特許第6446589号(P6446589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6446589-転倒防止装置 図000002
  • 特許6446589-転倒防止装置 図000003
  • 特許6446589-転倒防止装置 図000004
  • 特許6446589-転倒防止装置 図000005
  • 特許6446589-転倒防止装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6446589
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   A47B97/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-149913(P2018-149913)
(22)【出願日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年9月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】武井 元
(72)【発明者】
【氏名】小西 聖英
(72)【発明者】
【氏名】何 佳欧
(72)【発明者】
【氏名】浦西 浩太
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−036446(JP,A)
【文献】 特開2008−206716(JP,A)
【文献】 特開2002−355135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
A47F 5/00、5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開口した有底筒状のシリンダ、前記シリンダ内に摺動自在に収容されたピストン、先端側が前記シリンダの外部へ突出すると共に基端部が前記ピストンに連結されたロッド、及び前記ロッドが摺動自在に挿通されると共に前記シリンダの前記開口を封鎖するロッドガイドを有し、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に傾斜して取り付けられ、収縮時に減衰力を発生して伸長方向に付勢力を発生するダンパと、
前記天井側に位置する前記ダンパの端部に揺動自在に連結され、前記天井に当接する第1ベース部と、
上方から見た平面視において、前記ダンパの軸線方向に対し直交する方向の前記ダンパの揺動を規制する揺動規制部と、
前記物品の上面側に位置する前記ダンパの端部に前記軸線方向に移動自在に一端部が連結され、前記軸線を中心に前記ダンパから前記物品に向けて互いの間が拡がって延びる一対の支持部材と、
一対の前記支持部材の他端部に揺動自在に連結され、前記物品の上面に当接する第2ベース部と、
を備え、
上方から見た平面視において、一対の前記支持部材の他端を通る仮想線が、前記揺動規制部が規制する方向に平行に延びるように前記第2ベース部が配置され、
前記仮想線が延びる方向の一方向に前記物品が傾いたときに、他方側の前記支持部材が前記ダンパを収縮させ、
前記仮想線が延びる方向の他方向に前記物品が傾いたときに、一方側の前記支持部材が前記ダンパを収縮させることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記揺動規制部は、前記設置面から上方に延びて前記物品の一側面が対向した壁部、又は前記天井に連結される連結部を有することを特徴とする請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記シリンダは外周面から突出して形成された突起部を有し、
前記揺動規制部は、前記連結部に上下方向に回動自在に連結され、前記突起部を挿通し、前記軸線に交差する方向に延びた第1長孔が形成された規制部本体を有していることを特徴とする請求項2に記載の転倒防止装置。
【請求項4】
前記第1ベース部は前記揺動規制部を有していることを特徴とする請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項5】
前記ダンパは、前記物品の上面側に位置する前記ダンパの端部に前記軸線方向に延びた一対の第2長孔が形成され、
前記支持部材は、一端部に前記第2長孔に挿入される挿入部を有し、
前記設置面上に設置された前記物品の上面と、前記天井との間に設置された状態において、前記挿入部が前記第2長孔の上端縁に当接することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の転倒防止装置。
【請求項6】
前記支持部材を前記第2長孔の上端縁から下端縁に向けて付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項5に記載の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の転倒防止装置を開示している。この転倒防止装置は、伸縮して減衰力を発生する一対のダンパが交差して連結され、各ダンパの伸縮方向の両端部のそれぞれにベース部が連結されている。この転倒防止装置は床面上に設置された物品である家具の上面と天井との間に取り付けられる。この際、この転倒防止装置は、上方から見た平面視において、一対のダンパの下端部に連結された2個の下側のベース部が並んだ方向に対して直交する同じ方向のずれた位置に各ダンパの上端部に連結された2個の上側のベース部を並べて取り付ける。このようにこの転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けられることにより、この転倒防止装置は、各ダンパが延びている方向の水平成分に沿った2方向の家具の傾きに対して、各ダンパの減衰力を作用させて家具の傾きを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−169853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の転倒防止装置は、揺れ方向が複合的な地震等に対して、取り付け状態を維持し、物品の傾きを防止するために複数のダンパを用いることになりコストがかかる。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、1つのダンパを用いて揺れ方向が複合的な地震等に対して、取り付け状態を維持し、物品が傾くことを防止する転倒防止装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転倒防止装置は、ダンパ、第1ベース部、揺動規制部、一対の支持部材、及び第2ベース部を備えている。ダンパは、シリンダ、ピストン、ロッド、及びロッドガイドを有している。シリンダは一端側が開口した有底筒状である。ピストンはシリンダ内に摺動自在に収容されている。ロッドは先端側がシリンダの外部へ突出すると共に基端部がピストンに連結されている。ロッドガイドはロッドが摺動自在に挿通されると共にシリンダの開口を封鎖している。このダンパは設置面上に設置された物品の上面と天井との間に傾斜して取り付けられる。また、このダンパは収縮時に減衰力を発生して伸長方向に付勢力を発生する。第1ベース部は、天井側に位置するダンパの端部に揺動自在に連結され、天井に当接する。揺動規制部は、上方から見た平面視において、ダンパの軸線方向に対し直交する方向のダンパの揺動を規制する。一対の支持部材は物品の上面側に位置するダンパの端部にダンパの軸線方向に移動自在に一端部が連結されている。また、一対の支持部材はダンパの軸線を中心にダンパから物品に向けて互いの間が拡がって延びている。第2ベース部は、一対の支持部材の他端部に揺動自在に連結され、物品の上面に当接する。また、この転倒防止装置は、上方から見た平面視において、一対の支持部材の他端を通る仮想線が、揺動規制部が規制する方向に平行に延びるように第2ベース部が配置される。また、この転倒防止装置は、上方から見た平面視において、仮想線が延びる方向の一方向に物品が傾いたときに、他方側の支持部材がダンパを収縮させ、仮想線が延びる方向の他方向に物品が傾いたときに、一方側の支持部材がダンパを収縮させる。
【0007】
この転倒防止装置は、ダンパが設置面上に設置された物品の上面と天井との間に傾斜して取り付けられている。このため、上方から見た平面視において、ダンパの軸線が延びている方向の一方向に物品が傾くと、ダンパが収縮し、発生した減衰力が物品に作用して物品の傾きを抑制することができる。
さらに、この転倒防止装置は、揺動規制部によってダンパの軸線方向に対し直交する方向のダンパの揺動が規制され、一対の支持部材が、物品の上面側に位置するダンパの端部に軸線方向に移動自在に一端部が連結され、ダンパの軸線を中心に軸対称にダンパから物品に向けて互いの間が拡がって延びている。このため、この転倒防止装置は、一対の支持部材のそれぞれの他端を通る仮想線が延びる方向の一方向に物品が傾くと、他方側の支持部材によってダンパが収縮され、発生した減衰力が物品に作用して物品の傾きを抑制することができる。また、この転倒防止装置は、この仮想線が延びる方向の他方向に物品が傾くと、一方側の支持部材によってダンパが収縮され、発生した減衰力が物品に作用して物品の傾きを抑制することができる。
【0008】
したがって、本発明の転倒防止装置は1つのダンパを用いて揺れ方向が複合的な地震等に対して、取り付け状態を維持し、物品が傾くことを防止することができる。
【0009】
本発明の転倒防止装置の揺動規制部は、設置面から上方に延びて物品の一側面が対向した壁部、又は前記天井に連結される連結部を有し得る。この場合、一対の支持部材の他端を通る仮想線が延びる方向の物品の傾きを抑える際、上方から見た平面視において、一方の支持部材は、ダンパの軸線方向に交差する方向にダンパを押すことになる。この際、この転倒防止装置は、揺動規制部が連結部を介して壁部、又は天井に連結されているため、ダンパの軸線方向に直交する方向の揺動をより安定して抑えることができる。
【0010】
本発明の転倒防止装置のシリンダは外周面から突出して形成された突起部を有し得る。また、本発明の転倒防止装置の揺動規制部は、連結部に上下方向に回動自在に連結され、シリンダの突起部を挿通し、ダンパの軸線に交差する方向に延びた第1長孔が形成された規制部本体を有し得る。この場合、揺動規制部の規制部本体は、連結部に上下方向に回動自在に連結されており、シリンダの突起部が挿通する第1長孔を形成しているため、ダンパの伸縮に追従することができる。これにより、規制部本体がダンパの伸縮に追従しない場合に比べて、ダンパの伸縮動作を妨げず、ダンパの軸線方向に直交する方向の揺動をより良好に抑えることができる。
【0011】
本発明の転倒防止装置の第1ベース部は揺動規制部を有し得る。この場合、ダンパの軸線方向に直交する方向の揺動を第1ベース部が有する揺動規制部によって抑えることができ、より少ない部品点数でダンパの軸線方向に直交する方向の揺動を抑えることができる。
【0012】
本発明の転倒防止装置のダンパは、物品の上面側に位置するダンパの端部に軸線方向に延びた一対の第2長孔が形成され得る。また、本発明の転倒防止装置の支持部材は、一端部に第2長孔に挿入される挿入部を有し、設置面上に設置された物品の上面と、天井との間に設置された状態において、挿入部が第2長孔の上端縁に当接し得る。この場合、転倒防止装置が物品の上面と、天井との間に設置された状態において、挿入部が第2長孔の上端縁に当接する。このため、この転倒防止装置は、物品が一対の支持部材のそれぞれの他端を結ぶ仮想線が延びる方向の一方向に傾くと、他方側の支持部材の挿入部が第2長孔の上端縁に当接した状態を維持し、揺動規制部によって揺動が規制されたダンパを収縮させる。そして、一方側の支持部材の挿入部は、第2長孔の下端部に向けて移動するため、ダンパの収縮に寄与しない。また、同様に、この転倒防止装置は、物品が一対の支持部材のそれぞれの他端を結ぶ仮想線が延びる方向の他方向に傾くと、一方側の支持部材がダンパを収縮させ、他方側の支持部材はダンパの収縮に寄与しない。つまり、この転倒防止装置は、物品が一対の支持部材のそれぞれの他端を通る仮想線が延びる方向のいずれかの方向に傾いた際、ダンパの減衰力が物品に作用して物品の浮き上がりを抑えることによって物品の傾きを抑えることができる。
【0013】
本発明の転倒防止装置は、支持部材を第2長孔の上端縁から下端縁に向けて付勢する付勢部材を備え得る。この場合、この転倒防止装置は、物品が一対の支持部材のそれぞれの他端を結ぶ仮想線が延びる方向に傾いた際に付勢部材の付勢力によって挿入部が第2長孔の下端側に向けて移動し、ダンパの収縮に寄与しない支持部材に連結された第2ベース部が物品の上面に当接した状態を維持する。このため、この転倒防止装置は、地震等の揺れによって物品の傾く方向が変化しても、物品の上面における第2ベース部の位置ずれが生じ難く、物品の転倒を防止することができる。
【0014】
ここで、物品とは、家具、複数の寝台を上下方向に連結したベッド、大型テレビ、冷蔵庫、書棚、ショーケース、サーバーラック等、地震の揺れ等によって転倒するおそれのあるものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図2】実施形態1の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す正面図である。
図3】実施形態1の転倒防止装置が取り付けられた家具が一対の支持部材の他端を通る仮想線が延びる方向の一方側に傾いた状態を示す正面図である。
図4】実施形態2の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図5】実施形態3の転倒防止装置の第1ベース部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の転倒防止装置を具体化した実施形態1〜3について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<実施形態1>
実施形態1の転倒防止装置は、図1に示すように、図示しない床面(設置面)上に設置された家具(物品)Fの上面1Uと天井Cとの間に1個の転倒防止装置が取り付けられる(上下は、図1における、上下である。)。家具Fは床面から鉛直方向に延びた壁部Wに背面を対向させて床面上に設置されている。また、この家具Fは、直方体形状であり、正面(図1における右側面)に図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具Fは、地震等の揺れによって前方向(図1における右方向)や左右方向(図1における手前方向及び置く方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0018】
転倒防止装置は、図1図3に示すように、ダンパ10、一対の支持部材20、一対の付勢部材21、第1ベース部30A、一対の第2ベース部30B、及び揺動規制部70を備えている。ダンパ10は、シリンダ11、ロッドガイド12、図示しないピストン、ロッド13、第1ジョイント部15、及び第2ジョイント部16を有している。
【0019】
シリンダ11は一端が開口した有底の円筒形状をなしている。ロッドガイド12はシリンダ11の開口部を封鎖している。ピストンはシリンダ11内に摺動自在に収容されている。ロッド13は基端部にピストンが連結されている。また、ロッド13は、シリンダ11の開口を封鎖するロッドガイド12に摺動自在に挿通され、先端側がシリンダ11の外部へ突出している。このロッド13はシリンダ11の軸方向に往復移動自在である。このダンパ10はシリンダ11内に作動流体及び圧縮ガスを封入した流体圧式ダンパである。
【0020】
第1ジョイント部15は、図1及び図2に示すように、平板状の金具を折り曲げて形成されている。第1ジョイント部15はロッド13の先端部に接続されている。第1ジョイント部15はダンパ10の軸線に直交する方向に貫通した貫通孔15Aが形成されている(図2参照。)。
【0021】
また、第1ジョイント部15にはブッシュ35が取り付けられている。ブッシュ35は略円筒状である。ブッシュ35は弾性体である。ブッシュ35は中央部の外周面の周方向にわたって溝が形成されている(図示せず。)。溝の外径は第1ジョイント部15の貫通孔15Aの内径より僅かに小さい。また、溝の両端から立ち上がった部分の外径は第1ジョイント部15の貫通孔15Aの内径より大きい(図2参照。)。また、ブッシュ35の両端部の外周面35Bは外方向に縮径している(図2参照。)。ブッシュ35は弾性変形させながら第1ジョイント部15の貫通孔15Aに挿入される。そして、貫通孔15Aの内周縁部がブッシュ35の溝に嵌まり込み、ブッシュ35は第1ジョイント部15に取り付けられる。
【0022】
第2ジョイント部16は平板状の金具を折り曲げて形成されている。第2ジョイント部16はシリンダ11の底部に接続されている。第2ジョイント部16はダンパ10の軸線に平行に平板状に拡がる平板部16Aを具備している。平板部16Aにはダンパ10の軸線を中心にして軸対称に、板厚方向に貫通して一対の第2長孔16Bが形成されている。これら第2長孔16Bはダンパ10の軸線方向に延びている。つまり、ダンパ10はダンパ10の軸線方向に延びた一対の第2長孔16Bが形成されている。
【0023】
また、第2ジョイント部16には一対のばね係止部16Cが設けられている。これらばね係止部16Cは、平板部16Aのシリンダ11から離隔した側の端部に、ダンパ10の軸線を中心にして軸対称に配置されている。各ばね係止部16Cは平板部16Aの端部からシリンダ11から離れる方向に延びている。また、各ばね係止部16Cは先端部に平板部16Aに直交する方向に屈曲した屈曲部16Dが設けられている。各屈曲部16Dの先端部は、ばね係止部本体16Eが設けられている。ばね係止部本体16Eは、シリンダ11側に膨らんで湾曲しており、先端部がシリンダ11から離れる方向に延びている。
【0024】
ダンパ10は収縮動作時に発生する減衰力が伸長動作時に発生する減衰力よりも大きい圧効きダンパである。ここで、ダンパ10の伸長動作とは、シリンダ11からロッド13の突出する長さ(ダンパ10の全長)が長くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10の収縮動作とは、シリンダ11からロッド13の突出する長さ(ダンパ10の全長)が短くなっていく動作を意味する。ダンパ10は、伸縮動作によってピストンが作動流体内を移動することにより減衰力を発生する。また、ダンパ10はシリンダ11に封入した圧縮ガスの膨張力により伸長方向に付勢力が付与されている。
【0025】
ダンパ10の減衰力が発生するメカニズムは、周知の構造であるため、図示を省略して説明する。シリンダ11は、内部がピストンによって、ロッド13の基端部が収納されているロッド側圧力室と、反ロッド側圧力室とに仕切られている。ピストンには両圧力室間を連通させる絞り弁であるオリフィスが形成されている。オリフィスは、ダンパ10の伸縮動作に伴うロッド側圧力室と反ロッド側圧力室との間の作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰力発生部として機能する。また、ピストンには逆止弁を介して両圧力室間を連通する連通路が形成されている。逆止弁は、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。このため、ダンパ10の伸長動作時は、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流路経路が、オリフィスと連通路の経路になる。一方、ダンパ10の収縮動作時は、反ロッド側圧力室からロッド側圧力室への作動油の流路経路がオリフィスのみとなる。このため、ダンパ10の伸長動作時に発生する減衰力は、収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0026】
一対の支持部材20は互いに同一の形状である。支持部材20は、支持部材本体20A、挿入部20B、及び球状部20Cを有している。支持部材本体20Aは一方向に延びて形成されている。挿入部20Bは略円柱状をなしている。挿入部20Bは、支持部材本体20Aの一方の端部に連結され、支持部材本体20Aが延びる方向に直交する方向に突出している。また、挿入部20Bは、鍔部20D、及び溝部20Eが形成されている。鍔部20Dは挿入部20Bの軸方向の中央部に鍔状に形成されている。溝部20Eは挿入部20Bの先端部の外周面に周方向にわたって窪んで形成されている。球状部20Cは、外形が球形状をなしており、支持部材本体20Aの他方の端部に連結されている。
【0027】
一対の支持部材20は支持部材本体20Aを第2ジョイント部16のばね係止部16Cの各屈曲部16Dが屈曲した方向とは反対側の平板部16Aの側面に沿うように配置されている。そして、各支持部材20は挿入部20Bを第2ジョイント部16の一対の第2長孔16Bの夫々に挿入して第2ジョイント部16に連結されている。第2ジョイント部16の平板部16Aは支持部材本体20Aと挿入部20Bに形成された鍔部20Dとで挟まれている(図1参照。)。これにより、各支持部材20は第2ジョイント部16から脱落しない。こうして、各支持部材20はダンパ10の端部であるシリンダ11の底部に連結された第2ジョイント部16にダンパ10の軸線方向に移動自在に一端部が連結されている。
【0028】
一対の付勢部材21は互いに同一の形状である。付勢部材21は、所謂、引張りコイルばねである。各付勢部材21は、一端側を支持部材20の挿入部20Bの溝部20Eに係止し、他端側を第2ジョイント部16のばね係止部16Cのばね係止部本体16Eに係止している。これにより、一対の支持部材20は、挿入部20Bを介してダンパ10の軸線に沿う方向であって、シリンダ11から離れる方向に、各付勢部材21によって付勢される。つまり、各付勢部材21は各支持部材20を第2長孔16Bの上端縁から下端縁に向けて付勢している。
【0029】
第1ベース部30Aは、ロッド13の先端部に接続された第1ジョイント部15に連結されている。第1ベース部30Aは天井Cに当接して配置される。第1ベース部30Aは、ベース部本体31、ボルト32、ナット33、及び滑り止め部34を有している。
【0030】
天井Cに当接した状態で第1ベース部30Aを下方から見た底面視において、ベース部本体31は長方形状の外形である(以下、この底面視におけるベース部本体31の外形において長辺が伸びている方向を「長辺方向」と言い、短辺が伸びている方向を「短辺方向」と言う。)。また、天井Cに当接した状態で第1ベース部30Aを短辺方向に見た側面視において、ベース部本体31は、上端縁が天井Cに平行に延びており、下端縁が上端縁の両側から下方に膨らんだ円弧状の外形である(図1参照。)。また、天井Cに当接した状態で第1ベース部30Aを長辺方向に見た側面視において、ベース部本体31は上端縁より下端縁が短い略台形状の外形である(図2参照。)。
【0031】
図2に示すように、天井Cに当接した状態の第1ベース部30Aにおいて、ベース部本体31の下側には長辺方向に延びた溝部31Aが形成されている。溝部31Aは、上面31Bが水平方向に拡がり、内壁面31Cが上面31Bの両側から下方向に延びている。溝部31Aの上面31Bはベース部本体31の上下方向のほぼ中央に位置している。また、溝部31Aの上面31Bの短辺方向の幅は一定に形成されている。
【0032】
溝部31Aの長辺方向の中央部には、溝部31Aの上面31B及び各内壁面31Cから突出した一対の凸部31Dが設けられている。これら凸部31Dの間にはダンパ10の第1ジョイント部15及びブッシュ35が嵌まり込む空間が形成されている。この空間は溝部31Aに連通している。各凸部31Dの内壁面同士の間隔はブッシュ35の軸方向の寸法よりも僅かに大きい。また、一対の凸部31Dの下部中央には後述するボルト32が挿通する挿通孔31Eが短辺方向に貫通している。
【0033】
天井Cに当接した状態の第1ベース部30Aにおいて、ベース部本体31は、長辺方向の中央部であって、溝部31Aを挟んだ左右両側に、一対の第1窪み部31Fが形成されている。これら第1窪み部31Fは下方向と短辺方向の外方向とに開口している。各第1窪み部31Fは凸部31Dを貫通した挿通孔31Eが開口している。各第1窪み部31Fは、後述するボルト32の頭部32Aと、ボルト32の他端部、及びボルト32の他端部に締め込まれたナット33とが配置される。各第1窪み部31Fは下方に向かうにつれて長辺方向に拡がるように形成されている(図1参照。)。
【0034】
ボルト32は、図1及び図2に示すように、ベース部本体31の一方の挿通孔31Eから他端部が挿入され、他方の挿通孔31Eから突出した他端部にナット33が締め込まれる。ブッシュ35は、内径がボルト32の軸部の外径よりも僅かに大きい。このため、ブッシュ35はボルト32の軸部周りに回動自在である。
【0035】
滑り止め部34は、ほぼ平板状をなし、ベース部本体31の外形に対して僅かに大きい相似形(長方形状)の外形である(図示せず。)。滑り止め部34はゴムや可撓性を有した熱可塑性樹脂等で形成される。また、滑り止め部34は、天井Cに当接した状態の第1ベース部30Aにおいて、ベース部本体31の上端に取り付けられる。滑り止め部34において、天井Cに当接する面が当接面34Aである。
【0036】
ダンパ10と第1ベース部30Aとは、ボルト32、及びナット33で連結されている。具体的には、ブッシュ35を取り付けたダンパ10の第1ジョイント部15がベース部本体31の一対の凸部31Dの間に挿入され配置される。そして、ボルト32の他端部側がベース部本体31の一方の挿通孔31E、ブッシュ35、及び他方の挿通孔31Eに挿通されて、他方の挿通孔31Eから突出したボルト32の軸部にナット33を締め込んで取り付けられる。
【0037】
ボルト32、及びナット33でダンパ10に連結された第1ベース部30Aはダンパ10に対して回動自在である。具体的には、ボルト32の外径よりも僅かに大きい中央部の内径のブッシュ35がボルト32に挿通されているため、第1ベース部30Aは、ブッシュ35が取り付けられた第1ジョイント部15を有したダンパ10に対して回動自在である。
【0038】
一対の第2ベース部30Bは互いに同一の形状である。第2ベース部30Bは、支持部材20の球状部20Cに連結されている。これら第2ベース部30Bは家具Fの上面1Uに当接して載置される。各第2ベース部30Bは、ベース部本体37、及び滑り止め部36を有している。
【0039】
家具Fの上面1Uに当接した状態で第2ベース部30Bを上方から見た平面視において、ベース部本体37は長方形状の外形である(以下、この平面視におけるベース部本体37の外形において長辺が伸びている方向も「長辺方向」と言い、短辺が伸びている方向も「短辺方向」と言う。)。また、家具Fの上面1Uに当接した状態で第2ベース部30Bを短辺方向に見た側面視において、ベース部本体37は、下端縁が前後方向に直線状に延びており、上端縁が下端縁の両側から上方に膨らんだ円弧状の外形である(図1参照。)。また、家具Fの上面1Uに当接した状態で第2ベース部30Bを長辺方向に見た側面視において、ベース部本体37は下端縁より上端縁が短い略台形状の外形である(図2参照。)。
【0040】
図1及び図2に示すように、家具Fの上面1Uに当接された状態の第2ベース部30Bにおいて、ベース部本体37の上側には第2窪み部37Aが形成されている。第2窪み部37Aは、ベース部本体37の円弧状をなした上端縁の中央部に下方向に窪んで形成されている。第2窪み部37Aの内周面の底部には球状に形成された球状面37Bが形成されている。また、第2窪み部37Aの内周面の上部には上方向に円錐状に拡がる傾斜面37Cが形成されている。第2窪み部37Aの球状面37Bには支持部材20の球状部20Cが嵌め込まれる。第2窪み部37Aの球状面37Bは支持部材20の球状部20Cを包み込むように支持部材20の球状部20Cの表面に当接している。これにより、第2ベース部30Bは支持部材20から脱落しない。また、第2窪み部37Aの傾斜面37Cの内径は支持部材20の支持部材本体20Aの外径より大きい。このため、第2ベース部30Bが第2窪み部37Aの傾斜面37Cに支持部材本体20Aの外周面が当接する範囲内で、第2ベース部30Bは支持部材20に対して揺動自在である。つまり、第2ベース部30Bは支持部材20の他端部に揺動自在に連結される。
【0041】
滑り止め部36は、第1ベース部30Aの滑り止め部34と同一である。滑り止め部36は、家具Fの上面1Uに当接された状態の第2ベース部30Bにおいて、ベース部本体37の下端に取り付けられる。滑り止め部36において、家具Fに当接する面が当接面36Aである。
【0042】
揺動規制部70は連結部71、及び規制部本体72を有している。連結部71は外形が直方体状をなしている。連結部71は直方体状の4隅の近傍にねじ挿通孔71Aが貫通して形成されている。
【0043】
規制部本体72は一方向に延び平板状をなした一対の帯部材72Aを具備している。これら帯部材72Aは同一の形状である。各帯部材72Aは延びる方向が同じである。各帯部材72Aは、互いに対向するように配置され、互いに平行をなして互いの間に所定の間隔を設けている。各帯部材72Aの互いの間隔はダンパ10のシリンダ11の外径より僅かに大きい。各帯部材72Aは、それぞれが延びる方向を連結部71のねじ挿通孔71Aが開口した面に対して直交する方向にし、それぞれの一端を連結部71のねじ挿通孔71Aの開口した面に固定している。
【0044】
次に、壁部Wに背面を対向させて床面上に設置された家具Fの上面1Uと天井Cとの間に転倒防止装置を取り付ける手順を説明する。
【0045】
先ず、家具Fの上面1Uに一対の第2ベース部30Bの滑り止め部36の当接面36Aを当接させて載置する。また、各第2ベース部30Bの長辺方向を前後方向に向ける。そして、図1に示すように、ダンパ10を傾斜させる。具体的には、ダンパ10のロッド13の先端部をシリンダ11よりも前方に配置し、鉛直線に対するダンパ10の傾斜角度を15°〜25°の間に傾斜させる。つまり、ダンパ10は、設置面上に設置された家具Fの上面1Uと天井Cとの間に傾斜して取り付けられる。そして、第1ベース部30Aの長辺方向を前後方向に向け、滑り止め部34を天井Cに当接させる。つまり、第1ベース部30Aを天井Cに当接させる。
【0046】
次に、揺動規制部70を壁部Wに取り付ける。
規制部本体72の一対の帯部材72Aの間にダンパ10のシリンダ11を挟む。そして、壁部Wに連結部71を当接させ、各ねじ挿通孔71Aにねじ73を挿通し、ねじ73を壁部Wにねじ込むことによって壁部Wに対して固定する。揺動規制部70は、壁部Wに固定された状態において、一対の帯部材72Aの延びる方向が壁部Wに直交する向きである。
【0047】
このようにして、家具Fの上面1Uと天井Cとの間に取り付けられた転倒防止装置は、ダンパ10に対して、第1ベース部30A及び一対の第2ベース部30Bが揺動自在な状態である。また、この状態において、支持部材20の挿入部20Bはダンパ10の第2ジョイント部16の第2長孔16Bの上端縁に当接した状態である。また、この状態において、第2長孔16Bは家具Fの上面1U側に位置するダンパ10の端部に位置している。また、この状態において、一対の支持部材20は、家具Fの上面1U側に位置するダンパ10の端部に一端部が連結され、ダンパ10の軸線を中心に軸対称にダンパ10から家具Fに向けて互いの間が拡がって延びている。また、この状態において、一対の第2ベース部30Bは一対の支持部材20の他端部に連結され、家具Fの上面1Uに当接している。また、この状態において、第1ベース部30Aは天井C側に位置するダンパ10の端部であるロッド13の第1ジョイント部15に連結される。
【0048】
また、揺動規制部70は、上方から見た平面視において、ダンパ10の軸線方向に対し直交する方向である左右方向のダンパ10の揺動を規制する。また、上方から見た平面視において、各支持部材20の他端を通る仮想線Lが、左右方向(揺動規制部70がダンパ10の揺動を規制する方向)に平行に延びるように、第2ベース部30Bが家具Fの上面1Uに配置される(図2参照。)。なお、家具Fが左右方向に傾いた場合、第2ジョイント部16は支持部材20からダンパ10の軸線方向に直交する左右方向の力が作用する。このため、支持部材20が連結される第2ジョイント部16に近いシリンダ11を規制部本体72の各帯部材72Aで挟むことによって、ダンパ10がダンパ10の軸線方向に直交する左右方向に揺動することをより良好に抑えることができ、ダンパ10をより良好に伸縮させることができる。
【0049】
次に、この転倒防止装置の動作を説明する。
天井Cと家具Fの上面1Uとの間に取り付けられた転倒防止装置は、地震の揺れ等によって家具Fが前方向に傾くと、一対の第2ベース部30Bと共に一対の支持部材20が第1ベース部30Aに近づく方向に移動する。この際、各支持部材20の挿入部20Bはダンパ10の第2ジョイント部16の第2長孔16Bの上端縁に当接した状態を維持する。これによって、ダンパ10は、一対の支持部材20によって下方から押されて収縮し、減衰力を発生する。これにより、転倒防止装置は、家具Fが前方向に傾く力を減衰させ、家具Fが前方向に転倒することを防止する。
【0050】
また、天井Cと家具Fの上面1Uとの間に取り付けられた転倒防止装置は、図3に示すように、地震の揺れ等によって仮想線Lが延びる方向の一方向である左方向に家具Fが傾くと、右側の第2ベース部30Bは第1ベース部30Aに近づく方向に移動する。この際、右側の支持部材20の挿入部20Bはダンパ10の第2ジョイント部16の第2長孔16Bの上端に当接した状態である。また、ダンパ10は揺動規制部70によって左右方向への移動が規制されている。これによって、ダンパ10は、右側の支持部材20によって下方から押されて収縮し、減衰力を発生する。このように、転倒防止装置は、家具Fが左方向に傾く力を減衰させ、家具Fが左方向に転倒することを防止する。
【0051】
また、この転倒防止装置は、左方向に家具Fが傾くことによって、右側の支持部材20の挿入部20Bがダンパ10の第2ジョイント部16の第2長孔16Bの上端縁に当接してダンパ10が収縮し、左側の第2ベース部30Bにダンパ10の反発力が作用しない状態になっても、付勢部材21が第2ジョイント部16の第2長孔16Bの上端縁から下端縁に向けて付与する付勢力によって、第2ベース部30Bの当接面36Aが家具Fの上面1Uに押付けられる状態が維持される。これにより、左側の第2ベース部30Bは家具Fの上面1Uの設置された位置からずれ難い。
【0052】
また、この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって家具Fが他方向である右方向に傾くと、左方向に傾いた場合と反対に、ダンパ10は左側の支持部材20によって下方から押されて収縮し、減衰力を発生する。このように、転倒防止装置は、家具Fが右方向に傾く力を減衰させ、家具Fが右方向に転倒することを防止する。また、右側の第2ベース部30Bは、付勢部材21の付勢力によって、当接面36Aが家具Fの上面1Uに押付けられる状態が維持される。これにより、右側の第2ベース部30Bは家具Fの上面1Uの設置された位置からずれ難い。
つまり、この転倒防止装置は、一方の支持部材20に対して、家具Fが浮き上がる力が作用すると、家具Fを正面から見たときの家具Fの上面と一方の支持部材20が延びる方向とがなす角度が大きくなるように動作する。このため、家具Fが浮き上がる力の方向がダンパ10の軸線方向に変換されて、ダンパ10を収縮する。
【0053】
<実施形態2>
実施形態2の転倒防止装置は、図4に示すように、揺動規制部170の構成、及びダンパ110のシリンダ111が突起部111Aを有している点が実施形態1と相違する。他の構成は実施形態1と同一であり、同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0054】
ダンパ110はシリンダ111の外周面の反対側から突出して形成された一対の突起部111Aを設けている。これら突起部111Aは円柱状をなしている。各突起部111Aは互いの中心軸がダンパ110の軸線に対して直交しており、互いが同軸上に配置されている。
【0055】
揺動規制部170は連結部171及び規制部本体172を有している。連結部171は平板状をなした四つの壁部171Aで四角形の筒状に形成され、筒状の一端が底壁部171Bで閉鎖されている。また、連結部171の四つの壁部171Aのうちの対向する一対の壁部171Aは同軸上に第1軸挿通孔171Cが貫通して形成されている。
【0056】
規制部本体172は一方向に延び平板状をなした一対の帯部材172Aを具備している。これら帯部材172Aは同一の形状である。各帯部材172Aの一端部には第1長孔172Bが形成されている。第1長孔172Bは帯部材172Aが延びる方向に延びている。帯部材172Aの他端部には第2軸挿通孔が形成されている(図示せず。)。一対の帯部材172Aは、互いに延びる方向を同じにして対向して配置され、互いに平行をなして互いの間に所定の間隔を設けている。各帯部材172Aは、他端部が連結部171内に配置され、第2軸挿通孔が連結部171の第1軸挿通孔171Cに同軸上に配置されている。第1軸挿通孔171C及び第2軸挿通孔は連結部171に連結された軸部材173を挿通している。これにより、規制部本体172は連結部171から脱落しない。また、各帯部材172Aは連結部171に対して軸部材173の軸周りに回動自在である。また、各帯部材172Aは軸部材173の軸方向に揺動しない。
【0057】
この転倒防止装置のダンパ110を実施形態1の転倒防止装置と同様に家具Fの上面1Uと天井Cとの間に配置して、揺動規制部170を壁部Wに取り付ける。つまり、規制部本体172の帯部材172Aのそれぞれの第1長孔172Bにダンパ110のシリンダ111の各突起部111Aを挿通させた状態で、壁部Wに連結部171の底壁部171Bを当接し、壁部Wに対して連結部171を固定する。
【0058】
このようにして、家具Fの上面1Uと天井Cとの間に取り付けられた転倒防止装置は、規制部本体172が連結部171の軸部材173を中心に上下方向に回動する。この規制部本体172の各帯部材172Aのそれぞれの第1長孔172Bはダンパ110の軸線に交差する方向である前後方向に延びている。各突起部111Aは、第1長孔172Bに対して回動自在であり、第1長孔172Bが延びる方向に移動自在である。
【0059】
次に、この転倒防止装置の動作を説明する。
天井Cと家具Fの上面1Uとの間に取り付けられた転倒防止装置は、地震の揺れ等によって家具Fが前方向に傾くと、ダンパ10は、一対の支持部材20によって下方から押されて収縮し、減衰力を発生する(図示せず。)。この際、揺動規制部170の規制部本体172は各第1長孔172Bに各突起部111Aが挿通されているため、ダンパ110の収縮に合わせて揺動規制部170の規制部本体172が軸部材173の軸周りに回動する。
【0060】
また、地震の揺れ等によって家具Fが左右方向に傾く際も、ダンパ10は左右いずれかの支持部材20によって下方から押されて収縮し、減衰力を発生する(図示せず。)。この際も、ダンパ110の収縮に合わせて揺動規制部170の規制部本体172が軸部材173の軸周りに回動する。
【0061】
このように、転倒防止装置の揺動規制部170は、規制部本体172が連結部171に上下方向に回動自在に連結されており、シリンダ111の突起部111Aが挿通する第1長孔172Bを形成している。このため、規制部本体172がダンパ110の伸縮に追従して、ダンパ110の左右方向の揺動を良好に抑え、ダンパ110が収縮し、発生した減衰力が家具Fに作用して家具Fの傾きを抑制することができる。
【0062】
<実施形態3>
実施形態3の転倒防止装置は、図5に示すように、ダンパ210のロッド213の先端部に球状をなした第2球状部213Aが設けられている点、第1ベース部230Aの形態、及び第1ベース部230Aが揺動規制部として溝部231Aを有している点が実施形態1等と相違する。他の構成は実施形態1等と同一であり、詳細な説明を省略する。
【0063】
この転倒防止装置はダンパ210のロッド213の先端部に球状をなした第2球状部213Aが連結されている。
第1ベース部230Aはベース部本体231、及び滑り止め部234を有している。ベース部本体231は半球状をなしている。また、天井Cに当接された状態の第1ベース部230Aにおいて、ベース部本体231の下側には溝部231Aが形成されている。溝部231Aは、底面231Bが水平方向に拡がり、一対の内壁面231Cが底面231Bの両側のそれぞれから下方向に延びている。各内壁面231Cの互いの間隔は、一定に形成され、ロッド213の外径より僅かに大きい。
【0064】
天井Cに当接された状態の第1ベース部230Aにおいて、ベース部本体231の上側には球形状の内周面で囲まれた球形状空間231Dが形成されている。球形状空間231Dは溝部231Aと連通している。球形状空間231Dにはダンパ210のロッド213の第2球状部213Aが嵌め込まれる。球形状空間231Dの内周面は第2球状部213Aを包み込むように第2球状部213Aの表面に当接している。また、球形状空間231Dに第2球状部213Aがはめ込まれた状態において、ダンパ210のロッド213は溝部231Aの一対の内壁面231Cの間に配置されている。このため、ダンパ210のロッド213は第2球状部213Aを中心に溝部231Aが延びる方向に揺動自在である。そして、ダンパ210のロッド213は溝部231Aが延びる方向に直交する方向への揺動が規制される。つまり、第1ベース部230Aのベース部本体231の溝部231Aは、溝部231Aが延びる方向に直交する方向へのダンパ210の揺動を規制する揺動規制部として作用する。すなわち、第1ベース部230Aは揺動規制部(溝部231A)を有している。
【0065】
滑り止め部234は、平板状をなしておりベース部本体231の直径より僅かに大きい直径を有する円盤状である。天井Cに当接された状態の第1ベース部230Aにおいて、滑り止め部234はベース部本体231の上端に取り付けられる。滑り止め部234において、天井Cに当接する面が当接面234Aである。この転倒防止装置を天井Cと家具Fの上面1Uとの間に取り付ける際、ベース部本体231の溝部231Aが延びる方向を前後方向に向けて滑り止め部234の当接面234Aを天井Cに当接させる。
【0066】
次に、この転倒防止装置の動作を説明する。
家具Fの上面1Uと天井Cとの間に取り付けられた転倒防止装置は、地震の揺れ等によって家具Fが前方向に傾くと、ダンパ210は、一対の支持部材20によって下方から押されて収縮し、減衰力を発生する(図示せず。)。この際、ダンパ210のロッド213は第2球状部213Aを中心に溝部231Aが延びる方向に回動する。
【0067】
また、この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって家具Fが左右方向に傾くと、ダンパ210の左右いずれかの支持部材20によって下方から押されてダンパ210が収縮し、減衰力を発生する。この際、ダンパ210のロッド213は、第2球状部213Aを中心に溝部231Aが延びる方向に回動しつつ、第1ベース部230Aの溝部231A(揺動規制部)によって左右方向への揺動が規制される。
【0068】
以上説明したように、実施形態1〜3の転倒防止装置は、ダンパ10,110,210、第1ベース部30A,230A、揺動規制部70,170,231A、一対の支持部材20、及び第2ベース部30Bを備えている。ダンパ10,110,210は、シリンダ11,111、ピストン、ロッド13、及びロッドガイド12を有している。シリンダ11,111は一端側が開口した有底筒状である。ピストンはシリンダ11,111内に摺動自在に収容されている。ロッド13は先端側がシリンダ11,111の外部へ突出すると共に基端部がピストンに連結されている。ロッドガイド12はロッド13が摺動自在に挿通されると共にシリンダ11,111の開口を封鎖している。このダンパ10,110,210は床上に設置された家具Fの上面1Uと天井Cとの間に傾斜して取り付けられる。また、このダンパ10,110,210は収縮時に減衰力を発生して伸長方向に付勢力を発生する。第1ベース部30A、230Aは、天井C側に位置するダンパ10,110,210の端部に揺動自在に連結され、天井Cに当接する。揺動規制部70,170,231Aは、上方から見た平面視において、ダンパ10,110,210の軸線方向に対し直交する方向のダンパ10,110,210の揺動を規制する。一対の支持部材20は家具Fの上面1U側に位置するダンパ10,110,210の端部にダンパ10,110,210の軸線方向に移動自在に一端部が連結されている。また、一対の支持部材20はダンパ10,110,210の軸線を中心に軸対称にダンパ10,110,210から家具Fに向けて互いの間が拡がって延びている。第2ベース部30Bは、一対の支持部材20の他端部に揺動自在に連結され、家具Fの上面1Uに当接する。また、この転倒防止装置は、上方から見た平面視において、一対の支持部材20の他端を通る仮想線Lが、揺動規制部70,170,231Aが規制する方向に平行に延びるように第2ベース部30Bが配置される。また、この転倒防止装置は、上方から見た平面視において、仮想線Lが延びる方向の一方向(左方向)に家具Fが傾いたときに、他方側(右側)の支持部材20がダンパ10,110,210を収縮させ、仮想線Lが延びる方向の他方向(右方向)に家具Fが傾いたときに、一方側(左側)の支持部材20がダンパ10,110,210を収縮させる。
【0069】
この転倒防止装置は、ダンパ10,110,210が床面上に設置された家具Fの上面1Uと天井Cとの間に傾斜して取り付けられている。このため、上方から見た平面視において、ダンパ10,110,210の軸線が延びている方向の一方向に家具Fが傾くと、ダンパ10,110,210が収縮し、発生した減衰力が家具Fに作用して家具Fの傾きを抑制することができる。
さらに、この転倒防止装置は揺動規制部70,170,231Aによってダンパ10,110,210の軸線方向に対し直交する方向である左右方向のダンパ10の揺動が規制されている。そして、転倒防止装置の一対の支持部材20は、家具Fの上面1U側に位置するダンパ10,110,210の端部にダンパ10,110,210の軸線方向に移動自在に一端部が連結され、ダンパ10,110,210の軸線を中心に軸対称にダンパ10,110,210から家具Fに向けて互いの間が拡がって延びている。このため、一対の支持部材20のそれぞれの他端を通る仮想線Lが延びる方向の一方である左方向に家具Fが傾くと、他方側である右側の支持部材20によってダンパ10が収縮され、発生した減衰力が家具Fに作用して家具Fの傾きを抑制することができる。また、仮想線Lが延びる方向の他方である右方向に家具Fが傾くと、一方側である左側の支持部材20によってダンパ10が収縮され、発生した減衰力が家具Fに作用して家具Fの傾きを抑制することができる。
【0070】
したがって、実施形態1〜3の転倒防止装置は1つのダンパ10,110,210を用いて揺れ方向が複合的な地震等に対して、取り付け状態を維持し、家具Fが傾くことを防止することができる。
【0071】
また、実施形態1及び2の揺動規制部70,170は、設置面から上方に延びて家具Fの一側面が対向した壁部Wに連結される連結部71,171を有している。また、この転倒防止装置は、仮想線Lが延びる方向の家具Fの傾きを抑える際、上方から見た平面視において、一方の支持部材20は、ダンパ10,110の軸線方向に交差する方向にダンパ10,110を押すことになる。この際、この転倒防止装置は、揺動規制部70が連結部71を介して壁部Wに連結されているため、ダンパ10の左右方向の揺動をより安定して抑えることができる。
【0072】
また、実施形態2の転倒防止装置のシリンダ111は、外周面から突出して形成された突起部111Aを有している。また、実施形態2の転倒防止装置の揺動規制部170は、連結部171に上下方向に回動自在に連結され、シリンダ111の突起部111Aを挿通し、ダンパ110の軸線に交差する方向に延びた第1長孔172Bが形成された規制部本体172を有している。このため、揺動規制部170の規制部本体172は、連結部171に上下方向に回動自在に連結されており、シリンダ111の突起部111Aが挿通する第1長孔172Bを形成しているため、ダンパ110の伸縮に追従することができる。これにより、規制部本体172がダンパ110の伸縮に追従しない場合に比べて、ダンパ110の伸縮動作を妨げず、ダンパ110の左右方向の揺動をより良好に抑えることができる。
【0073】
また、実施形態3の転倒防止装置の第1ベース部230Aは揺動規制部である溝部231Aを有している。このため、ダンパ210の左右方向の揺動を第1ベース部230Aが有する溝部231Aによって抑えることができ、より少ない部品点数でダンパ210の左右方向の揺動を抑えることができる。
【0074】
また、実施形態1〜3の転倒防止装置のダンパ10,110,210は家具Fの上面1U側に位置するダンパ10,110,210の端部にダンパ10,110,210の軸線方向に延びた一対の第2長孔16Bが形成されている。また、この転倒防止装置の支持部材20は一端部に第2長孔16Bに挿入される挿入部20Bを有し、床面上に設置された家具Fの上面1Uと、天井Cとの間に設置された状態において、挿入部20Bが第2長孔16Bの上端縁に当接している。このため、転倒防止装置は、家具Fが一対の支持部材20のそれぞれの他端を結ぶ仮想線Lが延びる方向の左方向に傾くと、右側の支持部材20の挿入部20Bが第2長孔16Bの上端縁に当接した状態を維持し、揺動規制部70によって揺動が規制されたダンパ10,110,210を収縮させる。そして、左側の支持部材20の挿入部20Bは、第2長孔16Bの下端部に向けて移動するため、ダンパ10,110,210の収縮に寄与しない。また、同様に、この転倒防止装置は、家具Fが一対の支持部材20の夫々の他端を結ぶ仮想線Lが延びる方向の右方向に傾くと、左側の支持部材20がダンパ10,110,210を収縮させ、右側の支持部材20はダンパ10,110,210の収縮に寄与しない。つまり、この転倒防止装置は家具Fが一対の支持部材20のそれぞれの他端を通る仮想線Lが延びる方向のいずれかの方向に傾いた際、ダンパ10,110,210の減衰力が家具Fに作用し家具Fの浮き上がりを抑えることによって家具Fの傾きを抑えることができる。
【0075】
また、実施形態1〜3の転倒防止装置は支持部材20を第2長孔16Bの上端縁から下端縁に向けて付勢する付勢部材21を備えている。このため、この転倒防止装置は、家具Fが一対の支持部材のそれぞれの他端を結ぶ仮想線が延びる左右方向に傾いた際に付勢部材21の付勢力によって挿入部20Bが第2長孔16Bの下端側に向けて移動し、ダンパ10の,110,210収縮に寄与しない支持部材20に連結された第2ベース部30Bが家具Fの上面1Uに当接した状態を維持する。このため、この転倒防止装置は、地震等の揺れによって家具Fの傾く方向が変化しても、家具Fの上面1Uにおける第2ベース部30Bの位置ずれが生じ難く、家具Fの転倒を防止することができる。
【0076】
本発明は上記記述及び図面によって説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1及び2では、揺動規制部の連結部が壁部に連結されているが、連結部を天井に連結してもよい。この場合、連結部から垂下させた規制部本体の一対の帯部材の間にシリンダを挟む。つまり、揺動規制部は天井に連結される連結部を有する。
(2)実施形態1〜3では、転倒防止装置を家具に対して取り付けたが、複数の寝台を上下方向に連結したベッド、大型テレビ、冷蔵庫、書棚、ショーケース、サーバーラック等、地震の揺れ等によって転倒するおそれのある物品に対して取り付けてもよい。
(3)実施形態1及び2では、転倒防止装置を壁部に一側面を対向させて床面上に載置された家具に対して取り付けたが、壁部に隣接させずに床面上に載置された家具等に対して取り付けてもよい。
(4)実施形態1〜3では、圧効きダンパを利用したが、収縮動作時に所定の減衰力を発揮するものであれば、両効きダンパであってもよい。
(5)実施形態1〜3では、シリンダ内に作動油及び圧縮ガスを封入したダンパを利用したが、収縮動作時に所定の減衰力を発生させるものであれば、他の液体を封入した液体圧ダンパであっても、他の形式のダンパであってもよい。
(6)実施形態1〜3では、シリンダ内に圧縮ガスを封入して伸張方向に圧縮ガスの膨張力が働くようにしたが、コイルばねを設ける等の他の方式で伸張方向に働く力を発生させてもよい。
(7)実施形態3では、第1ベース部の外形が半球状であるが、第1ベース部の外形を実施形態1及び2の第1ベース部と同じような形態にしてもよい。
(8)一対の支持部材の長さが異なっていてもよい。また、一対の支持部材が延びる方向のそれぞれが、ダンパの軸線に対して互いに異なる角度をなしていてもよい。
(9)一対の付勢部材の付勢力は互いに異なっていてもよい。
(10)家具の左右側面に隣合い、家具の左右方向への揺れを規制する家具規制部を設けてもよい。具体的には、家具規制部は配置された位置が変化しないように家具の左右側面に沿うように配置される。これにより、転倒防止装置がガタガタと揺れ動く小さなエネルギーを吸収し、家具規制部が大きな揺れ(大きなエネルギー)を吸収して、家具の転倒を防止することができる。
【符号の説明】
【0077】
10,110,210…ダンパ、11,111…シリンダ、12…ロッドガイド、13…ロッド、16B…第2長孔、20…支持部材、20B…挿入部、21…付勢部材、30A,230A…第1ベース部、30B…第2ベース部、70,170,231A…揺動規制部(231A…溝部)、71,171…連結部、111A…突起部、72,172…規制部本体、172B…第1長孔、C…天井、F…家具(物品)、L…仮想線、W…壁部
【要約】
【課題】1つのダンパを用いて揺れ方向が複合的な地震等に対して、取り付け状態を維持し、家具が傾くことを防止することができる転倒防止装置を提供する。
【解決手段】転倒防止装置の揺動規制部70は、左右方向のダンパ10の揺動を規制する。一対の支持部材20は家具Fの上面1U側に位置するダンパ10の端部にダンパ10の軸線方向に移動自在に一端部が連結されている。また、一対の支持部材20はダンパ10の軸線を中心にダンパ10から家具Fに向けて互いの間が拡がって延びている。この転倒防止装置は、上方から見た平面視において、一対の支持部材20の他端を通る仮想線Lが、左右方向に平行に延びるように第2ベース部30Bが配置される。この転倒防止装置は、上方から見た平面視において、左右方向に家具Fが傾いたときに、左右いずれかの支持部材20がダンパ10を収縮させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5