(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446874
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/68 20060101AFI20181220BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20181220BHJP
A61K 36/57 20060101ALI20181220BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20181220BHJP
A61K 36/67 20060101ALI20181220BHJP
A61K 36/708 20060101ALI20181220BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20181220BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20181220BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20181220BHJP
【FI】
A61K36/68
A61K36/752
A61K36/57
A61K36/185
A61K36/67
A61K36/708
A61K9/16
A61P1/10
A23L33/105
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-144648(P2014-144648)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2015-42631(P2015-42631A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-154065(P2013-154065)
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浜下 智宏
【審査官】
鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
Advances in Food Sciences,2006年,Vol.28,No.2,pp.74-78
【文献】
ファイバコートα説明書,2012年12月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/105
A61K 9/00−9/72
A61P 1/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランタゴ・オバタ種皮とキジツ末、コウボク末、マシニン末、コショウ末及びダイオウ末から選ばれる1種以上を含む固形製剤。
【請求項2】
顆粒剤である、請求項1に記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨潤能を向上した固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プランタゴ・オバタ種皮(イスパグラ種皮)は水分を吸収すると膨らむ性質があるため、便の量を増やしたり、腸のぜん動運動を促したりすることにより、便通を良くする効果があることから、便秘薬の有効成分として汎用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−79199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製剤化にあたり生薬や賦形剤を配合するとプランタゴ・オバタ種皮の水分吸収による膨潤性が低下する問題があった(特許文献1参照)。
そこで、本発明は、有効成分としてプランタゴ・オバタ種皮を含有し、膨潤能を向上した固形製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、プランタゴ・オバタ種皮を配合した固形製剤について、その膨潤能を向上すべく鋭意検討を行った。その結果、キジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末の少なくとも1種を配合した場合のみ,膨潤能が向上することを見出した。
かかる知見に基づき完成した本発明の態様は、プランタゴ・オバタ種皮を含有し、キジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末から選ばれる1種以上を含有する固形製剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、プランタゴ・オバタ種皮を配合した、膨潤能の向上したプランタゴ・オバタ種皮含有固形製剤を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プランタゴ・オバタ種皮のみの製剤(比較例1)の容積に対する実施例1〜4及び比較例2の製剤の容積を示す。
【
図2】プランタゴ・オバタ種皮のみの製剤(比較例1)の容積に対する実施例5〜8及び比較例2の製剤の容積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、プランタゴ・オバタ種皮とキジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末から選ばれる1種以上を含む固形製剤である。
【0009】
本発明は固形の瀉下用製剤であり、プランタゴ・オバタ種皮を有効成分として含有することを特徴とする。プランタゴ・オバタ種皮の含有量は、有効成分として機能する程度であり、あまりにその含有量が少ないと製剤の1日服用量が膨大となってしまうことから、具体的には製剤全体に対して50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0010】
本発明は、プランタゴ・オバタ種皮を含有する固形製剤を製造するにあたって膨潤能が低下する問題を解決するために、キジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末から選ばれる1種以上を加える点に特徴を有する。なお、生薬の粉末は、濡れ性等の粉体物性が大きく異なることから、プランタゴ・オバタ種皮含有製剤の膨潤能を向上するために必要な配合量は各生薬末によって異なる。また、上記生薬のうちキジツ末、コウボク末及びダイオウ末を組み合わせて配合したプランタゴ・オバタ種皮含有製剤は、より高い膨潤能が得られることから好ましい。
【0011】
キジツは、ミカン科の常緑高木ミカン、ダイダイ、その他近縁植物の未熟果実をそのまま、または半分に横切りしたものである。キジツ単体を粉砕したものあるいはキジツと賦形剤を共粉砕したものを使用することができる。キジツ末の含有量は、1日あたりの服用量が100〜1000mg、好ましくは200〜1000mgとなるようにする。プランタゴ・オバタ種皮含有製剤に配合するキジツ末の含有量としては、プランタゴ・オバタ種皮1質量部に対して、0.01質量部以上1質量部未満、好ましくは0.02質量部以上1質量部未満、さらに好ましくは0.04質量部以上1質量部未満である。
コウボクは、ホウノキの樹皮、ホウノキの近縁種カラホウの樹皮である。コウボク単体を粉砕したものあるいはコウボクと賦形剤を共粉砕したものを使用することができる。コウボク末の含有量は、1日あたりの服用量が50〜750mg、好ましくは100〜750mgとなるようにする。プランタゴ・オバタ種皮含有製剤に配合するコウボク末の含有量としては、プランタゴ・オバタ種皮1質量部に対して、0.01質量部以上1質量部未満、好ましくは0.02質量部以上1質量部未満、さらに好ましくは0.04質量部以上1質量部未満である。
【0012】
マシニンは、クワ科の1年草アサの雌株の子実である。マシニン単体を粉砕したものあるいはマシニンと賦形剤を共粉砕したものを使用することができる。マシニン末の含有量は、1日あたりの服用量が50〜5000mg、好ましくは100〜5000mgとなるようにする。プランタゴ・オバタ種皮含有製剤に配合するマシニン末の含有量としては、プランタゴ・オバタ種皮1質量部に対して、0.01質量部以上5質量部未満、好ましくは0.02質量部以上5質量部未満、さらに好ましくは0.03質量部以上5質量部未満である。
【0013】
ショウキョウは、ショウガ科の多年草ショウガの根茎である。ショウキョウ単体を粉砕したものあるいはショウキョウと賦形剤を共粉砕したものを使用することができる。ショウキョウ末の含有量は、1日あたりの服用量が25〜500mg、好ましくは50〜500mgとなるようにする。プランタゴ・オバタ種皮含有製剤に配合するショウキョウ末の含有量としては、プランタゴ・オバタ種皮1質量部に対して、0.01質量部以上3質量部未満、好ましくは0.02質量部以上3質量部未満、さらに好ましくは0.04質量部以上3質量部未満である。
【0014】
カンキョウは、ショウガ科の多年草ショウガの外皮を除いた根茎である。カンキョウ単体を粉砕したものあるいはカンキョウと賦形剤を共粉砕したものを使用することができる。カンキョウ末の含有量は、1日あたりの服用量が50〜1000mg、好ましくは100〜1000mgとなるようにする。プランタゴ・オバタ種皮含有製剤に配合するカンキョウ末の含有量としては、プランタゴ・オバタ種皮1質量部に対して、0.01質量部以上1質量部未満、好ましくは0.02質量部以上1質量部未満、さらに好ましくは0.04質量部以上1質量部未満である。
【0015】
コショウは、コショウ科コショウの成熟種子を乾燥したものである。コショウ単体を粉砕したものあるいはコショウと賦形剤を共粉砕したものを使用することができる。コショウ末の含有量は、1日あたりの服用量が75〜1500mg、好ましくは150〜1500mgとなるようにする。プランタゴ・オバタ種皮含有製剤に配合するコショウ末の含有量としては、プランタゴ・オバタ種皮1質量部に対して、0.01質量部以上1.5質量部未満、好ましくは0.02質量部以上1.5質量部未満、さらに好ましくは0.04質量部以上1.5質量部未満である。
【0016】
ダイオウは、タデ科の多年草ダイオウの根茎である。ダイオウ単体を粉砕したものあるいはダイオウと賦形剤を共粉砕したものを使用することができる。ダイオウ末の含有量は、1日あたりの服用量が75〜3000mg、好ましくは150〜3000mgとなるようにする。プランタゴ・オバタ種皮含有製剤に配合するダイオウ末の含有量としては、プランタゴ・オバタ種皮1質量部に対して、0.01質量部以上3質量部未満、好ましくは0.02質量部以上3質量部未満、さらに好ましくは0.04質量部以上3質量部未満である。
【0017】
固形製剤を製造するにあたって、プランタゴ・オバタ種皮及びキジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末を混合する方法や順序に特に制限はない。例えばプランタゴ・オバタ種皮にキジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末を粉末で配合する方法、キジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末を溶解した溶液を用いプランタゴ・オバタ種皮に公知の製造方法により噴霧する方法、キジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末を溶解した溶液を用いプランタゴ・オバタ種皮に噴霧、造粒する方法、またはプランタゴ・オバタ種皮及びキジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末を混合し、公知の造粒方法により粒状製剤を得る方法などがある。また、例えば造粒を行う場合、造粒方法にも特に制限はない。
【0018】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、該固形製剤に他の有効成分及び公知の添加剤を配合することができる。公知の添加剤としては、日本医薬品添加剤協会編「医薬品添加物事典2007」(2007年、薬事日報社)に収載されている添加剤等が挙げられる。
【0019】
本発明の固形製剤は、散剤、用事調製用ドライシロップ剤、又は顆粒剤として提供できる他、これをゼラチンや高分子のハードカプセルに充填し、カプセル剤として提供したり、該製剤粒子を他の賦形剤等と混合し、これを圧縮成形(打錠)することによって、錠剤として提供したりすることも可能である。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
実施例1
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
キジツ末 2.22g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0022】
実施例2
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
コウボク末 2.50g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0023】
実施例3
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
マシニン末 1.78g
軽質無水ケイ酸 0.44g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0024】
実施例4
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
ショウキョウ末 2.22g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0025】
実施例5
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
カンキョウ末 2.22g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0026】
実施例6
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
コショウ末 2.22g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0027】
実施例7
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
ダイオウ末 5.00g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0028】
実施例8
プランタゴ・オバタ種皮 600.0g
ダイオウ末 100.0g
コウボク末 50.0g
キジツ末 44.4g
ヒドロキシプロピルセルロース 40.0g
スクラロース 6.0g
上記成分を12号篩にて篩過した後、混合撹拌機(万能混合撹拌機;品川工業社製)に投入し、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で混練し、湿潤混練物を押し出し造粒機(ドームグラン:ダルトン社製)にてスクリーン孔径0.7mmにて造粒した。得られた造粒物を棚式乾燥機にて乾燥した後、12号篩にて篩過した篩下品を42号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0029】
比較例1
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
【0030】
比較例2
プランタゴ・オバタ種皮 30.00g
ウコン末 2.22g
上記成分を乳鉢で混合した後、水と含水アルコールの混合液を添加して乳鉢で造粒後、22号篩にて湿粒を全量篩過した後、棚式乾燥機にて乾燥した。乾燥後、60号篩にて篩過し、篩上品を得た。
実施例及び比較例の処方(1日量)を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
試験例1 膨潤評価試験
(1)方法
実施例1〜8及び比較例1〜2で調製した固形製剤1.0gを100mLのメスシリンダーに投入し、水を50mL投入して軽くかきまぜた後、5分後、60分後、90分後、120分後における製剤の容積変化をメスシリンダーの目盛りを読み取って測定した。
各測定時間における、製剤の膨潤度を以下の式にて算出した。
【0033】
膨潤度[%]=(生薬配合製剤の容積/プランタゴ・オバタ種皮のみ製剤の容積)×100
【0034】
結果を
図1及び
図2に示す。
【0035】
(2)結果
図1及び
図2より、比較例2では膨潤能が低下してしまい、医薬品に用いる組成物としては適当ではないと考えられる。
一方、キジツ末、コウボク末、マシニン末、ショウキョウ末、カンキョウ末、コショウ末及びダイオウ末を配合した実施例1〜7では膨潤能の向上が確認され、さらにキジツ末、コウボク末及びダイオウ末を配合した実施例8ではより優れた膨潤能の向上が確認された。これらは医薬品に用いる組成物として十分に機能することが窺われる。
【0036】
(3)考察
試験例1の結果より、比較例1〜2の組成物に比し、実施例1〜8の組成物では、膨潤能が向上した固形製剤を提供できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、膨潤能が向上したプランタゴ・オバタ種皮を含有する固形製剤の提供が可能となり、医薬品産業の発展に寄与することが期待される。