(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、過酷な保存条件下における、製剤(顆粒剤、錠剤等)中の非晶質体のソリフェナシン又は其の塩の化学的な安定性を顕著に改善するための有用な技術的手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために錠剤処方及び製造方法について鋭意検討した結果、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩と抗酸化剤(トコフェロール等)を含有する製剤においては、過酷な保存条件下でのソリフェナシンコハク酸塩の化学的な安定性が非常に優れていることを見出した。本発明者は上記の知見に基づいて更に鋭意検討を重ねて、下記の発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、ソリフェナシン又は其の塩、及び抗酸化剤を含む製剤に関するものであり、好適な形態は以下(1)〜(12)において記述されるものである。
(1)剤形が顆粒剤又は錠剤である、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩、及び抗酸化剤を含有する固形製剤。
(2)製剤全重量に対して、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を1.0〜10.0重量%含有する、前記(1)に記載の固形製剤。
(3)非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩100.0重量部に対して、抗酸化剤を0.1重量部以上含有する、前記(1)又は(2)に記載の固形製剤。
(4)抗酸化剤が、トコフェロール、d−α−トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、アスコルビン酸、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、天然ビタミンE、没食子酸プロピル、無水クエン酸、クエン酸水和物から選ばれる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(5)抗酸化剤が、トコフェロール、d−α−トコフェロール、トコフェロール酢酸エステルから選ばれる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(6)非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩及び抗酸化剤を含む顆粒を含有する、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の固形製剤。
(7)核粒子が非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩及び抗酸化剤を含む被覆層で覆われていることを特徴とする被覆顆粒を含有する、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の固形製剤。
(8)核粒子を覆う抗酸化剤を含む層が非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む層で更に覆われていることを特徴とする被覆顆粒を含有する、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の固形製剤。
(9)非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆層がメチルセルロース又はヒプロメロースを含む、前記(7)又は(8)に記載の固形製剤。
(10)核粒子が含水二酸化ケイ素である、前記(7)〜(9)のいずれかに記載の固形製剤。
(11)剤形が錠剤であり、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を素錠の全重量に対して1.5〜5.0重量%含有する、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の固形製剤。
(12)D−マンニトール、トレハロース及び乳糖水和物から選ばれる賦形剤を含有する、前記(11)に記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、過酷な保存条件下における、非晶質形態が安定に維持されたソリフェナシン又は其の塩の化学的な安定性を顕著に改善する効果を有した製剤(顆粒剤、錠剤等)を製造することを可能にするものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で本発明の、ソリフェナシン又は其の塩、及び抗酸化剤を含む製剤の処方及び製造方法、を詳細に説明する。但し以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明をこの記載範囲にのみ特別限定する趣旨ではない。
【0012】
<錠剤の形態>
本発明に係る製剤の剤形として、具体的には散剤、顆粒剤、錠剤、及びカプセル剤等の固形製剤が挙げられるが、好ましくは顆粒剤又は錠剤であり、より好ましくは錠剤(特に口腔内崩壊錠。)である。本発明に係る錠剤は、素錠(フィルムコーティング層や糖衣層等で覆われていない、打錠等により成形したままの錠剤を指す。以下同じ。)のままであっても良いが、フィルムコーティング錠とすることも可能である。本発明に係る錠剤の形状は特に限定されず、円形錠{円形平錠(隅角錠等含む)、円形R錠(隅角錠、2段R錠等含む)等}や異形錠等のいずれの形状でもよいが、円形錠であることが好ましい。尚、本発明に係る製剤は一種類の原薬のみを含む単剤であることが好ましい。
【0013】
<原薬>
本発明に係る製剤は原薬として非晶質体のソリフェナシン又は其の塩を含むが、特に好ましくは非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む。本発明に係る製剤の製造工程において、ソリフェナシンコハク酸塩は、非晶質体の形態を保つために、結合剤と共に水溶液中に懸濁又は溶解させられることが好ましい。ソリフェナシンコハク酸塩は、製剤の全重量(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠の全重量)に対して1.0重量%以上、好ましくは1.0〜10.0重量%、より好ましくは1.5〜5.0重量%の範囲で製剤中(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠中)に含有される。
【0014】
<抗酸化剤>
本発明に係る製剤は、抗酸化剤を含む。本発明に係る抗酸化剤は、例えば、トコフェロール、d−α−トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、アスコルビン酸、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ビタミンE、没食子酸プロピル、無水クエン酸、クエン酸水和物等から選ばれ、好ましくはトコフェロール、d−α−トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ビタミンE、没食子酸プロピルから選ばれ、より好ましくはトコフェロール、d−α−トコフェロール、トコフェロール酢酸エステルから選ばれ、最も好ましくはトコフェロールである。抗酸化剤は、ソリフェナシンコハク酸塩100.0重量部に対して、0.1重量部以上、好ましくは0.1〜100.0重量部の範囲で、より好ましくは0.1〜25.0重量部の範囲で、更により好ましくは0.2〜8.0重量部の範囲で、最も好ましくは1.0〜5.0重量部の範囲で製剤中(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠中)に含有される。
【0015】
<本発明に係る製剤の製造に使用可能な医薬添加剤>
本発明に係る製剤を製造するためには、上記の添加物に加えて、一般的に使用されている賦形剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、滑沢剤、矯味剤、界面活性剤、着色剤、コーティング剤等の添加物を使用することができる。尚、本明細書において、各種添加剤(結合剤、可塑剤、コーティング剤等)の語句の解釈は其々、製剤化において其の添加剤としての役割を発揮することが必須に期待されて使用されるもので結果的にも其の添加剤としての役割が発揮された状態であるもの、と解することが好ましい。
【0016】
<賦形剤>
本発明に係る賦形剤は、例えば、トレハロース、乳糖水和物、結晶セルロース、無水乳糖、D−マンニトール、及びトウモロコシデンプン等から選ばれ、好ましくはD−マンニトール、トレハロース及び乳糖水和物から選ばれ、より好ましくはD−マンニトール又は乳糖水和物である。賦形剤は製剤の全重量(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠の全重量)に対して好ましくは10.0〜97.0重量%、より好ましくは70.0〜92.0重量%の範囲で製剤中(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠中)に含有される。
【0017】
<崩壊剤>
本発明に係る崩壊剤は、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、及び軽質無水ケイ酸等から選ばれ、好ましくはクロスカルメロースナトリウム又は軽質無水ケイ酸であり、より好ましくはクロスカルメロースナトリウムである。崩壊剤は製剤の全重量(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠の全重量)に対して好ましくは0.2〜20.0重量%、より好ましくは0.5〜12.0重量%の範囲で製剤中(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠中)に含有される。
【0018】
<結合剤>
本発明に係る結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、及びポリエチレングリコール等を挙げる事ができ、好ましくはメチルセルロース、ヒプロメロースから選ばれ、特に好ましくはヒプロメロースである。結合剤は、顆粒100.0重量部に対して1.0〜50.0重量部の範囲で顆粒中に含有される。結合剤として使用可能な添加物はコーティング剤として適宜検討して使用することが可能である。
【0019】
<滑沢剤>
本発明に係る滑沢剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム等から選ばれ、好ましくはステアリン酸マグネシウム又はフマル酸ステアリルナトリウムである。滑沢剤は製剤の全重量(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠の全重量)に対して0.1〜3.0重量%の範囲で製剤中(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠中)に含有されることが好ましい。
【0020】
<コーティング剤>
本発明に係るコーティング剤は、ヒプロメロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルセルロース分散液、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、ジメチルアミノメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー等から選ばれるが、好ましくはヒプロメロース又はメチルセルロースである。コーティング剤は、被覆顆粒100.0重量部に対して3.0〜50.0重量部、好ましくは2.0〜40.0重量部の範囲で被覆顆粒中に含有される。またコーティング剤は、ソリフェナシンコハク酸塩100.0重量部に対しては、8.0〜200.0重量部、好ましくは15.0〜100.0重量部の範囲で製剤中(製剤の剤形が錠剤である場合は、素錠中)に含有される。コーティング剤として使用可能な添加物は結合剤として適宜検討して使用することが可能である。
【0021】
<錠剤の製造方法>
本発明に係る錠剤は、一般的な製造方法によって作成することが可能であり、例えば以下の製造方法によって作成することが可能である。まず、流動層造粒機中に投入した医薬添加物に、原薬や添加物等を溶解・懸濁した溶液(懸濁液も含む。以下同じ。)を噴霧・乾燥して顆粒を製造する。そして、得られた顆粒を、滑沢剤、及び賦形剤等と混合して打錠機によって圧縮成形して錠剤(素錠)とする。さらに所望によって、得られた素錠にはフィルムコーティング層を施すことが可能である。
本発明の錠剤を打錠して製造する際の打圧は例えば300kgf以上、より好ましくは600〜1300kgfの範囲内の任意の数値から選ばれる。
【0022】
<顆粒>
本発明に係る製剤は、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を得る等のために、ソリフェナシンコハク酸塩を含む顆粒を含有することが好ましく、更にソリフェナシンコハク酸塩及び抗酸化剤を含む顆粒(以下、「本発明に係る顆粒」という。)を含有することがより好ましい。本発明に係る顆粒は、より好ましくは被覆層(被覆顆粒中で核粒子を被覆する1以上の層からなる部分。)中にソリフェナシンコハク酸塩及び抗酸化剤が含まれる構成の被覆顆粒であり、更により好ましくは、例えば抗酸化剤を含む溶液を核粒子に噴霧した後にソリフェナシンコハク酸塩を含む溶液を噴霧する工程を介して製造された、核粒子を覆う抗酸化剤を含む層が非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む層で更に覆われている2層の構成の被覆顆粒である。本発明に係る顆粒を製造する上では、ソリフェナシンコハク酸塩を含む溶液は結合剤又はコーティング剤を含んだ状態で噴霧されることが好ましい。
本発明に係る顆粒の製造は、流動層造粒機又は撹拌造粒機等を用いて行うことが可能である。例えば、流動層造粒機を用いた場合は、流動している核粒子に抗酸化剤を溶解・懸濁した溶液を噴霧した後、更にコーティング剤とソリフェナシンコハク酸塩を溶解・懸濁した溶液を噴霧することによって行なうことが可能である。また例えば、撹拌造粒機を用いた場合は、撹拌状態の核粒子に、抗酸化剤を溶解・懸濁した溶液を添加した後、更に結合剤とソリフェナシンコハク酸塩を溶解・懸濁した溶液を添加し、その後に乾燥機で湿潤粒子を乾燥する方法によって行うことが可能である。前記核粒子は、例えば、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸等から選ばれ、好ましくは含水二酸化ケイ素である。本発明に係る顆粒である被覆顆粒において、ソリフェナシンコハク酸塩100.0重量部に対して、核粒子は20.0〜500.0重量部、好ましくは50.0〜200.0重量部の範囲で含まれる。本発明に係る顆粒は、錠剤の全重量に対して3.0〜95.0重量%、より好ましくは8.0〜40.0重量%の範囲で素錠中に含まれる。また、本発明に係る錠剤は、本発明に係る顆粒を賦形剤と混合した上で打錠したものであることが好ましい。
【0023】
以下で実施例等により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素200.0gに、トコフェロール10.0gをエタノール40gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース50.0gを水1,200gに溶解した水溶液にクロスカルメロースナトリウム20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例2】
【0025】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール5.0gをエタノール20gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース50.0gを水1,200gに溶解した水溶液にクロスカルメロースナトリウム20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例3】
【0026】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール20.0gをエタノール80gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース50.0gを水1,200gに溶解した水溶液にクロスカルメロースナトリウム20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例4】
【0027】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール10.0gをエタノール40gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース100.0gを水1,500gに溶解した水溶液にクロスカルメロースナトリウム20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例5】
【0028】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール10.0gをエタノール40gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース100.0gを水1,500gに溶解した水溶液に軽質無水ケイ酸20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例6】
【0029】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール5.0gをエタノール20gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース100.0gを水1,500gに溶解した水溶液に軽質無水ケイ酸20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例7】
【0030】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール2.0gをエタノール20gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース100.0gを水2,000gに溶解した水溶液に軽質無水ケイ酸20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例8】
【0031】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール2.0gをエタノール20gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース50.0gを水1,500gに溶解した水溶液に軽質無水ケイ酸20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例9】
【0032】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール2.0gをエタノール20gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース20.0gを水1,200gに溶解した水溶液に軽質無水ケイ酸20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例10】
【0033】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、トコフェロール2.0gをエタノール20gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びメチルセルロース20.0gを水1,200gに溶解した水溶液に軽質無水ケイ酸20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【実施例11】
【0034】
実施例1で得られた被覆顆粒38.0gと、乳糖水和物259.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例12】
【0035】
実施例2で得られた被覆顆粒27.5gと、乳糖水和物269.5g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例13】
【0036】
実施例5で得られた被覆顆粒33.0gと、乳糖水和物264.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例14】
【0037】
実施例5で得られた被覆顆粒33.0gと、乳糖水和物262.0g、クロスカルメロースナトリウム2.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例15】
【0038】
実施例7で得られた被覆顆粒32.2gと、乳糖水和物261.8g、クロスカルメロースナトリウム3.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例16】
【0039】
実施例7で得られた被覆顆粒32.2gと、D−マンニトール261.8g、クロスカルメロースナトリウム3.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例17】
【0040】
実施例9で得られた被覆顆粒24.2gと、乳糖水和物269.8g、クロスカルメロースナトリウム3.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例18】
【0041】
実施例9で得られた被覆顆粒24.2gと、D−マンニトール268.8g、クロスカルメロースナトリウム4.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例19】
【0042】
実施例9で得られた被覆顆粒24.2gと、D−マンニトール268.8g、クロスカルメロースナトリウム4.0g及びフマル酸ステアリルナトリウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例20】
【0043】
実施例10で得られた被覆顆粒24.2gと、D−マンニトール268.8g、クロスカルメロースナトリウム4.0g及びフマル酸ステアリルナトリウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【0044】
[比較例1]
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素200.0gに、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース50.0gを水1,200gに溶解した水溶液にクロスカルメロースナトリウム20.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
【0045】
[比較例2]
比較例1で得られた被覆顆粒37.0gと、乳糖水和物260.0g及びステアリン酸マグネシウム3.0gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VIRGO型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量150.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【0046】
実施例1〜10及び比較例1の処方を下記の表1に、実施例11〜20及び比較例2の処方を下記の表2に一覧して示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
[試験例1]
実施例1〜10及び比較例1の各顆粒を、製造直後及び、温度60℃の密封条件下又は温度60℃相対湿度75%の開放条件下で14日間保存した後に、ソリフェナシンコハク酸塩の主要な分解物であるNオキサイド体の生成量を測定した。其の測定は高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって行った。上記の測定結果を基に、各条件下で保存した前後のNオキサイド体の増加量(%)を求めた結果は下記の表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
[試験例2]
実施例11〜20及び比較例2の各錠剤を、製造直後及び、温度60℃の密封条件下又は温度60℃相対湿度75%の開放条件下で14日間保存した後に、ソリフェナシンコハク酸塩の主要な分解物であるNオキサイド体の生成量を測定した。其の測定は高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって行った。上記の測定結果を基に、各条件下で保存した前後のNオキサイド体の増加量(%)を求めた結果は下記の表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
[試験例3]
実施例1〜10及び比較例1の各顆粒を、製造直後及び、温度60℃の密封条件下又は温度60℃相対湿度75%の開放条件下で14日間保存した後に、粉末X線回折測定法によって顆粒中のソリフェナシンコハク酸塩の形態を測定した。其の測定結果は
図2〜4(
図2:製造直後、
図3:温度60℃の密封条件下保存後、
図4:温度60℃相対湿度75%の開放条件下保存後)に示す。
図1には参考として結晶形態のソリフェナシンコハク酸塩を粉末X線回折測定法によって解析した結果を示した。
【0054】
表3、4の結果より、抗酸化剤であるトコフェロールを含む実施例1〜20の顆粒又は錠剤はいずれも、抗酸化剤を含まない比較例1の顆粒及び比較例2の錠剤に比べて、各条件下で保存後のNオキサイド体の増加量が格段に少ないことがみられた。よって、顆粒又は錠剤中の抗酸化剤は非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩の化学的な安定性を驚くべきほどに改善することが示された。
また実施例1〜10の顆粒においては、トコフェロールの量が低い場合(例えば実施例7〜10)と高い場合(例えば実施例3)では各条件下で保存後のNオキサイド体の増加量に顕著な差が見られないことから、抗酸化剤は低量であっても非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩の化学的な安定性を改善する充分な効果をもつことが示唆される。
さらに実施例11〜20の錠剤においては、トコフェロールの量が低い場合(例えば実施例15〜20)の方が高い場合(例えば実施例11、13、14)に対して温度60℃相対湿度75%の開放条件下で保存後のNオキサイド体の増加量が低い傾向がみられることから、少なくとも剤形が錠剤の場合には抗酸化剤は或る程度の低量である方が好ましいことが示唆される。
尚、D−マンニトールを含む場合(例えば実施例16)の方がD−マンニトールを含まない場合(例えば実施例15)に対して温度60℃相対湿度75%の開放条件下で保存後のNオキサイド体の増加量が低い傾向がみられることから、高湿度の条件下においてはD−マンニトールを製剤中に含有することが好ましいことが示唆される。
【0055】
図2〜4の結果より、各条件下で保存前後の実施例1〜10及び比較例1の各顆粒に含まれるソリフェナシンコハク酸塩の形態はいずれも、
図1の結晶形態のソリフェナシンコハク酸塩がもつ顕著な回折ピークを有しておらず、非晶質形態であることがみられた。よって、本発明に係る製剤においてソリフェナシンコハク酸塩は過酷な保存条件下であっても安定に非晶質形態を維持することが可能であることが確認された。
【実施例21】
【0056】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素100.0gに、ソリフェナシンコハク酸塩100.0g及びヒプロメロース20.0gを水800gに溶解した水溶液を噴霧・乾燥し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を得た。
得られた被覆顆粒2.2gと、含水二酸化ケイ素0.5g及びアスコルビン酸0.5gをポリ袋で混合し、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例22】
【0057】
アスコルビン酸0.5gをL−アスコルビン酸ナトリウム0.5gに代替したこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例23】
【0058】
アスコルビン酸0.5gをL−アスコルビン酸ステアリン酸エステル0.5gに代替したこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例24】
【0059】
アスコルビン酸0.5gをイソアスコルビン酸0.5gに代替したこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例25】
【0060】
アスコルビン酸0.5gをイソアスコルビン酸ナトリウム0.5gに代替したこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例26】
【0061】
アスコルビン酸0.5gをトコフェロール0.5gに代替したこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例27】
【0062】
アスコルビン酸0.5gをトコフェロール酢酸エステル0.5gに代替したこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例28】
【0063】
アスコルビン酸0.5gをブチルヒドロキシアニソール0.05gに代替したこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【0064】
[比較例3]
アスコルビン酸0.5gを添加しなかったこと以外は、実施例21と同様にして、非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒を含有する粉末状の医薬組成物を得た。
【実施例29】
【0065】
流動層造粒乾燥コーティング機(MP01型/パウレック社製)に投入した含水二酸化ケイ素150.0gに、トコフェロール3.0gをエタノール20gに溶解した溶液を噴霧・乾燥し、次いで、ソリフェナシンコハク酸塩150.0g、及びヒプロメロース30.0gを水750gに溶解した水溶液に軽質無水ケイ酸30.0gを懸濁した懸濁液を噴霧・乾燥し、60メッシュの篩にて篩過(整粒)して非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩を含む被覆顆粒αを得た。
得られた被覆顆粒α48.4gと、乳糖水和物495.6gを流動層造粒機(MP01型/パウレック社製)に投入し、これらにヒプロメロース16.0gを水184gに溶解した水溶液を噴霧・乾燥し、30メッシュの篩にて篩過(整粒)して顆粒βを得た。
得られた顆粒β42.0g、クロスカルメロースナトリウム0.3g、ステアリン酸マグネシウム0.3gをポリ袋で混合し、この混合物をロータリー式打錠機(VERA5型/菊水製作所社製)を用いて打圧900kgfで圧縮成型し、1錠質量142.0mg、直径7.5mmの素錠(円形錠)を得た。
【実施例30】
【0066】
トコフェロール3.0gをエタノール20gに溶解した溶液をトコフェロール1.5gをエタノール20gに溶解した溶液に、乳糖水和物495.6gを乳糖水和物495.8gに代替したこと以外は、実施例29と同様にして素錠(円形錠)を得た。
【実施例31】
【0067】
トコフェロール3.0gをエタノール20gに溶解した溶液をトコフェロール0.3gをエタノール20gに溶解した溶液に、乳糖水和物495.6gを乳糖水和物496.0gに代替したこと以外は、実施例29と同様にして素錠(円形錠)を得た。
【0068】
実施例21〜28及び比較例3の処方を下記の表5に、実施例29〜31の処方を下記の表6に一覧して示す。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
[試験例4]
実施例21〜28及び比較例3の各医薬組成物を、製造直後及び、温度60℃相対湿度75%の開放条件下で4日間保存した後に、総類縁体の生成量を測定した。其の測定は高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって行った。上記の測定結果を基に、各条件下で保存した前後の総類縁体の増加量(%)を求めた結果は下記の表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
[試験例5]
実施例29〜31の各錠剤を、製造直後及び、温度50℃の密封条件下又は温度50℃相対湿度75%の開放条件下で20日間保存した後に、ソリフェナシンコハク酸塩の主要な分解物であるNオキサイド体の生成量を測定した。其の測定は高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって行った。上記の測定結果を基に、各条件下で保存した前後のNオキサイド体の増加量(%)を求めた結果は下記の表8に示す。
【0074】
【表8】
【0075】
[試験例6]
実施例29〜31の各錠剤を、製造直後及び、温度50℃の密封条件下又は温度50℃相対湿度75%の開放条件下で20日間保存した後に、総類縁体の生成量を測定した。其の測定は高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって行った。上記の測定結果を基に、各条件下で保存した前後の総類縁体の増加量(%)を求めた結果は下記の表9に示す。
【0076】
【表9】
【0077】
表7の結果より、各種の抗酸化剤(アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール等)を含む実施例21〜28の医薬組成物はいずれも、抗酸化剤を含まない比較例1の医薬組成物に比べて、温度60度相対湿度75%の開放条件下で保存後の総類縁体の増加量が格段に少ないことがみられた。よって、抗酸化剤であるものは顆粒中の非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩の化学的な安定性を有意に改善することが確認された。
また特に、実施例26と実施例28における総類縁体の増加量が格段に少ないことがみられたことから、トコフェロールやブチルヒドロキシアニソールである抗酸化剤が上記の化学的な安定性を驚くべきほどに改善することが確認された。
【0078】
表8、9の結果より、トコフェロールの量を極少量の範囲で用いた場合(実施例29〜31)においても、各条件下で保存後のNオキサイド体並びに総類縁体の増加量は明らかに少ないことがみられた。よって、抗酸化剤を或る程度(望ましくは実施例31と同等量)まで極少量の範囲で用いた場合でも非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩の化学的な安定性は十分に改善されることが確認された。
【0079】
以上より、本発明により得られる、非晶質形態が安定に維持されたソリフェナシンコハク酸塩及び抗酸化剤を含有する顆粒剤又は錠剤は、過酷な保存条件下での非晶質体のソリフェナシンコハク酸塩の化学的な安定性が驚くべきほどに改善されたものであることが示された。