特許第6446557号(P6446557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446557
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20181217BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20181217BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20181217BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20181217BHJP
   F02D 15/00 20060101ALI20181217BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20181217BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   F02D45/00 312B
   F02D45/00 314Q
   F02D45/00 314Z
   F02D43/00 301Z
   F02D43/00 301B
   F02D43/00 301S
   F02D13/02 D
   F02D13/02 H
   F02D13/02 J
   F02P5/15 E
   F02D15/00 E
   F02D15/02 Z
   F01N3/20 D
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-536697(P2017-536697)
(86)(22)【出願日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2016071662
(87)【国際公開番号】WO2017033646
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-165358(P2015-165358)
(32)【優先日】2015年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】有原 儀信
(72)【発明者】
【氏名】大場 久浩
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−132326(JP,A)
【文献】 特開2009−079578(JP,A)
【文献】 特開2013−056614(JP,A)
【文献】 特開2007−239555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00 〜 45/00
F02P 5/145 〜 5/155
F02D 15/00 〜 15/02
F02D 13/00 〜 13/02
F01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変動弁を備え、またはピストンストロークを可変とせしめる機構を備えるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
前記エンジン制御装置は、前記エンジンの排気を浄化する触媒を活性化させる触媒暖機運転モードを実施し、
前記エンジン制御装置は、前記触媒暖機運転モードを実施する際における前記エンジンの点火時期と前記エンジンの実圧縮比を同調させて制御し、
前記エンジン制御装置は、前記触媒暖機運転モードを完了した後、または前記エンジンの温度が所定以上である場合は、前記点火時期を前記エンジンの上死点に対して進角させる量が増加するのにともない、前記実圧縮比を増加させる
ことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項2】
可変動弁を備え、またはピストンストロークを可変とせしめる機構を備えるエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
前記エンジン制御装置は、前記エンジンの排気を浄化する触媒を活性化させる触媒暖機運転モードを実施し、
前記エンジン制御装置は、前記触媒暖機運転モードを実施する際における前記エンジンの点火時期と前記エンジンの実圧縮比を同調させて制御し、
前記エンジン制御装置は、前記エンジンを搭載する自動車の路面に対する傾斜角を計測するセンサから前記傾斜角を取得し、
前記エンジン制御装置は、前記傾斜角が所定以上である場合は、前記触媒暖機運転モードを実施している際に、前記点火時期が前記エンジンの上死点に対して遅角する量を増加させ、前記可変動弁の吸気弁閉時期を前記エンジンの下死点に近付け、前記可変動弁の排気弁閉時期を前記エンジンの上死点から遠ざける
ことを特徴とするエンジン制御装置。
【請求項3】
前記エンジン制御装置は、前記触媒暖機運転モードを実施する際に、前記点火時期を前記エンジンの上死点に対して遅角させる量を増加させるとともに、前記実圧縮比を増加させる
ことを特徴とする請求項1または2記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記エンジン制御装置は、前記可変動弁の開閉時期を可変制御することにより前記実圧縮比を制御し、または前記ピストンストロークを可変制御することにより前記実圧縮比を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のエンジン制御装置。
【請求項5】
前記エンジン制御装置は、前記可変動弁の吸気弁閉時期を前記エンジンの下死点へ近付けることにより前記実圧縮比を制御し、または前記ピストンストロークを増加させることにより前記実圧縮比を制御する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載のエンジン制御装置。
【請求項6】
前記エンジン制御装置は、前記エンジンの停止時における実圧縮比または前記エンジンの完爆時における実圧縮比と比較して、前記触媒暖機運転モードを実施する際における前記実圧縮比を増加させる
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載のエンジン制御装置。
【請求項7】
前記エンジン制御装置は、前記エンジンを搭載する自動車の路面に対する傾斜角を計測するセンサから前記傾斜角を取得し、
前記エンジン制御装置は、前記傾斜角が所定以上である場合は、前記触媒暖機運転モードを実施している際に、前記点火時期が前記エンジンの上死点に対して遅角する量を増加させ、前記可変動弁の吸気弁閉時期を前記エンジンの下死点に近付け、前記可変動弁の排気弁閉時期を前記エンジンの上死点から遠ざける
ことを特徴とする請求項記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるエンジンを制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車は、環境保全と省エネルギの観点から高効率化と排気清浄化を要求されている。
【0003】
高効率化の手段としては、ダウンサイジング、少気筒数化、高圧縮比化などによりエンジン構造を改良することが挙げられる。ダウンサイジングはエンジンの幾何学的構造により実現されるので、エンジン動作時に可変させることはできない。少気筒数化と高圧縮比化については、エンジン動作時に可変させることができる。少気筒数化は、気筒休止により模擬することができる。圧縮比は、ピストンの位置を基準として算出する場合と、吸気バルブを閉じるタイミング(すなわち混合気を圧縮開始するタイミング)を基準として算出する場合とがある。ピストン位置を基準とする場合、ピストンが上死点にある時の燃焼室容積とピストンが下死点にある時の燃焼室内容積との比により算出する。吸気バルブ閉タイミングを基準とする場合、吸気バルブが閉まった時点における燃焼室内容積とピストンが上死点にある時の燃焼室容積との比により算出する。したがって圧縮比は、ピストンストロークや吸気弁閉タイミングによって可変とすることができる。
【0004】
排気清浄化の手段としては、排気管に備えられる触媒を早期に活性化させることが挙げられる。具体的には、エンジン始動後に点火時期を遅角させることにより排気温度を上昇させる、触媒暖機運転モードが実施されている。点火時期を遅角させる制御と関連して、燃焼を安定化させるため点火プラグ周りにスライトリッチ混合気を配置させている。しかしながら、スライトリッチ混合気の存在と点火時期の遅角により燃焼室内温度が低下し、粒子状物質(以下、PM/PN:Particulate Matter/Number)を増加させる可能性がある。具体的には、低温で酸化した燃料がススとなりPM/PNを発生させる可能性がある。
【0005】
下記特許文献1は、『二次エア供給時の可変動弁機構によるバルブリフト特性を所定の二次エア用リフト設定とすることによって、燃料増量による燃焼室内の空燃比(燃焼A/F)の大幅なリッチ化を伴うことなく、内燃機関の燃焼室で燃焼されずに排気通路へ排出されるHC(ハイドロカーボン)等を含む未燃ガスを増加させることができる。つまり、燃焼A/Fのリッチ化の抑制(リーン化)と、燃焼室より排出されるHC濃度の増加と、を両立することができる。従って、燃焼A/Fのリッチ化の抑制により、燃費向上やNOx等の排気エミッションの低減化を図り、また、HC濃度の増加によって、二次エアの供給による後燃え促進により排気昇温効果を高め、触媒早期活性化を図ることができる。』という技術について開示している(段落0007参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−185327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の技術において、触媒暖機運転モードを実施することを考える。同文献においては、燃焼室内のA/Fのリッチ化を抑制している。しかし燃焼室内のA/Fのリッチ化を抑制すると、燃焼安定性は悪化する。そうすると、燃焼室内温度が低下するので、その結果としてPM/PNが増加する。したがって触媒暖機運転モードの効果が十分に発揮されないことになる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、触媒暖機運転モードを実施するエンジンにおいて、PM/PNの増加を抑制することのできるエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエンジン制御装置は、触媒暖機運転モードにおける点火時期と、エンジンの実圧縮比とを同調して制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るエンジン制御装置によれば、点火時期と実圧縮比をともに制御することにより、排気温度と燃料室内温度をともに制御することができる。排気温度を上昇させることにより触媒を活性化させるとともに、燃料室内温度を上昇させることによりPM/PNの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】自動車用エンジンシステムのシステム構成図である。
図2】は、ECU1の構成を示すシステムブロック図である。
図3A】CPU50eが車両の運転モードを演算する手順を説明する演算ロジック図である。
図3B】CPU50eが運転モードMDを演算する際に用いる運転モード判定表である。
図4A】CPU50eが制御値を演算する手順を説明する演算ロジック図である。
図4B】制御値演算部が各制御値を演算する際に用いる制御マップを示す選択テーブルである。
図5】各制御マップの特性図である。
図6】各目標値を変更することにともなう実圧縮比と膨張比の変化特性図である。
図7】CPU50eが実施する制御演算を説明するフローチャートである。
図8】運転モードMD=4である場合における各信号値の経時変化を示すタイムチャートである。
図9】運転モードMD=3である場合における各信号値の経時変化を示すタイムチャートである。
図10】運転モードMD=2である場合における各信号値の経時変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<エンジン制御装置の構成>
以下では本発明の実施形態として、エンジンの制御装置について説明する。同エンジンは、可変動弁を備えるとともに、ピストンストロークを可変とせしめる機構を備える、自動車用エンジンであることを想定する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る自動車用エンジンシステムのシステム構成図である。エンジン100は、火花点火燃焼あるいは圧縮自己着火式燃焼を実施する自動車用エンジンである。吸気管11の適宜位置には、吸入空気量を計測するエアフロセンサ3、吸気管圧力を調整するスロットル5、吸入空気の温度および湿度を計測する吸気温湿度センサ4、吸気管内の面積を可変にするタンブル弁6がそれぞれ配置されている。エアフロセンサ3は、吸入空気圧力センサであってもよい。
【0014】
エンジン100の適宜位置には、燃焼室17の中に燃料を噴射するインジェクタ7、点火エネルギを供給する点火プラグ19、燃焼室17に流入する吸入空気と排出する排気を調整する可変動弁12、が備えられている。可変動弁12は、吸気弁と排気弁の開いている期間あるいは開閉時期を可変とすることができる。吸気弁のみ可変動弁を備えることとしてもよい。吸気弁を閉じる時期を変更することにより、実圧縮比を変更することができる。これにより、燃焼室内圧力と温度を可変とすることができる。点火プラグ19は点火コイル20と接続され、点火コイル20によって点火エネルギが制御される。
【0015】
エンジン100の適宜位置には、インジェクタ7と連結して燃料を供給するコモンレール9、コモンレール9に燃料を圧送するための燃料ポンプ8、燃料ポンプ8に燃料を供給する燃料配管10、が備えられている。コモンレール9の適宜位置には、燃料の圧力を計測する燃料圧力センサ33が備えられている。燃料圧力センサ33は燃料温度センサであってもよい。
【0016】
排気管22の適宜位置には、排気を浄化する三元触媒23、三元触媒23の上流側にて排気の温度を計測する排気温センサ24、三元触媒23の上流側にて排気の空燃比を検出する空燃比センサ25、吸気管11へ連結された排気還流管28、が備えられている。空燃比センサ25は酸素濃度センサであってもよい。
【0017】
排気還流管28の適宜位置には、排気還流率を調整するEGR弁26、還流ガス温度を調整するEGRクーラ27、が備えられている。EGRクーラ27は、還流ガス温度の温度調整を実施するための冷却水の出入口を有する。EGRクーラ27は、還流ガス温度を検出するセンサとしても動作することができる。エンジン100の適宜位置には、冷却水の流量を制御するための冷却水ポンプ29と冷却水流路切替弁30が備えられている。
【0018】
クランクシャフト14はメインシャフトとサブシャフトにより構成され、サブシャフトはコネクティングロッドを介してピストン13に連結されている。エンジン100はさらに、メインシャフトとサブシャフトの距離、あるいはコネクティングロッドの長さを可変とするコントロールシャフト31を備えている。これら機構を備えることにより、ピストン13のストローク量を変更し、燃焼室17内の圧力と温度を可変とすることができる。ピストン13のストローク量を可変とせしめる機構は上記の限りではない。
【0019】
クランクシャフト14には、クランクシャフト14の角度と回転速度、およびピストン13の移動速度を検出するためのクランク角センサ15が備えられている。エンジン100はさらに、エンジン100の振動を加速度として検出するためのノックセンサ16を備えている。
【0020】
エンジン100の適宜位置には、燃焼室17内部の圧力を検出する圧力センサ21が備えられている。圧力センサ21は、エンジン100内部のイオン量を検出するイオン電流センサであってもよい。エンジン100の適宜位置には、エンジン100内部の冷却水温度を検出する冷却水温センサ18が備えられている。
【0021】
エアフロセンサ3、吸気温湿度センサ4、クランク角センサ15、ノックセンサ16、冷却水温センサ18、圧力センサ21、排気温センサ24、空燃比センサ25、およびEGRクーラ27が出力する検出信号は、ECU1に送られる。
【0022】
アクセルペダル開度センサ2は、アクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセルペダル開度を検出する。アクセルペダル開度センサ2が出力する検出信号は、ECU1に送られる。ECU1は、アクセルペダル開度センサ2が出力する信号に基づいて要求トルクを演算する。すなわちアクセルペダル開度センサ2は、エンジン100に対する要求トルクを検出する要求トルク検出センサとして用いられる。
【0023】
ECU1は、クランク角センサ15が出力する信号に基づいて、クランクシャフト14の角度と回転速度、およびピストン13の移動速度を演算する。ECU1は、各センサの出力から得られるエンジン100の運転状態に基づいて、スロットル5の開度、タンブル弁6の開度、インジェクタ7の噴射信号、燃料ポンプ8の駆動信号、可変動弁12の弁開閉時期、点火コイル20の点火制御信号、EGR弁26の開度、冷却水ポンプ29の冷却水切替弁駆動信号、ピストンストローク量を制御するコントロールシャフト31の制御信号、などのエンジン100の主要な機能部の作動量を好適に演算する。
【0024】
ECU1が演算したスロットル5の開度は、スロットル駆動信号としてスロットル5へ送られる。ECU1が演算したタンブル弁6の開度は、タンブル弁駆動信号としてタンブル弁6へ送られる。ECU1が演算したインジェクタ7の噴射信号は、インジェクタ開弁パルス信号に変換されインジェクタ7に送られる。ECU1が演算した燃料ポンプ8の駆動信号は、燃料ポンプ8へ送られる。ECU1が演算した可変動弁12の弁開閉時期は、可変動弁駆動信号として可変動弁12へ送られる。ECU1が演算した点火制御信号は、ECU1が演算した点火時期で点火されるように、1回あるいは複数回の点火を指令する点火制御信号として点火コイル20に送られる。ECU1が演算したEGR弁26の開度は、EGR弁駆動信号としてEGR弁26へ送られる。ECU1が演算した冷却水切換弁制御信号は、冷却水ポンプ29と冷却水流路切替弁30へ送られる。
【0025】
吸気管11から吸気弁を経て燃焼室17内に流入した空気と、排気管22からEGR弁26とEGRクーラ27を経て再循環する再循環ガスとの混合気に対し、燃料が噴射され可燃混合気を形成する。可燃混合気は、所定の点火時期で点火コイル20により点火エネルギを供給された点火プラグ19から発生される火花により爆発し、その燃焼圧によりピストン13が押し下げられ、これがエンジン100の駆動力となる。爆発後の排気は、排気管22を経て三元触媒23に送られる。排気成分は三元触媒23内で浄化された後に排出される。
【0026】
ECU1が演算した目標ピストンストローク信号は、コントロールシャフト31へ送られる。エンジン100は自動車に搭載されており、ECU1は当該自動車の走行状態に関する情報を受け取る。ECU1は、(a)エンジン100を搭載する車体あるいは車輪に取り付けられた車速センサ、(b)車体の加速度または角度を計測するセンサ(以下Gセンサ32)、(c)エンジン100を搭載する車体に取り付けられた変速機を制御するためのシフトレバーの位置を検出するシフトレバー位置センサ、などから検出信号を直接または他制御装置を介して受け取ることもできる。
【0027】
ECU1は、Gセンサ32からの検出信号を用いて、例えば車体が平地に置かれているのかそれとも傾斜面に置かれているのか、などを判定することができる。また冷却水温センサ18からの検出信号を用いて、触媒暖機運転モードを実施すべきか否かを判定することができる。例えば冷却水温度が適当な閾値より大きい場合、触媒暖機運転モードを実施すべき要求はないと判定することができる。
【0028】
図2は、ECU1の構成を示すシステムブロック図である。アクセルペダル開度センサ2、エアフロセンサ3、吸気温湿度センサ4、クランク角センサ15、ノックセンサ16、冷却水温センサ18、圧力センサ21、排気温センサ24、空燃比センサ25、EGRクーラ27(還流ガス温度検出器)、Gセンサ32、などからの出力信号は、ECU1の入力回路50aに入力される。入力された各センサからの信号は、入出力ポート50bに送られる。
【0029】
入出力ポート50bに送られた信号は、信号値としてRAM50cに保管されCPU50eはその信号値を用いて演算処理を実施する。CPU50eが実施する演算処理内容を記述した制御プログラムは、あらかじめROM50dに格納されている。制御プログラムに従って演算された各アクチュエータの作動量を示す値は、RAM50cに保管された後、入出力ポート50bおよび各駆動回路を経て各アクチュエータに送られる。以下では記載の便宜上、制御プログラムを動作主体として説明する場合があるが、実際に制御プログラムを実行するのはCPU50eである。
【0030】
本実施形態においては、ECU1は以下の駆動回路を備える:スロットル駆動回路50f、タンブル弁駆動回路50g、インジェクタ駆動回路50h、燃料ポンプ駆動回路50i、可変動弁駆動回路50j、コントロールシャフト駆動回路50k、点火信号出力回路50l、EGR弁駆動回路50m、冷却水制御回路50n。各駆動回路はそれぞれ以下を制御する:スロットル5、タンブル弁6、インジェクタ7、燃料ポンプ8、可変動弁12、コントロールシャフト31、点火コイル20、EGR弁26、冷却水ポンプ29および冷却水流路切替弁30。本実施形態においてはECU1内にこれら駆動回路を備えているが、これに限るものではなく、いずれかの駆動回路をECU1外に備えてもよい。
【0031】
図3Aは、CPU50eが車両の運転モードを演算する手順を説明する演算ロジック図である。CPU50eが実施する制御プログラムは、制御ブロックとして運転モード演算部を備える。始動指示信号KS、Gセンサ信号GS、冷却水温度TWが運転モード演算部に入力され、運転モード演算部はこれら入力信号に基づき運転モードMDを演算して出力する。
【0032】
図3Bは、CPU50eが運転モードMDを演算する際に用いる運転モード判定表である。始動指示信号KSが0であるとき、Gセンサ信号GSと冷却水温度TWは参照せず、運転モードMDは0となる。始動指示信号KSが1であり、Gセンサ信号GSがGセンサ信号リミットGLより大きく(すなわち車体が大きく傾いた傾斜面に置かれている)、かつ冷却水温度TWが冷却水温度リミットTL以下である場合、運転モードMDは4となる。始動指示信号KSが1であり、Gセンサ信号GSがGセンサ信号リミットGL以下であり、かつ冷却水温度TWが冷却水温度リミットTL以下である場合、運転モードMDは3となる。始動指示信号KSが1であり、Gセンサ信号GSがGセンサ信号リミットGL以下であり、かつ冷却水温度TWが冷却水温度リミットTLより大きい場合、運転モードMDは2となる。始動指示信号KSが1となり、冷却水温度TWが冷却水温度リミットTLより大きい場合、運転モードMDは1となる。
【0033】
図4Aは、CPU50eが制御値を演算する手順を説明する演算ロジック図である。CPU50eが実施する制御プログラムは、制御ブロックとして制御値演算部を備える。運転モードMDは制御値演算部に入力され、制御値演算部は運転モードMDに応じて、以下の制御値を演算して出力する:目標点火時期TRGIGN、目標吸気弁閉時期TRGIVC、目標ピストンストロークTRGPS、目標排気弁閉時期TRGEVC。
【0034】
図4Bは、制御値演算部が各制御値を演算する際に用いる制御マップを示す選択テーブルである。制御値演算部は、運転モードMDの値に対応する後述の制御マップを選択する。各制御マップは、エンジン回転数NE、目標トルクTRGTRQ、および各制御値の対応関係を定義するデータである。制御値演算部は、運転モードMDに対応する制御マップを参照することにより、各制御値を得ることができる。
【0035】
運転モードMDが0であるとき、制御値演算部はいずれのマップも参照しない。運転モードMDが1または2であるとき、制御値演算部はそれぞれBaseIGN map、BaseIVC map、BasePS map、BaseEVC mapを参照して、目標点火時期TRGIGN、目標吸気弁閉時期TRGIVC、目標ピストンストロークTRGPS、目標排気弁閉時期TRGEVCを得る。運転モードMDが3であるとき、制御値演算部はRetard mapを参照して目標点火時期TRGIGNを取得し、vCRI mapを参照して目標吸気弁閉時期TRGIVCを取得し、sCRI mapを参照して目標ピストンストロークTRGPSを取得し、BaseEVC mapを参照して目標排気弁閉時期TRGEVCを取得する。運転モードMDが4であるとき、制御値演算部はRetard mapを参照して目標点火時期TRGIGNを取得し、vCRI mapを参照して目標吸気弁閉時期TRGIVCを取得し、sCRI mapを参照して目標ピストンストロークTRGPSを取得し、vERr mapを参照して目標排気弁閉時期TRGEVCを取得する。
【0036】
図5は、各制御マップの特性図である。図中左列のグラフは、触媒暖機運転モードを実施すべき要求がないとき用いる制御マップ(Base map)の特性図である。図中右列のグラフは、触媒暖機運転モードを実施すべき要求があるとき用いる制御マップの特性図である。各特性図の縦軸は目標トルクTRGTRQであり、横軸はエンジン回転数NEである。目標トルクTRGTRQは、アクセルペダル開度センサ2に基づき得られる要求トルクに応じて設定することができる。エンジン回転数NEは、例えばクランク角センサ15の検出信号に基づき計算することができる。
【0037】
BaseIGN mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの低下にともない、上死点に対する目標点火時期TRGIGNの進角量は減少する。BaseIVC mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの低下にともない、目標吸気弁閉時期TRGIVCは上死点へ近付く。BasePS mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの低下にともない、目標ピストンストロークTRGPSは減少する。BaseEVC mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの低下にともない、目標排気弁閉時期TRGEVCは上死点に近付く。
【0038】
上記特性を用いることにより、目標トルクTRGTRQ増加にともなう燃焼室17内温度の上昇によって燃焼速度が増加し異常燃焼が発生することを回避するとともに、エンジン回転数NEの低下にともないピストンスピードに対し燃焼速度が相対的に速くなることによる異常燃焼を回避することができる。
【0039】
Retard mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの増加にともない、上死点に対する目標点火時期TRGIGNの遅角量は増加する。vCRI mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの増加にともない、目標吸気弁閉時期TRGIVCは下死点へ近付く。sCRI mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの増加にともない、目標ピストンストロークTRGPSは増加する。vERr mapにおいては、目標トルクTRGTRQの増加とエンジン回転数NEの増加にともない、目標排気弁閉時期TRGEVCは下死点へ近付く。
【0040】
目標トルクTRGTRQ増加にともなう燃焼室17内温度の上昇による燃焼速度の増加と、エンジン回転数NEの増加とにともない、エンジンが無用に吹け上がりを起こす可能性がある。上記特性を用いることにより、(a)点火時期を遅角させる、(b)吸気弁閉時期を下死点に近づける、(c)ピストンストローク増加により実圧縮比を増加させる、(d)排気弁閉時期を下死点に近づけることにより膨張比を減少させる、ことになるので、かかる無用な吹け上がりを抑制することができる。すなわち、触媒暖機運転モードを実施すべき要求があるときにおいて、点火時期を遅角させることにより排気温度を昇温させるとともに、無用な吹け上がりを抑制しつつ燃焼室17内温度を上昇させてPM/PNの発生を抑制することができる。
【0041】
運転モードMDが4であるとき、すなわちGセンサ信号GSに基づき車両が傾斜面に置かれていると判定され、かつ冷却水温度に基づき触媒暖機運転モードを実施すべき要求があると判定された場合、図5右列の制御マップを用いることにより、目標点火時期TRGIGNを遅角し、目標吸気弁閉時期TRGIVCと目標ピストンストロークTRGPSを実圧縮比が増加する方向へ制御し、目標排気弁閉時期TRGEVCを上死点から遠ざかる方向へ制御することになる。
【0042】
運転モードMDが3であるとき、すなわちGセンサ信号GSに基づき車両が傾斜面に置かれておらず、かつ冷却水温度に基づき触媒暖機運転モードを実施すべき要求があると判定された場合、図5左列の制御マップを用いることにより、目標点火時期TRGIGNを遅角し、目標吸気弁閉時期TRGIVCと目標ピストンストロークTRGPSを実圧縮比が増加する方向へ制御することになる。
【0043】
運転モードMDが1または2であるとき、すなわち冷却水温度に基づき触媒暖機運転モードを実施すべき要求がないと判定された場合、Base mapを用いて各制御値を演算することになる。
【0044】
図6は、各目標値を変更することにともなう実圧縮比と膨張比の変化特性図である。上段図は、目標吸気弁閉時期TRGIVCを変更することにともなう実圧縮比RCRの変化を示す特性図である。目標吸気弁閉時期TRGIVCが下死点に近付くほど実圧縮比RCRは増大する。中段図は、目標ピストンストロークTRGPSを変更することにともなう実圧縮比RCRの変化を示す特性図である。目標ピストンストロークTRGPSが増加するほど実圧縮比RCRは増大する。下段図は、目標排気弁閉時期TRGEVCを変更することにともなう膨張比RERの変化を示す特性図である。排気弁が開いている期間(以下、作用角)が180度である場合は、目標排気弁閉時期TRGEVCが上死点において膨張比は最大となる。作用角が220度である場合は、最大膨張比を得る目標排気弁閉時期TRGEVCは上死点より遅角する。
【0045】
本発明に係るエンジン制御装置を備える自動車は、路面に対する当該車両の傾斜角を判定する手段(Gセンサ32)を有する。傾斜角が所定以上と判定された場合、触媒暖機運転モードにおいて点火時期を上死点に対して遅角させる量を増やすことにともない、可変動弁12の吸気弁閉時期を下死点に近付けることが望ましい。さらには、作用角を一定とした状況下において膨張比が低下するように排気弁閉時期を上死点から遠ざけることが望ましい。膨張比の低下は排気温度を上昇させるので、触媒をより活性化させることができる。さらに、点火時期の遅角量の増加に合わせ可変動弁12の吸気弁閉時期を下死点に近付けることにより、実圧縮比RCRを増加させつつ燃焼室17内の残留ガスの掃気性を同時に改善し、エンジン100の発生する負圧を増加させることができる。すなわち、ブレーキシステムがエンジン負圧を用いる構成において、傾斜角が大きくブレーキシステムがより大きなエンジン負圧を要求する際に、ブレーキシステムの動作を効果的に補助することができる。
【0046】
図7は、CPU50eが実施する制御演算を説明するフローチャートである。CPU50eは、図3A図4Bで説明した制御演算を例えば所定周期で繰り返し実行する。以下図7の各ステップについて説明する。
【0047】
図7:ステップS101〜S102)
CPU50eは、始動指示信号KS、Gセンサ信号GS、冷却水温度TWなどの信号を受け取り、ROM50dに書き込まれた値を読み込む(S101)。CPU50eは、これら信号などにしたがって運転モードMDを演算する(S102)。これらステップは、図3A図3Bで説明した演算ブロックに相当する。
【0048】
図7:ステップS103)
CPU50eは、アクセルペダル開度センサ信号APS、エンジン回転数NE、クランク角センサ信号、などを読み込む。CPU50eは、アクセルペダル開度センサ信号APSに基づき目標トルクTRGTRQを演算する。
【0049】
図7:ステップS104)
CPU50eは、ステップS102において演算した運転モードMDが0であるか否かを判定する。0である場合は本フローチャートを終了し、0でない場合はステップS105へ進む。
【0050】
図7:ステップS105)
CPU50eは、運転モードMDが4であるか否かを判定する。4である場合はステップS106へ進み、4でない場合はステップS110へ進む。
【0051】
図7:ステップS106〜S109)
CPU50eは、ステップS103で読み込んだ目標トルクTRGTRQとエンジン回転数NEをキーとして、図5で説明したRetard map(S106)、vCRI map(S107)、sCRI map(S108)、vERr map(S109)を参照し、各制御値を取得する。制御値を取得した後はステップS121へ進む。
【0052】
図7:ステップS110)
CPU50eは、運転モードMDが3であるか否かを判定する。3である場合はステップS111へ進み、3でない場合はステップS115へ進む。
【0053】
図7:ステップS111〜S114)
CPU50eは、ステップS103で読み込んだ目標トルクTRGTRQとエンジン回転数NEをキーとして、図5で説明したRetard map(S111)、vCRI map(S112)、sCRI map(S113)、BaseEVC map(S114)を参照し、各制御値を取得する。制御値を取得した後はステップS121へ進む。
【0054】
図7:ステップS115)
CPU50eは、運転モードMDが2であるか否かを判定する。2である場合はステップS116へ進み、2でない場合はステップS120へ進む。
【0055】
図7:ステップS116〜S119)
CPU50eは、ステップS103で読み込んだ目標トルクTRGTRQとエンジン回転数NEをキーとして、図5で説明したBaseIGN map(S116)、BaseIVC map(S117)、BasePS map(S118)、BaseEVC map(S119)を参照し、各制御値を取得する。制御値を取得した後はステップS121へ進む。
【0056】
図7:ステップS120)
CPU50eは、運転モードが1であるか否かを判定する。1である場合はステップS116へ進み、1でない場合は本フローチャートを終了する。
【0057】
図7:ステップS121〜S123)
CPU50eは、以上のステップにおいて取得した制御値を用いて、点火時期制御(S121)、可変動弁制御(S122)、ピストンストローク制御(S123)を実施する。
【0058】
図7:ステップS104〜S123:補足)
これらステップは、図4A図4Bで説明した演算ブロックに相当する。
【0059】
以下では、図7で説明したフローチャートにしたがって取得した目標点火時期TRGIGN、目標吸気弁閉時期TRGIVC、目標ピストンストロークTRGPS、目標排気弁閉時期TRGEVCを用いて、それぞれ点火時期IGN、吸気弁閉時期IVC、ピストンストロークPS、排気弁閉時期EVCを制御する動作例について説明する。
【0060】
図8は、運転モードMD=4である場合における各信号値の経時変化を示すタイムチャートである。点火時期IGNの初期設定値は、上死点よりも進角側である。運転モードMDが4になると、点火時期IGNは上死点に対する遅角量が増加し、吸気弁閉時期IVCは下死点へと近付き、ピストンストロークPSは増加する。これにより、点火時期IGNの遅角量の増加にともなう燃焼室17内温度の低下を実圧縮比の増加により改善することができる。すなわち、排気温度を上昇させて触媒を活性化させるとともにPM/PNを低減することができる。さらに排気弁閉時期EVCを上死点から遠ざけることにより、膨張比を低減させ燃焼室17内残留ガスの掃気性を改善し、エンジンの発生する負圧を増加させることができる。図8において排気弁閉時期EVCは上死点から進角方向へ遠ざけているがその限りではなく、上死点から遅角側へ遠ざけてもよい。
【0061】
図9は、運転モードMD=3である場合における各信号値の経時変化を示すタイムチャートである。点火時期IGNの初期設定値は、上死点よりも進角側である。運転モードMDが3になると、点火時期IGNは上死点に対する遅角量が増加し、吸気弁閉時期IVCは下死点へと近付き、ピストンストロークPSは増加する。これにより、点火時期IGNの遅角量の増加にともなう燃焼室17内温度の低下を実圧縮比の増加により改善し、排気温度を上昇させて触媒を活性化させるとともにPM/PNを低減することができる。さらに排気弁閉時期EVCはBaseEVC mapに基づき上死点へ近付けているので、膨張比の増加によりエンジンの熱効率を向上させることができる。
【0062】
図10は、運転モードMD=2である場合における各信号値の経時変化を示すタイムチャートである。運転モードMD=1である場合も同様であるため説明は省略する。図10においては、Gセンサ信号GSがGセンサ信号リミットGL以下であり、かつ冷却水温度TWが冷却水温度リミットTLより高いため、運転モードMDは2となる。点火時期IGNは、BaseIGN mapに基づき初期設定値から上死点に対し進角量が増加する方向へ変化する。吸気弁閉時期IVCは、BaseIVC mapに基づき下死点へ近付く。ピストンストロークPSは、BasePS mapに基づき増加する。これにより、点火時期IGNの進角量の増加にともなう燃焼室17内温度の上昇と実圧縮比の増加を同時に実施し、エンジン100の熱効率を改善できる。さらに、EGR弁26を用いたEGR燃焼、空燃比センサ25を用いたリーン燃焼時の燃焼速度の向上効果および燃焼安定化効果を得られるので、熱効率がさらに改善する。排気弁閉時期EVCは、BaseEVC mapに基づき上死点へ近付くので、膨張比の増加によるエンジンの熱効率向上を得ることができる。
【0063】
<本発明の変形例について>
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0064】
以上の実施形態において、各センサなどの機器および配置位置は1例であり、同様の機能を発揮することができればその他機器や配置位置を採用することもできる。
【0065】
以上の実施形態において、ECU1が入出力する信号を例示したが、エンジン100が備えるセンサその他機器の構成などに応じて、ECU1はその他信号を入出力することもできる。
【0066】
以上の実施形態において、運転モードMDの値に応じて異なる制御マップを選択することを説明したが、運転モードMDに対応する制御値が得られるのであればその他手段を用いてもよい。例えば運転モードMDの値に応じて制御モデルを変更することによって同様の効果を発揮することができる。
【0067】
以上の実施形態において、ピストン13のストロークと可変動弁12の開閉タイミングを制御することにより実圧縮比RCRを制御することを説明したが、これらのいずれか一方のみを用いて実圧縮比RCRを十分に制御できるのであれば、一方のみを用いて上記実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0068】
上記各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部や全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0069】
<本発明のまとめ>
本発明に係るエンジン100は、可変動弁12、およびピストン13のストロークを可変とせしめる機構(クランクシャフト14、コントロールシャフト31など)を備える。本発明に係るECU1は、触媒暖機運転モードを実施する際に、点火時期IGNと実圧縮比RCRを同調させて制御する。点火時期IGNを制御することにより排気温度を制御して触媒活性化を促進するとともに、実圧縮比RCRを制御することにより燃焼室17内温度を制御してPM/PNを抑制することができる。
【0070】
本発明に係るECU1は、触媒暖機運転モードを実施する際に、点火時期IGNの上死点に対する遅角量を増加させることにともなって、実圧縮比RCRを増加させる。これにより、点火時期IGNを遅角させて触媒を昇温させつつ、燃焼室17内温度が低下することを抑制できる。
【0071】
本発明に係るECU1は、可変動弁12の開閉時期を可変制御することにより実圧縮比RCRを制御し、またはピストン13のストロークを可変制御することにより実圧縮比RCRを制御する。これにより、実圧縮比RCRを制御する手段を2以上設けることができる。
【0072】
本発明に係るECU1は、可変動弁12の吸気弁閉時期を下死点へ近付けることにより実圧縮比RCRを制御し、またはピストン13のストロークを増加させることにより実圧縮比RCRを制御する。これにより、燃焼室17内温度を上昇させてPM/PNを低減することができる。
【0073】
本発明に係るECU1は、エンジン100の停止時における実圧縮比、またはエンジン100の完爆時における実圧縮比と比較して、触媒暖機運転モードを実施する際における実圧縮比RCRを増加させる。これにより、エンジン100の停止から完爆までの期間において、無用な可変動弁制御とピストンストローク制御をする必要がなくなる。したがって、これら制御のためアクチュエータを動かすのに必要なエネルギを節約できる。
【0074】
本発明に係るECU1は、触媒暖機運転モードが完了した後、またはエンジン100の温度が所定以上である場合(図3Bの例におけるTW>TL)は、点火時期IGNの上死点に対する進角量の増加に応じて実圧縮比RCRを増加させる。これにより、燃焼室17内温度を上昇させてエンジン100の熱効率を増加させ燃費を改善できる。
【0075】
本発明に係るエンジン100を搭載する自動車は、路面に対する当該自動車の傾斜角を計測するGセンサ32を備える。ECU1は、当該自動車の傾斜角が所定以上である場合は、触媒暖機運転モードを実施する際に、点火時期IGNの上死点に対する遅角量を増加させることにともなって、可変動弁12の吸気弁閉時期を下死点に近付けるとともに、可変動弁12の排気弁閉時期を上死点から遠ざける。これにより、自動車の傾斜角が大きくブレーキシステムに対する負圧要求が大きいとき、排気弁閉時期を上死点から遠ざけて燃焼室17内の残留ガスの掃気性を改善し、エンジン100の発生する負圧を増加させることができる。したがって、触媒暖機運転モードによる触媒昇温とPM/PN抑制を図るとともに、ブレーキシステムが用いる負圧を確保することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:ECU
2:アクセルペダル開度センサ
3:エアフロセンサ
4:吸気温湿度センサ
5:スロットル
6:タンブル弁
7:インジェクタ
8:燃料ポンプ
9:コモンレール
10:燃料配管
11:吸気管
12:可変動弁
13:ピストン
14:クランクシャフト
15:クランク角センサ
16:ノックセンサ
17:燃焼室
18:冷却水温センサ
19:点火プラグ
20:点火コイル
21:圧力センサ(またはイオン電流センサ)
22:排気管
23:三元触媒
24:排気温センサ
25:空燃比センサ
26:EGR弁
27:EGRクーラ
28:排気還流管
29:冷却水ポンプ
30:冷却水流路切替弁
31:コントロールシャフト
32:Gセンサ
100:エンジン
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10