(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。尚、以下の実施例の説明では、実施例の施行完了時の上下に基づいて上方向/下方向を説明してなるが、発明の実施においては、必ずしも説明における上下に合わせて方向を定める必要は無く、発明の実施形態に合わせて上下を水平方向に変更する等しても構わない。
図1乃至
図32に示した、本発明の実施例の管体の接続構造を採用した排水配管は、以下に記載した排水機器としての洗面台、排水栓10、接続用の配管部材としての排水栓継手12、及びJ字管15、トラップ管14、接続部材5、等の部材から構成されてなる。
洗面台は、槽体としての、上方が開口した箱体からなる洗面ボウルWと、該洗面ボウルWを載架するキャビネット(図示せず)からなる。また、洗面ボウルWの底面には排水栓10を取り付ける取付孔を備えてなる。
排水栓10は、取付孔に接続される略円筒形状の部材であって、洗面ボウルW内の排水が流入する排水口11を形成する、上端の開口部分と、該開口部分の周縁に、外方向に突出したフランジ部10aを備えてなる。
また、排水栓10は、フランジ部10aの下方に雄ネジを設けてなる。
排水栓継手12は、排水栓10とトラップ管14とを繋ぐ直線状にして断面略円形を成す管体であって、管体内部の上方部分には、排水栓10の雄ネジと螺合する雌ネジを備えてなる。
また、排水栓継手12の下方には、挿入管部1を形成してなる。
詳述すると、排水栓継手12の下方は、円筒形状にして、その側面に、周縁全周に沿って鍔部2を設けてなる。尚、該鍔部2は、挿入管部1の端部に近い側の面を表側、その反対側の面を裏側と記載する。本実施例では、上方側の面が鍔部2の裏側、下方側の面が表側になる。
また、鍔部2の上方に、周縁全周に沿って突出部分を設けて構成された、第二鍔部13が形成されている。第二鍔部13はその下面において、施工完了時に接続部材5の上面を覆うカバー部16aを形成する。カバー部16aは、後述する接続部材5の傾斜面8に合致するテーパーが設けられており、誤って鍔部2と第二鍔部13の間に接続部材5の下側の爪部7が挿入された場合、テーパーが爪部7先端に干渉して嵌入を防ぐように構成されている。
更に、排水栓継手12の鍔部2の下方には周縁全周に沿って溝が備えられ、この溝に、ゴムなどの弾性素材からなり、断面円形形状を成すリング体であるパッキングとしてのOリングOが備えられてなる。
J字管15は、下水側に繋がる配管とトラップ管14とを繋ぐ、Jの字形状に屈曲した断面略円形を成す管体であって、上流側となる短い直線部分には、排水栓継手12の挿入管部1と同様の構成・形状の挿入管部1を設けてなる。
排水栓継手12に設けられた、上流側の挿入管部1と、J字管15に設けられた下流側の挿入管部1とは形状と共に各部寸法も同じ、少なくとも互換性を有するように構成されてなる。
また、J字管15に設けた挿入管部1の鍔部2も、排水栓継手12の挿入管部1の鍔部2と同様、挿入管部1の端部に近い側の面を表側、その反対側の面を裏側と記載する。
図1の実施例では、上方側の面が鍔部2の裏側、下方側の面が表側になる。
トラップ管14は、断面略円形を成す管体を略U字形状に屈曲させた部材であって、
図1、
図2における左右及び前後に対して対称形状を成し、その両端には、それぞれ以下に記載する、上記上流側の挿入管部1及び下流側の挿入管部1に対応する受入管部3を備えてなる。
受入管部3は、鍔部2よりも端部側の挿入管部1が挿入される、上下に直線形状を成す、円筒形状部分であり、またその側面に、周縁に沿って内外を貫通する溝部4を有してなる。溝部4は後述する接続部材5の爪部5が嵌入する程度の幅を有しており、
図10等に示すように、施工完了時、溝部4の下面は接続部材5の下端を覆うカバー部16bを形成する。
また、該溝部4に隣接して、溝部4の上方と下方とを繋ぐ柱部分4aが備えられてなる。
柱部分4aは、受入管部3の円筒形状の中心軸に対して180度を成す対称位置に二ヶ所備えられてなる。柱部分4aは、受入管部3の円形の壁面部分から、壁面の外側、即ち水平方向に向かって若干突出している。
この水平方向の突出の程度は、施工完了時、後述する接続部材5の開放端部9の外側面にほぼ連続する程度である。従って、柱部分4aはその周方向の側面において施工完了時に接続部材5の開放端部9を覆うカバー部16cを形成する。尚、柱部分4aの外側面は、施工完了時、挿入管部1の鍔部2よりも外側に位置するように構成されており、この鍔部2よりも外側の柱部分4aは、
図1のように、施工完了時接続部材5の上面とほぼ同じ高さ(第二鍔部13の下面とほぼ同じ高さ)の位置となるように突出して構成されている。
一方で、柱部分4aは、受入管部3の内径方向に向かっては突出しておらず、受入管部3の内側面の断面は、
図22のように略円形を保っている。これにより、トラップ管14の受入管部3に挿入された、鍔部2よりも端部側の挿入管部1は、管体の軸を中心に自在に回転させることができる。
尚、本実施例では、一つの受入管部3に二つの溝部4と柱部分4aとが形成されている。トラップ管14にはその両端に計二つの受入管部3を設けているため、トラップ管14全体では計4つの溝部4及び柱部分4aを有することとなる。本実施例では、
図2等より明らかなように、この4つの柱部分4aが管体の中心軸を含む面に沿うようにして、直線状に配置されている。
また、柱部分4aの、軸方向に垂直な面での断面形状は、
図14等からも明らかなように、管体の外側となる外側面に傾斜乃至円弧を備えた形状となっている。
接続部材5は、施工完了時の挿入管部1及び受入管部3の軸方向視、略C字形状を成す部材であって、以下に記載する側壁部6及び爪部7等の各部分を一体にして構成されてなる。尚、接続部材5は、軸方向に垂直な面、及び中心軸と開放端部9の中心とを繋ぐ面とに対して対称形状を成すように構成されてなる。例えば、
図6に基づけば、接続部材5は「上下対称」であり「左右対称」となる。以下説明を容易にするため、
図6に基づいて接続部材5の「上下」および「左右」を記載する。また、以下の説明では、便宜上「上方の爪部7」「下方の爪部7」といった記載を行うが、接続部材5は上下対称且つ左右対称であるため、回転させて上下(又は/及び左右)を入れ替えても形状・機能的には何ら差異は無い。また、本実施例では、挿入管部1及び受入管部3が2組あることから、接続部材5も同一形状・構成のものを2つ使用する。
側壁部6は、平面視、略C字形状を成す壁面部分であり、C字形状の端部である開放端部9の中心軸を挟んで対向位置に、柱部分4aとほぼ同じ幅で、他の部分よりも外周方向に突出した凸部6aを備えてなる。この凸部6aは、施工完了時、柱部分4aの外側面に内側面が当接するように配置される。
爪部7は本実施例における係合部を形成し、側壁部6の、上端及び下端であって、凸部6a以外の部分から内径方向に向かって突出して形成されてなり、接続時において、上方の爪部7が挿入管部1の鍔部2の裏面側に、下方の爪部7が受入管部3の溝部4に、それぞれ係合するように構成されてなる。即ち、本実施形態においては挿入管部1の鍔部2の裏面側と受入管部3の溝部4は係合部と係合する被係合部として形成されている。
爪部7の内径は、挿入管部1の鍔部2以外の部分の外径とほぼ同じ径であり、また挿入管部1には、その内外に貫通する溝部4が形成されている。これによって、施工完了時、いずれの爪部7も、その内側面が挿入管部1の外側面に当接するように配置される。
また、爪部7には、
図5等より明らかなように、上側の爪部7においてはその上面となる面に、接続部材5の内径側ほど下方に向かう傾斜面8を設けてなる。上記のように接続部材5は上下対称であり、従って、下側の爪部7においては、その下面となる面に、接続部材5の内径側ほど上方に向かう傾斜面8を設けてなる。
また、平面視、接続部材5の内側面であって、凸部6aを起点に内径側ほど幅広になるよう構成された凹部7bを上下の爪部7にそれぞれ備えてなる。前述のように、凸部6aの幅は柱部分4aの幅とほぼ同じ幅であり、接続部材5は
図6の左右において対称形状に構成されてなるため、凹部7bは、凸部6aを短辺とし内径側ほど幅広になる、略等脚台形形状を成す。このように構成された凹部7bは、施工完了時柱部分4aに干渉せず、柱部分4aを外周方向に迂回するように配置・形成されてなる。
開放端部9は、C字形状の開放された端部となる部分である。該開放端部9の内、爪部7以外の部分、すなわち側壁部6の開放端部9の部分は、
図7に示すように、外方向に向かって開くような若干の傾斜を設けてなる。また、側壁部6分の開放端部9の幅は、柱部分4aよりも幅広に形成されている。
これに対し、上下の爪部7では、開放端部9の幅は、ほぼ柱部分4aと同じで若干だけ幅広である。このように、開放端部9の内、側壁部6に比べて爪部7だけが溝部4及び鍔部2の外径形状に沿うように突出してなり、この突出部分が、ガイド構造としての突起部7aを形成してなる。
尚、挿入管部1の外側面の直径は、突起部7aまた側壁部6の開放端部9の幅よりも広く、施工完了後には、開放端部9を拡開する十分な応力が加わらない限り、接続部材5が挿入管部1また受入管部3から抜脱することは無い。
また、上流側の挿入管部1及び下流側の挿入管部1と受入管部3の内、接続部材5によって覆われる部分、具体的には挿入管部1の第二鍔部13と鍔部2との間の側面、鍔部2の上面及び側面、受入管部3の、柱部分4aを除く溝部4よりも上方の側面及び上面には、図示しないが、表示構造としての赤色の塗装が行われている。
尚、詳述しないが、本発明においては、水密的な接続が必要な箇所においては、適宜パッキング等を用い、水密的な接続を行っている。
【0019】
上記のように構成した管体の接続構造を採用した排水配管は、以下のようにして槽体である洗面台の洗面ボウルWに施工される。
尚、以下の施工手順等の説明においては、説明を容易にするため、トラップ管14の受入管部3の内、排水栓継手12が接続される側の受入管部3を「上流側」、J字管15を接続される側の受入管部3を「下流側」と、必要に応じて記載する。但し、トラップ管14は上記のように
図1の左右及び前後に対して対称形状を成してなり、機能・形状的には2つあるうちのどちらの受入管部3を上流側又は下流側としても構わない。
【0020】
工場等、施工現場に搬入・出荷する前の段階で、以下のような手順に沿ってトラップ管14とJ字管15の接続を行う。
まず、トラップ管14のいずれか一方の端部にある受入管部3(これが「下流側」の受入管部3になる)に、
図9から
図13で示したように、J字管15の挿入管部1を、受入管部3の上端面に受入管部3の鍔部2下面が当接するまで挿入する。
この状態では、当然ながら、第二の挿入管部1と、第二の挿入管部1が挿入された下流側受入管部3に施された、表示構造としての赤色の塗装を目視することができる。
次に、接続部材5を、U字形状を成すトラップ管14の側面方向からJ字管15の挿入管部1及び下流側の受入管部3に係合させる。
詳述すると、接続部材5の開放端部9が下流側の受入管部3の柱部分4aを向き、接続部材5を受入管部3の中心軸に対して側方になる位置に配置した上で、接続部材5を受入管部3側に移動させる。
すると、
図15に示したように、まず接続部材5の上下に備えられたガイド構造としての突起部7aが、挿入管部1の鍔部2裏側、即ち鍔部2の上面側と、受入管部3の溝部4に嵌入する。この時点では、接続部材5の開放端部9は、弾性によって拡開していないため、嵌入に際して特に無理な応力を加える必要は無い。よって、接続部材5を適正な位置、具体的には上方の突起部7aを鍔部2の上面側に、下方の突起部7aを受入管部3の溝部4に、それぞれ嵌入することは極めて容易且つ確実に行うことができる。
この状態では、上方の突起部7aの先端は鍔部2上方の、下方の突起部7aの先端は溝部4を貫通して鍔部2下方の、それぞれ挿入管部1外側面に接する。また接続部材5の側壁部6の開放端部9の側面が、鍔部2側面及び溝部4より上方の受入管部3側面に接する。
そのまま接続部材5の嵌入を進めると、
図16のように開放端部9の突起部7a及び側壁部6が挿入管部1また受入管部3の外側面の円弧に沿って移動するため、開放端部9が拡開を始める。この際には、接続部材5が有する樹脂弾性によって、開放端部9の拡開を防ぎ、開放端部9を当初の幅まで閉じようとする応力が働き、接続部材5を移動させるための力とは真逆の方向に作用するため、接続部材5を移動させるためには、開放端部9を当初の幅まで閉じようとする応力に抗して充分な力を、作業者は加える必要がある。このように、移動を進めるため力を加えて作業を行うと、その分力の方向のコントロールが難しくなり、移動とは逆方向の応力が働いていることと合わせて、接続部材5が適正な位置からずれようとする方向に応力が向く場合があるが、本実施例では、ガイド機構としての突起部7aが、鍔部2及び溝部4に沿って配置され、接続部材5の移動の方向が、上方や下方にずれることを防ぐように構成されている。このため、接続部材5に移動の応力を加えると、上下に位置がぶれることなく、確実に適正な位置に接続部材5を移動(嵌入)させることができる。
接続部材5の移動(嵌入)が進み、接続部材5の開放端部9が、受入管部3及び挿入管部1の中心軸を超えると、開放端部9を閉塞させる方向の応力が、そのまま接続部材5の移動(嵌入)を進ませる方向の応力に変化する。そのまま接続部材5を移動させ、或いは開放端部9を閉塞するための応力の作用に任せると、接続部材5は最終的に、
図17乃至
図19に示したように、挿入管部1及び受入管部3と同心円状態の位置まで移動して移動(嵌入)が終了する。この時には、挿入管部1の鍔部2裏面と受入管部3の溝部4とに、接続部材5の爪部7がそれぞれ嵌入して係合し、挿入管部1及び受入管部3が回転可能且つ抜脱不可能な状態にて接続される。このようにして、トラップ管14とJ字管15の接続が完了する。
また、この時接続部材5はその上端が第二鍔部13下面のカバー部16aに、その下端が溝部4下方のカバー部16bに、開放端部9が柱部分4aのカバー部16cによってそれぞれ覆われる。従って、施工完了時において、接続部材5の端部に応力が加わってしまい接続が解除されてしまう事態が生じにくい。即ち、カバー部16a、16b、16cによって係合部である爪部7が保護されている。
また、この状態では、J字管15の挿入管部1と、下流側の受入管部3に施された、表示構造としての赤色の塗装は、接続部材5に覆われるため、目視することができなくなり、これによって接続が適正に行われたことを確認することができる。
上記のように、トラップ管14とJ字管15を接続した上で、排水配管の各部材を施工現場に搬入する。
【0021】
施工現場においては、以下のようにして、排水配管の施工作業を行う。
まず、排水栓10を、洗面ボウルWの取付孔に上方から挿通し、フランジ部10aの下面が取付孔の周縁上面に当接させる。
次に、排水栓10の雄ネジに、排水栓継手12の雌ネジを螺合させると、取付孔の周縁を、フランジ部10aの下面と、排水栓継手12の上面とで強く挟持することができ、排水栓10及び排水栓継手12を洗面ボウルWの取付孔に取り付けることができる。
次に、トラップ管14の、J字管15が接続されていない側の端部、即ち上流側の挿入管部1に、未使用の接続部材5を嵌入する。詳述すると、接続部材5の開放端部9が、上流側の受入管部3の柱部分4aを向き、接続部材5を受入管部3の中心軸に対して側面になる位置に配置した上で、接続部材5を受入管部3側に移動させる。
すると、
図23に示したように、まず接続部材5の上下に備えられたガイド構造としての突起部7aの内の下側の突起部7aが、受入管部3の溝部4に嵌入する。この時点では、接続部材5の開放端部9は、弾性によって拡開していないため、嵌入に際して特に無理な応力を加える必要は無い。よって、接続部材5の下方の突起部7aを受入管部3の溝部4に嵌入することは極めて容易である。
この状態では、下方の突起部7aが溝部4に嵌ったまま、接続部材5側壁部6の開放端部9端面が、溝部4より上方の受入管部3側面に接する。そのまま接続部材5の嵌入を進めると、
図24に示したように、開放端部9の突起部7a及び側壁部6が挿入管部1また受入管部3の外側面の円弧に沿って移動するため、開放端部9が拡開を始める。この際には、接続部材5が有する樹脂弾性によって、開放端部9の拡開を防ぎ、開放端部9を当初の幅まで閉じようとする応力が、接続部材5を移動させるための力とは真逆の方向に作用するため、接続部材5を移動させるためには、開放端部9を当初の幅まで閉じようとする応力に抗して充分な力を、作業者は加える必要がある。このように、移動を進めるため力を加えて作業を行うと、その分力の方向のコントロールが難しくなり、移動とは逆方向の応力が働いていることと合わせて、接続部材5が適正な位置からずれようとする方向に応力が向く場合があるが、本実施例では、ガイド機構としての突起部7aが、溝部4に沿って配置され、接続部材5の移動の方向が、上方や下方にずれることを防ぐように構成されている。このため、接続部材5に移動の応力を加えると、上下に位置がぶれることなく、確実に適正な位置に接続部材5を移動(嵌入)させることができる。
接続部材5の移動(嵌入)が進み、接続部材5の開放端部9が、受入管部3の中心軸を超えると、開放端部9を閉塞させる方向の応力が、そのまま接続部材5の移動(嵌入)を進ませる方向の応力に変化する。そのまま接続部材5を移動させ、或いは開放端部9を閉塞するための応力の作用に任せると、
図25乃至
図27に示したように、接続部材5は最終的に、受入管部3と同心円状態の位置まで移動して移動(嵌入)が終了する。この時には、受入管部3の溝部4に、接続部材5の爪部7が嵌入して係合し、接続部材5が受入管部3に抜脱不可能な状態となる。
J字管15の下流側の端部を、弾性・可撓性を有するゴムソケット等の配管部材を利用して、床下配管等の下水側の配管に接続した後、排水栓10接続管とトラップ管14の上流側端部を接続する。
詳述すると、まず、トラップ管14とJ字管15、またJ字管15と床下配管との接続部分において、
図28に示したように、それぞれの接続箇所を回転等によって位置調整し、排水栓継手12の挿入管部1の直下に、トラップ管14の上流側の受入管部3が同心円状となるよう配置する。
次に、トラップ管14及びJ字管15をそのまま上方に移動させると、
図29に示したように、排水栓継手12の鍔部2の下端が、上流側の受入管部3に嵌入されている接続部材5の上面に当接する。接続部材5の上面には、管体の中心軸に向かうほど下方に向かう傾斜面8が形成されてなるため、トラップ管14の上昇を継続させると、
図30に示したように、受入管部3を上昇させる応力の一部が、傾斜面8の作用により、接続部材5の開放端部9を拡開させ、接続部材5の側壁部6の円弧の径を拡大させるように作用する。そのままトラップ管14を上昇させると、最終的には、接続部材5が拡径して、接続部材5の爪部7内周面の径が、排水栓継手12の挿入管部1の鍔部2外周面の径よりも大径となり、鍔部2が上方の爪部7を乗り越え、上流側の受入管部3に係合する接続部材5の上方の爪部7が、排水栓継手12の挿入管部1の鍔部2よりも上方に達する。
この時点で、接続部材5の爪部7が縮径し、爪部7が鍔部2裏面に嵌入することで、爪部7と鍔部2とが係合し、挿入管部1及び受入管部3が回転可能且つ抜脱不可能な状態にて接続される(状態としては、
図18、
図19のJ字管15の挿入管部1とトラップ管14の受入管部3の施工完了後の状態と同じとなる)。このようにして、トラップ管14と排水栓10接続管の接続が完了する。
この時接続部材5はその上端が第二鍔部13のカバー部16aに、その下端が溝部4下方のカバー部16bに、開放端部9が柱部分4aのカバー部16cによってそれぞれ覆われる。従って、施工完了時において、接続部材5の端部に応力が加わってしまい接続が解除されてしまう事態が生じにくい。即ち、カバー部16a、16b、16cによって係合部である爪部7が保護されている。
また、この状態では、排水栓継手12の挿入管部1と、上流側の受入管部3に施された、表示構造としての赤色の塗装は、接続部材5に覆われるため、目視することができなくなり、これによって接続が適正に行われたことを確認することができる。
上記のようにして、本発明の管体の接続構造を採用した排水配管の、槽体である洗面台の洗面ボウルWへの施工が完了する。
【0022】
上記のように施工された洗面台の排水配管において、洗面台を使用し、洗面ボウルW内に排水が生じると、排水は、洗面ボウルW内から排水口11を通過し、排水栓継手12からトラップ管14内部を通過し、更にJ字管15を通過して、最終的に床下配管から下水側に排出される。
また、トラップ管14内部に排水が溜まることで、トラップ管14の排水の流路の一部が満水状態となる。これにより、下水側からの臭気や害虫類の逆流が防止される、トラップ機能を生じる。
【0023】
上記実施例においては、挿入管部1、受入管部3、接続部材5を、それぞれ軸方向視円形形状に構成し、またOリングOも挿入管部1の周縁に沿って配置したことで、挿入管部1と受入管部3とを、水密的な接続を維持したまま、回動自在に接続することができ、必要に応じて回転させて位置調整等を行うことができる。
【0024】
上記本発明の管体の接続構造においては、施工完了時において、挿入管部1の鍔部2裏側から、受入管部3の溝部4までが、接続部材5に覆われることで、接続部分に衝撃が加わっても、接続部材5によって鍔部2裏側から溝部4までが保護され、破損しにくくなる。
鍔部2裏側から溝部4までを覆った接続部材5は、開放端部9を有することで、衝撃を受けても一時的に開放端部9が広がり衝撃を逃がす等、鍔部2裏側や溝部4よりも破損しにくい構造とすることができる。特に本実施例では、カバー部16a、16b、16cを設けたことで、接続部材5自体にも衝撃が加えられ難い構造としている。又、カバー部16a、16b、16cによってガイド構造である突起部7aも覆われ、保護されている。本実施例では係合部分において、係合時に弾性変形を伴う側を係合部とし、他方を被係合部として記載している(接続部材5は樹脂弾性によって開放端部9が拡開し、爪部5によって係合を行う構造である)。従って、本実施例においては接続部材5に外部から衝撃が加えられた際には、接続部材5自体の樹脂弾性によって拡開してしまう恐れがあるが、上述の通り、カバー部16a、16b、16cよって接続部材5に衝撃が加えられ難い構造となっている。
また、接続部材5を挿入管部1または受入管部3に嵌入する際、接続部材5に係合される鍔部2及び溝部4が露出しているため、接続部材5の嵌入作業は、嵌入する箇所を視認しつつ行うことができ、作業が極めて容易である。
また、ガイド構造としての突起部7aを設け、この突起部7aを鍔部2裏面また溝部4に嵌入することから、接続部材5の弾性に抗して開放端部9を拡開し、接続部材5を挿入管部1または受入管部3に嵌入する際、接続部材5の方向がぶれることが無く、嵌入する作業を極めて容易に行うことができる。
また、ガイド構造としての突起部7aは、溝部4及び鍔部2の外径形状に沿う形状であるため、従来例のガイド構造と比較し、この突起部7aが接続構造の外側方向に突出することが無く、施工者や使用者が誤って触れることが起こりにくい形状となっている。このため、施工者や使用者が怪我を負ったり、誤って触れたことで接続部材5が外されて管体の接続が解除されてしまう、と言った問題が生じにくい。特に本実施例では、接続部材5はその上端が第二鍔部13下面のカバー部16aに、その下端が溝部4下方のカバー部16bに、開放端部9が柱部分4aのカバー部16cによってそれぞれ覆われる。従って、施工完了時において、接続部材5の端部に応力が加わってしまい接続が解除されてしまうことが、より一層生じにくくなっている。
また、本実施例では溝部4を、受入管部3の内外を貫通するように構成したことで、貫通しない溝部4の場合と比較し、接続構造部分の外径を小径とできる。これは、狭い個所に配管を施工しなければならない場合や、本実施のトラップ管14の両端のように、管体をU字形状に屈曲させた結果、隣接する管体の隙間が狭くなってしまった場合等に、部材をコンパクトにするために有効である。
また、受入管部3には柱部分4aを設けてなり、施工完了時、この柱部分4aには接続部材5の開放端部9および凹部7bが配置される。開放端部9はカバー部16cによって覆われていることから、開放端部9の一端に施工者や使用者の指先が触れる事態は生じにくいが、もし、開放端部9が拡開する外側方向に応力が加わった場合には、開放端部9の他端が柱部分4aの端部に当たって接続部材5が鍔部2や溝部4に沿って回転することができない為、
図31のように、爪部7の係合が外れかけるとともに、凹部7bの角部分が柱部分4aの外側面に接する場合がある。
この場合に、本実施例では、接続部材5に設けた凹部7bに対し、該凹部7bが、内側ほど幅広になるよう構成したことで、角部分が90度を超える角度、いわゆる鈍角となり、柱部分4aの外側面に角部分が引っかかって留まり、挿入管部1と受入管部3との接続が不完全となったまま維持される、ということが無くなった。即ち、接続部材5が衝撃を受けるなどして一時的に適正な接続状態でなくなったとしても、柱部分4aの外側面に角部分が引っかからずスムーズに滑るため、接続部材5の弾性を利用し、元の適正な嵌合状態に復帰することができる。
また、本発明においては、表示構造である赤色の塗装を利用して、接続が適正に行われているかどうかを確認することができる。管体の接続が適正に行われている場合は、施工完了時に赤色の表示を目視することは無い。接続部材5を嵌入する位置を誤り、例えば接続部材5の上方の突起部7aを、第二鍔部13と鍔部2の間に挿入した場合では、受入管部3の溝部4よりも上方の側面部分が露出し、そこに塗られている赤色の塗装が目視され確認されるため、接続部材5による接続が適正に行われていないことが確認できる。
また、本発明においては、カバー部16aには接続部材5の傾斜面8に合致するテーパーが設けられているため、誤って鍔部2と第二鍔部13の間に接続部材5の下側の爪部7が挿入された場合、
図32に示すように、テーパーが爪部7先端に干渉して嵌入を防ぐように構成されている。この時、接続部材5は開放端部9が拡開されたままの状態となるため、外れ方向に対して応力が加わっており、作業者が手を離すと接続部材5の応力によって嵌入が解除される。
【0025】
上記実施例において、配管内部の清掃や、部材が破損し交換等にて対応を行う場合等では、挿入管部1と受入管部3との接続を解除し、清掃また修理を行うことができる。この時は、接続部材5を配管から抜脱することで、挿入管部1と受入管部3との接続を解除することができる。
【0026】
本発明の実施例は以上のようであるが、本発明は上記実施例に限定される物ではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、本発明の管体の接続構造を、洗面台の配管構造に採用して構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、一般的な管体の接続に支障なく利用することができる。また、洗面台やシンク、浴槽・浴室、また洗濯機用防水パン等の様々な排水機器の配管構造、また排水装置の取り付け構造に採用しても構わない。
例えば、
図33に示す本発明の第二実施例は管体としての排水トラップとキャップ体17の接続構造である。排水トラップは略S字形状のトラップ管14であって、キャップ体17はトラップ管14の屈曲部分に取り付けられており、着脱することでトラップ管14の内部を清掃することができる。当該第二実施例においてはキャップ体17に係合部としての爪部7が設けられており、トラップ管14に設けられた被係合部としての段部18と係合することで接続を行う構造となっている。ここで、段部18の周囲にはリブ状のカバー部16が突設されており、
図34に示すように、接続完了時おいて爪部7はその周囲がカバー部16によって覆われ、爪部7に応力が加わってしまい接続が解除されてしまうことを防いでいる。即ち、カバー部16によって係合部である爪部7が保護されている。
【0027】
また、上記第一実施例では、管体は全て円形形状であるが、第二実施例のように管体を軸方向視四角形形状等、円形以外の形状にて構成しても構わない。
【0028】
また、上記実施例では、目印構造は印刷によって構成してなるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば他の部材とは異なる色調で成形した樹脂材を組み合わせるなどで表示するようしても構わない。また、接続部材5の側壁部6に開口を設け、施工完了時、適正であれば、該窓から表示が見えるようにして、「施工が適正であれば目印構造が視認できる」構造としても構わない。
【0029】
また、上記実施例では、上流側の挿入管部1と受入管部3との接続では、受入管部3に接続部材5を嵌入した後に、挿入管部1を受入管部3に挿入し、下流側の挿入管部1と受入管部3との接続では、受入管部3に挿入管部1を挿入した後に、接続部材5を挿入管部1及び受入管部3に嵌入するように、接続作業を行っているが、本発明は特にこれらの手順について何ら限定を行うものではない。
上記実施例においては、接続後に挿入管部1と受入管部3とを回転させて位置調整する場合には受入管部3に挿入管部1を挿入した後接続部材5を嵌入し、接続後に挿入管部1と受入管部3とをほぼ回転させない場合には受入管部3に接続部材5を嵌入した後挿入管部1を挿入する、という要領にて判断しているが、必ずしもこの要領に従う必要も無く、施工後に受入管部3をそれぞれの接続箇所に対し、受入管部3に挿入管部1を挿入した後に、接続部材5を嵌入するようにして接続を行うか、または受入管部3と挿入管部1のいずれか一方に接続部材5を嵌入した後に、挿入管部1を受入管部3に挿入するようにして接続を完了させるかは、状況や必要に応じて、施工者等が作業を容易にできる方を、自由に選択するものである。
また傾斜面8についても、上記実施例においては爪部7上に設けているが、必要に応じて挿入管部1や受入管部3、爪部7のいずれか一つまたはそれぞれに設けて対応するようにしても構わない。
【0030】
又、上記実施例では、カバー部は被係合部を有する側の部材に設けられていたが、
図35に示すように、係合部を有する側の部材である接続部材5にカバー部16が設けられていても良い。又、
図36に示すように、管体の接続が完了した後に取り付けられる別部材にカバー部16が設けられていても良いものであって、部材間の一体・別体を問うものではない。