(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3の苗移植機では、作業者は苗よりも重い肥料を圃場端から機体まで持ち運ぶ必要があり、作業者の労力がその分増大するという問題がある。特に、圃場端に水路があるときや、圃場端の土質が悪いときなど、圃場端から機体に直接肥料を積み込むことが難しい状況では、作業者は重い肥料を持って圃場内に入り込み、泥土に足を取られる不安定な状態で機体まで移動しなければならない。予備苗枠に肥料を積むこともできるが、予備苗枠は苗を積載することを想定したものであるので、重い肥料の積込作業に用いていると、予備苗枠の構成部品にかかる負荷が大きく、通常よりも耐久性の低下が早まり、破損しやすくなる問題がある。肥料の量を少なくすれば上記問題は生じないが、その分肥料の積込作業に要する時間が長くなるので、作業能率が大幅に低下する問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、資材の積込作業で作業者に掛かる労力を低減させることのできる苗移植機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の苗移植機は、フロア(40)を有し、圃場を走行する走行車体(2)と、前記走行車体(2)の後部に装着され、前記圃場に苗を植え付ける苗植付部(60)と、前記走行車体(2)の左右方向における前記走行車体(2)の後部の両側に設けられ粒状体を貯留する一対の貯留部(103)と、前記フロア(40)に対して上方に突出して前記走行車体(2)に設けられ、少なくとも一部が前記走行車体(2)の前後方向で前記貯留部(103)よりも前方に位置し、前記走行車体(2)を操縦する操縦部(50)と、前記左右方向における前記操縦部(50)の少なくとも一方側に設けられ、資材を前記貯留部(103)に向けて移動可能に支持する積込補助装置(110)と、
重量検出部(123)と、制御部(125)と、を備え、前記積込補助装置(110)は、前記前後方向に沿って延びるとともに互いに前記左右方向に間隔をあけて設けられ前記資材を支持する一対の支持部材(109)と、前記前後方向に沿って移動可能に前記一対の支持部材(109)に支持され、前記資材を積載する積載台(116)と、駆動源(119)と、前記駆動源(119)の動力によって前記積載台(116)を前記前後方向に沿って移動させる搬送機構(120)と、を有し、前記支持部材(109)は、前記積載台(116)を介して前記資材を支持し、前記積載台(116)は、前記貯留部(103)よりも前方の第一の位置(P1)と、前記第一の位置(P1)に位置した場合よりも前記貯留部(103)に近い第二の位置(P2)との間で移動可能であり、前記重量検出部(123)は、前記第二の位置(P2)に位置した前記積載台(116)の重量を検出し、前記制御部(125)は、前記駆動源(119)を制御して前記積載台(116)を前記第一の位置(P1)から前記第二の位置(P2)へ移動させ、前記重量検出部(123)が規定以上の重量を検出した場合、前記駆動源(119)を停止させ、前記重量検出部(123)が前記規定以上の重量を検出しなくなった場合、前記駆動源(119)を駆動して前記積載台(116)を前記第二の位置(P2)から前記第一の位置(P1)へ移動させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機において、前記積込補助装置(110)は、前記前後方向に沿って延びた延部材(113)と、互いに前記前後方向に間隔をあけて設けられ、前記延部材(113)に回転可能に支持され前記資材を支持する複数の回転体(114)と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機において、前記積込補助装置(110)は、前記フロア(40)の上方に設けられ
、前記フロア(40)に、前記一対の支持部材(109)間の下方に位置し前記走行車体(2)の上下方向に当該フロア(40)を貫通した開口部(41b)が設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機において
、前記一対の支持部材(109)を上方からの視線で見たときに、前記一対の支持部材(109)の少なくとも一方が前記走行車体(2)の左右方向で前記走行車体(2)の外側に位置するとともに、前記一対の支持部材(109)の間が、前記貯留部(103)の前方に位置したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項
5に記載の発明は、請求項
1〜4のいずれか一つに記載の苗移植機において、前記操縦部50に設けられ、前記駆動源(119)の操作を行う第一の操作部材(121)と、前記積込補助装置(110)に設けられ、前記駆動源(119)の操作を行う第二の操作部材(122)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項
6に記載の発明は、請求項
5に記載の苗移植機において、前記操縦部(50)は、前記走行車体(2)の走行に関する操作を行う走行操作部材(54)を当該操縦部(50)における左右のいずれか一方の部分に有し、前記第二の操作部材(122)は、前記操縦部(50)の左右方向の両側のうち前記走行操作部材(54)が設けられた前記一方とは逆側に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の苗移植機は、資材を貯留部(103)に向けて移動可能に支持する積込補助装置(110)を備えることにより、例えば肥料袋等の比較的重量のある資材を積込補助装置(110)に支持させた状態で積込補助装置(110)を用いて貯留部(103)の近傍へ移動させることができる。つまり、作業者は、資材を積込補助装置(110)に支持させることで、資材を持つ必要が無くなる。よって、一例として、貯留部(103)への資材の積込作業で作業者に掛かる労力を低減させることができる。
また、請求項1に記載の苗移植機は、搬送機構(120)が駆動源(119)の動力によって積載台(116)を前後方向に沿って移動させることにより、積載台(116)に積載させた資材を駆動源(119)の動力によって移動(搬送)することができる。これにより、作業者は、資材を貯留部(103)に向けて押すことなく、資材を貯留部(103)に向けて移動させることができるので、貯留部(103)への資材の積込作業の省力化を図ることができる。また、請求項1に記載の苗移植機は、制御部(125)が、駆動源(119)を制御して積載台(116)を第一の位置(P1)から第二の位置(P2)へ向けて移動させ、重量検出部(123)が規定以上の重量を検出した場合、駆動源(119)を停止させる。よって、作業者による積載台(116)を第二の位置(P2)で停止させる操作が無くても、資材を搭載して規定以上の重量となった積載台(116)を自動で第二の位置(P2)で停止させることができる。また、制御部(125)が、重量検出部(123)が規定以上の重量を検出しなくなった場合、駆動源(119)を駆動して積載台(116)を第二の位置(P2)から第一の位置(P1)へ移動させることにより、作業者による積載台(116)を第一の位置(P1)へ移動させる操作が無くても、資材が取り除かれて規定未満の重量となった積載台(116)を自動で第一の位置(P1)に戻すことができる。よって、積込作業の作業能率が向上する。
【0016】
また、請求項2に記載の苗移植機は、請求項1の発明の効果に加えて、積込補助装置(110)が、互いに前後方向に間隔をあけて設けられ、延部材(113)に回転可能に支持され資材を支持する複数の回転体(114)を有することにより、回転体(114)の回転によって資材を比較的小さい力で貯留部(103)の近傍へ移動させることができる。よって、貯留部(103)への資材の積込作業で作業者に掛かる労力を低減させることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の苗移植機は、請求項1の発明の効果に加えて、フロア(40)に、一対の支持部材(109)間の下方に位置し走行車体(2)の上下方向に当該フロア(40)を貫通した開口部(41b)が設けられていることにより、資材に付着した水や泥土を、積込補助装置(110)による資材の移動(搬送)中に、開口部(41b)から圃場に落下させることができる。よって、水や泥土がフロア(40)上に溜りにくくなり、作業者がフロア(40)上を移動し易くなる。また、水や泥土がフロア(40)上に留まりにくくなるので、フロア(40)の清掃作業(泥落とし作業)に要する時間と労力とを軽減することができる。よって、作業者の費やす労力が軽減される。
【0018】
また、請求項4に記載の苗移植機は、請求項1の発明の効果に加えて、一対の支持部材(109)を上方からの視線で見たときに、一対の支持部材(109)の少なくとも一方が走行車体(2)の左右方向で走行車体(2)の外側に位置するとともに、一対の支持部材(109)の間が、貯留部(103)の前方に位置していることにより、一対の支持部材(109)が走行車体(2)上での作用者の移動を妨げるのを抑制することができる。よって、走行車体(2)上での作業者の移動がし易くなり、作業性が向上する。また、一対の支持部材(109)間の少なくとも一部の下方には空間が形成されるので、資材に付着した水や泥土を、積込補助装置(110)による資材の移動(搬送)中に、一対の支持部材(109)間から圃場に落下させることができる。これにより、水や泥土が走行車体(2)上に溜りにくくなり、作業者の走行車体(2)上の移動がし易くなる。また、水や泥土が走行車体(2)上に留まりにくくなるので、走行車体(2)の清掃作業(泥落とし作業)に要する時間と労力とを軽減することができる。これにより、作業者の費やす労力が軽減される。
【0021】
また、請求項
5に記載の苗移植機は、請求項
1〜4のいずれか一つの発明の効果に加えて、駆動源(119)の操作を行う第一の操作部材(121)が、操縦部(50)に設けられ、前記駆動源(119)の操作を行う第二の操作部材(122)が、前記積込補助装置(110)に設けられていることにより、第一の操作部材(121)や第二の操作部材(122)を操作しないと積載台(116)が移動しないので、作業者の意図に反して積載台(116)が移動することを抑制することができる。よって、作業の安全性が向上する。また、第一の操作部材(121)の他に第二の操作部材(122)でも駆動源(119)の操作が行えるので、圃場の外から走行車体(2)に資材を積み込む作業者が第二の操作部材(122)によって駆動源(119)の操作ができるので、駆動源(119)の操作性が向上する。これにより、作業者が駆動源(119)の操作のために第一の操作部材(121)まで移動する必要がなくなるので、作業者の労力が軽減される。
【0022】
また、請求項
6に記載の苗移植機は、請求項
5の発明の効果に加えて、操縦部(50)が、走行操作部材(54)を当該操縦部(50)における左右のいずれか一方の部分に有し、第二の操作部材(122)が、操縦部(50)の左右方向の両側のうち走行操作部材(54)が設けられた一方とは逆側に設けられていることにより、作業者が第二の操作部材(122)を操作する際、作業者の手が走行操作部材(54)に接触することを抑制することができる。これにより、走行車体(2)が急激に加減速することを抑制でき、走行車体(2)が圃場外に向かって移動することが抑制され、圃場端での資材の積込作業の能率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、実施形態および変形例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の複数の実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の苗移植機の側面図である。
図2は、第1の実施形態の苗移植機の平面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、操縦席からみて、車体の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。また、以下の説明では、特に言及しない限り、前後方向は走行車体2の前後方向、左右方向は走行車体2の左右方向、上下方向は走行車体2の上下方向である。
【0026】
本実施形態の苗移植機1は、作業者が乗車して植え付け作業を行う、いわゆる乗車型の苗移植機1として構成されている。この苗移植機1の走行車体2は、左右一対で配設される前輪5と、同様に左右一対で配設される後輪10とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。また、前輪5は、後輪10よりも前方側に位置し、操舵輪として設けられている。また、走行車体2の後部には、苗植付部昇降機構70によって昇降可能な苗植付部60が備えられている。なお、後輪10の内側には、後輪10の車軸を介して、補助車輪を着脱自在に装着することができる。この補助車輪は後輪10と略同径とし、後輪10とともに圃場に接地することにより、機体の推進力を発生させる構成とする。これにより、圃場の抵抗により機体が走行できなくなることが防止される。
【0027】
走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム3と、メインフレーム3の上に搭載されたエンジン20(
図4参照)と、エンジン20で発生した動力を駆動輪と苗植付部60とに伝える動力伝達装置25と、を備えている。つまり、本実施形態の苗移植機1では、動力源であるエンジン20の動力が走行車体2を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部60を駆動させるためにも使用され、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
【0028】
また、エンジン20は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、走行車体2のフロア40よりも上方に突出させた状態で配置されている。なお、フロア40は、フロアステップとも称される。
【0029】
フロア40は、走行車体2の前部とエンジン20の後部との間に渡って設けられて、メインフレーム3上に取り付けられている。フロア40は、前後方向に延びた左右一対のサイドフロア41と、エンジン20の前方に位置する操縦フロア42と、を有している。一対のサイドフロア41同士は、操縦フロア42によって接続されている。各サイドフロア41は、網目状部41a(シースルー部)を有している。網目状部41aには、フロア40を上下方向に貫通した複数の開口部41bが設けられている。開口部41bは、貫通孔である。この開口部41bによって、靴に付いた泥を圃場に落とせるようになっている。また、フロア40の左右方向における両側には、作業者がフロア40に乗り降りする際に足をかける乗降ステップ45が配設されている。
【0030】
また、フロア40の後方には、後輪10のフェンダを兼ねた後部ステップであるリアステップ47が設けられている。リアステップ47は、リアフロアとも称される。リアステップ47は、フロア40よりも高い位置に配設されており、エンジン20の左右それぞれの側方から後方にかけて配置されている。
【0031】
エンジン20は、フロア40から上方に突出しており、フロア40から突出している部分には、エンジン20を覆うエンジンカバー21が配設されている。即ち、エンジンカバー21は、フロア40から上方に突出した状態で、エンジン20を覆っている。
【0032】
また、走行車体2には、エンジンカバー21の上部に操縦席55が設置されており、操縦席55の前方で、且つ、走行車体2の前側中央部には、走行車体2を操縦する操縦部50が配設されている。操縦部50は、左右一対のサイドフロア41間に設けられ、フロア40の床面(上面)に対して上方に突出している。操縦席55と操縦部50との間に、操縦フロア42が設けられている。
【0033】
操縦部50の内部には、各種の操作装置やエンジン用燃料の燃料タンク等が配設されており、操縦部50の前部には、開閉可能なフロントカバー51が設けられている。また、操縦部50の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル52が配設されている。なお、
図2ではハンドル52は省略されている。ハンドル52は、作業者が前輪5を操舵操作することにより走行車体2を操舵する操舵部材として設けられており、操縦部50内の操作装置等を介して前輪5を転舵させることが可能になっている。また、レバーとしては、走行車体2の前後進及び走行速度を操作する走行操作部材である変速レバー54と、苗植付部60の動作状態を、少なくとも苗植付部昇降機構70による上昇状態を含んで切り替えることができる植付操作部材である植付昇降レバーとが配設されている。また、ブレーキペダル53がフロア40から上方に突出して設けられている。
【0034】
また、フロア40における操縦部50の左右それぞれの側方に位置する部分、即ち、機体前側には、補充用の苗を載積する予備苗枠90が配設されている。予備苗枠90は、フロア40から突出した支持軸によって支持されている。支持軸は、予備苗枠90に対して、予備苗枠90の前後方向における中心付近に接続されている。
【0035】
また、動力伝達装置25は、エンジン20で発生した動力を変速する主変速機としての油圧式無段変速装置26と、この油圧式無段変速装置26にエンジン20からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構27とを有している。このうち、油圧式無段変速装置26とは、HST(Hydro Static Transmission)と云われる静油圧式の無段変速機として構成されている。このため、油圧式無段変速装置26は、エンジン20からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。
【0036】
油圧式無段変速装置26は、エンジン20よりも前方で、且つ、フロア40の床面よりも下方に配置されており、本実施形態の苗移植機1では、走行車体2の上面から見て、エンジン20の前方に配置されている。
【0037】
また、ベルト式動力伝達機構27は、エンジン20の出力軸に取り付けたプーリと、油圧式無段変速装置26の入力軸に取り付けたプーリと、双方のプーリに巻き掛けたベルトと、さらに、このベルトの張力を調整するテンションプーリとを備えている。これにより、ベルト式動力伝達機構27は、エンジン20で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速装置26に伝達可能になっている。
【0038】
さらに、動力伝達装置25は、エンジン20からの出力がベルト式動力伝達機構27と油圧式無段変速装置26とを介して伝達されるミッションケースを有している。このミッションケースは、メインフレーム3の前部に取り付けられている。ミッションケースは、ベルト式動力伝達機構27と油圧式無段変速装置26とを介して伝達されたエンジン20からの出力を、当該ミッションケース内の副変速機で変速して、前輪5と後輪10への走行用動力と、苗植付部60への駆動用動力とに分けて出力可能になっている。
【0039】
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケースを介して前輪5に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケースを介して後輪10に伝達可能になっている。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部60へ伝達される。
【0040】
また、走行車体2の後部に備えられる苗植付部60を昇降させる苗植付部昇降機構70は、昇降リンク装置71を有しており、苗植付部60は、この昇降リンク装置71を介して走行車体2に取り付けられている。昇降リンク装置71は、略前後方向に向かって延在する2つの部材を有しており、相対的に上側に位置する上部リンク部材であるアッパーリンク73と、アッパーリンク73の下側に位置する下部リンク部材であるロワーリンク74と、を有している。これらのアッパーリンク73とロワーリンク74とは、ともに左右一対ずつが設けられている。
【0041】
昇降リンク装置71は、アッパーリンク73とロワーリンク74とが、メインフレーム3の後部端に立設した背面視門型の後部フレームであるリンクベースフレーム75に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部60に回転自在に連結されることにより、苗植付部60を昇降可能に走行車体2に連結している。即ち、リンクベースフレーム75は、走行車体2の後部に上下方向に延在して配設されており、アッパーリンク73とロワーリンク74とが、リンクベースフレーム75から後方に向かって延在している。昇降リンク装置71は、アッパーリンク73とロワーリンク74とがともに、前端側がリンクベースフレーム75に対して回動可能に連結されている。
【0042】
また、苗植付部昇降機構70は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ76を有しており、油圧昇降シリンダ76の伸縮動作によって、苗植付部60を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構70は、その昇降動作によって、苗植付部60を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
【0043】
また、苗植付部60は、苗を植え付ける範囲を複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができる。つまり、苗植付部60は、複数の条で苗を植え付けることが可能な構成になっている。この苗植付部60は、植付装置61と、苗載置台65及びフロート81を備えている。このうち、苗載置台65は、圃場に植え付ける苗を載置することができるように構成されている。詳しくは、苗載置台65は、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面66を有しており、それぞれの苗載せ面66に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。これにより、苗載置台65に載置した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
【0044】
また、植付装置61は、苗載置台65に載置された苗を圃場に植え付ける装置になっている。この植付装置61は、2条毎に1つずつ配設されており、2条分の植込杆62を備えている。この植込杆62は、苗載置台65から苗を取って各条ごとに植え付けることができるように構成されている。また、フロート81は、苗載置台65の下部に配設され、走行車体2の移動とともに、圃場面上を滑走して均すことにより整地をすることができるように設けられている。
【0045】
なお、フロート81は、左右方向の中央部に圃場の凹凸を均しつつ回動角度を検知するポテンショメータ等の検知部材(図示省略)により圃場の深さを検知し、圃場の深さに合わせて苗植付部60を昇降させる機能を有するメインフロートと、該メインフロートの左右両側で苗を植え付ける圃場面を滑走して均す左右のサイドフロートで構成すると、圃場の深さの変化に合わせて自動的に苗の植付深さを合わせることが可能となり、苗の植付精度の向上が図られる。これに加えて、本件で示す8条植えの苗移植機や、それ以上の条数、例えば10条植えの苗移植機においては、サイドフロートとメインフロートの間に左右のサブフロートを設ける構成とし、メインフロートや左右のサイドフロートの形状を変えることなく圃場面の整地性を確保する構成とすると、大型化による機体コストの高騰を抑えることができる。
【0046】
また、フロート81は、苗植付部60で植え付ける苗の植付深さを調節する植付深さ調節装置80を構成しており、換言すると、フロート81は植付深さ調節装置80が有している。植付深さ調節装置80は、圃場に対する苗植付部60の上下方向における位置を調節することにより、苗の植付深さを調節することが可能になっており、上下方向におけるフロート81と苗植付部60との相対的な位置を調節することにより、圃場に対する苗植付部60の上下位置を調節可能になっている。
【0047】
また、苗植付部60の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ85が備えられている。即ち、線引きマーカ85は、苗移植機1が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ85は、走行車体2が旋回するごとに、左右の線引きマーカ85が入れ替わって作動することができるように構成されている。
【0048】
また、左右方向におけるリアステップ47の両側には、圃場に粒状体を供給する粒状体供給装置である施肥装置100(貯留ホッパ103)が配設されている。施肥装置100は、貯留ホッパ103に貯留されている粒状の肥料を植付作業中に一定量ずつ圃場に供給することが可能になっている。このように左右方向の両側に配設される施肥装置100は、具体的には、リアステップ47の機体左側に位置する左側施肥装置101と、リアステップ47の機体右側に位置する右側施肥装置102とが配設されている。これらの左右の施肥装置100は、左右方向の両側に位置する後輪10よりも、左右方向の外側に配設されている。
【0049】
左右方向における両側に配設される施肥装置100は、粒状体の肥料を貯留する貯留部である貯留ホッパ103と、貯留ホッパ103内の肥料を設定量ずつ繰り出す繰出部材である繰出しロールと、肥料を圃場に案内する案内部材である施肥ホースと、肥料を搬送する搬送風を施肥ホースに供給する通風部材である通風ダクト106と、をそれぞれ備えている。このうち、貯留ホッパ103は、左右方向におけるリアステップ47の両側に配設されており、繰出しロールは、左右方向のそれぞれの貯留ホッパ103の下方に配設されている。また、施肥ホースは、左右方向のそれぞれの繰出しロールの下方に配設されており、通風ダクト106は、左右方向のそれぞれの施肥ホースに連結されている。
【0050】
また、貯留ホッパ103は、前後方向に長い略直方体状の外形を有している。貯留ホッパ103には、当該貯留ホッパ103の上部開口部を覆うホッパ蓋部104が開閉可能に設けられている。ホッパ蓋部104は、貯留ホッパ103の上部の後端部に回動可能に支持されている。ホッパ蓋部104は、左右方向に沿った回動中心回りに回動可能である。つまり、ホッパ蓋部104は、前後方向に回動することで開閉する。具体的には、ホッパ蓋部104は、後方に回動させると貯留ホッパ103の上方が開放され、前方に回動させると貯留ホッパ103の上方を覆う。これにより、貯留ホッパ103の前方から資材を貯留ホッパ103に入れやすいので、作業能率が向上する。
【0051】
上記のとおり、肥料を貯留する貯留ホッパ103を走行車体2の左右両側に配置したことにより、走行車体2の後部と苗植付部60の間を遮る部材がなくなるとともに、リアステップ47上を作業者が移動することができるので、走行車体2の後部と苗植付部60の各条の苗載置台65との間隔を狭めることができ、苗の補充作業の際に作業者が楽な姿勢で作業しやすく、作業能率の向上や労力の軽減が図られる。
【0052】
また、苗の補充作業を行う際、貯留ホッパ103のホッパ蓋部104が開いた状態で苗植付部60を上昇させても、苗植付部60がホッパ蓋部104に接触することを防止できるので、苗の補充作業が円滑に行えて作業能率が向上するとともに、ホッパ蓋部104が苗植付部60と接触して破損することが防止される。
【0053】
なお、左右の貯留ホッパ103と左右のホッパ蓋部104の間には、左右のホッパ蓋部104を閉じたときにロックし、作業中に左右のホッパ蓋部104が開くことを防止するロック部材(パッチン錠)を設けると、作業中に左右のホッパ蓋部104が開き、肥料が外部に飛び出したり、雨水や圃場の水等が左右の貯留ホッパ103内に入り込み、肥料同士がくっついて塊になったりすることが防止されるので、肥料の消費量の削減が図られる。
【0054】
図3は、第1の実施形態の苗移植機の一部を概略的に示す側面図である。
図4は、第1の実施形態の苗移植機の一部を概略的に示す平面図である。左右方向の両側に配設される通風ダクト106は、中継部材(エアチャンバー)である中継ダクト107により接続されている。この中継ダクト107は、左右方向に延在することにより、左右方向の両側の双方の通風ダクト106に接続されており、また、中継ダクト107は、リアステップ47の下方に配設されている。そして、この中継ダクト107の左右方向の中央部で、且つ、中継ダクト107よりも上方に、搬送風を発生させる起風装置であるブロア105を備えている。ブロア105は、エンジン20の直上(上方)に配置され、エンジンカバー21に覆われている。ブロア105は、フロア40の床面よりも上方に位置している。これにより、雨水や圃場の泥水等がブロア105内に入り込むのを抑制することができる。ブロア105は、そのカバー105bに形成された吸込口105aが左右方向の一方側に向いた(開口した)姿勢で、配置されている。ブロア105は、カバー105b内に設けられるブロアモータで起風ファンを回転させ、吸込口105aから取り込んだ空気を搬送風とするものである。
【0055】
上記の構成により、ブロア105が発生させた搬送風は、中継ダクト107から機体左右両側の通風ダクト106,106に入り込み、機体左右両側の貯留ホッパ103,103から投下される肥料等の肥料を機体左右両側の各施肥ホースに案内することができるので、一つのブロア105で左右の貯留ホッパ103から投下された肥料を左右両側の各施肥ホースに案内する搬送風を発生させることができ、部品点数の削減や、機体重量の軽量化が図られる。
【0056】
また、中継ダクト107を走行車体2の後部で且つ下方を通過させて配置したことにより、作業者がリアステップ47上で苗の補充作業等を行うとき、中継ダクト107が作業者の移動範囲を制限することが無く、作業能率が向上する。また、リアステップ47を平坦な形状とすることができる。
【0057】
また、
図1,2に示すように、走行車体2には、積込補助装置110が設けられている。積込補助装置110は、左右方向における操縦部56の少なくとも一方側に設けられている。本実施形態では、一例として、積込補助装置110として、操縦部56の右側かつ右側のサイドフロア41上に位置する右側積込補助装置111と、操縦部56の左側かつ左側のサイドフロア41上に位置する左側積込補助装置112とが設けられている。これらの積込補助装置110は、肥料袋等の資材を貯留ホッパ103に向けて移動可能に支持する。
【0058】
各積込補助装置110は、左右一対の支持部材109を有している。左右一対の支持部材109は、サイドフロア41の上方に設けられている。左右一対の支持部材109は、前後方向に沿って延びるとともに互いに左右方向に間隔をあけて位置している。左右一対の支持部材109の間の下方には、サイドフロア41の開口部41bが位置している。支持部材109は、左右一対の延部材113と、各延部材113に設けられた複数の回転体114と、を有している。左右一対の延部材113は、互いに略平行に設けられ、前後方向に沿って延びている。延部材113は、前後方向に長い棒状に構成されている。延部材113は、走行車体2の前端部とサイドフロア41の後端部とに亘って設けられている。延部材113は、フロア40に固定されている。延部材113は、レールやガイド部材とも称される。複数の回転体114は、互いに前後方向に間隔をあけて設けられている。各回転体114は、左右方向に沿った回転中心(回転中心軸)回りに回転可能に、延部材113に支持されている。回転体114の上端部は、延部材113の上面に対して上方に突出している。回転体114は、例えばローラである。このような構成の左右一対の支持部材109は、複数の回転体114によって資材を支持する。回転体114に支持された資材は、例えば作業者によって押されて、回転体114上を移動する。この際、回転体114は、資材の移動に伴って回転する。このとき、資材が、延部材113の上面にも支持されてもよい。
【0059】
本実施形態の苗移植機1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。苗移植機1の運転時は、エンジン20で発生する動力によって、走行車体2の走行と、苗載置台65に載せた苗の植え付け作業を行う。このうち、植え付け作業は、回転軸が左右方向になる向きで植付装置61全体が回転しながら、植込杆62も回転することにより、苗載置台65に載せられた苗を各条ごとに徐々に圃場に植え付ける。植え付け作業時は、このように植付装置61を作動させながら圃場内を走行車体2で走行することにより、複数条に苗を植え付ける。
【0060】
このように苗の植え付けを行う苗植付部60は、油圧昇降シリンダ76が作動することにより、必要に応じて昇降する。例えば、作業者が植付昇降レバーを操作したり、植え付け作業中に走行車体2が圃場の端に到達して、作業者がハンドル52を回動させたりした場合等に、苗植付部60は昇降する。
【0061】
また、走行車体2の走行時には、エンジン20で発生した動力はベルト式動力伝達機構27に伝達され、ベルト式動力伝達機構27から油圧式無段変速装置26に伝達されて、油圧式無段変速装置26で所望の回転速度や回転方向、トルクに変換されて出力される。油圧式無段変速装置26から出力された動力は、ミッションケースに伝達され、ミッションケース内の副変速機で、路上走行時の走行速度に適した回転速度、または苗の植付時の走行速度に適した回転速度に変速されて、前輪5側や後輪10側に出力される。また、ミッションケースから出力される動力の一部は、苗植付部60側にも伝達され、苗植付部60での植え付け作業にも用いられる。
【0062】
また、左右の施肥装置100によって施肥作業を行う場合は、貯留ホッパ103に肥料を貯留した状態で、繰出しロールを回転させ、設定量ずつ施肥ホースに繰り出す。この施肥作業は、ブロア105を作動させながら行う。ブロア105は、駆動することにより、吸入した空気を搬送風として中継ダクト107に供給し、該中継ダクト107の左右両端部から左右の通風ダクト106,106に各々供給する。通風ダクト106,106に供給された搬送風は、施肥ホースに流れる。
【0063】
ここで、ブロア105は、中継ダクト107の左右方向の中央部で、且つ中継ダクト107よりも上方に設けられており、該中継ダクト107の左右両側に左右の通風ダクト106,106が連結されていることにより、搬送風の供給が可能な構成となっている。
【0064】
施肥ホースに繰り出された肥料は、左右の通風ダクト106から施肥ホースに流れる搬送風により、施肥ホースの出口方向に送出される。これにより、左右の施肥装置100の施肥ホースに送出された肥料は、搬送風によってそれぞれの施肥ホース内を通って施肥ホースから送出され、圃場への施肥が行われる。
【0065】
このように、苗移植機1の左右方向における左右両側に施肥装置100で施肥を行いながら、植付け作業を行う場合には、走行車体2を操縦する作業者のみでなく、苗や肥料の供給を行う補助作業者も走行車体2上に搭乗して作業を行うことができる。この場合、補助作業者は、リアステップ47に待機し、必要に応じて苗載置台65に苗を補給したり、施肥装置100に肥料を補給したりする。
【0066】
また、作業者は、貯留ホッパ103へ肥料を補充する際、積込補助装置110を用いることができる。例えば、作業者は、苗移植機1の前方から支持部材109の前端部に肥料袋を載せて、支持部材109上の肥料袋を後方に向けて押して移動させることで、肥料袋を貯留ホッパ103の近傍へ移動させることができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の苗移植機1は、資材を貯留ホッパ103に向けて移動可能に支持する積込補助装置110を備える。これにより、例えば肥料袋等の比較的重量のある資材を積込補助装置110に支持させた状態で積込補助装置110を用いて貯留部103の近傍へ移動させることができる。つまり、作業者は、資材を積込補助装置110に支持させることで、資材を持つ必要が無くなる。よって、一例として、貯留部103への資材の積込作業で作業者に掛かる労力を低減させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、積込補助装置110は、互いに前後方向に間隔をあけて設けられ、延部材113に回転可能に支持され資材を支持する複数の回転体114を有する。これにより、回転体114の回転によって資材を比較的小さい力で貯留ホッパ103の近傍へ移動させることができる。よって、貯留ホッパ103への資材の積込作業で作業者に掛かる労力を低減させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、苗移植機1は、フロア40に、一対の支持部材109間の下方に位置し走行車体2の上下方向に当該フロア40を貫通した開口部41bが設けられている。これにより、資材に付着した水や泥土を、積込補助装置110による資材の移動(搬送)中に、開口部41bから圃場に落下させることができる。よって、水や泥土がフロア40上に溜りにくくなり、作業者がフロア40上を移動し易くなる。また、水や泥土がフロア40上に留まりにくくなるので、フロア40の清掃作業(泥落とし作業)に要する時間と労力とを軽減することができる。よって、作業者の費やす労力が軽減される。
【0070】
また、本実施形態では、苗移植機1は、左右の貯留ホッパ103が走行車体2の左右両側に設けられている。これにより、走行車体2の後部において、リアステップ47と苗植付部60の前後間を塞ぐ部材が配置されなくなる。よって、施肥性能を維持しつつ、リアステップ47から苗植付部60に近付いて苗を補充することを可能にできる。この結果、施肥作業の作業能率を低減することなく、苗植付部60への苗の補充作業の作業性を向上させることができる。また、安定した姿勢で苗の補充作業を行うことができるので、作業者の労力を軽減することができる。
【0071】
ここで、走行車体の後部の左右方向に亘って施肥装置が設けられた従来構成の場合、作業者が苗植付部に苗の補充を行う際、後部ステップを作業場所として利用できないという問題がある。これにより、作業者は苗植付部から離れた場所から苗の補充を行う必要が生じるので、苗の補充作業に要する作業者の労力が増大するとともに、苗の補充作業の能率が低下する。上記の問題を軽減すべく、苗を補充するときに苗植付部を上昇させ、走行車体と苗植付部との距離を縮めることがある。しかしながら、苗植付部を上昇させる際に施肥装置の蓋を閉め忘れていると、苗植付部が施肥装置の蓋と干渉して上昇速度が低下し、作業能率が低下する問題があるとともに、接触時に樹脂製の蓋が割れるなどの破損が生じる問題がある。さらに、操縦者だけでなく、苗や粒状体の供給を行う補助作業者が走行車体上に待機する作業においては、補助作業者がステップに待機しにくく、補助作業者の待機位置が限られてしまう問題がある。これに対して、本実施形態では、上述したように、左右の貯留ホッパ103が走行車体2の左右両側に設けられているので、上記問題が解消される。
【0072】
また、本実施形態では、重量のある左右の施肥装置100を、走行車体2の後ろ側の左右両側に配置することにより、走行車体2の重量バランスを安定させることができる。この結果、走行車体2の進行方向が左右方向にずれることを防止でき、操作性や苗の植付精度を向上させることができる。
【0073】
また、リアステップ47の左右両側に貯留ホッパ103を設けたため、リアステップ47から近付き易い位置に貯留ホッパ103を配置することができる。この結果、肥料の供給作業の能率が向上する。また、左右の通風ダクト106を連結する中継ダクト107を、リアステップ47の下方に設けたため、中継ダクト107がリアステップ47上で作業者の移動を妨げることを防止できる。この結果、作業能率を向上するとともに、作業者の足との接触により中継ダクト107が破損することを防止できる。
【0074】
また、左右の施肥装置100は、左右の後輪10よりも走行車体2の外側に設けたため、左右の施肥装置100の上下位置を調節可能な範囲を拡げることができる。この結果、走行車体2の左右両側の上下高さを低く抑えることができ、収納時等のスペースを小さくできる。また、左右の施肥装置100の上下位置が下がった分、貯留ホッパ103を上方に向かって拡張することができるので、貯留できる肥料の量を増加することができる。この結果、肥料の補充作業の頻度を減少させることができ、作業能率を向上させることができる。
【0075】
[第1の変形例]
図5は、第1の実施形態の第1の変形例の苗移植機の側面図である。本変形例の苗移植機1Aは、苗移植機1と同様の構成を備える。但し、本変形例の苗移植機1Aは、フロア40の後端部に水平部41cが設けられている点が苗移植機1に対して主に異なる。水平部40cは、サイドフロア41を構成する。水平部40cは、乗降ステップ45の上方に位置し、乗降ステップ45の上面と略平行に設けられている。そして、積込補助装置110が、走行車体2の前部から水平部40cまで延びている。
[第2の変形例]
図6は、第1の実施形態の第2の変形例の苗移植機の一部を概略的に示す側面図である。本変形例の苗移植機1Bは、苗移植機1と同様の構成を備える。但し、本変形例の苗移植機1Bは、ブロア105は、吸込口105aが上方に向いた(開口した)姿勢で、フロア40よりも上方かつエンジン20の直上(上方)に配置されている点が苗移植機1に対して主に異なる。このような構成では、吸込口105aからブロア105内に泥がより入りにくい。走行車体2の走行に伴って飛散する泥土や水が、吸込口105aからブロア105内に進入しにくい。よって、ブロア105の破損が抑制されるとともに、ブロア105のメンテナンス作業に要する時間が短縮される。
[第3の変形例]
図7は、第1の実施形態の第3の変形例の苗移植機の一部を概略的に示す平面図である。本変形例の苗移植機1Cは、苗移植機1と同様の構成を備える。但し、本変形例の苗移植機1Cは、ブロア105は、吸込口105aが下方に向いた(開口した)姿勢で、フロア40よりも上方かつエンジン20の直上(上方)に配置されている点が苗移植機1に対して主に異なる。すなわち、吸込口105aがエンジン20に向いている。このような構成では、ブロア105がエンジン20の熱をより吸いやすい。よって、肥料により高温の風を送ることができるので、肥料が塊になることを効率的に抑制することができる。
[第4の変形例]
図8は、第1の実施形態の第4の変形例の苗移植機の側面図である。
図9は、第1の実施形態の第4の変形例の苗移植機の平面図である。本変形例の苗移植機1Dは、苗移植機1と同様の構成を備える。但し、本変形例の苗移植機1Dは、貯留ホッパ103の周囲に位置したアシストパイプ130を備える点が苗移植機1に対して主に異なる。アシストパイプ130は、貯留ホッパ103ごとに設けられている。アシストパイプ130は、ホッパ蓋部104と略同じ高さ位置またはホッパ蓋部104よりも若干上方の位置に設けられている。アシストパイプ130は、例えばリアステップ47に固定されている。アシストパイプ130は、貯留ホッパ103の前方に位置する前側部130aと、貯留ホッパ103よりも左右方向での走行車体2の中心側に位置する側方部130bと、を有して、概略L字状に構成されている。アシストパイプ130は、手摺りや保護部材等とも称される。
【0076】
このような構成では、搭乗者や作業者は、アシストパイプ130の前側部130aを掴んでフロア40やリアステップ47に対して乗り降りすることができる。また、アシストパイプ130によって、貯留ホッパ103に作業者等がぶつかることを抑制することができる。また、アシストパイプ130に、肥料袋等を引っ掛けることができる。
【0077】
[第2の実施形態]
図10は、第2の実施形態の苗移植機の側面図である。
図11は、第2の実施形態の苗移植機の平面図である。本実施形態の苗移植機1Eは、苗移植機1と同様の構成を備える。但し、本実施形態の苗移植機1Eは、積込補助装置110が設けられている位置が苗移植機1に対して主に異なる。
【0078】
本実施形態では、積込補助装置110は、上方から見たときに、少なくとも一部が貯留ホッパ103の前方に位置している。詳細には、一対の支持部材109を上方からの視線で見たときに、一対の支持部材109の少なくとも一方が走行車体2の左右方向で走行車体2の外側(側方)に位置するとともに、一対の支持部材109の間(空間)が、貯留ホッパ103の前方に位置している。また、本実施形態では、一対の支持部材109は、結合部材115によって互いに結合されている。結合部材115は、左右方向に長い棒状に構成され、一対の延部材113間に複数設けられている。複数の結合部材115は、前後方向に互いに間隔をあけて設けられている。
【0079】
以上の構成では、一対の支持部材109を上方からの視線で見たときに、一対の支持部材109の少なくとも一方が走行車体2の左右方向で走行車体2の外側に位置するとともに、一対の支持部材109の間が、貯留部103の前方に位置していることにより、一対の支持部材109が走行車体2上での作用者の移動を妨げるのを抑制することができる。よって、走行車体2上での作業者の移動がし易くなり、作業性が向上する。また、一対の支持部材109間の少なくとも一部の下方には空間が形成されるので、資材に付着した水や泥土を、積込補助装置110による資材の移動搬送中に、一対の支持部材109間から圃場に落下させることができる。これにより、水や泥土が走行車体2上に溜りにくくなり、作業者の走行車体2上の移動がし易くなる。また、水や泥土が走行車体2上に留まりにくくなるので、走行車体2の清掃作業(泥落とし作業)に要する時間と労力とを軽減することができる。これにより、作業者の費やす労力が軽減される。
【0080】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態の苗移植機の側面図である。
図13は、第3の実施形態の苗移植機の平面図である。本実施形態の苗移植機1Fは、苗移植機1と同様の構成を備える。但し、本実施形態の苗移植機1Fは、積込補助装置110の構成の一部が苗移植機1に対して主に異なる。
【0081】
本実施形態の積込補助装置110は、延部材113および回転体114を有する一対の支持部材109の他に、積載台116と、駆動源としての駆動モータ119と、搬送機構120と、を有している。積載台116は、一例として、平面視で矩形状に構成され、その上面に資材を積載する。本実施形態では、支持部材109は、積載台116を介して資材を支持する。積載台116は、前後方向に沿って移動可能に一対の支持部材109の回転体114に支持されている。積載台116は、第一の位置P1と第二の位置P2との間で移動可能である。第一の位置P1は、貯留ホッパ103よりも前方の位置であって、走行車体2の前端部寄りの位置である。第二の位置P2は、積載台116が、第一の位置P1に位置した場合よりもが貯留部103の近くになる位置である。積載台116は、第一の位置P1では、ストッパに当接することで前方への移動が阻止され、第二の位置P2では、ストッパに当接することで後方への移動が阻止される。搬送機構120は、前後方向に沿って延びたラック117と、ラック117と噛み合うピニオン118とを有している。ラック117は、一例として延部材113の側面に設けられている。また、ピニオン118は駆動モータ119とともに、積載台116に設けられている。ピニオン118は、駆動モータ119によって回転駆動され、駆動モータ119の動力によって積載台116を支持部材109(前後方向)に沿って移動させる。
【0082】
また、積込補助装置110は、駆動モータ119の操作を行う操作スイッチ121,122を有している。操作スイッチ121,122は、駆動モータ119の正逆回転および停止の操作が可能となっている。操作スイッチ121は、第一の操作部材の一例であり、操作スイッチ122は、第二の操作部材の一例である。操作スイッチ121は、操縦部50に設けられている。操作スイッチ121は、ハンドル52よりも下方であって、操縦席55の前方に位置している。操作スイッチ121は、左右の積込補助装置100を独立して操作できる構成である。なお、操作スイッチ121は、左右両方の積込補助装置100を同一の操作で行える構成であってもよい。一方、操作スイッチ122は、各積込補助装置100ごとに設けられている。操作スイッチ122は、例えば延部材113の前端部や積載台116に設けられうる。操作スイッチ122は、対応する積込補助装置100の操作が可能な構成である。なお、各操作スイッチ122のそれぞれが、左右両方の積込補助装置100を同一の操作で行える構成であってもよいし、左右の積込補助装置100を独立して操作できる構成であってもよい。
【0083】
上記構成では、操作スイッチ121,122によって駆動モータ119を操作して積載台116を前後方向に移動させることができるとともに、積載台116を第一の位置P1から第二の位置P2までの間で停止させることができる。ここで、変速レバー54が中立位置にあり、駆動力が車輪に伝達されていないことを条件に、駆動モータ119を作動させるようにしてよい。なお、駆動モータ119の作動条件として、ブレーキペダル53が、ブレーキ装置を作動させた状態で、ロックされた状態(ロック状態)を条件としてもよい。
【0084】
以上説明した本実施形態では、搬送機構120が駆動モータ119の動力によって積載台116を前後方向に沿って移動させることにより、積載台116に積載させた資材を駆動モータ119の動力によって移動(搬送)することができる。これにより、作業者は、資材を貯留ホッパ103に向けて押すことなく、資材を貯留ホッパ103に向けて移動させることができるので、貯留ホッパ103への資材の積込作業の省力化を図ることができる。
【0085】
また、本実施形態では、駆動モータ119の操作を行う操作スイッチ121が、操縦部50に設けられ、駆動モータ119の操作を行う操作スイッチ122が、積込補助装置100に設けられていることにより、操作スイッチ121や操作スイッチ122を操作しないと積載台116が移動しないので、作業者の意図に反して積載台116が移動することを抑制することができる。よって、作業の安全性が向上する。また、操作スイッチ121の他に操作スイッチ122でも駆動モータ119の操作が行えるので、圃場の外から走行車体2に資材を積み込む作業者が操作スイッチ122によって駆動モータ119の操作ができるので、駆動モータ119の操作性が向上する。これにより、作業者が駆動モータ119の操作のために操作スイッチ121まで移動する必要がなくなるので、作業者の労力が軽減される。
【0086】
[第4の実施形態]
図14は、第4の実施形態の苗移植機の側面図である。
図15は、第4の実施形態の苗移植機の平面図である。本実施形態の苗移植機1Gは、苗移植機1Fと同様の構成を備える。但し、本実施形態の苗移植機1Gは、積込補助装置110の構成の一部が苗移植機1Fに対して主に異なる。
【0087】
積込補助装置110は、重量検出部としての重量センサ123を有している。重量センサ123は、一対の支持部材109(一対の延部材113)の後端部間に設けられている。重量センサ123の上端部に、第二の位置P2に位置した積載台116の中央部が接触する。重量センサ123は、第二の位置P2に位置した積載台116の重量を検出可能である。重量センサ123は、例えばその上端部が積載台116によって押し下げられた量に基づいて、積載台116の重量を検出する。ここで、積載する資材が重いほど積載台116の中央部が下方に向けて突出するように変形することや、積載台116の積載する資材が重いほど回転体114が変形すること等により、積載台116の重量が重いほど重量センサ123の押し下げ量が大きくなる。
【0088】
図16は、第4の実施形態の積込補助装置の構成を示すブロック図である。苗移植機1Gは、積込補助装置110を制御する制御部125を備えている。制御部125は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)、およびRAM(Random Access Memory)を有する構成とすることができる。制御部125は、駆動モータ119や操作スイッチ121,122、重量センサ123等が接続されている。
【0089】
図17は、第4の実施形態の制御部が行う搬送処理を示すフローチャートである。
図17を参照して、積載台116の搬送処理を説明する。ここでは、第一の位置P1に位置した積載台116に資材が積載され、操作スイッチ121,122により駆動モータ119の正回転操作が行われた場合の例を説明する。制御部125は、操作スイッチ121,122により駆動モータ119の正回転操作が行われた場合、駆動モータ119の正回転を開始する(ステップS1)。これにより、例えば資材を積載した積載台116が第一の位置P1から第二の位置P2へ向けて移動する。制御部125は、重量センサ123が検出状態となるまで、待つ(ステップS2のNo)。ここで、本実施形態では、重量センサ123が規定以上の重量を検出した場合、重量センサ123が検出状態であり、重量センサ123が規定以上の重量を検出しない場合、重量センサ123が非検出状態である。規定の重量は、例えば、何も搭載していない積載台116の重量よりも重い重量である。より具体的には、規定の重量は、例えば、何も搭載していない積載台116の重量よりも重く、規定の重量の資材を積載した積載台116の重量以下の重量である。
【0090】
資材を積載した積載台116が第二の位置P2に到達し、重量センサ123が規定以上の重量を検出した場合、つまり重量センサ123が検出状態となった場合(ステップS2のYes)、制御部125は、駆動モータ119を停止させる(ステップS3)。これにより、積載台116が第二の位置P2で停止する。
【0091】
次に、制御部125は、重量センサ123が非検出状態となるまで、待つ(ステップS4のNo)。第二の位置P2に位置した積載台116から資材が取り除かれて、重量センサ123が規定以上の重量を検出しなくなった場合、つまり重量センサ123が非検出状態となった場合(ステップS4のYes)、制御部125は、積載台116を元の第一の位置P1に戻す(ステップS5)。具体的には、制御部125は、駆動モータ119を逆回転させて、積載台116を第二の位置P2から第一の位置P1に移動させる。積載台116は、第一の位置P1に到達すると、ストッパに当接して停止する。このとき、制御部125は、駆動モータ119の電流値変化やモータの回転速度の低下等によって駆動モータ119の過負荷状態を検出すると、駆動モータ119を停止させる。
【0092】
以上説明した本実施形態では、制御部125が、駆動モータ119を制御して積載台116を第一の位置P1から第二の位置P2へ向けて移動させ、重量センサ123が規定以上の重量を検出した場合、駆動モータ119を停止させる。よって、作業者による積載台116を第二の位置P2で停止させる操作が無くても、資材を搭載して規定以上の重量となった積載台116を自動で第二の位置P2で停止させることができる。また、制御部125が、重量センサ123が規定以上の重量を検出しなくなった場合、駆動モータ119を駆動して積載台116を第二の位置P2から第一の位置P1へ移動させることにより、作業者による積載台116を第一の位置P1へ移動させる操作が無くても、資材が取り除かれて規定未満の重量となった積載台116を自動で第一の位置P1に戻すことができる。よって、積込作業の作業能率が向上する。
【0093】
[第5の実施形態]
図18は、第5の実施形態の苗移植機の平面図である。本実施形態の苗移植機1Hは、苗移植機1Fと同様の構成を備える。但し、本実施形態の苗移植機1Hは、積込補助装置110が一つだけ設けられている点が苗移植機1Fに対して主に異なる。
【0094】
本実施形態では、一例として、走行車体2の走行に関する操作を行う走行操作部材である変速レバー54が、操縦部50における左右のいずれか一方の部分に設けられている。
図18の例では、変速レバー54は、操縦部50中の右側の部分(右部)に設けられている。そして、積込補助装置110および操作スイッチ122が、操縦部50の左右方向の両側のうち変速レバー54が設けられた一方(
図18では右)とは逆側(
図18では左側)に設けられている。
【0095】
以上説明した本実施形態では、操縦部50が、変速レバー54を当該操縦部50における左右のいずれか一方の部分に有し、操作スイッチ122が、操縦部50の左右方向の両側のうち変速レバー54が設けられた一方とは逆側に設けられていることにより、作業者が操作スイッチ122を操作する際、作業者の手が変速レバー54に接触することを抑制することができる。これにより、走行車体2が急激に加減速することを抑制でき、走行車体2が圃場外に向かって移動することが抑制され、圃場端での資材の積込作業の能率が向上する。また、作業時に作業者が変速レバー54に当たることを抑制することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態および変形例を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素等のスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。