特許第6446704号(P6446704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446704
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】車両用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/32 20140101AFI20181220BHJP
   E05B 79/08 20140101ALI20181220BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   E05B77/32
   E05B79/08
   B60J5/00 H
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-193480(P2014-193480)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-65369(P2016-65369A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】石黒 克行
(72)【発明者】
【氏名】榎本 大亮
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−137805(JP,A)
【文献】 特開2008−088708(JP,A)
【文献】 特開2011−220094(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0199223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカと噛合可能な噛合機構の噛合を解除させることが可能なリリース方向へ回動可能なオープンレバーと、
ドアに設けられる操作ハンドルの開操作に基づいて作動可能なアウトサイドレバーと、
施解錠操作手段の操作に基づいて、アンロック位置及びロック位置に移動可能なロックレバーと、
前記アウトサイドレバーに連結されると共に、前記アウトサイドレバーの作動に伴うリリース作動により前記オープンレバーをリリース方向へ回動させることが可能なアンロック位置及び不能なロック位置に移動可能であって、前記ロックレバーがロック位置に移動するときには、前記ロックレバーの案内部に当接することによりロック位置に移動し、また、前記ロックレバーがアンロック位置に移動するときには、前記ロックレバーの前記案内部に当接することなく付勢手段の付勢力によりアンロック位置に移動可能なオープンリンクとを備え、
前記オープンリンクは、前記アウトサイドレバーとの連結部分と前記案内部に当接可能な摺動部との間にあって、前記付勢手段を収容可能な収容凹部と、前記収容凹部に形成される支持軸を有し、
前記付勢手段は、前記収容凹部に収容された形態で、コイル部が前記支持軸に支持され、一端が前記アウトサイドレバー、他端が前記オープンリンクにそれぞれ掛止されるスプリングであり、
前記オープンリンクがロック位置からリリース作動した状態で、前記ロックレバーがアンロック方向へ移動した場合、
前記オープンリンクは、前記オープンレバーに対して前記オープンレバーを回動不能な方向から当接することによりアンロック位置への移動が阻止され、この状態で、前記ロックレバーは、前記スプリングの付勢力に抗してアンロック位置に移動可能であって、さらに、前記オープンリンクがリリース作動前の初期位置に戻ることにより、前記スプリングの付勢力によりアンロック位置に移動することを特徴とする車両用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パニック状態を回避可能な車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアラッチ装置において、ロック状態のとき、ドアの開操作と略同時または開操作の直後にアンロック操作が行われると、アンロック状態への切り替えができない状態、いわゆるパニック状態を回避可能としたものとして、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1に記載された車両用ドアラッチ装置は、アンロック位置とロック位置とに移動可能なロックレバーを、メインレバーと、当該メインレバーと同軸上で軸支されると共に、メインレバーに対して相対移動可能なサブレバーとに分割することによって、ロック状態のとき、ドアの開操作の直後にアンロック操作が行われて、サブレバーに連結されたオープンリンク(特許文献1においては、オープン部材)がオープンレバー(同じく、リフトレバー)を作動不可能な方向から当接するパニック状態が発生した場合、メインレバーとサブレバー間に作用するスプリングの付勢力に抗して、メインレバーをアンロック位置に移動可能にすると共に、ドアの開操作を一旦中断することにより、サブレバー及びオープンリンクをスプリングの付勢力によりアンロック位置に移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4196617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された車両用ドアラッチ装置においては、ロックレバーをメインレバーとサブレバーとの2分割する構成に加えて、2分割のレバー間に付勢力を作用させるスプリングを設ける構成であるため、部品点数が多く生産コストがアップする問題点を有している。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、簡単な構成により、パニック状態を回避可能とした車両用ドアラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ストライカと噛合可能な噛合機構の噛合を解除させることが可能なリリース方向へ回動可能なオープンレバーと、ドアに設けられる操作ハンドルの開操作に基づいて作動可能なアウトサイドレバーと、施解錠操作手段の操作に基づいて、アンロック位置及びロック位置に移動可能なロックレバーと、前記アウトサイドレバーに連結されると共に、前記アウトサイドレバーの作動に伴うリリース作動により前記オープンレバーをリリース方向へ回動させることが可能なアンロック位置及び不能なロック位置に移動可能であって、前記ロックレバーがロック位置に移動するときには、前記ロックレバーの案内部に当接することによりロック位置に移動し、また、前記ロックレバーがアンロック位置に移動するときには、前記ロックレバーの前記案内部に当接することなく付勢手段の付勢力によりアンロック位置に移動可能なオープンリンクとを備え、前記オープンリンクは、前記アウトサイドレバーとの連結部分と前記案内部に当接可能な摺動部との間にあって、前記付勢手段を収容可能な収容凹部と、前記収容凹部に形成される支持軸を有し、前記付勢手段は、前記収容凹部に収容された形態で、コイル部が前記支持軸に支持され、一端が前記アウトサイドレバー、他端が前記オープンリンクにそれぞれ掛止されるスプリングであり、前記オープンリンクがロック位置からリリース作動した状態で、前記ロックレバーがアンロック方向へ移動した場合、前記オープンリンクは、前記オープンレバーに対して前記オープンレバーを回動不能な方向から当接することによりアンロック位置への移動が阻止され、この状態で、前記ロックレバーは、前記スプリングの付勢力に抗してアンロック位置に移動可能であって、さらに、前記オープンリンクがリリース作動前の初期位置に戻ることにより、前記スプリングの付勢力によりアンロック位置に移動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、一端をアウトサイドレバー、他端をオープンリンクにそれぞれ掛止し、オープンリンクをアンロック方向へ付勢するスプリングを設けたことにより、簡単な構成で、円滑かつ確実にパニック状態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係わる車両用ドアラッチ装置の正面図である。
図2】同じくドアラッチ装置の斜め後方から見た斜視図である。
図3】同じくドアラッチ装置の車外側から見た側面図である。
図4】同じくドアラッチ装置の車内側から見た側面図である。
図5】要部の分解斜視図である。
図6】アンロック状態にあるときの要部の側面図である。
図7】ロック状態にあるときの要部の側面図である。
図8】リリース作動状態における要部の側面図である。
図9】空振り作動状態における要部の側面図である。
図10】パニック発生状態における要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
(ドアラッチ装置1の基本構造)
図1〜4に示すように、ドアラッチ装置1は、車両のフロントドア(以下、「ドア」という)内に取り付けられ、ドアを閉鎖状態に保持するための噛合ユニット2と、噛合ユニット2に組み付けられる操作ユニット3とを備えている。
【0013】
噛合ユニット2は、主な要素として、ドア内の後端部に図示略の複数のボルトにより固定される合成樹脂製のボディ4、ボディ4の表面側(後面側)を向く開口を閉塞する金属製のカバープレート5、及びボディ4の裏面(前面)に固定される金属製のバックプレート6を含むベース(符号無し)と、ベース内に収容され、車体側に固着されるストライカSと噛合可能なラッチ7及びラッチ7に係合可能なラチェット8を含む噛合機構(符号無し)と、ラチェット8とラッチ7との係合関係を解除させるオープンレバー9とを備える。
【0014】
ラッチ7は、ボディ4とカバープレート5間に前後方向を向くラッチ軸10により枢支されると共に、外周下部には、ラチェット8が係合可能なフルラッチ係合部71及びハーフラッチ係合部72が設けられている。
【0015】
また、ラッチ7は、ドアの閉動作に伴って、ストライカSに噛合していないドアの開状態に対応するオープン位置(図1に示す位置から反時計方向へ略90度回転した位置)から図示略のスプリングの付勢力に抗して時計方向へ回動して、ストライカSに僅かに噛合するドアの半ドア状態に対応するハーフラッチ位置を通過してストライカSに完全に噛合するドアの全閉状態に対応するフルラッチ位置(図1に示す位置)へ回動し、また、ドアの開動作に伴ってその逆へ回動する。
【0016】
ラチェット8は、ラッチ7の下方にあって、ボディ4とカバープレート5間に前後方向を向くラチェット軸11により枢支されると共に、スプリング12により係合方向(図1において時計方向で、ラッチ7のフルラッチ係合部71、ハーフラッチ係合部72に係合する方向)へ付勢され、ラッチ7のフルラッチ係合部71に係合することでドアを全閉状態に保持し、また、ハーフラッチ係合部72に係合することでドアを半ドア状態に保持する。
【0017】
オープンレバー9は、ボディ4の前方を向く裏面側に、ラチェット8と同軸上で、かつラチェット8と一体的に回動可能に枢支されると共に、車内側へ延伸する端部には、被解除部91が設けられる。
【0018】
主に、図2〜4に示すように、操作ユニット3は、ボディ4に固定される合成樹脂製のケーシング15と、ケーシング15内に収容される操作機構(符号無し)を備える。操作機構は、主な要素として、モータ16と、モータ16の回転により正逆回転可能なウォームホイール17と、ドアの開操作を有効にするアンロック位置及び無効にするロック位置に移動可能なロックレバー18と、ドアの車内側に設けられる手動用の施解錠操作手段をなす図示略のロックノブに連結されるノブレバー19と、ロックレバー18と共にアンロック位置及びロック位置に移動可能なオープンリンク20と、ドアの車内側に設けられる図示略のドア開操作用のインサイドハンドルに連結されるインサイドレバー21と、ドアの車外側に設けられる図示略のキーシリンダに連結されるキーレバー22と、ドアの車外側に設けられる図示略のドア開操作用のアウトサイドハンドルに連結されるアウトサイドレバー23とを含んで構成される。ロックレバー18、ノブレバー19及びオープンリンク20は、本実施例に係る施解錠機構を構成する。
なお、図2〜4は、操作ユニット3の内部構造を明示するため、ケーシング15の一部を省略して示している。
【0019】
ウォームホイール17は、車内方向を向く軸171によりケーシング15に枢支されると共に、モータ16の回転に基づいて、スプリング24の付勢力に抗して、中立位置(図3、4に示す位置)から正逆回転し、モータ16の回転が停止すると、スプリング24の付勢力により回転した位置から中立位置に戻る。
【0020】
ノブレバー19は、ケーシング15に車内外方向を向く軸191によりケーシング15に枢支されると共に、ロックノブのアンロック操作及びロック操作に基づいて、図4に示すアンロック位置及びアンロック位置から時計方向へ所定角度回動したロック位置に回動する。
【0021】
キーレバー22は、車内外方向を向く軸221により枢支されると共に、キーシリンダの操作に基づいて、中立位置(図3に示す位置)からアンロック方向及びロック方向へ回動し、当該回動をもってロックレバー18をアンロック位置及びロック位置に回動させる。
【0022】
ロックレバー18は、ケーシング15内に車内外方向を向く軸181により枢支されると共に、ウォームホイール17に設けられた歯部172に噛合する歯部183を有し、キーシリンダの操作に基づくキーレバー22の回動、ロックノブの操作に基づくノブレバー19の回動、及びモータ16の回転に基づくウォームホイール17の回動により、アウトサイドハンドル及びインサイドハンドルの開操作を有効にするアンロック位置(図3、4、6に示す位置)及び当該アンロック位置から図6において時計方向へ所定角度回動し、アウトサイドハンドル及びインサイドハンドルの開操作を無効にするロック位置(図7に示す位置)に回動可能であって、ケーシング15に支持されるトーションスプリングにより形成される保持部材25の弾性力によってアンロック位置及びロック位置にそれぞれ弾性保持される。
なお、ロックレバー18は、アンロック位置に作動した場合には、ケーシング15に設けた図示略のストッパに当接することによりアンロック位置に停止し、また、ロック位置に作動した場合には、ケーシング15に設けた図示略のストッパに当接することにより、ロック位置に停止する。
【0023】
保持部材25は、一端がケーシング15に掛止され、山形状の他端がロックレバー18の弾性係合することにより、アンロック位置とロック位置間の略中間地点を境にして、ロックレバー18に作用する付勢方向がアンロック方向(図6において反時計方向)からロック方向(図6において時計方向)またはその反対方向へ切り替わる構成を有している。
【0024】
オープンリンク20は、下部がアウトサイドレバー23の車内側の端部の連結部232に前後方向へ所定角度回動可能に連結されると共に、上部がロックレバー18に上下方向へ摺動可能に連結されることによって、ロックレバー18の動作に連動して、アウトサイドレバー23の連結部232を中心にアンロック位置(図3、4、6に示す位置)及び当該アンロック位置から時計方向へ所定角度回動したロック位置(図7に示す位置)に回動する。オープンリンク20の上下方向の略中央部には、アンロック位置にあるとき、オープンレバー9の被解除部91に対して下方から当接可能な解除部201が設けられる。
【0025】
アウトサイドレバー23は、前後方向の軸231によりボディ4の下側に枢支されると共に、アウトサイドハンドルの開操作に基づいて、図示略のスプリングの付勢力に抗してリリース方向へ回動し、当該回動によりオープンリンク20を上方へリリース作動させる。
【0026】
インサイドレバー21は、車内外方向を向く軸211により枢支されると共に、インサイドハンドルの開操作に基づいて、軸211を中心に図4において時計方向へ回動し、当該回動をアウトサイドレバー23を介してオープンリンク20に伝達する。
【0027】
ドアが全閉状態にあって、図6に示すように、施解錠機構がアンロック状態にある場合、アウトサイドレバー23がアウトサイドハンドル又はインサイドハンドルの開操作に基づいてリリース作動すると、図8に示すように、オープンリンク20は、初期位置であるアンロック位置から上方へリリース作動し、当該リリース作動により解除部201がオープンレバー9の被解除部91に下方から当接し、オープンレバー9をリリース方向へ回動させる。これにより、ラチェット8がラッチ7のフルラッチ係合部71から外れてドアの開きを可能にする。
【0028】
また、ドアが全閉状態にあって、図7に示すように、施解錠機構がロック状態にある場合には、オープンリンク20がアウトサイドレバー21のリリース作動により上方へリリース作動しても、図9に示すように、解除部201がオープンレバー9の被解除部91に対して空振り移動して、オープンレバー9をリリース方向へ回動させることができないため、ドアを開けることはできない。
【0029】
(特徴部分の構造)
次に、主に図5〜10に基づいて、本発明における特徴部分について説明する。
オープンリンク20は、下部に設けた鼓状の連結孔202にアウトサイドレバー23の連結部232が挿入されることによってアウトサイドレバー23に対して連結部232を中心に前後方向へ揺動可能に連結されると共に、オープンリンク20の下部に支持された付勢手段を構成するトーションスプリング32により常時アンロック位置へ向かう方向(以下、「アンロック方向」という)への付勢力が付与されている。
【0030】
オープンリンク20の上部には、ロックレバー18の下部に設けた案内部182に対して摺動可能で、かつロックレバー18のロック方向への回動に対してのみ当接可能な摺動部203が設けられる。
【0031】
トーションスプリング32は、オープンリンク20の側面に形成された収容凹部205に収容されると共に、コイル部321が収容凹部205内に形成された支持軸204に支持され、下方を向くアーム部322がアウトサイドレバー23の連結部232に掛止され、上方を向くアーム部323がオープンリンク20に掛止されることによって、オープンリンク20に対して連結部232を中心にアンロック方向への付勢力を付与している。なお、トーションスプリング32の付勢力は、ロックレバー18をロック位置に弾性保持する保持部材25の付勢力よりも小となるように設定されている。
【0032】
オープンリンク20は、ロックレバー18のアンロック位置からロック位置への回動に対しては、案内部182が摺動部203に対して回動方向へ当接することによりアンロック位置からロック位置へ回動し、ロックレバー18のロック位置からアンロック位置への回動に対しては、ロックレバー18に対して当接することなくトーションスプリング32の付勢力によりロックレバー18の回動に追従してロック位置からアンロック位置に回動し、また、アウトサイドレバー23のリリース作動に基づいてリリース方向(上方)へリリース作動する。
【0033】
なお、図7に示すように、ロックレバー18がロック位置に保持されている状態においては、オープンリンク20に対してトーションスプリング32のアンロック方向への付勢力が作用しているが、トーションスプリング32の付勢力は、保持部材25のロックレバー18をロック位置に保持する保持力よりも小であるため、ロックレバー18及びオープンリンク20は、トーションスプリング32の付勢力によりアンロック位置へ回動することはない。
【0034】
ドアが全閉状態にあって、図6に示すように、ロックレバー18及びオープンリンク20がアンロック位置にある場合には、アウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルのドア開操作に基づくアウトサイドレバー23の回動に伴って、オープンリンク20がアンロック位置から上方へリリース作動すると、図8に示すように、オープンレバー20の解除部201がオープンレバー9の被解除部91に下方から当接する。これにより、オープンレバー9は、リリース方向へ回動し、ラチェット8をラッチ7のフルラッチ係合部71から離脱させてドアの開きを可能にする。
【0035】
また、ドアが全閉状態にあって、図7に示すように、ロックレバー18及びオープンリンク20がロック位置にある場合には、アウトサイドハンドルまたはインサイドハンドルのドア開操作に基づくアウトサイドレバー23の回動に伴って、オープンリンク20が初期位置であるロック位置から上方へリリース作動しても、図9に示すように、オープンリンク20の解除部201が、オープンレバー9の被解除部91の前方を横切るように移動して被解除部91に対して当接しないため、オープンレバー9をリリース方向へ回動させることができず、ドアを開けることはできない。
【0036】
次に、パニック状態時の動作を説明する。
図9に示す空振り状態のとき、操作スイッチまたはロックノブがアンロック操作され、モータ16の動力によるウォームホイール17の回転またはロックノブのアンロック操作により、ロックレバー18にアンロック操作力が入力されると、オープンリンク20が空振り状態からアンロック方向へ回動し、オープンリンク20の一部がオープンレバー9の一部に対してオープンレバー9を回動不能な方向から当接して、オープンリンク20のアンロック方向への移動が阻止されるパニック状態が発生する。
【0037】
しかし、本実施例においては、ロックレバー18の案内部182がオープンリンク20の摺動部203に対して一方向、すなわちロック方向へのみ当接することによりオープンリンク20をロック位置に移動させるような当接関係で、かつオープンリンク20の収容凹部205に収容したトーションスプリング32の付勢力をオープンリンク20に対してアンロック方向へ付与した構成であるため、オープンリンク20の一部がオープンレバー9の一部に対してオープンレバー9を回動不能な方向から当接して、オープンリンク20のアンロック方向への移動が阻止されるパニック状態が発生し、図10に示すように、オープンリンク20のアンロック位置への移動が阻止されても、ロックレバー18は、オープンリンク20を途中位置に停止させたまま、トーションスプリング32の付勢力に抗してアンロック位置に回動することができる。
【0038】
そして、アウトサイドハンドル(またはインサイドハンドル)の開操作を中断して、オープンリンク20が下方へ移動し、オープンリンク20の一部がオープンレバー9の一部から外れてリリース作動前の初期位置に戻ることによって、図6に示すように、オープンリンク20は、トーションスプリンク32の付勢力によりアンロック位置へ移動する。
【0039】
そして、アンロック状態に切り替わった後、再び、アウトサイドハンドル(またはインサイドハンドル)を開操作することによってドアを開けることができる。
【0040】
上述により、ロックレバー18がアンロック位置からロック位置に移動するときには、ロックレバー18の案内部182がオープンリンク20の摺動部203に当接することにより、オープンリンク20をアンロック位置からロック位置に移動させ、また、ロックレバー18がロック位置からアンロック位置に移動するときには、案内部182が摺動部203に当接することなく、トーションスプリング32の付勢力により、オープンリンク20をロック位置からアンロック位置に移動させるようにしたので、簡単な構成によって、パニック状態を確実に解消することができる。
【0041】
また、トーションスプリング32をオープンリンク20の収容凹部205に収容した構成であるため、オープンリンク20が作動しているとき、トーションスプリング32がオープンリンク20及びアウトサイドレバー23以外の他要素に接触することを防止することができ、オープンリンク20のリリース作動を円滑することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、本実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
【0043】
(a)付勢手段を、トーションスプリング32以外のスプリングとする。
(b)付勢手段を、トーションスプリング32とした場合、トーションスプリング32のコイル部321をアウトサイドレバー23の連結部232に支持する。
【符号の説明】
【0044】
1 ドアラッチ装置 2 噛合ユニット
3 操作ユニット 4 ボディ
5 カバープレート 6 バックプレート
7 ラッチ(噛合機構) 8 ラチェット(噛合機構)
9 オープンレバー 10 ラッチ軸
11 ラチェット軸 12 スプリング
15 ケーシング 16 モータ(施解錠操作手段)
17 ウォームホイール 18 ロックレバー(施解錠機構)
19 ノブレバー(施解錠機構) 20 オープンリンク(施解錠機構)
21 インサイドレバー 22 キーレバー
23 アウトサイドレバー 24 スプリング
25 保持部材 32 トーションスプリング(付勢手段)
71 フルラッチ係合部 72 ハーフラッチ係合部
91 被解除部 171 軸
172 歯部 181 軸
182 案内部 183 歯部
191 軸 201 解除部
202 連結孔 203 摺動部
204 支持軸 205 収容凹部
211 軸 221 軸
232 連結部 321 コイル部
322、323 アーム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10