特許第6446565号(P6446565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446565
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】車両用スタビライザ
(51)【国際特許分類】
   B60G 21/055 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B60G21/055
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-543589(P2017-543589)
(86)(22)【出願日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2016078910
(87)【国際公開番号】WO2017057627
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2017年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-196909(P2015-196909)
(32)【優先日】2015年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康晴
(72)【発明者】
【氏名】越多 義宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 暁史
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−189892(JP,A)
【文献】 特開2007−307511(JP,A)
【文献】 特開昭53−110640(JP,A)
【文献】 特開昭64−47464(JP,A)
【文献】 特開2000−255624(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102014004871(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011055980(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B05B 1/00−17/08
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の鋼材(30)からなり、車両の幅方向に延びるトーション部(25)と、該トーション部(25)の両端からそれぞれ曲がり部(26,27)を介して連なる一対のアーム部(28,29)とを有したスタビライザ本体(20)と、
前記スタビライザ本体(20)の両端に形成され、それぞれ平坦な締結面(31,32)と該締結面(31,32)に開口する貫通孔(33,34)とを有する一対の目玉部(21,22)と、
前記スタビライザ本体(20)の表面を被覆する本体塗装膜(60)と、
前記各目玉部(21,22)の表面を被覆し前記本体塗装膜(60)よりも厚さが小さい目玉塗装膜(61)と、
前記貫通孔(33,34)の内面を被覆する内面塗装膜(62)と、
前記貫通孔(33,34)の内面の周方向の一部で、前記スタビライザ本体(20)の側面視において前記貫通孔(33,34)の中心(C1)と前記スタビライザ本体(20)の重心(G1)とを結ぶ直線(L1)の延長線(L2)上に位置する不完全塗装部(63)と、
を具備したことを特徴とする車両用スタビライザ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用スタビライザにおいて、
前記不完全塗装部(63)の塗装膜の厚さが前記内面塗装膜(62)の厚さよりも小さいことを特徴とする車両用スタビライザ。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用スタビライザにおいて、
前記不完全塗装部(63)に、前記鋼材(30)の表面の一部が露出した鋼材露出部(63a)を有していることを特徴とする車両用スタビライザ。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用スタビライザにおいて、
前記不完全塗装部(63)に、前記鋼材(30)の表面の一部が露出した鋼材露出部(63a)を有していることを特徴とする車両用スタビライザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両の懸架機構部に配置される車両用スタビライザに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の懸架機構部に配置されるスタビライザは、鋼管あるいは中実の棒状の鋼材からなる。スタビライザは、車両の幅方向に延びるトーション部(ねじり部)と、トーション部の両端に曲がり部を介して連なる一対のアーム部(腕部)とを有している。各アーム部の先端に、それぞれ目玉部が形成されている。懸架機構部の一例では、スタビライザのトーション部がゴムブッシュ等を介して車体に支持される。目玉部はスタビリンク等の接続部材を介してサスペンションアーム等に連結される。懸架機構部に組付けられたスタビライザは、車体のローリング挙動に対して前記アーム部や曲がり部およびトーション部がばねとして機能することにより、車両のロール剛性を高めることができる。
【0003】
例えば特許文献1に記載されている中空スタビライザは、鋼管の両端部を潰すことにより一対の目玉部が形成されている。目玉部にはそれぞれ平坦な形状の締結面が形成され、各々の締結面に貫通孔が形成されている。貫通孔にボルトやスタビリンク等の接続部材が挿入される。この接続部材を介して目玉部がサスペンションアーム等の懸架機構部材に接続される。
【0004】
特許文献2に記載されたスタビライザの製造方法の一例では、鋼管からなるスタビライザの表面に塗装工程によって塗装膜が形成されている。塗装工程の一例は、粉体塗料を用いる静電乾式吹付塗装あるいは流動浸漬塗装である。この塗装により、鋼管の表面にほぼ均一の厚さで塗装膜が形成されている。特にスタビライザ本体(トーション部と曲がり部とアーム部)の鋼材表面は、なるべく均一な厚さとなるように形成された塗装膜によって覆われている。従来の塗装工程では、スタビライザの両端の目玉部のうち一方の目玉部を吊下げ金具で支持し、スタビライザの自重により鉛直の姿勢で吊下げる「片目玉吊り」が通例であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−237428号公報
【特許文献2】特開2002−331326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スタビライザの塗装工程において、粉体塗料がスプレイノズルによってスタビライザに向けて吹付けられると、粉体塗料の一部が目玉部の貫通孔の内側に入り込む。このため、貫通孔の内面に目玉部外面とほぼ同様の塗装膜が形成される。例えば、片方の目玉部を吊下げ金具で支持し、スタビライザの自重により鉛直の姿勢となるように吊下げた状態(片目玉吊り)で塗装が行われることがある。その場合、下側の目玉部は吊下げ金具に接しないため、下側の目玉部にはほぼ均一の塗装膜が形成される。これに対し上側の目玉部は吊下げ金具が接するため、目玉部の不特定の箇所に、塗料が付着しない個所が生じる。つまり両端の目玉部のうち片方の目玉部のみに吊下げ金具が接した痕跡が残る。スタビライザを鉛直の姿勢となるように吊下げた状態(片目玉吊り)で塗料を吹付けると、噴射された粉体塗料が上から下に流れる傾向がある。このため、下側の目玉部の塗装膜の厚さが上側の目玉部の塗装膜の厚さよりも大きくなってしまう。これらの理由により、一方の目玉部と他方の目玉部とで塗装膜の厚さが異なってしまい、塗装品質に悪影響が生じる。
【0007】
前記塗装工程以外にも、スタビライザの製造過程あるいは保管のために、一方の目玉部に吊下げ金具を挿入し、自重によってスタビライザを吊下げた状態(片目玉吊り)でスタビライザが扱われることがある。しかし塗装後のスタビライザを片目玉吊り状態にすると、その目玉部の不特定の位置に、塗装膜に吊下げ金具が接したことによる痕跡(傷)が残ることがある。このような痕跡はスタビライザの使用に際して実用上の問題は無いとしても、目玉部の不特定の位置に痕跡(傷)が残ることは、極上の品質のスタビライザを製造することを使命と考える当業者にとって好ましいことではなかった。
【0008】
従って本発明の目的は、両端に目玉部を有する車両用スタビライザの塗装膜を好ましい状態に保つことができ、より高品質の車両用スタビライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態に係る車両用スタビライザは、スタビライザ本体と、一対の目玉部と、前記スタビライザ本体の表面を被覆する本体塗装膜と、前記各目玉部の表面を被覆し前記本体塗装膜よりも厚さが小さい目玉塗装膜と、内面塗装膜と、不完全塗装部とを具備している。前記スタビライザ本体は、棒状の鋼材(鋼管あるいは中実の鋼棒)からなり、車両の幅方向に延びるトーション部と、該トーション部の両端からそれぞれ曲がり部を介して連なる一対のアーム部とを有している。前記目玉部は、前記スタビライザ本体の両端に形成され、それぞれ平坦な締結面と、該締結面に開口する貫通孔とを有している。前記内面塗装膜は、前記貫通孔の内面を被覆している。前記不完全塗装部は、前記貫通孔の内面の周方向の一部で、前記スタビライザ本体の側面視において前記貫通孔の中心と前記スタビライザ本体の重心とを結ぶ直線の延長線上に位置している。本実施形態において、前記不完全塗装部の塗装膜の厚さが前記内面塗装膜の厚さよりも小さくてもよい。あるいは前記不完全塗装部に、前記鋼材の表面の一部が露出した鋼材露出部を有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
スタビライザの製造工程等において、スタビライザの両端の目玉部にそれぞれフック部材を掛け、自重によりスタビライザを吊下げる。そうすると、各目玉部の内面の特定の箇所(スタビライザ本体の側面視において目玉部の貫通孔の中心とスタビライザ本体の重心とを結ぶ直線の延長線上)にそれぞれフック部材が接触する。塗装されたスタビライザは、各目玉部の内面の前記特定の箇所に不完全塗装部を有しているため、スタビライザの不特定の箇所に傷等の痕跡が残ることがなく、スタビライザの塗装膜を好ましいものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、車両の一部とスタビライザを示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るスタビライザの正面図である。
図3図3は、図2に示されたスタビライザの側面図である。
図4A図4Aは、図2に示されたスタビライザの目玉部の斜視図である。
図4B図4Bは、不完全塗装膜の他の例を示す目玉部の斜視図である。
図5図5は、第2の実施形態に係るスタビライザの正面図である。
図6図6は、図5に示されたスタビライザの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に第1の実施形態に係る車両用スタビライザについて、図1から図4Aを参照して説明する。
図1は、車両用スタビライザ(この明細書では単にスタビライザと称することもある)10を備えた車両11の一部を示している。スタビライザ10は、車両11の懸架機構部に配置されている。図2は、塗装工程におけるスタビライザ10の一例を示す正面図である。図3は、図2に示されたスタビライザ10の側面図(側面視)である。このスタビライザ10は、対称軸X1(図2に示す)に関して左右対称形となっている。
【0013】
スタビライザ10は、棒状の鋼材からなるスタビライザ本体20と、スタビライザ本体20の両端に一体に形成された一対の目玉部21,22とを含んでいる。スタビライザ本体20は、トーション部25と、アーム部28,29とを含んでいる。トーション部25は、車体12の幅方向(図1に矢印Wで示す方向)に延びている。アーム部28,29は、それぞれ、トーション部25の両端から曲がり部26,27を介して連なっている。
【0014】
スタビライザ10は平面的な形状に限ることはなく、3次元的な曲げ形状も含めて、トーション部25に1箇所以上の曲げ部、あるいはアーム部28,29に1箇所以上の曲げ部を有していてもよい。また、曲がり部26,27が3次元的な曲げ形状を有していてもよいなど、種々な曲げ形状に成形されてもよい。
【0015】
本実施形態のスタビライザ10は中空スタビライザである。このため材料は中空の鋼材(鋼管)30であり、曲げ加工機によって所定の形状に成形されている。鋼材30の一例は、焼入れ等の熱処理によって強度を向上させることのできる鋼種、例えば材質ASB25N等の鋼管である。鋼材30の両端(アーム部28,29の先端)を潰すことにより、目玉部21,22が形成されている。なお、他の実施形態として中実のスタビライザの場合には、材料に中実の鋼製のロッドが使用される。
【0016】
目玉部21,22には、塑性加工(プレス)や機械加工によって成形された平坦な形状の締結面31,32と、円形の貫通孔33,34とが形成されている。この明細書で言う目玉部21,22とは、貫通孔33,34の周りに形成された締結面31,32を含む略円形の領域である。貫通孔33,34は目玉部21,22を厚さ方向に貫通し、締結面31,32に開口している。
【0017】
貫通孔33,34にボルトあるいはスタビリンク等の接続部材40,41(図1に示す)が挿入される。接続部材40,41は、ナット等の固定用の部材によって締結面31,32に固定される。アーム部28,29は、それぞれ、接続部材40,41を介して、例えば懸架機構部のサスペンションアームに接続される。
【0018】
トーション部25は、ゴムブッシュ等を備えた一対の支持部42,43(図1に示す)を介して、例えば車体12の一部(クロスメンバ等)に支持される。車両11がカーブを走行する際などにアーム部28,29に互いに逆相の力が入力する。そうすると、アーム部28,29に曲げの力がかかるとともに、曲がり部26,27に曲げとねじりの力がかかる。その結果、トーション部25がねじられて反発荷重が発生することにより、車体12のローリング挙動が抑制される。
【0019】
スタビライザ10の表面に塗装が施されている。この塗装は、鋼材30の防錆を主たる目的としかつ外観品質も考慮される。塗装は、スタビライザ10の製造工程において、例えば粉体静電塗装(静電乾式吹付法)によって行われる。例えば図2に模式的に示すように、スプレイノズル50からエアと共に噴出する粉体塗料51を、被塗装物であるスタビライザ10に吹付ける。
【0020】
粉体塗料51は、高分子樹脂からなる塗料粒(固体)と顔料(例えば黒色顔料)とを主成分とし、有機溶剤は含まない。粉体静電塗装では、高圧直流電源の一方の電極が鋼材30に接続される。粉体塗料51を加圧空気と共にスプレイノズル50からスタビライザ10に向けて噴出させる。噴出した粉体塗料51は、スプレイノズル50に配置された他方の電極によって帯電する。帯電した粉体塗料51は静電力によって鋼材30に付着する。粉体塗料51が付着したスタビライザ10を加熱炉内に入れ、粉体塗料51を高温で焼付ける。こうすることにより塗料に硬化反応が生じ、平滑化された強固な塗装膜が鋼材30の表面に定着する。
【0021】
図4Aに一方の目玉部21が示されている。他方の目玉部22も同様の形状である。これら目玉部21,22は対称軸X1(図2に示す)に関して左右対称形であるため、これ以降は図4Aに示された一方の目玉部21を代表して説明する。
【0022】
塗装されたスタビライザ10は、図4Aに示されるように、本体塗装膜60と、内面塗装膜62と、不完全塗装部63とを有している。本体塗装膜60は、スタビライザ本体20の表面を被覆している。目玉塗装膜61は、目玉部21の表面を被覆している。内面塗装膜62は、貫通孔33の内面を被覆している。不完全塗装部63は、貫通孔33の内面の周方向の一部に形成されている。目玉塗装膜61と内面塗装膜62の厚さは、それぞれ、例えば10〜20μmである。本体塗装膜60の厚さは、例えば40〜120μmである。目玉塗装膜61と内面塗装膜62の厚さは、いずれも本体塗装膜60の厚さよりも小さい。内面塗装膜62の厚さは目玉塗装膜61の厚さ以下である。
【0023】
図3に示されるようにスタビライザ10の側面視において、貫通孔33の中心C1とスタビライザ本体20の重心G1とを結ぶ仮想の直線をL1とする。不完全塗装部63は、この仮想の直線L1の延長線L2上に位置している。前記塗装工程において、目玉部21,22がフック部材70,71(図2に示す)によって支持されると、スタビライザ10が自重により吊下がる。この状態のもとで、直線L1と延長線L2とは、それぞれ、重心G1を通る重力の方向G2(鉛直線)と一致する。
【0024】
不完全塗装部63は、スタビライザ10の塗装工程において、スタビライザ10を支持するフック部材70,71(図2に示す)を利用して形成することができる。フック部材70,71は目玉部21,22の貫通孔33,34に挿入され、貫通孔33,34の内面に接する。
【0025】
塗装ロボットを用いる粉体静電塗装等によってスタビライザ10の全体に塗装が行われると、本体塗装膜60と目玉塗装膜61に共通の塗料が付着する。この吹付けの際に、目玉塗装膜61に塗料を吹付ける時間を、本体塗装膜60に塗料を吹付ける時間よりも短くする。こうすることにより、目玉塗装膜61の厚さを本体塗装膜60の厚さよりも小さくすることができる。
【0026】
目玉部21,22に塗料を吹付ける際に、貫通孔33,34の内面にも同じ塗料が入り込むため、貫通孔33,34の内面に内面塗装膜62が形成される。貫通孔33,34の内面の最上部にフック部材70,71が接している。このため、フック部材70,71が接した箇所の近傍は塗料の付着量が少ないことにより、不完全塗装部63が形成される。不完全塗装部63の存在は目視により確認することができる。フック部材70,71が接した個所では、局部的に塗料が付着しないことがある。その場合、図4Bに示すように、不完全塗装部63の一部に、鋼材30の表面の一部が露出した鋼材露出部63aが形成されることもある。
【0027】
両端の目玉部21,22を同時に吊ることにより、スタビライザ10を水平な姿勢(トーション部25が水平面H1に沿う姿勢)で両端支持することができる。このため塗装工程において目玉部21,22の高さが互いに同等となる。よって、スプレイノズル50からスタビライザ10に向けて噴霧された粉体塗料51の気流が上から下に流れたとしても、各目玉部21,22にほぼ均等に粉体塗料51を触れさせることができる。このため一方の目玉部21と他方の目玉部22とで目玉塗装膜61の厚さが不均一になることを回避できる。また、スタビライザ本体20の全長にわたって本体塗装膜60の厚さのばらつきを小さくすることができる。
【0028】
何らかの理由により、塗装後のスタビライザ10を吊下げる必要が生じることがある。その場合、図2図3に示すように、塗装工程と同様に両端の目玉部21,22の貫通孔33,34にフック部材70,71を挿入した状態のもとで、スタビライザ10を自重により吊下げる。すなわちトーション部25が水平面H1に沿うようにスタビライザ10を両端吊りの状態で保持することができる。
【0029】
このように両端の目玉部21,22を支持した状態のもとでスタビライザ10が吊持されると、図3に示すように貫通孔33,34の中心C1と重心G1とを結ぶ線分L1が重力の方向G2と一致する。すなわちフック部材70,71Gが貫通孔33,34の内面の最上部に接する。このため目玉部21,22の特定位置(不完全塗装部63)にフック部材70,71を接触させることができる。よって、目玉部21,22にフック部材70,71が接した痕跡(傷)が残らず、塗装されたスタビライザの塗装膜を好ましい状態に保つことができ、高品質の証ともなる。
【0030】
本実施形態では、両端の目玉部21,22をフック部材70,71によって同時に支持することにより、スタビライザ10をおおむね水平な姿勢で吊ることができる。この支持形態(両端吊り)によれば、従来のように片方の目玉部によってスタビライザを鉛直の姿勢で吊る場合(片目玉吊り)と比較して、スタビライザ10が揺れたときの揺れ量が小さい。このため安定した状態でスタビライザ10を保持することができる。
【0031】
図5図6は第2の実施形態のスタビライザ10´を示している。このスタビライザ10´は、第1の実施形態のスタビライザ10と同様に、スタビライザ本体20と、一対の目玉部21,22とを有している。目玉部21,22には、それぞれ、平坦な締結面31,32と貫通孔33,34とが形成されている。またこのスタビライザ10´は、第1の実施形態と同様に、スタビライザ本体20の表面を被覆する本体塗装膜60と、目玉部21,22の表面を被覆する目玉塗装膜61と、貫通孔33,34の内面を被覆する内面塗装膜62と、不完全塗装部63とを有している。不完全塗装部63は、貫通孔33,34の内面の周方向の一部に形成されている。この不完全塗装部63は、スタビライザ本体20の側面視(図6)において、貫通孔33,34の中心C1とスタビライザ本体20の重心G1とを結ぶ直線L1の延長線L2上に位置している。
【0032】
図5に示すように、目玉部21,22の貫通孔33,34にフック部材70,71が挿入される。スタビライザ10´が自重によって吊下がると、トーション部25が水平面H1に沿うように両端吊りの姿勢でスタビライザ10´が吊持される。このため第1の実施形態のスタビライザ10と同様に、揺れ量が小さく安定した状態で、スタビライザ10´を保持することができる。しかも目玉部21,22の貫通孔33,34にフック部材70,71が挿入された状態でスタビライザ10´が自重によって吊持される。こうすることにより、目玉部21,22の特定位置(不完全塗装部63)にフック部材70,71を接触させることができる。このため目玉部21,22の外面等の不特定の箇所にフック部材70,71が接した痕跡が残らず、塗装されたスタビライザの塗装膜を保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明を実施するに当たり、スタビライザの材料である鋼材は中空材(鋼管)以外に中実材であってもよい。また静電乾式塗装以外の塗装手段(例えば流動浸漬塗装)によって塗装膜が形成されてもよい。またスタビライザ本体や目玉部の具体的な形状や配置等を車両に応じて種々に変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10,10´…スタビライザ、20…スタビライザ本体、21,22…目玉部、25…トーション部、26,27…曲がり部、28,29…アーム部、30…鋼材、31,32…締結面、33,34…貫通孔、60…本体塗装膜、61…目玉塗装膜、62…内面塗装膜、63…不完全塗装部、63a…鋼材露出部、70,71…フック部材、C1…貫通孔の中心、G1…重心、L1…貫通孔の中心と重心とを結ぶ直線、L2…延長線。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6