(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1Aは、本実施形態のシートディスプレイ1の構造例を概略的に示す断面図である。ここでは、シートディスプレイ1の一例として、有機EL表示装置の断面構造について説明する。
【0010】
図示した有機EL表示装置は、アクティブマトリクス駆動方式を採用したものであり、アレイ基板ARと、対向基板CTとを備えている。アレイ基板ARは、第1樹脂基板10を用いて形成されている。アレイ基板ARは、第1樹脂基板10の内面10A側に、第1絶縁膜11、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、第4絶縁膜14、リブ15、スイッチング素子SW1乃至SW3、表示素子としての有機EL素子OLED1乃至OLED3などを備えている。
【0011】
第1樹脂基板10は、絶縁基板であり、例えば、ポリイミド(PI)を主成分とする材料によって形成されている。この第1樹脂基板10は、例えば、5乃至30μmの厚さを有している。第1樹脂基板10を形成する材料としては、ポリイミドの他に、ポリアミドイミド、ポリアラミドなど耐熱性が高い材料が選定される。すなわち、第1樹脂基板10は、各種絶縁膜の成膜、スイッチング素子の形成、有機EL素子の形成などにおいてしばしば高温プロセスに曝される。このため、第1樹脂基板10に要求される最も重視するべき特性は、耐熱性が高いことである。後述するように、有機EL素子は、対向基板CTを介して光を出射するいわゆるトップエミッションタイプであるため、第1樹脂基板10が必ずしも高い透明性を有している必要はなく、第1樹脂基板10が着色していても良い。
【0012】
第1樹脂基板10の内面10Aは、第1絶縁膜11によって覆われている。この第1絶縁膜11は、第1樹脂基板10からのイオン性の不純物の浸入や、第1樹脂基板10を介した水分などの浸入を抑制する第1バリア層として機能する。このような第1絶縁膜11は、シリコン窒化物(SiN)やシリコン酸化物(SiO)やシリコン酸窒化物(SiON)などの無機系材料によって形成され、単層もしくは積層体によって構成されている。一例として、第1絶縁膜11は、シリコン窒化物及びシリコン酸化物を交互に積層した多層膜によって構成されている。なお、第1絶縁膜11は、バリア性能を確保できる他の材料で形成されていても良い。
【0013】
スイッチング素子SW1乃至SW3は、第1絶縁膜11の上に形成されている。これらのスイッチング素子SW1乃至SW3は、例えば、それぞれ半導体層SCを備えた薄膜トランジスタ(TFT)である。スイッチング素子SW1乃至SW3は、いずれも同一構造であるが、ここでは、スイッチング素子SW1に着目してその構造をより具体的に説明する。
【0014】
図示した例では、スイッチング素子SW1は、トップゲート型であるが、ボトムゲート型であっても良い。半導体層SCは、例えば、アモルファスシリコンやポリシリコンなどのシリコン系、あるいは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)の少なくとも1つを含む酸化物である酸化物半導体によって形成されている。
【0015】
半導体層SCは、第1絶縁膜11の上に形成され、第2絶縁膜12によって覆われている。第2絶縁膜12は、第1絶縁膜11の上にも配置されている。第2絶縁膜12の上には、スイッチング素子SW1のゲート電極WGが形成されている。ゲート電極WGは、第3絶縁膜13によって覆われている。第3絶縁膜13は、第2絶縁膜12の上にも配置されている。
【0016】
第3絶縁膜13の上には、スイッチング素子SW1のソース電極WS及びドレイン電極WDが形成されている。ソース電極WS及びドレイン電極WDは、それぞれ半導体層SCのソース領域およびドレイン領域にコンタクトしている。ソース電極WS及びドレイン電極WDは、第4絶縁膜14によって覆われている。第4絶縁膜14は、第3絶縁膜13の上にも配置されている。
【0017】
有機EL素子OLED1乃至OLED3は、第4絶縁膜14の上に形成されている。図示した例では、有機EL素子OLED1はスイッチング素子SW1と電気的に接続され、有機EL素子OLED2はスイッチング素子SW2と電気的に接続され、有機EL素子OLED3はスイッチング素子SW3と電気的に接続されている。
【0018】
これらの有機EL素子OLED1乃至OLED3の発光色はいずれも白色である。このような有機EL素子OLED1乃至OLED3は、いずれも同一構造である。
【0019】
有機EL素子OLED1は、第4絶縁膜14の上に形成された画素電極PE1を備えている。画素電極PE1は、スイッチング素子SW1のドレイン電極WDとコンタクトし、スイッチング素子SW1と電気的に接続されている。同様に、有機EL素子OLED2はスイッチング素子SW2と電気的に接続された画素電極PE2を備え、有機EL素子OLED3はスイッチング素子SW3と電気的に接続された画素電極PE3を備えている。これらの画素電極PE1乃至PE3は、例えば陽極として機能する。画素電極PE1乃至PE3は、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)、インジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの透明な導電材料によって形成されても良いし、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、チタン(Ti)、あるいはこれらの合金などの金属材料によって形成されても良い。トップエミッションタイプの場合、画素電極PE1乃至PE3は、反射性の高い金属材料によって形成された反射層を含むことが望ましい。
【0020】
有機EL素子OLED1乃至OLED3は、さらに、有機発光層ORG及び共通電極CEを備えている。有機発光層ORGは、画素電極PE1乃至PE3の上にそれぞれ位置している。また、有機発光層ORGは、有機EL素子OLED1乃至OLED3に亘って途切れることなく連続的に形成されている。共通電極CEは、有機発光層ORGの上に位置している。また、共通電極CEは、有機EL素子OLED1乃至OLED3に亘って途切れることなく連続的に形成されている。このような共通電極CEは、例えば、ITOやIZOなどの透明な導電材料によって形成されている。
【0021】
つまり、有機EL素子OLED1は、画素電極PE1、有機発光層ORG、及び、共通電極CEによって構成されている。同様に、有機EL素子OLED2は、画素電極PE2、有機発光層ORG、及び、共通電極CEによって構成され、また、有機EL素子OLED3は、画素電極PE3、有機発光層ORG、及び、共通電極CEによって構成されている。
【0022】
なお、有機EL素子OLED1乃至OLED3において、画素電極PE1乃至PE3の各々と有機発光層ORGとの間には、さらに、ホール注入層やホール輸送層が介在していても良いし、また、有機発光層ORGと共通電極CEとの間には、さらに、電子注入層や電子輸送層が介在していても良い。
【0023】
有機EL素子OLED1乃至OLED3は、それぞれリブ15によって区画されている。リブ15は、第4絶縁膜14の上に形成され、画素電極PE1乃至PE3のそれぞれのエッジをカバーしている。なお、このリブ15については、詳述していないが、例えば、第4絶縁膜14の上において格子状またはストライプ状に形成されている。このようなリブ15は、有機発光層ORGによって覆われている。つまり、有機発光層ORGは、画素電極PE1乃至PE3の上のみならず、リブ15の上にも延在している。
【0024】
図示した例では、有機EL素子OLED1乃至OLED3は、封止膜20によって封止されている。封止膜20は、水分、酸素、水素などの汚染物質から有機EL素子OLED1乃至OLED3を保護するバリア膜として機能する。このような封止膜20は、シリコン窒化物(SiN)やシリコン酸化物(SiO)やシリコン酸窒化物(SiON)などの無機系材料によって形成され、単層もしくは積層体によって構成されている。
【0025】
対向基板CTは、透明な第2樹脂基板30を用いて形成されている。対向基板CTは、第2樹脂基板30の内面30A側に、第5絶縁膜31、青色カラーフィルタ32B、緑色カラーフィルタ32G、及び、赤色カラーフィルタ32Rなどを備えている。
【0026】
第2樹脂基板30は、透明な絶縁基板であり、例えば、ポリイミド(PI)を主成分とする材料によって形成されている。この第2樹脂基板30は、第1樹脂基板10と同等の厚さを有しており、例えば、5乃至30μmの厚さを有している。第2樹脂基板30を形成する材料としては、透明性が高い材料が選定される。すなわち、トップエミッションタイプの有機EL素子OLED1乃至OLED3から出射された光は、第2樹脂基板30を透過する。このため、第2樹脂基板30に要求される最も重視するべき性質は、透明性が高いことである。このように、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30とでは、要求される性質が異なる。このため、第2樹脂基板30は、第1樹脂基板10とは異なる材料によって形成されている。例えば、第1樹脂基板10には、耐熱性に優れる非透明のポリイミドを用い、第2樹脂基板30には透明ポリイミドを用いる。
【0027】
第2樹脂基板30の内面30Aは、第5絶縁膜31によって覆われている。この第5絶縁膜31は、第2樹脂基板30からのイオン性の不純物の浸入や、第2樹脂基板30を介した水分などの浸入を抑制する第2バリア層として機能する。このような第5絶縁膜31は、例えば、シリコン窒化物(SiN)やシリコン酸化物(SiO)やシリコン酸窒化物(SiON)などの無機系材料によって形成され、単層もしくは積層体によって構成されている。一例として、第5絶縁膜31は、第1絶縁膜11と同様の構成とし、シリコン窒化物及びシリコン酸化物を交互に積層した多層膜によって構成される。
【0028】
ここで、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数は略同等とされ、第5絶縁膜31と第1絶縁膜11の熱膨張係数は略同等とされる。また、第5絶縁膜31と第1絶縁膜11の熱膨張係数は、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数よりも小さい。一例として、第5絶縁膜31および第1絶縁膜11の熱膨張係数は例えば0.5〜3ppm/℃であり、第1樹脂基板10および第2樹脂基板30の熱膨張係数は20〜50ppm/℃である。上記のように、第1樹脂基板10、第2樹脂基板30、第5絶縁膜31および第1絶縁膜11の熱膨張係数を設定することによりシートディスプレイ1の反りを防止することが可能となる。
【0029】
青色カラーフィルタ32Bは、有機EL素子OLED1と対向し、白色のうちの青色波長の光を透過する。緑色カラーフィルタ32Gは、有機EL素子OLED2と対向し、白色のうちの緑色波長の光を透過する。赤色カラーフィルタ32Rは、有機EL素子OLED3と対向し、白色のうちの赤色波長の光を透過する。隣接するカラーフィルタの境界は、リブ15の上方に位置している。
【0030】
このようなアレイ基板ARと対向基板CTとは、画像を表示する表示部の外側でアレイ基板ARと対向基板CTと接着するシール材で接着されておりその間に透明な充填剤40が封入されている。つまり、有機EL素子OLED1乃至OLED3は、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30との間に位置している。図示した例では、有機EL素子OLED1と青色カラーフィルタ32Bとの間、有機EL素子OLED2と緑色カラーフィルタ32Gとの間、及び、有機EL素子OLED3と赤色カラーフィルタ32Rとの間には、それぞれ封止膜20及び充填剤40が介在している。このような充填剤40は、水分吸収能力を有する材料で形成されることが望ましい。これにより、例え封止膜20に欠陥が生じていたとしても充填剤40が封止膜20の欠陥に入り込み、水分の侵入経路を塞ぐことが可能となる。
【0031】
なお、充填剤のかわりに水分吸収能力を有する接着剤でアレイ基板ARと対向基板CTとを接着しても良い。
【0032】
このようなシートディスプレイ1の一例である有機EL表示装置によれば、有機EL素子OLED1乃至OLED3のそれぞれが発光した際、それぞれの放射光(白色光)は、青色カラーフィルタ32B、緑色カラーフィルタ32G、赤色カラーフィルタ32Rのいずれかを介して外部に出射される。このとき、有機EL素子OLED1から放射された白色光のうち、青色波長の光が青色カラーフィルタ32Bを透過する。また、有機EL素子OLED2から放射された白色光のうち、緑色波長の光が緑色カラーフィルタ32Gを透過する。また、有機EL素子OLED3から放射された白色光のうち、赤色波長の光が赤色カラーフィルタ32Rを透過する。これにより、カラー表示が実現される。
【0033】
次に、本実施形態のシートディスプレイ1の他の構造例について説明する。
【0034】
図1Bは、本実施形態のシートディスプレイ1の他の構造例を概略的に示す断面図である。
【0035】
図示した構造例は、
図1Aに示した構造例と比較して、対向基板CTのカラーフィルタを省略し、有機EL素子OLED1乃至OLED3がそれぞれ異なる色に発光する点で相違している。なお、
図1Aに示した構造例と同一構成については、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
すなわち、アレイ基板ARは、第1樹脂基板10、第1絶縁膜11、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、第4絶縁膜14、リブ15、スイッチング素子SW1乃至SW3、有機EL素子OLED1乃至OLED3、及び、封止膜20を備えている。第1絶縁膜11の熱膨張係数は、第1樹脂基板10の熱膨張係数よりも小さい。
【0037】
有機EL素子OLED1は、スイッチング素子SW1に接続された画素電極PE1、画素電極PE1の上方に位置する有機発光層ORG(B)、及び、有機発光層ORG(B)の上方に位置する共通電極CEによって構成されている。有機EL素子OLED2は、スイッチング素子SW2に接続された画素電極PE2、画素電極PE2の上方に位置する有機発光層ORG(G)、及び、有機発光層ORG(G)の上方に位置する共通電極CEによって構成されている。有機EL素子OLED3は、スイッチング素子SW3に接続された画素電極PE3、画素電極PE3の上方に位置する有機発光層ORG(R)、及び、有機発光層ORG(R)の上方に位置する共通電極CEによって構成されている。
【0038】
有機発光層ORG(B)は青色に発光し、有機発光層ORG(G)は緑色に発光し、有機発光層ORG(B)は青色に発光する。有機発光層ORG(B)、有機発光層ORG(G)、及び、有機発光層ORG(R)は、いずれもリブ15の上で途切れている。共通電極CEは、有機EL素子OLED1乃至OLED3に亘って途切れることなく連続的に形成され、有機発光層から露出したリブ15の上も覆っている。
【0039】
対向基板CTは、第2樹脂基板30、及び、第5絶縁膜31を備えている。第2樹脂基板30は、例えば、透明ポリイミドで形成され、第1樹脂基板10は、例えば、耐熱性に優れる非透明のポリイミドで形成される。
【0040】
ここで、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数は略同等とされ、第5絶縁膜31と第1絶縁膜11の熱膨張係数は略同等とされる。また、第5絶縁膜31と第1絶縁膜11の熱膨張係数は、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数よりも小さい。一例として、第5絶縁膜31および第1絶縁膜11の熱膨張係数は例えば0.5〜3ppm/℃であり、第1樹脂基板10および第2樹脂基板30の熱膨張係数は20〜50ppm/℃である。上記のように、第1樹脂基板10、第2樹脂基板30、第5絶縁膜31および第1絶縁膜11の熱膨張係数を設定することによりシートディスプレイ1の反りを防止することが可能となる。
【0041】
これらのアレイ基板ARと対向基板CTとは、接着剤40によって接着されている。
【0042】
図1Cは、本実施形態のシートディスプレイ1の他の構造例を概略的に示す断面図である。ここでは、シートディスプレイ1の一例として、液晶表示装置の断面構造について説明する。
【0043】
図示した構造例は、
図1Aに示した構造例と比較して、表示素子として液晶素子を備えている点で相違している。なお、
図1Aに示した構造例と同一構成については、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
すなわち、アレイ基板ARは、第1樹脂基板10、第1絶縁膜11、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、第4絶縁膜14、リブ15、スイッチング素子SW1乃至SW3、画素電極PE1乃至PE3、及び、第1配向膜AL1を備えている。第1絶縁膜11の熱膨張係数は、第1樹脂基板10の熱膨張係数よりも小さい。
【0045】
画素電極PE1はスイッチング素子SW1に接続され、画素電極PE2はスイッチング素子SW2に接続され、画素電極PE3はスイッチング素子SW3に接続されている。第1配向膜AL1は、画素電極PE1乃至PE3を覆っている。
【0046】
対向基板CTは、第2樹脂基板30、第5絶縁膜31、青色カラーフィルタ32B、緑色カラーフィルタ32G、赤色カラーフィルタ32R、共通電極CE、及び、第2配向膜AL2を備えている。第2樹脂基板30は、第1樹脂基板10とは異なる材料からなり、例えば、第2樹脂基板30は透明ポリイオミドで形成され、第1樹脂基板10は耐熱性に優れる非透明のポリイミドにより形成される。
【0047】
ここで、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数は略同等とされ、第5絶縁膜31と第1絶縁膜11の熱膨張係数は略同等とされる。また、第5絶縁膜31と第1絶縁膜11の熱膨張係数は、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数よりも小さい。一例として、第5絶縁膜31および第1絶縁膜11の熱膨張係数は例えば0.5〜3ppm/℃であり、第1樹脂基板10および第2樹脂基板30の熱膨張係数は20〜50ppm/℃である。上記のように、第1樹脂基板10、第2樹脂基板30、第5絶縁膜31および第1絶縁膜11の熱膨張係数を設定することによりシートディスプレイ1の反りを防止することが可能となる。
【0048】
青色カラーフィルタ32Bは画素電極PE1の上方に位置し、緑色カラーフィルタ32Gは画素電極PE2の上方に位置し、赤色カラーフィルタ32Rは画素電極PE3の上方に位置している。共通電極CEは、画素電極PE1乃至PE3のそれぞれに対向している。第2配向膜AL2は、共通電極CEを覆っている。
【0049】
これらのアレイ基板ARと対向基板CTとは、図示しないスペーサにより所定のセルギャップを形成した状態で、図示しない接着剤(あるいはシール材)によって接着されている。液晶層LQは、アレイ基板ARと対向基板CTとの間のセルギャップに保持されている。液晶層LQは、詳述しないが、画素電極PEと共通電極CEとの間の電界で配向状態が制御される液晶分子を含んでいる。
【0050】
液晶素子LC1は、画素電極PE1、液晶層LQ、及び、共通電極CEによって構成されている。液晶素子LC2は、画素電極PE2、液晶層LQ、及び、共通電極CEによって構成されている。液晶素子LC3は、画素電極PE3、液晶層LQ、及び、共通電極CEによって構成されている。
【0051】
なお、図示した例では、液晶素子を構成する画素電極PE1乃至PE3がアレイ基板ARに備えられ、共通電極CEが対向基板CTに備えられた場合について説明したが、画素電極PE1乃至PE3と共通電極CEの双方がアレイ基板ARに備えられていても良い。
【0052】
本実施形態によれば、シートディスプレイ1は、第1樹脂基板10及び第2樹脂基板30を適用した構成であるため、ガラス基板を適用したシートディスプレイと比較して、薄型化及び軽量化が可能であるとともに、柔軟性が高く、形状の自由度が高い。また、第1樹脂基板10及び第2樹脂基板30は、比較的高い吸湿性を有しているが、第1樹脂基板10の内面10Aは第1バリア層である第1絶縁膜11によって覆われており、また、第2樹脂基板30の内面30Aは第2バリア層である第5絶縁膜31によって覆われているため、樹脂基板を介した水分等の侵入を抑制することが可能となる。これにより、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30との間に位置する表示素子の水分等による劣化を抑制することが可能となる。
【0053】
また、アレイ基板ARを構成する第1樹脂基板10は、例えば耐熱性に優れる非透明のポリイミド等で形成され、対向基板CTを構成する第2樹脂基板30は、例えば透明ポリイミド等の異なる材料によって形成されており、しかも、第1樹脂基板10の熱膨張係数は、第2樹脂基板30の熱膨張係数と同等である。このため、シートディスプレイ1が熱膨張したとしても、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30との熱膨張係数の差がほとんどないため、シートディスプレイ1の反りの発生を抑制することが可能となる。
【0054】
しかも、第1樹脂基板10の内面10Aを覆う第1絶縁膜(第1バリア層)11は第1樹脂基板10よりも小さい熱膨張係数を有し、また、第2樹脂基板30の内面30Aを覆う第5絶縁膜(第2バリア層)31は第2樹脂基板30よりも小さい熱膨張係数を有している。第1樹脂基板10と第1絶縁膜11との熱膨張率の差は、第2樹脂基板30と第5絶縁膜31との熱膨張率の差と同等であるため、アレイ基板AR側及び対向基板CT側でともに応力が発生するが、双方の応力がつり合うため、シートディスプレイ1の反りの発生を抑制することが可能となる。したがって、シートディスプレイの形状を安定に維持することが可能となる。
【0055】
さらに、第1樹脂基板10の厚さは第2樹脂基板30の厚さと同等であるため、熱膨張による第1樹脂基板10及び第2樹脂基板30の寸法変化が同等であり、シートディスプレイの形状の更なる安定化が可能となる。
【0056】
図2において、各々の矢印は、本実施形態のシートディスプレイ1のアレイ基板AR及び対向基板CTにおける、第1樹脂基板10、第1絶縁膜11、第2樹脂基板30、および第5絶縁膜31の熱膨張率の関係を模式的に示している。
【0057】
ここで、本実施形態のシートディスプレイ1の製造工程において、第1樹脂基板10、第1絶縁膜11、第2樹脂基板30、および第5絶縁膜31は高温状態にて形成される。このとき、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数は、第1絶縁膜11と第5絶縁膜31の熱膨張係数よりも大きいため、シートディスプレイ1が高温にて形成された直後は、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30は、第1絶縁膜11と第5絶縁膜31よりも大きく膨張している状態で所定のサイズに形成されている。その後、冷却していくに従い、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30は、第1絶縁膜11と第5絶縁膜31よりも収縮率が大きくなるため、アレイ基板ARの周辺部が第1樹脂基板10の外側(つまり、対向基板CTから離れる側)に向かって反るような応力が発生する。一方、対向基板CTにおいても、同様に、対向基板CTの周辺部が第2樹脂基板30の外側(つまり、アレイ基板ARから離れる側)に向かって反るような応力が発生する。また、第1樹脂基板10と第2樹脂基板30の熱膨張係数は同等であり、第1絶縁膜11と第5絶縁膜31の熱膨張係数も同等であるため、アレイ基板AR側で外側に向かって反るような応力と、対向基板CT側で外側に向かって反るような応力は略等しいものとなる。
【0058】
このように、アレイ基板AR及び対向基板CTの双方でそれぞれ応力が発生するものの、それらの応力は、アレイ基板ARと対向基板CTとをより近接する方向に略同等の力で作用するため、シートディスプレイ1の形状を維持することが可能となる。更に、ユーザーでの使用環境において、低温時には、アレイ基板AR及び対向基板CTの双方でそれぞれの応力が外側により反るように同等の力で発生するため、シートディスプレイ1の形状を維持することが可能である。高温での使用においても、元々応力が外側に反るように発生しているため、使用温度が製造工程での温度を超えない限りはシートディスプレイ1の形状を維持することが可能となる。
図1A及び
図1Bに示したような有機EL表示装置については、たとえアレイ基板ARと対向基板CTとの間に介在する接着剤40の接着力が弱い場合であっても、アレイ基板AR及び対向基板CTの双方に発生する応力がアレイ基板ARと対向基板CTとをより近接する方向に作用するため、シートディスプレイ1の形状を維持することが可能となる。
図1Cに示したような液晶表示装置については、アレイ基板AR及び対向基板CTの双方に発生する応力がアレイ基板ARと対向基板CTとの間に介在するスペーサを押す方向に作用するため、シートディスプレイ1の形状を維持することが可能となるとともに、セルギャップを維持することが可能となり、表示品位の劣化を抑制することが可能となる。
【0059】
なお、比較例として、第1樹脂基板10の熱膨張係数が第1絶縁膜11の熱膨張係数よりも小さく、第2樹脂基板30の熱膨張係数が第5絶縁膜31の熱膨張係数よりも小さい場合について検討する。このような比較例においては、製造後にアレイ基板ARにおいては、アレイ基板ARの中央部が第1樹脂基板10の外側に向かって反るような応力が発生する。一方、対向基板CTにおいては、製造後に対向基板CTの中央部が第2樹脂基板30の外側に向かって反るような応力が発生する。このように、アレイ基板AR及び対向基板CTの双方で発生するそれぞれ応力は、シートディスプレイ1の中央部でアレイ基板ARと対向基板CTとがより離間する方向に作用する。
【0060】
このため、
図1A及び
図1Bに示したような有機EL表示装置については、アレイ基板ARと対向基板CTとの間に介在する接着剤40の接着力が弱い場合には、シートディスプレイ1の形状を維持することが困難となる。
図1Cに示したような液晶表示装置については、アレイ基板AR及び対向基板CTの双方に発生する応力がアレイ基板ARと対向基板CTとの間のセルギャップが膨らむ方向に作用するため、表示品位の劣化あるいは気泡の発生を招くおそれがある。
【0061】
このように、本実施形態のシートディスプレイ1によれば、比較例よりも、形状を安定に維持することが可能となり、しかも、表示品位の劣化も抑制することが可能となる。
【0062】
次に、本実施形態におけるシートディスプレイ1の製造方法の一例について説明する。ここでは、
図1Aに示した構造例のシートディスプレイ1の製造方法の一例について説明する。
【0063】
まず、
図3に示すように、第1マザー基板M1を用意する。すなわち、ガラス基板などの第1支持基板100の上に、樹脂材料を所望の厚さで成膜した後に硬化させ、第1樹脂基板10を形成する。このとき、第1樹脂基板10は、後述する割断工程の後に個々のアレイ基板となる領域のうち、表示部に対応した領域に延在している。図示した例では、第1樹脂基板10は、3つの表示部に対応した領域、すなわち、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3にそれぞれ延在している。その後、第1樹脂基板10の上に、無機系材料からなる薄膜を成膜し、必要に応じて薄膜の多層膜を形成し、第1絶縁膜11を形成する。この第1絶縁膜11も、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3にそれぞれ延在している。
【0064】
そして、第1絶縁膜11の上の第1領域A1に表示素子部121を形成し、第1絶縁膜11の上の第2領域A2に表示素子部122を形成し、第1絶縁膜11の上の第3領域A3に表示素子部123を形成する。また、第1絶縁膜11の上には、駆動ICチップやフレキシブルプリント回路基板などの信号供給源を実装するための実装部131乃至133を形成する。表示素子部121乃至123は、いずれも同一構造であり、それぞれマトリクス状に配置された複数の有機EL素子を含んでいる。
【0065】
表示素子部121乃至123は、それぞれ以下のようにして形成される。すなわち、第1絶縁膜11の上に、スイッチング素子SW1乃至SW3、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、第4絶縁膜14などを形成する。同時に、各種配線も形成する。そして、第4絶縁膜14の上に、画素電極PE1乃至PE3を形成した後にリブ15を形成し、有機発光層ORGを形成し、共通電極CEを形成する。これらの工程を経て、有機EL素子OLED1乃至OLED3が形成される。その後、必要に応じて、有機EL素子OLED1乃至OLED3を覆う封止膜20を形成する。
【0066】
続いて、
図4に示すように、第2マザー基板M2を用意する。すなわち、ガラス基板などの第2支持基板200の上に、樹脂材料を所望の厚さで成膜した後に硬化させ、その後にフォトリソグラフィプロセスなどを用いて成膜した樹脂材料をパターニングすることにより、透明な第2樹脂基板30を形成する。個々の第2樹脂基板30は、互いに離間している。つまり、第2樹脂基板30のそれぞれは、第2支持基板200の上に島状に形成されている。
【0067】
そして、第2樹脂基板30のそれぞれの上に、無機系材料からなる薄膜を成膜し、必要に応じて薄膜の多層膜を形成し、第5絶縁膜31を形成する。
【0068】
そして、第5絶縁膜31のそれぞれの上にカラーフィルタ層CFを形成する。カラーフィルタ層CFは、いずれも同一構造であり、それぞれ青色カラーフィルタ32B、緑色カラーフィルタ32G、赤色カラーフィルタ32Rを有している。
【0069】
続いて、
図5に示すように、第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3のそれぞれに、枠状のシール材SEを形成した後、シール材SEで囲まれた内側に接着剤(あるいは充填材)40を塗布する。
【0070】
続いて、
図6に示すように、第1マザー基板M1と第2マザー基板M2とを貼り合わせる。すなわち、表示素子部121乃至123のそれぞれと、カラーフィルタ層CFとをシール材SE及び接着剤40により接着する。
【0071】
続いて、
図7に示すように、第2マザー基板M2について、第2樹脂基板30から第2支持基板200を剥離し、第2支持基板200を除去する。同様に、第1マザー基板M1についても、第1樹脂基板10から第1支持基板100を剥離し、第1支持基板100を除去する。これらの第1支持基板100及び第2支持基板200の剥離・除去については、例えば、レーザーアブレーションと称される技術などが適用可能であり、支持基板に向けてレーザー光を照射することで、支持基板と樹脂基板との界面において局所的にエネルギー吸収が起こり、支持基板が樹脂基板から分離可能となるものである。光源としては、例えば、エキシマレーザーなどが適用可能である。
【0072】
続いて、
図8に示すように、第1樹脂基板10を割断する。図示した例では、第1領域A1と第2領域A2との間、及び、第2領域A2と第3領域A3との間でそれぞれ第1樹脂基板10を割断する。これにより、チップC1乃至C3に分離される。チップC1は、第1領域A1に表示素子部121を備え、第1領域A1の外側に実装部131を備えている。チップC2は、第2領域A2に表示素子部122を備え、第2領域A2の外側に実装部132を備えている。チップC3は、第3領域A3に表示素子部123を備え、第3領域A3の外側に実装部133を備えている。
【0073】
その後、図示しないが、実装部131乃至133のそれぞれに信号供給源を実装する。
【0074】
これにより、本実施形態のシートディスプレイ(有機EL表示装置)1が製造される。
【0075】
上記の製造工程中に本実施形態のシートディスプレイ(有機EL表示装置)1は高温の状態に晒されることとなる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、その形状を安定に維持することが可能なシートディスプレイを提供することができる。
【0077】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。