特許第6446897号(P6446897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サタケの特許一覧

<>
  • 特許6446897-精米機 図000003
  • 特許6446897-精米機 図000004
  • 特許6446897-精米機 図000005
  • 特許6446897-精米機 図000006
  • 特許6446897-精米機 図000007
  • 特許6446897-精米機 図000008
  • 特許6446897-精米機 図000009
  • 特許6446897-精米機 図000010
  • 特許6446897-精米機 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6446897
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】精米機
(51)【国際特許分類】
   B02B 3/00 20060101AFI20181220BHJP
   B02B 3/06 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B02B3/00 104
   B02B3/06 101A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-159864(P2014-159864)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-36749(P2016-36749A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】野中 和人
(72)【発明者】
【氏名】古川 秀和
(72)【発明者】
【氏名】大島 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】梶原 一信
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭38−028471(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−037238(JP,U)
【文献】 実開平03−061934(JP,U)
【文献】 実公昭33−019853(JP,Y1)
【文献】 実開昭55−153142(JP,U)
【文献】 特開平06−327987(JP,A)
【文献】 実開昭63−185451(JP,U)
【文献】 実公昭14−010831(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0132087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00 − 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔筒と該多孔筒内に回転可能に配設される精白ロールとを備え、前記多孔筒と前記精白ロールとの間に搗精室が形成されてなる精米機であって、
前記多孔筒には、内部に向けて突出し中央に孔を有する円環状突出部が複数形成されるとともに、該円環状突出部の先端内周に切削刃が形成されてなり、
前記精白ロールには、該精白ロールの正回転方向側に位置する前面が後方へ向けて傾斜し、前記多孔筒の内面に対向する頂面が該精白ロールの円周方向に所定幅を有し、該精白ロールの正回転方向反対側に位置する後面が後方へ向けて傾斜する精白用突起が軸方向に沿って設けられ
前記精白ロールは、複数の噴風孔を有する中空の回転軸に装着されるとともに前記噴風孔に連通する噴風溝を有し、前記噴風溝が前記精白用突起の後面に沿って形成されることを特徴とする精米機。
【請求項2】
前記精白用突起は、前記多孔筒の内面に対向して前記頂面の後端から前記精白ロールの正回転方向後方に延出する庇部を有する請求項記載の精米機。
【請求項3】
前記円環状突出部は、半球状の側面を有する請求項1又は2記載の精米機。
【請求項4】
前記多孔筒は、複数の孔と複数の前記円環状突出部を有する請求項1乃至のいずれかに記載の精米機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性成分を多く含む白米を製造することができる精米機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摩擦式の搗精部を備える精米機は周知である(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された精米機は、筒状の搗精金網と、該搗精金網内に配設される精米ロールとを有する精白部を備え、該精白部内において玄米を粒々摩擦により精米するものである。
【0004】
特許文献1に記載された精米機によれば、粒々摩擦によって玄米の糠層を除去することで、食味・食感に優れる白米を製造することができる。
【0005】
ところで、玄米の糠層である果皮、種皮及び糊粉層には、機能性成分であるビタミンB1,ビタミンB6,ビタミンEが多く存在することが知られている。
そこで、前記機能性成分を多く含む白米を得るためには、食味・食感の悪い果皮及び種皮のみを除去し、糊粉層については除去しない精米が必要となる。
【0006】
ところが、玄米の糠層は、一般的に腹部、側部及び背部で厚みが異なるものである。
また、一般に粒々摩擦による精米は、玄米の糠層を均一に除去することを前提とするものである。
【0007】
そのため、特許文献1に記載された精米機により精米する場合には、前記果皮及び種皮のみならず、前記糊粉層や胚乳の一部までも除去されることとなり、前記糊粉層に含まれる機能性成分が失われる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−34607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、機能性成分を多く含む白米を製造することができる精米機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、
多孔筒と該多孔筒内に回転可能に配設される精白ロールとを備え、前記多孔筒と前記精白ロールとの間に搗精室が形成されてなる精米機であって、
前記多孔筒には、内部に向けて突出し中央に孔を有する円環状突出部が複数形成されるとともに、該円環状突出部の先端内周に切削刃が形成されてなり、
前記精白ロールには、該精白ロールの正回転方向側に位置する前面が後方へ向けて傾斜し、前記多孔筒の内面に対向する頂面が該精白ロールの円周方向に所定幅を有し、該精白ロールの正回転方向反対側に位置する後面が後方へ向けて傾斜する精白用突起が軸方向に沿って設けられ
前記精白ロールは、複数の噴風孔を有する中空の回転軸に装着されるとともに前記噴風孔に連通する噴風溝を有し、前記噴風溝が前記精白用突起の後面に沿って形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の精米機は、
前記精白用突起が、前記多孔筒の内面に対向し前記精白ロールの正回転方向後方に延出する庇部を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の精米機は、
前記庇部が、前記精白用突起の頂面後端から前記精白ロールの正回転方向後方に延出するものとすることができる。
【0015】
本発明の精米機は、
前記円環状突出部が、半球状の側面を有することが好ましい。
【0016】
本発明の精米機は、
前記多孔筒が、複数の孔と複数の前記円環状突出部を有することが好ましい。
【0017】
本発明の精米機は、
前記複数の孔が直線状に形成される第1孔列Kと、前記複数の孔と複数の前記円環状突出部が直線状に形成される第2孔列Lを有するものとすることができる。
【0018】
また、本発明の精米機は、
前記孔が細長い孔であって、前記多孔筒の軸方向に対し斜めに傾斜して形成される複数の前記細長い孔と、該複数の細長い孔の間に形成される複数の前記円環状突出部を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の精米機によれば、多孔筒には、内部に向けて突出し中央に孔を有する円環状突出部が複数形成されるとともに、該円環状突出部の先端内周に切削刃が形成されてなり、精白ロールには、該精白ロールの正回転方向側に位置する前面が後方へ向けて傾斜する精白用突起が軸方向に沿って設けられるので、搗精室に供給される玄米は、前記精白用突起の前面によって前記多孔筒の内面方向に向かわされ、前記円環状突出部の先端内周に形成される切削刃の作用により糠層が除去される。
【0021】
玄米の糠層は、果皮及び種皮が繊維質の軟らかい性状、糊粉層が顆粒状の集合体や細胞壁を有する硬い性状からなる。
そのため、本発明の精米機において、前記円環状突出部に形成される切削刃は、前記軟らかい性状の果皮・種皮に対して有効に作用する。
したがって、本発明の精米機は、玄米の糠層のうち果皮・種皮を除去する一方で、糊粉層を残すことができるので、機能性成分を多く含む白米を製造することができる。
【0022】
本発明の精米機は、前記精白用突起が、前記多孔筒の内面に対向する頂面を有し、該頂面が前記精白ロールの円周方向に所定幅を有するので、前記多孔筒の内面と前記精白用突起の頂面との間に所定長さの狭い間隙を形成することができるため、前記切削刃が前記玄米の糠層に作用する時間を確保して、前記果皮・種皮を効果的に除去することが可能となる。
また、本発明の精米機は、前記精白ロールの正回転方向反対側に位置する前記精白用突起の後面が後方へ向けて傾斜し、前記精白ロールが、複数の噴風孔を有する中空の回転軸に装着されるとともに前記噴風孔に連通する噴風溝を有し、前記噴風溝が前記精白用突起の後面に沿って形成されるので、前記噴風溝から噴出する空気は後方へ向けて傾斜する前記精白用突起の後面に沿って前記精白ロールの正回転方向後方に向けて噴出されることとなり、前記円環状突出部の先端内周に形成される切削刃の作用により除去される糠層を、前記多孔筒の有する孔から効率よく排出することが可能となる。
【0023】
本発明の精米機は、前記精白用突起が、前記多孔筒の内面に対向し前記精白ロールの正回転方向後方に延出する庇部を有することとすれば、前記多孔筒の内面と前記庇部との間に所定長さの狭い間隙を形成することができるため、前記切削刃が前記玄米の糠層に作用する時間を確保して、前記果皮・種皮を効果的に除去することが可能となる。
【0024】
また、本発明の精米機は、前記庇部が、前記精白用突起の頂面後端から前記精白ロールの正回転方向後方に延出するものとすれば、前記切削刃が前記玄米の糠層に作用する時間をより長く確保できるため、前記果皮・種皮をより効果的に除去することが可能となる。
【0025】
本発明の精米機は、前記円環状突出部が、半球状の側面を有することとすれば、前記円環状突出部の側面はなだらかな曲面となるため、玄米が前記円環状突出部に衝突することによる砕粒の発生を防止することが可能となる。
【0026】
本発明の精米機は、前記多孔筒が、複数の孔と複数の前記円環状突出部を有することとすれば、前記円環状突出部の先端内周に形成される切削刃の作用により除去される糠層を、前記複数の孔から確実に排出することが可能となる。
【0028】
また、本発明の精米機は、前記精白用突起が、前記多孔筒の内面に対向し前記精白ロールの正回転方向後方に延出する庇部を有するものであれば、前記多孔筒の内面と前記庇部との間に形成される所定長さの狭い間隙において除去された後に前記庇部後方の広い空間に飛散する糠層に対し、前記庇部がガイドとなって前記空気をより効果的に作用させることができるため、前記糠層を前記多孔筒の有する孔からより効率よく排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の形態における精米機の斜視図。
図2図1の精米機の一部断面図。
図3図2のA−A断面図。
図4】搗精金網の詳細説明図。
図5図4のB−B断面図。
図6】普通白米に対する機能性白米の無機成分含有比率を示すグラフ。
図7】普通白米に対する機能性白米の機能性成分含有比率を示すグラフ。
図8】精白ロールの変形例の説明図。
図9】精白ロールの他の変形例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態における精米機の斜視図を示す。図2図1の精米機の一部断面図を示す。
【0031】
本発明の実施の形態における精米機1は、ベース架台2上に精米ユニット3を載置して形成した横軸型精米機である。
【0032】
前記精米ユニット3は、円筒状の搗精金網41、及び主軸42に装着されて前記搗精金網41内に回転可能に配設される精白ロール43を有し、前記搗精金網41と前記精白ロール43の間に搗精室44を形成してなる搗精部4と、前記精白ロール43が装着される主軸42を回転駆動するモータ71を有する駆動部7と、積み重ね連結可能なユニット架台8を備える。
【0033】
前記搗精部4において、前記搗精室44の一端側には原料供給部が設けられ、他端側には米粒排出部が設けられる。
前記原料供給部は、原料供給口46を有する原料供給筒45と、前記原料供給口46に配設される原料ホッパ47を有する。また、前記原料供給筒45内には、前記主軸42に装着されて回転駆動される螺旋ロール48が配設されている。
【0034】
前記米粒排出部は、米粒排出口49を有する円筒状の米粒排出筒50と、前記米粒排出口49に対応する外側位置に配設される米粒排出樋53を有する。また、前記米粒排出樋53には、抵抗錘(分銅)52により付勢されて前記米粒排出口49を塞ぐ抵抗蓋(圧迫板)51が設けられている。
【0035】
前記精白ロール43には、前記搗精室44の位置に対応して精白用突起55が設けられ、前記米粒排出筒50の位置に対応して米粒排出用突起56が設けられている。
【0036】
また、前記精白ロール43は、前記主軸42の中空部に装着されている。前記主軸42の中空部には複数の噴風孔57が形成されるとともに、該主軸42の一端側に前記中空部と連通する送風ファン58が接続されている。
【0037】
前記主軸42の他端側には、前記駆動部7における前記モータ71の図示しない駆動プーリとベルトで接続される従動プーリ59が配設されている。
【0038】
前記搗精室44の周囲には集糠室60が形成されており、該集糠室60は下方に設けられる集糠ダクト61と連通している。また、前記搗精室44の一端側であって前記原料供給筒45の下方には、残留米除去用空気ノズル63が配設されている。
【0039】
図3図2の搗精部におけるA−A断面図を示す。図4は搗精金網の詳細な説明図を示す。図5図4のB−B断面図を示す。
図3に示すように、本発明の実施の形態において、前記搗精金網41は、多数の孔を有する2枚の網板41a,41bを半円弧状として組み合わせることで円筒状に形成されている。
【0040】
図4及び図5に示すように、前記網板41a,41bには、一面側に突出し中央に孔29aを有する円環状突出部29が複数形成されている。
また、前記円環状突出部29は、半球状のなだらかな曲面からなる側面29bを有し、その先端内周に切削刃29cが形成されている。
【0041】
本発明の実施の形態において、前記網板41a,41bは、複数の孔28が軸方向に沿って直線状に形成される第1孔列Kと、複数の孔28と複数の前記円環状突出部29が軸方向に沿って交互に直線状に形成される第2孔列Lを有するとともに、前記第1孔列Kと前記第2孔列Lが、前記搗精金網41における周方向に交互に配置されるように形成されている。
【0042】
ここで、前記搗精金網41は、前記複数の円環状突出部29が内部に向けて突出するよう前記2枚の網板41a,41bを組み合わせて構成される。
また、前記網板41a,41bに形成される孔28,29aは、原料が通過しない大きさとされる。
【0043】
なお、前記網板41a,41bは、例えば金属板を板材として、周知の打ち抜き加工やプレス加工により形成することができる。
また、ここでは、前記搗精金網41は、2枚の網板41a,41bを組み合わせて構成することとしたが、1枚の網板により構成することや、3枚以上の網板を組み合わせて構成することもできる。
【0044】
図3に示すように、本発明の実施の形態において、前記精白ロール43には、2つの前記精白用突起55が軸方向に沿って設けられている。
前記精白用突起55は、前記精白ロール43の正回転方向側に位置する前面55aが後方へ向けて傾斜するよう形成されている。
【0045】
また、前記精白用突起55は、前記搗精金網41の内面に対向する直線状の頂面55bを有し、前記頂面55bは前記精白ロール43の円周方向に所定幅を有する。
さらに、前記精白用突起55は、前記精白ロール43の正回転方向反対側に位置する後面55cが前記前面55aと同様に後方へ向けて傾斜するよう形成されている。
【0046】
前記精白ロール43には、前記精白用突起55の後面55cに沿って噴風溝65が形成されている。
前記精白ロール43に形成される噴風溝65は、該精白ロール43が装着される前記主軸42の中空部に形成される複数の噴風孔57と連通している。
【0047】
本発明の実施の形態における精米機において、前記原料ホッパ47に投入される玄米は、原料供給口46から原料供給筒45内に供給された後、前記螺旋ロール48により前記搗精室44に送られる。
【0048】
前記玄米は、前記搗精室44内で精米されながら前記米粒排出筒50側に向けて移動する。そして、前記玄米は、精米された後、前記精白ロール43に設けられた米粒排出用突起56の作用を受けて前記米粒排出筒50の周面位置に設けられる前記抵抗蓋51を押し開き、前記米粒排出口49から前記米粒排出樋53へ排出される。
【0049】
その際、前記送風ファン58の作用により、前記主軸42の中空部に形成された複数の噴風孔57を介して前記精白ロール43に形成される噴風溝65から空気が噴出し、前記搗精室44内で発生した糠が前記搗精金網41に形成される孔28,29aから集糠室60へ排出される。
【0050】
次に、本発明の実施の形態における精米機の効果を確認するため、ひとめぼれ(品種名)及びコシヒカリ(品種名)の2種類の玄米を用いて実験を行った。
【0051】
表1は、本発明の実施の形態における精米機により精米した白米(以下、「機能性白米」という。)と、市販の摩擦式精米機((株)サタケ製ミルモア(型番:HPR25A))により摩擦精米した白米(以下、「普通白米」という。)のそれぞれに含まれる無機成分及び機能性成分を分析した結果を示す。
なお、実験により得られた機能性白米と普通白米は、ともに果皮・種皮が完全に除去されており、一見して見分けがつかないまでに精米されている。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、実験例1(ひとめぼれ(品種名))及び実験例2(コシヒカリ(品種名))の分析結果から、ひとめぼれ及びコシヒカリの両品種とも、機能性白米が普通白米に比べて無機成分及び機能性成分を多く含有していることが分かる。
【0054】
図6は、表1の分析結果に基づいた普通白米に対する機能性白米の無機成分含有比率のグラフを示す。また、図7は、表1の分析結果に基づいた普通白米に対する機能性白米の機能性成分含有比率のグラフを示す。
図6及び図7に示すグラフの比較から、ひとめぼれ及びコシヒカリの両品種とも、機能性白米は普通白米に比べ、無機成分よりも機能性成分をより多く含有していることが分かる。
【0055】
一般にカリウム、マグネシウム、リン、亜鉛等の無機成分は、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンE等の機能性成分に比べ、玄米の糠層の中でも果皮・種皮に多く含まれていることが知られている。
したがって、上記実験結果は、機能性白米について、果皮・種皮が除去されることによって無機成分の含有量が普通白米に近い値まで減少する一方で、糊粉層が残存することで機能性成分の含有量が普通白米に比べて多く存在することを示すものである。
【0056】
以上より、本発明の実施の形態における精米機によれば、機能性成分を多く含む白米を製造できることが実験上確認できた。
【0057】
本発明の実施の形態における精米機によれば、前記搗精室44に供給される玄米は、前記精白用突起55の前面55aにより前記搗精金網41の内面方向に向かわされ、前記円環状突出部29の先端内周に形成される切削刃29cの作用により糠層が除去される。
このとき、前記玄米の糠層は、果皮及び種皮が繊維質の軟らかい性状、糊粉層が顆粒状の集合体や細胞壁を有する硬い性状からなるため、前記円環状突出部29に形成される切削刃29cは、前記軟らかい性状の果皮・種皮に対して有効に作用する。
したがって、本発明の実施の形態における精米機は、玄米の糠層のうち果皮・種皮を除去する一方で、糊粉層を残すことができるので、機能性成分を多く含む白米を製造することができる。
【0058】
本発明の実施の形態における精米機によれば、前記精白用突起55が、前記搗精金網41の内面に対向する直線状の頂面55bを有し、該頂面55bが前記精白ロール43の円周方向に所定幅を有するので、前記搗精金網41の内面と該精白用突起55の頂面55bとの間に所定長さの狭い間隙Gを形成することができる。
したがって、発明の実施の形態における精米機は、前記切削刃29cが前記玄米の糠層に作用する時間を確保して、前記果皮・種皮を効果的に除去することができる。
【0059】
ここで、上記本発明の実施の形態において、前記精白用突起55は、前記搗精金網41の内面に対向する直線状の頂面55bを有することとしたが、前記頂面55bは円弧状とすることもできる。
その場合でも、前記搗精金網41の内面と該精白用突起55の頂面との間に所定長さの狭い間隙を形成することができるため、前記切削刃29cによって前記玄米の果皮・種皮を効果的に除去することができる。
【0060】
図8は、精白ロール43の変形例であって参考例の説明図を示す。
前記精白ロール43に設けられる前記精白用突起55、前記搗精金網41の内面に対向する直線状又は円弧状の頂面55bを有することにかえて、前記精白用突起55の前面55a先端から前記精白ロール43の正回転方向後方に延出する庇部66を有するものとすることもできる。
この場合でも、前記搗精金網41の内面と前記庇部66との間に所定長さの狭い間隙Gを形成することができるため、前記切削刃29cによって前記玄米の果皮・種皮を効果的に除去することができる。
【0061】
図9は、精白ロール43の他の変形例の説明図を示す。
本発明の実施の形態における精米機は、前記精白用突起55の前記頂面55b後端から前記精白ロール43の正回転方向後方に延出する庇部66を有するものとすることもできる。
前記庇部66が、前記頂面55b後端から前記精白ロール43の正回転方向後方に延出するものとすれば、前記切削刃29cが前記玄米の糠層に作用する時間をより長く確保できるため、前記果皮・種皮をより効果的に除去することが可能となる。
【0062】
本発明の実施の形態における精米機は、前記円環状突出部29が半球状の側面29bを有するので前記側面29bはなだらかな曲面となる。
そのため、玄米が前記円環状突出部29に衝突することによる砕粒の発生を防止することができる。
【0063】
本発明の実施の形態における精米機は、前記搗精金網41が、複数の孔28が軸方向に沿って直線状に形成される第1孔列Kと、複数の孔28と複数の前記円環状突出部29が軸方向に沿って交互に直線状に形成される第2孔列Lを有するとともに、前記第1孔列Kと前記第2孔列Lが、前記搗精金網41における周方向に交互に配置されるように形成されているので、前記円環状突出部29の先端内周に形成される切削刃29cの作用により除去される糠層を、前記複数の孔28から確実に排出することができる。
【0064】
ここで、上記本発明の実施の形態において、前記搗精金網41は、軸方向に対し斜めに傾斜して形成される複数の細長い孔と、該複数の細長い孔の間に形成される複数の前記円環状突出部29を有するものとすることができる。また、前記細長い孔と前記円環状突出部29を、例えば千鳥状に配置することもできる。
この場合でも、前記円環状突出部29の先端内周に形成される切削刃29cの作用により除去される糠層を、前記複数の細長い孔から確実に排出することができる。
【0065】
本発明の実施の形態における精米機は、前記精白ロール43が、複数の噴風孔57を有する中空の回転軸42に装着されるとともに前記噴風孔57に連通する噴風溝65を有し、前記噴風溝65が前記精白用突起55の後面55cに沿って形成されるので、前記噴風溝65から噴出する空気は後方へ向けて傾斜する前記後面55cに沿って前記精白ロール43の正回転方向後方に向けて噴出されることとなり、前記円環状突出部29の先端内周に形成される切削刃29cの作用により除去される糠層を、前記搗精金網41の孔28,29から効率よく排出することができる。
【0066】
また、上記本発明の実施の形態において、前記精白用突起55が、図8及び図9に示すように、前記搗精金網41の内面に対向し前記精白ロール43の正回転方向後方に延出する庇部66を有するものであれば、前記搗精金網41の内面と前記庇部66との間に形成される所定長さの狭い間隙Gにおいて除去された後に前記庇部66後方の広い空間に飛散する前記糠層に対し、前記庇部66がガイドとなって前記空気をより効果的に作用させることができるため、前記搗精金網41の孔28,29から前記除去された糠層をより効率よく排出することができる。
【0067】
なお、上記本発明の実施の形態において、搗精金網41は円筒状としたが角筒状とすることもできる。
【0068】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の精米機は、機能性成分を多く含む白米を製造することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 精米機
2 ベース架台
28 孔
29 円環状突出部
29a 孔
29b 側面
29c 切削刃
3 精米ユニット
4 搗精部
41 搗精金網
42 主軸
43 精白ロール
44 搗精室
55 精白用突起
55a 前面
55b 頂面
55b 後面
57 噴風孔
65 噴風溝
66 庇部
7 駆動部
8 ユニット架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9