特許第6446809号(P6446809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446809
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】放電装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
   C02F1/48 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-68785(P2014-68785)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-188844(P2015-188844A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堂 維大
(72)【発明者】
【氏名】西村 政弥
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 智己
(72)【発明者】
【氏名】山口 幸子
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/033436(WO,A1)
【文献】 特開昭57−070285(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00050188(EP,A1)
【文献】 特開平08−197060(JP,A)
【文献】 特開2005−103442(JP,A)
【文献】 特開2000−093972(JP,A)
【文献】 特開2013−211204(JP,A)
【文献】 特開2013−049015(JP,A)
【文献】 特開2012−182026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番型の電源(33)と、
貯留槽(11)内の液中に配置され、上記電源(33)から電圧が印加される一対の電極(31,32)と、
上記一対の電極(31,32)の間を仕切るように配置され、該一対の電極(31,32)の間で液中放電を生起させる貫通孔(35)を有する絶縁性の仕切板(15)とを備え、
上記仕切板(15)は、平板形状の場合よりも表面積が大きくなる形状に形成され
水中での放電により殺菌因子を発生させることを特徴とする放電装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記仕切板(15)は、粗表面に形成されている
ことを特徴とする放電装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記仕切板(15)は、表面が波形状に形成されている
ことを特徴とする放電装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記仕切板(15)は、表面が複数個の溝部(15a)を形成して作成した凹凸形状に形成されている
ことを特徴とする放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中で放電を生起させて液を浄化する放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中で放電を生起させて殺菌因子を生成する水処理装置が知られている。例えば特許文献1には、この種の水処理装置が開示されている。特許文献1の水処理装置は、タンクに貯留された加湿用の水を浄化する。つまり、この水処理装置は、タンクに貯留された水の中で放電を生起させ、その放電によって生じた水酸ラジカル等の殺菌因子を利用して、タンク内の水を殺菌する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−092920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水などの液中で放電を生起させて液を浄化する放電装置では、その水浄化性能の向上を図ることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明者等が鋭意実験、研究した結果、液中放電の生起により殺菌因子を生成する放電装置では、貯留槽内の液中に1対の電極を配置し、その電極間に小さな貫通孔を有する仕切板を配置し、その1対の電極間に交番電圧を印加して、その貫通孔に放電を生起させる構成を採用する場合には、その貯留槽が仕切板を誘電体としたキャパシタとして機能し、この貯留槽の静電容量の大きさが殺菌因子の発生量に大きく影響することが判った。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯留槽の両電極間に貫通孔を有する仕切板を配置する放電装置において、その貯留槽の静電容量を増やして、殺菌因子の発生量を多くし、液浄化性能の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では、貯留槽の静電容量は仕切板の厚さに反比例し、その誘電率、表面積に比例することから、仕切板の表面積を増やして、殺菌因子の発生量を多くすることとする。
【0008】
具体的に、第1の発明の放電装置は、交番型の電源(33)と、貯留槽(11)内の液中に配置され、上記電源(33)から電圧が印加される一対の電極(31,32)と、上記一対の電極(31,32)の間を仕切るように配置され、該一対の電極(31,32)の間で液中放電を生起させる貫通孔(35)を有する絶縁性の仕切板(15)とを備え、上記仕切板(15)は、平板形状の場合よりも表面積が大きくなる形状に形成され、水中での放電により殺菌因子を発生させることを特徴とする。
【0009】
従って、第1の発明では、貯留槽内では、その貯留槽がその内部の仕切板を誘電体としたキャパシタとして機能する。ここで、絶縁性の仕切板の形状が平板形状の場合よりも表面積が大きくなる形状に形成されているので、貯留槽の静電容量が増大して、液中での殺菌因子の発生量が多くなる。
【0010】
また、第2の発明は、仕切板(15)の表面形状を特定し、仕切板(15)を粗表面に形成している。
【0011】
上記第2の発明では、仕切板の表面形状がザラザラとした粗表面であるので、仕切板の表面積が板状の滑らかな表面と比べると大きくなって、貯留槽の静電容量が増大し、殺菌因子の発生量が多くなる。
【0012】
第3の発明では、仕切板(15)の表面形状を波形状に形成している。
【0013】
上記第3の発明では、仕切板の表面形状が波形状であるので、滑らかな平板形状と比べると仕切板の表面積が大きくなって、貯留槽の静電容量が増大し、殺菌因子の発生量が多くなる。
【0014】
第4の発明では、仕切板(15)の表面形状を複数個の溝部(15a)を形成して作成した凹凸形状に形成している。
【0015】
従って、第4の発明では、仕切板の表面形状が複数個の溝部(15a)を形成して作成した凹凸状であるので、滑らかな平板形状と比べると仕切板の表面積が大きくなって、貯留槽の静電容量が増大し、殺菌因子の発生量が多くなる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、交番型の電源を貯留槽内の一対の電極間に印加する場合に、その両電極間に位置する貫通孔を有する仕切板の表面積を大きくして、貯留槽の静電容量を増やしたので、殺菌因子の発生量を多くできて、水の殺菌などの浄化性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は実施形態1に係る放電装置を含む水処理部を示す図である。
図2図2は同水処理部を模式的に示す図である。
図3図3は実施形態1に係る放電ユニットを示す概略の断面図である。
図4図4は実施形態1に係る高電圧発生部で発生させる電圧波形を示す図である。
図5図5は実施形態1に係る放電ユニットの一部を拡大して示す図である。
図6図6は同水処理部の仕切板の概略構成を示す斜視図である。
図7図7(a)は仕切板の表面積と処理槽の静電容量との関係を示す図、同図(b)は処理槽の静電容量と殺菌因子の発生量との関係を示す図である。
図8図8は実施形態2に係る水処理部の仕切板の概略構成を示す斜視図である。
図9図9(a)は実施形態3に係る水処理部の仕切板の概略構成を示す斜視図、同図(b)は同仕切板の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
〈実施形態1〉
図1及び図2は、本発明の実施形態の放電装置を含む水処理部の全体構成を示す。
【0020】
図1及び図2に示すように、水処理部(10)は、水配管(3)の流入部(3a)から流入させた水を浄化して水配管(3)の流出部(3b)から流出させるものである。この水処理部(10)は、噴霧装置(40)と、処理槽(11)と、下流槽(50)と、複数の放電ユニット(30a,30b)を備えている。水処理部(10)は、水処理部(10)の上流側の水配管(3)から流入させた水を噴霧装置(40)から処理槽(11)に供給し、該処理槽(11)において放電ユニット(30a,30b)で発生した殺菌因子により浄化し、浄化した水を下流槽(50)に供給し、下流槽(50)から水処理部(10)の下流側の水配管(3)に流出させている。
【0021】
上記処理槽(11)は、平面視で略長方形状に形成され、内部に水を貯留する箱体状の貯留槽である。具体的には、処理槽(11)は、平面視で略長方形の平板に形成された底部(12)と、横長の略長方形の平板に形成され、且つ底部(12)の両長辺からそれぞれ上方に延びる長壁部(13,13)と、縦長の略長方形状の平板に形成され、且つ底部(12)の両短辺からそれぞれ上方に延びる短壁部(14a,14b)とで形成されている。処理槽(11)の長手方向の他端側(すなわち、水の流出側)の短壁部(14b)は、その高さが処理槽(11)の長手方向の一端側(すなわち、水の流入側)の短壁部(14a)よりも低く形成されて流出口部(17)が形成されている。
【0022】
上記処理槽(11)の内部には、その幅方向に所定間隔を置いて仕切板(15)が配置されている。仕切板(15)は、横長の略長方形状の平板に形成され、処理槽(11)の長手方向に沿って配置されて該処理槽(11)の内部を複数のレーン(21a,22b)に仕切っている。仕切板(15)は、電気絶縁性を有する材料で形成されている。また、後述する第1流路(21)に配置される仕切板(15)には、図3に示すように、開口部(16)が形成されている。上記処理槽(11)には、仕切板(15)によって、図1における手前側から順に第1及び第2レーン(21a,21b)が形成されている。尚、処理槽(11)に形成されるレーン(21a,21b)の数は、例示であり、水処理部(10)が浄化する水量に応じて任意に変更することができる。
【0023】
また、各レーン(21a,21b)は、第1及び第2レーン(21a,21b)が一対となって第1流路(21)を形成している。
【0024】
図1に示すように、上記処理槽(11)の内部には、その流入側から順に複数の第1仕切板(61)、複数の第2仕切板(62)及び複数の第3仕切板(63)が配置されている。各第1〜第3仕切板(61〜63)は、上述したレーン(21a,21b)ごとに一つずつ設けられる。各第1〜第3仕切板(61〜63)は、縦長の略長方形状の平板に形成され、処理槽(11)の幅方向に沿って配置されてレーン(21a,21b)を仕切っている。各第1及び第3仕切板(61,63)は、その高さが処理槽(11)の流入側の短壁部(14a)と同じ高さに形成されている。各第1及び第3仕切板(61,63)は、その下端が処理槽(11)の底部(12)に達しないように形成されて流出口部(64,65)が形成されている。各第2仕切板(62)は、その高さが処理槽(11)の流出側の短壁部(14b)よりも低く形成されて流出口部(66)が形成されている。各第2仕切板(62)は、その下端が処理槽(11)の底部(12)に接する(達する)ように形成されている。
【0025】
処理槽(11)における第1仕切板(61)の上流側を流れる水は、流出口部(64)から第1仕切板(61)の下流側に噴出することで、その流速が増し、第2仕切板(62)に当たる。このため、図1中反時計回りに回転する渦が発生する。処理槽(11)における第2仕切板(62)の上流側を流れる水は、流出口部(66)から第2仕切板(62)の下流側に噴出することで、その流速が増し、第3仕切板(63)に当たる。このため、図1中時計回りに回転する渦が発生する。処理槽(11)における第3仕切板(63)の上流側を流れる水は、流出口部(65)から第3仕切板(63)の下流側に噴出することで、その流速が増し、処理槽(11)の流出側の短壁部(14b)に当たる。このため、図1中反時計回りに回転する渦が発生する。したがって、処理槽(11)の水は攪拌される。
【0026】
上記の構成により、処理槽(11)の水は、第1仕切板(61)の下流側で且つ第2仕切板(62)の上流側において、上方に向かって流れ、第2仕切板(62)の下流側で且つ第3仕切板(63)の上流側において、下方に向かって流れ、第3仕切板(63)の下流側において、上方に向かって流れる。このように、処理槽(11)の水はS字状(ジグザグ)に流れる。また、第1流路(21)の流路長は長くなる。このため、処理槽(11)の水はより一層攪拌される。
【0027】
図3に示すように、上記放電ユニット(30)は、上述した一対のレーン(21a,21b)に一つ設けられる。
【0028】
上記放電ユニット(30)は、第1流路(21)の水を浄化するものである。放電ユニット(30)は、電極対(31,32)と、この電極対(31,32)に接続され、該電極対(31,32)に所定の電圧を印加する高電圧発生部(33)と、上述した開口部(16)が形成された仕切板(15)とを備えている。仕切板(15)には、放電部材(34)が設けられている。
【0029】
上記電極対(31,32)は、水中で放電を生起するためのものであり、ホット側の電極(31)とニュートラル側の電極(32)とで構成されている。電極(31)は、扁平な板状に形成され、第1レーン(21a)に配置されている。電極(31)は、高電圧発生部(33)に接続されている。上記電極(32)は、扁平な板状に形成され、第2レーン(21b)に配置されている。電極(32)は、高電圧発生部(33)に接続されている。また、電極(31)と電極(32)とは互いに略平行となるように配設されている。尚、これらの電極(31,32)は、例えば耐腐食性の高い金属材料で構成されている。
【0030】
上記高電圧発生部(33)は、電極対(31,32)に所定の電圧を印加する電源で構成されている。本実施形態では、高電圧発生部(33)は、例示として、図4に示すように、電極対(31,32)に対して、正負が入れ替わる交番型の方形波に形成される電圧を印加する。この交番波形(方形波)のDutyは、正極性側と負極性側の割合が等しくなるように調節されている。尚、電極対(31,32)に印加される電圧は、例示であって、交番型の電圧であれば、方形波に限らず、正弦波などでもよい。
【0031】
上記放電部材(34)は、板状の絶縁部材である。放電部材(34)は、例えばセラミックス等の電気絶縁材料で構成されている。尚、セラミックスは、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ジルコニア又はアルミナである。放電部材(34)は、第1レーン(21a)と第2レーン(21b)とを仕切る仕切板(15)に形成された開口部(16)を塞ぐように配置されている。放電部材(34)には、その略中央に微小な貫通孔である放電孔(35)が形成されている。放電孔(35)は、例えば、電気抵抗が数MΩとなるように設計されている。この放電孔(35)は、電極(31)と電極(32)との間の電流経路を構成している。以上のような放電孔(35)は、電極対(31,32)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部となる。図5に示すように、電極(31)及び電極(32)に電圧が付与されると、放電部材(34)の放電孔(35)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(C)が形成される。そして、気泡(C)内では、気泡(C)と水との界面が電極となって放電が発生する。すなわち、この放電では、上記電極(31)及び電極(32)が放電電極とならないため、放電によって電極(31,32)が劣化するのを抑制できる。
【0032】
上記噴霧装置(40)は、水配管(3)に接続され、該水配管(3)の流入部(3a)から流入させた水を噴霧して処理槽(11)に供給するものである。噴霧装置(40)は、ノズルヘッダ(41)と、各レーン(21a,21b)に対応した複数の噴霧ノズル(42)とを備えている。
【0033】
上記ノズルヘッダ(41)は、その側面に水配管(3)が接続され、水配管(3)から流入する水を各噴霧ノズル(42)に分けるように設けられている。
【0034】
上記噴霧ノズル(42)は、ノズルヘッダ(41)の長手方向に所定の間隔を置いて複数個設けられている。噴霧ノズル(42)は、各レーン(21a,21b)に対応して設けられている。水配管(3)を流れる水は、流入部(3a)からノズルヘッダ(41)に流入し、噴霧ノズル(42)から粒状(液滴)となって対応するレーン(21a,21b)における第1仕切板(61)の上流側に向かって噴霧される。このとき、噴霧ノズル(42)から噴霧された水が粒状(液滴)となることで各粒間(各液滴間)に空気が介在して電気抵抗が高くなる。こうすることで、水配管(3)の流入部(3a)から流入する水と、処理槽(11)を流れる水とが電気的に絶縁されることになる。尚、噴霧ノズル(42)によって噴霧させることによって、水配管(3)の流入部(3a)の水と、処理槽(11)の水との間の電気抵抗は、数百MΩ以上となる。
【0035】
下流槽(50)は、水処理部(10)と流出部(3b)側の水配管(3)の水とを電気的に絶縁するように構成されている。具体的に、下流槽(50)は、図1に示すように、処理槽(11)の水の流出側に連結するように設けられ、4面の外壁部(51a,51a,51b,51c)からなる箱状の水槽である。ここで、外壁部(51c)の下部には、水配管(3)の流出部(3b)が接続されている。更に、下流槽(50)は、処理槽(11)の流出口部(17)から図中右斜め下方向に延びて水を落下させるスロープ(52)を備えている。このスロープ(52)の下端は、曲面状に反り上がっていて、処理槽(11)の出口から水配管(3)の水面までの鉛直距離よりも処理槽(11)の出口から水配管(3)の水面までの水の移動距離を長くする。また、スロープ(52)の表面は撥水性を有している。そのため、下流槽(50)では、処理槽(11)で処理された水が流出口部(17)を超えると、その処理された水が、スロープ(52)の表面を雫状に落下した後に、その下端で図中右斜め上方向にジャンプすることにより微細化し、その微細した水が底面の外壁部(51b)に落下することになる。
【0036】
上記下流槽(50)では、処理槽(11)の流出口部(17)から供給された水が外壁部(51b)の表面又は貯留された水面に落下する際に、スロープ(52)を介して雫状になると共に、その粒が小さくなることにより、各粒間(各液滴間)に空気が介在して電気抵抗が高くなる。これにより、処理槽(11)を流れる水と、水配管(3)の流出部(3b)の水とが電気的に絶縁されることになる。
【0037】
―仕切板の構成―
上記第1流路(21)において第1レーン(21a)と第2レーン(21b)とを仕切る仕切板(15)は、その一対の電極(31,32)に対向する表面がザラザラ状の粗表面に形成される。この祖表面の形成は例えばショットブラスト処理などで行われる。
【0038】
−運転動作−
本実施形態に係る水処理部(10)において、水配管(3)を流れる水を処理する水処理がなされる。
【0039】
水配管(3)を流れる水は、流入部(3a)からノズルヘッダ(41)内に流入し、噴霧ノズル(42)から各レーン(21a,21b)に噴霧され、処理槽(11)内に水が貯留される。このとき、噴霧された水は、粒状(液滴)となっているため、各液滴間に空気が介在して電気抵抗が高くなる。このため、水配管(3)の流入部(3a)から流入する水と、処理槽(11)を流れる水とが電気的に絶縁される。また、処理槽(11)内では、第1〜第3仕切板(61)〜(63)により水流方向が上方向と下方向とに交互に変化しつつ渦が発生して、攪拌される。
【0040】
水処理部(10)の運転開始時には、処理槽(11)内が浸水した状態となっている。高電圧発生部(33)から電極対(31,32)に対して極性の割合が等しい方形波の高電圧が印加されると、放電部材(34)の放電孔(35)の電流経路の電流密度が上昇する。
【0041】
放電孔(35)内の電流経路の電流密度が上昇すると、放電孔(35)内のジュール熱が大きくなる。その結果、放電部材(34)では、放電孔(35)の内部及び出入口の近傍において、水の気化が促進されて気体相としての気泡(C)が形成される。この気泡(C)は、図5に示すように、放電孔(35)の全域を覆う状態となる。この状態では、気泡(C)が電極(31)と電極(32)との間で水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、電極(31,32)と水とが同電位となり、気泡(C)と水との界面が電極となる。すると、気泡(C)内では、絶縁破壊が起こり、放電が発生する。
【0042】
以上のようにして、気泡(C)内で放電が行われると、処理槽(11)の水中では、過酸化水素、水酸ラジカルなどの殺菌因子が発生する。処理槽(11)内では水が攪拌されているので、これ等の殺菌因子はその水中に均一に拡散する。
【0043】
その後、処理槽(11)の各レーン(21a,21b)を流れる水は、流出口部(17)から下流槽(50)に向かって流れ落ちる。このとき、流出口部(17)から下流槽(50)に流れ落ちる水は雫となるため、各粒間(液滴間)に空気が介在して電気抵抗が高くなる。こうすることで、処理槽(11)に貯留された水と下流槽(50)を流れる水とが電気的に絶縁される。
【0044】
−実施形態の効果−
本実施形態では、仕切板(15)の電極(31,32)に対向する表面がザラザラとした粗表面に形成されているので、仕切板(15)の表面積は、板状の滑らかな表面と比べると大きくなっており、処理槽(11)内の水との接触面積が大きくなっている。処理槽(11)では、第1レーン(21a)と第2レーン(21b)とを流れる水の間に電位差があり、このため、処理槽(11)は、その内部の仕切板(15)を誘電体として一種のキャパシタを構成する。この仕切板(15)を内部に有する処理槽(11)の静電容量は仕切板(15)の表面積に比例する。実際、発明者等が仕切板(15)の表面積と処理槽(11)の静電容量との関係を実験したところ、図7(a)に示すように、仕切板(15)の表面積の増大に比例して処理槽(11)の静電容量も増大していることが確認された。また、発明者等が処理槽(11)の静電容量と処理槽(11)内の水中の殺菌因子(過酸化水素)との関係を実験したところ、図7(b)に示すように、処理槽(11)の静電容量の増大に比例して過酸化水素の発生量も増量していることが確認された。
【0045】
従って、処理槽(11)の大きな静電容量によって過酸化水素などの殺菌因子の発生量が多くなって、処理槽(11)内の水に対する浄化性能が向上する。
【0046】
〈実施形態2〉
図8は本発明の実施形態2を示す。本実施形態では、仕切板(15)の表面形状を変更したものである。
【0047】
同図に示した水処理部(10)では、仕切板(15)の電極(31,32)に対向する側の表面を、一対の電極(31,32)の位置する方向(仕切板(15)の厚さ方向)に蛇行する波形状としたものである。
【0048】
従って、本実施形態においても、仕切板(15)の表面積を滑らかな平板形状と比べて大きくできるので、処理槽(11)の静電容量が増大して、水酸ラジカル等の殺菌因子の発生量を多くでき、処理槽(11)内の水浄化性能の向上を図ることが可能である。
【0049】
しかも、本実施形態では、仕切板(15)表面の波形状によって処理槽(11)内で水が図8中紙面前後方向(すなわち、一対の電極(31,32)が並ぶ方向)にも攪拌される。従って、処理槽(11)内で水が上流側から下流槽(50)に向って流れる際に、その水流は仕切板(15)と対向する長壁部(13)側に攪拌されて、仕切板(15)の放電孔(35)で発生した水酸ラジカル等の殺菌因子を長壁部(13)側に拡散するので、その拡散した殺菌成分と処理槽(11)内を流れる水全体に含まれる菌との混合力が高まって、水浄化性能が向上することになる。
【0050】
〈実施形態3〉
図9は本発明の実施形態3を示す。本実施形態では、仕切板(15)の表面形状を更に変更したものである。
【0051】
図9(a)に示した水処理部(10)では、仕切板(15)の電極(31,32)に対向する側の表面を凹凸形状としたものである。この凹凸形状は、同図(b)にも示したように、所定間隔毎に上下方向に延びる断面四角形状の溝部(15a)を複数個形成して作製したものである。
【0052】
従って、本実施形態においても、仕切板(15)の表面を複数個の溝部(15a)を形成して作成した凹凸形状として、その表面積を滑らかな平板形状と比べて大きくできるので、処理槽(11)の静電容量を増大させて、水酸ラジカル等の殺菌因子の発生量を多くでき、処理槽(11)内の水浄化性能の向上を図ることが可能である。
【0053】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0054】
上記実施形態では、仕切板(15)の表面を粗形状、波形状、凹凸形状としたが、本発明はこれ等の表面形状に限定されず、表面積を大きくする種々の形状を採用しても良い。例えば、仕切板(15)の表面を断面のこぎり形状などとして、その表面積を大きくする場合をも含む。
【0055】
また、上記実施形態では、水処理部(10)(放電装置)に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されないし、水中に限らず、その他の液中で放電させる放電装置も含む。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、一対の電極間に放電を生起させる放電装置について、有用である。
【符号の説明】
【0057】
3 水配管
10 水処理部
11 処理槽(貯留槽)
15 仕切板
15a 溝部
21a 第1レーン
21b 第2レーン
31、32 電極
33 高電圧発生部(交番型の電源)
35 放電孔(貫通孔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9