(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粉砕ローラ、脱気ローラ、及び回転テーブルを備えて、回転テーブル上に投入した原料をスイングレバーに取り付けた脱気ローラで圧密してから粉砕ローラで粉砕する竪型粉砕機において、
脱気ローラが回転テーブルに対して近接又は離間するようスイングレバーを搖動可能に軸支し、
前記スイングレバーの上部と竪型粉砕機のケーシングの間であって、スイングレバーが搖動した際に竪型粉砕機のケーシングとスイングレバーが近接又は離間する部位に、
スイングレバーを搖動させて脱気ローラを回転テーブル側に押圧するためのアクチュエータを配するとともに、スイングレバーに設けた当接部に当接し、脱気ローラが回転テーブルに対して近接する方向側への移動を制限することにより、脱気ローラと回転テーブルの間の隙間の寸法を調整する隙間寸法調整装置を配するとともに、
隙間寸法調整装置を油圧ジャッキ又は油圧シリンダとし、隙間寸法調整装置の長さを竪型粉砕機の運転中に伸縮させることによって、
脱気ローラで原料を圧密する際に、隙間寸法調整装置を、スイングレバーに設けた当接部に当接し続けさせることにより、脱気ローラと回転テーブルの間の隙間の寸法が所望する値になるよう制御することを特徴とした竪型粉砕機。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭等を粉砕する粉砕機として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。
竪型粉砕機は、被粉砕物(本明細書においては単に原料と称することもある)を効率的に粉砕することができるという優れた特性を備えている。
【0003】
しかし、竪型粉砕機は、原料を効率的に微粉砕することができるという優れた特性を有している反面、原料の種類や粉砕条件によって、振動が発生し易いという問題点を有していた。竪型粉砕機に発生する振動は、様々な原因によって誘発されるために、その振動原因に応じた様々な対策を講じる必要があり、従来から数多くの振動防止対策が提案されている。
【0004】
振動防止対策の代表的な1つとして、回転テーブルの外周に設置しているダムリングの高さを調整する方法が公知であり、通常、ダムリングは、装置の停止時に作業員が手作業により交換することによって、その高さ等、寸法を変更する構成となっている。
【0005】
しかし、竪型粉砕機の運転中においては、例えば生産量の調整によるターンダウン、水分量の変化、或いは原料サイズの変化など、様々な要因にて、原料の性状が刻々と変化する。
原料の性状が刻々と変化する条件下で運転を行う場合に、変化する状況に合わせて細かく対応し、振動の発生を抑制するためには、その都度、装置を停止させてダムリングの高さを調整しなければならず、手間と時間を要した。また、この方法では、突発的な状況の変化による異常振動等に対しての対応は難しい。
【0006】
このような問題点に鑑み、運転中にダムリングの高さを変更できる技術が、一部で提案されている。しかし、粉塵が舞う機内の悪雰囲気に暴露されるダムリングの高さを、運転中に機外から変更するのは容易ではない。
【0007】
また、一方で、振動発生の要因として、原料を非常に細かく微粉砕する際に振動が生じ易くなるという事実が知られている。
何故なら 原料層は、粉体であるから、通常、その内部に空気を取り込んだ状態となっている。そして、粉体の一般的な性質として、粉体層を形成する粉体の径が小さくなればなるほど、その中に多量の空気を抱え込みやすくなる。
言い換えれば、原料を細かに微粉砕しようとすれば、回転テーブル上の原料層(粉体層)について、粒径の小さな細かな原料を多く含むようになり、空隙率の高い、所謂、嵩高い状態(嵩比重が小さい、嵩密度としては低い状態)になる。
【0008】
ここで、嵩高い原料層は、空気を大量に含んでいるために、見かけ上、摩擦係数が小さい状態となっている。
そして、竪型粉砕機の運転中において、回転テーブル上で粉砕される被粉砕物と粉砕ローラが滑りやすい状態になると、粉砕ローラによる原料の噛み込み能力が落ちて粉砕効率が低下するとともに、スティックスリップ現象等が誘発されて、異常振動を引き起こす可能性が高くなるということが知られている。言い換えれば、粉砕ローラと原料層の間の摩擦係数を増加させることによって、振動の低減が期待できる。
【0009】
なお、スティックスリップ現象とは、粉砕ローラが回転テーブル上に形成された原料層上で瞬間的なスリップを起こして、一瞬、回転が止まったような状態になる現象であって、運転中、この現象が断続的に繰り返されると、粉砕ローラの回転が不規則になって、竪型粉砕機に振動を発生させる要因となる。
【0010】
参考までに、
図10に原料層における見かけ上の摩擦係数と圧密荷重の大きさ、並びに原料層の厚みの関係を示す。圧密荷重を増加させると、見かけ上、徐々に原料層の摩擦係数が大きくなる傾向にあることがわかる。
つまり、原料層の圧密荷重を増加させると、見かけ上、原料層の摩擦係数が徐々に増加する傾向にあることがわかる。
原料層の中に抱え込んだ空気が脱気されて嵩比重が増加することにより、摩擦係数が増加しているものと考えられる。
【0011】
ところで、微粉砕に適している上抜き式、或いはエアスエプト式等と呼ばれているタイプの竪型粉砕機の多くは、ガスの気流を利用して、所望の粒径となった原料を機外に取り出す一方で、所望の粒径となっていない原料については、機内において、再度、回転テーブル上に供給して、繰り返し粉砕する構成となっている。
なお、竪型粉砕機の機内で、繰り返し粉砕される原料は、当業者に循環原料と称されるものである。
【0012】
竪型粉砕機で原料を微粉砕しようとした場合に、所望する粒径が小さければ小さいほど、それに比例して、前述した循環原料の粒径も小さいものとなり、さらに機内に滞留する循環原料の割合も大きくなるので、振動が発生しやすい状況となる。
【0013】
前述の原因による振動を防止する方法の一つとして、特許文献1に開示されるような従来技術が公知である。
特許文献1に開示の従来技術は、補助ローラを用いて回転テーブル上の原料層を脱気し、一旦、圧密化することによって、粉砕ローラに原料を効率良く噛み込ませるという技術である。
補助ローラを使用して原料を圧密してから後粉砕ローラで粉砕する場合、原料が圧密されることにより、原料の中にあるガスが脱気されて、粉砕ローラがスリップしにくくなるという作用効果を奏するものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面等に基づき本発明の好ましい実施形態の1例を、第1の実施形態(第1実施形態と称することもある)として詳細に説明する。
図1から
図7は本発明の実施形態を説明するための図に係わり、その好ましい例を示したものであって、
図1は竪型粉砕機の全体構成を説明する図である。
図2は脱気ローラと粉砕ローラの設置状態を説明する図であり、
図2(1)は回転テーブル上における脱気ローラと粉砕ローラの配置を示し、
図2(2)及び
図2(3)は粉砕ローラと脱気ローラがそれぞれ押圧機構に取り付けられた状態の図を示す。
図3は脱気ローラ押圧機構と隙間設定機構を説明する図であり、
図4は隙間設定機構の構造を説明する図であって、
図4(1)は隙間設定機構を示し、
図4(2)は隙間設定機構を構成する隙間寸法調整装置、
図4(3)は当接部の構成を示す図である。
図5は油圧ジャッキタイプの隙間
寸法調整装置に使用した油圧機構を説明する図であり、
図6は油圧シリンダタイプの隙間調
寸法整装置に使用した油圧機構を説明する図である。
図7は脱気ローラ押圧機構に使用した押圧シリンダを説明する図である。
【0027】
図8と
図9は設定隙間寸法が原料層の圧密状態に与える影響を概念的に説明する図であり、
図8は設定隙間寸法である設定隙間σが原料層厚h1より大きい場合を示し、
図9は設定隙間σが原料層厚h2より小さい場合を示した図である。
図10は、原料層における見かけ上の摩擦係数、圧密荷重の大きさ、及び原料層の厚みの関係を示す参考図であり、
図11は設定隙間寸法と竪型粉砕機性能の関係を示す図である。
図12は、スイングレバーストッパの構造を説明する図である。
【0028】
本発明の第1の実施形態(第1実施形態と称することもある)による竪型粉砕機1を
図1に示す。
図1に示した竪型粉砕機1は、エアスエプト式等と呼ばれているタイプの竪型粉砕機1であり、粉砕後、後述するガスの気流と内部に備えた分級機構26を利用して、所望の粒径となった原料を上部から機外に取り出す一方、所望の粒径となっていない原料については、再度、回転テーブル2上に供給して、粉砕ローラ3で、繰り返し粉砕する構成となっている。
【0029】
以下、竪型粉砕機1の構造を説明する。
図1に示した竪型粉砕機1は、竪型粉砕機1の外郭を形成する上部ケーシング1B、下部ケーシング1A、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2B、駆動モータ2Mによって駆動される回転テーブル2、並びに、コニカル型の粉砕ローラ3とコニカル型の脱気ローラ5を備えている。また、竪型粉砕機1は、駆動モータ2Mの駆動用電源として図示しないインバータ電源を備えて、運転中、回転テーブル2の回転速度が任意に変更可能な可変速式の竪型粉砕機1である。
【0030】
なお、竪型粉砕機1は、
図2(1)に示すように、粉砕ローラ3が回転テーブル2上において、その外周部分に対向するように2個配されるとともに、位相を90度ずらした形で脱気ローラ5が対向するようにして2個配されている構造となっている。
図2(2)に粉砕ローラ3の押圧機構を示す。竪型粉砕機1の運転中に、粉砕ローラ3を軸支するアームが油圧シリンダにより強力に引っ張られることによって、粉砕ローラ3を回転テーブル2側に押し付ける方向の力を発生させる。
なお、第1実施形態の特徴となる脱気ローラ押圧機構10、並びに、隙間設定機構12の詳細については後述する。
【0031】
第1実施形態による竪型粉砕機1においては、上部に形成された原料投入口35Aから原料投入シュート35を介して、回転テーブル2上に原料を投入する構成となっている。
なお、原料投入シュート35は、一般的に、センターシュートと称されることもあるものである。また、粉砕の挙動については後述するが、原料投入シュート35から回転テーブル2上に供給された原料の多くは、脱気ローラ5で圧密された後、粉砕ローラ3により粉砕される。
【0032】
ここで、第1実施形態による竪型粉砕機1は、機内の上部に固定式の一次分級羽根24、回転式の回転分級羽根23、及び、回転軸25、で構成される分級機構26を備えており、回転分級羽根23の外周側に固定式の一次分級羽根24が配置されている構造となっている。
【0033】
そして、回転分級羽根23は、回転軸25に接続されて、竪型粉砕機1の上部に設置された図示しない駆動モータにより駆動されて、自在に回転する構成となっている。
なお、固定式の一次分級羽根24は、一般的に、ガイドベーンと称されることもあるものであり、回転式の回転分級羽根23は、回転ベーンと称されることもあるものである。
【0034】
第1実施形態においては、一次分級羽根24と回転分級羽根23の2段構成となった分級機構26を採用しているが、本発明に適応できる分級機構26の構成はこれに限らず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で変更が可能であって、例えば、固定式の一次分級羽根24のみを備えた分級機構を使用しても良い。
【0035】
また、第1実施形態では、回転テーブル2の下方にガスを導入するためのガス供給口33と、極端に大きな重量の原料を取り出すための下部取出口34(排出シュート34と称することもある)と、を備えており、回転テーブル2の上方には、ガスと共に製品(粉砕されて所望の粒径となった原料)を機外に取り出すことのできる原料取出口39(上部取出口39と称することもある)を備えている。
【0036】
そして、回転テーブル2の外周側部分と竪型粉砕機1の下部ケーシング1Aとの間には、
図3に示すような環状の通路30(環状通路30と称することもある)が形成されており、ガス供給口33から供給されたガスは、環状通路30を通過し上昇して、機内を吹き上がり、分級機構26を通過した後、原料取出口39方向に流れていくように構成されている。
【0037】
図1に示した竪型粉砕機1は前述の構成によって、運転中に、ガス供給口33よりガスを導入することによって、回転テーブル2下方から一次分級羽根24及び回転分級羽根23を通過して原料取出口39へと流れるガスの気流が生じている。
【0038】
さらに、第1実施形態による竪型粉砕機1においては、回転テーブル2と分級機構26との間に、内部コーン22が配されている。なお、内部コーン22は、一般的に、センターコーンと称されることもあるものである。内部コーン22は、略切頭円錐型を逆にした形状をしており、その上部が円環状となって上方に向かって開口し、その上端の外周部には、前述した一次分級羽根24が、等間隔で複数本配されているとともに、内部コーン22の下端は円筒状で、回転テーブル2の中心側に向かって下方に開口する形状となっている。
【0039】
以下、第1実施形態の特徴となる脱気ローラ5と脱気ローラ押圧機構10の構成について詳細に説明する。
図3に示したように、脱気ローラ5のローラ軸10Bは、スイングレバー10Aの中を挿通するように配されて、スイングレバー10Aの中に配した図示しない軸受により軸支されている。脱気ローラ5は、スイングレバー10Aに軸支されることによって、回転テーブルの回転に合わせて自在に回転できる。
【0040】
また、第1実施形態においては、脱気ローラ5を、回転テーブル2の方向に押し付けるために、スイングレバー10Aと押圧シリンダ10Fとを備えた脱気ローラ押圧機構10を備えている。
図3に脱気ローラ押圧機構10の構造を示す。
脱気ローラ押圧機構10を構成するスイングレバー10Aは、脱気ローラ5を挿通させた本体部分を中心にして、脱気ローラ5を取り付けた側の反対側から上下方向に伸びるアームを有した、所謂、T字型の形状になっている。
【0041】
そして、スイングレバー10Aの本体部分から下方に伸びる下部アーム部分は、支持台15上でスイングレバー軸10Cにより軸支されており、スイングレバー10Aに取り付けた脱気ローラ5が、回転テーブル2に対して近接
又は離間するよう搖動可能に支持されて
いる。
【0042】
一方、スイングレバー10Aの本体部分から上方に伸びる上部アーム部分は、竪型粉砕機1の上部ケーシング部1Bに、取付座1Gを介して、押圧シリンダ10Fにより、連結されている。
【0043】
図7に押圧シリンダ10Fの詳細構造を示す。
押圧シリンダ10Fの油室Bに圧油が供給されることによって、スイングレバー10Aの上部アームが、上部ケーシング部1B側に強く引っ張られる構造となっている。
【0044】
竪型粉砕機1の運転中に、油室Bに圧油を供給すると、押圧シリンダ10Fは、スイングレバー10Aの上部アーム部分を上部ケーシング1B側に強く引っ張り、その結果、スイングレバー10Aはスイングレバー軸10Cを回転軸として、回転テーブル側に向かって回転移動しようとして、その結果、脱気ローラ5を回転テーブル2側に押し付ける方向の力を発生させる。
【0045】
なお、第1実施形態においては、好ましい構成の1例として、構造がシンプルでメンテナンスし易い油圧式の押圧シリンダ10Fを、脱気ローラ5を回転テーブル2側に押し付けるためのアクチュエータ(駆動装置と称することもある)として利用した。
しかし、本発明に使用できるアクチュエータはこれに限らず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において変更が可能であって、例えば、ボールねじを利用した電動モータ式のアクチュエータを利用しても良く、或いは、スプリング式のアクチュエータを利用する等しても良い。
また、脱気ローラ5の重量等により、脱気ローラ5を回転テーブル2側に押し付けて原料層を圧密できる力が十分に確保できる場合にはアクチュエータを使用しなくても良い。
【0046】
また、第1実施形態においては、構成がシンプルでメンテナンス等し易いという理由から、好ましい1例として、スイングレバー10Aの上部アームを上部ケーシング1B側に引っ張る構造を示した。
しかし、本発明に使用できるアクチュエータの取り付け方法はこれに限らず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において変更が可能であって、例えば、スイングレバー10Aの下部アーム等、スイングレバー10Aで軸支した脱気ローラ5が回転テーブル2側に向かって回転しようとする方向の力を発生させる部位にアクチュエータを取り付ければ良い。また、スイングレバー10Aに与える力の方向も、取り付ける部位により適宜選択されるものであって、引っ張り、或いは押圧、特に限定されない。
【0047】
以下、隙間設定機構12について説明する。
本発明による第1実施形態では、スイングレバー10Aの本体部分から上方に伸びる上部アーム部分に、隙間設定機構12を配して、スイングレバー10Aの上部アームの動きを制限し、脱気ローラ5と回転テーブル2の間の隙間寸法が所望する寸法以下にならないように制限する。
【0048】
図4に、隙間設定機構12の構成を示す。
第1実施形態による隙間設定機構12は、
図4(1)に示すように、隙間寸法調整装置13とスイングレバー10Aに設けた当接部14からなり、隙間寸法調整装置13は、取付座1Gを介して上部ケーシング1Bに取り付けられている。なお、隙間寸法調整装置13の取り付けに必要なければ、隙間寸法調整装置13は取付座1Gを介すことなく上部ケーシング1Bに直接取り付けても良い。スイングレバー10Aが回動して上部アームが、竪型粉砕機1の上部ケーシング1Bに近接してきた際に、隙間寸法調整装置13の一部と当接部14が当接し、当接した以降、スイングレバー10Aの上部アームが、さらに、竪型粉砕機1の上部ケーシング1B側に移動することを制限する。
【0049】
なお、第1実施形態においては、運転時に力を受ける当接部14が損傷した際に容易に交換が可能等と言う理由から、スイングレバー10Aに当接部14を設けて、隙間寸法調整装置13の一部と当接させる構造とした。
しかし、当接部14が負担する力、スイングレバー10Aの形状、或いは、隙間寸法調整装置13の大きさなどにより、必要ないケースもあり、その場合は、隙間寸法調整装置13の一部を、スイングレバー10Aに直接当接させて、スイングレバー10Aの移動を制限する構造としても良い。
【0050】
ここで、
図4(2)に示すように、隙間寸法調整機構13は、調整シリンダ13Bと調整ロッド13Aからなる油圧ジャッキである。
図5に油圧回路等を示すが、油室Aに油(図面上においてはオイルと表記)を供給することにより、調整ロッド13Aの位置を調整できる。
【0051】
ここで、隙間寸法調整装置13を設けた位置は、竪型粉砕機1の上部ケーシング1Bとスイングレバー10Aの間であり、当接部14を設けたスイングレバー10Aの上部アームが、搖動により上部ケーシング1Bと近接
又は離間する部位である。
【0052】
前述したように、隙間寸法調整装置13の一部である調整ロッド13Aが、当接部14と当接することにより、スイングレバー10Aの上部アームが、当接した以降において、上部ケーシング1B側に回転するのを防止する。
【0053】
運転中、隙間寸法調整装置13の油室Aに対して油を供給又排出することにより、調整ロッド13Aの位置を調整すれば、スイングレバー10Aの上部アームに設けた当接部14が、調整ロッド13Aに当接する位置を調整することができる。
【0054】
つまり、スイングレバー10Aの上部アームに設けた当接部14に、調整ロッド13Aが当接することによって、脱気ローラ5が回転テーブル2に対して近接する方向側へ移動するのを制限することにより、脱気ローラ5と回転テーブル2の間の隙間寸法を調整することができる。
【0055】
第1実施形態においては、以上のような構成により、隙間寸法調整装置13の長さを竪型粉砕機1の運転中に伸縮させることによって、脱気ローラ5で原料を圧密する際に、脱気ローラ5と回転テーブル2の間の隙間寸法が所望する値になるよう制御することができる。
【0056】
なお、第1実施形態においては、好ましい例として、構造がシンプルでメンテナンスし易い油圧ジャッキを、伸縮可能な隙間寸法調整装置13の1例として示した。
しかし、本発明に使用できる隙間
寸法調整装置13の構成はこれに限らず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において変更が可能であって、例えば、
図5に示すように、油圧シリンダを伸縮可能な隙間寸法調整装置130としても利用しても良く、或いは、電動サーボモータ式等のアクチュエータを利用しても良く、スイングレバー10Aの回転力を受け止めて、脱気ローラ5が回転テーブル2に対して近接する方向側への移動を制限することがきる構造のものであれば良い。
【0057】
以下、
図1に示した竪型粉砕機1について、機内を流れる原料の挙動を説明する。
竪型粉砕機1の機内に外部から投入された新規原料は、原料投入シュート35を介して回転テーブル2上の中心上に供給され、回転テーブル2の回転による影響等を受けることにより、回転テーブル2の中心側から外周側に向かって移動し、その中の多くが、脱気ローラ5で圧密された後、粉砕ローラ3により噛み込まれて粉砕される。
【0058】
粉砕ローラ3により粉砕された原料は、さらに回転テーブル2の外周側に移動してダムリング27を乗り越えて、環状通路30に達して、そこで機内を流れるガス(第1実施形態においては空気)により吹き上げられて、ケーシング1B内を上昇する。
ガスによって吹き上げられた原料の中で、比較的径の大きな原料は、吹き上げられる際において、ガスの流れから逸脱して落下し、環状通路30側、或いは、回転テーブル2上側に、再度、戻る方向に移動する。
なお、環状通路30に達した原料の中で、極端に重量が大きな原料は、環状通路30に達しても、そこで吹き上げられずに、そのまま落下して、竪型粉砕機1の下部にある下部取出口34より機外に排出される。
【0059】
一方、ガスによって吹き上げられた原料の中で、比較的径の小さな原料は、一次分級羽根24までガスと共に搬送されて、一次分級羽根24を通過する。
そして、一次分級羽根24を通過した原料の中で、所望の粒径となった原料は、回転分級羽根23を通過することにより、分級機構26を通過して、原料取出口39から製品として取り出される。
【0060】
一次分級羽根24を通過した原料の中で、所望の粒径にまで細かく粉砕されていなかった原料は、回転分級羽根23を通過できずに、内部コーン22内に落下して捕集され、回転テーブル2上に再度供給される。
【0061】
ここで、本発明による1実施形態では、脱気ローラ5により原料を圧密する際において、隙間設定機構12の隙間寸法調整装置13を用いて、スイングレバー10Aの動きを制限することにより、脱気ローラ5と回転テーブル2の設定隙間寸法(設定隙間σ)を所望の寸法にした状態で運転し続けるものであり、所望する設定隙間σは原料の性状に変化に合わせて、変更しながら運転する。
【0062】
図11に設定隙間寸法と竪型粉砕機(図面上においてはミルと表記)性能の関係について示す。設定隙間寸法が原料層の圧密状態に与える影響について、
図8は設定隙間σが、回転テーブル2上に形成された原料層厚h1より大きい場合を示し、
図9は設定隙間σが回転テーブル2上に形成された原料層厚h2より小さい場合を示した図である。
【0063】
設定隙間σが原料層厚h1より大きい場合は、原料の多くが圧密されないことになり、原料層を圧密することによる作用効果が十分に得られない。そのため、振動値等が増加し、電力原単位も悪化する。
一方、設定隙間σが原料層厚h2より小さすぎる場合は、脱気ローラ5の作用効果が圧密作用ではなく、粉砕作用がメインになる。その結果、脱気ローラ5を配した作用効果が薄れ、振動値等が増加し、電力原単位も悪化する。
したがって、設定隙間σを、原料の性状に合わせて、できる限り最適値に保った状態で運転し続けることが好ましい。
【0064】
原料の性状により、最適値は変化するので、本発明による第1実施形態の運転方法では、原料の性状が刻々と変化する条件下で、竪型粉砕機1の運転を行う際においては、変化する状況に合わせて、脱気ローラ5と回転テーブル2の間の隙間の寸法である設定隙間σを、隙間寸法調整装置12を作動させて調整することにより、振動の低減化を図る。
【0065】
第1実施形態で説明した竪型粉砕機1おいては、運転中でも、この設定隙間σを任意にコントロールして所望の寸法に制御できるので、設定隙間σを、できる限り最適値に保った状態で運転し続けることが可能である。
【0066】
なお、本発明による1実施形態においては、運転中、突発的な異常が生じた場合は除き、原則、隙間
寸法調整装置13の調整ロッド13Aを、当接部14に当接し続けさせる構成となっている。即ち、運転中において、原則、設定隙間σの高さになるようにして原料層を圧密するように制御する。
【0067】
言い換えると、設定隙間σの高さになるようにして原料層を圧密するので、脱気ローラ5による原料層の押圧力は、原料層を所望する高さまで圧密するに必要な力だけで良く、脱気ローラ5による原料層の押圧力を一定に制御していない。
なお、通常は、脱気ローラ5による原料層の押圧力が、原料層を所望する高さまで圧密するに必要な力以上に作用できるようにするため、押圧シリンダ10Fによりスイングレバー10Aに負荷する力は大きめに設定される。
そのため、原料層を所望する高さまで圧密するに必要な以上の力は、原料層に作用することなく、隙間
寸法調整装置13の油圧ジャッキと当接部14の間で負担する。
【0068】
従来技術において、脱気ローラ5を使用する場合は、通常、脱気ローラ5による原料層の押圧力を一定に制御しながら原料層を圧密する。
したがって、従来技術と第1実施形態を比較した場合において、従来技術が圧力一定で圧密後の原料層厚みが成り行きなのに対して、本発明による第1実施形態では、圧密後の原料層厚みが設定隙間σになるように制御するものであるから、原料層に負荷される圧力は成り行きとなる。
【0069】
なお、従来技術においても、例えば、
図12に示すようなスイングレバーストッパ213を用いて、脱気ローラ5と回転テーブル2の隙間寸法を制限する場合がある。
しかし、従来技術において、隙間寸法を制限する理由は、脱気ローラ5が回転テーブル2に対して直接接触させないようにするためである。
言い換えれば、原料が流れてこないような場合において、脱気ローラ5が回転テーブル2に直接接触(所謂、メタルタッチと呼ばれる状態)して損傷しないようするための安全システムとして使用されるものである。
したがって、本発明による第1実施形態のように、圧密の度合いを積極的に制御するために設けられたものではなく、運転中に、設定隙間σの寸法を変更できる構成のものとはなっていない。