば、一般的な携帯電話や、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯情報端末(PDA)、携帯音楽プレーヤ、携帯型ゲーム機、カーナビゲーションシステム、PND(ポータブルナビゲーションデバイス)などの様々な装置を経路探索装置として適用してもよい。また、道路情報記憶部210に記憶されるリンク情報は、様々な記録媒体に記録されていてもよい。
【0050】
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。