(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446824
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】穀物乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 17/14 20060101AFI20181220BHJP
F26B 25/22 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
F26B17/14 B
F26B25/22 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-91659(P2014-91659)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-210017(P2015-210017A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 啓市
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸治
【審査官】
黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−074584(JP,A)
【文献】
特開2006−234333(JP,A)
【文献】
特開2001−074371(JP,A)
【文献】
特開2000−028266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を搬送する搬送機構と、排風ファンと、水分計と、乾燥機内に流入する吸引風の有無を検出する風圧センサを備え、前記搬送機構と排風ファンを駆動して貯留室内の穀物を機外に排出する排出運転時に、搬送機構で搬送中の穀物から水分計でサンプル穀物を設定間隔で採取し、サンプル穀物を採取できなくなると穀物無しと判定して排出運転を自動的に停止する制御手段を備える穀物乾燥機において、
風圧センサの検出位置とは異なる位置で、かつ、排風ファンと対向する側に点検蓋で開閉する点検口を備え、
水分計がサンプル穀物を採取しなくても排出運転の動作を継続する清掃運転を行う清掃運転モードを備え、
清掃運転モード時は、風圧センサの機能を停止する構成とし、
乾燥運転時間を検出するタイマーを備え、該タイマーが前記乾燥運転時間の累積時間が予め設定する乾燥運転時間を超えたことを検出すると、清掃運転を行うよう表示手段に表示すると共に、該表示は、乾燥運転中に前記累積時間が超えた場合にはその旨を表示せず、当該乾燥運転の終了時、又は、次に乾燥機の電源を入れたとき、又は、次の乾燥運転で張込スイッチを操作したときにその旨を表示することを特徴とする穀物乾燥機。
【請求項2】
前記乾燥運転時間は、搬送機構の駆動モータの累積の駆動時間であることを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥機。
【請求項3】
前記乾燥運転時間は、穀物を循環させる燃焼運転又は通風運転の累積時間であることを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥機。
【請求項4】
清掃運転は、操作盤の排出スイッチを設定時間内に複数回操作することで開始することを特徴とする請求項1から請求項3いずれか記載の穀物乾燥機。
【請求項5】
清掃運転は、排出運転が自動的に停止した後に、再度排出スイッチを操作すると開始することを特徴とする請求項1から請求項4いずれか記載の穀物乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水分計に基づく穀物自動排出停止の技術が記載されている。
特許文献2には、穀物の排出作業後に設定時間清掃運転を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5115119号
【特許文献2】特開平2−178585
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水分計に基づく自動停止の機能があると、穀物が無い状態で排出運転を行うと、水分計が穀物を採取できないことによる自動停止が行われるため、オペレータは任意に清掃運転ができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、
請求項1記載の発明は、
穀物を搬送する搬送機構と、排風ファンと、水分計と、乾燥機内に流入する吸引風の有無を検出する風圧センサを備え、前記搬送機構と排風ファンを駆動して貯留室内の穀物を機外に排出する排出運転時に、搬送機構で搬送中の穀物から水分計でサンプル穀物を設定間隔で採取し、サンプル穀物を採取できなくなると穀物無しと判定して排出運転を自動的に停止する制御手段を備える穀物乾燥機において、
風圧センサの検出位置とは異なる位置で、かつ、排風ファンと対向する側に点検蓋で開閉する点検口を備え、
水分計がサンプル穀物を採取しなくても排出運転の動作を継続する清掃運転を行う清掃運転モードを備え、
清掃運転モード時は、風圧センサの機能を停止する
構成とし、
乾燥運転時間を検出するタイマーを備え、該タイマーが前記乾燥運転時間の累積時間が予め設定する乾燥運転時間を超えたことを検出すると、清掃運転を行うよう表示手段に表示すると共に、該表示は、乾燥運転中に前記累積時間が超えた場合にはその旨を表示せず、当該乾燥運転の終了時、又は、次に乾燥機の電源を入れたとき、又は、次の乾燥運転で張込スイッチを操作したときにその旨を表示することを特徴とする穀物乾燥機とする。
【0006】
これにより、オペレータは張込穀物無し時の清掃運転をおこなうことができる。
また、清掃運転時に、点検蓋を開けて点検口が開口と吸引風がそこから流入したとき、風圧センサが吸引風を検出せず異常を判定することを停止することで、オペレータが点検蓋を開けて点検口から棒を挿入して残留異物を掻き出して排風ファンによる機外排出を促進させることが出来る
。
【0007】
また、定期的に清掃運転を行うようにオペレータに促すことができる。
請求項2記載の発明は、前記乾燥運転時間は、搬送機構の駆動モータの累積の駆動時間であることを特徴とする
請求項1記載の穀物乾燥機とする。
【0008】
これにより定期的に、適切な時期に清掃運転を行うようにオペレータに促すことが出来る。
請求項3記載の発明は、前記乾燥運転時間は、穀物を循環させる燃焼運転又は通風運転の累積時間であることを特徴とする
請求項1記載の穀物乾燥機とする。
【0009】
これにより適切な時期に清掃運転を行うようにオペレータに促すことが出来る。
請求項4記載の発明は、清掃運転は、操作盤の排出スイッチを設定時間内に複数回操作することで開始することを特徴とする請求項1から
請求項3いずれか記載の穀物乾燥機とする。
【0010】
排出運転と同じ運転を行う清掃運転について、オペレータが分かり易い。また、誤操作を防止できる。
請求項5記載の発明は、清掃運転は、排出運転が自動的に停止した後に、再度排出スイッチを操作すると開始することを特徴とする
請求項1から請求項4いずれか記載の穀物乾燥機とする。
【0011】
排出運転と同じ運転を行う清掃運転について、オペレータが分かり易い。また、誤操作を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
清掃運転モードを備えることで機内に残る塵埃や異物・残留穀物を機外に排出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6】オペレータが点検窓から機体内に棒を挿入したことを示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
穀物乾燥機は箱体状に形成され、上から穀物を収容する貯留部1と、穀物を乾燥する乾燥部2を備え、箱体前側には燃焼バーナ3を収容する燃焼バーナケース4を設け、箱体後側には乾燥部2の熱風を吸引して機外に排出する排風ファン5を設けている。
【0015】
乾燥部2は燃焼バーナ3で生成した熱風が供給される熱風室6と排風ファン5の吸引作用がなされる排風室7と、熱風室6と排風室7の間の穀物流下通路8とを備える。穀物流下通路8は多数のスリット等を形成し、熱風室6内の熱風を穀物流下通路8を流入可能に形成している。熱風は熱風室6から穀物流下通路8に流入し、穀物に乾燥作用を及ぼし、排風室7から吸引されて排風ファン5で機外に排出される。
【0016】
次に、穀物を循環あるいは排出する搬送機構Hについて説明する。
箱体の前側に備えるバケット10a式の昇降機10を備え、箱体の上部には昇降機10で搬送された穀物を貯留部1まで搬送する上部コンベア11と、上部コンベア11で搬送された穀物を貯留部1全体に拡散させる拡散羽根12を設けている。
【0017】
乾燥部2の下部には乾燥部2を流下する穀物を下方に繰り出すロータリバルブ13と、ロータリバルブ13で繰り出された穀物を昇降機10まで搬送する下部コンベア20を備える。
【0018】
昇降機10の途中部には、昇降機10で搬送する穀物からサンプル穀物を採取して穀物の水分値を測定する水分計14を設け、昇降機10の上部には、昇降機10で搬送された穀物を機外に排出するか上部コンベア11側に搬送するかを切換える排出用のシャッタ15を設ける。
【0019】
搬送機構Hの駆動モータ27は昇降機10の上部に設けられており、駆動モータ27のプーリ16と上部コンベア11の伝動プーリ17とをベルト伝動し、上部コンベア11の伝動プーリ17と昇降機10の上部プーリ18とをベルト伝動する。そして、昇降機10の下部プーリ19と下部コンベア20の伝動プーリ21をベルト伝動し、上部コンベア11と拡散羽根12をベベルギア22で伝動する。
【0020】
上部コンベア11で搬送する穀物に混じる異物を吸引して機外に排出する排塵機23は排塵機駆動モータ26で駆動し、ロータリバルブ13はロータリバルブ駆動モータ24で駆動し、排風ファン5は排風ファン駆動モータ25で駆動する。
【0021】
次に、操作盤30の構成について説明する。
操作盤30には、穀物の張込を行う張込スイッチ31、穀物を通風循環させる通風スイッチ32、穀物を乾燥循環させる乾燥スイッチ33、穀物を機外に排出する排出スイッチ34、これらの各運転を停止させる停止スイッチ35を設ける。
【0022】
また、乾燥する穀物の種類を選択する穀物設定スイッチ36と、乾燥速度を選択する乾燥速度選択スイッチ37と、水分を設定する水分設定スイッチ38、張込量を設定する張込量設定スイッチ39と、乾燥運転の情報を表示する表示画面40を備えている。操作盤30の内部には制御部41が内蔵されている。
【0023】
次に、穀物乾燥機の運転の概要について説明する。
収穫して車両等にて運搬した穀物を穀物乾燥機で張り込むときに、張込スイッチ31を操作する。すると、搬送機構Hの駆動モータ27が駆動し、投入された穀物は昇降機10、上部コンベア11で搬送され、拡散羽根12で貯留部1内に拡散される。このとき、ロータリバルブ駆動モータ24は駆動しないため、穀物は乾燥部2及び貯留部1内に順次張り込まれる。
【0024】
張込作業の終了後、オペレータは一旦、停止スイッチ35で張込運転を停止し、穀物設定スイッチ36と、乾燥速度選択スイッチ37、水分設定スイッチ38、張込量設定スイッチ39等を操作し、乾燥条件を設定する。次いで、乾燥スイッチ33を操作すると、搬送機構Hの駆動モータ27、ロータリバルブ駆動モータ24、排風ファン駆動モータ25、排塵機駆動モータ26、燃焼バーナ6が駆動を開始し、穀物を機内で循環させながら乾燥を行う乾燥運転が開始される。
【0025】
乾燥運転中、水分計14は設定時間毎にサンプル穀物の水分値を検出したり、穀物が昇降機10を搬送しているか否かの検出を行う。すなわち、穀物が詰まりにより搬送されないと、サンプル穀物を採取できないので、この場合には循環異常として乾燥運転を停止させる。
【0026】
乾燥運転により、水分計14で検出する水分値が目標水分値まで到達すると、乾燥運転は停止する。
オペレータが乾燥機内の穀物を機外に排出するときには、排出スイッチ34を操作すると搬送機構Hの駆動モータ27と、ロータリバルブ駆動モータ24と、排風ファン駆動モータ25が駆動を開始し、排出シャッタ15が機外排出側に切換わることで、昇降機10で搬送された穀物は順次機外に排出される。
【0027】
排出運転中に水分計14は設定時間毎にサンプル穀物を採取し、設定時間サンプル穀物を採取できなくなると排出する穀物が無くなったと制御部41は判定し、排出運転を自動停止する。
【0028】
次に、清掃運転について説明する。
清掃運転とは乾燥機内に穀物が無い状態で、乾燥機内に滞留する塵埃や昇降機10のバケットに残留する穀物を機外に排出する運転のことで、運転動作は、搬送機構Hと排風ファン5と排塵機23を駆動し、排出シャッタ15が機外排出側に切換わる。すなわち、前述の排出運転と同様である。
【0029】
運転操作は、オペレータが排出スイッチ34を設定時間(例えば5秒)内に2回操作すると、清掃運転が開始される。このときには、水分計14は駆動しない状態とし、前述の水分計14がサンプル穀物を採取しないと排出運転を自動停止する制御を行わない。すなわち、オペレータが停止スイッチ35を操作するまでは清掃運転は継続される。
【0030】
この清掃運転により、穀物乾燥機内に滞留する塵埃を排風ファン5や排塵機23の作用で機外に排出される。これにより、塵埃が滞留することによる各種不具合を防止することができる。また、昇降機10のバケット10aに残留する穀物を機外に排出することで、次に張り込まれて乾燥する籾と混合するいわゆるコンタミを防止することが出来る。
【0031】
次に、清掃運転を定期的に行うようにオペレータに報知する機能について説明する。
図5に示すように乾燥運転を複数回行い、乾燥運転の時間をタイマー43でカウントする。そして、カウントされた累積の運転時間が設定時間(例えば300時間以上)になると清掃運転モードを行うように表示画面40に表示される。
【0032】
オペレータが清掃運転を行うと、前記清掃運転を行うようことの表示画面40が消去される。乾燥運転中に前記の累積の運転時間が超えた場合(T)には、当該乾燥運転中にはその旨は表示されず、当該乾燥運転の終了時、又は、次に乾燥機の電源を入れたとき(R)、又は、次の乾燥の張込スイッチ31の操作時にその旨が表示される。
【0033】
清掃運転を行うべく表示が表示画面40が表示されたときには、清掃モードを行わないと、張込スイッチ31を操作しても張込運転を規制するように構成しても良い。
前記の累積の運転時間とは、例えば、乾燥運転の累積時間や乾燥運転(燃焼運転)と通風運転の累積時間が考えられるが、他にも例えば搬送機構Hの駆動モータ27の駆動の累積時間としてもよい。あるいは、搬送機構Hの駆動モータ27が連続して設定時間(例えば1時間)以上駆動した時のみカウントし、当該カウントされた累積時間が設定時間以上を超えると清掃運転を行う表示を行うようにしても良い。あるいはロータリバルブ駆動モータ24や排風ファン駆動モータ25の累積時間でも良い。
【0034】
清掃運転は排出運転が水分計14に基づき自動停止した時に、再度、排出スイッチ34を操作すると清掃運転に移行する制御を行うようにしても良い。
本実施の形態により、清掃運転を行う操作手段を設けることでオペレータは簡単な操作で清掃運転を行うことが出来る。また、定期的に清掃運転を行う旨の表示をすることで、オペレータに清掃運転を促し、塵埃が機内に滞留することによる不具合を防止することが出来る。また、清掃運転を排出スイッチ34を利用することで、オペレータが仮に排出運転時に2回連続して操作して、清掃運転に移行しても、水分計14による自動停止機能が無い状態での排出運転を行うことになるため、穀物の排出に障害は無く、誤操作を防止することが出来る。
【0035】
また、清掃運転時には風圧センサ(図示せず)の検出に基づく異常停止機能を停止しても良い。風圧センサとは乾燥機内に流入する吸引風の有無を検出する機能があり、乾燥運転時には排風ファン5が異常等で吸引機能が無いと吸引風無しとして運転を異常停止する。しかしながら、清掃運転時は
図6に示すように点検蓋(図示せず)を開けて点検口からオペレータが棒を挿入して残留異物を掻き出すことで排風ファンによる機外排出を促進させることがあり、点検蓋を開けると当該点検口が開口するため吸引風がそこから流入し、風圧センサが吸引風を検出せず異常を判定する場合がある。そのため、清掃運転時は風圧センサの機能を停止することで清掃運転を継続することが出来る。
【符号の説明】
【0036】
H 搬送機構
1 貯留部(貯留室)
5 排風ファン
14 水分計
34 排出スイッチ
40 表示手段
43 タイマー